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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】生体判定装置および生体判定方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240110BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20240110BHJP
   A61B 5/1171 20160101ALI20240110BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240110BHJP
【FI】
G06T7/00 510F
G06T1/00 340A
G06T7/00 660A
A61B5/1171 200
G03B15/00 Q
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020090358
(22)【出願日】2020-05-25
(65)【公開番号】P2021185458
(43)【公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦部 和哉
【審査官】藤原 敬利
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0114495(US,A1)
【文献】特開2008-262305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06-5/22
G03B 15/00
G06T 1/00
G06T 7/00
G06V 40/00-40/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像された画像から顔を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された顔の領域である顔領域の温度と、前記顔領域の周辺の領域である顔外領域の温度との情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された情報に基づいて、前記顔領域の温度が前記顔外領域の温度よりも所定の閾値以上高い場合に、前記検出された顔が生体であると判定し、前記顔領域の温度が前記顔外領域の温度よりも前記所定の閾値以上高くない場合に、前記検出された顔が生体でないと判定する判定手段と
を有し、
前記検出手段により複数の顔が検出された場合に、前記複数の顔のうち、前記画像を撮像するカメラに目線を向けている顔について、前記取得手段による情報の取得と、前記判定手段による判定とが行われることを特徴とする生体判定装置。
【請求項2】
前記顔領域に基づいて前記顔外領域を設定する設定手段をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の生体判定装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記顔領域を囲む領域を、前記顔外領域として設定する
ことを特徴とする請求項2に記載の生体判定装置。
【請求項4】
前記顔領域は、矩形領域であり、
前記設定手段は、前記顔領域を中心とする、高さと幅がそれぞれ前記顔領域の所定倍となるように前記顔領域を拡大した矩形領域から、前記顔領域を除いた領域を、前記顔外領域として設定する
ことを特徴とする請求項3に記載の生体判定装置。
【請求項5】
前記顔領域は、矩形領域であり、
前記設定手段は、前記顔領域を中心とする、対角線の長さが前記顔領域の所定倍となるように前記顔領域を拡大した矩形領域から、前記顔領域を除いた領域を、前記顔外領域として設定する
ことを特徴とする請求項3に記載の生体判定装置。
【請求項6】
前記顔領域は、円形領域であり、
前記設定手段は、前記顔領域を中心とする、半径が前記顔領域の所定倍となるように前記顔領域を拡大した円形領域から、前記顔領域を除いた領域を、前記顔外領域として設定する
ことを特徴とする請求項3に記載の生体判定装置。
【請求項7】
前記設定手段は、前記顔領域を中心とする、面積が前記顔領域の所定倍となるように前記顔領域を拡大した領域から、前記顔領域を除いた領域を、前記顔外領域として設定することを特徴とする請求項3に記載の生体判定装置。
【請求項8】
前記設定手段は、前記顔領域の左右に位置する2つの領域を、前記顔外領域として設定する
ことを特徴とする請求項2に記載の生体判定装置。
【請求項9】
前記顔領域は、矩形領域であり、
前記設定手段は、前記顔領域を中心とする、前記顔領域を所定倍に拡大した矩形領域から、前記顔領域、前記顔領域の上側の前記顔領域と同じ幅の矩形領域、及び、前記顔領域の下側の前記顔領域と同じ幅の矩形領域を除いて得られる2つの矩形領域を、前記顔外領域として設定する
ことを特徴とする請求項8に記載の生体判定装置。
【請求項10】
前記顔領域の温度は、前記顔領域の複数の位置にそれぞれ対応する複数の温度の平均値、最頻値、または、中央値であり、
前記顔外領域の温度は、前記顔外領域の複数の位置にそれぞれ対応する複数の温度の平均値、最頻値、または、中央値である
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の生体判定装置。
【請求項11】
前記検出手段により複数の顔が検出された場合に、前記画像を撮像するカメラに目線を向けている顔のうち、最も大きい顔について、前記取得手段による情報の取得と、前記判定手段による判定とが行われる
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の生体判定装置。
【請求項12】
前記検出手段により複数の顔が検出された場合に、前記画像を撮像するカメラに目線を向けている顔のうち、前記画像の中心に最も近い顔について、前記取得手段による情報の取得と、前記判定手段による判定とが行われる
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の生体判定装置。
【請求項13】
撮像された画像から顔を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて検出された顔の領域である顔領域の温度と、前記顔領域の周辺の領域である顔外領域の温度との情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得された情報に基づいて、前記顔領域の温度が前記顔外領域の温度よりも所定の閾値以上高い場合に、前記検出された顔が生体であると判定し、前記顔領域の温度が前記顔外領域の温度よりも前記所定の閾値以上高くない場合に、前記検出された顔が生体でないと判定する判定ステップと
を有し、
前記検出ステップにおいて複数の顔が検出された場合に、前記複数の顔のうち、前記画像を撮像するカメラに目線を向けている顔について、前記取得ステップによる情報の取得と、前記判定ステップによる判定とが行われることを特徴とする生体判定方法。
【請求項14】
請求項13に記載の生体判定方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像された顔が、人などの生体のものであるか、写真や映像、人形などの非生体のものであるかを判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
認証技術として、暗証番号やパスワードなどによる認証、ICカードなどの物(認証物)による認証、顔による認証(顔認証)などが知られている。暗証番号やパスワードによる認証では、それらを忘れてしまうと認証ができないし、それらが漏洩して悪用される虞がある。また、認証物による認証では、認証物を持参していなければ認証ができないし、認証物が盗まれて悪用される虞がある。
【0003】
顔認証ではそのような問題は生じないが、写真や、モニタやタブレット端末などの表示デバイスに表示された映像、マネキン人形やろう人形などの人形のような非生体を使ったなりすましにより、顔認証が突破される虞がある。
【0004】
このため、なりすましによる顔認証突破を抑制する様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1では、撮像される顔の周囲に枠が存在するか否かで、当該顔がなりすましか否かを判定する技術が提案されている。特許文献2では、撮像される顔の色変化に基づいて、当該顔がなりすましか否かを判定する技術が提案されている。特許文献3には、撮像される顔までの距離と背景までの距離とに基づいて、当該顔がなりすましか否かを判定する技術が提案されている。特許文献1~3で提案されている技術の他に、撮像される顔がまばたきをするか否かで、当該顔がなりすましか否かを判定する技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-169943号公報
【文献】特許第6544244号公報
【文献】特開2007-241402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
写真や表示デバイスには周囲に枠が存在することが多い。このため、特許文献1で提案されている技術によれば、写真を使ったなりすましによる顔認証突破や、表示デバイスに表示された映像を使ったなりすましによる顔認証突破を抑制できる。しかしながら、人形を使ったなりすましによる顔認証突破は抑制できない。また、顔を撮像した画像に写真や表示デバイスの枠が写るとも限らず、写真や映像を使ったなりすましによる顔認証突破を抑制できない場合もある。
【0007】
写真(静止画)に写っている顔の色や、人形の顔の色は変化しない(それらの顔の色が周囲の光によって変化することはあるが、そのような変化は生態的な変化とは異なる)。このため、特許文献2で提案されている技術によれば、写真や人形を使ったなりすましによる顔認証突破を抑制できる。しかしながら、映像(動画)を使ったなりすましによる顔認証突破は抑制できない。
【0008】
写真に写っている顔までの距離と、写真に写っている背景までの距離とは同等となる(それらの距離は、どちらも写真までの距離である)。同様に、表示デバイスに表示されて
いる顔までの距離と、表示デバイスに表示されている背景までの距離とは同等となる(それらの距離は、どちらも表示デバイスまでの距離である)。このため、特許文献3で提案されている技術によれば、写真を使ったなりすましによる顔認証突破や、表示デバイスに表示された映像を使ったなりすましによる顔認証突破を抑制できる。しかしながら、人形を使ったなりすましによる顔認証突破は抑制できない。
【0009】
写真(静止画)に写っている顔や、マネキン人形やろう人形などの人形は、まばたきをしない。このため、まばたきの有無を判定する従来技術によれば、写真や人形を使ったなりすましによる顔認証突破を抑制できる。しかしながら、映像(動画)を使ったなりすましによる顔認証突破は抑制できない。
【0010】
このように、従来技術では、撮像された顔が、人などの生体のものであるか、写真や映像、人形などの非生体のものであるかを高精度に判定できず、顔認証突破を抑制できない場合がある。
【0011】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、撮像された顔が、人などの生体のものであるか、写真や映像、人形などの非生体のものであるかを高精度に判定でき、ひいては顔認証突破を抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用する。
【0013】
本発明の第一側面は、撮像された画像から顔を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された顔の領域である顔領域の温度と、前記顔領域の周辺の領域である顔外領域の温度との情報を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された情報に基づいて、前記顔領域の温度が前記顔外領域の温度よりも所定の閾値以上高い場合に、前記検出された顔が生体であると判定し、前記顔領域の温度が前記顔外領域の温度よりも前記所定の閾値以上高くない場合に、前記検出された顔が生体でないと判定する判定手段とを有することを特徴とする生体判定装置を提供する。所定の閾値は、ユーザ(生体判定装置の管理者など)が任意に設定できてもよいし、固定値であってもよい。
【0014】
一般的に、生体である顔の温度は顔周辺(背景)の温度よりも或る程度高い。そして、このような温度差は、写真や映像、人形などを使ったなりすましでは生じないと考えられる。具体的には、写真に写っている顔の温度と、写真に写っている背景の温度とは同等となる(それらの温度は、どちらも写真の温度である)。同様に、表示デバイスに表示されている顔の温度と、表示デバイスに表示されている背景の温度とは同等となる(それらの温度は、どちらも表示デバイスの温度である)。そして、人形の顔の温度は、生体である顔の温度とは異なり、顔周辺(背景)の温度に近いことが多く、顔周辺の温度よりも低いこともある。
【0015】
上述した構成によれば、顔領域の温度が顔外領域の温度よりも所定の閾値以上高いか否かを判定基準とすることにより、顔が生体であるか否かを高精度に判定でき、ひいては顔認証突破を抑制できる。具体的には、写真や映像、人形などのいずれを使ったなりすましでも、顔が非生体であると判定でき、顔認証突破を抑制できる。顔の温度のみから顔が生体であるか否かを判定する構成も考えられるが、顔の温度は少なからず顔周辺の温度の影響を受けると考えられる。このため、顔の温度と顔周辺の温度とを用いる構成の方が、顔の温度のみを用いる構成よりも、高精度な生体判定を行える。
【0016】
前記顔領域に基づいて前記顔外領域を設定する設定手段をさらに有するとしてもよく、例えば、前記設定手段は、前記顔領域を囲む領域を、前記顔外領域として設定するとして
もよい。具体的には、前記顔領域は、矩形領域であり、前記設定手段は、前記顔領域を中心とする、高さと幅がそれぞれ前記顔領域の所定倍となるように前記顔領域を拡大した矩形領域から、前記顔領域を除いた領域を、前記顔外領域として設定するとしてもよい。前記顔領域は、矩形領域であり、前記設定手段は、前記顔領域を中心とする、対角線の長さが前記顔領域の所定倍となるように前記顔領域を拡大した矩形領域から、前記顔領域を除いた領域を、前記顔外領域として設定するとしてもよい。前記顔領域は、円形領域であり、前記設定手段は、前記顔領域を中心とする、半径が前記顔領域の所定倍となるように前記顔領域を拡大した円形領域から、前記顔領域を除いた領域を、前記顔外領域として設定するとしてもよい。前記設定手段は、前記顔領域を中心とする、面積が前記顔領域の所定倍となるように前記顔領域を拡大した領域から、前記顔領域を除いた領域を、前記顔外領域として設定するとしてもよい。
【0017】
前記設定手段は、前記顔領域の左右に位置する2つの領域を、前記顔外領域として設定するとしてもよい。具体的には、前記顔領域は、矩形領域であり、前記設定手段は、前記顔領域を中心とする、前記顔領域を所定倍に拡大した矩形領域から、前記顔領域、前記顔領域の上側の前記顔領域と同じ幅の矩形領域、及び、前記顔領域の下側の前記顔領域と同じ幅の矩形領域を除いて得られる2つの矩形領域を、前記顔外領域として設定するとしてもよい。こうすることで、顔外領域から、顔領域の上側にある頭部分や、顔領域の下側にある首部分を除くことができ、顔外領域の温度として、背景の温度により近い温度を用いることができる。その結果、顔が生体であるか否かをより高精度に判定でき、ひいては顔認証をより高精度に行うことができる。具体的には、生体である顔が非生体であると誤判定されることを抑制でき、ひいては生体の顔を使った正しい顔認証の失敗を抑制できる。ここで、顔領域を所定倍に拡大した矩形領域は、顔領域の高さと幅をそれぞれ所定倍に拡大した矩形領域、顔領域の対角線の長さを所定倍に拡大した矩形領域、顔領域の面積を所定倍に拡大した矩形領域のいずれであってもよい。
【0018】
これら各種倍率は特に限定されないが、例えば2~3倍である。これら倍率は、ユーザが任意に設定できてもよいし、固定値であってもよい。
【0019】
前記顔領域の温度は、前記顔領域の複数の位置にそれぞれ対応する複数の温度の平均値、最頻値、または、中央値であり、前記顔外領域の温度は、前記顔外領域の複数の位置にそれぞれ対応する複数の温度の平均値、最頻値、または、中央値であるとしてもよい。こうすることで、顔が生体であるか否かをより高精度に判定でき、ひいては顔認証をより高精度に行うことができる。例えば、顔に付着した物体(例えば顔に装着された眼鏡)などの温度が顔領域の温度として使用されたり、顔周辺の熱源(例えば照明)などの温度が顔外領域の温度として使用されたりすることが無くなる。その結果、生体である顔が非生体であると誤判定されることを抑制でき、ひいては生体の顔を使った正しい顔認証の失敗を抑制できる。
【0020】
前記検出手段により複数の顔が検出された場合に、前記複数の顔のそれぞれについて、前記取得手段による情報の取得と、前記判定手段による判定とが行われるとしてもよい。こうすることで、顔が写ったポスターの前に顔登録者がいる状況や、顔登録者が複数の人物や人形と一緒にいる状況などにおいて、顔登録者が顔認証に失敗することを抑制できる。顔登録者は、顔認証のための顔情報(検出された顔と比較される顔の情報;顔画像など)が登録されている人物である。
【0021】
顔認証を行おうとしている顔登録者はカメラに顔を近づける傾向があり、当該顔登録者の顔は、撮像された画像内で最も大きく写る傾向がある。このため、前記検出手段により複数の顔が検出された場合に、前記複数の顔のうち、最も大きい顔について、前記取得手段による情報の取得と、前記判定手段による判定とが行われるとしてもよい。こうするこ
とでも、顔が写ったポスターの前に顔登録者がいる状況や、顔登録者が複数の人形や人物と一緒にいる状況などにおいて、顔登録者が顔認証に失敗することを抑制できる。さらに、特定の顔に限定して温度情報取得や生体判定が行われるため、処理負荷を低減できる。
【0022】
顔認証を行おうとしている顔登録者はカメラの正面に位置する傾向があり、当該顔登録者の顔は、撮像された画像の中心部に写る傾向がある。このため、前記検出手段により複数の顔が検出された場合に、前記複数の顔のうち、前記画像の中心に最も近い顔について、前記取得手段による情報の取得と、前記判定手段による判定とが行われるとしてもよい。こうすることでも、顔が写ったポスターの前に顔登録者がいる状況や、顔登録者が複数の人形や人物と一緒にいる状況などにおいて、顔登録者が顔認証に失敗することを抑制できる。そして、特定の顔に限定して温度情報取得や生体判定が行われるため、処理負荷を低減できる。
【0023】
顔認証を行おうとしている顔登録者はカメラに目線を向ける傾向がある。このため、前記検出手段により複数の顔が検出された場合に、前記複数の顔のうち、前記画像を撮像するカメラに目線を向けている顔について、前記取得手段による情報の取得と、前記判定手段による判定とが行われるとしてもよい。こうすることでも、顔が写ったポスターの前に顔登録者がいる状況や、顔登録者が複数の人形や人物と一緒にいる状況などにおいて、顔登録者が顔認証に失敗することを抑制できる。そして、特定の顔に限定して温度情報取得や生体判定が行われるため、処理負荷を低減できる。さらに、カメラに目線を向けずにカメラの近くに顔登録者がいるだけで不必要に(顔登録者の意図に反して)顔認証が成功することを抑制でき、顔認証のセキュリティレベルをより向上できる。
【0024】
本発明の第二側面は、撮像された画像から顔を検出する検出ステップと、前記検出ステップにおいて検出された顔の領域である顔領域の温度と、前記顔領域の周辺の領域である顔外領域の温度との情報を取得する取得ステップと、前記取得ステップにおいて取得された情報に基づいて、前記顔領域の温度が前記顔外領域の温度よりも所定の閾値以上高い場合に、前記検出された顔が生体であると判定し、前記顔領域の温度が前記顔外領域の温度よりも前記所定の閾値以上高くない場合に、前記検出された顔が生体でないと判定する判定ステップとを有することを特徴とする生体判定方法を提供する。
【0025】
なお、本発明は、上記構成ないし機能の少なくとも一部を有する生体判定システムとして捉えることができる。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む、生体判定方法又は生体判定システムの制御方法や、これらの方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、又は、そのようなプログラムを非一時的に記録したコンピュータ読取可能な記録媒体として捉えることもできる。上記構成及び処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、撮像された顔が、人などの生体のものであるか、写真や映像、人形などの非生体のものであるかを高精度に判定でき、ひいては顔認証突破を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明が適用された生体判定装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るカメラの構成例を示すブロック図である。
図3図3(A)~3(D)は、本発明の実施形態に係る撮像画像の一例を示す図である。
図4図4(A),4(B)は、本発明の実施形態に係る撮像画像の一例を示す図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係るカメラの処理フロー例を示すフローチャートである。
図6図6は、本発明の実施形態に係る撮像画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<適用例>
本発明の適用例について説明する。従来技術では、撮像された顔が、人などの生体のものであるか、写真や映像、人形などの非生体のものであるかを高精度に判定できず、非生体を使ったなりすましによる顔認証突破を抑制できない場合がある。具体的には、写真に写っている顔や、映像に写っている顔、人形の顔などの少なくともいずれかが、生体のものとして誤判定されるため、そのような非生体を使ったなりすましによる顔認証突破を抑制できない。
【0029】
図1は、本発明が適用された生体判定装置100の構成例を示すブロック図である。生体判定装置100は、顔検出部101、温度情報取得部102、及び、生体判定部103を有する。顔検出部101は、撮像された画像から顔を検出する。温度情報取得部102は、顔検出部101により検出された顔の領域である顔領域の温度と、顔領域の周辺の領域である顔外領域の温度との情報(温度情報)を取得する。生体判定部103は、温度情報取得部102により取得された温度情報に基づいて、顔検出部101により検出された顔が生体であるか否かを判定する。具体的には、生体判定部103は、顔領域の温度が顔外領域の温度よりも所定の閾値以上高い場合に、検出された顔が生体であると判定し、顔領域の温度が顔外領域の温度よりも所定の閾値以上高くない場合に、検出された顔が生体でないと判定する。顔検出部101は本発明の検出手段の一例であり、温度情報取得部102は本発明の取得手段の一例であり、生体判定部103は本発明の判定手段の一例である。
【0030】
一般的に、生体である顔の温度は顔周辺(背景)の温度よりも或る程度高い。そして、このような温度差は、写真や映像、人形などを使ったなりすましでは生じないと考えられる。具体的には、写真に写っている顔の温度と、写真に写っている背景の温度とは同等となる(それらの温度は、どちらも写真の温度である)。同様に、表示デバイスに表示されている顔の温度と、表示デバイスに表示されている背景の温度とは同等となる(それらの温度は、どちらも表示デバイスの温度である)。そして、人形の顔の温度は、生体である顔の温度とは異なり、顔周辺(背景)の温度に近いことが多く、顔周辺の温度よりも低いこともある。
【0031】
生体判定装置100の上記構成によれば、顔領域の温度が顔外領域の温度よりも所定の閾値以上高いか否かを判定基準とすることにより、顔が生体であるか否かを高精度に判定でき、ひいては顔認証突破を抑制できる。具体的には、写真や映像、人形などのいずれを使ったなりすましでも、顔が非生体であると判定でき、顔認証突破を抑制できる。顔の温度のみから顔が生体であるか否かを判定する構成も考えられるが、顔の温度は少なからず顔周辺の温度の影響を受けると考えられる。このため、顔の温度と顔周辺の温度とを用いる構成の方が、顔の温度のみを用いる構成よりも、高精度な生体判定を行える。
【0032】
<実施形態>
本発明の実施形態について説明する。
【0033】
図2は、本実施形態に係るカメラ200(生体判定装置;顔認証装置)の構成例を示すブロック図である。カメラ200は、撮像部210、温度測定部220、制御部230、及び、記憶部240を有する。制御部230は、顔検出部231、領域設定部232、温度情報取得部233、生体判定部234、及び、顔認証部235を有する。
【0034】
撮像部210は例えばCCDやCMOSセンサなどのイメージセンサであり、撮像を行い、撮像結果(撮像した画像)を制御部230(顔検出部231)へ出力する。
【0035】
温度測定部220は例えばサーマルセンサなどであり、各位置の温度を測定し、測定結果(温度分布の情報;各位置の温度を示す情報)を制御部230(温度情報取得部233)へ出力する。温度測定部220は、例えば、撮像部210により撮像される範囲の各位置の温度を測定する。
【0036】
制御部230は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などを含み、各構成要素の制御や、各種情報処理などを行う。
【0037】
顔検出部231は、撮像部210により撮像された画像から顔を検出し、検出結果を領域設定部232と顔認証部235へ出力する。顔検出部231は、本発明の検出手段の一例である。なお、顔検出にはどのようなアルゴリズムを用いてもよい。例えば、既存の顔検出により顔を検出してもよく、具体的にはHoGやHaar-likeなどの画像特徴とブースティングを組み合わせた検出器を用いて顔を検出してもよい。既存の機械学習により生成された学習済みモデルを用いて顔を検出してもよく、具体的にはディープラーニング(例えば、R-CNN、Fast R-CNN、YOLO、SSDなど)により生成された学習済みモデルを用いて顔を検出してもよい。
【0038】
領域設定部232は、顔検出部231の検出結果(具体的には、顔検出部231により検出された顔の領域である顔領域)に基づいて、顔領域の周辺の領域である顔外領域を設定する。そして、領域設定部232は、顔領域と顔外領域の情報(領域情報)を温度情報取得部233へ出力する。領域設定部232は、本発明の設定手段の一例である。
【0039】
顔外領域の設定方法は特に限定されないが、例えば、領域設定部232は、図3(A)~3(D),4(A),4(B)に示すように顔外領域を設定する。図3(A)~3(D),4(A),4(B)は、撮像部210により撮像された画像の一例を示す。
【0040】
図3(A)は、顔領域が矩形領域である場合の例を示し、領域設定部232が顔領域の高さH1と幅W1に基づいて顔外領域を設定する例を示す。図3(A)では、顔領域を中心とする、高さH2と幅W2がそれぞれ顔領域の所定倍(倍率M1)となるように顔領域を拡大した矩形領域から、顔領域を除いた領域が、顔外領域として設定されている。つまり、顔領域を中心とする、高さH2=H1×M1且つ幅W2=W1×M1の矩形領域から、顔領域を除いた領域が、顔外領域として設定されている。
【0041】
図3(B)は、顔領域が矩形領域である場合の例を示し、領域設定部232が顔領域の対角線の長さL1に基づいて顔外領域を設定する例を示す。図3(B)では、顔領域を中心とする、対角線の長さL2が顔領域の所定倍(倍率M2)となるように顔領域を拡大した矩形領域から、顔領域を除いた領域が、顔外領域として設定されている。つまり、顔領域を中心とする、対角線の長さL2=L1×M2の矩形領域から、顔領域を除いた領域が、顔外領域として設定されている。
【0042】
図4(A)は、顔領域が円形領域である場合の例を示し、領域設定部232が顔領域の半径R1に基づいて顔外領域を設定する例を示す。図4(A)では、顔領域を中心とする、半径R2が顔領域の所定倍(倍率M3)となるように顔領域を拡大した円形領域から、顔領域を除いた領域が、顔外領域として設定されている。つまり、顔領域を中心とする、半径R2=R1×M3の円形領域から、顔領域を除いた領域が、顔外領域として設定され
ている。
【0043】
図3(C),4(B)は、領域設定部232が顔領域の面積A1に基づいて顔外領域を設定する例を示す。図3(C),4(B)では、顔領域を中心とする、面積A2が顔領域の所定倍(倍率M4)となるように顔領域を拡大した領域から、顔領域を除いた領域が、顔外領域として設定されている。顔領域が矩形領域である図3(C)では、顔領域を中心とする、高さH3=H1×(M41/2)M1且つ幅W3=W1×(M41/2)の矩形領域から、顔領域を除いた領域が、顔外領域として設定されている。顔領域が円形領域である図4(B)では、顔領域を中心とする、半径R3=R1×(M41/2)の円形領域から、顔領域を除いた領域が、顔外領域として設定されている。
【0044】
図3(A)~3(C),4(A),4(B)には、顔領域を囲む領域を、顔外領域として設定する例を示した。しかしながら、そのようにすると、顔外領域に、顔領域の上側にある頭部分や、顔領域の下側にある首部分が含まれ、頭部分や首部分の温度が顔外領域の温度に影響を及ぼし、顔外領域の温度として、背景の温度からずれた温度が使用されることがある。このため、領域設定部232は、図3(D)に示すように、顔領域の左右に位置する2つの領域を、顔外領域として設定してもよい。
【0045】
図3(D)は、顔領域が矩形領域である場合の例を示し、領域設定部232が顔領域の高さH1と幅W1に基づいて顔外領域を設定する例を示す。図3(D)では、顔領域の左右に隣接する2つの領域が、顔外領域として設定されている。これら2つの領域は、顔領域を中心とする、顔領域を所定倍に拡大した矩形領域から、顔領域、顔領域の上側の当該顔領域と同じ幅W1の矩形領域、及び、顔領域の下側の当該顔領域と同じ幅W1の矩形領域を除いて得られる2つの矩形領域である。図3(D)では、顔領域を所定倍に拡大した矩形領域は、顔領域の高さH1と幅W1を倍率M5で拡大した矩形領域である。したがって、顔領域の右側に隣接する領域も、顔領域の左側に隣接する領域も、高さH4=H1×M5且つ幅W4=(W1×M5-W1)/2の矩形領域となる。
【0046】
こうすることで、顔外領域から頭部分や首部分を除くことができ、顔外領域の温度として、背景の温度により近い温度を用いることができる。その結果、顔が生体であるか否かをより高精度に判定でき、ひいては顔認証をより高精度に行うことができる。具体的には、生体である顔が非生体であると誤判定されることを抑制でき、ひいては生体の顔を使った正しい顔認証の失敗を抑制できる。
【0047】
図3(D)では、顔領域を所定倍に拡大した矩形領域が顔領域の高さと幅を所定倍に拡大した矩形領域である例を示したが、これに限られない。例えば、顔領域を所定倍に拡大した矩形領域は、顔領域の対角線の長さを所定倍に拡大した矩形領域や、顔領域の面積を所定倍に拡大した矩形領域などであってもよい。
【0048】
上述した各種倍率(倍率M1~M5)は特に限定されないが、例えば2~3倍である。これら倍率は、ユーザ(カメラ200の管理者など)が任意に設定できてもよいし、固定値であってもよい。
【0049】
なお、顔外領域は上記領域に限られず、例えば顔領域から離れた領域が顔外領域として設定されてもよいし、3つ以上の領域が顔外領域として設定されてもよい。
【0050】
図2の説明に戻る。温度情報取得部233は、温度測定部220の測定結果(温度分布の情報)と、領域設定部232から出力された領域情報(顔領域と顔外領域の情報)とに基づいて、顔領域の温度と顔外領域の温度との情報(温度情報)を取得する。そして、温度情報取得部233は、温度情報を生体判定部234へ出力する。温度情報取得部233
は、本発明の取得手段の一例である。ここで、顔領域の温度は、顔領域を代表する温度(代表温度)であり、本実施形態では顔領域の平均温度(顔領域の複数の位置にそれぞれ対応する複数の温度の平均値)である。同様に、顔外領域の温度は、顔外領域を代表する温度(代表温度)であり、本実施形態では顔外領域の平均温度(顔外領域の複数の位置にそれぞれ対応する複数の温度の平均値)である。
【0051】
なお、代表温度は平均温度に限られない。例えば、顔領域の温度は、顔領域の複数の位置にそれぞれ対応する複数の温度の最頻値や中央値などであってもよい。顔外領域の温度は、顔外領域の複数の位置にそれぞれ対応する複数の温度の最頻値や中央値などであってもよい。平均値、最頻値、中央値などに相当する代表温度を用いることで、顔が生体であるか否かをより高精度に判定でき、ひいては顔認証をより高精度に行うことができる。例えば、顔に付着した物体(例えば顔に装着された眼鏡)などの温度が顔領域の温度として使用されたり、顔周辺の熱源(例えば照明)などの温度が顔外領域の温度として使用されたりすることが無くなる。その結果、生体である顔が非生体であると誤判定されることを抑制でき、ひいては生体の顔を使った正しい顔認証の失敗を抑制できる。顔領域の代表温度が平均値に相当し、顔外領域の代表温度が最頻値に相当するように、顔領域と顔外領域とで代表温度の定義が異なっていてもよい。
【0052】
生体判定部234は、温度情報取得部233により取得された温度情報に基づいて、顔検出部231により検出された顔が生体であるか否かを判定する。具体的には、生体判定部234は、顔領域の温度が顔外領域の温度よりも所定の閾値以上高い場合に、検出された顔が生体であると判定し、顔領域の温度が顔外領域の温度よりも所定の閾値以上高くない場合に、検出された顔が生体でないと判定する。そして、生体判定部234は、生体判定の結果(検出された顔が生体であるか否かの情報)を顔認証部235へ出力する。生体判定部234は本発明の判定手段の一例である。なお、所定の閾値は、ユーザが任意に設定できてもよいし、固定値であってもよい。
【0053】
顔認証部235は、顔検出部231の検出結果(検出された顔の情報)と、生体判定部234の判定結果(検出された顔が生体であるか否かの情報)とに基づいて、顔認証を行う。具体的には、記憶部240には、顔認証のための顔情報(検出された顔と比較される顔の情報;顔画像など)が登録されている。そして、顔認証部235は、顔検出部231で検出された顔が生体である場合に、以下の処理を行う。1人のみの顔情報が登録可能な場合には、顔認証部235は、検出された顔と記憶部240に登録された顔情報とがマッチするか否かを判定する(マッチング処理)。そして、顔認証部235は、マッチすれば認証成功、マッチしなければ認証失敗とする。複数の人物にそれぞれ対応する複数の顔情報が登録可能な場合には、顔認証部235は、複数の顔情報から、検出された顔をマッチする顔情報を探索する(マッチング処理)。そして、顔認証部235は、マッチする顔情報があれば、当該顔情報に対応する人物での認証成功とし、マッチする顔情報が無ければ、認証失敗とする。また、顔認証部235は、顔検出部231で検出された顔が生体でない場合には、顔検出部231の検出結果に基づく上記マッチング処理を行うことなく、認証失敗とする。
【0054】
なお、マッチング処理にはどのようなアルゴリズムを用いてもよい。例えば、既存のマッチング処理によりマッチするか否かを判定してもよく、具体的にはHoGやHaar-likeなどの画像特徴とブースティングを組み合わせた照合器(認証器)を用いてマッチするか否かを判定してもよい。既存の機械学習により生成された学習済みモデルを用いてマッチするか否かを判定してもよい。具体的にはディープラーニング(例えば、R-CNN、Fast R-CNN、YOLO、SSDなど)により生成された学習済みモデルを用いてマッチするか否かを判定してもよい。
【0055】
記憶部240は、制御部230で実行されるプログラムや、制御部230で使用される各種データなどを記憶する。例えば、記憶部240は、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、等の補助記憶装置である。
【0056】
なお、本実施形態では生体判定装置がカメラ200であるものとするが、生体判定装置はカメラ200とは別体の装置(例えばPC(パーソナルコンピュータ))であってもよい。生体判定装置は、撮像部210の撮像結果(撮像された画像)を取得するインターフェースを有していればよく、撮像部210は生体判定装置とは別体の装置に設けられていてもよい。同様に、生体判定装置は、温度測定部220による測定結果(温度分布の情報)を取得するインターフェースを有していればよく、温度測定部220は生体判定装置とは別体の装置に設けられていてもよい。撮像部210が生体判定装置とは別体の装置に設けられている場合には、生体判定装置と、撮像部210が設けられた装置とは、有線または無線で互いに接続される。同様に、温度測定部220が生体判定装置とは別体の装置に設けられている場合には、生体判定装置と、温度測定部220が設けられた装置とは、有線または無線で互いに接続される。
【0057】
また、生体判定装置の設置場所は特に限定されない。例えば、生体判定装置は、撮像部210や温度測定部220と同じ部屋に設置されてもよいし、そうでなくてもよい。生体判定装置はクラウド上のコンピュータであってもよいし、そうでなくてもよい。また、生体判定の結果は顔認証以外に使用されてもよく、生体判定装置は顔認証部235を有していなくてもよい。
【0058】
図5は、カメラ200の処理フロー例を示すフローチャートである。本実施形態では、カメラ200は、顔認証開始に関する操作に応じて、図5の処理フローを開始するとする。なお、カメラ200は、図5の処理フローを繰り返し実行してもよい。このとき、図5の処理フローの繰り返し周期は特に限定されないが、例えば撮像部210による撮像のフレームレート(30fpsなど)で図5の処理フローが繰り返される。
【0059】
まず、撮像部210は撮像を行う(ステップS501)。そして、顔検出部231は、ステップS501で撮像された画像から顔を検出する(ステップS502)。
【0060】
次に、制御部230は、ステップS502で顔が検出されたか否かを判定する(ステップS503)。顔が検出された場合(ステップS503:YES)には、ステップS504へ処理が進められる。顔が検出されなかった場合(ステップS503:NO)には、カメラ200は、図5の処理フローを終了する。このとき、顔が検出可能に撮像されるように、「顔をカメラに近づけてください」などの通知が行われてもよい。
【0061】
ステップS504では、領域設定部232は、ステップS502で検出された顔領域に基づいて、顔外領域を設定する。顔外領域の設定方法は上述したとおりである。そして、温度測定部220が温度測定を行う(ステップS505)。なお、温度測定のタイミングはこのタイミングに限られず、例えばステップS501と同じタイミングであってもよい。
【0062】
次に、温度情報取得部233は、ステップS505の測定結果に基づいて、ステップS502で検出された顔領域の代表温度T1と、ステップS504で設定された顔外領域の代表温度T2との温度情報を取得する(ステップS506)。例えば、代表温度T1は顔領域の平均温度であり、代表温度T2は顔外領域の平均温度である。
【0063】
そして、生体判定部234は、顔領域の代表温度T1が顔外領域の代表温度T2よりも所定の閾値Th以上高いか否か、つまり条件式T1-T2≧Thが満たされているか否か
を判定する(ステップS507)。代表温度T1が代表温度T2よりも所定の閾値Th以上高い場合、つまり条件式T1-T2≧Thが満たされている場合(ステップS507:YES)には、ステップS508へ処理が進められる。代表温度T1が代表温度T2よりも所定の閾値Th以上高くない場合、つまり条件式T1-T2≧Thが満たされていない場合(ステップS507:NO)には、ステップS509へ処理が進められる。
【0064】
ステップS508では、生体判定部234は、ステップS502で検出された顔が生体であると判定する。そして、ステップS510へ処理が進められる。
【0065】
ステップS509では、生体判定部234は、ステップS502で検出された顔が非生体であると判定する。そして、ステップS513へ処理が進められる。
【0066】
ステップS510では、顔認証部235は、ステップS502の検出結果に基づくマッチング処理を行う。マッチング処理の方法は上述したとおりである。
【0067】
ステップS511では、顔認証部235は、ステップS510のマッチング処理に成功したか否か、つまりステップS502で検出された顔にマッチする顔情報が記憶部240に登録されているか否かを判定する。マッチング処理に成功した場合(ステップS511:YES)、つまり検出された顔にマッチする顔情報が登録されている場合には、ステップS512へ処理が進められる。マッチング処理に失敗した場合(ステップS511:NO)、つまり検出された顔にマッチする顔情報が登録されていない場合には、ステップS513へ処理が進められる。
【0068】
ステップS512では、顔認証部235は、認証成功と判定する。そして、カメラ200は、図5の処理フローを終了する。
【0069】
ステップS513では、顔認証部235は、認証失敗と判定する。そして、カメラ200は、図5の処理フローを終了する。
【0070】
以上述べたように、本実施形態によれば、顔領域の温度が顔外領域の温度よりも所定の閾値以上高いか否かを判定基準とすることにより、顔が生体であるか否かを高精度に判定でき、ひいては顔認証突破を抑制できる。
【0071】
なお、図6に示すように、顔検出部231により複数の顔が検出されることがある。図6は、撮像部210により撮像された画像の一例を示し、図6の画像には人物61~65が写っている。人物61は、顔認証を行おうとしている顔登録者(顔認証のための顔情報が登録されている人物)であり、人物62は、顔認証を行おうとしていない顔登録者であり、人物63~65は、顔登録者でない人物である。この場合には、以下のように処理するとよい。
【0072】
例えば、複数の顔のそれぞれについて、温度情報取得部233による温度情報の取得、生体判定部234による生体判定、及び、顔認証部235による顔認証が行われるようにするとよい。こうすることで、顔が写ったポスターの前に顔登録者がいる状況や、顔登録者が複数の人物や人形と一緒にいる状況(図6の状況)などにおいて、顔登録者が顔認証に失敗することを抑制できる。つまり、顔認証を行おうとしている顔登録者61が問題無く顔認証に成功することができる。但し、顔認証を行おうとしていない顔登録者62まで顔認証に成功してしまうこともある。
【0073】
顔認証を行おうとしている顔登録者はカメラ200に顔を近づける傾向があり、(図6に示すように)当該顔登録者の顔は、撮像された画像内で最も大きく写る傾向がある。こ
のため、複数の顔のうち、最も大きい顔について、温度情報取得部233による温度情報の取得、生体判定部234による生体判定、及び、顔認証部235による顔認証が行われるようにしてもよい。こうすることでも、顔が写ったポスターの前に顔登録者がいる状況や、顔登録者が複数の人物や人形と一緒にいる状況(図6の状況)などにおいて、顔登録者が顔認証に失敗することを抑制できる。つまり、顔認証を行おうとしている顔登録者61が問題無く顔認証に成功することができる。さらに、顔認証を行おうとしていない顔登録者62が顔認証に成功することを抑制でき、顔認証のセキュリティレベルをより向上できる。また、特定の顔に限定して温度情報取得や生体判定、顔認証が行われるため、処理負荷を低減できる。
【0074】
顔認証を行おうとしている顔登録者はカメラ200の正面に位置する傾向があり、(図6に示すように)当該顔登録者の顔は、撮像された画像の中心部に写る傾向がある。このため、複数の顔のうち、画像の中心に最も近い顔について、温度情報取得部233による温度情報の取得、生体判定部234による生体判定、及び、顔認証部235による顔認証が行われるようにしてもよい。こうすることでも、顔が写ったポスターの前に顔登録者がいる状況や、顔登録者が複数の人物や人形と一緒にいる状況(図6の状況)などにおいて、顔登録者が顔認証に失敗することを抑制できる。つまり、顔認証を行おうとしている顔登録者61が問題無く顔認証に成功することができる。さらに、顔認証を行おうとしていない顔登録者62が顔認証に成功することを抑制でき、顔認証のセキュリティレベルをより向上できる。また、特定の顔に限定して温度情報取得や生体判定、顔認証が行われるため、処理負荷を低減できる。
【0075】
顔認証を行おうとしている顔登録者はカメラ200に目線を向ける傾向がある。このため、複数の顔のうち、カメラ200に目線を向けている顔について、温度情報取得部233による温度情報の取得、生体判定部234による生体判定、及び、顔認証部235による顔認証が行われるようにしてもよい。目線は既存の処理により検出すればよい。こうすることでも、顔が写ったポスターの前に顔登録者がいる状況や、顔登録者が複数の人物や人形と一緒にいる状況(図6の状況)などにおいて、顔登録者が顔認証に失敗することを抑制できる。つまり、顔認証を行おうとしている顔登録者61が問題無く顔認証に成功することができる。さらに、カメラ200に目線を向けずにカメラ200の近くに顔登録者がいるだけで不必要に(顔登録者の意図に反して)顔認証が成功することを抑制でき、顔認証のセキュリティレベルをより向上できる。図6では、顔認証を行おうとしていない顔登録者62が顔認証に成功することを抑制できる。また、特定の顔に限定して温度情報取得や生体判定、顔認証が行われるため、処理負荷を低減できる。
【0076】
<その他>
上記実施形態は、本発明の構成例を例示的に説明するものに過ぎない。本発明は上記の具体的な形態には限定されることはなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、複数の顔のうち、複数の条件の全てを満たす顔について、温度情報取得部233による温度情報の取得、生体判定部234による生体判定、及び、顔認証部235による顔認証が行われるようにしてもよい。複数の条件は、例えば、上述した「顔が最も大きい」、「顔が画像の中心に最も近い」、及び、「カメラに目線を向けている」の少なくともいずれかを含む。
【0077】
<付記1>
撮像された画像から顔を検出する検出手段(101,231)と、
前記検出手段により検出された顔の領域である顔領域の温度と、前記顔領域の周辺の領域である顔外領域の温度との情報を取得する取得手段(102,233)と、
前記取得手段により取得された情報に基づいて、前記顔領域の温度が前記顔外領域の温度よりも所定の閾値以上高い場合に、前記検出された顔が生体であると判定し、前記顔領
域の温度が前記顔外領域の温度よりも前記所定の閾値以上高くない場合に、前記検出された顔が生体でないと判定する判定手段(103,234)と
を有することを特徴とする生体判定装置(100,200)。
【0078】
<付記2>
撮像された画像から顔を検出する検出ステップ(S502)と、
前記検出ステップにおいて検出された顔の領域である顔領域の温度と、前記顔領域の周辺の領域である顔外領域の温度との情報を取得する取得ステップ(S506)と、
前記取得ステップにおいて取得された情報に基づいて、前記顔領域の温度が前記顔外領域の温度よりも所定の閾値以上高い場合に、前記検出された顔が生体であると判定し、前記顔領域の温度が前記顔外領域の温度よりも前記所定の閾値以上高くない場合に、前記検出された顔が生体でないと判定する判定ステップ(S507~S509)と
を有することを特徴とする生体判定方法。
【符号の説明】
【0079】
100:生体判定装置
101:顔検出部 102:温度情報取得部 103:生体判定部
200:カメラ
210撮像部 220温度測定部 230制御部 240記憶部
231:顔検出部 232:領域設定部 233:温度情報取得部
234:生体判定部 235:顔認証部
図1
図2
図3
図4
図5
図6