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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】車体構造及びアンテナアンプ組付体
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/22 20060101AFI20240110BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20240110BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20240110BHJP
   H04B 1/08 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01Q1/22 A
F16B5/02 U
H01Q1/32 Z
H04B1/08 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020093602
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2021190803
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晃
(72)【発明者】
【氏名】木村 智幸
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-042377(JP,A)
【文献】特開2012-151691(JP,A)
【文献】特開2010-263515(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147258(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/009512(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
F16B 5/02
H01Q 1/32
H04B 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体ボデーと、前記車体ボデーに固定されたアンテナアンプ組付体とを備え、
前記車体ボデーは、前記アンテナアンプ組付体が固定される固定部と、前記固定部から軸心周りに軸状に突出する一つの係合部と、前記係合部から第1方向で離隔して前記固定部に形成された回転規制部とを有し、
前記アンテナアンプ組付体は、前記係合部と係合する被係合部を有するブラケットと、前記ブラケットに固定され、アンテナと接続される接点を有するアンテナアンプと、前記被係合部から前記第1方向で離隔し、前記回転規制部と嵌合して前記アンテナアンプ組付体が前記軸心周りで回転することを規制する回転被規制部とを有し、
前記固定部と前記ブラケットとの間には、前記ブラケットが前記固定部から離隔する方向に弾性力を有する弾性部材が前記軸心から前記第1方向の一方側に離隔して設けられ、
前記回転規制部及び前記回転被規制部は、前記軸心から前記第1方向の他方側に離隔して配置されていることを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記アンテナアンプは、前記軸心から前記第1方向の他方側に離隔して配置されている請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記軸心と前記弾性部材とがなす第1距離は、前記軸心と前記回転被規制部とがなす第2距離よりも短い請求項1又は2に記載の車体構造。
【請求項4】
前記車体ボデーは前記アンテナアンプ組付体の上方に位置し、前記係合部は下方に突出し、
前記係合部及び前記被係合部の少なくとも一方には、前記係合部と前記被係合部との係合時に前記アンテナアンプ組付体の落下を防止する仮保持手段が設けられている請求項1~3のいずれか1項に記載の車体構造。
【請求項5】
車体ボデーに固定されるアンテナアンプ組付体であって、
前記車体ボデーは、前記アンテナアンプ組付体が固定される固定部と、前記固定部から軸心周りに軸状に突出する一つの係合部と、前記係合部から第1方向で離隔して前記固定部に形成された回転規制部とを有し、
前記係合部と係合する被係合部を有するブラケットと、前記ブラケットに固定され、アンテナと接続される接点を有するアンテナアンプと、前記被係合部から前記第1方向で離隔し、前記回転規制部と嵌合して前記アンテナアンプ組付体が前記軸心周りで回転することを規制する回転被規制部とを有する前記アンテナアンプ組付体であり、
前記ブラケットには、前記ブラケットが前記固定部から離隔する方向に弾性力を有する弾性部材が前記軸心から前記第1方向の一方側に離隔して設けられ、
前記回転被規制部は、前記軸心から前記第1方向の他方側に離隔して配置されていることを特徴とするアンテナアンプ組付体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体構造及びアンテナアンプ組付体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な車両には、電波を受信するためのアンテナが備えられている。車両におけるアンテナとしては、以前はポールアンテナが主流であった。しかし、意匠や収納などの観点から、近年は、車両の外表面に設置されるシャークフィン形状のアンテナ(シャークフィンアンテナ)や、フロントガラス、リアガラスやサイドガラスなどのガラスの表面又は内部に配置されるアンテナ(ガラスアンテナ)が一般的になりつつある。そして、通常、アンテナが設置された車両においては、受信した電波を増幅するための増幅器であるアンテナアンプも設置されている。
【0003】
従来のアンテナアンプの一態様として、車両における車体ボデーの内側に設置されるものがある。かかるアンテナアンプは、ブラケットに固定されており、アンテナアンプ及びブラケットを有するアンテナアンプ組付体として、車体ボデーに固定される。
【0004】
特許文献1には、鉤状の爪と長孔とを有するブラケットと、このブラケットに固定されたアンテナアンプとを備えるアンテナアンプ組付体が記載されている。車体ボデーは、アンテナアンプ組付体が固定される固定部と、係合部としての一つのボルトの軸部と、爪穴とを有している。このアンテナアンプ組付体は、アンテナを一体的に有している。
【0005】
このアンテナアンプ組付体は、固定部に固定され、車体ボデーとともに車体構造を構成する。アンテナアンプ組付体を固定部に固定する作業を行う場合、固定部が車両の上部であれば、作業者又はロボットは、まず爪を車体ボデーの爪穴に嵌合させる。次いで、作業者等は、そのまま車体ボデーのボルトの軸部にブラケットの長孔を挿通する。そして、作業者等はボルトの軸部にナットを螺合し、アンテナアンプ組付体を車体ボデーに固定する。車両では、アンテナアンプにチューナやナビゲーションシステムが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-126086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の車体構造では、長孔から第1方向の一方側で離隔した爪と車体ボデーの爪穴との嵌合により、アンテナアンプ組付体が軸心周りで回転することを規制している。このため、軸心と爪との間の距離をある程度長くしなければ、アンテナアンプ組付体の回り止めの効果が低く、アンテナアンプ組付体と周辺部品との干渉による異音を生じたり、見栄えが損なわれたりするおそれがある。
【0008】
特に、アンテナアンプ組付体がアンテナを一体的に有しておらず、アンテナアンプの接点に後からアンテナが接続される場合には、アンテナアンプ組付体の回り止めの効果が低ければ、アンテナアンプの接点が精度よくアンテナと接続されず、チューナ等の受信状況に不具合を生じるおそれがある。
【0009】
したがって上記従来の車体構造では、図8に示すように、長孔から爪90までの距離Lが長いブラケット91を採用せざるを得ず、車両の省燃費化に繋がる軽量化が損なわれるとともに、車両の意匠性も損なわれてしまう。また、ブラケット91の自重での抜けを防止するため、爪90の形状をZ字状にしていた。ここで、ブラケットの搭載軌跡を考慮して、作業者が目視で確認できる位置でブラケットの組み付け作業を可能とすることが、ブラケットの設計条件であった。そうすると、係合部及び被係合部から離隔した位置で爪と爪穴との嵌合を目視で確認しつつ、設計条件に沿った大きなブラケットを車体ボデーに組み付けなければならず、組付作業も面倒であった。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、アンテナアンプ組付体がアンテナを一体的に有しておらず、アンテナアンプの接点に後からアンテナが接続される場合であっても、受信状況の不具合が抑制され、車両の軽量化及び意匠性を実現し、かつ組付作業性に優れた車体構造を提供することを解決すべき課題としている。また、本発明は、その車体構造を実現可能なアンテナアンプ組付体を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車体構造は、車体ボデーと、前記車体ボデーに固定されたアンテナアンプ組付体とを備え、
前記車体ボデーは、前記アンテナアンプ組付体が固定される固定部と、前記固定部から軸心周りに軸状に突出する一つの係合部と、前記係合部から第1方向で離隔して前記固定部に形成された回転規制部とを有し、
前記アンテナアンプ組付体は、前記係合部と係合する被係合部を有するブラケットと、前記ブラケットに固定され、アンテナと接続される接点を有するアンテナアンプと、前記被係合部から前記第1方向で離隔し、前記回転規制部と嵌合して前記アンテナアンプ組付体が前記軸心周りで回転することを規制する回転被規制部とを有し、
前記固定部と前記ブラケットとの間には、前記ブラケットが前記固定部から離隔する方向に弾性力を有する弾性部材が前記軸心から前記第1方向の一方側に離隔して設けられ、
前記回転規制部及び前記回転被規制部は、前記軸心から前記第1方向の他方側に離隔して配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のアンテナアンプ組付体は、車体ボデーに固定されるアンテナアンプ組付体であって、
前記車体ボデーは、前記アンテナアンプ組付体が固定される固定部と、前記固定部から軸心周りに軸状に突出する一つの係合部と、前記係合部から第1方向で離隔して前記固定部に形成された回転規制部とを有し、
前記係合部と係合する被係合部を有するブラケットと、前記ブラケットに固定され、アンテナと接続される接点を有するアンテナアンプと、前記被係合部から前記第1方向で離隔し、前記回転規制部と嵌合して前記アンテナアンプ組付体が前記軸心周りで回転することを規制する回転被規制部とを有する前記アンテナアンプ組付体であり、
前記ブラケットには、前記ブラケットが前記固定部から離隔する方向に弾性力を有する弾性部材が前記軸心から前記第1方向の一方側に離隔して設けられ、
前記回転被規制部は、前記軸心から前記第1方向の他方側に離隔して配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の車体構造においては、軸心から第1方向の一方側に離隔して配置された弾性部材がその弾性力によってブラケットを固定部から離隔する方向に付勢する。ここで、軸心が支点になり、軸心から第1方向の他方側に離隔して配置された回転規制部及び回転被規制部はその弾性力によって互いに近づく方向に付勢される。このため、ブラケットに従来のように軸心からの距離が長い位置に爪を設けなくても、回転規制部と回転被規制部とが確実に嵌合し、アンテナアンプ組付体の回り止めが効果的に行われる。このため、小型のブラケットを採用していても、アンテナアンプ組付体と周辺部品との干渉による異音を生じ難く、また車両の見栄えも向上する。本発明のアンテナアンプ組付体は上記車体構造の効果をあらしめる。
【0014】
特に、アンテナアンプ組付体がアンテナを一体的に有しておらず、アンテナアンプの接点に後からアンテナが接続される場合でも、アンテナアンプ組付体の回り止めが効果的に行われていることから、アンテナアンプの接点が精度よくアンテナと接続される。このため、チューナ等の受信状況に不具合を生じることが抑制される。
【0015】
また、小型のブラケットによって、車両の省燃費化に繋がる軽量化を実現できるとともに、優れた意匠性も確保できる。また、組付作業において、係合部及び被係合部から離隔した位置で従来のような爪と爪穴との嵌合を確認する必要がなく、しかもブラケットは小型であることから、優れた作業性も発揮する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車体構造は、アンテナアンプ組付体がアンテナを一体的に有しておらず、アンテナアンプの接点に後からアンテナが接続される場合であっても、受信状況の不具合が抑制され、車両の軽量化及び意匠性を実現し、かつ組付作業性に優れる。また、本発明のアンテナアンプ組付体は、そのような車体構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施例の車体構造に係り、車体ボデーにアンテナアンプ組付体を固定し、この後にガラスアンテナが設置されたフロントガラスを車体ボデーに取り付ける様子を示す、水平方向から見た断面図である。
図2図2は、実施例の車体構造の分解断面図である。
図3図3は、実施例の車体構造に係り、アンテナアンプ組付体の平面図である。
図4図4は、実施例の車体構造に係り、アンテナアンプ組付体の裏面図である。
図5図5は、実施例の車体構造に係り、フロントガラスが車体ボデーに取り付けられた状態の断面図である。
図6図6は、実施例の車体構造に係り、車両の室内から見た裏面図である。
図7図7は、実施例の車体構造に係り、回転規制部及び回転被規制部の拡大平面図である。
図8図8は、従来の車体構造の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。アンテナとしては、ガラスアンテナやシャークフィンアンテナを例示できる。アンテナの用途としては、GPS用、ラジオ用、テレビ用、インターネット通信用を例示できる。
【0019】
アンテナアンプはアンテナの近傍に配置されることが合理的であり、さらには、アンテナとアンテナアンプの接点とは、直接に接するように配置されることがより合理的である。車体ボデーにおいて、アンテナアンプが固定される固定部としては、フロントガラス、リアガラス又はサイドガラスの近傍の部材が例示され、具体的には、ルーフ部材が例示される。
【0020】
固定部から軸心周りに軸状に突出する係合部の具体的な態様としては、ボルトの軸部の他、貫通孔を有する円柱型のピンを例示できる。
【0021】
固定部に形成された回転規制部はアンテナアンプ組付体の回転被規制部と嵌合し、アンテナアンプ組付体の軸心回りの回転を規制する。具体的には、回転規制部を凹状とし、回転被規制部を凸状としたり、回転規制部を凸状とし、回転被規制部を凹状としたりすることが可能である。製造の簡便さや、部品の少数化などの観点から、固定部に凹状の回転規制部を形成し、ブラケットの一部を切り起して凸状の回転被規制部を形成することが合理的である。
【0022】
ブラケットの形状としては、板状を例示できる。ブラケットは固定部の形状に合わせて成形される。ブラケットの素材としては、金属及び硬質プラスチックを例示できる。ブラケットの成形作業の簡便性の点や、金属製の車体ボデーへのアースの役割を担える点から、ブラケットの素材としては、金属が好ましい。
【0023】
係合部と被係合部とが係合することで、アンテナアンプ組付体は車体ボデーに固定される。被係合部としては、係合部に係合し得るものであれば制限されないが、軸状の係合部が貫通し得る貫通孔をブラケットに設け、かかる貫通孔を被係合部とすることが可能である。
【0024】
貫通孔は、円形の孔の他、長孔を例示できる。特に、第1方向に長い長孔が好ましい。かかる形状の貫通孔であれば、本発明の車体構造のいずれかの要素に第1方向で製造誤差が生じた場合であっても、回転規制部と回転被規制部とが適正に嵌合するように係合部と被係合部とを係合させることができる。
【0025】
係合部がボルトの軸部である場合は、固定部材としてのナットを用いることで、係合部と被係合部とが係合される。係合部が貫通孔を有するピンである場合は、貫通孔を貫通する固定部材としての固定ピンを用いることで、係合部と被係合部とが係合される。
【0026】
固定部がルーフ部材である場合には、固定部がアンテナアンプ組付体の上方に位置し、係合部が下方に突出する場合がある。このような場合には、係合部に対してアンテナアンプ組付体の被係合部を係合させて固定する取り付け作業の最中に、アンテナアンプ組付体が落下するおそれがある。そのため、係合部及び被係合部の少なくとも一方には、係合部と被係合部との係合時にアンテナアンプ組付体の落下を防止する仮保持手段が設けられていることが好ましい。
【0027】
具体的な仮保持手段としては、ボルトの軸部を係合部とした場合、軸部の溝に噛み込み可能な金属薄板や金属線を例示できる。また、仮保持手段は、軸部の溝の1か所に噛み込み可能に設計してもよいが、軸部の軸心を両側から挟む態様で、軸部の溝の2か所に噛み込み可能に設計してもよい。その他、ボルトの軸部に接着剤や粘着剤を塗布しておくことを仮保持手段としてもよい。
【0028】
弾性部材は、固定部に設けられていてもよいし、ブラケットに設けられていてもよい。弾性部材がブラケットに設けられていれば、車両製造時に小型の弾性部材が失われる事態を回避できる。
【0029】
固定部と弾性部材との間、又は、ブラケットと弾性部材との間は、接着剤を用いる等の適切な手段で接着すればよい。
【0030】
弾性部材の種類としては、特に制限はない。具体的にはバネ及び樹脂片を例示できる。摩擦により生じる異音を抑制する観点から、弾性部材としては樹脂片が好ましい。
【0031】
樹脂片の素材としてはエラストマーが好ましく、具体的には、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、天然ゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、ふっ素ゴムを例示できる。
【0032】
弾性部材の種類や大きさは、軸心から弾性部材までの距離、軸心から回転規制部までの距離、アンテナアンプの重量などを勘案して、必要な弾性力を有するように適宜適切に決定すればよい。
【0033】
アンテナアンプ、回転規制部及び回転被規制部、並びに、弾性部材の位置関係は、ブラケットの重量、アンテナアンプの重量及び弾性部材の弾性力を勘案して、適宜適切に決定すればよい。
【0034】
アンテナアンプは軸心から離隔して第1方向の他方側、すなわち、回転被規制部が配置されている側に配置されることが好ましい。かかる配置により、回転被規制部と同様にアンテナアンプが車体ボデー側に付勢される。その結果、車体ボデー側に位置するアンテナとアンテナアンプの接点との接触状態が安定する。さらに、アンテナアンプがアンテナアンプ組付体の取り付け位置を決定する回転規制部及び回転被規制部の近傍に位置するため、アンテナアンプの接点の目標配置位置と実際の配置位置との誤差が少なくなる。また、ブラケットにおいて、アンテナアンプと回転被規制部とを第1方向に対して垂直な位置関係に配置することができる。すなわち、アンテナアンプがブラケットに固定されることにより生じるブラケット上のデッドスペースに回転被規制部を設けることができる。そのため、ブラケットのスペースを有効活用できる。
【0035】
また、軸心と弾性部材とがなす第1距離は、軸心と回転被規制部とがなす第2距離よりも短いことが好ましい。かかる配置により、ブラケットの小型化を簡単に達成できる。
【0036】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【実施例
【0037】
以下、本発明を具体化した実施例について、図面を参照しつつ説明する。実施例では、図1に示すように、車体ボデーをルーフ部材である金属製のインナーパネル1としている。車両では、インナーパネル1の外側に車両の天井をなす図示しないアウターパネルが設けられ、インナーパネル1の内側には図示しない室内トリムが設けられる。アンテナアンプ組付体3は、インナーパネル1の固定部5に固定されて車体構造を構成する。
【0038】
図2に示すように、インナーパネル1にはアンテナアンプ組付体3が固定される固定部5が形成されている。固定部5は車両の左右方向に延びる板状をなしている。固定部5の左右方向が第1方向に相当する。固定部5は、室内側に台形状に突出する台部5aを有している。台部5aにはボルト9が固定されている。ボルト9の軸部9aは室内に向かって突出している。軸部9aが係合部に相当し、軸部9aの中心線が軸心Xに相当する。
【0039】
固定部5では、台部5aの右側に平坦面5bが形成され、台部5aの左側にも平坦面5cが形成され、平坦面5b及び平坦面5cは面一とされている。台部5aの室内側も平坦面5dとされている。平坦面5dは、平坦面5b、5cと平行であり、かつやや車室側に突出している。台部5aの左側には円形の回転規制穴5eが貫設されている。回転規制穴5eが回転規制部に相当する。
【0040】
アンテナアンプ組付体3は、導電性の金属製のブラケット11、アンテナアンプ13及び弾性部材15を有している。図3及び図4に示すように、ブラケット11は、左右方向に長く、左側部分は右側部分より前後に長くなっている。
【0041】
ブラケット11には、左右方向に長い長孔11aが貫設されている。長孔11aが被係合部に相当する。ブラケット11の裏面には、長孔11a周辺にばね鋼からなる金属薄板17が設けられている。金属薄板17は左右のリベット19、21を加締めることによってブラケット11に固定されている。
【0042】
金属薄板17には、長孔11aより幅がやや狭い係合穴17aが貫設されている。係合穴17aは、図4に示すように、長孔11aと整合しているが、長孔11aより左右がやや長く形成されている。また、係合穴17aの右端には前後に延びるスリット17b、17cが接続され、係合穴17aの左端にも前後に延びるスリット17d、17eが接続されている。金属薄板17の係合穴17a及びスリット17b、17c、17d、17eが仮保持手段に相当する。
【0043】
図2及び図3に示すように、アンテナアンプ13は軸心Xから左側に離隔して配置されている。アンテナアンプ13は、基板23と、右端子25と、左端子27とを有している。基板23は、ブラケット11における裏面に固定されており、金属製の基板カバー部11dで覆われている。基板23には増幅回路が形成されている。増幅回路には、右端子25及び左端子27が接続されているとともに、図示しないコネクタによってコードが接続できるようになっている。右端子25の上面には接点25aが形成されており、左端子27の上面には接点27aが形成されている。
【0044】
弾性部材15はポリウレタン製である。弾性部材15はブラケット11の右側上面に接着剤によって貼着されている。弾性部材15は軸心Xから右側に第1距離L1だけ離隔している。
【0045】
また、図3に示すように、ブラケット11の左側には四角形の3辺の切り込みからなる切欠き11bが形成されている。四角形の1辺は表面側に切り起され、回転規制突起11cとされている。回転規制突起11cは回転被規制部に相当する。回転規制突起11cは軸心Xから左側に第2距離L2だけ離隔している。第1距離L1は第2距離L2よりも短い。
【0046】
回転規制突起11cは固定部5の回転規制穴5e内に遊嵌可能である。具体的には、図6及び図7に示すように、回転規制穴5eと回転規制突起11cとの間にはΔ1+Δ2=0.1mm程度の隙間が設定されている。
【0047】
これらインナーパネル1及びアンテナアンプ組付体3によって車体構造を構成する場合、図1及び図2に示すように、作業者又はロボットは、まずボルト9の軸部9aをブラケット11の長孔11a及び金属薄板17の係合穴17aに挿通する。これにより、金属薄板17が軸部9aに噛み、アンテナアンプ組付体3の落下が防止される。この際、図7に示すように、回転規制穴5eに回転規制突起11cを遊嵌する。次いで、作業者等は、軸部9aにナット29を螺合し、アンテナアンプ組付体3を固定部5に固定する。
【0048】
この際、図5に示すように、弾性部材15が平坦面5bと当接し、その弾性力によってブラケット11を固定部5から離隔する方向に付勢する。ここで、軸心Xが支点になり、回転規制突起11cはその弾性力によって平坦面5cに近づく方向に付勢される。このため、従来のようにブラケット11において軸心からの距離が長い位置に爪を設けなくても、回転規制穴5eと回転規制突起11cとが確実に嵌合し、図6に示すように、アンテナアンプ組付体3の回り止めを効果的に行う。このため、小型のブラケット11を採用していても、アンテナアンプ組付体3と周辺部品との干渉による異音を生じ難く、また車両の見栄えも向上する。なお、固定部5に台部5aが形成され、ブラケット11の上面が平坦面5dに当接するため、リベット19、21が固定部5とブラケット11との間で邪魔になることはない。
【0049】
この後、図1に示すように、フロントガラス31がアウターパネルに固定される。フロントガラス31の内面にはガラスアンテナ33が貼付されている。ガラスアンテナ33は、図5に示すように、接点33a、33bを有している。この際、実施例の車体構造では、図6に示すように、アンテナアンプ組付体3の回り止めが効果的に行われていることから、アンテナアンプ13の接点25aが接点33aに精度よく接続され、接点27aが接点33bに精度よく接続される。アンテナアンプ13の基板23には、チューナ等にコードで接続されるコネクタが接続される。このため、チューナ等の受信状況に不具合を生じることが抑制される。
【0050】
特に、この実施例では、アンテナアンプ13は軸心Xから離隔して左側、すなわち、回転規制突起11cと同じ側に配置されているため、回転規制突起11cと同様にアンテナアンプ13がインナーパネル1側に付勢される。その結果、インナーパネル1側に位置するガラスアンテナ33の接点33a、33bとアンテナアンプ13の接点25a、27aとの接触状態が安定している。
【0051】
さらに、この実施例では、アンテナアンプ13がアンテナアンプ組付体3の取り付け位置を決定する回転規制穴5e及び回転規制突起11cの近傍に位置するため、アンテナアンプ13の接点25a、27aの目標配置位置と実際の配置位置との誤差は少ない。
【0052】
また、この実施例では、ブラケット11において、アンテナアンプ13と回転規制突起11cとを左右方向に対して垂直な位置関係に配置されている。すなわち、アンテナアンプ13がブラケット11に固定されることにより生じるブラケット11上のデッドスペースに回転規制突起11cを設けているため、ブラケット11のスペースを有効活用している。
【0053】
さらに、この実施例では、小型のブラケット11によって、車両の省燃費化に繋がる軽量化を実現できるとともに、優れた意匠性も確保できる。また、以上の組付作業では、軸部9a及び長孔11aから離隔した位置で従来のような爪と爪穴との嵌合を確認する必要がなく、しかもブラケット11は小型であることから、優れた作業性を発揮する。また、アンテナアンプ組付体3は上記車体構造の効果をあらしめる。
【0054】
また、この実施例では、弾性部材15がブラケット11に設けられているため、車両製造時に小型の弾性部材15が失われる事態を回避できる。
【0055】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0056】
例えば、上記実施例では、ガラスアンテナ33を用いたガラスアンテナについて車体構造を具体化したが、本発明の車体構造をシャークフィンアンテナについて具体化すること等も可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…車体ボデー(インナーパネル)
3…アンテナアンプ組付体
5…固定部
X…軸心
9a…係合部(ボルトの軸部)
5e…回転規制部(回転規制穴)
11a…被係合部(長孔)
11…ブラケット
33…アンテナ(ガラスアンテナ)
25a、27b…接点
13…アンテナアンプ
11c…回転被規制部(回転規制突起)
15…弾性部材
L1…第1距離
L2…第2距離
17a~17e…仮保持手段(17a…係合穴、17b、17c、17d、17e…スリット)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8