(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】超音波探触子及び超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20240110BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61B8/00
H04R17/00 330J
(21)【出願番号】P 2020084833
(22)【出願日】2020-05-14
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】峯本 尚
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-036056(JP,A)
【文献】特開2002-045357(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0042572(US,A1)
【文献】特開2000-131298(JP,A)
【文献】特開2011-155611(JP,A)
【文献】特開2012-249777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
H04R 1/00 - 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信する複数の圧電素子が配列された圧電部と、
前記圧電部の背面側に設けられたバッキング部と、
前記圧電部と前記バッキング部との間に配置され、前記圧電部の音響インピーダンスより大きい音響インピーダンスを有する反射部と、
前記圧電部と前記反射部との間に配置された中間部と、を備え、
前記中間部は、前記複数の圧電素子の配列方向と直交する方向の前記圧電部の中心部の超音波の周波数を端部の超音波の周波数よりも高く
し、
前記中間部は、前記反射部の音響インピーダンスと同等又はそれ以下の音響インピーダンスの値を有し、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に、連続的、段階的、規則的又は不規則的に音響インピーダンスを小さくし、
前記中間部は、前記反射部の音響インピーダンスと同等又はそれ以下の音響インピーダンスの値を有した第1の材料と、前記第1の材料より小さい音響インピーダンスを有する第2の材料との複合体とし、前記圧電部の前記中心部で前記第1の材料の体積比が大きく、前記端部に行くに従い、前記第1の材料の体積比が小さい超音波探触子。
【請求項2】
超音波を送受信する複数の圧電素子が配列された圧電部と、
前記圧電部の背面側に設けられたバッキング部と、
前記圧電部と前記バッキング部との間に配置され、前記圧電部の音響インピーダンスより大きい音響インピーダンスを有する反射部と、
前記圧電部と前記反射部との間に配置された中間部と、を備え、
前記中間部は、
音響インピーダンスが異なる複数の材料を用いた複合体であり、前記複数の圧電素子の配列方向と直交する方向の前記圧電部の中心部の複合体の音響インピーダンスの値を端部の複合体の音響インピーダンスの値よりも大きくして、当該中心部の超音波の周波数を
当該端部の超音波の周波数よりも高くする超音波探触子。
【請求項3】
前記中間部は、前記反射部の音響インピーダンスと同等又はそれ以下の音響インピーダンスの値を有し、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に、連続的、段階的、規則的又は不規則的に音響インピーダンスを小さくする請求項
2に記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記中間部は、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に、少なくとも均一の厚みとし、又は連続的に若しくは段階的に厚みを厚くする請求項
1又は3に記載の超音波探触子。
【請求項5】
超音波を送受信する複数の圧電素子が配列された圧電部と、
前記圧電部の背面側に設けられたバッキング部と、
前記圧電部と前記バッキング部との間に配置され、前記圧電部の音響インピーダンスより大きい音響インピーダンスを有する反射部と、
前記圧電部と前記反射部との間に配置された中間部と、を備え、
前記中間部は、前記複数の圧電素子の配列方向と直交する方向の前記圧電部の中心部の超音波の周波数を端部の超音波の周波数よりも高く
し、
前記中間部は、前記反射部の音響インピーダンスの値より小さい値を有し、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に厚みを厚くし、
前記中間部の厚みは、少なくとも前記圧電部又は前記反射部を傾斜させて、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に、連続的、段階的、規則的又は不規則的に厚くし、
前記圧電部、前記反射部又はその両方に複数の溝を設け、
前記溝の深さは、前記中心部は浅く、前記端部に行くに従い深くする超音波探触子。
【請求項6】
超音波を送受信する複数の圧電素子が配列された圧電部と、
前記圧電部の背面側に設けられたバッキング部と、
前記圧電部と前記バッキング部との間に配置され、前記圧電部の音響インピーダンスより大きい音響インピーダンスを有する反射部と、
前記圧電部と前記反射部との間に配置された中間部と、を備え、
前記中間部は、前記複数の圧電素子の配列方向と直交する方向の前記圧電部の中心部の超音波の周波数を端部の超音波の周波数よりも高く
し、
前記中間部は、前記反射部の音響インピーダンスの値より小さい値を有し、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に厚みを厚くし、
前記中間部の厚みは、少なくとも前記圧電部又は前記反射部を傾斜させて、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に、連続的、段階的、規則的又は不規則的に厚くし、
前記中間部の厚みは、少なくとも前記圧電部又は前記反射部に、凹凸又は表面粗さに変化を持たせ、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に連続的、段階的、規則的又は不規則的に厚くする超音波探触子。
【請求項7】
前記圧電部、前記反射部又はその両方は、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に、音響インピーダンスが連続的、段階的、規則的又は不規則的に変化する請求項1から
6のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項8】
超音波を送受信する複数の圧電素子が配列された圧電部と、
前記圧電部の背面側に設けられたバッキング部と、
前記圧電部と前記バッキング部との間に配置され、前記圧電部の音響インピーダンスより大きい音響インピーダンスを有する反射部と、
前記圧電部と前記反射部との間に配置された中間部と、を備え、
前記中間部は、前記複数の圧電素子の配列方向と直交する方向の前記圧電部の中心部の超音波の周波数を端部の超音波の周波数よりも高く
し、
前記圧電部、前記反射部又はその両方は、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に、音響インピーダンスが連続的、段階的、規則的又は不規則的に変化する超音波探触子。
【請求項9】
前記中間部は、前記中心部から前記端部の方向へ向かって、超音波の周波数を低くする請求項1
から8のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項10】
前記中間部は、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に、連続的、段階的、規則的又は不規則的に、超音波の周波数を高い周波数から低い周波数に変化する請求項1から
9のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項11】
前記圧電部から被検体の方向に1層以上の音響整合層を設け、
前記音響整合層は、均一の厚みを有する請求項1から
10のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項12】
請求項1から
11のいずれか一項に記載の超音波探触子と、
前記超音波探触子から入力された受信信号に基づいて超音波画像データを生成する画像生成部と、を備える超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探触子及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波診断装置と接続した超音波探触子を、人体や動物などを含む被検体の体表に当てる、又は被検体内に挿入するという簡単な操作で、被検体内の組織及び動きなどを超音波診断画像として得ることを可能とする。超音波診断装置は、安全性が高いため繰り返して検査を行うことができるという利点を有する。
【0003】
超音波探触子は、超音波を送受信する圧電素子などを内蔵する。圧電素子は、超音波診断装置からの送信信号を超音波信号に変換して送波し、被検体内で反射された超音波を受信して電気信号に変換し、電気信号に変換された受信信号を超音波診断装置に送信する。
【0004】
図14は、従来の超音波探触子40の斜視図である。
図14に示すように、従来の超音波診断装置に接続する従来の超音波探触子40は、図中矢印で示す短軸方向(Y軸方向)に平凹面を有する圧電素子41に音響マッチング層46が設けられ、圧電素子41と音響マッチング層46で構成され、圧電素子41及び音響マッチング層46は、短軸方向と直交する方向に多数配列され、圧電素子41の背面にはバッキング44が設けられている。圧電素子41は短軸方向の厚みは、中心部で薄くし、端部に行くにしたがって厚くしている。また音響マッチング層46も同様の厚み構成となっている。
【0005】
このような構成にすることにより、圧電素子41及び音響マッチング層46の中心部においては高周波数の超音波が得られ、端部に行くにしたがって、低周波数の超音波が得られる。このことにより高周波数域の周波数特性を得ることができる。さらに、短軸方向の中心部は高周波数で開口が小さくなり、端部に行くすなわち低周波数にシフトすることにより開口が大きくなっていくように変化するため、近距離から遠距離まで細いビーム径が得られ、高い分解能を実現することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、圧電素子とバッキングとの間に反射層を有した構成にすることにより、周波数の広帯域化と感度の性能とを改善できる。これは、圧電素子の背面側に圧電素子の音響インピーダンスより大きく、厚みを約4分の1波長にした反射層を設けることにより、効率よく被検体側に超音波を放射することが可能となるという特徴を有し、さらに、短軸方向に反射部の厚みを中心部では薄く、端部に行くにしたがって厚くなるようにして、さらなる広帯域化を実現する構成が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平7-107595号公報
【文献】特表2017-501808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
超音波診断装置は、高分解能化の要望が高く、超音波診断装置に接続する超音波探触子としては、高分解能化のために、周波数の広帯域化や高感度化、さらには、短軸方向の超音波ビームを近距離から遠距離まで細く絞るなどの性能を向上させることが重要である。
【0009】
高分解能化の要望に対しては、超音波探触子の短軸方向の超音波ビームを細く絞る、その一手段として、現状は音響レンズなどを用いて行うという方法があるが、超音波を絞った焦点距離付近は細く絞られるが、その前後の距離ではビームが広がり、分解能を低下させるという課題がある。一方、特許文献1の構成の圧電素子、あるいは特許文献2の構成の反射部のように、片面凹面に加工し、凹面の圧電部又は反射部を互いに接着し、積層構造に作り上げるには、高精度の加工、接着技術が必要になるという課題がある。
【0010】
本発明の目的は、平凹面構造の圧電部及び反射部を用いずに、簡単な構成で、超音波の周波数を高周波数から低周波数まで周波数帯域を広くするとともに、焦点深度の深い近距離から遠距離まで高い分解能を実現する超音波探触子及び超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の超音波探触子は、
超音波を送受信する複数の圧電素子が配列された圧電部と、
前記圧電部の背面側に設けられたバッキング部と、
前記圧電部と前記バッキング部との間に配置され、前記圧電部の音響インピーダンスより大きい音響インピーダンスを有する反射部と、
前記圧電部と前記反射部との間に配置された中間部と、を備え、
前記中間部は、前記複数の圧電素子の配列方向と直交する方向の前記圧電部の中心部の超音波の周波数を端部の超音波の周波数よりも高くし、
前記中間部は、前記反射部の音響インピーダンスと同等又はそれ以下の音響インピーダンスの値を有し、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に、連続的、段階的、規則的又は不規則的に音響インピーダンスを小さくし、
前記中間部は、前記反射部の音響インピーダンスと同等又はそれ以下の音響インピーダンスの値を有した第1の材料と、前記第1の材料より小さい音響インピーダンスを有する第2の材料との複合体とし、前記圧電部の前記中心部で前記第1の材料の体積比が大きく、前記端部に行くに従い、前記第1の材料の体積比が小さい。
請求項2に記載の発明の超音波探触子は、
超音波を送受信する複数の圧電素子が配列された圧電部と、
前記圧電部の背面側に設けられたバッキング部と、
前記圧電部と前記バッキング部との間に配置され、前記圧電部の音響インピーダンスより大きい音響インピーダンスを有する反射部と、
前記圧電部と前記反射部との間に配置された中間部と、を備え、
前記中間部は、音響インピーダンスが異なる複数の材料を用いた複合体であり、前記複数の圧電素子の配列方向と直交する方向の前記圧電部の中心部の複合体の音響インピーダンスの値を端部の複合体の音響インピーダンスの値よりも大きくして、当該中心部の超音波の周波数を当該端部の超音波の周波数よりも高くする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の超音波探触子において、
前記中間部は、前記反射部の音響インピーダンスと同等又はそれ以下の音響インピーダンスの値を有し、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に、連続的、段階的、規則的又は不規則的に音響インピーダンスを小さくする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は3に記載の超音波探触子において、
前記中間部は、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に、少なくとも均一の厚みとし、又は連続的に若しくは段階的に厚みを厚くする。
【0019】
請求項5に記載の発明の超音波探触子は、
超音波を送受信する複数の圧電素子が配列された圧電部と、
前記圧電部の背面側に設けられたバッキング部と、
前記圧電部と前記バッキング部との間に配置され、前記圧電部の音響インピーダンスより大きい音響インピーダンスを有する反射部と、
前記圧電部と前記反射部との間に配置された中間部と、を備え、
前記中間部は、前記複数の圧電素子の配列方向と直交する方向の前記圧電部の中心部の超音波の周波数を端部の超音波の周波数よりも高くし、
前記中間部は、前記反射部の音響インピーダンスの値より小さい値を有し、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に厚みを厚くし、
前記中間部の厚みは、少なくとも前記圧電部又は前記反射部を傾斜させて、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に、連続的、段階的、規則的又は不規則的に厚くし、
前記圧電部、前記反射部又はその両方に複数の溝を設け、
前記溝の深さは、前記中心部は浅く、前記端部に行くに従い深くする。
【0020】
請求項6に記載の発明の超音波探触子は、
超音波を送受信する複数の圧電素子が配列された圧電部と、
前記圧電部の背面側に設けられたバッキング部と、
前記圧電部と前記バッキング部との間に配置され、前記圧電部の音響インピーダンスより大きい音響インピーダンスを有する反射部と、
前記圧電部と前記反射部との間に配置された中間部と、を備え、
前記中間部は、前記複数の圧電素子の配列方向と直交する方向の前記圧電部の中心部の超音波の周波数を端部の超音波の周波数よりも高くし、
前記中間部は、前記反射部の音響インピーダンスの値より小さい値を有し、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に厚みを厚くし、
前記中間部の厚みは、少なくとも前記圧電部又は前記反射部を傾斜させて、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に、連続的、段階的、規則的又は不規則的に厚くし、
前記中間部の厚みは、少なくとも前記圧電部又は前記反射部に、凹凸又は表面粗さに変化を持たせ、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に連続的、段階的、規則的又は不規則的に厚くする。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の超音波探触子において、
前記圧電部、前記反射部又はその両方は、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に、音響インピーダンスが連続的、段階的、規則的又は不規則的に変化する。
請求項8に記載の発明の超音波探触子は、
超音波を送受信する複数の圧電素子が配列された圧電部と、
前記圧電部の背面側に設けられたバッキング部と、
前記圧電部と前記バッキング部との間に配置され、前記圧電部の音響インピーダンスより大きい音響インピーダンスを有する反射部と、
前記圧電部と前記反射部との間に配置された中間部と、を備え、
前記中間部は、前記複数の圧電素子の配列方向と直交する方向の前記圧電部の中心部の超音波の周波数を端部の超音波の周波数よりも高くし、
前記圧電部、前記反射部又はその両方は、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に、音響インピーダンスが連続的、段階的、規則的又は不規則的に変化する。
請求項9に記載の発明の超音波探触子は、請求項1から8のいずれか一項に記載の超音波探触子において、
前記中間部は、前記中心部から前記端部の方向へ向かって、超音波の周波数を低くする。
【0023】
請求項10に記載の発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載の超音波探触子において、
前記中間部は、前記圧電部の前記中心部から前記端部の方向に、連続的、段階的、規則的又は不規則的に、超音波の周波数を高い周波数から低い周波数に変化する。
【0024】
請求項11に記載の発明は、請求項1から10のいずれか一項に記載の超音波探触子において、
前記圧電部から被検体の方向に1層以上の音響整合層を設け、
前記音響整合層は、均一の厚みを有する。
【0025】
請求項12に記載の発明の超音波診断装置は、
請求項1から11のいずれか一項に記載の超音波探触子と、
前記超音波探触子から入力された受信信号に基づいて超音波画像データを生成する画像生成部と、を備える。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、簡単な構成で、周波数帯域を広くできるとともに、近距離から遠距離まで高い分解能を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の超音波診断装置の外観図である。
【
図2】超音波診断装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施の形態の超音波探触子の一部断面図である。
【
図4】圧電部の幅と中間層の音響インピーダンスの関係を概略的に示す図である。
【
図5】第1の実施の形態の超音波探触子の中間層の音響インピーダンスを変化させたときの周波数特性を示す図である。
【
図6】第1の実施の形態の超音波探触子の中間層の音響インピーダンスを変化させたときの中心周波数の関係を示す図である。
【
図7】第2の実施の形態の超音波探触子の中間層の厚みを変化させたときの周波数特性を示す図である。
【
図8】第2の実施の形態の超音波探触子の中間層の厚みを変化させたときの中心周波数の関係を示す図である。
【
図9】(a)は、圧電部と反射層と中間層との一例を示す断面図である。(b)は、圧電部と反射層と中間層との別の一例を示す断面図である。(c)は、圧電部と反射層と中間層とのさらに別の一例を示す断面図である。
【
図10】(a)は、第2の実施の形態の超音波探触子の圧電部と中間層との厚みの関係を示す図である。(b)は、ハイドロフォンで受信した周波数特性を示す図である。
【
図11】(a)は、第2の実施の形態の超音波探触子で測定したビームパターンの結果を示す図である。(b)は、比較例のビームパターンの結果を示す図である。
【
図12】第3の実施の形態の超音波探触子の中間層の音速を変化させたときの周波数特性を示す図である。
【
図13】第3の実施の形態の超音波探触子の中間層の音速を変化させたときの中心周波数の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付図面を参照して本発明に係る第1~第3の実施の形態を順に詳細に説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0029】
(第1の実施の形態)
図1~
図6を参照して、本発明に係る第1の実施の形態を説明する。先ず、
図1を参照して、本実施の形態の超音波診断装置100の全体構成を説明する。
図1は、本実施の形態の超音波診断装置100を示す模式図である。
【0030】
図1に示すように、超音波診断装置100は、超音波探触子10、本体部11及びコネクター部12を備える。超音波探触子10は、コネクター部12に接続されたケーブル14を介して本体部11と接続される。本体部11からの送信信号(駆動信号)は、ケーブル14を介して超音波探触子10の圧電部1(
図2参照)に送信される。この送信信号は、圧電部1において超音波に変換され、被検体の生体内に送波される。送波された超音波は被検体の生体内の組織などで反射され、当該反射波がまた圧電部1に受波され電気信号としての受信信号に変換され、本体部11に送信される。受信信号は、本体部11において被検体内の内部状態を画像化した超音波画像データに変換され表示部13に表示される。
【0031】
超音波探触子10は、圧電部1を備えており、この圧電部1は、例えば、方位方向(走査方向)に一次元アレイ状に複数の振動子としての圧電素子1aが配列されている。本実施の形態では、例えば、192個の圧電素子1aを備えた超音波探触子10を用いている。なお、圧電部1は、二次元アレイ状に圧電素子1aが配列されたものであってもよい。また圧電部1の圧電素子1aの個数は、任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子10としてリニア状に配列した電子スキャンプローブを用いて、リニア走査方式による超音波の走査を行うものとするが、リニア走査方式、コンベックス走査方式、又はセクタ走査方式の何れの方式を採用することもできる。本体部11と超音波探触子10との通信は、ケーブル14を介する有線通信に代えて、UWB(Ultra Wide Band)などの無線通信により行うこととしてもよい。
【0032】
ついで、
図2を参照して、超音波診断装置100の機能構成を説明する。
図2は、超音波診断装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0033】
図2に示すように、本体部11は、例えば、操作入力部15と、送信部16と、受信部17と、画像生成部18と、画像処理部19と、DSC(Digital Scan Converter)20と、表示部13と、制御部21と、を備える。
【0034】
操作入力部15は、医師、検査技師などの操作者の操作入力を受け付ける。操作入力部15は、例えば、診断開始を指示するコマンド、被検体の個人情報などのデータ、超音波画像データなどを表示部13に表示するための各種画像パラメーターの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボードなどを備えており、操作信号を制御部21に出力する。なお、本体部11が、表示部13の表示パネル上に設けられ操作者のタッチ入力を受け付けるタッチパネルを備える構成としてもよい。
【0035】
送信部16は、制御部21の制御に従って、超音波探触子10にケーブル14を介して電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子10に送信超音波を発生させる回路である。また、送信部16は、例えば、クロック発生回路、遅延回路、パルス発生回路を備える。クロック発生回路は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。遅延回路は、圧電素子1aごとに対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させ、送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行うための回路である。パルス発生回路は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。上述のように構成された送信部16は、例えば、超音波探触子10の圧電部1に配列された複数(例えば、192個)の圧電素子1aのうちの連続する一部(例えば、48個)を駆動して送信超音波を発生させる。そして、送信部16は、送信超音波を発生させる毎に駆動する圧電素子1aを方位方向(走査方向)にずらすことで走査(スキャン)を行う。
【0036】
受信部17は、制御部21の制御に従って、超音波探触子10からケーブル14を介して電気信号である受信信号を受信する回路である。受信部17は、例えば、増幅器、A/D変換回路、整相加算回路を備えている。増幅器は、受信信号を、圧電素子1aごとに対応した個別経路ごとに、予め設定された増幅率で増幅させるための回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号をアナログ-デジタル変換(A/D変換)するための回路である。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、圧電素子1aごとに対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データを生成するための回路である。
【0037】
画像生成部18は、制御部21の制御に従って、受信部17からの音線データに対して包絡線検波処理や対数圧縮などを実施し、ダイナミックレンジやゲインの調整を行って輝度変換することにより、受信エネルギーとしての輝度値を有する画素からなるB(Brightness)モード画像データを生成することができる。すなわち、Bモード画像データは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。画像生成部18は、画像モードがBモードの超音波画像データとしてのBモード画像データの他、A(Amplitude)モード、M(Motion)モード、ドプラ法による画像モード(カラードプラモードなど)など、他の画像モードの超音波画像データが生成できるものであってもよい。
【0038】
画像処理部19は、制御部21の制御に従って、設定中の各種画像パラメーターに応じて、画像生成部18から出力されたBモード画像データに画像処理を施す。また、画像処理部19は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーによって構成された画像メモリー部19aを備える。画像処理部19は、制御部21の制御に従って、画像処理を施したBモード画像データをフレーム単位で画像メモリー部19aに記憶する。フレーム単位での画像データを超音波画像データあるいはフレーム画像データということがある。画像処理部19は、制御部21の制御に従って、上述したようにして生成された画像データを順にDSC20に出力する。
【0039】
DSC20は、制御部21の制御に従って、画像処理部19より受信した画像データを表示用の画像信号に変換し、表示部13に出力する。
【0040】
表示部13は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイなどの表示装置が適用可能である。表示部13は、制御部21の制御に従って、DSC20から出力された画像信号に従って表示画面上に超音波画像データの静止画又は動画の表示を行う。
【0041】
制御部21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備え、ROMに記憶されているシステムプログラムなどの各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波診断装置100の各部の動作を制御する。ROMは、半導体などの不揮発メモリーなどにより構成され、超音波診断装置100に対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、ガンマテーブルなどの各種データなどを記憶する。これらのプログラムは、コンピューターが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0042】
超音波診断装置100が備える各部について、各々の機能ブロックの一部又は全部の機能は、集積回路などのハードウェア回路として実現することができる。集積回路とは、例えばLSI(Large Scale Integration)であり、LSIは集積度の違いにより、IC(Integrated Circuit)、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用してもよい。また、各々の機能ブロックの一部又は全部の機能をソフトウェアにより実行するようにしてもよい。この場合、このソフトウェアは一つ又はそれ以上のROMなどの記憶媒体、光ディスク、又はハードディスクなどに記憶されており、このソフトウェアが演算処理器により実行される。
【0043】
つぎに、
図3~
図6を参照して、超音波探触子10の全体構造の一例を説明する。
図3は、超音波探触子10の一部断面図である。
図4は、圧電部1の幅(Y軸方向)と中間層9の音響インピーダンスとの関係を概略的に示す図である。
図5は、本実施の形態の超音波探触子10の中間層9の音響インピーダンスを変化させたときの周波数特性を示す図である。
図6は、本実施の形態の超音波探触子10の中間層9の音響インピーダンスを変化させたときの中心周波数fcの関係を示す図である。
【0044】
図3に示すように、超音波探触子10は、圧電部1と、圧電部1に電圧を印加するために前面側に配置された接地電極2、及び背面側に配置された信号電極3と、信号電極3の背面側に配置された反射部としての反射層5と、圧電部1及び反射層5の間に配置された中間部としての中間層9並びに信号用電気端子7と、圧電部1から前面側にこの順で配置された音響整合層としての音響マッチング層6及び音響レンズ8と、信号用電気端子7から背面側に配置されたバッキング部としてのバッキング4と、を有する。本実施の形態において、圧電部1に設けた信号電極3、中間層9及び反射層5は、互いに接して配置される。また、
図3に示すように、X軸、Y軸、Z軸をとるものとする。
【0045】
圧電部1は、電圧の印加により超音波を送波する複数個の圧電素子1aが
図3中のX軸方向に1次元に配列されて形成される。圧電部1の厚さは、たとえば0.05[mm]以上0.3[mm]以下とすることができる。それぞれの圧電体は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系などの圧電セラミック、マグネシウム酸ニオブ酸鉛・チタン酸鉛固溶体(PMN-PT)及び亜鉛酸ニオブ酸鉛・チタン酸鉛固溶体(PZN-PT)などの圧電単結晶、並びにこれらの材料と高分子材料とを複合した複合圧電体、などにより形成される。
【0046】
接地電極2は、金又は銀などを、蒸着、スパッタリング又は銀の焼き付けなどの方法で圧電部1の前面に配置した電極である。信号電極3は、金又は銀などを、蒸着、スパッタリング又は銀の焼き付けなどの方法で、圧電部1の背面に配置した電極である。反射層5は、圧電部1に設けた信号電極3の背面に配置した中間層9の背面に配置した層である。反射層5が、圧電部1の音響インピーダンスより大きい値を有する材料で構成されることにより、圧電部1は、圧電部1が送受信する超音波の波長の4分の1波長の振動をするように構成される。信号用電気端子7は、反射層5の背面側に接して配置され、信号電極3を、反射層5、又は、中間層9及び反射層5を経由して超音波診断装置100の本体部11に配置された外部の電源(送信部16)などと接続する。
【0047】
中間層9は、圧電部1と反射層5との間に設けた層であり、
図4に示すように、圧電部1の複数の圧電素子1aの配列方向と垂直な方向(幅、Y軸方向)の中心部には音響インピーダンスが大きく、端部にいくにしたがって音響インピーダンスが小さくなるよう変化させるように配置される。なお、
図4は、横軸は
図3に示すY軸方向の圧電部1の幅、縦軸は中間層9の音響インピーダンスの値を模式的に示している。
【0048】
音響マッチング層6は、圧電部1と音響レンズ8との間を音響的に整合させるための層であり、圧電部1と音響レンズ8との概ね中間の音響インピーダンスを有する材料により構成される。本実施の形態では、音響マッチング層6は、第1の音響マッチング層6a、第2の音響マッチング層6b、第3の音響マッチング層6c、及び第4の音響マッチング層6dの4層からなる。ここでは、それぞれの第1の音響マッチング層6a、第2の音響マッチング層6b、第3の音響マッチング層6c及び第4の音響マッチング層6dは、ほぼ均一の厚みの構成を示している。
【0049】
本実施の形態において、第1の音響マッチング層6aは、音響インピーダンスが8[MRayls(メガレールス)]以上20[MRayls]以下である、シリコン、水晶、快削性セラミックス、金属粉を充填したグラファイト、及び金属又は酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂などの材料から形成される。第2の音響マッチング層6bは、音響インピーダンスが6[MRayls]以上12[MRayls]以下である、グラファイト、及び金属又は酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂から形成される。第3の音響マッチング層6cは、音響インピーダンスが3[MRayls]以上6[MRayls]以下である、金属又は酸化物などのフィラーを充填したエポキシ樹脂などの材料から形成される。第4の音響マッチング層6dは、1.7[MRayls]以上2.3[MRayls]以下である、ゴム材料を混合したプラスチック材、及びシリコーンゴム粉を充填した樹脂などから形成される。
【0050】
このように、音響マッチング層6を多層化することで、超音波探触子10の広帯域化を図れる。なお、音響マッチング層6を多層化するときは、音響レンズ8に近づくにつれて音響レンズ8の音響インピーダンスに段階的又は連続的に近づくように、各層の音響インピーダンスが設定されることがより好ましい。また、多層化された音響マッチング層6の各層は、エポキシ系接着剤などの、当該技術分野で通常使用される接着剤で接着されてもよい。
【0051】
なお、音響マッチング層6の材料は上記材料に限定されず、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、マコールガラス、ガラス、溶融石英、コッパーグラファイト、および、樹脂などを含む公知の材料を使用することが可能である。上記樹脂の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、AAS(Acrylonitrile Acrylate Styrene)樹脂、AES(Acrylonitrile Ethylene Styrene)樹脂、ナイロン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ樹脂及びウレタン樹脂などが含まれる。
【0052】
音響レンズ8は、被検体の生体に近い音響インピーダンスを有し、かつ生体とは異なる音速を有する、たとえば軟質の高分子材料などにより構成されており、生体と音響レンズ8との音速差による屈折を利用して圧電部1から送波された超音波を集束して、分解能を向上させる。本実施の形態では、音響レンズ8は、
図3中Y軸方向(圧電素子1aの配列方向のX軸方向に直交する方向)に沿って延び、Z軸方向に凸状となる、シリンドリカル型の音響レンズであり、上記超音波をY軸方向に集束させて超音波探触子10の被検体側に放射する。上記軟質の高分子材料の例には、シリコーンゴムなどが含まれる。
【0053】
反射層5は、圧電部1(信号電極3)、中間層9と、信号用電気端子7との間に配置された層であり、超音波探触子10が使用できる周波数を広帯域化および高感度化する機能を有する。反射層5は、圧電部1より大きい音響インピーダンスを有する材料から形成される。
【0054】
バッキング4は、圧電部1及び反射層5を保持し、かつ、圧電部1から反射層5を介して背面側に送波された超音波を減衰させる層である。バッキング4は、通常、音響インピーダンス、減衰及び放熱を調整するための材料を充填した合成ゴム、天然ゴム、エポキシ樹脂及び熱可塑性樹脂などから形成される。
【0055】
超音波探触子10は、超音波を送受信する単体の圧電素子1aの圧電部1を有する超音波送受波部を機械的に回転、揺動又はスライドさせる、又は圧電素子1aを複数個アレイ状に配列した圧電部1を電子的に走査できる超音波送受波部を機械的に回転又は揺動して3次元の超音波画像を得るための保護部材であるウインドウ(不図示)を、超音波探触子10の被検体と接触する側を被覆する位置に有してもよい。また、超音波探触子10は、ウインドウと音響レンズ8などとの間に、ウインドウと圧電部1の送受波面との間を音響的に整合させるための音響媒体液(不図示)を有してもよい。
【0056】
反射層5について以下に説明する。圧電部1の厚みは、約0.25波長(超音波の波長λ)に設定され、従来の一般的な0.5波長共振を用いた圧電部より薄く設定される。電圧を印加した場合の圧電部1に発生する電界強度は、圧電部1の厚みに反比例するため、本実施の形態における圧電部1は、従来の圧電部と比較して内部の電界強度が大きくなり、大きなひずみが発生する。本実施の形態における圧電部1の厚みは、従来の一般的な0.5波長共振型圧電部の厚みの1/2程度になるため、圧電部1のひずみは、従来の約2倍程度になる。
【0057】
しかし、圧電部1の接地電極2、信号電極3を設けた両端面に負荷がかからないフリーに近い状態で振動させると、厚み方向の0.5波長共振が強く励振されてしまい、送受信周波数が上昇してしまう、これを0.25波長共振にするために、圧電部1より音響インピーダンスが大きい反射層5を設ける。このことにより、圧電部1の背面側の振動を抑制し、送受信周波数の上昇を押さえた状態で、大きなひずみを発生させることが可能になる。この状態によって、音響エネルギーが反射層5側にはあまり分配されず、結果的に送信時の効率が高い超音波探触子10とすることができる。また、圧電部1の厚みを薄くしているために、電気的容量が大きくなり、感度が高く、広帯域の超音波探触子の構成にすることができる。
【0058】
反射層5に適用される材料としては、タングステンやタンタルなど、圧電部1との音響インピーダンスの差が大きい材料であれば適用できるが、製作する観点からタングステンカーバイドが好適である。また、タングステンカーバイドと他の材料とを混合してなるものであってもよい。
【0059】
なお、上記の反射層5の材料は、電気的に導体であるので圧電部1の信号電極3と信号用電気端子7とは電気的に接続することができるが、反射層5が電気的に絶縁体又は半導体のような場合には、反射層5の周囲に又は反射層5に貫通孔を設けて、銅や金の導体をメッキや蒸着又はスパッタリングなどの方法で設けることにより、圧電部1の信号電極3と信号用電気端子7とを電気的に接続してもよい。
【0060】
一方、音響レンズ8は、図中Y軸方向(圧電素子1aの配列方向のX軸方向に直交する方向)に沿って延び、Z軸方向に凸状となる、シリンドリカル型の音響レンズであり、上記超音波をY軸方向に集束させて被検体側に放射する。この音響レンズ8は、音響レンズ8と被検体の音速差を利用して所望の深さに集束するようにしている。集束した深さ付近は超音波ビームが絞られ、分解能が高い画像を得ることができるが、一方、集束前後の近距離及び遠距離では拡散するために分解能が劣化するという課題がある。このため、近距離及び遠距離に至るまで超音波ビームを細く絞ることは、分解能を向上させるために重要である。本実施の形態は、上記のような構成で超音波ビームを近距離から遠距離まで深い距離に細く絞ることを可能にした構成に特徴を有している。
【0061】
本実施の形態の特徴は、圧電部1と反射層と5の間に中間層9を設けた構成にある。
図4は、
図3に示す圧電部1のY軸方向(圧電部1幅)方向に、中間層9の音響インピーダンスに変化を持たせた3パターンの模式図を示す。圧電部1のY軸方向の中心部の中間層9の音響インピーダンスは高く、端部に行くにしたがって低くなるような構成にしている。このことにより、圧電部1のY軸方向の中心部は高周波数域を有した周波数特性を、端部に行くにしたがって低周波数域にシフトしていくという特性を有し、圧電部1のY軸方向に周波数の重み付けをすることにより、近距離から遠距離まで超音波ビームが絞られる構成にしている。
【0062】
図5は、中間層9の厚みを固定し(
図5では中間層9の厚みを0.05波長)、中間層9の音響インピーダンスの値を4から100[MRayls]に変化させたとき、横軸の周波数[MHz]に対する縦軸の超音波探触子10の感度[dB]の周波数特性の変化を示している。
図5から、中間層9の音響インピーダンスが変わることにより、周波数特性が変化することが確認できる。中間層9に音響インピーダンスが大きい場合には、高周波まで有した周波数特性を有し、中間層9の音響インピーダンスが小さくなるに従い、低周波数にシフトしていく周波数特性を有している。この結果から、
図4に示したように、圧電部1のY軸方向の中心部に音響インピーダンスが大きい中間層9を設け、端部に行くに従い小さくなるような構成にすることにより、周波数の重み付けが可能となる。これはすなわち、特許文献1、特許文献2のように圧電部1、反射層5の厚みを可変して、周波数を変化させると同様の現象を実現できる。
【0063】
なお、
図5は、次表Iに示す各構成の音響インピーダンスの値を用い、
図3に例示する構成の超音波探触子10において、超音波の中心周波数fcを10[MHz]としたとき、圧電部1から送受信した超音波のパルス応答特性を、KLM(Krimholtz, Leedom and Matthaei)法によりシミュレーションして得られた結果である。超音波の波長は、音速を使用周波数10[MHz]で除算した値である。
【表1】
【0064】
また、
図6には、
図5の中間層9の音響インピーダンスの周波数特性から算出した-6dBにおける中心周波数fcの変化を示しており、横軸は、中間層9の音響インピーダンス[MRayls]、縦軸は、中心周波数fc[MHz]を示している。
【0065】
ここでは、中間層9の厚みを、0.025波長(超音波の波長λ)、0.05波長及び0.075波長とした時の中心周波数fcと中間層9の音響インピーダンスとの関係を示している。
図6の結果から明らかのように、中間層9の音響インピーダンスを大きくすると、中心周波数fcが高くなる傾向があり、逆に音響インピーダンスを小さくすると中心周波数fcが低くなる傾向があり、この傾向は中間層9の厚みが変化しても、変化の度合いは異なるものの同じ傾向となっている。
【0066】
また、
図6から、中間層9の音響インピーダンスが30[MRayls]以上に大きくなると、中心周波数fcの変化が小さくなりそれ以上大きくなっても飽和する傾向があるが、反射層5の音響インピーダンスに近い値(約100[MRayls])までは、変化しているので、圧電部1のY軸方向の中心部に設ける中間層9の音響インピーダンスは、反射層5と略同等又はそれ以下であれば効果がある。
【0067】
なお、シミュレーションに用いた構成は、
図3に示す超音波探触子10の音響レンズ8前面に水を被検体と仮定し、その水中に反射体としてステンレスの反射板から反射したパルス応答波形をフーリエ変換した時の周波数特性の結果を示す。
【0068】
このように、中間層9の音響インピーダンスを変化させる、つまり、圧電部1のY軸方向の中心部には音響インピーダンスの値が大きく、端部にいくに従い音響インピーダンスを小さくする構成の中間層9を設けることにより、
図5に示すように、圧電部1のY軸方向の中心部は、音響インピーダンスが大きいため、高周波数の周波数帯を有した超音波を送信受信でき、端部に行くに従い、中間層9の音響インピーダンスが小さくなるため、高周波成分がカットされて低周波数成分を有した超音波を送受信できることになる。このような構成の超音波探触子10において、
図2に示す送信部16により、広帯域の送信信号を発生した駆動信号が、圧電部1に印加される。
【0069】
圧電部1は、
図3から
図6に示すように、圧電部1と反射層5との間に設ける中間層9は、圧電部1のY軸方向の中心部には、音響インピーダンスが大きい値のものを設け、端部に行くにしたがって、徐々に連続的に音響インピーダンスが小さい値のものに変化させる構成にする。したがって、圧電部1は被検体側の音波放射方向において、圧電部1のY軸方向の中心部では、
図5、
図6に示すように、高周波数を多く含む、すなわち中心周波数fcは高く、端部に行くに従い低くなっていくため、広帯域の周波数特性を有することになる。
【0070】
また、圧電部1のY軸方向の中心部の領域は中間層9を設けないで、反射層5を直接接するように設け、端部に向かって任意の領域から中間層9を設けて、端部に行くにしたがって音響インピーダンスを傾斜させてもよい。
【0071】
なお、圧電部1と反射層5との間に設ける中間層9は、圧電部1の中心部には音響インピーダンスが大きい値のものを設け、端部に行くにしたがって、連続的に音響インピーダンスが小さい値のものに変化させる構成について説明したが、このほか、圧電部1と反射層5との間に設ける中間層9は、段階的、規則的又は不規則的に音響インピーダンスを変化させても同様の効果がある。
【0072】
圧電部1のY軸方向の中心部から端部にかけて段階的に音響インピーダンスを小さくする場合には、それぞれ音響インピーダンスを有した材料を並べた構成にしてもよい。
【0073】
また、音響マッチング層6は、圧電部1のY軸方向の中心部から端部方向の中心周波数fcの変化に合わせて厚みを変化させてもよい。
【0074】
音響レンズ8は、圧電部1から音響マッチング層6を伝搬してきた超音波を被検体(図示せず)において集束させる。圧電部1で送信し、音響レンズ8を通過した後の近い距離の超音波は、高周波成分が、圧電部1のY軸方向の中心部付近に局在するため、近距離においては、高周波数成分の超音波ビーム径は細くなる。一方、圧電部1のY軸方向の中心部から端部にいくにしたがって低周波数にシフトしていく低周波成分は、近い距離では超音波ビーム径が太くなるが、比較的遠距離において、音響レンズ8の集束により超音波ビーム径が細くなる傾向となる。したがって、音響レンズ8の集束効果と、圧電部1のY軸方向の中心部領域から高周波数、そして端部にいくにしたがって低周波数にシフトさせた周波数を変化させる効果とによって、近距離から遠距離にわたって、超音波ビームを細く絞ることができるため、超音波画像の分解能を高めることができる。
【0075】
圧電部1と反射層5との間に設ける中間層9の音響インピーダンスを変化させる方法として、一例として以下のような方法がある。任意の厚みを有する音響インピーダンスの大きい材料、例えばタングステン金属フィルム(音響インピーダンスは約104[MRayls])、モリブデン金属フィルム(音響インピーダンスは約63[MRayls])、銅フィルム(音響インピーダンスは約44[MRayls])、ステンレス金属フィルム(音響インピーダンスは約46[MRayls])など、音響インピーダンスが30[MRayls]以上のフィルム又はフィルム状に加工したものを用いて、これらの材料にパターンマスクを用いてエッチング、レーザー加工若しくは機械加工などによりストライプ状、あるいは空孔を設ける。前記フィルムを加工したストライプ状あるいは空孔部には、音響インピーダンスが30[MRayls]以下の材料、例えばエポキシ樹脂のような接着剤を設ける。このことによって、30[MRayls]以上のフィルムと空孔などに設けた30[MRayls]以下の材料の体積比率を変化させることにより、音響インピーダンスの値を変化させることが可能となる。このほかに金属以外で音響インピーダンスが30[MRayls]以上の材料であればよく、これらに限定するものではない。
【0076】
なお、上記の中間層9の材料は、各種金属フィルムであるため電気的に導体であるので圧電部1の信号電極3と、中間層9、反射層5を介した信号用電気端子7とは電気的に接続することができるが、中間層9が電気的に絶縁体、若しくは半導体のような場合には、中間層9の周囲に又は中間層9に複数個の貫通孔を設けて、銅や金の導体をメッキや蒸着又はスパッタリングなどの方法で設けることにより、圧電部1の信号電極3と、中間層9、反射層5を介した信号用電気端子7とを電気的に接続してもよい。
【0077】
ここで、中間層9の音響インピーダンスに変化させる方法の手段の一例として、複数種類の材料を用いた複合体について、以下に説明する。タングステン金属フィルムとエポキシ樹脂の複合体を考えた時、それぞれの音響インピーダンスは、タングステンが約104[MRayls]、エポキシ樹脂が約3[MRayls]であり、これらの複合体は、体積比率を変化させることにより、音響インピーダンスは約3から約104[MRayls]の範囲で任意に変化させることが可能であり、
図5、
図6に示すように、周波数特性を任意に変化させることができる。タングステンの体積比率が高い、つまり音響インピーダンスが大きい領域は圧電部1のY軸方向の中心部に設け、端部に行くに従いエポキシ樹脂の体積比率を高くしていくことにより音響インピーダンスを小さくするように配置する。たとえば、タングステン厚み0.025波長(10[MHz]の周波数では、音速約6460[m/s]であるから、0.0136[mm]の厚みとなる)を有したものをエッチング、レーザー加工などの方法にて、空孔率が圧電部1のY軸方向の端部に向かって大きくなるよう空孔を設けたものを、圧電部1と反射層5との間に設け、そこにエポキシ接着剤などで接着することで、空孔にも接着剤が入り接着されることで上記複合体の中間層9の構成にすることができる。
【0078】
また、予め、タングステンフィルムに空孔を設けるように加工した後、エポキシ樹脂を空孔に充填して、所望の厚みに加工して、その後圧電部1と反射層5とをエポキシ樹脂で接着して設ける方法でもよい。
【0079】
図5、
図6に示す特性において、中間層9の厚みは、均一としているが、この厚みは圧電部1のY軸方向の中心部は薄く、端部に行くにしたがって厚くして連続的に、若しくは段階的に傾斜させても、また逆の厚みにしてもよい。
【0080】
また、本実施の形態の音響マッチング層6は、それぞれほぼ均一の厚みに設けている構成の場合について説明しているが、このほか、圧電部1のY軸方向の中心部の高い周波数特性を有する場合と、端部に行くにしたがって低周波数にシフトするにしたがって、それぞれの周波数に合わせて厚みを変化させてもよい。
【0081】
なお、圧電部1と反射層5との間に設ける中間層9は、圧電部1のY軸方向の中心部で音響インピーダンスが大きく、端部に行くに従い音響インピーダンスを小さくした構成について説明したが、このほか、
図4に示すように、圧電部1のY軸方向の中心部のある幅は音響インピーダンスが一定で、そこから端部に行くに従い音響インピーダンスが小さくなるように変化させる構成においても同様な効果が得られる。
【0082】
なお、圧電部1と反射層5との音響インピーダンスが、Y軸方向に一定の値を有し、圧電部1と反射層5との間に設ける中間層9は、圧電部1のY軸方向の中心部で音響インピーダンスが大きく、端部に行くに従い音響インピーダンスを小さくした構成について説明したが、このほか、中間層9は、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に、音響インピーダンスが連続的、段階的、規則的又は不規則的に小さくする構成においても同様の効果が得られる。
【0083】
また、圧電部1又は反射層5の音響インピーダンスは、圧電部1のY軸方向の中心部から端部まで一様な値を有する構成について説明したが、このほか、圧電部1、反射層5又はその両方は、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に、音響インピーダンスが連続的、段階的、規則的又は不規則的に変化させた構成においても同様の効果が得られる。
【0084】
以上、本実施の形態によれば、超音波探触子10は、超音波を送受信する複数の圧電素子1aが配列された圧電部1と、圧電部1の背面側に設けられたバッキング4と、圧電部1とバッキング4との間に配置され、圧電部1の音響インピーダンスより大きい音響インピーダンスを有する反射層5と、圧電部1と反射層5との間に配置された中間層9と、を備える。中間層9は、複数の圧電素子1aの配列方向(X軸方向)と直交するY軸方向の圧電部1の中心部の超音波の周波数を端部の超音波の周波数よりも高くする。具体的には、中間層9は、Y軸方向の中心部から端部の方向へ向かって、超音波の周波数を低くする。
【0085】
このような構成にすることにより、従来のように圧電素子、反射層を曲面に加工することもないため、構成を簡単にでき、容易に作成することができるとともに、品質の高い超音波探触子10を得ることができる。
【0086】
さらに、圧電部1のY軸方向の中心部において、高周波数の応答を得、端部に行くに従い高周波数から低周波数にシフトし、圧電部1端部においては、中心部より低周波数の応答を得ることができるとともに、開口の大きさを周波数に対して逆比例に変化させて、焦点深度の深い近距離から遠距離まで細い超音波のビーム径が得られ、超音波探触子10、超音波診断装置100を高分解能化できる。
【0087】
また、中間層9は、反射層5の音響インピーダンスと同等又はそれ以下の音響インピーダンスの値を有し、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に、連続的、段階的、規則的又は不規則的に音響インピーダンスを小さくする。このため、音響インピーダンスを変化することにより、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に、(超音波の)周波数を容易に小さく変化させることができる。
【0088】
また、中間層9は、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に、均一の厚みとする。このため、超音波探触子10の構成を簡単にでき、容易に作成できる。
【0089】
また、中間層9は、反射層5の音響インピーダンスと同等又はそれ以下の音響インピーダンスの値を有した第1の材料と、第1の材料より小さい音響インピーダンスを有する第2の材料との複合体とし、圧電部1のY軸方向の中心部で第1の材料の体積比が大きく、端部に行くに従い、第1の材料の体積比が小さい。このため、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に、(超音波の)周波数を容易かつ確実に小さく変化させることができる。
【0090】
また、中間層9は、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に、連続的、段階的、規則的又は不規則的に、超音波の周波数を高い周波数から低い周波数に変化する。このため、中間層9の様々な態様で、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に、周波数を容易かつ確実に小さく変化させることができる。
【0091】
また、超音波探触子10は、圧電部1から被検体の方向に1層以上(4層)の第1の音響マッチング層6a、第2の音響マッチング層6b、第3の音響マッチング層6c、第4の音響マッチング層6dを設ける。第1の音響マッチング層6a、第2の音響マッチング層6b、第3の音響マッチング層6c、第4の音響マッチング層6dは、均一の厚みを有する。このため、超音波探触子10を広帯域化でき、音響マッチング層6の構成を簡単にできる。
【0092】
また、超音波診断装置100は、超音波探触子10と、超音波探触子10から入力された受信信号に基づいて超音波画像データを生成する画像生成部18と、を備える。このため、簡単な構成で、周波数帯域を広くできるとともに、近距離から遠距離まで高い分解能の超音波診断装置100を実現できる。
【0093】
(第2の実施の形態)
図7~
図11を参照して、本発明に係る第2の実施の形態を説明する。なお、本実施形態は、第1の実施形態で説明した
図3に示す構成と基本的には同じであるので、
図3を参照しながら説明する。
図7は、本実施の形態の超音波探触子10の中間層9の厚みを変化させたときの周波数特性を示す図である。
図8は、本実施の形態の超音波探触子10の中間層9の厚みを変化させたときの中心周波数fcの関係を示す図である。
【0094】
図7は、圧電部1と反射層5との間に設ける中間層9に、圧電部1及び反射層5の音響インピーダンスより小さい値の3[MRayls]を有した材料を使用して、その厚みを変えた時の周波数特性の計算結果を示す。
図7には、中間層9の厚みを0から0.02波長に変化させたときの横軸の周波数[MHz]に対する縦軸の超音波探触子10の感度[dB]の結果を示す。なお計算は、第1の実施の形態で示した方法と表Iの仕様で、中間層9の厚みに変化を持たせて計算した結果を示している。
【0095】
また、
図8は、横軸の
図7に対応する中間層9の厚みと、縦軸の
図7の結果に基づいて算出した-6dBでの中心周波数fc[MHz]との関係を示す。
図8には、中間層9の音響インピーダンスを10、30[MRayls]とした時の結果も併せて示す。
【0096】
図7に示すように、中間層9の厚みが薄い、つまり図では、0又は0.004波長厚みで極めて薄い場合には、高周波数域まで周波数を有した広帯域特性になっているが、中間層9の厚みが厚くなる(0.006波長から0.02波長)にしたがって、高周波数域がカットされて低周波数域にシフトしていく周波数特性となっている。
図7の周波数特性から中心周波数fcを算出した結果を示している
図8においても、中間層9の厚みが厚くなるに従い低周波数域にシフトしていく傾向となっている。これは、
図8に示しているように、中間層9の音響インピーダンスが10、30[MRayls]になっても周波数がシフトする傾向がある。ただし、音響インピーダンスが大きい30[MRayls]の中間層9では厚みと周波数との変化は小さくなる傾向であるが、まだ効果はある。これら中間層9の厚みに変化を持たせて周波数を変化させる構成では、中間層9の音響インピーダンスは、反射層5の音響インピーダンスより小さい値を有するものであれば効果がある。
【0097】
図8から想定できるように、圧電部1、反射層5の音響インピーダンスに対して、中間層9の音響インピーダンスが小さい、つまりその比が大きくなることによって、中間層9の厚みに対する中心周波数fcの変化が大きくなる傾向がある。この傾向を有効に活かすための具体的な材料の一例としては、音響インピーダンス約3[MRayls]を有するエポキシ樹脂がある。さらに、これより小さい音響インピーダンスの値の材料を用いれば、少しの厚みの変化で周波数特性を大きく変化させることができる。エポキシ樹脂以外の材料としては、エポキシ樹脂に、種々の粉体、金属、金属酸化物若しくは金属炭化物を充填した複合体、又は、高分子材料、低融点のインジウム、錫金属若しくはそのほかの合金などがある。中間層9の材料としては、反射層5の音響インピーダンスより小さい値を有するものであれば、これらに限定するものではない。
【0098】
また、圧電部1又は反射層5の音響インピーダンスは、圧電部1のY軸方向の中心部から端部まで一様な値を有する構成について説明したが、このほか、圧電部1、反射層5又はその両方は、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に、音響インピーダンスが連続的、段階的、規則的又は不規則的に変化させた構成においても同様の効果が得られる。
【0099】
図7、
図8の中間層9の厚みが変わることにより、周波数特性が変化することを利用して、本実施の形態は、圧電部1のY軸方向の中心部は中間層9を薄くし、端部に行くにしたがって厚くすることによって、圧電部1の中心部領域において、高周波数の応答を得ることができ、端部にいくに従い、高周波数から低周波数にシフトしていき、圧電部1の端部においては、中心部より低周波数の応答を得ることができるとともに、開口の大きさを周波数に対して逆比例に変化させて、焦点深度の深い近距離から遠距離まで細い超音波のビーム径が得られるため、高分解能化できる。
【0100】
圧電部1と反射層5との間に設けた中間層9の厚みを可変した一例の構成を
図9(a)、
図9(b)、
図9(c)に示す。
図9(a)は、圧電部1と反射層5と中間層9との一例を示す断面図である。
図9(b)は、圧電部1と反射層5と中間層9との別の一例を示す断面図である。
図9(c)は、圧電部1と反射層5と中間層9とのさらに別の一例を示す断面図である。
【0101】
図9(a)の中間層9の厚みを変化させる構成は、圧電部1及び反射層5の両方に傾斜を持たせている。中間層9の厚みは、圧電部1のY軸方向の中心部は最も薄く、端部に行くにしたがって厚くなるように傾斜させている。なお、圧電部1及び反射層5の厚みに傾斜させて中間層9の厚みを傾斜させているが、このほか、圧電部1又は反射層5を傾斜させない構成であっても、中間層9の厚みに傾斜させる構成であれば、これに限定させるものではない。
【0102】
また、
図9(b)の中間層9の厚みを変化させる構成は、圧電部1にX軸方向に延在する複数の溝を設け、その溝の深さ(凹凸の深さ)は、Y軸方向の中心部は浅く、端部に行くにしたがって深くする。また、反射層5、又は、圧電部1及び反射層5に複数の溝を設け、その溝の深さ(凹凸の深さ)は、Y軸方向の中心部は浅く、端部に行くにしたがって深くする構成でもよい。または、圧電部1、反射層5又はその両方に、表面の粗さに変化を持たせる構成としてもよい。つまり、圧電部1のY軸方向の中心部の凹凸の深さ又は表面粗さは小さく、端部に行くにしたがって、深く又は粗くして、圧電部1と反射層5との間に設ける中間層9は、凹凸の深さ、表面粗さに従って埋め込み又は接着することにより、厚みに変化を持たせて圧電部1のY軸方向の中心部から端部に行くにしたがって、連続的又は段階的に厚くなるような構成にしている。
【0103】
また、
図9(c)の中間層9の厚みを変化させる構成は、圧電部1及び反射層5に規則的又は不規則的に段階的に厚みを変化させているため、その間に設ける中間層9は圧電部1のY軸方向の中心部の厚みは薄く、端部にいくにしたがって
厚くなるような構成にしている。また、圧電部1又は反射層5に、規則的又は不規則的に段階的に厚みを変化させ、中間層9が圧電部1のY軸方向の中心部の厚みは薄く、端部にいくにしたがって
厚くなるような構成としてもよい。
【0104】
以上のような構成にすることにより、圧電部1のY軸方向の中心部において、高周波数の応答を得ることができ、端部にいくに従い、高周波数から低周波数にシフトしていき、圧電部1の端部においては、中心部より低周波数の応答を得ることができるとともに、開口の大きさを周波数に対して逆比例に変化させて、焦点深度の深い近距離から遠距離まで細い超音波のビーム径が得られるため、高分解能化できる。
【0105】
図10(a)は、本実施の形態の超音波探触子10の圧電部1と中間層9との厚みの関係を示す図である。
図10(b)は、ハイドロフォンで受信した超音波探触子10の周波数特性を示す図である。
図11(a)は、本実施の形態の超音波探触子10で測定したビームパターンの結果を示す図である。
図11(b)は、比較例のビームパターンの結果を示す図である。
図10(a)~
図11(b)において、超音波探触子10を試作し、圧電部1のY軸方向の中心部から端部に行くにしたがって周波数を高周波数から低周波数域に変化させたときの超音波ビームのパターンを測定した結果を示している。
【0106】
試作した超音波探触子10の仕様は、第1の実施の形態の表Iに示した構成の10[MHz]の中心周波数であり、圧電部1の幅(
図3のY軸方向の長さ)は4.6[mm]にして、音響レンズは、焦点距離が約20[mm]になるように曲率半径を設定した。圧電部1と反射層5との間に設ける中間層9は、音響インピーダンスが約3[MRayls]を有するエポキシ樹脂を用いた。
【0107】
図10(a)において、横軸は圧電部1のY軸方向(短軸)の幅[mm]、縦軸はエポキシ樹脂を用いた中間層9の厚み[mm]を示し、圧電部1のY軸方向の中心部から両側に約1.1[mm]の領域は、中間層9の厚みは、0に近い0.5[μm](中心周波数fcが10[MHz]では0.002波長に相当)以下の厚みにして、そこから両端に行くにしたがって、中間層9を厚くし、端部では6[μm](中心周波数fcが10[MHz]では0.024波長に相当)にした。なお、本構成は、
図9(a)に近いが、中間層9の厚みを傾斜させるために、反射層5を加工して傾斜させ、圧電部1は、均一の厚みにしている。
【0108】
図10(b)において、中間層9の厚みを傾斜させて作成した超音波探触子10を、
図10(a)に示す各位置A,B,C,D,Eに、超音波探触子10の周波数帯を包含する特性を有するインパルスの駆動波形で送信した超音波を受信するハイドロフォンを近距離に設置して、受信波形を測定したときの横軸の周波数[Hz]に対する縦軸の超音波探触子10の感度[dB]の各周波数特性の結果を示す。中間層9の厚みの変化に応じて周波数特性が、高周波数域から低周波数域に変化していることが確認できる。
図10(b)において、各周波数特性の中心周波数fcは、位置Aでは10.8[MHz]、位置Bでは10.3[MHz]、位置Cでは9.3[MHz]、位置Dでは8.0[MHz]、位置Eでは6.8[MHz]となっており、圧電部1のY軸方向の中心部の中心周波数fcが高周波数域を有し、端部に行くにしたがって、低周波数域にシフトしており、圧電部1の位置によって中間層9の厚みを変えたことにより、周波数が変化している結果となっている。
【0109】
このように圧電部1のY軸方向の中心部から端部にかけて、周波数特性が変化している超音波探触子10を、深さに対して超音波ビームを測定した結果を
図11(a)に示す。
図11において、横軸は測定深さ[mm]、縦軸は各深さのビームプロファイルにおいて、-3dB,-6dB,-12dBのビーム幅[mm]を示している。なお、この時の測定条件は、超音波探触子10をハイドロフォンの回転中心に設置して、水中下で各深さにハイドロフォンを角度0.2度ステップで走査してハイドロフォンで波形を受信し測定している。
【0110】
図11(b)は、超音波探触子の比較例であり、圧電部の幅が4.6[mm]で中間層は、0に近い0.5[μm]以下の均一の厚みでY軸方向の中心部から端部まで周波数特性の変化がない、いわゆる従来の構成の超音波探触子を測定した超音波ビームパターンの結果である。また、
図11(a)は、本実施の形態の
図10(a)、
図10(b)の周波数特性に変化させた構成の超音波探触子10を測定した超音波ビームパターンの結果である。
【0111】
比較例(従来構成)の
図11(b)の超音波ビームパターンから-3dB,-6dB,-12dBのレベルで最もビーム幅が狭くなっている距離、つまり焦点距離は20[mm]となっており、それぞれのビーム幅は、0.61[mm]、0.97[mm]、1.8[mm]であった。一方、本実施の形態構成の
図11(a)の超音波ビームパターンから-3dB,-6dB,-12dBで最もビーム幅が狭くなっている距離、つまり焦点距離はそれぞれ18[mm]、18[mm]、20[mm]となっており、それぞれのビーム幅は、0.82[mm]、1.3[mm]、2.2[mm]であった。焦点距離でのビーム幅は、比較例(従来構成)の方が本実施形態より狭くなっているが、確かにこの深さ付近だけは、比較例のほうが分解能は高くなるが、その前後の深さ及び全体の深さで比較すると明らかのように、本実施の形態の構成が全領域にわたり均一にビームは狭くなっており、広い領域の深さにおいて、超音波画像の分解能が高くなる。ビーム幅の評価法について、以下に説明する。
【0112】
また、広い深さ領域で超音波ビームが絞られているかどうかを評価する手法として焦点深度がある。これは、焦点距離でのビーム幅に対して、その数倍になる距離はどれくらいかで評価する方法である。この方法で、
図11(a)と
図11(b)との結果を評価してみる。今回は最も狭くなっているビーム幅に対して、ビーム幅が1.5倍になる前後の距離とその範囲を評価した。
【0113】
図11(b)の比較例の超音波探触子の結果では、-3dBは14[mm]から28[mm]となり、その範囲は14[mm]となり、-6dBでも14[mm]から28[mm]となりその範囲は、14[mm]となっている。一方、本実施の形態の構成の
図11(a)の超音波探触子10の結果は、-3dBは11[mm]から31[mm]となり、その範囲は20[mm]となり、-6dBでは11[mm]から34[mm]となりその範囲は、23[mm]となっている。これらの結果から、比較例の構成に対して本実施の形態の超音波探触子10は、1.4~1.6倍の深さで超音波ビームが広がらないで絞られているという結果であり、超音波ビームが広い範囲で絞られているということが確認できている。
【0114】
以上のように、
図11(a)と
図11(b)とを比較すると、明らかのように、本実施の形態の圧電部1のY軸方向の中心部から端部まで周波数特性に変化させた
図11(a)の超音波探触子10のほうが、深さ方向で近距離から遠距離までビームの広がりが少なくなっており、広い範囲で高分解能の画像が得られる。
【0115】
なお、圧電部1と反射層5との間に設ける中間層9は、圧電部1のY軸方向の中心部領域の約50%は厚みを薄く均一にし、そこから端部にかけて厚くする構成にしたが、中間層9の厚みに傾斜を持たせるのは、これに限定するものではなく、任意の領域で厚みを変化させても同様の効果が得られる。
【0116】
以上、本実施の形態によれば、中間層9は、反射層5の音響インピーダンスの値より小さい値を有し、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に厚みを厚くする。
【0117】
このため、中間層9の厚みを変化することにより、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に、(超音波の)周波数を容易に小さく変化させることができる。圧電部1のY軸方向の中心部において、高周波数の応答を得、端部にいくに従い高周波数から低周波数にシフトし、圧電部1の端部においては、中心部より低周波数の応答を得ることができるとともに、開口の大きさを周波数に対して逆比例に変化させて、焦点深度の深い近距離から遠距離まで細い超音波のビーム径が得られ、超音波探触子10、超音波診断装置100を高分解能化できる。
【0118】
また、中間層9の厚みは、少なくとも圧電部1又は反射層5を傾斜させて、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に、連続的、段階的、規則的又は不規則的に厚くする。このため、中間層9の様々な態様で、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に、(超音波の)周波数を容易に小さく変化させることができる。
【0119】
また、圧電部1、反射層5又はその両方を、圧電部1のY軸方向の中心部は厚く、端部に行くに従い薄くする。中間層9は、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に、少なくとも連続的に又は段階的に厚みを厚くする。このため、圧電部1、反射層5、中間層9の様々な態様で、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に、(超音波の)周波数を容易に小さく変化させることができる。
【0120】
また、圧電部1、反射層5又はその両方に複数の溝を設ける。前記溝の深さは、Y軸方向の中心部は浅く、端部に行くに従い深くする。このため、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に、(超音波の)周波数を容易かつ確実に小さく変化させることができる。
【0121】
また、中間層9の厚みは、少なくとも圧電部1又は反射層5に、凹凸又は表面粗さに変化を持たせ、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に連続的、段階的、規則的又は不規則的に厚くする。圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に、(超音波の)周波数を容易かつ確実に小さく変化させることができる。
【0122】
(第3の実施の形態)
図12~
図13を参照して、本発明に係る第3の実施の形態を説明する。
図12は、本実施の形態の超音波探触子10の中間層9の音速を変化させたときの周波数特性を示す図である。
図13は、本実施の形態の超音波探触子10の中間層9の音速を変化させたときの中心周波数fcの関係を示す図である。
【0123】
本実施の形態では、装置構成として、第1の実施の形態の超音波診断装置100を用いるものとするが、超音波探触子10を
図3に示す超音波探触子10に代えた構成とする。超音波診断装置100において、第1、第2の実施の形態と同じ構成部分には、同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0124】
図12は、中間層9の厚みを0.025波長、音響インピーダンスを6[MRayls]に設定し、中間層9の音速の値を1000から7000[m/s]の範囲で変化させたときの横軸の周波数[MHz]に対する縦軸の超音波探触子10の感度[dB]の周波数特性の変化を示している。
【0125】
また
図13は、
図12の各周波数特性から算出した-6dBにおける中心周波数fcと音速との変化を示す。横軸は中間層9の音速[m/s]、縦軸は中心周波数fc[MHz]を示す。なお、
図12、
図13は、第1の実施の形態で示した方法と表Iの仕様で、中間層の音速に変化を持たせて計算した結果を示している。
【0126】
図12、
図13において、中間層9の音速が速い場合には、高周波数まで有した周波数特性を有し、中間層9の音速が遅くなるに従い、低周波数にシフトしていく周波数特性となっている。
【0127】
図13から、中間層9の音速が遅い1000[m/s]の中心周波数fcは約8[MHz]となっており、音速が速くなっていくと高くなり、音速が速い7000[m/s]での中心周波数fcは、約10[MHz]となっていることがわかる。
【0128】
中間層9の音速を変化させる手段の一例として、音速の違う複数種類の材料を用いることで可能となり、ここでは中間層9のY軸方向の領域を第1の領域~第4の領域の4段階に分けて圧電部1のY軸方向の中心部から端部に向けて音速を低下させる構成について、以下に説明する。
【0129】
圧電部1のY軸方向の中心部に位置する第1の領域には、音速が6500[m/s]以上の材料を設ける。例えば以下の材料が挙げられる。10520[m/s]を有するアルミナ、13060[m/s]を有するシリコンカーバイド、6700[m/s]を有するタングステンカーバイドなどの酸化物、炭化物及び窒化物のセラミックス、並びに8430[m/s]を有するシリコンなどである。次の第1の領域の隣に位置する第2の領域には、音速が4500から6500[m/s]の範囲を有する材料を設ける。例えば以下の材料が挙げられる。6100[m/s]を有するチタン、5700[m/s]前後を有するステンレス鋼、などの金属材料、又は、約5500[m/s]を有する快削性セラミックスなどがある。次に第2の領域の隣に位置する第3の領域には、音速が3000から4500[m/s]の範囲を有する材料を設ける。例えば以下の材料が挙げられる。3240[m/s]を有するDFP-1C(Poco Graphite, Inc.社)などのグラファイト系の材料、及びエポキシ樹脂に、シリコンカーバイドなどの炭化物又はアルミナなどの酸化物の粉体を充填することにより、上記音速が達成できる複合材料などがある。次に第3の領域の隣、つまり圧電部1のY軸方向の端部に位置する第4の領域には、音速が1000から3000[m/s]の範囲を有する材料を設ける。例えば以下の材料が挙げられる。1000[m/s]前後のシリコーンゴム、2000[m/s]前後を有するウレタンゴム、又は2500[m/s]前後を有するエポキシ樹脂などの材料を設ける。
【0130】
このように、圧電部1の幅方向(
図3のY軸方向)に、音速を4段階に変えた材料の間隔は、等間隔でも間隔を変えてもよく、圧電部1の中心部領域に設ける中間層9の音速は最も速く、端部にいくにしたがって遅くなるように配置することにより、周波数に変化を持たせることができる。なお、中間層9の4段階の材料の厚みは均一でも不均一でもよく、周波数が変化するように調整できれば、厚みは限定するものではない。
【0131】
また、前記説明では、圧電部1のY軸方向に中間層9の音速を4段階に分けた構成について説明したが、分割数はこれに限定するものではない。また連続的に音速を可変できるものであってもよい。
【0132】
また、中間層9の音速を変化させる手段のほかの一例として以下に説明する。中間層9を少なくとも2種類の音速の速い材料と音速の遅い材料との複合体にして、その体積比率をY軸方向の複数の領域で変化させることにより、音速を可変することができる。以下の例として挙げる複合体の構成は、音速の速い材料と遅い材料とを交互に配列して、その体積比率を変化させる場合についての説明であるが、複合体の構成は、これに限定されるものでない。
【0133】
圧電部1のY軸方向の中心部領域には、中間層9として音速の速い材料の体積比率を高くして音速の速い領域を設け、圧電部1の端部にいくにしたがって、音速の遅い材料の体積比率を徐々に大きくしていくことによって、音速が遅い領域を設けることが可能となる。例えば、音速の速い材料としてチタン酸バリウムセラミックスの音速は5450[m/s]、また音速の遅い材料としてエポキシ樹脂の音速は2500[m/s]の2種類の材料を用い、チタン酸バリウムセラミックスの体積比率75%、50%、25%に変化させると音速はそれぞれ、4760[m/s]、4450[m/s]、3930[m/s]と変化する。このように、音速の違う材料の体積比率を変化させることにより、音速を可変することが可能となり、中間層9は、圧電部1のY軸方向の中心部から端部にいくにしたがって音速を連続的に又は段階的に変化させることができる。なお、上記に挙げた材料以外にも、音速の違う材料の組み合わせであれば、これら材料に限定されるものではないことは理解された。
【0134】
このように、中間層9の音速を変化させる、つまり、圧電部1のY軸方向の中心部には音速が速い中間層9を設け、端部に行くにしたがって、中間層9の音速が遅くなるような構成にすることにより、圧電部1の中心部は高周波数域を有した周波数特性、端部に行くにしたがって低周波数成分を有した周波数特性の超音波を送信、受信できることになる。したがって、第1、第2の実施の形態と同様の機能を有することができるため、焦点深度の深い近距離から遠距離まで細い超音波のビーム径が得られるため、高分解能化できる。
【0135】
なお、圧電部1と反射層5との間に設ける中間層9は、均一の厚みにして、圧電部1のY軸方向の中心部は音速が速く、端部に行くに従い音速を遅くした構成について説明したが、このほか、中間層9の厚みは不均一の厚みにした構成においても同様の効果が得られる。
【0136】
なお、圧電部1と反射層5との間に設ける中間層9は、圧電部1のY軸方向の中心部は音速が速く、端部に行くに従い徐々に音速を遅くした構成について説明したが、このほか、中間層9の音速は、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に、音速が段階的、規則的又は不規則的に遅くする構成においても同様の効果が得られる。
【0137】
また、圧電部1又は反射層5の音響インピーダンスは、圧電部1のY軸方向の中心部から端部まで一様な値を有する構成について説明したが、このほか、圧電部1、反射層5又はその両方は、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に、音響インピーダンスが連続的、段階的、規則的又は不規則的に変化させた構成においても同様の効果が得られる。
【0138】
以上、本実施の形態によれば、中間層9の音速は、圧電部1のY軸方向の中心部から端部の方向に、連続的、段階的、規則的又は不規則的に遅くする。
【0139】
このため、圧電部1のY軸方向の中心部において、高周波数の応答を得、端部に行くに従い高周波数から低周波数にシフトし、圧電部1端部においては、中心部より低周波数の応答を得ることができるとともに、開口の大きさを周波数に対して逆比例に変化させて、焦点深度の深い近距離から遠距離まで細い超音波のビーム径が得られ、超音波探触子10、超音波診断装置100を高分解能化できる。
【0140】
なお、上記各実施の形態における記述は、本発明に係る好適な超音波探触子及び超音波診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。例えば、上記各実施の形態の少なくとも2つを適宜組み合わせる構成としてもよい。
【0141】
また、以上の各実施の形態における超音波診断装置100を構成する各部の細部構成及び細部動作に関して本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0142】
100 超音波診断装置
10,40 超音波探触子
1 圧電部
1a,41 圧電素子
2 接地電極
3 信号電極
4,44 バッキング
5 反射層
6,46 音響マッチング層
6a 第1の音響マッチング層
6b 第2の音響マッチング層
6c 第3の音響マッチング層
6d 第4の音響マッチング層
7 信号用電気端子
8 音響レンズ
9 中間層
14 ケーブル
11 本体部
13 表示部
15 操作入力部
16 送信部
17 受信部
18 画像生成部
19 画像処理部
20 DSC
21 制御部
12 コネクター部