(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】プライマー及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 133/00 20060101AFI20240110BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240110BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240110BHJP
B32B 27/08 20060101ALI20240110BHJP
C08F 20/34 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C09D133/00
C09D5/00 D
B32B27/30 A
B32B27/08
C08F20/34
(21)【出願番号】P 2020094521
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岸本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小池 隆明
(72)【発明者】
【氏名】間宮 倫孝
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/065782(WO,A1)
【文献】特開平10-265712(JP,A)
【文献】特許第6923064(JP,B1)
【文献】特開2010-100742(JP,A)
【文献】特開2001-214122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイド結晶層を基材に固定するためのプライマーであって、
前記プライマーは、水性樹脂(A)及び水を含有し、
前記水性樹脂(A)が、下記一般式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体(a-1)及び下記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体(a-2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体由来の構成単位を含む、プライマー。
一般式(1):エチレン性不飽和単量体(a-1)
【化1】
(一般式(1)中、Xは水素原子又はメチル基を表す。)
一般式(2):エチレン性不飽和単量体(a-2)
【化2】
(一般式(2)中、Y及びZは各々独立して水素原子又はメチル基を表す。)
【請求項2】
前記エチレン性不飽和単量体(a-1)及び前記エチレン性不飽和単量体(a-2)の合計の含有量が、水性樹脂(A)の全質量を基準として、2~40質量%である、請求項1に記載のプライマー。
【請求項3】
前記水性樹脂(A)のガラス転移点が、-60℃~100℃である、請求項1又は2に記載のプライマー。
【請求項4】
基材上に、請求項1~3いずれか1項に記載のプライマーから形成されてなるプライマー層及びコロイド結晶層をこの順に備える積層体。
【請求項5】
前記コロイド結晶層が、コアシェル型樹脂微粒子を含有する、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
上記プライマー層とコロイド結晶層とが架橋を形成している、請求項4又は5に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロイド結晶層を基材に固定するためのプライマー及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトニック結晶は、屈折率が異なる物質を光の波長と同程度の間隔で並べたナノ周期構造を持つ人工結晶であり、ブラッグ反射で知られる特定波長の光の反射やフォトニックバンドギャップによる光閉じ込め効果や光増幅効果等、様々な興味深い光学特性を有することから、近年、活発に検討されている。中でもコロイドサイズの粒子が規則的に配列されたコロイド結晶は、比較的簡便に作製できるフォトニック結晶の一つであるが、コロイド結晶の配列を乱すことなくコロイド結晶を含有する層(コロイド結晶層)を基材に固定化し、さらにコロイド結晶層を紫外光や大気中の水分及び衝撃等から保護して長期間安定的に保持するのが難しいという技術的な課題により、大量生産されるまでには至っていない。
【0003】
特許文献1では、バインダー成分である水性樹脂を予め添加したコロイド結晶用樹脂組成物を塗布及び乾燥して固定化したコロイド結晶の塗膜が開示されている。しかしながら、この固定化方法では、バインダー成分が粒子の規則配列を阻害するため、塗膜の発色が著しく悪化するという問題がある。また、プライマー層を特段に設けていないために基材との界面にムラが生じやすく、基材との接着性と塗膜耐久性が不足する(接着性不足)。
【0004】
特許文献2では、粘着剤成分をプライマー層として塗工した基材上に、コロイド結晶層を結着、固定化させたコロイド結晶の塗膜が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載のプライマーは、塗膜の強度が低く、傷や圧痕が付きやすいという問題がある。また、特許文献2に記載のプライマーは、プライマー成分がコロイド結晶の空隙に徐々に侵入して空隙を埋めてしまうため、塗膜の発色性が経時で悪化するという課題がある。さらに、特許文献2に記載のプライマーによって形成されるプライマー層は、耐水性や耐溶剤性が低く実用レベルには至っていない(空隙への侵入・強度不足)。
【0005】
特許文献3では、ポリビニルアルコールをプライマー層として塗工した基材上に、コロイド結晶を結着、固定化させたコロイド結晶の塗膜が開示されている。しかしながら、特許文献3に記載のプライマーは、耐水性や耐溶剤性が低く、プライマー上にコロイド結晶用組成物を塗布した際、プライマー成分が溶出してコロイド結晶層用組成物に混入し、コロイド結晶の規則配列を乱して発色性を悪化させるという課題がある。また、ポリビニルアルコールからなるプライマー層では、長期間の屋外暴露によるコロイド結晶層の劣化を抑制することはできない。(屋外暴露性の不足)
【0006】
以上のことから、コロイド結晶の配列を乱すことなく、経時でのコロイド結晶の発色性を維持することができ、さらに、コロイド結晶層を基材に固定化して、優れた屋外暴露性、耐擦性、耐水性、耐溶剤性を付与できるプライマーが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-126646号公報
【文献】特開2008-246846号公報
【文献】特開2006-116781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、コロイド結晶の長期間経時での発色性を維持することができ、さらに、屋外暴露性、塗膜の基材追従性、基材密着性、耐水性、耐溶剤性に優れる、コロイド結晶層を基材に固定するためのプライマー、及び該プライマーを用いてなる積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、コロイド結晶層を基材に固定するためのプライマーであって、前記プライマーは、水性樹脂(A)及び水を含有し、前記水性樹脂(A)が、下記一般式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体(a-1)及び下記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体(a-2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体由来の構成単位を含む、プライマーに関する。
【0010】
一般式(1):エチレン性不飽和単量体(a-1)
【化1】
(一般式(1)中、Xは水素原子又はメチル基を表す。)
【0011】
一般式(2):エチレン性不飽和単量体(a-2)
【化2】
(一般式(2)中、Y及びZは各々独立して水素原子又はメチル基を表す。)
【0012】
本発明は、前記エチレン性不飽和単量体(a-1)及び前記エチレン性不飽和単量体(a-2)の合計の含有量が、水性樹脂(A)の全質量を基準として、2~40質量%である、上記プライマーに関する。
【0013】
本発明は、前記水性樹脂(A)のガラス転移点が、-60℃~100℃である、上記プライマーに関する。
【0014】
本発明は、基材上に、上記プライマーから形成されてなるプライマー層及びコロイド結晶層をこの順に備える積層体に関する。
【0015】
本発明は、前記コロイド結晶層が、コアシェル型樹脂微粒子を含有する、上記積層体に関する。
【0016】
本発明は、上記プライマー層とコロイド結晶層とが架橋を形成している、上記積層体に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、コロイド結晶の長期間経時での発色性を維持することができ、さらに、屋外暴露性、基材追従性、基材密着性、耐水性、耐溶剤性に優れる、コロイド結晶層を基材に固定するためのプライマー、及び該プライマーを用いてなる積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<プライマー>
本発明は、コロイド結晶層を基材に固定するためのプライマーであって、前記プライマーが、水性樹脂(A)を含有し、前記水性樹脂(A)が、下記一般式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体(a-1)及び下記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体(a-2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体由来の構成単位を含むことを特徴とする。
プライマーが、上記特定のエチレン性不飽和単量体由来の構成単位を有することで、コロイド結晶層とプライマー層との間がより強固に結着され、透明性に優れ、さらに、水や溶剤への耐性に優れたものとなる。
また、上記プライマー層によって、コロイド結晶層側から入光し基材で反射した太陽光の紫外線から、コロイド結晶層を保護することができる。さらに、基材が透明基材である場合、透明基材側から入光した太陽光の紫外線からコロイド結晶層を保護することができる。上記により、コロイド結晶層は、屋外で長期間暴露しても、良好な発色性を維持することができる。そして、屋外で長期間暴露しても良好な屋外暴露性、塗膜の基材追従性、基材密着性、耐水性、耐溶剤性を維持可能な、コロイド結晶層を有する積層体を得ることができる。
【0019】
<水性樹脂(A)>
まず、本発明に用いる水性樹脂(A)について説明する。
本明細書でいう水性樹脂(A)とは、水性媒体中に分散又は溶解し得る樹脂を指す。ここで水性媒体とは、水性の分散媒又は水性の溶媒を指し、水の他に、水と混和し得る分散媒又は溶媒も含まれる。
水性樹脂(A)は、プライマー中において、分散又は溶解した形態をとり、基材等に塗布された後、乾燥していく過程で造膜して、水に不溶なプライマー層を形成する。更に、このプライマー層上にコロイド結晶層が形成される。本明細書においては、プライマー層とコロイド結晶層との積層物を「コロイド結晶塗膜」という。
【0020】
[エチレン性不飽和単量体(a-1)、(a-2)]
水性樹脂(A)は、下記一般式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体(a-1)及び下記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体(a-2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体由来の構成単位を含むものであれば特に制限されず、好ましくは、一般式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体(a-1)又は一般式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体(a-2)の少なくともいずれかを含むエチレン性不飽和単量体(a)の重合体、又は、該重合体ユニットを有する複合樹脂である。
【0021】
一般式(1):エチレン性不飽和単量体(a-1)
【化3】
(一般式(1)中、Xは水素原子又はメチル基を表す。)
【0022】
一般式(2):エチレン性不飽和単量体(a-2)
【化4】
(一般式(2)中、Y及びZは各々独立して水素原子又はメチル基を表す。)
【0023】
前記一般式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体(a-1)としては、例えば、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール)、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール)が挙げられる。
【0024】
前記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体(a-2)としては、例えば、メタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル、アクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル、メタクリル酸2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル、アクリル酸2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルが挙げられる。
【0025】
水性樹脂(A)は、一般式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体(a-1)及び一般式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体(a-2)に由来する構成単位を両方含むことが好ましい。すなわち、水性樹脂(A)を構成するエチレン性不飽和単量体(a)は、エチレン性不飽和単量体(a-1)及びエチレン性不飽和単量体(a-2)を両方含有することが好ましい。両単量体を含有することで、紫外線吸収骨格であるエチレン性不飽和単量体(a-1)由来のベンゾトリアゾール骨格と、光安定化骨格であるエチレン性不飽和単量体(a-2)由来のヒンダードアミン骨格との相互作用により、プライマー層の劣化抑制に相乗効果が発揮される。したがって長期間、屋外で暴露しても、発色性や、追従性及び基材密着性の劣化がより少ないコロイド結晶塗膜を得ることができる。
【0026】
前記エチレン性不飽和単量体(a-1)及び前記エチレン性不飽和単量体(a-2)の合計の含有量は、水性樹脂(A)の全質量を基準として、好ましくは2~40質量%である。含有量が2質量%以上であると、十分な耐光性を発現するため、屋外で長期間暴露しても発色性や追従性、基材密着性が良好なコロイド結晶塗膜を得ることができる。含有量が40質量%以下であると、水性樹脂(A)の造膜性が良好となり、基材とプライマー層との接着性がより向上する。これにより、塗膜の追従性、基材密着性に優れたコロイド結晶塗膜が得られる。
【0027】
[エチレン性不飽和単量体(a-3)]
重合体を形成するエチレン性不飽和単量体(a)は、エチレン性不飽和単量体(a-1)又はエチレン性不飽和単量体(a-2)と共重合可能な、その他のエチレン性不飽和単量体(a-3)を含むことができる。
このようなその他のエチレン性不飽和単量体(a-3)としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族系エチレン性不飽和体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート等のフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、又は、これらのアルキル若しくはアルケニルモノエステル、コハク酸β-(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸等のカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体;2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸アンモニウム、ビニルスルホン酸等のスルホ基含有エチレン性不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ペントキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N-メトキシメチル-N-(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド基含有エチレン性不飽和単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシビニルベンゼン、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、アリルアルコール等の水酸基含有エチレン性不飽和単量体;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリオキシエチレン基含有エチレン性不飽和単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン等が挙げられ、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有エチレン性不飽和単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有エチレン性不飽和単量体;ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシ(メタ)アクリレート等のケトン基含有エチレン性不飽和単量体;アリル(メタ)アクリレート、1-メチルアリル(メタ)アクリレート、2-メチルアリル(メタ)アクリレート、1-ブテニル(メタ)アクリレート、2-ブテニル(メタ)アクリレート、3-ブテニル(メタ)アクリレート、1,3-メチル-3-ブテニル(メタ)アクリレート、2-クロルアリル(メタ)アクリレート、3-クロルアリル(メタ)アクリレート、o-アリルフェニル(メタ)アクリレート、2-(アリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルラクチル(メタ)アクリレート、シトロネリル(メタ)アクリレート、ゲラニル(メタ)アクリレート、ロジニル(メタ)アクリレート、シンナミル(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルイタコン酸、ビニル(メタ)アクリレート、クロトン酸ビニル、オレイン酸ビニル,リノレン酸ビニル、2-(2’-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート、ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等の2個以上のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシメチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有エチレン性不飽和単量体;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アルキルエーテル化N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のメチロール基含有エチレン性不飽和単量体;が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
これらの単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0028】
中でも、エチレン性不飽和単量体(a-3)は、カルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体を含むことが好ましい。すなわち、水性樹脂(A)がカルボキシ基を有することが好ましく、より好ましくは水性樹脂(A)の酸価が、5~40mgKOH/gの範囲であり、より好ましくは5~20mgKOH/gの範囲である。酸価が上記の範囲であると、プライマーの濡れ性が向上し、容易にムラが少なく均質なプライマー層を形成することができる。また、カルボキシ基由来の水素結合が、プライマー層とコロイド結晶層との間の結着性をより向上させるため好ましい。これらにより、コロイド結晶塗膜の基材追従性、基材密着性がより向上し、屋外に暴露した場合にプライマー層の剥離や劣化が抑制され、コロイド結晶塗膜の発色性の悪化を抑制することができる。
【0029】
また、エチレン性不飽和単量体(a-3)は、プライマー層内に架橋を形成する目的、及び/又は、コロイド結晶を形成する微粒子(B)と架橋を形成する目的で、反応性基を有していてもよい。プライマー層内に架橋を形成することで、プライマー層の成分が水に再溶解してコロイド結晶に影響を及ぼすことをさらに抑制することができる。また、プライマー層とコロイド結晶層との間に架橋を形成することにより、プライマー層とコロイド結晶層との結着がより強化され、コロイド結晶塗膜の追従性、基材密着性が更に向上する。さらに、屋外暴露に晒された際においても、プライマー層の剥離や劣化が生じ難くなるため、長期間、屋外に暴露されても、良好な発色性、追従性、基材密着性の悪化がより少ないコロイド結晶塗膜が得られる。
このような、プライマー層内の架橋、及び、プライマー層とコロイド結晶層との架橋は、水性樹脂(A)の反応性基同士を反応させる方法、水性樹脂(A)及び微粒子(B)の反応性基同士を反応させる方法、多官能の架橋剤を介して水性樹脂(A)の反応性基同士を反応させる方法、多官能の架橋剤を介して水性樹脂(A)及び微粒子(B)の反応性基同士を反応させる方法、により導入することができる。
【0030】
エチレン性不飽和単量体(a-3)が有していてもよい反応性基としては、エポキシ基、カルボキシ基、水酸基、ケトン基、ヒドラジド基等が挙げられ、より好ましくはケトン基である。特に、反応性基がケトン基であり、架橋剤がヒドラジド架橋剤である場合、ケトン・ヒドラジド架橋を形成することができる。ケトン・ヒドラジド架橋は、コロイド結晶の諸物性に悪影響を及ぼさず、水の揮発により低温且つ短時間で架橋を形成できる点から好適に用いられ、加熱によりダメージを受けやすいフィルム基材を用いる場合に有効である。
また、水性樹脂(A)が、水性媒体中に分散可能な樹脂微粒子である場合、親水性が高いケトン基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合組成に用いると、ケトン基は樹脂微粒子の外側、すなわち水媒体との界面付近に導入され、ヒドラジド架橋剤と効率的に架橋を形成できると考えられる。
【0031】
水性樹脂(A)がケトン基を含む場合、ケトン基の好ましい含有量は、水性樹脂(A)の質量を基準として、0.05~0.3mmol/gの範囲である。0.05~0.3mmol/gの範囲で導入することにより、水性樹脂(A)の融着が阻害されない状態で架橋が形成されるため、形成されるプライマー層の膜強度がより向上する。更にコロイド結晶層との結着に優れるため、コロイド結晶塗膜の追従性、基材密着性がより向上し、屋外暴露時における塗膜の劣化もより生じ難くなる。
【0032】
[水性樹脂(A)の製造]
このような水性樹脂(A)としては、例えば、アクリル重合体若しくはスチレンアクリル重合体のようなアクリル樹脂;アクリル/ウレタン複合樹脂若しくはアクリル/オレフィン複合樹脂のようなアクリル骨格とその他の骨格とを有する複合樹脂;が挙げられ、それらの製造方法は特に制限されない。
本発明における水性樹脂(A)は、耐水性、耐アルコール性の観点から、好ましくはアクリル樹脂であり、より好ましくはアクリル樹脂微粒子である。
【0033】
(アクリル樹脂微粒子)
水性樹脂(A)がアクリル樹脂微粒子である場合、例えば、乳化重合のように水性媒体中でエチレン性不飽和単量体(a)を重合する方法や、非水系で重合を行った後に脱溶剤しながら水相に転相する転相乳化が挙げられるが、高分子量、低粘度、且つ高固形分濃度化が可能である点から、乳化重合を用いることが好ましい。また、乳化重合では、単量体の混合物を一段で滴下する一段重合、一段目と二段目とで単量体の組成を変えて滴下する二段重合、又は、三段以上の多段で単量体の組成を変えて滴下する多段重合のいずれを用いてもよい。
【0034】
エチレン性不飽和単量体(a)の重合反応に用いられるラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性重合開始剤や水溶性重合開始剤を使用することができ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0035】
油溶性重合開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシ(2-エチルヘキサノエート)、tert-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス-シクロヘキサン-1-カルボニトリル等のアゾビス化合物;を挙げることができる。
【0036】
乳化重合においては水溶性重合開始剤を使用することが好ましく、水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム(KPS)、過酸化水素、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライドのような従来既知のものを好適に使用することができる。
【0037】
また、乳化重合では、重合開始剤とともに還元剤を併用してもよい。還元剤を併用することにより、乳化重合速度の促進や、低温での乳化重合が容易になる。還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、エルソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート等の金属塩等の還元性有機化合物;チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物;塩化第一鉄、ロンガリット、二酸化チオ尿素が挙げられる。
これら還元剤は、エチレン性不飽和単量体(a)を基準として、0.05~5質量%の量を用いることが好ましい。
【0038】
重合温度は、重合開始剤の重合開始温度以上であればよく、例えば、過酸化物系重合開始剤では、通常80℃程度である。重合時間は特に制限されないが、通常2~24時間である。なお、エチレン性不飽和単量体(a)は、前記した重合開始剤によらずとも、光化学反応や放射線照射によって重合してもよい。
【0039】
エチレン性不飽和単量体(a)の重合においては、必要に応じて、さらに緩衝剤又は連鎖移動剤を用いてもよい。緩衝剤としては、例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムが挙げられる。連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、ステアリルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタンのようなメルカプタン類が挙げられる。
【0040】
エチレン性不飽和単量体(a)の重合においては、水性樹脂(A)の水分散安定性を高めるために、中和剤として塩基性化合物を使用してもよい。塩基性化合物としては、例えば、アンモニア水、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムといったアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ剤;有機酸や鉱酸等が挙げられる。
【0041】
水性樹脂(A)を得る際、粒子の分散安定性を向上させる目的で、調製時に低分子乳化剤や高分子乳化剤を使用することができ、これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
低分子乳化剤としては、例えば、アニオン性の反応性乳化剤、アニオン性の非反応性乳化剤、ノニオン系反応性乳化剤、ノニオン性非反応性乳化剤が挙げられ、プライマー層からの遊離成分を低減し塗膜耐性を向上させる観点から、低分子乳化剤には、重合後に残留しにくい反応性乳化剤を使用することが好ましい。
【0042】
アニオン性の反応性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンKH-05、KH-10、KH-20、株式会社ADEKA製アデカリアソープSR-10N、SR-20N、花王製ラテムルPD-104等);ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩系(市販品としては、第一工業製薬株式会社製アクアロンAR-10、AR-20);スルフォコハク酸エステル系(市販品としては、例えば、花王株式会社製ラテムルS-120、S-120A、S-180P、S-180A、三洋化成株式会社製エレミノールJS-2等);ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩系若しくはポリオキシエチレンアルキルフェニルエステル硫酸塩系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンHS-10、HS-20、HS-30、BC-10、BC-20、株式会社ADEKA製アデカリアソープSDX-222、SDX-223、SDX-232、SDX-233、SDX-259、SE-10N、SE-20N、等);(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製アントックスMS-60、MS-2N、三洋化成工業株式会社製エレミノールRS-30等);リン酸エステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製H-3330PL、株式会社ADEKA製アデカリアソープPP-70等)が挙げられる。
【0043】
アニオン性の非反応性乳化剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類;ポリエキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類(市販品としては、例えば、第一工業製薬製ハイテノールLA-10、LA-12、LA-16等);が挙げられる。
【0044】
ノニオン系反応性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系(市販品としては、例えば、株式会社ADEKA製アデカリアソープER-10、ER-20、ER-30、ER-40、花王株式会社製ラテムルPD-420、PD-430、PD-450等);ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル系(市販品としては、第一工業製薬株式会社製アクアロンAN-10、AN-20等);ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系若しくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンRN-10、RN-20、RN-30、RN-50、株式会社ADEKA製アデカリアソープNE-10、NE-20、NE-30、NE-40等);(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製RMA-564、RMA-568、RMA-1114)が挙げられる。
【0045】
ノニオン性非反応性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(市販品としては、第一工業製薬株式会社製ノイゲンTDS-120等)等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;が挙げられる。
【0046】
高分子乳化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、マレイン酸-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン-(メタ)アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体、ビニルピロリドン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ビニルピロリドン-スチレン共重合体、ビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-クロトン酸共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸共重合体、酢酸ビニル-クロトン酸共重合体、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー株式会社製 ポリナスPS-1、ポリナスPS-5等)、スチレンスルホン酸-マレイン酸共重合体、ポリイタコン酸、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド-(メタ)アクリル酸共重合体、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエステル、カルボキシビニルポリマー等の水溶性のビニル系共重合体;ポリイソシアネートとポリオールの重付加反応により得られるウレタン樹脂であり、親水基の導入により樹脂全体が水溶化された水溶性ポリウレタン樹脂;多価カルボン酸とポリオールの重縮合反応により得られるポリエステル樹脂であり、親水基の導入により樹脂全体が水溶化された水溶性ポリエステル樹脂;が挙げられる。
【0047】
高分子乳化剤の市販品としては、例えば、BASF社製JONCRYL67、JONCRYL678、JONCRYL586、JONCRYL611JONCRYL683、JONCRYL690、JONCRYL57J、JONCRYL60JJONCRYL61J、 JONCRYL62J、JONCRYL63J、JONCRYLHPD-96J、JONCRYL501J、JONCRYLPDX-6102B、ビックケミー社製DISPERBYK180、DISPERBYK187、DISPERBYK190、DISPERBYK191、DISPERBYK194、DISPERBYK2010、DISPERBYK2015、DISPERBYK2090、DISPERBYK2091、DISPERBYK2095、DISPERBYK2155、サートマー社製、SMA1000H、SMA1440H、SMA2000H、SMA3000H、SMA17352Hが挙げられる。
【0048】
アクリル樹脂微粒子の平均粒子径は、好ましくは30~300nmの範囲である。本明細書における平均粒子径は、動的光散乱測定法を用いて測定した体積粒子径分布データのピークである。
【0049】
(アクリル/ウレタン複合樹脂)
水性樹脂(A)がアクリル/ウレタン複合樹脂である場合、アクリル/ウレタン複合樹脂としては、エチレン性不飽和単量体(a)の重合体であるアクリル重合部位とポリウレタン部位とを有するものであれば特に制限されず、例えば、末端に連鎖移動剤残基であるスルファニル基を有するウレタン樹脂を分散した水分散体中で、上述の一般式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体(a-1)又は一般式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体(a-2)の少なくともいずれかを含むエチレン性不飽和単量体(a)を重合して得られる複合樹脂が挙げられる。
【0050】
ウレタン樹脂の合成に使用できるポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ペンタンジオール、1,4-ブチレンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシコハク酸、ソルビトール、のほか、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸のようなジメチロールアルカン酸等の二官能ジオール、及び/又は、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、1,2,6-ブタントリオール等の三官能ジオールと、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の二塩基酸と、を反応させてなるポリエステルポリオール;前述の二官能ジオールと、ジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、又はジアリールカーボネートと、を反応させてなるポリカーボネートポリオール;水酸基含有ポリブタジエン、酸基含有水添ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有水添ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレン等のポリオレフィンポリオール;植物由来の油を原料としたひまし油ポリオール;が挙げられる。
【0051】
ウレタン樹脂の合成に使用できるポリイソシアネートといえば、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族系ポリイソシアネート;が挙げられる。
【0052】
ポリオールとしては、ウレタン結合濃度調節や各種官能基導入を目的として、分子量500以下の低分子ジオールを用いてもよい。
分子量500以下の低分子ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸等のジメチロールアルカン酸や、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシ安息香酸が挙げられる。
【0053】
またウレタン樹脂は、末端変性されていてもよいし、鎖延長されていてもよい。
末端変性や鎖延長反応に使用できる化合物としては、例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジン及びその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン等のジアミン類;アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類;が挙げられる。
【0054】
ウレタン樹脂の合成において、分子量調整及び末端変性のために連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、スルファニル基を有する化合物が好適に用いられ、例えば、2-ヒドロキシエタンチオール、3-ヒドロキシプロピル-1-チオール、1-ヒドロキシプロピル-2-チオール、4-ヒドロキシ-1-ブタンチオール等のヒドロキシアルカンチオール類;1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,4-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール等のジチオール類、2-アミノエタンチオール、3-アミノプロピル-1-チオール、1-アミノプロピル-2-チオール、4-アミノ-1-ブタンチオール等のアミノアルカンチオール類;2-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノール等のアミノベンゼンチオール類;が挙げられる。
【0055】
ウレタン樹脂の水分散体として市販品を用いてもよく、該市販品としては、例えば、第一工業製薬製スーパーフレックスシリーズ(SF-170、SF-210等)、三洋化成社製ユーコート、パーマリンシリーズ(UX-310、UX-3945等)、荒川化学製ユリアーノシリーズ(W-600やW-321等)、ADEKA製アデカポンタイターシリーズ(HUX-420A、HUX-386)、宇部興産製UWシリーズ(UW-5002、UW-5020等)、大成ファインケミカル社製アクリットシリーズ(WBR2000U、WBR2101、WEM-200U等)が挙げられる。
【0056】
(アクリル/オレフィン複合樹脂)
水性樹脂(A)がアクリル/オレフィン複合樹脂である場合、アクリル/オレフィン複合樹脂としては、エチレン性不飽和単量体(a)の重合体であるアクリル重合部位とポリオレフィン部位とを有するものであれば特に制限されず、例えば、マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体、マレイン酸変性プロピレン-1-ブテン共重合体、又はマレイン酸変性エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体のような酸変性ポリオレフィンに、一般式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体(a-1)又は一般式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体(a-2)の少なくともいずれかを含むエチレン性不飽和単量体(a)の重合体であるアクリル重合体をグラフトした複合樹脂が挙げられる。
【0057】
水性樹脂(A)のガラス転移点(Tg)は、好ましくは-60~100℃の範囲であり、より好ましくは-30~70℃の範囲であり、さらに好ましくは-25~45℃の範囲であり、特に好ましくは-20~20℃の範囲である。Tgが-60℃以上であると、プライマー層の樹脂成分が過剰に流動してコロイド結晶層の空隙部へ侵入することを防ぐことができ、経時でコロイド塗膜の発色が悪化するのを抑制できる。また、結着部分の強度も確保できるため、塗膜の基材追従性、基材密着性、耐水性、耐溶剤性も良化する。一方、Tgが100℃以下であると、水性樹脂(A)の造膜性が十分に確保され、基材追従性、基材密着性、耐水性、耐溶剤性に優れるコロイド結晶塗膜が得られる。
上記のガラス転移点は、DSC(示差走査熱量計)を用いて求めることができる。
【0058】
<その他の成分>
本発明のプライマーは、水性樹脂(A)及び水を含有するものであり、基材上に塗布、乾燥することで造膜し、プライマー層を形成する。プライマーは、コロイド結晶の諸物性に悪影響を及ぼさない範囲であれば、プライマーの造膜性やプライマー層の各種耐性を向上させる目的で、親水性溶剤や架橋剤等の添加剤を含有してもよい。
【0059】
(親水性溶剤)
親水性溶剤としては、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール等の一価のアルコール溶剤;エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のグリコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、ε-カプロラクタム等のラクタム系溶剤;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、出光製エクアミドM-100、エクアミドB-100等のアミド系溶剤等が挙げられる。これらは1種類又は2種以上を併用して用いることができる。
【0060】
(架橋剤)
本発明のプライマーは、上述のとおり、プライマー層内、又はプライマー層及びコロイド結晶層の間で架橋を形成してもよく、架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、後述のコロイド結晶層のおける架橋剤の記載を援用することができる。
【0061】
<コロイド結晶層>
コロイド結晶層は、ブラッグ反射由来の構造色を発現する層であればよく特に制限されない。コロイド結晶層は、含有する微粒子(B)の粒子径を制御することにより、周期間隔を制御し様々な色を発色させることができる。微粒子(B)の平均粒子径は、好ましくは180~330nmの範囲である。上記の範囲であると、コロイド結晶層の可視光領域での発色が明瞭となり、より発色に優れたコロイド結晶塗膜を得ることができるため好ましい。
コロイド結晶層の形成方法は特に制限されないが、例えば、単分散な微粒子(B)と水とを含有するコロイド結晶層用組成物を、プライマー層上に塗布した後、水の揮発によって粒子を移流集積させ、規則的に配列させることで形成することができる。
【0062】
(微粒子(B))
微粒子(B)としては、シリカのような無機微粒子、又は樹脂微粒子のような有機微粒子が挙げられ、合成品又は市販品のいずれを用いてもよい。単分散シリカ微粒子の市販品としては、例えば、富士化学製ハウトフォームSilbol 210、Silbol Ex260、Silbol S260、Silbol 300が挙げられる。
微粒子(B)としては、プライマーとの接着性が良好で、コロイド結晶塗膜の追従性や耐摩擦性等に優れる点、コロイド結晶塗膜の発色性が良好な点から、樹脂微粒子が好ましく、より好ましくはアクリル樹脂又はスチレンアクリル樹脂からなる樹脂微粒子である。
【0063】
微粒子(B)の平均粒子径は、好ましくは150~350nmである。平均粒子径が150nm以上であると、コロイド結晶の可視光領域での発色性が良好になるため好ましい。平均粒子径が400nm以下であると、コロイド結晶の可視光領域での発色性が良好になるとともに、粒子による散乱が抑えられ、発色性が良好となる。
該平均粒子径は、動的光散乱法(測定装置はナノトラックUPA(株)マイクロトラックベル社製)により測定することができ、得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークを平均粒子径とする。
【0064】
また、微粒子(B)における平均粒子径の変動係数(Cv値)は、30%以下であることが好ましい。変動係数は、粒子径の均斉度を表す数値であり、下記式により算出することができる。
式: 変動係数Cv値(%)=粒子径の標準偏差/平均粒子径×100
[式において、標準偏差と平均粒子径の単位は同一である]
変動係数が30%以下であることにより、粒子配列の規則性が良化し、コロイド結晶の発色性がより良好になる。
【0065】
微粒子(B)が、アクリル樹脂又はスチレンアクリル樹脂からなる樹脂微粒子である場合、樹脂微粒子の製造方法は特に制限されないが、例えば、下記の乳化重合により製造することができる。
まず、反応槽に水性媒体と乳化剤を仕込み、所定の温度まで昇温する。一方、滴下槽には水と乳化剤とエチレン性不飽和単量体(b)を仕込み、撹拌してエチレン性不飽和単量体(b)の乳化液を調製する。その後、窒素雰囲気下、反応槽に調製した乳化液を滴下しながら、ラジカル重合開始剤を添加する。反応開始後、ポリマーの粒子核が生成し、粒子は徐々に成長して、目的の微粒子(B)を得ることができる。
【0066】
微粒子(B)に使用できるエチレン性不飽和単量体(b)としては、水性樹脂(A)で例示したエチレン性不飽和単量体(a)の記載を援用することができる。また、コロイド結晶層は、前述のとおりプライマー層との間に架橋を形成していることが好ましく、微粒子(B)が、プライマー層と架橋を形成する反応性基を有していることが好ましい。
【0067】
微粒子(B)に導入可能な反応性基としては、水性樹脂(A)で例示した反応性基が挙げられるが、コロイド結晶の規則的配列に悪影響を及さず、比較的低温で架橋を形成する点からケトン・ヒドラジド架橋を形成するケトン基であることが好ましい。微粒子(B)へのケトン基の導入方法としては、先述した水性樹脂(A)と同様の方法で導入することができる。
【0068】
微粒子(B)に含まれるケトン基の含有量は、微粒子(B)の質量を基準として、好ましくは0.05~0.3mmol/gの範囲である。上記の範囲であると、耐水性を悪化させることなく、微粒子(B)間、プライマー層とコロイド結晶層との間の結着を強化することができ、コロイド結晶塗膜の追従性、基材密着性がより向上するため好ましい。
【0069】
微粒子(B)として好ましくは、コアシェル型構造の樹脂微粒子である。コアシェル型樹脂微粒子は、コア及びシェルが水に不溶なポリマーであり、互いに相溶しないコア部(内層)とシェル部(外層)の構造からなる。
コア部は球状形状の維持、シェル部は流動性を有して結着部位として機能する。コアシェル型の微粒子(B)は、プライマー層上に塗布され、乾燥が進むにつれて、規則的に配列して積層してコロイド結晶を形成する。その際、コアシェル粒子間の接触部分でシェル部同士が融着し、空隙が水媒体から空気に置換されたコロイド結晶層を形成する。更にシェル部は、プライマー層の樹脂とも融着するため、より強固にコロイド結晶が固定化されたコロイド結晶層が形成される。またコロイド結晶中に、後述の無彩黒色微粒子を含有する場合、シェル部が無彩黒色微粒子を結着し、欠落を抑制することができる。したがって、コロイド結晶塗膜の追従性、基材密着性がより向上する。また屋外に長期間暴露しても、プライマー層の剥がれや劣化が生じにくく、コロイド結晶塗膜の発色性や追従性、基材密着性の悪化を抑制することができる。
【0070】
コアシェル型樹脂微粒子において、シェルの含有量は、コアの質量を基準として10~50質量%であることが好ましい。上記の範囲であることにより、コロイド結晶層の空隙部分がシェル部の融着で埋まることが抑制される。さらに、シェルの融着は十分に進み、コアシェル微粒子間、及び、プライマー層とコアシェル微粒子間との結着がより強固なものとなる。したがって、発色性、追従性、基材密着性に優れるコロイド結晶塗膜を得ることができる。
【0071】
コアシェル型樹脂微粒子のコア部のTgは、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは60℃~150℃の範囲である。Tgが60℃以上であると、コア部形状が熱や溶剤の影響で変形することが抑制される。よって、発色性や耐ラビング性により優れるコロイド結晶塗膜を得ることができる。
コアシェル型樹脂微粒子のシェル部のTgは、好ましくは-50~20℃の範囲である。上記の範囲であることにより、コロイド結晶層の空隙部分がシェル部の融着で埋まることが抑制される。さらに、シェルの融着が十分に進み、コアシェル微粒子間、及びコアシェル微粒子とプライマー層との間結着がより強固なものとなる。したがって、追従性、基材密着性に優れる塗膜を得ることができる。
【0072】
更にコアシェル型樹脂微粒子のシェルには水性樹脂(A)と架橋を形成する反応性基を有していることが好ましい。導入できる反応性基としては水性樹脂(A)で例示した反応性基が挙げられる。シェル部の架橋の形成と、先述したシェル部の融着の相乗効果により、プライマー層とコロイド結晶層との結着がより強化され、コロイド結晶塗膜の追従性、基材密着性がより向上する。屋外暴露時における塗膜物性悪化もより抑制できる。
【0073】
コロイド結晶層用組成物は、乾燥時の粒子配列やコロイド結晶塗膜の諸物性に悪影響を及ぼさない範囲であれば、発色性や塗工性、塗膜耐性を向上させる目的で、無彩黒色微粒子、親水性溶剤や架橋剤等の添加剤を使用することができる。
無彩黒色微粒子としては、カーボンブラックや黒色染料で着色した樹脂微粒子など任意の黒色微粒子を使用することができる。着色成分が水や溶剤に溶出しにくい点、着色剤の耐久性に優れる点から、好ましくはカーボンブラックである。カーボンブラックは、分散剤を用いて水中に分散した分散タイプ、又は自己分散タイプのいずれを用いてもよいが、分散剤による微粒子配列への影響が発生しない観点から自己分散タイプのカーボンブラックを用いることが好ましい。カーボンブラック水分散体の市販品としては、例えば、ライオン社製ライオンペーストシリーズ(W-310A等)、オリエント化学製CWシリーズ(CW-1、CW-2、CW-3等)が挙げられる。
親水性溶剤及び架橋剤としては、プライマーで例示したものを援用することができる。
【0074】
コロイド結晶層用組成物は、プライマー層及びコロイド結晶層の間で架橋を形成するために、架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、特に制限されず、プライマー層及びコロイド結晶層が有する反応性基に応じて適宜選択でき、例えば、エポキシ架橋剤、ポリイソシアネート架橋剤、ヒドラジド架橋剤が挙げられる。
より詳細には、例えば、水性樹脂(A)や微粒子(B)がカルボキシ基、水酸基又はアミノ基を有する場合は、エポキシ架橋剤を介して架橋を形成することができる。
また、例えば、水性樹脂(A)や微粒子(B)が水酸基を有する場合は、ポリイソシアネート架橋剤を介して架橋を形成することができる。また、例えば、水性樹脂(A)や微粒子(B)がケトン基を有する場合、ヒドラジド架橋剤を介して架橋することができる。
架橋剤としては、上述のとおり、ケトン・ヒドラジド架橋を形成するために、ヒドラジド架橋剤を用いることが好ましい。ヒドラジド架橋剤としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、多官能のヒドラジド基が変性された水溶性樹脂が挙げられる。
【0075】
<積層体>
本発明の積層体は、基材上に上記コロイド結晶塗膜を備えるものであり、基材上に、プライマー層及びコロイド結晶層をこの順に備えるものである。
【0076】
(基材)
基材は特に制限されず、用途に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ塩化ビニルシート、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルムのような熱可塑性樹脂基材;アルミニウム箔のような金属基材;ガラス基材、コート紙基材が挙げられる。
基材は、塗布面が平滑であってもよく、凹凸のついたものであってもよい。また基材は、透明、半透明、不透明のいずれであってもよく、コロイド結晶塗膜の発色をより明瞭にするため、あらかじめ黒色等に着色された基材を用いてもよい。また、基材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上の基材を貼り合わせた積層体であってもよい。
【0077】
(プライマー層の形成)
プライマー層は、コロイド結晶の塗膜耐性向上を目的として、基材とコロイド結晶層との間に設けられるものであり、水と水性樹脂(A)を含有するプライマーを、基材上に塗布、乾燥して形成することができる。プライマーの塗布方法は特に制限されず、例えば、インクジェットやスプレー、ディッピングやスピンコートのような版を使用しない印刷方式、又はオフセットグラビアコーター、グラビアコーター、ドクターコーター、バーコーター、ブレードコーター、フレキソコーター、ロールコーターのような有版の印刷方式が挙げられる。プライマーの乾燥方法は、基材へのダメージを軽減し、効率的に乾燥を行う観点から、熱風乾燥法が好ましく、乾燥温度は50~120℃の範囲であることが好ましい。
基材追従性、基材密着性、耐水性、耐溶剤性等の性能面と、生産性の観点から、プライマー層の厚みは、好ましくは0.5~20μmの範囲である。
【0078】
(コロイド結晶層の形成)
コロイド結晶層は、前述のとおり、プライマー層上に、微粒子(B)と水とを含有するコロイド結晶層用組成物を塗布して形成することができる。塗布方法は特に制限されず、例えば、プライマー層の形成の項の記載を援用することができる。
コロイド結晶層用組成物を基材上に付与した後、塗布物を乾燥してコロイド結晶層を形成させる。乾燥方法は特に制限されず、例えば、加熱乾燥法、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、マイクロ波乾燥法、ドラム乾燥法が挙げられる。規則配列への影響と生産性の観点から、乾燥温度は25~80℃の範囲であることが好ましい。
コロイド結晶層の発色性と、生産性の観点から、コロイド結晶層の厚みは、好ましくは5~20μmの範囲である。
【0079】
本発明の積層体は、コロイド結晶の塗膜耐性向上を目的として、コロイド結晶層上にオーバーコート層を有していてもよい。オーバーコート層としては特に制限されず、公知の材料から用途に応じて適宜選択することができ、本発明のプライマーをオーバーコート用樹脂組成物として用いてもよい。
オーバーコート用樹脂組成物の塗布方法及び乾燥方法は特に制限されず、プライマー及びコロイド結晶層の形成の項の記載を援用することができる。オーバーコート層の厚みは、好ましくは2~20μmの範囲である。
【実施例】
【0080】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、特に断りのない限り実施例における「部」及び「%」は、各々「質量部」及び「質量%」を表す。
【0081】
[ガラス転移点(Tg)]
ガラス転移点は、DSC(示差走査熱量計TAインスツルメント社製)により測定した。樹脂微粒子分散体を乾固したサンプル約2mgをアルミニウムパン上で秤量し、該アルミニウムパンをDSC測定ホルダーにセットし、5℃/分の昇温条件にて得られるチャートの吸熱ピークを読み取り、ガラス転移点を得た。
【0082】
[平均粒子径、Cv値]
平均粒子径は、微粒子分散体を500倍に水希釈し、該希釈液約5mlを動的光散乱測定法(測定装置はナノトラックUPA(株)マイクロトラックベル社製)により測定を行った。この時得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークを平均粒子径とした。また、下記式により、粒子径の均斉度を表す変動係数Cv値を算出した。
Cv値%=粒子径の標準偏差/平均粒子径×100
【0083】
[重量平均分子量(Mw)]
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定によるポリスチレン換算の値であり、乾燥させた樹脂をテトラヒドロフランに溶解させて0.1%溶液を調製し、以下の装置並びに測定条件により測定した。
装置:HLC-8320-GPCシステム(東ソー社製)
カラム;TSKgel-Super Multipore HZ-M0021488
4.6mmI.D×15cm×3本(分子量測定範囲2,000~約200万)
溶出溶媒;テトラヒドロフラン
標準物質;ポリスチレン(東ソー社製)
流速;0.6mL/分、試料溶液使用量;10μL、カラム温度;40℃
【0084】
[酸価(AV)]
酸価は、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数であり、乾燥させた樹脂を用いて、JISK2501に記載の方法に準拠し、水酸化カリウム・エタノール溶液で電位差滴定を行い算出した。
【0085】
<プライマーの調製>
[実施例1]アクリル樹脂微粒子プライマー(P1)
撹拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、水68.9部を仕込んだ。
別途、メチルメタクリレート19.0部、n-ブチルメタクリレート2.0部、2-エチルヘキシルアクリレート3.0部、n-ブチルアクリレート18.5部、メタクリル酸1.0部、アクリル酸1.0部、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン0.5部、RUVA-093(大塚化学製 2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール)5.0部、KH-10(第一工業製薬製 アニオン性反応性乳化剤 アクアロンKH-10)の20%水溶液2.5部、水20.2部をあらかじめ混合、撹拌して一段目に滴下するエチレン性不飽和単量体の乳化液を調製した。
この乳化液の7.0%を反応容器に添加し、反応容器の内温を70℃に昇温して窒素置換を十分行った後、開始剤として過硫酸カリウムの5%水溶液2.0部を添加して乳化重合を開始した。内温を80℃に上げて温度を保ちながら一段目に滴下するエチレン性不飽和単量体乳化液の残りと過硫酸カリウムの5%水溶液1.0部を2時間かけて滴下した。
一段目のエチレン性不飽和単量体乳化液の滴下完了後、連続して、メチルメタクリレート19.0部、n-ブチルメタクリレート2.0部、2-エチルヘキシルアクリレート3.0部、n-ブチルアクリレート18.5部、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン0.5部、RUVA-093を5.0部、アデカスタブLA-82(ADEKA製 メタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)2.0部、KH-10の20%水溶液2.5部、水20.2部をあらかじめ混合、撹拌して調製した二段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液と、過硫酸カリウムの5%水溶液1.0部とを2時間かけて滴下した。
滴下完了後、更に4時間反応させ、水性樹脂(A1)の水分散体を得た。
得られた水分散体に、25%のアンモニア水を樹脂中のカルボキシ基に対して、当モルになるように添加して中和した後、更に水を加えて固形分濃度を45.0%に調整した。
次いで、イソプロピルアルコールを4.0部添加して、プライマー(P1)を調製した。
水性樹脂(A1)の平均粒子径は160nm、Tgは8.5℃、酸価は14.3mgKOH/gであった。
【0086】
[実施例2~14、比較例1、2]アクリル樹脂微粒子プライマー(P2~14、P17、P18)
表1~3に示す配合組成で、プライマー(P1)と同様の方法により、水性樹脂(A2~A14、A17、A18)の水分散体を調製した。
得られた水分散体に、25%のアンモニア水を樹脂中のカルボキシ基に対して、当モルになるように添加して中和し、更に水を加えて固形分濃度を45.0%に調整した。
次いで、イソプロピルアルコールを4.0部、アジピン酸ジヒドラジドを1.0部添加して、プライマー(P2~14、P17、P18)を調製した。
得られた水性樹脂(A2~A14、A17、A18)について、実施例1と同様にして、Tg、酸価、及び平均粒子径を測定した。
【0087】
得られたプライマーについて表1~表3に示す。表1~表3中の数値は、特に断りがない限り「部」を表し、空欄は配合していないことを意味する。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
表1~3の略称を以下に示す。
RUVA-093:大塚化学製 2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール
アデカスタブLA-82:ADEKA製 メタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル
アデカスタブLA-87:ADEKA製 メタクリル酸2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル
【0092】
[実施例15]アクリル/ウレタン複合樹脂プライマー(P15)
(ウレタン樹脂 U1の製造)
まず、撹拌器、温度計、還流器を備えた反応容器に、ポリオールとしてポリテトラメチレングリコール(保土谷化学製PTG-2000SN 官能基数2、水酸基価57.0mgKOH/g)14.6部、ポリエステルポリオール(クラレ製P-2011 官能基数2、水酸基価56.0mgKOH/g)20.2部、ポリカーボネートポリオール(クラレ製C-2090 官能基数2、水酸基価56.3mgKOH/g)48.6部、ジメチロールブタン酸4.3部、ネオペンチルグリコール0.1部、ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート9.7部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温させた。次いで、チタンジイソプロポキシビズ(エチルアセトアセテート)を0.02部添加し、110℃に昇温して5時間反応させた後、80℃まで温度を下げた。この時、生成したウレタンプレポリマーの重量平均分子量は32,100であった。
次いで、メチルエチルケトン40.0部、2-アミノエタンチオール2.4部を加え、75℃で2時間反応させた。反応の終点は、FT-IRによりイソシアナト基由来のピーク(2270cm-1付近)の消失により確認した。さらにメチルエチルケトンを添加して、固形分濃度を70%に調製し、両末端にスルファニル基を有するウレタン樹脂U1の溶液を得た。
【0093】
(アクリル/ウレタン複合樹脂プライマーの製造)
撹拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、上記得られたウレタン樹脂U1の溶液 50部、スチレン5.0部、メチルメタクリレート13.0部、n-ブチルアクリレート9.0部、メタクリル酸2.0部、ジアセトンアクリルアミド1.0部、RUVA-093を18.0部、アデカスタブLA-82を2.0部、n-プロパノール35.0部を加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら75℃まで昇温させた。滴下ロートに、メチルエチルケトン20.0部、開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を0.35部仕込み、5時間かけて反応槽に滴下した。78℃で8時間反応させ、アクリル樹脂部分のグラフト反応を終了した。反応後、水10部を加え、25%のアンモニア水を樹脂中のカルボキシ基に対して、当モルになるように添加して中和し、脱溶剤処理して、水性樹脂(A15)の水分散体を得た。得られた水分散体にイオン交換水を加えて、固形分濃度を25.0%に調製した。
次いで、イソプロピルアルコールを4.0部添加して、プライマー(P15)を調製した。
水性樹脂(A15)のTgは44.8℃、酸価は18.3mgKOH/gであった
【0094】
表4及び表5中の数値は、特に断りがない限り「部」を表し、空欄は配合していないことを意味する。
【0095】
【0096】
【0097】
[実施例16]アクリル/オレフィン複合樹脂プライマー(P16)
撹拌器、温度計、還流器を備えた反応容器に、固形のオレフィン樹脂として、アウローレン350S(日本製紙製 無水マレイン酸変性ポリプロピレン-ポリエチレン共重合体)20.0部、トルエン54.7部、イソプロピルアルコール20.0部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら70℃まで昇温し、樹脂を溶解させた。
1つ目の滴下ロートにt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート6.4部を仕込み、1時間かけて滴下し、別の滴下ロートにメチルメタクリレート31.0部、n-ブチルメタクリレート25.9部、n-ブチルアクリレート10.5部、アクリル酸5.6部、RUVA-093を5.0部、アデカスタブLA-82を1.0部仕込み1時間かけて滴下した。
滴下完了後、更に80℃で2時間反応させ、オレフィン骨格にアクリルがグラフトされたアクリル/オレフィン複合樹脂を得た。反応終了後、イオン交換水20部、25%のアンモニア水を樹脂中のカルボキシ基に対して当モルになるように添加して中和し、脱溶剤処理して水性樹脂(A16)の水分散体を得た。得られた水分散体にイオン交換水を加えて、固形分濃度を25.0%に調製した。
次いで、イソプロピルアルコールを4.0部添加して、プライマー(P16)を調製した。
水性樹脂(A16)のTgは30.5℃であった。
【0098】
表6中の数値は、特に断りがない限り「部」を表し、空欄は配合していないことを意味する。
【0099】
【0100】
<コロイド結晶層用の微粒子(B)分散体の調製>
[製造例1]微粒子(B1)
撹拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、水68.9部を仕込み、別途、スチレン85.0部、ベンジルメタクリレート5.0部、2-エチルヘキシルアクリレート7.0部、アクリル酸2.0部、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン1.0部、KH-10の20%水溶液5.0部、水40.4部をあらかじめ混合、撹拌して調製したエチレン性不飽和単量体の乳化液のうちの3%を更に加えた。
内温を70℃に昇温して十分に窒素置換した後、開始剤として過硫酸カリウムの5%水溶液2.0部を添加して乳化重合を開始した。内温を80℃に上げて温度を保ちながらエチレン性不飽和単量体の乳化液の残りと、過硫酸カリウムの5%水溶液2.0部を3時間かけて滴下し、更に4時間反応させて固形分濃度45.0%の微粒子(B1)の水分散体を得た。
得られた微粒子(B1)のTgは76.9℃、平均粒子径は201nm、変動係数Cvは25.8%であった。
【0101】
[製造例2]微粒子(B2)
表7に示す配合組成に変更した以外は、微粒子(B1)と同様の方法により、固形分濃度45.0%の微粒子(B2)の水分散体を調製した。得られた微粒子について、製造例1と同様に、Tg、平均粒子径、Cv値を測定した。
【0102】
[製造例3]微粒子(B3)
撹拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、水95.0部と別途、スチレン97.0部、アクリル酸2.0部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.0部、第一工業製薬製アクアロンKH-10の20%水溶液を5.0部、水39.1部を混合、撹拌して調製した一段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液のうちの1.5%を更に加えた。反応容器の内温を70℃に昇温して十分に窒素置換した後、開始剤として、過硫酸カリウムの2.5%水溶液5.7部を添加して重合を開始した。内温を80℃に上げて温度を維持しながら一段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液の残りと過硫酸カリウムの2.5%水溶液4.0部を2時間かけて滴下しながら反応させ、コア粒子を合成した。生成したコア粒子の平均粒子径は205nmであった。
一段目の滴下完了から20分後、別途、メチルメタクリレート15.0部、n-ブチルアクリレート26.1部、アクリル酸0.9部、アクアロンKH-10の20%水溶液2.1部、水16.8部を混合、撹拌して調製した二段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液の滴下を開始した。内温を80℃に保ちながら二段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液と過硫酸カリウムの2.5%水溶液2.1部を2時間かけて滴下しながら反応を更に進め、固形分濃度45.0%のコアシェル型の微粒子(B3)の水分散体を得た。
得られたコアシェル型樹脂微粒子の平均粒子径は253nm、Cv値は25.7%、コア部のTgは100.1℃、シェル部のTgは-12.5℃であった。
【0103】
[製造例4]微粒子(B4)
表8に示す配合組成に変更した以外は、微粒子(B3)と同様の方法により、コアシェル型の微粒子(B4)の水分散体を調製した。合成の際、エチレン性不飽和単量体の乳化液は、乳化液中のエチレン性不飽和単量体の濃度が69.0%、乳化剤の濃度が0.69%になるよう、水を添加して調製した。合成後、水の添加や減圧ストリッピングによる脱水等により、樹脂微粒子の水分散体の固形分濃度を45.0%に調整した。
得られたコアシェル型樹脂微粒子について、製造例3と同様に、平均粒子径、Cv値、Tgの測定を行った。
【0104】
得られた微粒子(B)分散体について表7及び表8に示す。表7及び表8中の数値は、特に断りがない限り「部」を表し、空欄は配合していないことを意味する。
【0105】
【0106】
【0107】
<コロイド結晶層用組成物の調整>
[製造例5]コロイド結晶層用組成物(C1)
微粒子(B1)の水分散体100部に、無彩黒色微粒子としてオリエント化学工業社製BONJET BLACK CW-1(表面変性カーボンブラック 平均粒子径62nm 顔料分20.0%)2.3部を添加して撹拌し、コロイド結晶層用組成物(C1)を調製した。
【0108】
[製造例6~9]コロイド結晶層用組成物(C2~C5)
表9に示す配合組成に変更した以外は、(C1)と同様の方法により、コロイド結晶層用組成物(C2~C5)をそれぞれ調製した。
【0109】
得られたコロイド結晶層用組成物について表9に示す。表9中の数値は、特に断りがない限り「部」を表し、空欄は配合していないことを意味する。
【0110】
【0111】
表9の略語を以下に示す。
Silbol 210:富士化学製単分散シリカ微粒子水分散体 平均粒子径218nm、Cv値20.8%、固形分濃度32.3%)
【0112】
<積層体の作製>
[実施例17]
二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(フタムラ製FOR 膜厚20.0μm)のコロナ処理面に、真空デバイス社製PIB-20を用いて、プラズマ処理を施した。処理条件を下記に示す。
雰囲気ガス:空気
雰囲気ガス圧:20Pa
放電電流:20mA
処理時間:1分間
プラズマ処理を施した基材表面上に、プライマー(P1)を、乾燥後の厚みが9μmになるようにバーコーターで塗工し、70℃3分間の条件で乾燥させて、プライマー層を形成した。次いで、プライマー層上に、コロイド結晶層用組成物(C1)を乾燥後の厚みが7μmになるようにバーコーターで塗工し、50℃3分間の条件で乾燥させて、コロイド結晶層を形成した。このようにして、基材上にコロイド結晶塗膜を備える積層体を得た。
【0113】
[実施例18~35、比較例3~6]
表10で示す組み合わせで、実施例17と同様にして、基材上にプライマー層とコロイド結晶層とを形成し、コロイド結晶塗膜を備える積層体を得た。
【0114】
<積層体の評価>
得られた積層体及びコロイド結晶塗膜について、以下の評価を行った。結果を表10に示す。
【0115】
[発色性(△R、変化率)]
コロイド結晶塗膜について、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製V-770D、積分球ユニットISN-923)を用いて、波長250~850nmの範囲で反射スペクトルを測定した。各波長における反射率は、反射率が既知の標準白板(ラブスフェア社製SRS-99-010)をリファレンスとして用いて測定した相対反射率である。得られた反射スペクトルについて、構造色に由来する反射率の最大値と構造色によらないベースラインの反射率の差分(△R)を算出した。△Rが大きいほど発色性に優れている。
また、プライマー層を設けずにコロイド結晶層を形成した積層体を別途作製し、このコロイド結晶層についても同様に△Rを求め、プライマー層による△Rの変化率(低下率)を算出した。低下率が大きいほど、コロイド結晶塗膜が退色していることを表す。得られた△R及び△Rの低下率から、以下の基準で評価した。
◎;△Rが15%以上、且つ、△Rの低下率が2%未満(極めて良好)
○;△Rが15%以上、且つ、△Rの低下率が2%以上5%未満(良好)
△;△Rが15%以上、且つ、△Rの低下率が5%以上30%未満(不良)
×;△Rが15%以上、且つ、△Rの低下率が30%以上、
又は、△Rが15%未満(極めて不良)
【0116】
[追従性]
積層体から、5cm×5cmの試験片を切り出し、180度・10回折り曲げを行った。折り曲げ後の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
◎;剥がれや傷が無い(極めて良好)
○;剥がれや傷の面積が試験片の5%未満(良好)
△;剥がれや傷の面積が試験片の5%以上10%未満(不良)
×;剥がれや傷の面積が試験片の10%以上(極めて不良)
【0117】
[基材密着性]
積層体から、5cm×5cmの試験片を切り出し、コロイド結晶塗膜にセロハンテープ(ニチバン社製18mm幅)を貼り付け、垂直方向にゆっくりと剥離して、テープをつけた部分全体に対して、剥がれた面積の割合から基材密着性を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎;剥がれがない(極めて良好)
○;剥がれの面積が試験片の15%未満(良好)
△;剥がれの面積が試験片の15%以上25%未満(不良)
×;剥がれの面積が試験片の25%以上(極めて不良)
【0118】
[耐水性及び耐溶剤性]
コロイド結晶塗膜の上から水又はエタノールを垂らした後、50℃3分間で再乾燥した後、前述の発色性評価と同様に反射スペクトルを測定した。試験前後での反射光スペクトの比較から反射率の最大値の変化(低下率)を評価した。反射率の最大値が低下するほど、コロイド結晶塗膜が退色していることを示す。評価基準は以下の通りである。
◎;反射率の最大値が変化しない(極めて良好)
○;反射率の最大値の低下率が15%未満(良好)
△;反射率の最大値の低下率が15%以上30%未満(不良)
×;反射率の最大値の低下率が30%以上(極めて不良)
【0119】
<屋外暴露後の積層体の評価>
得られた積層体を、コロイド結晶塗膜が外側に向くようにして板に固定した後、屋外にて6ヶ月間暴露した。屋外暴露後の積層体及びコロイド結晶塗膜について、以下の評価を行った。結果を表10に示す。
【0120】
[屋外暴露後の発色性]
暴露試験後のコロイド結晶塗膜について、発色性評価と同様にして、反射スペクトルを測定した。暴露前後での反射スペクトルを比較して、反射率の最大値の変化率(低下率)を算出した。低下率が大きいほど、コロイド結晶塗膜が退色していることを表す。得られた低下率から、以下の基準で評価した。
◎;反射率の最大値の変化率が2%未満(極めて良好)
○;反射率の最大値の変化率が2%以上10%未満(良好)
△;反射率の最大値の変化率が10%以上30%未満(不良)
×;反射率の最大値の変化率が30%以上(極めて不良)
【0121】
[屋外暴露後の追従性]
暴露試験後の積層体を用いて、前述の[追従性]と同様にして以下の基準で評価した。
◎;剥がれや傷が無い(極めて良好)
○;剥がれや傷の面積が試験片の5%未満(良好)
△;剥がれや傷の面積が試験片の5%以上10%未満(不良)
×;剥がれや傷の面積が試験片の10%以上(極めて不良)
【0122】
[屋外暴露後の基材密着性]
暴露後の積層体から、5cm×5cmの試験片を切り出し、前述の[基材密着性]と同様にして以下の基準で評価した。
◎;剥がれがない(極めて良好)
○;剥がれの面積が試験片の15%未満(良好)
△;剥がれの面積が試験片の15%以上25%未満(不良)
×;剥がれの面積が試験片の25%以上(極めて不良)
【0123】
[屋外暴露後の耐水性及び耐溶剤性]
暴露後の積層体を用いて、前述の[耐水性及び耐溶剤性]と同様にして以下の基準で評価した。
◎;反射率の最大値が変化しない(極めて良好)
○;反射率の最大値の低下率が15%未満(良好)
△;反射率の最大値の低下率が15%以上30%未満(不良)
×;反射率の最大値の低下率が30%以上(極めて不良)
【0124】
【0125】
表10の結果によれば、本発明のプライマーからなるプライマー層を有するコロイド結晶塗膜は、屋外暴露後においても、鮮やかな構造色由来の発色性を維持し、追従性、基材密着性といった塗膜耐性に優れていた。特に、エチレン性不飽和単量体(a-1)及びエチレン性不飽和単量体(a-2)を併用し、コロイド結晶層中のコアシェル型樹脂微粒子と架橋形成している実施例31は、エチレン性不飽和単量体(a-1)及びエチレン性不飽和単量体(a-2)を併用していない実施例19及び20と比較して、優れた屋外暴露後の密着性、耐水性及び耐溶剤性を示した。また、実施例31は、コロイド結晶層中の非コアシェル型樹脂微粒子と架橋形成していない実施例17と比較して、優れた屋外暴露後における追従性、基材密着性、耐水性、耐溶剤性を示した。
一方、比較例のプライマーを用いたコロイド結晶塗膜は、屋外暴露後において塗膜物性が大幅に低下した。