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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】動力伝達切替装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/32 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
F16H61/32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020088889
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021183849
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】粂 幹根
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-253150(JP,A)
【文献】特開平7-158725(JP,A)
【文献】特開2015-81665(JP,A)
【文献】特開平7-81448(JP,A)
【文献】特開2009-287624(JP,A)
【文献】特開2016-23764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の谷部(211、212)および前記谷部間を隔てる山部(215)が形成されモータ(10)により駆動される回転部材(21)、ならびに、動力伝達状態に応じた前記谷部に係合する係合部材(26)を有し、車両に搭載された動力伝達切替システム(1)において、前記モータの駆動を制御することで動力伝達状態を切り替える動力伝達切替装置であって、
前記車両の傾斜状態を判定する傾斜判定部(53)と、
前記モータの駆動を制御する駆動制御部(55)と、
を備え、
前記駆動制御部は、
前記車両が平坦路にあると判定された場合、前記係合部材が前記谷部から前記山部へ上り始めた後、前記係合部材が前記山部の頂点に到達する手前側であって、負荷トルクのピークを越えたと判定された場合、前記山部に到達したときに減速後目標速度となるように前記モータの回転速度を減速させる減速制御を行い、
前記車両が平坦路にないと判定された場合、前記負荷トルクのピークを越えても前記減速制御を行わずに制御を継続する動力伝達切替装置。
【請求項2】
前記駆動制御部は、前記減速制御にて前記係合部材が前記山部の頂点を乗り越えたと判定された場合、前記モータへの通電をオフにする請求項1に記載の動力伝達切替装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、前記減速制御にて前記係合部材が前記山部の頂点を乗り越えたと判定された場合、山上り時とは逆方向のトルクが発生するように前記モータを駆動した後、前記モータの通電をオフにする請求項1に記載の動力伝達切替装置。
【請求項4】
前記山部の数が2以上の場合、
前記駆動制御部は、前記車両が平坦路にあると判定された場合、前記係合部材が前記谷部から前記山部の頂点に向かう山上り時において、全ての前記山部で前記減速制御を行う請求項1~のいずれか一項に記載の動力伝達切替装置。
【請求項5】
前記動力伝達切替システムは、シフトレンジ切替システムであって、前記山部の数が2以上の場合、
前記駆動制御部は、前記車両が平坦路にあると判定された場合、前記係合部材が前記谷部から前記山部の頂点に向かう山上り時において、Pレンジに対応する前記谷部とRレンジに対応する前記谷部とを隔てる前記山部であるP-R間山部にて前記減速制御を行い、前記P-R間山部以外の前記山部にて前記減速制御を行わない請求項1~のいずれか一項に記載の動力伝達切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータの駆動を制御することでシフトレンジを切り替えるシフトレンジ制御装置が知られている。例えば特許文献1では、空走状態であると判断された場合、モータの電流を制限することで、衝撃音を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-198250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、出力軸センサの検出値に基づき、空走判定を行っている。出力軸センサをアクチュエータであるモータとディテント機構との間に設けると、アクチュエータの搭載性が悪化する。また、アクチュエータ内部に出力軸センサを一体に設ける場合、アクチュエータの構造が複雑化する。さらにまた、出力軸と出力軸センサとの間の連結部の劣化や温度特性、摩耗等により出力軸センサの検出精度が悪化すると、適切に空走判定ができず、電流制限が遅れると、レンジ切替時の衝撃音を低減できない虞がある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、動力伝達状態切替時の衝撃音を低減可能な動力伝達切替装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の動力伝達切替装置は、複数の谷部(211、212)および谷部間を隔てる山部(215)が形成され、モータ(10)により駆動される回転部材(21)、ならびに、動力伝達状態に応じた谷部に係合する係合部材(26)を有し、車両に搭載された動力伝達切替システム(1)において、モータの駆動を制御することで動力伝達状態を切り替えるものであって、傾斜判定部(53)と、駆動制御部(55)と、を備える。傾斜状態判定部は、車両の傾斜状態を判定する。駆動制御部は、モータの駆動を制御する。駆動制御部は、車両が平坦路にあると判定された場合、係合部材が谷部から山部へ上り始めた後、係合部材が山部の頂点に到達する手前側であって、負荷トルクのピークを越えたと判定された場合、山部に到達したときに減速後目標速度となるようにモータの回転速度を減速させる減速制御を行う。車両が平坦路にないと判定された場合、負荷トルクのピークを越えても減速制御を行わずに制御を継続する。これにより、レンジ切替時の衝撃音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態によるシフトバイワイヤシステムを示す斜視図である。
図2】第1実施形態によるシフトバイワイヤシステムを示す概略構成図である。
図3】第1実施形態によるレンジ切替処理を説明するフローチャートである。
図4】第1実施形態による傾斜路でのレンジ切替処理を説明するタイムチャートである。
図5】第1実施形態による平坦路でのレンジ切替処理を説明するタイムチャートである。
図6】第2実施形態によるレンジ切替処理を説明するフローチャートである。
図7】第2実施形態による平坦路でのレンジ切替処理を説明するタイムチャートである。
図8】第3実施形態によるレンジ切替処理を説明するフローチャートである。
図9】第3実施形態による平坦路でのレンジ切替処理を説明するタイムチャートである。
図10】第4実施形態による傾斜路でのレンジ切替処理を説明するタイムチャートである。
図11】第4実施形態による平坦路でのレンジ切替処理を説明するタイムチャートである。
図12】第5実施形態による平坦路でのレンジ切替処理を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明による動力伝達切替装置を図面に基づいて説明する。以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0009】
(第1実施形態)
第1実施形態による動力伝達切替装置を図1図5に示す。図1および図2に示すように、動力伝達切替システムであるシフトバイワイヤシステム1は、アクチュエータであるモータ10、シフトレンジ切替機構20、パーキングロック機構30、および、動力伝達切替装置としてのシフトレンジ制御装置40等を備える。
【0010】
モータ10は、図示しない車両に搭載されるバッテリから電力が供給されることで回転し、シフトレンジ切替機構20の駆動源として機能する。本実施形態のモータ10は、例えばスイッチトリラクタンスモータであって、いずれも図示しないステータに巻回されるモータ巻線を有する。
【0011】
図2に示すように、回転角センサであるエンコーダ13は、モータ10の図示しないロータの回転位置を検出する。エンコーダ13は、例えば磁気式のロータリーエンコーダであって、ロータと一体に回転する磁石と、磁気検出用のホールIC等により構成される。エンコーダ13は、ロータの回転に同期して、所定の角度ごとにパルス信号であるエンコーダ信号を出力する。
【0012】
減速機14は、モータ10のモータ軸と出力軸15との間に設けられ、モータ10の回転を減速して出力軸15に出力する。これにより、モータ10の回転がシフトレンジ切替機構20に伝達される。本実施形態では、出力軸15の角度を検出する出力軸センサが省略されている。出力軸センサを省略することで、他の部品の搭載スペースを確保しやすくなり、構成を簡素化可能である。
【0013】
図1に示すように、シフトレンジ切替機構20は、ディテントプレート21、および、ディテントスプリング25等を有し、減速機14から出力された回転駆動力を、マニュアルバルブ28、および、パーキングロック機構30へ伝達する。
【0014】
ディテントプレート21は、出力軸15に固定され、モータ10により駆動される。ディテントプレート21には、出力軸15と平行に突出するピン24が設けられる。ピン24は、マニュアルバルブ28と接続される。ディテントプレート21がモータ10によって駆動されることで、マニュアルバルブ28は軸方向に往復移動する。すなわち、シフトレンジ切替機構20は、モータ10の回転運動を直線運動に変換してマニュアルバルブ28に伝達する。マニュアルバルブ28は、バルブボディ29に設けられる。マニュアルバルブ28が軸方向に往復移動することで、図示しない油圧クラッチへの油圧供給路が切り替えられ、油圧クラッチの係合状態が切り替わることでシフトレンジが変更される。
【0015】
ディテントプレート21のディテントスプリング25側には、2つの谷部211、212が設けられる。2つの谷部211、212の間には、谷部211、212を隔てる山部215が形成される。ディテントスプリング25は、弾性変形可能な板状部材であり、先端にディテントローラ26が設けられる。ディテントスプリング25は、ディテントローラ26をディテントプレート21の回動中心側に付勢する。ディテントプレート21に所定以上の回転力が加わると、ディテントスプリング25が弾性変形し、ディテントローラ26が谷部間を移動する。ディテントローラ26が谷部211、212のいずれかに嵌まり込むことで、ディテントプレート21の揺動が規制され、マニュアルバルブ28の軸方向位置、および、パーキングロック機構30の状態が決定され、自動変速機5のシフトレンジが固定される。以下、Pレンジに対応する谷部211を「P谷」、notPレンジに対応する谷部212を「notP谷」という。
【0016】
パーキングロック機構30は、パーキングロッド31、円錐体32、パーキングロックポール33、軸部34、および、パーキングギア35を有する。パーキングロッド31は、略L字形状に形成され、一端311側がディテントプレート21に固定される。パーキングロッド31の他端312側には、円錐体32が設けられる。円錐体32は、他端312側にいくほど縮径するように形成される。ディテントローラ26がPレンジに対応する谷部211に嵌まり込む方向にディテントプレート21が回転すると、円錐体32が矢印Pの方向に移動する。
【0017】
パーキングロックポール33は、円錐体32の円錐面と当接し、軸部34を中心に揺動可能に設けられる。パーキングロックポール33のパーキングギア35側には、パーキングギア35と噛み合い可能な凸部331が設けられる。ディテントプレート21の回転により、円錐体32が矢印P方向に移動すると、パーキングロックポール33が押し上げられ、凸部331とパーキングギア35とが噛み合う。一方、円錐体32が矢印NotP方向に移動すると、凸部331とパーキングギア35との噛み合いが解除される。
【0018】
パーキングギア35は、図示しない車軸に設けられ、パーキングロックポール33の凸部331と噛み合い可能に設けられる。パーキングギア35と凸部331とが噛み合うと、車軸の回転が規制される。シフトレンジがP以外のレンジであるNotPレンジのとき、パーキングギア35はパーキングロックポール33によりロックされず、車軸の回転は、パーキングロック機構30により妨げられない。また、シフトレンジがPレンジのとき、パーキングギア35はパーキングロックポール33によってロックされ、車軸の回転が規制される。
【0019】
図2に示すように、シフトレンジ制御装置40は、駆動回路41、および、制御部50等を備える。駆動回路41は、図示しないスイッチング素子を有し、モータ10の各相への通電を切り替える。駆動回路41とバッテリとの間には、モータリレー46が設けられる。モータリレー46は、イグニッションスイッチ等である車両の始動スイッチがオンされているときにオンされ、モータ10側へ電力が供給される。また、モータリレー46をオフすることで、モータ10側への電力の供給が遮断される。
【0020】
制御部50は、マイコン等を主体として構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、RAM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。制御部50における各処理は、ROM等の実体的なメモリ装置(すなわち、読み出し可能非一時的有形記録媒体)に予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理であってもよいし、専用の電子回路によるハードウェア処理であってもよい。
【0021】
制御部50は、ドライバ要求シフトレンジ、ブレーキスイッチからの信号および車速等に基づいてモータ10の駆動を制御することで、シフトレンジの切り替えを制御する。また、制御部50は、車速、アクセル開度、および、ドライバ要求シフトレンジ等に基づき、変速用油圧制御ソレノイド6の駆動を制御する。変速用油圧制御ソレノイド6を制御することで、変速段が制御される。変速用油圧制御ソレノイド6は、変速段数等に応じた本数が設けられる。本実施形態では、1つの制御部50がモータ10およびソレノイド6の駆動を制御するが、モータ10を制御するモータ制御用のモータECUと、ソレノイド制御用のAT-ECUとを分けてもよい。以下、モータ10の駆動制御を中心に説明する。
【0022】
制御部50は、機能ブロックとして、角度演算部51、速度演算部52、傾斜判定部53、および、駆動制御部55等を有する。角度演算部51は、エンコーダ13から出力されるエンコーダ信号の各相のパルスエッジをカウントし、エンコーダカウント値θenを演算する。速度演算部52は、エンコーダカウント値θenに基づき、モータ10の回転数N[rpm]を演算する。エンコーダカウント値θenはモータ10の回転位置に応じた値であって、「モータ角度」に対応し、回転数Nが「回転速度」に対応する。
【0023】
傾斜判定部53は、図示しない車両の傾斜角θsを検出する傾斜角センサ19の検出値に基づき、車両の傾斜状態を検出する。傾斜角θsの絶対値が傾斜判定値より小さい場合、車両は平坦路にあると判定し、傾斜角θsの絶対値が傾斜判定値以上の場合、車両が傾斜している、と判定する。なお、傾斜角センサ19の検出値は、例えば上位ECU等の他の制御部から取得してもよいし、傾斜角センサ19の検出値に替えて、傾斜状態の判定結果を取得するようにしてもよい。
【0024】
駆動制御部55は、エンコーダカウント値θenが目標シフトレンジに応じて設定される目標カウント値θcmdとなるように、モータ10の駆動を制御する。詳細には、駆動制御部55は、各相指令を生成して駆動回路41に出力することで、スイッチング素子のオンオフ作動を制御する。
【0025】
本実施形態では、モータ10の回転軸であるモータ軸と出力軸15との間には、減速機14が設けられており、減速機14と出力軸15との間のギアバックラッシュを含む「遊び」が存在している。この遊びの範囲内では、モータ軸が略無負荷状態で回転する空走状態となる。空走状態から、減速機14のギア内面と出力軸15とがぶつかると、衝撃音が発生する。例えば、ディテントローラ26がディテントプレート21の山部を乗り越えるとき、モータ軸が先行し切替方向側に遊びが詰まっている状態から、ディテントスプリング25の付勢力により出力軸15が先行し切替方向と逆側に遊びが詰まる状態に切り替わるとき、モータ軸が遊びの内部で空走し、衝撃音が発生する虞がある。特に、遊びが大きく、モータ10が高速で空走している場合、衝撃音が大きくなる虞がある。
【0026】
例えば、出力軸15の回転位置を検出する出力軸センサが設けられている場合、出力軸センサの検出値に基づいて空走状態を判定し、空走状態と判定された場合、モータ10の電流を制限することで、衝撃音を低減することが考えられる。しかしながら、経年劣化や摩耗、温度特性等により出力軸センサの検出精度が悪化し、空走状態を適切に判定できず、電流制限のタイミングが遅れると、衝撃音を低減できない虞がある。また、出力軸センサが設けられていない場合、出力軸センサの検出値に基づく空走判定ができない。
【0027】
また、車両が傾斜状態にあるとき、車両のずり下がり防止のため、レンジ切替の応答性を高くしておく必要がある。一方、車両が平坦路であれば、レンジ切替速度を低くしても、車両のずり下がりは生じない。そこで本実施形態では、車両が平坦路である場合、ディテントローラ26がディテントプレート21の山部を乗り越えるときのモータ回転速度を下げることで、衝撃音を低減させる。
【0028】
本実施形態のレンジ切替処理を図3のフローチャートに基づいて説明する。この処理は、この処理は、制御部50にて所定の周期で実行される。以下、ステップS101の「ステップ」を省略し、単に記号「S」と記す。他のステップも同様である。
【0029】
S101では、制御部50は、シフトレンジの切替要求があるか否か判断する。シフトレンジの切替要求がないと判断された場合(S101:NO)、S102以降の処理をスキップする。シフトレンジの切替要求があると判断された場合(S101:YES)、モータ10の駆動を開始し、S102へ移行する。
【0030】
S102では、傾斜判定部53は、車両の傾斜状態を判定し、車両が平坦路にあるか否かを判断する。車両が平坦路にないと判断された場合(S102:NO)、S107へ移行する。車両が平坦路にあると判断された場合(S102:YES)、S103へ移行する。
【0031】
S103では、制御部50は、谷から動き始めたディテントローラ26が負荷トルクのピークを越えたか否か判断する。ここでは、モータ10の駆動開始からのエンコーダカウント値θenのカウント数が、減速開始判定値θthを超えた場合、負荷トルクのピークを越えたと判定する。減速開始判定値θthは、ディテントプレート21の形状等に応じて設定される。また、減速開始判定値θthは、駆動方向等に応じて異なる値に設定されていてもよい。ディテントローラ26が負荷トルクのピークを越えていないと判断された場合(S103:NO)、減速制御を開始せず、モータ10の駆動を継続する。ディテントローラ26が負荷トルクのピークを越えたと判断された場合(S103:YES)、S104へ移行する。
【0032】
S104では、駆動制御部55は、減速制御を行う。減速制御では、ディテントローラ26が山部を通過するときに、イナーシャにて山部を乗り越えることが可能な減速後目標速度となるように、モータ10を減速する。
【0033】
S105では、制御部50は、ディテントローラ26が山部215の頂点を通過したか否かを判断する。ここでは、エンコーダカウント値θenに基づいて判定する。ディテントローラ26が山部215の頂点を通過していないと判断された場合(S105:NO)、S104へ戻り、減速制御を継続する。ディテントローラ26が山部215の頂点を通過したと判断された場合(S105:YES)、S106へ移行し、モータ10への通電をオフにする。ディテントローラ26がイナーシャで山部を乗り越えれば、通電をオフにしても、ディテントローラ26は、ディテントスプリング25の付勢力にて、谷部に落とし込まれる。
【0034】
車両が平坦路にないと判断された場合(S102:NO)、すなわち車両が傾斜路にある場合に移行するS107では、制御部50は、モータ10の通常制御を継続する。換言すると、車両が傾斜している場合には、応答性を優先し、S104の減速制御を行わない。
【0035】
S108では、制御部50は、ディテントローラ26が目標位置に到達したか否か判断する。ここでは、エンコーダカウント値が目標カウント値θcmdを含む所定範囲内(例えば±2カウント)となった場合、ディテントローラ26が目標位置に到達したと判定する。ディテントローラ26が目標位置に到達していないと判断された場合(S108:NO)、それまでのモータ10の制御を継続する。ディテントローラ26が目標位置に到達したと判定された場合(S108:YES)、S109へ移行する。
【0036】
S109では、駆動制御部55は、モータ10を停止させる停止制御を行う。停止制御は、例えばエンコーダカウント値θenに応じた2相への通電を継続する固定相通電とする。停止制御が完了すると、モータ10への通電をオフする。
【0037】
本実施形態のレンジ切替処理を図4および図5のタイムチャートに基づいて説明する。図4および図5では、上段からエンコーダカウント値θen、モータ回転数、モータ通電状態、ディテント負荷特性を示している。ここでは、PレンジからnotPレンジへの切り替えを例に説明する。また、ディテントローラ26がP谷の最底部にあるときのエンコーダカウント値をθ0、ディテント負荷トルクがピークとなるエンコーダカウント値をθ1、山部の頂点のエンコーダカウント値をθ2とする。後述の実施形態に係るタイムチャートも同様である。
【0038】
図4は、車両が傾斜路にある場合の例である。時刻x10にて、レンジ切替要求があると、モータ10の駆動を開始する。エンコーダカウント値θenがディテント負荷トルクの頂点である値θ1となる時刻x11までは、モータ10を加速させる。また、時刻x11以降は、通常制御にてモータ10を駆動し、減速制御は行わない。なお、時刻x11以降の通常制御については、説明の簡略化のため、モータ10が一定速度で回転するものとして記載したが、適宜、公知の制御としても差し支えない。後述の図10も同様である。
【0039】
時刻x12にて、ディテントローラ26が山部215の頂点を乗り越えると、ディテント負荷特性が正から負となる。このとき、モータ軸が先行して出力軸15を押し上げている状態から、出力軸15が先行する状態となるため、遊びの内部でモータ軸が移動することで、衝撃音が発生する虞がある。車両が傾斜路にある場合、特にP入れ時において、レンジ切り替えが遅れると、車両のずり下がりが生じる虞があるため、音の低減よりも応答性を優先し、山上り中の減速制御は行わない。
【0040】
ディテントローラ26が山下り中である時刻x13では、ディテントローラ26をNotP谷で停止させるべく、モータ10を減速させる。エンコーダカウント値θenが目標カウント値θcmdを含む所定範囲となる時刻x14にて、停止制御を行い、停止制御開始から停止制御継続時間が経過した時刻x15にて、モータ10への通電をオフにする。
【0041】
図5は、車両が平坦路にある場合の例である。時刻x20から時刻x21までの処理は、図4中の時刻x10から時刻x11までの処理と同様である。時刻x21にて、ディテント負荷トルクのピークを越えた後は、時刻x22にてディテントローラ26が山部215の頂点に到達したときのモータ回転数が減速後目標回転数Npとなるように、モータ10を減速させる。減速後目標回転数Npは、ディテントローラ26が、イナーシャにて山部を乗り越えられる程度の値に設定される。
【0042】
時刻x22にて、ディテントローラ26が山部215に到達すると、モータ10への通電をオフにする。ディテントローラ26が山部215をイナーシャにて乗り越えれば、モータ10への通電をオフにしても、ディテントスプリング25の付勢力にて、notP谷に落とし込まれ、時刻x23にてディテントローラ26がnotP谷の最底部にて停止する。
【0043】
本実施形態では、山部215を乗り越えるときのモータ速度を可及的小さくしているので、山上り状態から山下り状態への切り替えに伴う遊び内部でのモータ軸の空走後の衝撃音を抑制することができる。また、山部215の頂点にて、モータ速度が十分に減速されている状態にて通電をオフにし、主にディテントスプリング25の付勢力でディテントローラ26を谷部に落とし込むことで、ディテントローラ26がオーバーシュートすることなくnotP谷にて停止する蓋然性が高い。これにより、停止制御を廃止することができ、消費電力を低減することができる。
【0044】
以上説明したように、シフトレンジ制御装置40は、車両に搭載されたシフトバイワイヤシステム1において、モータ10の駆動を制御することで、動力伝達状態としてのシフトレンジを切り替えるものであって、傾斜判定部53と、駆動制御部55と、を備える。傾斜判定部53は、車両の傾斜状態を判定する。駆動制御部55は、モータ10の駆動を制御する。駆動制御部55は、車両が平坦路にあると判定された場合、車両が傾斜路にあると判定された場合より、シフトレンジ切替時のモータ10の回転速度を低速にする。
【0045】
本実施形態では、傾斜角センサ19の検出値に基づいて車両の傾斜状態を判定し、車両が平坦路であることを検出し、平坦路である場合にモータの回転速度を低速化することで、出力軸センサの検出値を用いることなく、レンジ切替時の衝撃音を低減することができる。また、傾斜路では、モータ回転速度の低速化は行わないので、車両傾斜時の応答性を犠牲にすることがない。これにより、例えばP入れ時の車両のずり下がりを防ぐことができる。
【0046】
また、ディテントスプリング25の荷重を下げたり、アクチュエータ内部や出力軸15の遊び量を低減したりすることなく、レンジ切替時の衝撃音を低減することができる。平坦路において、レンジ切替時のモータ10を低速化することで、ディテント機構の摩耗低減による寿命向上が可能であるとともに、消費電力を低減することができる。
【0047】
シフトバイワイヤシステム1は、ディテントプレート21およびディテントローラ26を有する。ディテントプレート21は、複数の谷部211、212、および、谷部212、212間を隔てる山部215が形成され、モータ10により駆動される。ディテントローラ26は、動力伝達状態に応じた谷部に係合する。
【0048】
駆動制御部55は、車両が平坦路にあると判定された場合、ディテントローラ26が谷部211から山部215へ上り始めた後、ディテントローラ26が山部215に到達したときに減速後目標回転数Npとなるように、モータ10の回転速度を減速させる。減速後目標回転数Npは、イナーシャ等にてディテントローラ26が山部215を乗り越え可能な程度に設定される。これにより、ディテントローラ26が山部215を乗り越え可能、かつ、可及的低速にすることができるので、レンジ切替時の衝撃音を低減することができる。
【0049】
駆動制御部55は、ディテントローラ26が谷部211から山部215へ上り始めた後、負荷トルクのピークに応じて設定される減速開始位置にて減速制御を開始する。これにより、ディテントローラ26が山上り中に停止することなく、適切にレンジ切り替えを行うことができる。
【0050】
駆動制御部55は、減速制御にてディテントローラ26が山部215の頂点を乗り越えたと判定された場合、モータ10への通電をオフにする。これにより、レンジ切替時の消費電力を低減することができる。
【0051】
(第2実施形態)
第2実施形態を図6および図7に示す。第2実施形態および第3実施形態では、レンジ切替処理が上記実施形態と異なっているので、この点を中心に説明する。
【0052】
本実施形態のレンジ切替処理を図6のフローチャートに基づいて説明する。S201~S206の処理は、図3中のS101~S106の処理と同様であって、S202で肯定判断された場合、S203へ移行し、否定判断された場合、S208へ移行する。車両が平坦路であって、S202にて肯定判断された場合、減速制御にてディテントローラ26が山部を通過し、S206にて通電をオフにすると、S207へ移行する。
【0053】
S207では、図3中のS108と同様、制御部50は、ディテントローラ26が目標位置に到達したか否か判断する。ディテントローラ26が目標位置に到達していないと判断された場合(S207:NO)、S206へ戻り、通電オフを継続する。ディテントローラ26が目標位置に到達したと判断された場合(S207:YES)、S210へ移行し、停止制御を行う。S208~S210の処理は、図3中のS107~S109の処理と同様である。
【0054】
平坦路でのレンジ切替処理を図7のタイムチャートに基づいて説明する。時刻x30~時刻x32までの処理は、図5中の時刻x20~時刻x22までの処理と同様であって、減速制御にてディテントローラ26が山部215に到達した時刻x32にて通電をオフする。
【0055】
時刻x33にて、エンコーダカウント値θenが目標カウント値θcmdを含む所定範囲に到達すると、通電オフの状態から、通電をオンにし、停止制御を行う。停止制御開始から停止制御継続時間が経過した時刻x34にて、モータ10への通電をオフにする。
【0056】
本実施形態では、車両の傾斜状態によらず、エンコーダカウント値θenが目標カウント値を含む所定範囲内に到達した場合、停止制御を行う。これにより、モータ10をより確実に停止させることができるので、オーバーシュートにより、ディテントローラ26がnotP谷を越えて壁に当たるのを防ぐことができる。なお、平坦路において、山上り時に減速制御を行う場合、減速制御を行っていない場合と比較し、イナーシャが小さいため、停止制御の通電時間を短くしてもよい。停止制御の通電時間を短くすることで、消費電力を低減することができる。このように構成しても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0057】
(第3実施形態)
第3実施形態を図8および図9に示す。本実施形態のレンジ切替処理を図8のフローチャートに基づいて説明する。S301~S305の処理は、図3中のS101~S105の処理と同様であって、S302で肯定判断された場合、S303へ移行し、否定判断された場合、S309へ移行する。車両が平坦路であって、S302にて肯定判断された場合、減速制御にてディテントローラ26が山部215を通過したと判断された場合(S305:YES)、S306へ移行する。
【0058】
S306では、駆動制御部55は、山上り時と逆向きのトルクが発生するように、モータ10への通電を行う。以下、山上り時とは逆向きのトルクを発生させるようにすることを「逆トルク通電」という。所定カウント数の間、逆トルク通電を行った後、S307へ移行し、通電をオフにし、S308へ移行する。S308~S311の処理は、図6中のS207~S210の処理と同様である。
【0059】
平坦路でのレンジ切替処理を図9のタイムチャートに基づいて説明する。時刻x40~時刻x42の処理は、図5中の時刻x10~時刻x12の処置と同様である。時刻x42にて、減速制御にてディテントローラ26が山部に到達すると、通電オン状態を継続し、逆トルク通電を行う。逆トルク通電開始から、所定カウント数となった時刻x43では、モータ10への通電をオフにする。時刻x44以降の処理は、図7中の時刻x33以降の処理と同様である。なお、第1実施形態のように停止制御を省略してもよい。
【0060】
上記実施形態にて説明したように、ディテントローラ26が山部を乗り越えるとき、モータ軸先行状態から出力軸先行状態に切り替わることで、モータ軸が遊びの範囲内で空走する。このとき、衝撃音が発生する前に逆トルク通電によりモータ10に山上り時と逆向きのトルクを発生させることで、衝撃音をより低減することができる。
【0061】
本実施形態では、駆動制御部55は、減速制御にてディテントローラ26が山部の頂点を乗り越えたと判定された場合、山上り時とは逆方向のトルクが発生するようにモータ10を駆動した後、モータ10の通電をオフにする。これにより、ディテントローラ26や山部を乗り越えるときに、遊びの中でモータ軸が移動することで発生する衝撃音を低減することができる。また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0062】
(第4実施形態)
第4実施形態を図10および図11に示す。本実施形態では、ディテントプレート21の谷部が4つ形成されており、それぞれ、パーキング(P)、リバース(R)、ニュートラル(N)、ドライブ(D)の各レンジに対応している。以下、P、R、N、Dの各レンジに対応する谷部を、それぞれ「P谷」、「R谷」、「N谷」、「D谷」とし、各谷部間を隔てる山部を「P-R山」、「R-N山」、「N-D山」とする。ここでは、PレンジからDレンジへの切り替えを例に説明する。
【0063】
図10は、車両が傾斜路にある場合、時刻x50にて、レンジ切替要求があると、モータ10の駆動を開始する。エンコーダカウント値θenがディテント負荷トルクの頂点である値θ1となる時刻x51までは、モータ10を加速させる。また、時刻x51以降は、通常制御にてモータ10を駆動し、減速制御は行わない。
【0064】
N-D谷を越えた後の時刻x52にて、ディテントローラ26をD谷にて停止させるべく、モータ10を減速させる。エンコーダカウント値θenが目標カウント値θcmdを含む所定範囲内となる時刻x53にて、停止制御を行う。停止制御開始から停止制御継続時間が経過した時刻x54にて、モータ10への通電をオフにする。
【0065】
図11は、車両が平坦路にある場合の例である。時刻x60から時刻x61までの処理は、図10中の時刻x50から時刻x51までの処理と同様である。時刻x61にてディテント負荷トルクのピークを越えた後は、時刻x62にてディテントローラ26が山部の頂点に到達したときのモータ回転数が減速後目標回転数Npとなるように、モータ10を減速させる。
【0066】
時刻x62にて、ディテントローラ26がP-R山の頂点に到達すると、モータ10への通電をオフにする。ディテントローラ26が山部をイナーシャにて乗り越えれば、ディテントスプリング25の付勢力により、ディテントローラ26はR谷に落とし込まれる。
【0067】
ディテントローラ26がR谷に到達した時刻x63にて、再度モータ10への通電をオンにし、時刻x64にてR谷におけるディテント負荷トルクのピークを越えると、R-N山の頂点に到達したときのモータ回転数が減速後目標回転数Npとなるように、モータ10を減速させる。時刻x65にて、ディテントローラ26がR-N山の頂点に到達すると、モータ10への通電をオフにする。ディテントローラ26が山部をイナーシャにて乗り越えれば、ディテントスプリング25の付勢力により、ディテントローラ26はN谷に落とし込まれる。
【0068】
ディテントローラ26がN谷に到達した時刻x66にて、再度モータ10への通電をオンにし、時刻x67にてN谷におけるディテント負荷トルクのピークを越えると、N-D山の頂点に到達したときのモータ回転数が減速後目標回転数Npとなるように、モータ10を減速させる。時刻x68にて、ディテントローラ26がN-D山の頂点に到達すると、モータ10への通電をオフにする。ディテントローラ26が山部をイナーシャにて乗り越えれば、ディテントスプリング25の付勢力により、ディテントローラ26はD谷に落とし込まれて停止する。
【0069】
減速後目標回転数Npは、ディテントプレートの形状等に応じ、山部ごとに異なる値に設定してもよい。また、図11では、第1実施形態のように、山部を越えると通電をオフにしているが、第3実施形態のように、逆トルク通電の後に通電をオフにしてもよい。また、第2実施形態のように、ディテントローラ26が目標位置に到達したときに、停止制御を行うようにしてもよい。第5実施形態も同様である。
【0070】
ディテントプレート21の山部の数が2以上(本実施形態では3)の場合、駆動制御部55は、車両が平坦路にあると判定された場合、ディテントローラ26が谷部から山部の頂点に向かう山上り時において、全ての山部で減速制御を行う。これにより、レンジ切替時の衝撃音を低減することができる。また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0071】
(第5実施形態)
第5実施形態を図12に示す。第4実施形態では、全ての山上りにて、ディテント負荷トルクのピークでの減速制御、および、山部の頂点での通電オフを行っている。本実施形態では、ディテント負荷トルクが最も大きく、衝撃音が大きくなりやすいP-R間の山上り時に減速制御および通電オフを行い、R-N間、および、N-D間の山上り時は、傾斜路と同様の通常制御とする。すなわち、時刻x70から時刻x73までの処理は図11と同様であり、時刻x73以降の処理は図10と同様である。
【0072】
ディテントプレート21の山部の数が2以上(本実施形態では3)の場合、駆動制御部55は、車両が平坦路にあると判定された場合、ディテントローラ26が谷部から山部の頂点に向かう山上り時において、P-R間山部にて減速制御を行い、P-R間山部以外の山部にて減速制御を行わない。
【0073】
例えば、P-R間の山部が他の山部より大きく、山を乗り越える負荷が大きい場合、山部を乗り越える際の衝撃音が、他の山部を乗り越えるときよりも大きくなる虞がある。そこで本実施形態では、P-R間の山部の山上り時に減速制御を行い、その他の山上り時には減速制御を行わない。これにより、応答性を確保しつつ、レンジ切替時の衝撃音を低減することができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0074】
実施形態において、シフトバイワイヤシステム1が「動力伝達切替システム」および「シフトレンジ切替システム」に対応し、シフトレンジ制御装置40が「動力伝達切替装置」に対応する。また、ディテントプレート21が「回転部材」、ディテントローラ26が「係合部材」に対応する。また、モータ回転数Nが「モータの回転速度」、減速後目標回転数Npが「減速後目標回転速度」、シフトレンジを切り替えることが「動力伝達状態を切り替えること」に対応し、シフトレンジ切替時が「動力伝達状態切替時」に対応する。ここで、実施形態では、動力伝達切替システムは、シフトレンジ切替システムであるが、広義には、例えばハイブリッド車両における駆動源の切り替え等を含む動力伝達状態を切り替えるシステムであってもよい。
【0075】
(他の実施形態)
上記実施形態では、回転角センサとしてエンコーダを用いる。他の実施形態では、回転角センサは、ロータの回転位置を検出可能なものであればよく、例えばレゾルバ等のリニアセンサであってもよい。上記実施形態では、出力軸センサが省略されている。他の実施形態では、例えばポテンショメータ等の出力軸センサが設けられていてもよい。
【0076】
上記実施形態では、モータは、スイッチトリラクタンスモータである。他の実施形態では、モータは、スイッチトリラクタンスモータ以外のもの、例えばDCブラシレスモータ等であってもよい。上記実施形態では、ディテントプレートには2つまたは4つの谷部が設けられる。他の実施形態では、谷部の数は、3または5以上であってもよい。また、シフトレンジ切替機構やパーキングロック機構等は、上記実施形態と異なっていてもよい。また、上記実施形態では、モータ制御装置はシフトレンジ切替システムに適用される。他の実施形態では、モータ制御装置をシフトレンジ切替システム以外の車載システム、または、車載以外のモータ駆動システムに適用してもよい。
【0077】
上記実施形態では、モータ軸と出力軸との間に減速機が設けられる。減速機の詳細について、上記実施形態では言及していないが、例えば、サイクロイド歯車、遊星歯車、モータ軸と略同軸の減速機構から駆動軸へトルクを伝達する平歯歯車を用いたものや、これらを組み合わせて用いたもの等、どのような構成であってもよい。また、他の実施形態では、モータ軸と出力軸との間の減速機を省略してもよいし、減速機以外の機構を設けてもよい。
【0078】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0079】
1・・・シフトバイワイヤシステム(動力伝達切替システム)
10・・・モータ
21・・・ディテントプレート(回転部材)
22・・・ディテントローラ(係合部材)
40・・・シフトレンジ制御装置(動力伝達切替装置)
50・・・制御部
53・・・傾斜判定部
55・・・駆動制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12