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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】生体情報検知システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20240110BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240110BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20240110BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61B5/11 110
A61B5/00 101R
A61B5/0245 C
G01S7/02 210
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020096328
(22)【出願日】2020-06-02
(65)【公開番号】P2021069923
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2019197830
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】森 寛之
(72)【発明者】
【氏名】上田 吾朗
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-174871(JP,A)
【文献】国際公開第2017/157989(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00- 5/03
A61B 5/06- 5/22
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信アンテナ(12)から放射されて人(2)を透過した電波を受信する特定アンテナ(13b)と、
前記送信アンテナから放射されて前記人を透過しない電波を受信する複数のノイズ除去アンテナ(13a、13c)と、
前記特定アンテナおよび前記ノイズ除去アンテナで受信される電波の位相(θ1、θ2、θ3)を検出する位相検出部(142)と、
前記特定アンテナで受信される電波の位相(θ2)と前記ノイズ除去アンテナで受信される電波の位相(θ1、θ3)との位相差に基づいて、前記特定アンテナにおける前記送信アンテナから前記人を透過した電波に応じた生体信号以外のノイズを推定するノイズ推定部(310、400、510、700)と、
前記特定アンテナで受信される電波に応じた信号および前記ノイズ推定部により推定されたノイズに基づいて、前記人の生体情報を算出する算出部(250、600)と、
を備える生体情報検知システム。
【請求項2】
前記ノイズ推定部は、前記送信アンテナから放射される電波の波長(λ)および前記ノイズ除去アンテナから前記特定アンテナまでの距離であるアンテナ間距離(d)に基づいて、前記位相差を推定する請求項1に記載の生体情報検知システム。
【請求項3】
前記特定アンテナは、複数の前記ノイズ除去アンテナ同士の間に配置されている請求項1または2に記載の生体情報検知システム。
【請求項4】
前記特定アンテナおよび複数の前記ノイズ除去アンテナは、車両の席(3)に、前記車両の幅方向に並んで配置されている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の生体情報検知システム。
【請求項5】
前記ノイズ推定部(700)は、前記車両の幅方向のうち一方側から伝播されるノイズ(W1)と前記車両の幅方向のうち他方側から伝播されるノイズ(W3)との合成波(Wm)を推定することにより、前記生体信号以外のノイズを推定する請求項4に記載の生体情報検知システム。
【請求項6】
前記特定アンテナで受信される電波の強度(Ct)を検出する強度検出部(141)をさらに備え、前記ノイズ推定部は、前記特定アンテナで受信される電波の強度(Ct)に基づいて、前記生体信号以外のノイズを推定する請求項1ないし5のいずれか1つに記載の生体情報検知システム。
【請求項7】
前記特定アンテナおよび前記ノイズ除去アンテナは、電波を受信する複数の受信アンテナ(13a、13b、13c)であって、
前記生体信号以外のノイズに対する前記生体信号の比(SN)が基準値(ε)より大きい信号に対応する前記特定アンテナを、前記複数の受信アンテナから選定する選定部(150)をさらに備え、
前記算出部は、前記選定部により選定された前記特定アンテナで受信された電波に応じた信号および前記ノイズ推定部により推定されたノイズに基づいて、前記生体情報を算出する請求項1ないし6のいずれか1つに記載の生体情報検知システム。
【請求項8】
前記選定部は、前記生体信号以外のノイズに対する前記生体信号の比(SN)が前記基準値(ε)以下の信号に対応する前記ノイズ除去アンテナ(13a、13c)を、前記複数の受信アンテナから選定し、
前記ノイズ推定部は、前記選定部により選定された前記ノイズ除去アンテナで受信された電波に応じた信号に基づいて、前記生体信号以外のノイズを推定する請求項7に記載の生体情報検知システム。
【請求項9】
前記選定部は、車両が停止しているときに、前記特定アンテナを、前記複数の受信アンテナから選定する請求項7または8に記載の生体情報検知システム。
【請求項10】
前記送信アンテナおよび前記位相検出部に所定の周波数の信号を送信する発信機(11)をさらに備え、
前記送信アンテナは、前記発信機からの信号に応じた電波を放射し、
前記位相検出部は、前記発信機からの信号の位相と前記特定アンテナで受信される電波の位相とを比較することにより、前記特定アンテナで受信される電波の位相を検出し、前記発信機からの信号の位相と前記ノイズ除去アンテナで受信される電波の位相とを比較することにより、前記ノイズ除去アンテナで受信される電波の位相を検出する請求項1ないし9のいずれか1つに記載の生体情報検知システム。
【請求項11】
前記ノイズ推定部(510)は、前記ノイズ除去アンテナで受信される電波の位相を所定の範囲で複数設定して前記特定アンテナにおける前記送信アンテナから前記人を透過した電波に応じた生体信号以外のノイズを、設定した複数の位相のそれぞれに対して推定し、
前記算出部(520、600)は、前記特定アンテナで受信される電波に応じた信号から前記ノイズ推定部により推定されたノイズを除去した信号の時刻に対する強度の極大値を、前記ノイズ推定部によって設定された複数の位相のそれぞれに対して算出し、前記ノイズ推定部によって設定された複数の位相のそれぞれに対して算出した信号のうち前記極大値の数が最小となる信号を算出することにより、前記生体情報を算出する請求項1ないし10のいずれか1つに記載の生体情報検知システム。
【請求項12】
前記ノイズ推定部(510)は、前記ノイズ除去アンテナで受信される電波の位相を所定の範囲で複数設定して前記特定アンテナにおける前記送信アンテナから前記人を透過した電波に応じた生体信号以外のノイズを、設定した複数の位相のそれぞれに対して推定し、
前記算出部(520、600)は、前記特定アンテナで受信される電波に応じた信号から前記ノイズ推定部により推定されたノイズを除去した信号の時刻に対する強度の極小値を、前記ノイズ推定部によって設定された複数の位相のそれぞれに対して算出し、前記ノイズ推定部によって設定された複数の位相のそれぞれに対して算出した信号のうち前記極小値の数が最小となる信号を算出することにより、前記生体情報を算出する請求項1ないし10のいずれか1つに記載の生体情報検知システム。
【請求項13】
前記ノイズ推定部(510)は、前記ノイズ除去アンテナで受信される電波の位相を所定の範囲で複数設定して前記特定アンテナにおける前記送信アンテナから前記人を透過した電波に応じた生体信号以外のノイズを、設定した複数の位相のそれぞれに対して推定し、
前記算出部(520、600)は、前記特定アンテナで受信される電波に応じた信号から前記ノイズ推定部により推定されたノイズを除去した信号の時刻に対する強度の極大値および極小値を、前記ノイズ推定部によって設定された複数の位相のそれぞれに対して算出し、前記ノイズ推定部によって設定された複数の位相のそれぞれに対して算出した信号のうち前記極大値の数と前記極小値の数との和が最小となる信号を算出することにより、前記生体情報を算出する請求項1ないし10のいずれか1つに記載の生体情報検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体情報検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、生体情報検出手段の出力信号から、生体情報検出手段とは異なる位置に配置される感震手段の出力信号を減算することにより、生体情報以外のノイズを除去する車載用生体情報検知装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3098843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者等の検討によれば、生体情報検出手段とは異なる位置に配置される感震手段の出力信号を減算するだけでは、生体情報検出手段の出力信号と感震手段の出力信号との位相差により、ノイズが除去されないことがある。このため、生体情報の精度が低下することがある。
【0005】
本開示は、生体情報の精度を向上させる生体情報検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、送信アンテナ(12)から放射されて人(2)を透過した電波を受信する特定アンテナ(13b)と、送信アンテナから放射されて人を透過しない電波を受信する複数のノイズ除去アンテナ(13a、13c)と、特定アンテナおよびノイズ除去アンテナで受信される電波の位相(θ1、θ2、θ3)を検出する位相検出部(142)と、特定アンテナで受信される電波の位相(θ2)とノイズ除去アンテナで受信される電波の位相(θ1、θ3)との位相差に基づいて、特定アンテナにおける送信アンテナから人を透過した電波に応じた生体信号以外のノイズを推定するノイズ推定部(310、400)と、特定アンテナで受信される電波に応じた信号およびノイズ推定部により推定されたノイズに基づいて、人の生体情報を算出する算出部(250)と、を備える生体情報検知システムである。
【0007】
これにより、位相差によってノイズ除去がされないことが抑制されるため、人の生体情報を算出する精度が向上する。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における生体情報検知システムの構成図である。
図2】処理部の選定部が停車時に実行する処理のフローチャートである。
図3】選定部の処理における周波数および強度の関係図である。
図4】特定アンテナおよびノイズ除去アンテナの選定の手順を示す模式図である。
図5】処理部の算出部が走行時に実行する処理のフローチャートである。
図6】車両の運転席周辺の電波を示す模式図である。
図7図6のVII部拡大図である。
図8】算出部のキャリブレーションを示すフローチャートである。
図9】算出部のキャリブレーションにおける時刻および強度の関係図である。
図10】算出部の処理における周波数および強度の関係図である。
図11】変形例1の算出部が走行時に実行する処理のフローチャートである。
図12】アンテナ間距離および減衰定数の関係図である。
図13】変形例3の算出部が走行時に実行する処理のフローチャートである。
図14】車両の運転席周辺の電波を示す模式図である。
図15】時刻と回折波および反射波によるノイズとの関係図である。
図16】時刻と、推定されたノイズを特定アンテナで受信される信号から除去した信号の強度との関係図である。
図17】算出部のキャリブレーションを示すフローチャートである。
図18】時刻と、推定されたノイズを特定アンテナで受信される信号から除去した信号の強度との関係図である。
図19】時刻と、推定されたノイズを特定アンテナで受信される信号から除去した信号の強度との関係図である。
図20】変形例4の算出部が走行時に実行する処理のフローチャートである。
図21】変形例5における生体情報検知システムの構成図である。
図22】変形例6の算出部が走行時に実行する処理のフローチャートである。
図23】算出部のキャリブレーションを示すフローチャートである。
図24】変形例8の算出部が走行時に実行する処理のフローチャートである。
図25】時刻と、推定されたノイズを特定アンテナで受信される信号から除去した信号の強度との関係図である。
図26】変形例9の算出部が走行時に実行する処理のフローチャートである。
図27】時刻と、推定されたノイズを特定アンテナで受信される信号から除去した信号の強度との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0011】
本実施形態の生体情報検知システム10は、車両に搭載されており、車両の運転席3に着座する人2の生体情報を検知する。この生体情報とは、人2の生体活動に関する情報であって、例えば、人2の心拍数である。
【0012】
具体的には、図1に示すように、生体情報検知システム10は、発信機11、送信アンテナ12、複数の受信アンテナ13a、13b、13c、受信機14および生体情報検知装置4を備えている。ここでは、受信アンテナ13a、13b、13cが3つ備えられている。なお、以下では、説明のため、3つの受信アンテナ13a、13b、13cのそれぞれが第1受信アンテナ13a、第2受信アンテナ13b、第3受信アンテナ13cと適宜記載されている。
【0013】
発信機11は、所定の周波数の送信信号を、後述の送信アンテナ12および受信機14に送信する。この所定の周波数は、後述の送信アンテナ12から送信される電波が人2の身体を透過可能となるように、900MHz付近に設定されている。
【0014】
送信アンテナ12は、運転席3に対して車両の前側に配置されており、発信機11からの送信信号に応じた電波を人2の身体の上半身に向かって放射する。
【0015】
受信アンテナ13a、13b、13cは、運転席3のシートバック3aに埋め込まれており、車両の幅方向に互いに異なる位置に並んでいる。また、それぞれの受信アンテナ13a、13b、13cは、人2の上半身を挟んで送信アンテナ12と対向するように配置されており、送信アンテナ12から放射された電波を受信する。さらに、第2受信アンテナ13bは、第1受信アンテナ13aと第3受信アンテナ13cとで挟まれるように配置されている。
【0016】
受信機14は、受信アンテナ13a、13b、13cのそれぞれで受信された電波の強度および位相を検出する。具体的には、受信機14は、強度検出部141および位相検出部142を有する。
【0017】
強度検出部141は、受信アンテナ13a、13b、13cのそれぞれで受信された電波の強度を検出する。これらの検出された強度は、生体情報検知装置4に送信される。
【0018】
位相検出部142は、受信アンテナ13a、13b、13cのそれぞれで受信された電波の位相を検出する。具体的には、位相検出部142は、発信機11からの送信信号の位相と第1受信アンテナ13aで受信された電波信号の位相とを比較することにより、両者の位相差を検出する。これにより、位相検出部142は、第1受信アンテナ13aで受信された電波信号の位相を検出する。また、位相検出部142は、発信機11からの送信信号の位相と第2受信アンテナ13bで受信された電波信号の位相とを比較することにより、両者の位相差を検出する。これにより、位相検出部142は、第2受信アンテナ13bで受信された電波信号の位相を検出する。さらに、位相検出部142は、発信機11からの送信信号の位相と第3受信アンテナ13cで受信された電波信号の位相とを比較することにより、両者の位相差を検出する。これにより、位相検出部142は、第3受信アンテナ13cで受信された電波信号の位相を検出する。これらの検出された位相は、生体情報検知装置4に送信される。
【0019】
生体情報検知装置4は、マイコン等を主体として構成されており、CPU、ROM、RAM、I/Oおよびこれらの構成を接続するバスライン等を備えており、入力部41、記憶部42、出力部43および処理部44を有する。
【0020】
入力部41は、受信機14からのアナログ信号である強度および位相をデジタル信号に変換する。これらの変換された強度および位相は、処理部44に送信される。
【0021】
記憶部42は、RAM、ROM、書き込み可能な不揮発性記憶媒体等を含んでおり、後述の処理部44によって実行されるプログラムを記憶している。
【0022】
出力部43は、後述の処理部44からの信号を生体情報検知装置4の外部に送信する。この出力部43からの信号は、例えば、経路案内等を行う車載ナビゲーション装置、車両の外部と通信を行う車載データ通信モジュール、および、人2が携帯する携帯通信端末等に送信される。
【0023】
処理部44は、記憶部42に記憶されているプログラムを実行する装置であって、実行の際には、記憶部42のRAMを作業領域として使用する。具体的には、処理部44は、選定部441および算出部442を含む。
【0024】
選定部441は、記憶部42に記憶されているプログラムを実行することにより、受信アンテナ13a、13b、13cを、後述の生体情報推定用の特定アンテナおよびノイズ除去アンテナのいずれかに選定する。この選定の詳細については、後述する。
【0025】
算出部442は、ノイズ推定部に対応しており、記憶部42に記憶されているプログラムを実行することにより、受信機14で検出された強度および位相に基づいて、人2の生体情報を算出する。この算出の詳細については、後述する。
【0026】
以上のように、生体情報検知システム10は構成されている。このような生体情報検知システム10は、人2の生体情報としての心拍数を検知する。以下では、この生体情報検知システム10の作動について説明する。
【0027】
発信機11は、900MHz付近の周波数の送信信号を送信アンテナ12に送信する。そして、送信アンテナ12は、発信機11からの送信信号に応じた電波を運転席3および人2に向かって放射する。
【0028】
送信アンテナ12から放射された電波の一部は、人2の身体および心臓2aを透過する。このとき、人2の心臓2aが誘電体として機能するため、人2の心臓2aを透過する電波では、電気エネルギーが熱エネルギーとして失われる現象である誘電体損失が生じる。また、心臓2aの心拍に伴う形状の変化により心臓2aの比誘電率が変化するため、この誘電体損失は、心臓2aの心拍に応じて変化する。したがって、人2の心臓2aを透過する電波は、誘電体損失の変化に応じた成分を含むことにより、心臓2aの心拍に応じた成分である生体信号を含む。そして、この生体信号を含む電波は、受信アンテナ13a、13b、13cのいずれかで受信される。
【0029】
また、送信アンテナ12から放射された電波の一部は、図6に示すように、人2の身体を透過しないで、人2を回り込むように進む回折波および車内で人以外の物体に反射する反射波等として、受信アンテナ13a、13b、13cのそれぞれで受信される。この回折波および反射波は、人2の身体を通過していないため、人2の心拍に関係ない成分、すなわち、ノイズを含む。
【0030】
よって、受信アンテナ13a、13b、13cのうち、心臓2aを透過した電波を受信したアンテナから送信される信号は、生体信号とノイズとが含まれる。これに対して、受信アンテナ13a、13b、13cのうち、心臓2aを透過した電波を受信しなかったアンテナから送信される信号は、ノイズのみが含まれる。したがって、受信機14は、受信アンテナ13a、13b、13cから、生体信号およびノイズを含む信号と、ノイズを含む信号とを受信する。これらの受信機14で受信された信号は、生体情報検知装置4の入力部41に送信される。
【0031】
入力部41は、これらの受信機14で受信された信号のアナログ信号をデジタル信号に変換する。この変換された信号は、処理部44に送信される。これにより、処理部44は、時間経過に伴う受信機14で受信された信号を取得する。この時間経過に伴う受信機14で受信された信号は、受信機14で検出される強度および位相を含む時間波形であって、所定の時間間隔でサンプリングされる。そして、処理部44の算出部442は、後述するように、これらの信号に基づいて人2の心拍数を算出することにより、人2の心拍数を検知する。この検知された心拍数は、車載ナビゲーション装置、車載データ通信モジュール、携帯通信端末等に送信される。
【0032】
以上のように、生体情報検知システム10は、作動する。
【0033】
ここで、上記したように、生体信号を含む電波は、受信アンテナ13a、13b、13cのいずれかで受信される。しかし、受信アンテナ13a、13b、13cで受信される生体信号の強度が受信アンテナ13a、13b、13cの配置および人2の体格等によって異なることにより、生体情報検知装置4による人2の心拍数の検知の精度が低下することがある。このため、ここでは、生体情報検知装置4による人2の心拍数の検知の精度低下を抑制するために、ノイズに対する生体信号の比であるSN比が比較的高くなるアンテナが、生体信号を受信するアンテナとして選定される。また、ここでは、生体情報検知装置4の選定部441により、受信アンテナ13a、13b、13cのうち、生体信号を受信するアンテナとしての生体情報推定用の特定アンテナが選定される。
【0034】
以下では、この選定部441による処理について説明する。選定部441は、車両のイグニッションがオンのときであって、車両の速度がゼロである毎、すなわち、車両が停止する毎に、記憶部42に記憶されているプログラムを実行することにより、生体情報推定用の特定アンテナを選定する。以下では、図2のフローチャートを参照して、この選定部441による選定について説明する。
【0035】
図2の処理では、選定部441により、受信アンテナ13a、13b、13cのそれぞれを対象に、ステップ110から始まり、ステップ140およびステップ150のいずれかで終わるループ処理が実行される。
【0036】
ステップ110において、選定部441は、受信アンテナ13a、13b、13cのうち対象とするアンテナで受信された電波に対応する信号を受信機14から取得する。また、選定部441は、この時間波形を所定の長さの時間区間分、例えば、1秒前から現時点までの時間区間分、抽出する。
【0037】
続いて、ステップ120において、選定部441は、ステップ110にて抽出した時間波形の強度成分を離散フーリエ変換することにより、図3に示すように、この時間区間における受信機14で受信される信号の周波数と強度との関係を示す周波数特性を取得する。なお、この周波数特性は、周波数ドメインにおける波形であって、所定の周波数区間内における複数の周波数ビンのそれぞれに強度の値が割り当てられたデータである。
【0038】
続いて、ステップ130において、選定部441は、ステップ120で取得した周波数特性に基づいて、対象のアンテナで受信される信号のSN比を算出する。なお、このSN比は、ノイズに対する生体信号の比である。
【0039】
ここで、このSN比の算出を説明するために、以下のように用語を定義する。対象の周波数特性において、図3に示すように、複数の周波数ビンに割り当てられた強度のうち最も高い強度をピーク強度Spとする。対象の周波数特性において、複数の周波数ビンに割り当てられた強度のうちピーク強度Sp以外の強度を選定用ノイズ強度Snとする。
【0040】
そして、選定部441は、これらのピーク強度Spおよび選定用ノイズ強度Snに基づいて、SN比を算出する。具体的には、選定部441は、対象の周波数特性において、最も強度が高い周波数ビンを特定することにより、ピーク強度Spを取得する。また、選定部441は、最も強度が高い周波数ビン以外を特定することにより、選定用ノイズ強度Snを取得する。さらに、選定部441は、最も強度が高い周波数ビン以外のすべての周波数ビンにおける強度の総和を当該周波数ビンの数で除算することにより、平均ノイズ強度Sn_aveを算出する。そして、ピーク強度Spに生体信号が含まれており、選定用ノイズ強度Snにはノイズが含まれている可能性が高いため、選定部441は、ピーク強度Spを平均ノイズ強度Sn_aveで除算することにより、SN比を算出する。
【0041】
続いて、ステップ140において、選定部441は、ステップ130にて算出したSN比が基準値εより大きいか否かを判定する。SN比が基準値εより大きいとき、処理は、ステップ150に移行する。また、SN比が基準値ε以下であるとき、今回のループ処理は、終了する。なお、この基準値εは、心臓2aの心拍に対応する生体信号が主に重畳された電波が対象のアンテナで受信されたか否かを判定するための指標であって、実験やシミュレーション等によって設定される。
【0042】
ここで、この基準値εによるSN比の判定について、図4に示すような事例を参照して説明する。この事例では、後述の算出部442の算出を明確にするために、心臓2aの心拍に対応する生体信号が主に重畳された電波が第2受信アンテナ13bで受信されたとする。また、心臓2aの心拍に対応する生体信号とノイズとが重畳された電波が第3受信アンテナ13cで受信されたとする。さらに、ノイズが重畳された電波が第1受信アンテナ13aで受信されたとする。なお、図4において、強度がdBで表示されている。
【0043】
この場合、第2受信アンテナ13bで受信された電波に対応する信号の周波数特性では、心臓2aの心拍に相当する周波数ビンの強度が、他の周波数ビンの強度と比較して、急激に大きくなっている。したがって、第2受信アンテナ13bを対象とするループ処理において、ステップ140では、SN比が基準値εより大きいと判定される。その後、処理は、ステップ150に移行する。
【0044】
また、この場合、第3受信アンテナ13cで受信された電波に対応する信号の周波数特性では、心臓2aの心拍に相当する周波数ビンの強度が、他の周波数ビンの強度と比較して、少し大きい程度である。また、同様に、第1受信アンテナ13aで受信された電波に対応する信号の周波数特性では、心臓2aの心拍に相当する周波数ビンの強度が、他の周波数ビンの強度と比較して、少し大きい程度である。よって、第1受信アンテナ13aおよび第3受信アンテナ13cを対象とするループ処理において、ステップ140では、SN比が基準値ε以下と判定される。その後、今回のループ処理は、終了する。
【0045】
ステップ140に続くステップ150において、選定部441は、対象のアンテナを生体情報推定用の特定アンテナに選定する。図4の事例では、第2受信アンテナ13bを対象とするステップ110以降の処理において、ステップ150では、第2受信アンテナ13bが特定アンテナとして選定される。その後、今回のループ処理が終了する。
【0046】
そして、受信アンテナ13a、13b、13cのすべてについてループ処理が終了すると、処理は、ステップ160に移行する。
【0047】
ステップ160において、選定部441は、上記のループ処理において特定アンテナに選定されなかった受信アンテナ13a、13b、13cを、ノイズ除去アンテナに選定する。図4の事例では、第1受信アンテナ13aおよび第3受信アンテナ13cが、ノイズ除去アンテナに選定される。その後、選定部441の処理は、終了する。
【0048】
このようにして、選定部441により、受信アンテナ13a、13b、13cが、生体情報推定用の特定アンテナおよびノイズ除去アンテナのいずれかに選定される。
【0049】
次に、図5のフローチャートを参照して、生体情報検知装置4の算出部442による人2の心拍数の算出について説明する。ここでは、生体情報検知装置4の算出部442は、車両の走行中に、記憶部42に記憶されているプログラムを実行することにより、人2の心拍数を算出する。
【0050】
ステップ210において、算出部442は、上記した選定部441から、受信アンテナ13a、13b、13cがそれぞれ生体情報推定用の特定アンテナおよびノイズ除去アンテナのどちらであるかを取得する。
【0051】
続いて、ステップ220において、算出部442は、受信アンテナ13a、13b、13cのそれぞれで受信された電波に対応する信号を入力部41から取得する。算出部442は、選定部441は、この時間波形を所定の長さの時間区間分、例えば、1秒前から現時点までの時間区間分、抽出する。
【0052】
ここで、図4の事例を参照して、受信アンテナ13a、13b、13cで受信された電波に対応する信号について説明する。上記したように、図4の事例では、第2受信アンテナ13bは、特定アンテナに選定される。また、第1受信アンテナ13aおよび第3受信アンテナ13cは、ノイズ除去アンテナに選定される。
【0053】
この場合、図6に示すように、送信アンテナ12からの電波のうち回折波および反射波は、シートバック3aのうち第3受信アンテナ13c側から、第3受信アンテナ13c、第2受信アンテナ13b、第1受信アンテナ13aの順に伝播される。また、送信アンテナ12からの電波のうち回折波および反射波は、シートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側から、第1受信アンテナ13a、第2受信アンテナ13b、第3受信アンテナ13cの順に伝播される。なお、図6において、シートバック3aのうち第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波が、模式的に二点鎖線で示されており、W3と記載されている。また、シートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側からの回折波および反射波が、模式的に二点鎖線で示されており、W1と記載されている。さらに、W1とW3との合成波が、模式的に二点鎖線で示されており、Wmと記載されている。
【0054】
そして、ノイズ除去アンテナである第3受信アンテナ13cでは、シートバック3aのうち第3受信アンテナ13c側および第1受信アンテナ13a側からの双方の回折波および反射波が受信される。また、ここでは、受信アンテナ13a、13b、13cは、車両の幅方向に並んで配置されている。このため、第1受信アンテナ13a側から回折波および反射波が第3受信アンテナ13cで受信されるまでに伝播する距離は、第3受信アンテナ13c側から回折波および反射波が第3受信アンテナ13cで受信されるまでに伝播する距離よりも長くなる。このため、第1受信アンテナ13a側からの回折波および反射波は、第3受信アンテナ13cで受信されるまでに比較的減衰する。これにより、第3受信アンテナ13cで受信される電波のうち、第1受信アンテナ13a側から伝播される回折波および反射波の強度は、比較的低い。したがって、第3受信アンテナ13cで受信される電波のうち、第3受信アンテナ13c側から伝播される回折波および反射波の強度は、第1受信アンテナ13a側から伝播される回折波および反射波の強度と比較して、非常に高い。よって、ある時刻における第3受信アンテナ13c側から伝播される回折波および反射波、すなわち、W3は、以下式(1)のように第3受信アンテナ13cで受信される電波の強度および位相を用いて表される。式(1)において、E3は、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第3受信アンテナ13cで受信される電波の強度である。また、jは、虚数単位である。さらに、θ3は、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第3受信アンテナ13cで受信される電波の位相である。
【0055】
E3×exp[j×θ3] ・・・(1)
【0056】
また、上記と同様に、ノイズ除去アンテナである第1受信アンテナ13aでは、シートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側および第3受信アンテナ13c側からの双方の回折波および反射波が受信される。このとき、第3受信アンテナ13c側から回折波および反射波が第1受信アンテナ13aで受信されるまでに伝播する距離は、第1受信アンテナ13a側から回折波および反射波が第1受信アンテナ13aで受信されるまでに伝播する距離よりも長い。このため、第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波は、第1受信アンテナ13aで受信されるまでに比較的減衰する。これにより、第1受信アンテナ13aで受信される電波のうち、第3受信アンテナ13c側から伝播される回折波および反射波の強度は、比較的低い。したがって、第1受信アンテナ13aで受信される電波のうち、第1受信アンテナ13a側から伝播される回折波および反射波の強度は、第3受信アンテナ13c側から伝播される回折波および反射波の強度と比較して、非常に高い。よって、ある時刻における第1受信アンテナ13a側から伝播される回折波および反射波、すなわち、W1は、以下式(2)のように第1受信アンテナ13aで受信される電波の強度および位相を用いて表される。式(2)において、E1は、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第1受信アンテナ13aで受信される電波の強度である。また、jは、虚数単位である。さらに、θ1は、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第1受信アンテナ13aで受信される電波の位相である。
【0057】
E1×exp[j×θ1] ・・・(2)
【0058】
さらに、図6に示すように、特定アンテナである第2受信アンテナ13bは、心臓2aの心拍に対応する生体信号が主に重畳された電波を受信する。なお、図6では、心臓2aを透過する波が、模式的に二点鎖線で示されており、Wbと記載されている。
【0059】
また、シートバック3aのうち第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波が、第3受信アンテナ13cを経由して、第2受信アンテナ13bに伝播される。さらに、シートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側からの回折波および反射波が、第1受信アンテナ13aを経由して、第2受信アンテナ13bに伝播される。
【0060】
したがって、ある時刻において第2受信アンテナ13bで受信される電波は、生体信号およびノイズを含んでいるため、以下関係式(3)のように表される。関係式(3)において、E2は、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第2受信アンテナ13bで受信される電波の強度である。また、jは、虚数単位である。さらに、θ2は、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第2受信アンテナ13bで受信される電波の位相である。さらに、Ebは、心臓2aの心拍に対応する生体信号を示す。また、Neは、シートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側および第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波によるノイズを示す。
【0061】
E2×exp[j×θ2]=Eb+Ne ・・・(3)
【0062】
このように、図4の事例では、受信アンテナ13a、13b、13cで受信された電波に対応する信号は、上記のように表される。
【0063】
また、ここで、図4の事例では、図7に示すように、シートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側からの回折波および反射波の一部は、シートバック3aを透過しないで、シートバック3aの外側に拡散して減衰する。同様に、図示はしないが、シートバック3aのうち第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波の一部は、シートバック3aを透過しないで、シートバック3aの外側に拡散して、減衰する。これらのため、シートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側および第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波によるノイズの強度は、受信アンテナ13a、13b、13cのそれぞれで異なる。このため、ノイズ除去アンテナで受信される信号に基づいて特定アンテナで受信される信号から回折波および反射波によるノイズを除去するとき、ノイズが除去されないことやノイズ以外の信号が除去されることがある。よって、上記ステップ220のループ処理に続くステップ300において、算出部442は、特定アンテナで受信される信号の強度と、算出部442が推定するノイズの強度との差分絶対値和、すなわち、SADを算出する。これにより、算出部442は、特定アンテナで受信される信号のうちのノイズと、算出部442が推定するノイズとの類似度を評価する。そして、算出部442は、特定アンテナで受信される信号の強度のうちのノイズと、算出部442が推定するノイズの強度との差分絶対値和が小さい、すなわち、類似度が高いノイズを抽出する。これにより、算出部442は、推定するノイズのキャリブレーションを行う。なお、SADとは、Sum of Absolute Differenceの略である。
【0064】
次に、図8のサブフローチャートを参照して、このステップ300におけるキャリブレーションについて説明する。ここで、このキャリブレーションを説明するために、便宜上、以下のように用語を定義する。上記の回折波および反射波が単位長さを伝播したときの回折波および反射波の減衰後の強度を減衰前の強度で除算した値である減衰比を減衰定数αとする。車両の幅方向における生体情報推定用の特定アンテナからノイズ除去アンテナまでの距離をアンテナ間距離dとする。図4の事例では、生体情報推定用の特定アンテナは、第2受信アンテナ13bであり、ノイズ除去アンテナは、第1受信アンテナ13aおよび第3受信アンテナ13cである。このため、図4の事例では、アンテナ間距離dは、図1に示すように、第2受信アンテナ13bの中心から第1受信アンテナ13aの中心までの距離、および、第2受信アンテナ13bの中心から第3受信アンテナ13cの中心までの距離である。また、ここでは、受信アンテナ13a、13b、13cは、それぞれ、車両の幅方向に等間隔となるように配置されている。このため、第2受信アンテナ13bの中心から第1受信アンテナ13aの中心までの距離と第2受信アンテナ13bの中心から第3受信アンテナ13cの中心までの距離とは、等しくなっている。
【0065】
図8の処理では、この減衰定数αがα0~αaであるときのそれぞれを対象にしつつ、ステップ220で抽出された時刻tがt0~taであるときのそれぞれを対象に、ステップ310から始まり、ステップ330で終わるループ処理が実行される。なお、αaおよびtaのaは、自然数を表す。また、ここでは、例えば、α0~αaは、初項がα0、公差がkの等差数列になっている。また、減衰定数αが理論的にアンテナ間距離dの自乗に反比例するため、α0は、アンテナ間距離dに基づいて設定される値である。kは、例えば、0.01~1.00の範囲で設定される定数であって、実験やシミュレーション等によって設定される。さらに、t0~taは、例えば、初項がt0、公差が受信機14で受信される信号の取得のサンプリング周期の等差数列になっている。また、taは、現時刻を表しており、t0は、taから、t0からtaまでのサンプリング数-1とサンプリング周期との乗算値が減算された値になっている。
【0066】
ステップ310において、算出部442は、対象とする減衰定数αと、受信機14で受信された信号とに基づいて、対象とする時刻tであるときの上記の回折波および反射波によるノイズであって特定アンテナで受信される補正用ノイズNtを推定する。
【0067】
ここで、図4の事例を参照して、補正用ノイズNtの推定について説明する。上記したように、図6に示すように、シートバック3aのうち第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波は、ノイズ除去アンテナである第3受信アンテナ13c、特定アンテナである第2受信アンテナ13bの順に伝播される。また、シートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側からの回折波および反射波は、ノイズ除去アンテナである第1受信アンテナ13a、特定アンテナである第2受信アンテナ13bの順に伝播される。したがって、補正用ノイズNtは、第3受信アンテナ13c側から伝播されて特定アンテナで受信される回折波および反射波と、第1受信アンテナ13a側から伝播されて特定アンテナで受信される回折波および反射波との和で表すことができる。よって、補正用ノイズNtは、以下関係式(4)に示すように表すことができる。関係式(4)において、N3は、第3受信アンテナ13c側から伝播されて特定アンテナで受信される回折波および反射波を示す。また、N1は、第1受信アンテナ13a側から伝播されて特定アンテナで受信される回折波および反射波を示す。
【0068】
Nt=N3+N1 ・・・(4)
【0069】
そして、ある時刻において、第2受信アンテナ13bで受信される回折波および反射波は、第3受信アンテナ13cで受信される回折波および反射波と比較して、減衰する。また、第2受信アンテナ13bと第3受信アンテナ13cとが異なる位置に配置されているため、ある時刻において、第2受信アンテナ13bで受信される回折波および反射波と第3受信アンテナ13cで受信される回折波および反射波との位相差が生じる。ここでは、第2受信アンテナ13bから第3受信アンテナ13cまでの距離がアンテナ間距離dであるため、この位相差は、アンテナ間距離d分の位相ずれに相当する。したがって、ある時刻におけるN3を、以下関係式(5)に示すように、減衰定数α、アンテナ間距離d、ならびに、第3受信アンテナ13cで受信される電波の強度および位相を用いて表すことができる。
【0070】
関係式(5)において、E3は、上記したように、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第3受信アンテナ13cで受信される電波の強度である。また、θ3は、上記したように、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第3受信アンテナ13cで受信される電波の位相である。さらに、βは、回折波および反射波の波数であって、波長λによって表される。この波長λは、送信アンテナ12から送信される電波の波長であって、発信機11から送信される信号の周波数に基づいて設定される。そして、この波数βにアンテナ間距離dが乗算されることにより、アンテナ間距離d分の位相ずれが算出される。また、ここでは、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう回折波および反射波の進行方向に対する位相の変化方向を正方向としているため、θ3から、このアンテナ間距離d分の位相ずれが減算される。これにより、第2受信アンテナ13bで受信されるノイズの位相と、第3受信アンテナ13cで受信されるノイズの位相とが対応する。
【0071】
N3=α×d×E3×exp[j×(θ3-β×d)]
β=2×π/λ ・・・(5)
【0072】
また、上記と同様に、ある時刻において、第2受信アンテナ13bで受信される回折波および反射波は、第1受信アンテナ13aで受信される回折波および反射波と比較して、減衰する。さらに、第2受信アンテナ13bと第1受信アンテナ13aとが異なる位置に配置されているため、ある時刻において、第2受信アンテナ13bで受信される回折波および反射波と第1受信アンテナ13aで受信される回折波および反射波との位相差が生じる。ここでは、第2受信アンテナ13bから第1受信アンテナ13aまでの距離がアンテナ間距離dであるため、この位相差は、アンテナ間距離d分の位相ずれに相当する。したがって、ある時刻におけるN1を、以下関係式(6)に示すように、減衰定数α、アンテナ間距離d、ならびに、第1受信アンテナ13aで受信される電波の強度および位相を用いて表すことができる。
【0073】
関係式(6)において、E1は、上記したように、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第1受信アンテナ13aで受信される電波の強度である。また、θ1は、上記したように、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第1受信アンテナ13aで受信される電波の位相である。さらに、βは、上記したように、回折波および反射波の単位長さに含まれる波の数であって、波長λによって表される。また、ここでは、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう回折波および反射波の進行方向に対する位相の変化方向を正方向としているため、θ1に、このアンテナ間距離d分の位相ずれが加算される。これにより、第2受信アンテナ13bで受信されるノイズの位相と、第1受信アンテナ13aで受信されるノイズの位相とが対応する。
【0074】
N1=α×d×E1×exp[j×(θ1+β×d)]
β=2×π/λ ・・・(6)
【0075】
したがって、算出部442は、アンテナ間距離d、波数β、対象とする減衰定数α、対象とする時刻tであるときのE3、θ3を上記関係式(5)に代入することにより、N3を算出する。また、算出部442は、アンテナ間距離d、波数β、対象とする減衰定数α、対象とする時刻tであるときのE1、θ1を上記関係式(6)に代入することにより、N1を算出する。そして、算出部442は、この算出したN3とN1とを上記関係式(4)に代入、すなわち、このN3とN1との和を算出することにより、補正用ノイズNtを推定する。また、算出部442は、この推定した補正用ノイズNtの絶対値を算出することにより、補正用ノイズNtの強度である補正用ノイズ強度Xtを算出する。
【0076】
続いて、ステップ320において、算出部442は、対象とする時刻tであるときの生体情報推定用の特定アンテナで受信される信号の強度である特定アンテナ強度Ctを算出する。図4の事例では、この特定アンテナ強度Ctは、第2受信アンテナ13bで受信される信号の強度であって、上記関係式(3)のE2に相当する。そして、算出部442は、図9に示すように、この特定アンテナ強度Ctとステップ310にて算出した補正用ノイズ強度Xtとの差である強度差ΔEを算出する。
【0077】
続いて、ステップ330において、算出部442は、対象とする時刻t毎の強度差ΔEの積算値ΔE_sum、すなわち、差分絶対値和を算出する。その後、今回のループ処理が終了する。
【0078】
そして、対象とする減衰定数αを用いて、α0~αaのそれぞれの積算値ΔE_sumが算出されるとき、処理は、ステップ340に移行する。
【0079】
ステップ340において、算出部442は、対象とする減衰定数αを用いて算出したそれぞれの積算値ΔE_sumのうち、値が最も小さい積算値ΔE_sumを選定する。そして、算出部442は、この積算値ΔE_sumが最も小さいときの減衰定数αを、後述の心拍算出用の減衰定数αに選定する。
【0080】
このようにして、ステップ300におけるキャリブレーションが行われる。
【0081】
ステップ300のキャリブレーション後、処理は、ステップ230に移行する。ステップ230において、算出部442は、生体情報推定用の特定アンテナで受信された信号からノイズを除去する。図4の事例では、算出部442は、t0~taのそれぞれについて、ステップ300にて選定した減衰定数αの補正用ノイズNtを抽出する。これにより、特定アンテナで受信される信号の強度のうちのノイズと、算出部442が推定するノイズの強度との差分絶対値和が小さい、すなわち、類似度が高いノイズが抽出される。また、算出部442は、t0~taの補正用ノイズNtを、t0~taにおけるシートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側および第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波によるノイズであるNeにそれぞれ置き換える。そして、算出部442は、t0~taのそれぞれについて、上記関係式(3)を用いて、心臓2aの心拍に対応する生体信号であるEbを算出する。すなわち、算出部442は、t0~taのそれぞれについて、第2受信アンテナ13bで受信された電波からNeを減算することにより、Ebを算出する。
【0082】
続いて、ステップ240において、算出部442は、ステップ230にて算出したt0~taのEbの実数部を離散フーリエ変換することにより、図10に示すように、Ebの周波数特性を取得する。ここでは、図4の事例では、回折波および反射波によるノイズであるNeが、上記関係式(5)、(6)により算出部442によって算出されている。これにより、特定アンテナである第2受信アンテナ13bで受信されるノイズの位相と、ノイズ除去アンテナである第1受信アンテナ13aで受信されるノイズの位相と、ノイズ除去アンテナである第3受信アンテナ13cで受信されるノイズの位相とが対応する。そして、この位相が対応するノイズが除去されるため、Ebの周波数特性の精度は、比較的高くなっている。なお、図10では、特定アンテナである第2受信アンテナ13bで受信される電波の周波数特性がE2と示されている。
【0083】
続いて、ステップ250において、算出部442は、ステップ240にて取得した周波数特性から、人2の心拍数を算出する。具体的には、この周波数特性において強度が最も高い周波数をヘルツ単位で表した数に、60を乗算することにより、心拍数をbpm単位で算出する。なお、bpmとは、beat per minuteの略であり、1分間に1回の心拍の場合に1となる単位である。
【0084】
続いて、ステップ260において、算出部442は、ステップ250にて算出した心拍数を出力部43に送信する。出力部43は、算出部442からの心拍数のデジタルデータを、車載ナビゲーション装置、車載データ通信モジュール、携帯通信端末等に送信する。その後、処理は、ステップ210に戻る。
【0085】
このようにして、車両の走行中に、算出部442により人2の心拍数が算出される。そして、この算出部442による人2の心拍数の算出では、人2の心拍数の精度が向上する。以下では、この人2の心拍数の精度向上について説明する。
【0086】
上記実施形態では、算出部442は、特定アンテナで受信される電波の位相とノイズ除去アンテナで受信される電波の位相との位相差に基づいて、特定アンテナにおけるノイズを推定する。具体的には、算出部442は、回折波および反射波によるノイズであるNeを、上記関係式(5)、(6)により算出する。これにより、特定アンテナである第2受信アンテナ13bで受信されるノイズの位相と、ノイズ除去アンテナである第1受信アンテナ13aで受信されるノイズの位相と、ノイズ除去アンテナである第3受信アンテナ13cで受信されるノイズの位相とが対応する。このため、この位相差によってノイズ除去がされないことが抑制されるので、Ebの周波数特性の精度は、比較的高くなる。したがって、人2の心拍数の精度が向上する。
【0087】
また、この生体情報検知システム10では、以下[1]-[5]に説明するような効果も奏する。
【0088】
[1]受信アンテナ13a、13b、13cは、車両の運転席3に、車両の幅方向に並んで配置されている。これにより、送信アンテナ12から送信される電波のうち回折波および反射波は、受信アンテナ13a、13b、13cを通過しやすくなる。このため、受信アンテナ13a、13b、13cのうち特定アンテナで受信される信号の強度とノイズ除去アンテナで受信される信号の強度との差が小さくなりやすくなる。これにより、算出部442によるノイズの推定誤差が小さくなるため、生体信号の精度が向上する。したがって、人2の心拍数の精度が向上する。
【0089】
[2]算出部442は、減衰定数α、アンテナ間距離dおよび波長λに基づいて、回折波および反射波によるノイズを推定する。これにより、このノイズの推定の正確度が向上するため、生体信号の精度が向上する。したがって、人2の心拍数の精度が向上する。
【0090】
[3]算出部442は、特定アンテナ強度Ctおよびに基づいて、特定アンテナで受信されるノイズを推定する。ここでは、算出部442は、ステップ300において、特定アンテナ強度Ctとステップ310にて算出した補正用ノイズ強度Xtとの差である強度差ΔEの差分絶対値和、すなわち、SADが小さくなるように、特定アンテナで受信されるノイズを推定する。これにより、算出部442によるノイズの推定誤差が小さくなるため、生体信号の精度が向上する。したがって、人2の心拍数の精度が向上する。
【0091】
[4]選定部441は、ノイズに対する生体信号の比であるSN比が基準値εより大きい信号を受信した受信アンテナ13a、13b、13cを、生体情報推定用の特定アンテナに選定する。これにより、算出部442は、受信アンテナ13a、13b、13cのうち、受信するノイズが少ない受信アンテナ13a、13b、13cを選択的に利用して人2の心拍数を算出できる。このため、選定部441により特定アンテナが選定されない場合に比べて、算出部442は、人2の心拍数を高い精度で算出することができる。
【0092】
また、選定部441は、ノイズに対する生体信号の比であるSN比が基準値ε以下となる信号を受信した受信アンテナ13a、13b、13cを、ノイズ除去アンテナに選定する。これにより、算出部442は、受信アンテナ13a、13b、13cのうち、受信するノイズの正確度が高い受信アンテナ13a、13b、13cを選択的に利用してノイズを推定することができる。このため、選定部441によりノイズ除去アンテナが選定されない場合に比べて、算出部442は、回折波および反射波によるノイズを高い精度で推定することができる。したがって、算出部442は、生体信号を高い精度で算出することができるため、人2の心拍数を高い精度で算出することができる。
【0093】
[5]選定部441は、車両が停止しているときに、受信アンテナ13a、13b、13cを、生体情報推定用の特定アンテナに選定する。これにより、車両の走行に伴う振動等のノイズが比較的小さい状態で、生体情報推定用の特定アンテナが選定されるため、生体情報推定用の特定アンテナの選定の正確性が向上する。そして、算出部442は、このように選定された特定アンテナを利用して人2の心拍数を算出できるため、人2の心拍数を高い精度で算出することができる。
【0094】
(変形例1)
上記実施形態では、算出部442は、上記のステップ300のキャリブレーションによって減衰定数αを選定する。これに対して、算出部442は、上記のステップ300のキャリブレーションによって減衰定数αを選定することに限定されない。例えば、算出部442は、アンテナ間距離dと減衰定数αとの関係図に基づいて、減衰定数αを算出してもよい。
【0095】
例えば、この場合、図11のフローチャートに示すように、ステップ220のループ処理に続くステップ400において、算出部442は、減衰定数αを算出する。具体的には、算出部442は、ステップ210にて取得した選定部441による選定情報に基づいて、車両の幅方向における特定アンテナからノイズ除去アンテナまでの距離を算出する。図4の事例では、車両の幅方向における特定アンテナからノイズ除去アンテナまでの距離は、アンテナ間距離dに相当する。そして、上記したように、減衰定数αは、理論的に、アンテナ間距離dの自乗に反比例する。したがって、図12に示すように、減衰定数αは、アンテナ間距離dの自乗の逆数に比例する。よって、算出部442は、このアンテナ間距離dの自乗の逆数と減衰定数αの関係図に基づいて、減衰定数αを算出する。なお、このアンテナ間距離dの自乗の逆数と減衰定数αの関係図は、実験やシミュレーション等によって設定される。
【0096】
そして、算出部442は、この算出した減衰定数α、アンテナ間距離d、波数β、t0~taの各時刻tのE3、θ3を上記関係式(5)に代入することにより、t0~taのN3を算出する。また、算出部442は、この算出した減衰定数α、アンテナ間距離d、波数β、t0~taの各時刻tのE1、θ1を上記関係式(6)に代入することにより、t0~taのN1を算出する。そして、算出部442は、t0~taの各時刻tのN3およびN1の和をそれぞれ算出することにより、t0~taにおけるNeを算出する。なお、Neは、上記したように、シートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側および第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波によるノイズである。その後、処理は、ステップ230に移行する。そして、ステップ230以降は、上記と同様である。
【0097】
このように算出部442が処理しても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0098】
(変形例2)
上記の図4の事例では、特定アンテナが第2受信アンテナ13bであって、2つのノイズ除去アンテナは、それぞれ、第1受信アンテナ13aおよび第3受信アンテナ13cである。これに対して、特定アンテナが第1受信アンテナ13aであって、2つのノイズ除去アンテナは、それぞれ、第2受信アンテナ13bおよび第3受信アンテナ13cであるとする。
【0099】
このとき、ある時刻において第1受信アンテナ13aで受信される電波は、生体信号およびノイズを含んでいるため、以下関係式(7)のように表される。関係式(7)において、E1は、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第1受信アンテナ13aで受信される電波の強度である。また、jは、虚数単位である。さらに、θ1は、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第1受信アンテナ13aで受信される電波の位相である。さらに、Ebは、心臓2aの心拍に対応する生体信号を示す。また、Neは、シートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側および第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波によるノイズを示す。さらに、Neは、以下関係式(8)に示すように表すことができる。関係式(8)において、N3は、第3受信アンテナ13c側から伝播されて特定アンテナで受信される回折波および反射波を示す。また、N2は、第1受信アンテナ13a側から伝播されて特定アンテナで受信される回折波および反射波を示す。
【0100】
E1×exp[j×θ1]=Eb+Ne ・・・(7)
Ne=N3+N2 ・・・(8)
【0101】
また、このとき、ある時刻において、第1受信アンテナ13aで受信される回折波および反射波と第3受信アンテナ13cで受信される回折波および反射波との位相差が生じる。ここでは、第1受信アンテナ13aから第3受信アンテナ13cまでの距離がアンテナ間距離dの2倍であるため、この位相差は、アンテナ間距離dの2倍分の位相ずれに相当する。したがって、ある時刻におけるN3を、以下関係式(9)に示すように、減衰定数α、アンテナ間距離d、ならびに、第3受信アンテナ13cの強度および位相を用いて表すことができる。
【0102】
関係式(9)において、E3は、上記したように、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第3受信アンテナ13cで受信される電波の強度である。また、θ3は、上記したように、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第3受信アンテナ13cで受信される電波の位相である。さらに、βは、回折波および反射波の波数であって、波長λによって表される。この波長λは、送信アンテナ12から送信される電波の波長であって、発信機11から送信される信号の周波数に基づいて設定される。そして、この波数βにアンテナ間距離dの2倍が乗算されることにより、アンテナ間距離dの2倍分の位相ずれが算出される。また、ここでは、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう回折波および反射波の進行方向に対する位相の変化方向を正方向としているため、θ3から、このアンテナ間距離dの2倍分の位相ずれが減算される。これにより、第1受信アンテナ13aで受信されるノイズの位相と、第3受信アンテナ13cで受信されるノイズの位相とが対応する。
【0103】
N3=α×(2×d)×E3×exp[j×(θ3-2×β×d)]
β=2×π/λ ・・・(9)
【0104】
また、上記と同様に、ある時刻において、第2受信アンテナ13bで受信される回折波および反射波と第1受信アンテナ13aで受信される回折波および反射波との位相差が生じる。ここでは、第2受信アンテナ13bから第1受信アンテナ13aまでの距離がアンテナ間距離dであるため、この位相差は、アンテナ間距離d分の位相ずれに相当する。したがって、ある時刻におけるN2を、以下関係式(10)に示すように、減衰定数α、アンテナ間距離d、ならびに、第2受信アンテナ13bで受信される電波の強度および位相を用いて表すことができる。
【0105】
関係式(10)において、E2は、上記したように、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第2受信アンテナ13bで受信される電波の強度である。また、θ2は、上記したように、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第2受信アンテナ13bで受信される電波の位相である。さらに、βは、上記したように、回折波および反射波の単位長さに含まれる波の数であって、波長λによって表される。また、ここでは、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう回折波および反射波の進行方向に対する位相の変化方向を正方向としているため、θ2から、このアンテナ間距離d分の位相ずれが減算される。これにより、第2受信アンテナ13bで受信されるノイズの位相と、第1受信アンテナ13aで受信されるノイズの位相とが対応する。
【0106】
N2=α×d×E2×exp[j×(θ2-β×d)]
β=2×π/λ ・・・(10)
【0107】
これらにより、算出部442は、上記実施形態と同様に、Neを推定することができる。そして、算出部442は、第1受信アンテナ13aで受信される電波からこの推定したNeを減算することにより、生体信号を算出することができる。このため、生体情報検知システム10は、特定アンテナが第1受信アンテナ13aであって、2つのノイズ除去アンテナは、それぞれ、第2受信アンテナ13bおよび第3受信アンテナ13cであっても、上記と同様の効果を奏することができる。
【0108】
(変形例3)
上記実施形態では、生体情報検知システム10は、人2の生体情報としての心拍数を検知する。これに対して、変形例3では、生体情報検知システム10は、人2の心拍数に加えて、人2の拍動の一拍と次の一拍との間の時間である心拍間隔を検知する。
【0109】
図13のフローチャートを参照して、生体情報検知装置4の算出部442による人2の心拍間隔の算出について説明する。ここでは、生体情報検知装置4の算出部442は、車両の走行中に、記憶部42に記憶されているプログラムを実行することにより、人2の心拍間隔を算出する。
【0110】
ステップ210において、算出部442は、上記と同様に、選定部441から、受信アンテナ13a、13b、13cがそれぞれ生体情報推定用の特定アンテナおよびノイズ除去アンテナのどちらであるかを取得する。
【0111】
続いて、ステップ220において、算出部442は、上記と同様に、受信アンテナ13a、13b、13cのそれぞれで受信された電波に対応する信号を入力部41から取得する。
【0112】
続いて、ステップ300において、算出部442は、上記と同様に、減衰定数αを用いて、推定するノイズのキャリブレーションを行う。これにより、算出部442は、心拍算出用の減衰定数αを選定する。
【0113】
続いて、ステップ500において、算出部442は、波数βを用いて、推定するノイズのキャリブレーションを行う。
【0114】
ここで、図14に示すように、人2の身体の動きである体動によって、例えば、シートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側からの回折波および反射波であるW1が迂回等することにより、W1の経路長が変化する。また、W1と同様に、人2の体動によって、シートバック3aのうち第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波であるW3が迂回等することにより、W3の経路長が変化する。
【0115】
この回折波および反射波の経路長の変化により、図15に示すように、シートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側および第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波によるノイズの位相と、推定されるノイズの位相とがズレることがある。なお、図15において、時刻に対する、シートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側および第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波によるノイズであるNeの強度の真値が実線で記載されている。また、時刻に対する、推定された回折波および反射波によるノイズの強度がNe_Errで記載されている。
【0116】
この位相のズレにより、図16に示すように、推定されたノイズを特定アンテナで受信される信号から除去した信号の強度において、人2の拍動を示す極大値とともに、人2の拍動とは異なるものを示す極大値が含まれることがある。このため、この人2の拍動とは異なるものを示す極大値が人2の拍動であるとして誤検出されることにより、人2の心拍間隔を算出する精度が低下することがある。なお、図16において、時刻に対する、推定されたノイズを特定アンテナで受信される信号から除去した信号の強度がEh_Errで記載されている。また、人2の拍動を示す極大値がHbで示されている。さらに、人2の拍動とは異なるものを示す極大値がErrで示されている。
【0117】
このため、ステップ300に続くステップ500において、算出部442は、特定アンテナで受信される信号の強度と、選定減衰定数αsと、ノイズ除去アンテナで受信される信号の強度および位相とに基づいて、推定するノイズのキャリブレーションをさらに行う。なお、選定減衰定数αsは、上記ステップ300にて選定した減衰定数αである。
【0118】
次に、図17のサブフローチャートを参照して、このステップ500におけるキャリブレーションについて説明する。
【0119】
図17の処理では、上記した波数βが定数とされないで変数とされている。この変数としての波数βがβ0~βaであるときのそれぞれを対象に、ステップ220で抽出された時刻tがt0~taであるときのそれぞれを対象にしつつ、ステップ510から始まり、ステップ520で終わるループ処理が実行される。なお、βaのaは、上記と同様に、自然数を表す。また、ここでは、例えば、β0~βaは、初項がβ0、公差がqの等差数列になっている。さらに、ここでは、例えば、β0は、回折波および反射波の波数であって、波長λによって表される。この波長λは、上記したように、送信アンテナ12から送信される電波の波長であって、発信機11から送信される信号の周波数に基づいて設定される。また、t0~taは、上記したように、例えば、初項がt0、公差が受信機14で受信される信号の取得のサンプリング周期の等差数列になっている。また、taは、現時刻を表しており、t0は、taから、t0からtaまでのサンプリング数-1とサンプリング周期との乗算値が減算された値になっている。
【0120】
ステップ510において、算出部442は、心拍間隔用信号Ehを推定する。心拍間隔用信号Ehは、推定されたノイズを特定アンテナで受信される信号から除去した信号であって、後述の心拍間隔の算出に用いられる信号である。
【0121】
ここで、特定アンテナを第2受信アンテナ13bとする図4の事例では、ある時刻において、第2受信アンテナ13bで受信される電波は、心拍間隔用信号Ehおよびノイズを含む。このため、心拍間隔用信号Ehは、ある時刻において、第2受信アンテナ13bで受信される電波から推定されるノイズを除去することによって、以下関係式(11-1)のように表される。
【0122】
関係式(11-1)において、E2は、上記したように、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第2受信アンテナ13bで受信される電波の強度である。θ2は、上記したように、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第2受信アンテナ13bで受信される電波の位相である。N3_αsは、減衰定数αを選定減衰定数αsとしたときにおいて、第3受信アンテナ13c側から伝播されて特定アンテナで受信される回折波および反射波を推定した値である。N1_αsは、減衰定数αを選定減衰定数αsとしたときにおいて、第1受信アンテナ13a側から伝播されて特定アンテナで受信される回折波および反射波を推定した値である。jは、虚数単位である。
【0123】
Eh=E2×exp[j×θ2]-(N3_αs+N1_αs)・・・(11-1)
【0124】
また、第2受信アンテナ13bと第3受信アンテナ13cとが異なる位置に配置されているため、ある時刻において、第2受信アンテナ13bで受信される回折波および反射波と第3受信アンテナ13cで受信される回折波および反射波との位相差が生じる。ここでは、第2受信アンテナ13bから第3受信アンテナ13cまでの距離がアンテナ間距離dであるため、この位相差は、アンテナ間距離d分の位相ずれに相当する。したがって、ある時刻におけるN3_αsを、以下関係式(11-2)に示すように、選定減衰定数αs、アンテナ間距離d、ならびに、第3受信アンテナ13cで受信される電波の強度および位相を用いて表すことができる。
【0125】
関係式(11-2)において、E3は、上記したように、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第3受信アンテナ13cで受信される電波の強度である。θ3は、上記したように、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第3受信アンテナ13cで受信される電波の位相である。また、この対象とする波数βにアンテナ間距離dが乗算されることにより、アンテナ間距離d分の位相ずれが算出される。さらに、ここでは、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう回折波および反射波の進行方向に対する位相の変化方向を正方向としているため、θ3から、このアンテナ間距離d分の位相ずれが減算される。これにより、第2受信アンテナ13bで受信されるノイズの位相と、第3受信アンテナ13cで受信されるノイズの位相とが対応する。
【0126】
N3_αs=αs×d×E3×exp[j×(θ3-β×d)] ・・・(11-2)
【0127】
また、第2受信アンテナ13bと第1受信アンテナ13aとが異なる位置に配置されているため、ある時刻において、第2受信アンテナ13bで受信される回折波および反射波と第1受信アンテナ13aで受信される回折波および反射波との位相差が生じる。ここでは、第2受信アンテナ13bから第1受信アンテナ13aまでの距離がアンテナ間距離dであるため、この位相差は、アンテナ間距離d分の位相ずれに相当する。したがって、ある時刻におけるN1_αsを、以下関係式(11-3)に示すように、選定減衰定数αs、アンテナ間距離d、ならびに、第1受信アンテナ13aで受信される電波の強度および位相を用いて表すことができる。
【0128】
関係式(11-3)において、E1は、上記したように、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第1受信アンテナ13aで受信される電波の強度である。θ1は、上記したように、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第1受信アンテナ13aで受信される電波の位相である。また、この対象とする波数βにアンテナ間距離dが乗算されることにより、アンテナ間距離d分の位相ずれが算出される。さらに、ここでは、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう回折波および反射波の進行方向に対する位相の変化方向を正方向としているため、θ1に、このアンテナ間距離d分の位相ずれが加算される。これにより、第2受信アンテナ13bで受信されるノイズの位相と、第1受信アンテナ13aで受信されるノイズの位相とが対応する。
【0129】
N1_αs=αs×d×E1×exp[j×(θ1+β×d)] ・・・(11-3)
【0130】
したがって、算出部442は、アンテナ間距離d、対象とする波数β、選定減衰定数αs、対象とする時刻tであるときのE3、θ3を上記関係式(11-2)に代入することにより、N3_αsを算出する。また、算出部442は、アンテナ間距離d、対象とする波数β、選定減衰定数αs、対象とする時刻tであるときのE1、θ1を上記関係式(11-3)に代入することにより、N1_αsを算出する。さらに、算出部442は、この算出したN3_αsとN1_αsとの和を算出する。また、算出部442は、上記関係式(11-1)を用いて、特定アンテナである第2受信アンテナ13bで受信される信号からこの算出したN3_αsとN1_αsとの和を減算することにより、対象とする波数βであるときの心拍間隔用信号Ehを算出する。さらに、算出部442は、t0~taにおいて、対象とする波数βであるときの心拍間隔用信号Ehを算出する。このようにして、算出部442は、ノイズ除去アンテナとしての第3受信アンテナ13cおよび第1受信アンテナ13aで受信される信号の位相を所定の範囲で複数設定して、複数の位相のそれぞれに対して、心拍間隔用信号Ehを算出する。
【0131】
続いて、ステップ520において、算出部442は、ステップ510にて算出したt0~taの心拍間隔用信号Ehの実数部において、極大値の数を算出する。
【0132】
具体的には、算出部442は、例えば、t0~taにおいて、時刻tの次時刻に対応する心拍間隔用信号Ehの実数部から、時刻tの心拍間隔用信号Ehの実数部を減算した差分ΔEhをそれぞれ算出する。また、算出部442は、時刻tがt0のときに対応する差分ΔEhから順番に、時刻tに対応する差分ΔEhの正負を判定する。このとき、算出部442は、正の値の差分ΔEhが所定回数連続した後、差分ΔEhが正の値から負の値に切り替わり、かつ、この切り替わり後、負の値の差分ΔEhが所定回数連続するとき、心拍間隔用信号Ehの極大値があると判定する。さらに、このとき、算出部442は、差分ΔEhが正の値から負の値に切り替わる直前の正の値の差分ΔEhおよび差分ΔEhが正の値から負の値に切り替わる直後の負の値の差分ΔEhのいずれかを心拍間隔用信号Ehの極大値とする。また、このとき、算出部442は、心拍間隔用信号Ehの極大値の数を計上する。このようにして、算出部442は、t0~taにおいて、図18に示すように、対象とする波数βであるときの心拍間隔用信号Ehの実数部における極大値の数を算出する。その後、今回のループ処理が終了する。
【0133】
そして、対象とする波数βを用いて、β0~βaのそれぞれの極大値の数が算出されるとき、処理は、ステップ530に移行する。
【0134】
続いて、ステップ530において、算出部442は、β0~βaのうち、心拍間隔用信号Ehの極大値の数が最小となる波数βを、後述する心拍間隔算出用の波数βに選定する。この心拍間隔用信号Ehの極大値の数が最小であるため、この心拍間隔用信号Ehには、人2の心拍のみを示す信号が示されており、特定アンテナの信号からノイズが適切に除去されている。これにより、心拍間隔用信号Ehは、位相のズレが補正されたノイズを、第2受信アンテナ13bで受信される電波から除去した信号になっているとともに、後述の心拍間隔を算出するのに適した信号に補正される。
【0135】
このようにして、ステップ500におけるキャリブレーションが行われる。
【0136】
ステップ500のキャリブレーション後、図13に示すように、処理は、ステップ230に移行する。ステップ230において、算出部442は、生体情報推定用の特定アンテナで受信された信号からノイズを除去する。
【0137】
具体的には、算出部442は、上記と同様に、t0~taのそれぞれについて、ステップ300にて選定した減衰定数αの補正用ノイズNtを抽出する。これにより、特定アンテナで受信される信号の強度のうちのノイズと、算出部442が推定するノイズの強度との差分絶対値和が小さい、すなわち、類似度が高いノイズが抽出される。また、算出部442は、t0~taの補正用ノイズNtを、t0~taにおけるシートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側および第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波によるノイズであるNeにそれぞれ置き換える。そして、算出部442は、t0~taのそれぞれについて、上記関係式(3)を用いて、心臓2aの心拍に対応する生体信号であるEbを算出する。すなわち、算出部442は、t0~taのそれぞれについて、第2受信アンテナ13bで受信された電波からNeを減算することにより、Ebを算出する。
【0138】
また、ここでは、算出部442は、t0~taのそれぞれについて、ステップ500にて選定した波数βに対応する心拍間隔用信号Ehを抽出する。上記したように、この抽出された心拍間隔用信号Ehの数が最小であるため、この抽出された心拍間隔用信号Ehには、人2の心拍のみを示す信号が示されており、特定アンテナの信号からノイズが適切に除去されている。
【0139】
続いて、ステップ600において、算出部442は、心拍間隔を算出する。具体的には、算出部442は、図19に示すように、ステップ230にて抽出した心拍間隔用信号Ehにおいて、互いに隣り合う極大値に対応する時刻の間の時間であるΔtを心拍間隔として算出する。
【0140】
続いて、ステップ240において、算出部442は、上記と同様に、ステップ230にて算出したt0~taのEbの実数部を離散フーリエ変換することにより、図10に示すように、Ebの周波数特性を取得する。
【0141】
続いて、ステップ250において、算出部442は、上記と同様に、ステップ240にて取得した周波数特性から、人2の心拍数を算出する。具体的には、この周波数特性において強度が最も高い周波数をヘルツ単位で表した数に、60を乗算することにより、心拍数をbpm単位で算出する。
【0142】
続いて、ステップ260において、算出部442は、ステップ250にて算出した心拍数およびステップ600にて算出した心拍間隔を出力部43に送信する。出力部43は、算出部442からの心拍数および心拍間隔のデジタルデータを、車載ナビゲーション装置、車載データ通信モジュール、携帯通信端末等に送信する。その後、処理は、ステップ210に戻る。
【0143】
このようにして、車両の走行中に、算出部442により人2の心拍数および心拍間隔が算出される。そして、この算出部442による人2の心拍数の算出では、上記と同様に、人2の心拍数の精度が向上する。
【0144】
また、ここでは、心拍間隔用信号Ehの極大値の数を最小にすることにより、シートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側および第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波によるノイズの位相と推定したノイズの位相とのズレが補正される。このため、心拍間隔用信号Ehにおいて、人2の拍動を示す極大値が適切に示される。したがって、人2の心拍間隔の精度も向上する。
【0145】
(変形例4)
上記実施形態では、算出部442は、上記したステップ300にて減衰定数αによるキャリブレーションを行う。これに対して、算出部442は、W1とW3との合成波であるWmを推定することにより、心拍数を算出する。なお、図6に示すように、W1は、上記と同様に、シートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側からの回折波および反射波である。W3は、シートバック3aのうち第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波である。
【0146】
次に、図20のフローチャートを参照して、W1とW3との合成波であるWmに基づく心拍数の算出について説明する。
【0147】
ステップ210において、算出部442は、上記と同様に、選定部441から、受信アンテナ13a、13b、13cがそれぞれ生体情報推定用の特定アンテナおよびノイズ除去アンテナのどちらであるかを取得する。
【0148】
続いて、ステップ220において、算出部442は、上記と同様に、受信アンテナ13a、13b、13cのそれぞれで受信された電波に対応する信号を入力部41から取得する。
【0149】
続いて、ステップ700において、算出部442は、W3とW1との合成波であるWmを推定する。
【0150】
ここで、このWmを推定するためのW3とW1とについて説明する。
【0151】
第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう方向において、基準位置から任意距離X分移動した位置におけるW3は、以下式(12-1)のように表される。なお、ここでは、基準位置は、第3受信アンテナ13cの位置とされている。
【0152】
式(12-1)において、Aは、送信アンテナ12から伝播されるW3の初期強度である。θAは、時刻tがゼロであるときの基準位置におけるW3の位相である。Lは、W3が送信アンテナ12から基準位置に到達するまでの経路長であって、実験やシミュレーション等により設定される。被除数のAに対応する除数である4×π×(L+X)は、W3が基準位置から任意距離X分移動した位置に到達するまでのW3の減衰に関する項である。jは、虚数単位である。tは、時刻である。ωは、回折波および反射波の角周波数であって、送信アンテナ12から送信される電波の周波数に基づいて設定される。βは、回折波および反射波の波数であって、波長λによって表される。この波長λは、送信アンテナ12から送信される電波の波長であって、発信機11から送信される信号の周波数に基づいて設定される。そして、この波数βに任意距離Xが乗算されることにより、任意距離X分の位相ずれが算出される。また、ここでは、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう回折波および反射波の進行方向に対する位相の変化方向を正方向としているため、θAから、この任意距離X分の位相ずれが減算される。これにより、基準位置から任意距離X分移動した位置におけるW3の位相が表される。
【0153】
【数1】
【0154】
また、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう方向において、基準位置から任意距離X分移動した位置におけるW1は、以下式(12-2)のように表される。
【0155】
式(12-2)において、Bは、送信アンテナ12から伝播されるW1の初期強度である。θBは、時刻tがゼロであるときの第1受信アンテナ13aの位置におけるW1の位相である。Lは、W1が送信アンテナ12から第1受信アンテナ13aに到達するまでの経路であって、ここでは、W3が送信アンテナ12から基準位置に到達するまでの経路長と同じとされている。被除数のBに対応する除数である4×π×(L+2×d-X)は、W1が基準位置から任意距離X分移動した位置に到達するまでのW1の減衰に関する項である。jは、虚数単位である。tは、時刻である。ωは、回折波および反射波の角周波数であって、送信アンテナ12から送信される電波の周波数に基づいて設定される。βは、回折波および反射波の波数であって、波長λによって表される。この波長λは、送信アンテナ12から送信される電波の波長であって、発信機11から送信される信号の周波数に基づいて設定される。また、ここでは、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう回折波および反射波の進行方向に対する位相の変化方向を正方向としている。さらに、ここでは、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう方向において、第3受信アンテナ13cから第1受信アンテナ13aまでの距離は、アンテナ間距離dの2倍になっている。このため、アンテナ間距離dの2倍から任意距離Xを減算した値に波数βが乗算されることにより、任意距離X分の位相ずれが算出される。さらに、θBに、この任意距離X分の位相ずれが加算される。これにより、基準位置から任意距離X分移動した位置におけるW1の位相が表される。
【0156】
【数2】
【0157】
次に、Wmは、W3とW1との合成波であるため、式(12-1)と式(12-2)とを足し合わせることにより、以下関係式(12-3)のように表される。
【0158】
関係式(12-3)において、Emは、合成波であるWmの強度である。θmは、合成波であるWmの位相である。この関係式(12-3)では、A、θA、B、θBが未知数になっている。したがって、A、θA、B、θBを求めることにより、Wmを推定することができる。
【0159】
【数3】
【0160】
また、ここでは、基準位置が第3受信アンテナ13cの位置であるため、Xがゼロであるとき、Emは、E3と等しく、θmは、θ3と等しくなる。なお、E3は、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第3受信アンテナ13cで受信される電波の強度である。また、θ3は、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第3受信アンテナ13cで受信される電波の位相である。
【0161】
したがって、関係式(12-3)のXにゼロを代入し、EmにE3を代入し、θmにθ3を代入することにより、関係式(12-3)は、関係式(13-1)に変形される。
【0162】
【数4】
【0163】
また、ここでは、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう方向において、基準位置からアンテナ間距離dの2倍分移動した位置に第1受信アンテナ13aが配置されている。このため、Xがアンテナ間距離dの2倍であるとき、Emは、E1と等しく、θmは、θ1と等しくなる。なお、E1は、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第1受信アンテナ13aで受信される電波の強度である。また、θ1は、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第1受信アンテナ13aで受信される電波の位相である。
【0164】
したがって、関係式(12-3)のXにアンテナ間距離dの2倍を代入し、EmにE1を代入し、θmにθ1を代入することにより、関係式(12-3)は、関係式(13-2)に変形される。
【0165】
【数5】
【0166】
また、オイラーの公式によって、関係式(13-1)から実数部と虚数部との2つの関係式が得られるとともに、関係式(13-2)から実数部と虚数部との2つの関係式が得られるため、4つの関係式が得られる。これにより、A、θA、B、θBの4つの未知数に対して、4つの関係式からなる連立方程式が得られる。よって、算出部442は、この連立方程式から、A、θA、B、θBの4つの未知数を算出することにより、W3とW1との合成波であるWmを推定する。
【0167】
続いて、ステップ230において、算出部442は、生体情報推定用の特定アンテナで受信された信号からノイズを除去する。具体的には、算出部442は、上記したステップ700にて推定した合成波に基づいて、Neを算出する。なお、Neとは、シートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側および第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波によるノイズである。
【0168】
ここで、特定アンテナを第2受信アンテナ13bとする図4の事例では、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう方向において、基準位置である第3受信アンテナ13cから、第2受信アンテナ13bまでの距離は、アンテナ間距離dである。このため、Neは、関係式(12-3)のXにアンテナ間距離dを代入することにより、関係式(14)のように変形される。
【0169】
【数6】
【0170】
したがって、算出部442は、t0~taのそれぞれにおいて、アンテナ間距離d、予め設定される経路長L、角周波数ω、ステップ700にて算出されたA、θA、B、θBを関係式(14)に代入することにより、Neを算出する。また、算出部442は、t0~taのそれぞれについて、上記関係式(3)を用いて、E2、θ2およびjに基づいて、第2受信アンテナ13bで受信された電波を算出する。なお、E2は、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第2受信アンテナ13bで受信される電波の強度である。また、θ2は、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第2受信アンテナ13bで受信される電波の位相である。さらに、jは、虚数単位である。
【0171】
よって、算出部442は、t0~taのそれぞれについて、この算出した第2受信アンテナ13bで受信された電波から、上記にて算出したNeを減算することによって、心臓2aの心拍に対応する生体信号を示すEbを算出する。
【0172】
続いて、ステップ240において、算出部442は、上記と同様に、ステップ230にて算出したt0~taのEbの実数部を離散フーリエ変換することにより、図10に示すように、Ebの周波数特性を取得する。
【0173】
続いて、ステップ250において、算出部442は、上記と同様に、ステップ240にて取得した周波数特性から、人2の心拍数を算出する。
【0174】
続いて、ステップ260において、算出部442は、上記と同様に、ステップ250にて算出した心拍数を出力部43に送信する。出力部43は、算出部442からの心拍数のデジタルデータを、車載ナビゲーション装置、車載データ通信モジュール、携帯通信端末等に送信する。その後、処理は、ステップ210に戻る。
【0175】
このようにして、車両の走行中に、算出部442により人2の心拍数が算出される。このように、心拍数が算出されても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0176】
また、ここでは、シートバック3aのうち第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波であるW3と、シートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側からの回折波および反射波であるW1との合成波であるWmが推定されている。このため、W1とW3とが互いに干渉することによって生じる、第1受信アンテナ13a側および第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波によるノイズの推定誤差が小さくなる。したがって、このノイズの推定精度が向上するため、心拍数の精度が向上する。
【0177】
(変形例5)
上記実施形態では、生体情報検知システム10は、3つの受信アンテナ13a、13b、13cを備えている。これに対して、変形例5では、生体情報検知システム10は、図21に示すように、3つの受信アンテナ13a、13b、13cに加えて、2つの受信アンテナ13d、13eをさらに備える。この追加された受信アンテナ13d、13eのそれぞれが第4受信アンテナ13d、第5受信アンテナ13eと適宜記載されている。また、変形例5では、合成波の推定が変形例4とは異なる。これら以外は、変形例4と同様である。
【0178】
第4受信アンテナ13dは、運転席3のシートバック3aに埋め込まれている。また、第4受信アンテナ13dは、車両の幅方向に、第2受信アンテナ13bと第3受信アンテナ13cとの間に位置するように配置されている。
【0179】
第5受信アンテナ13eは、運転席3のシートバック3aに埋め込まれている。また、第5受信アンテナ13eは、車両の幅方向に、第1受信アンテナ13aと第2受信アンテナ13bとの間に位置するように配置されている。
【0180】
また、5つの受信アンテナ13a、13b、13c、13d、13eは、車両の幅方向に等間隔に並んでいる。このため、車両の幅方向における第3受信アンテナ13cから第4受信アンテナ13dまでの距離は、アンテナ間距離dになっている。また、車両の幅方向における第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bまでの距離は、アンテナ間距離dの2倍になっている。さらに、車両の幅方向における第3受信アンテナ13cから第5受信アンテナ13eまでの距離は、アンテナ間距離dの3倍になっている。また、車両の幅方向における第3受信アンテナ13cから第1受信アンテナ13aまでの距離は、アンテナ間距離dの4倍になっている。
【0181】
変形例5では、このように生体情報検知システム10が構成されている。
【0182】
次に、図20のフローチャートを参照して、変形例5におけるW1とW3との合成波であるWmに基づく心拍数の算出について説明する。
【0183】
ステップ210において、算出部442は、上記と同様に、選定部441から、受信アンテナ13a、13b、13cがそれぞれ生体情報推定用の特定アンテナおよびノイズ除去アンテナのどちらであるかを取得する。
【0184】
続いて、ステップ220において、算出部442は、上記と同様に、受信アンテナ13a、13b、13cのそれぞれで受信された電波に対応する信号を入力部41から取得する。
【0185】
続いて、ステップ700において、算出部442は、W3とW1との合成波であるWmを推定する。
【0186】
ここで、このWmを推定するためのW3とW1とについて説明する。
【0187】
ここでは、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう方向において、基準位置から任意距離X分移動した位置におけるW3は、以下式(15-1)のように表される。なお、ここでは、基準位置は、上記と同様に、第3受信アンテナ13cの位置とされている。
【0188】
式(15-1)において、Aは、送信アンテナ12から伝播されるW3の初期強度である。θAは、時刻tがゼロであるときの基準位置におけるW3の位相である。Lは、W3が送信アンテナ12から基準位置に到達するまでの経路長であって、実験やシミュレーション等により設定される。被除数のAに対応する除数であるP×(L+X)は、上記変形例4にて記載した4×π×(L+X)のうち4×πをPに置き換えたものであって、W3の減衰に関する項である。このPは、W3の減衰に関する係数である。jは、虚数単位である。tは、時刻である。ωは、回折波および反射波の角周波数であって、送信アンテナ12から送信される電波の周波数に基づいて設定される。βpは、W3の位相ずれに関する係数であって、後述するように未知数とされている。このため、このβpに任意距離Xが乗算されることにより、任意距離X分の位相ずれが算出される。また、ここでは、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう回折波および反射波の進行方向に対する位相の変化方向を正方向としているため、θAから、このX分の位相ずれが減算される。これにより、基準位置から任意距離X分移動した位置におけるW3の位相が表される。
【0189】
【数7】
【0190】
また、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう方向において、基準位置から任意距離X分移動した位置におけるW1は、以下式(15-2)のように表される。
【0191】
式(15-2)において、Bは、送信アンテナ12から伝播されるW1の初期強度である。θBは、時刻tがゼロであるときの第1受信アンテナ13aの位置におけるW1の位相である。Lは、W1が送信アンテナ12から第1受信アンテナ13aに到達するまでの経路であって、ここでは、W3が送信アンテナ12から基準位置に到達するまでの経路長と同じとされている。被除数のBに対応する除数であるQ×(L+4×d-X)は、W1の減衰に関する項である。このQは、W1の減衰に関する係数である。jは、虚数単位である。tは、時刻である。ωは、回折波および反射波の角周波数であって、送信アンテナ12から送信される電波の周波数に基づいて設定される。βqは、W1の位相ずれに関する係数であって、後述するように未知数とされている。また、ここでは、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう回折波および反射波の進行方向に対する位相の変化方向を正方向としている。さらに、ここでは、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう方向において、第3受信アンテナ13cから第1受信アンテナ13aまでの距離は、アンテナ間距離dの4倍になっている。このため、アンテナ間距離dの4倍から任意距離Xを減算した値にβqが乗算されることにより、任意距離X分の位相ずれが算出される。さらに、θBに、このX分の位相ずれが加算される。これにより、基準位置から任意距離X分移動した位置におけるW1の位相が表される。
【0192】
【数8】
【0193】
次に、Wmは、W3とW1との合成波であるため、式(15-1)と式(15-2)とを足し合わせることにより、以下関係式(15-3)のように表される。
【0194】
関係式(15-3)において、Emは、合成波であるWmの強度である。θmは、合成波であるWmの位相である。この関係式(15-3)では、A、θA、B、θBに加えて、P、Q、βp、βqが未知数になっている。したがって、これらの未知数を求めることにより、Wmを推定することができる。
【0195】
【数9】
【0196】
また、ここでは、基準位置が第3受信アンテナ13cの位置であるため、Xがゼロであるとき、Emは、E3と等しく、θmは、θ3と等しくなる。なお、E3は、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第3受信アンテナ13cで受信される電波の強度である。また、θ3は、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第3受信アンテナ13cで受信される電波の位相である。
【0197】
したがって、関係式(15-3)のXにゼロを代入し、EmにE3を代入し、θmにθ3を代入することにより、関係式(15-3)は、関係式(16-1)に変形される。
【0198】
【数10】
【0199】
また、ここでは、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう方向において、第3受信アンテナ13cから第4受信アンテナ13dまでの距離は、アンテナ間距離dになっている。このため、Xがアンテナ間距離dであるとき、Emは、E4と等しく、θmは、θ4と等しくなる。なお、E4は、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第4受信アンテナ13dで受信される電波の強度である。また、θ4は、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第4受信アンテナ13dで受信される電波の位相である。
【0200】
したがって、関係式(15-3)のXにアンテナ間距離dを代入し、EmにE4を代入し、θmにθ4を代入することにより、関係式(15-3)は、関係式(16-2)に変形される。
【0201】
【数11】
【0202】
さらに、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう方向において、第3受信アンテナ13cから第5受信アンテナ13eまでの距離は、アンテナ間距離dの3倍になっている。このため、Xがアンテナ間距離dの3倍であるとき、Emは、E5と等しく、θmは、θ5と等しくなる。なお、E5は、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第5受信アンテナ13eで受信される電波の強度である。また、θ5は、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第5受信アンテナ13eで受信される電波の位相である。
【0203】
したがって、関係式(15-3)のXにアンテナ間距離dの3倍を代入し、EmにE5を代入し、θmにθ5を代入することにより、関係式(15-3)は、関係式(16-3)に変形される。
【0204】
【数12】
【0205】
また、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう方向において、第3受信アンテナ13cから第1受信アンテナ13aまでの距離は、アンテナ間距離dの4倍になっている。このため、Xがアンテナ間距離dの4倍であるとき、Emは、E1と等しく、θmは、θ1と等しくなる。なお、E1は、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第1受信アンテナ13aで受信される電波の強度である。また、θ1は、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第1受信アンテナ13aで受信される電波の位相である。
【0206】
したがって、関係式(15-3)のXにアンテナ間距離dの4倍を代入し、EmにE1を代入し、θmにθ1を代入することにより、関係式(15-3)は、関係式(16-4)に変形される。
【0207】
【数13】
【0208】
また、オイラーの公式によって、各関係式(16-1)~(16-4)から実数部と虚数部との2つの関係式が得られるため、8つの関係式が得られる。これにより、A、θA、B、θB、P、Q、βp、βqの8つの未知数に対して、8つの関係式からなる連立方程式が得られる。よって、算出部442は、この連立方程式から、A、θA、B、θB、P、Q、βp、βqの8つの未知数を算出することにより、W3とW1との合成波であるWmを推定する。
【0209】
続いて、ステップ230において、算出部442は、生体情報推定用の特定アンテナで受信された信号からノイズを除去する。具体的には、算出部442は、上記したステップ700にて推定した合成波に基づいて、Neを算出する。なお、Neとは、シートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側および第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波によるノイズである。
【0210】
ここで、特定アンテナを第2受信アンテナ13bとすると、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう方向において、基準位置である第3受信アンテナ13cから、第2受信アンテナ13bまでの距離は、アンテナ間距離dの2倍である。このため、Neは、関係式(15-3)のXにアンテナ間距離dの2倍を代入することにより、関係式(17)のように変形される。
【0211】
【数14】
【0212】
したがって、算出部442は、t0~taのそれぞれにおいて、アンテナ間距離d、予め設定される経路長L、角周波数ω、ステップ700にて算出されたA、θA、B、θB、P、Q、βp、βqを関係式(17)に代入することにより、Neを算出する。また、算出部442は、t0~taのそれぞれについて、上記関係式(3)を用いて、E2、θ2およびjに基づいて、第2受信アンテナ13bで受信された電波を算出する。なお、E2は、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第2受信アンテナ13bで受信される電波の強度である。また、θ2は、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第2受信アンテナ13bで受信される電波の位相である。さらに、jは、虚数単位である。
【0213】
よって、算出部442は、t0~taのそれぞれについて、この算出した第2受信アンテナ13bで受信された電波から上記にて算出したNeを減算することによって、心臓2aの心拍に対応する生体信号を示すEbを算出する。
【0214】
続いて、ステップ240において、算出部442は、上記と同様に、ステップ230にて算出したt0~taのEbの実数部を離散フーリエ変換することにより、図10に示すように、Ebの周波数特性を取得する。
【0215】
続いて、ステップ250において、算出部442は、上記と同様に、ステップ240にて取得した周波数特性から、人2の心拍数を算出する。
【0216】
続いて、ステップ260において、算出部442は、上記と同様に、ステップ250にて算出した心拍数を出力部43に送信する。出力部43は、算出部442からの心拍数のデジタルデータを、車載ナビゲーション装置、車載データ通信モジュール、携帯通信端末等に送信する。その後、処理は、ステップ210に戻る。
【0217】
このようにして、車両の走行中に、算出部442により人2の心拍数が算出される。このように、心拍数が算出されても、上記変形例4と同様の効果を奏する。
【0218】
(変形例6)
上記変形例4では、生体情報検知システム10は、人2の生体情報としての心拍数を検知する。これに対して、ここでは、生体情報検知システム10は、人2の心拍数に加えて、人2の拍動の一拍と次の一拍との間の時間である心拍間隔を検知する。具体的には、算出部442は、W1とW3との合成波であるWmを用いて、人2の心拍間隔を算出する。
【0219】
図22のフローチャートを参照して、生体情報検知装置4の算出部442による人2の心拍間隔の算出について説明する。ここでは、算出部442は、車両の走行中に、記憶部42に記憶されているプログラムを実行することにより、人2の心拍間隔を算出する。
【0220】
ステップ210において、算出部442は、上記と同様に、選定部441から、受信アンテナ13a、13b、13cがそれぞれ生体情報推定用の特定アンテナおよびノイズ除去アンテナのどちらであるかを取得する。
【0221】
続いて、ステップ220において、算出部442は、上記と同様に、受信アンテナ13a、13b、13cのそれぞれで受信された電波に対応する信号を入力部41から取得する。
【0222】
続いて、ステップ700において、算出部442は、上記と同様に、W3とW1との合成波であるWmを推定する。例えば、算出部442は、変形例4と同様に、2つのノイズ除去アンテナの信号から得られる4つの連立方程式から、A、θA、B、θBの4つの未知数を算出することにより、W3とW1との合成波であるWmを推定する。
【0223】
続いて、ステップ500において、算出部442は、ステップ700にて推定した合成波のうち波数βのキャリブレーションをさらに行う。
【0224】
次に、図23のサブフローチャートを参照して、このステップ500におけるキャリブレーションについて説明する。
【0225】
図22の処理では、波数βは、変形例3と同様に、定数とされないで変数とされている。この変数としての波数βがβ0~βaであるときのそれぞれを対象に、ステップ220で抽出された時刻tがt0~taであるときのそれぞれを対象にしつつ、ステップ510から始まり、ステップ520で終わるループ処理が実行される。なお、βaのaは、上記と同様に、自然数を表す。また、ここでは、例えば、β0~βaは、初項がβ0、公差がqの等差数列になっている。さらに、ここでは、例えば、β0は、回折波および反射波の波数であって、波長λによって表される。この波長λは、上記したように、送信アンテナ12から送信される電波の波長であって、発信機11から送信される信号の周波数に基づいて設定される。また、t0~taは、上記したように、例えば、初項がt0、公差が受信機14で受信される信号の取得のサンプリング周期の等差数列になっている。また、taは、現時刻を表しており、t0は、taから、t0からtaまでのサンプリング数-1とサンプリング周期との乗算値が減算された値になっている。
【0226】
ステップ510において、算出部442は、対象とする波数βと、特定アンテナで受信される信号の強度と、ステップ700にて推定した合成波と、に基づいて、心拍間隔用信号Ehを推定する。なお、心拍間隔用信号Ehは、推定されたノイズを特定アンテナで受信される信号から除去した信号であって、心拍間隔の算出に用いられる信号である。
【0227】
ここで、特定アンテナを第2受信アンテナ13bとする図4の事例では、ある時刻において第2受信アンテナ13bで受信される電波は、心拍間隔用信号Ehおよびノイズを含む。このため、心拍間隔用信号Ehは、ある時刻において第2受信アンテナ13bで受信される電波から、推定されるノイズを除去することによって、以下関係式(18)のように表される。
【0228】
関係式(18)において、E2は、上記したように、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第2受信アンテナ13bで受信される電波の強度である。θ2は、上記したように、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第2受信アンテナ13bで受信される電波の位相である。Neは、シートバック3aのうち第1受信アンテナ13a側および第3受信アンテナ13c側からの回折波および反射波によるノイズであって、上記関係式(14)の定数である波数βを、変数である対象とする波数βに置き換えたものである。
【0229】
したがって、算出部442は、対象とする時刻tであるときの第2受信アンテナ13bで受信される信号から、対象とするβかつ対象とする時刻tであるときのNeを減算することにより、心拍間隔用信号Ehを算出する。
【0230】
【数15】
【0231】
続いて、ステップ520において、算出部442は、上記と同様に、ステップ510にて算出したt0~taの心拍間隔用信号Ehの実数部において、極大値の数を算出する。
【0232】
そして、対象とする波数βを用いて、β0~βaのそれぞれの極大値の数が算出されるとき、処理は、ステップ530に移行する。
【0233】
続いて、ステップ530において、算出部442は、β0~βaのうち、心拍間隔用信号Ehの極大値の数が最小となる波数βを、心拍間隔算出用の波数βに選定する。この心拍間隔用信号Ehの極大値の数が最小であるため、この心拍間隔用信号Ehには、人2の心拍のみを示す信号が示されており、特定アンテナの信号からノイズが適切に除去されている。これにより、心拍間隔用信号Ehは、位相のズレが補正されたノイズを、第2受信アンテナ13bで受信される電波から除去した信号になっているとともに、心拍間隔を算出するのに適した信号に補正される。
【0234】
このようにして、ステップ500におけるキャリブレーションが行われる。
【0235】
ステップ500のキャリブレーション後、処理は、ステップ230に移行する。ステップ230において、算出部442は、上記と同様に、t0~taのそれぞれについて、ステップ300にて選定した減衰定数αの補正用ノイズNtを抽出する。また、算出部442は、上記と同様に、ステップ500にて選定した波数βに対応する心拍間隔用信号Ehを抽出する。
【0236】
続いて、ステップ600において、算出部442は、心拍間隔を算出する。具体的には、算出部442は、ステップ230にて抽出した心拍間隔用信号Ehにおいて、互いに隣り合う極大値に対応する時刻の間の時間であるΔtを心拍間隔として算出する。
【0237】
続いて、ステップ240において、算出部442は、上記と同様に、ステップ230にて算出したt0~taのEbの実数部を離散フーリエ変換することにより、図10に示すように、Ebの周波数特性を取得する。
【0238】
続いて、ステップ250において、算出部442は、上記と同様に、ステップ240にて取得した周波数特性から、人2の心拍数を算出する。具体的には、この周波数特性において強度が最も高い周波数をヘルツ単位で表した数に、60を乗算することにより、心拍数をbpm単位で算出する。
【0239】
続いて、ステップ260において、算出部442は、ステップ250にて算出した心拍数およびステップ600にて算出した心拍間隔を出力部43に送信する。出力部43は、算出部442からの心拍数および心拍間隔のデジタルデータを、車載ナビゲーション装置、車載データ通信モジュール、携帯通信端末等に送信する。その後、処理は、ステップ210に戻る。
【0240】
このようにして、車両の走行中に、算出部442により人2の心拍数および心拍間隔が算出される。このように、心拍数が算出されても、上記変形例3と同様の効果を奏する。
【0241】
(変形例7)
上記変形例3では、特定アンテナが第2受信アンテナ13bであって、2つのノイズ除去アンテナは、それぞれ、第1受信アンテナ13aおよび第3受信アンテナ13cである。これに対して、特定アンテナが第1受信アンテナ13aであって、2つのノイズ除去アンテナは、それぞれ、第2受信アンテナ13bおよび第3受信アンテナ13cであるとする。この場合のステップ500におけるキャリブレーションについて説明する。
【0242】
ステップ510において、算出部442は、対象とする波数βと、特定アンテナで受信される信号の強度と、ノイズアンテナで受信される信号の強度および位相と、に基づいて、心拍間隔用信号Ehを推定する。なお、心拍間隔用信号Ehは、推定されたノイズを特定アンテナで受信される信号から除去した信号であって、心拍間隔の算出に用いられる信号である。
【0243】
ここで、特定アンテナを第1受信アンテナ13aとし、ノイズ除去アンテナを第2受信アンテナ13bおよび第3受信アンテナ13cとする事例において、心拍間隔用信号Ehは、以下関係式(19-1)のように表される。
【0244】
関係式(19-1)において、E1は、上記したように、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第1受信アンテナ13aで受信される電波の強度である。θ1は、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第1受信アンテナ13aで受信される電波の位相である。N3_αsは、減衰定数αを選定減衰定数αsとしたときにおいて、第3受信アンテナ13c側から伝播されて特定アンテナで受信される回折波および反射波を推定した値である。N2_αsは、減衰定数αを選定減衰定数αsとしたときにおいて、第1受信アンテナ13a側から伝播されて特定アンテナで受信される回折波および反射波を推定した値である。jは、虚数単位である。
【0245】
Eh=E1×exp(j×θ1)-(N3_αs+N2_αs) ・・・(19-1)
【0246】
また、第1受信アンテナ13aと第3受信アンテナ13cとが異なる位置に配置されているため、ある時刻において、第1受信アンテナ13aで受信される回折波および反射波と第3受信アンテナ13cで受信される回折波および反射波との位相差が生じる。ここでは、第1受信アンテナ13aから第3受信アンテナ13cまでの距離がアンテナ間距離dの2倍であるため、この位相差は、アンテナ間距離dの2倍分の位相ずれに相当する。したがって、ある時刻におけるN3_αsを、以下関係式(19-2)に示すように、選定減衰定数αs、アンテナ間距離d、ならびに、第3受信アンテナ13cで受信される電波の強度および位相を用いて表すことができる。
【0247】
関係式(19-2)において、E3は、上記したように、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第3受信アンテナ13cで受信される電波の強度である。θ3は、上記したように、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第3受信アンテナ13cで受信される電波の位相である。また、この対象とする波数βにアンテナ間距離dの2倍が乗算されることにより、アンテナ間距離dの2倍分の位相ずれが算出される。また、ここでは、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう回折波および反射波の進行方向に対する位相の変化方向を正方向としているため、θ3から、このアンテナ間距離dの2倍分の位相ずれが減算される。これにより、第1受信アンテナ13aで受信されるノイズの位相と、第3受信アンテナ13cで受信されるノイズの位相とが対応する。
【0248】
N3_αs=αs×(2×d)×E3×exp[j×(θ3-β×(2×d))]
・・・(19-2)
【0249】
また、第1受信アンテナ13aと第2受信アンテナ13bとが異なる位置に配置されているため、ある時刻において、第1受信アンテナ13aで受信される回折波および反射波と第2受信アンテナ13bで受信される回折波および反射波との位相差が生じる。ここでは、第1受信アンテナ13aから第2受信アンテナ13bまでの距離がアンテナ間距離dであるため、この位相差は、アンテナ間距離d分の位相ずれに相当する。したがって、ある時刻におけるN1_αsを、以下関係式(19-3)に示すように、選定減衰定数αs、アンテナ間距離d、ならびに、第1受信アンテナ13aで受信される電波の強度および位相を用いて表すことができる。
【0250】
関係式(19-3)において、E1は、上記したように、ある時刻において受信機14の強度検出部141で検出される、第1受信アンテナ13aで受信される電波の強度である。θ1は、上記したように、強度検出部141で検出されたときと同じ時刻において受信機14の位相検出部142で検出される、第1受信アンテナ13aで受信される電波の位相である。また、この対象とする波数βにアンテナ間距離dが乗算されることにより、アンテナ間距離d分の位相ずれが算出される。また、ここでは、第3受信アンテナ13cから第2受信アンテナ13bに向かう回折波および反射波の進行方向に対する位相の変化方向を正方向としているため、θ2から、このアンテナ間距離d分の位相ずれが減算される。これにより、第1受信アンテナ13aで受信されるノイズの位相と、第2受信アンテナ13bで受信されるノイズの位相とが対応する。
【0251】
N2_αs=αs×d×E2×exp[j×(θ2-β×d)] ・・・(19-3)
【0252】
したがって、算出部442は、アンテナ間距離d、対象とする波数β、選定減衰定数αs、対象とする時刻tであるときのE3、θ3を上記関係式(19-2)に代入することにより、N3_αsを算出する。また、算出部442は、アンテナ間距離d、対象とする波数β、選定減衰定数αs、対象とする時刻tであるときのE2、θ2を上記関係式(19-3)に代入することにより、N2_αsを算出する。さらに、算出部442は、この算出したN3_αsとN2_αsとの和を算出する。また、算出部442は、上記関係式(19-1)を用いて、特定アンテナである第1受信アンテナ13aで受信される信号から、このN3_αsとN2_αsとの和を減算することにより、心拍間隔用信号Ehを算出する。
【0253】
続いて、ステップ520において、算出部442は、上記と同様に、ステップ510にて算出したt0~taの心拍間隔用信号Ehの実数部において、極大値の数を算出する。
【0254】
そして、対象とする波数βを用いて、β0~βaのそれぞれの極大値の数が算出されるとき、処理は、ステップ530に移行する。
【0255】
ステップ530において、算出部442は、β0~βaのうち、心拍間隔用信号Ehの極大値の数が最小となる波数βを、心拍間隔算出用の波数βに選定する。
【0256】
このようにして、ステップ500におけるキャリブレーションが行われる。
【0257】
ステップ500のキャリブレーション後、処理は、ステップ230に移行する。ステップ230において、算出部442は、上記と同様に、t0~taのそれぞれについて、ステップ300にて選定した減衰定数αの補正用ノイズNtを抽出する。また、算出部442は、上記と同様に、ステップ500にて選定した波数βに対応する心拍間隔用信号Ehを抽出する。
【0258】
続いて、ステップ600において、算出部442は、心拍間隔を算出する。具体的には、算出部442は、ステップ230にて抽出した心拍間隔用信号Ehにおいて、互いに隣り合う極大値に対応する時刻の間の時間であるΔtを心拍間隔として算出する。
【0259】
続いて、ステップ240において、算出部442は、上記と同様に、ステップ230にて算出したt0~taのEbの実数部を離散フーリエ変換することにより、図10に示すように、Ebの周波数特性を取得する。
【0260】
続いて、ステップ250において、算出部442は、上記と同様に、ステップ240にて取得した周波数特性から、人2の心拍数を算出する。具体的には、この周波数特性において強度が最も高い周波数をヘルツ単位で表した数に、60を乗算することにより、心拍数をbpm単位で算出する。
【0261】
続いて、ステップ260において、算出部442は、ステップ250にて算出した心拍数およびステップ600にて算出した心拍間隔を出力部43に送信する。出力部43は、算出部442からの心拍数および心拍間隔のデジタルデータを、車載ナビゲーション装置、車載データ通信モジュール、携帯通信端末等に送信する。その後、処理は、ステップ210に戻る。
【0262】
このようにして、車両の走行中に、算出部442により人2の心拍数および心拍間隔が算出される。このように、特定アンテナが第1受信アンテナ13aであって、かつ、2つのノイズ除去アンテナが第2受信アンテナ13bおよび第3受信アンテナ13cであっても、上記と同様の効果を奏する。
【0263】
(変形例8)
上記ステップ500における波数βのキャリブレーションでは、ステップ520において、算出部442は、ステップ510にて算出したt0~taの心拍間隔用信号Ehの実数部において、極大値の数を算出する。これに対して、ステップ520において、算出部442は、図24に示すように、ステップ510にて算出したt0~taの心拍間隔用信号Ehの実数部において、極小値の数を算出してもよい。
【0264】
具体的には、算出部442は、例えば、t0~taにおいて、時刻tの次時刻に対応する心拍間隔用信号Ehの実数部から、時刻tの心拍間隔用信号Ehの実数部を減算した差分ΔEhをそれぞれ算出する。また、算出部442は、時刻tがt0のときに対応する差分ΔEhから順番に、時刻tに対応する差分ΔEhの正負を判定する。このとき、算出部442は、負の値の差分ΔEhが所定回数連続した後、差分ΔEhが負の値から正の値に切り替わり、かつ、この切り替わり後、正の値の差分ΔEhが所定回数連続するとき、心拍間隔用信号Ehの極小値があると判定する。さらに、このとき、算出部442は、差分ΔEhが負の値から正の値に切り替わる直前の負の値の差分ΔEhおよび差分ΔEhが負の値から正の値に切り替わる直後の正の値の差分ΔEhのいずれかを心拍間隔用信号Ehの極小値とする。また、このとき、算出部442は、心拍間隔用信号Ehの極小値の数を計上する。このようにして、算出部442は、t0~taにおいて、図25に示すように、対象とする波数βの極小値の数を算出する。その後、今回のループ処理が終了する。
【0265】
そして、対象とする波数βを用いて、β0~βaのそれぞれの極小値の数が算出されるとき、処理は、ステップ530に移行する。
【0266】
ステップ530において、算出部442は、β0~βaのうち、心拍間隔用信号Ehの極小値の数が最小となる波数βを、心拍間隔算出用の波数βに選定する。この心拍間隔用信号Ehの極小値の数が最小であるため、この心拍間隔用信号Ehには、人2の心拍のみを示す信号が示されており、特定アンテナの信号からノイズが適切に除去されている。これにより、心拍間隔用信号Ehは、位相のズレが補正されたノイズを、第2受信アンテナ13bで受信される電波から除去した信号になっているとともに、後述の心拍間隔を算出するのに適した信号に補正される。
【0267】
このようにして、ステップ500におけるキャリブレーションが行われても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0268】
(変形例9)
また、ステップ520において、算出部442は、図26に示すように、ステップ510にて算出したt0~taの心拍間隔用信号Ehの実数部において、極大値の数と極小値の数との和を算出してもよい。
【0269】
具体的には、算出部442は、例えば、t0~taにおいて、時刻tの次時刻に対応する心拍間隔用信号Ehの実数部から、時刻tの心拍間隔用信号Ehの実数部を減算した差分ΔEhをそれぞれ算出する。
【0270】
また、算出部442は、図27に示すように、上記と同様に、この算出した差分ΔEhに基づいて、極大値の数と極小値の数とを算出する。さらに、算出部442は、対象とする波数βの極大値の数と対象とする波数βの極小値の数との和を算出する。その後、今回のループ処理が終了する。
【0271】
そして、対象とする波数βを用いて、β0~βaのそれぞれの極大値の数と極小値の数との和が算出されるとき、処理は、ステップ530に移行する。
【0272】
ステップ530において、算出部442は、β0~βaのうち、心拍間隔用信号Ehの極大値の数と極小値の数との和が最小となる波数βを、心拍間隔算出用の波数βに選定する。この心拍間隔用信号Ehの極大値の数と極小値の数との和が最小であるため、この心拍間隔用信号Ehには、人2の心拍のみを示す信号が示されており、特定アンテナの信号からノイズが適切に除去されている。これにより、心拍間隔用信号Ehは、位相のズレが補正されたノイズを、第2受信アンテナ13bで受信される電波から除去した信号になっているとともに、後述の心拍間隔を算出するのに適した信号に補正される。
【0273】
このようにして、ステップ500におけるキャリブレーションが行われても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0274】
(他の実施形態)
なお、本開示は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記実施形態において、センサから車両の外部環境情報(例えば車外の湿度)を取得することが記載されている場合、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報を受信することも可能である。あるいは、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報に関連する関連情報を取得し、取得した関連情報からその外部環境情報を推定することも可能である。特に、ある量について複数個の値が例示されている場合、特に別記した場合および原理的に明らかに不可能な場合を除き、それら複数個の値の間の値を採用することも可能である。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、本開示は、上記各実施形態に対する以下のような変形例および均等範囲の変形例も許容される。なお、以下の変形例は、それぞれ独立に、上記実施形態に適用および不適用を選択できる。すなわち、以下の変形例のうち任意の組み合わせを、上記実施形態に適用することができる。
【0275】
本開示に記載の制御部等およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部等およびその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部等およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0276】
上記実施形態では、選定部441により、SN比に基づいて3つの受信アンテナ13a、13b、13cから生体情報推定用の特定アンテナが選定される。これに対して、受信アンテナ13a、13b、13cの数が3つである場合、SN比に基づかないで第1受信アンテナ13aと第3受信アンテナ13cとの間に配置されている第2受信アンテナ13bが生体情報推定用の特定アンテナに選定されてもよい。
【0277】
上記実施形態では、1つ座席に配置される受信アンテナ13a、13b、13cの数は、3つである。これに対して、1つ座席に配置される受信アンテナ13a、13b、13cの数は、3つに限定されないで、4つ以上であってもよい。
【0278】
上記実施形態では、受信アンテナ13a、13b、13cは、車両の運転席3に配置されている。これに対して、受信アンテナ13a、13b、13cが配置される箇所は、運転席3に限定されないで、車両の助手席および後部座席であってもよい。
【0279】
上記実施形態では、算出部442は、生体情報としての人2の心拍数を算出する。算出部442により算出される生体情報は、人2の心拍数に限定されないで、例えば、人2の呼吸数、脈拍および脈波等であってもよい。
【0280】
上記実施形態では、受信アンテナ13a、13b、13cは、車両の幅方向に互いに異なる位置に配置されている。これに対して、受信アンテナ13a、13b、13cは、車両の幅方向に互いに異なる位置に配置されることに限定されない。例えば、受信アンテナ13a、13b、13cは、車両前後方向に互いに異なる位置に配置されてもよい。また、例えば、受信アンテナ13a、13b、13cは、車両上下方向に互いに異なる位置に配置されてもよい。さらに、受信アンテナ13a、13b、13cの配置は、それらの任意の組み合わせでもよい。
【0281】
上記実施形態では、生体情報検知装置4は、車両に搭載されている。これに対して、生体情報検知装置4は、車両に搭載されることに限定されない。例えば、生体情報検知装置4は、車両から離れた場所に配置されるサーバ等によって実現されてもよい。この場合、生体情報検知装置4は、受信機14で受信された信号を、例えば、無線通信を介して受信する。
【0282】
上記実施形態では、生体情報検知システム10は、車両の人2の生体情報を算出する。これに対して、生体情報検知システム10は、車両の人2の生体情報を算出することに限定されない。例えば、生体情報検知システム10は、建物内にいる人2の生体情報を算出してもよい。
【0283】
上記実施形態では、生体情報検知装置4の算出部442は、車両の走行中に人2の心拍数を算出する。これに対して、算出部442は、車両の走行中に人2の心拍数を算出することに限定されない。例えば、算出部442は、車両の停止中に人2の心拍数を算出してもよい。
【0284】
上記実施形態では、生体情報検知装置4の算出部442は、特定アンテナで受信される信号の強度と、算出部442が推定するノイズの強度との類似度を評価するために、差分絶対値和、すなわち、SADを算出する。これに対して、算出部442は、差分絶対値和、すなわち、SADを算出することに限定されない。例えば、算出部442は、特定アンテナで受信される信号の強度と、算出部442が推定するノイズの強度との類似度を評価するために、差分二乗和、すなわち、SSDを算出してもよい。なお、SSDは、Sum of Squared Differenceの略である。
【0285】
上記実施形態が適宜組み合わされてもよい。
【0286】
(まとめ)
第1の観点によれば、生体情報検知システムは、送信アンテナから放射されて人を透過した電波を受信する特定アンテナと、送信アンテナから放射されて人を透過しない電波を受信する複数のノイズ除去アンテナと、特定アンテナおよびノイズ除去アンテナで受信される電波の位相を検出する位相検出部と、特定アンテナで受信される電波の位相とノイズ除去アンテナで受信される電波の位相との位相差に基づいて、特定アンテナにおける送信アンテナから人を透過した電波に応じた生体信号以外のノイズを推定するノイズ推定部と、特定アンテナで受信される電波に応じた信号およびノイズ推定部により推定されたノイズに基づいて、人の生体情報を算出する算出部と、を備える。これにより、位相差によってノイズ除去がされないことが抑制されるため、人の生体情報を算出する精度が向上する。
【0287】
第2の観点によれば、ノイズ推定部は、送信アンテナから放射される電波の波長およびノイズ除去アンテナから特定アンテナまでの距離であるアンテナ間距離に基づいて、位相差を推定する。これにより、このノイズの推定の正確度が向上するため、生体信号の精度が向上する。したがって、人の心拍数の精度が向上する。
【0288】
第3の観点によれば、特定アンテナは、複数のノイズ除去アンテナ同士の間に配置されている。これにより、ノイズの推定誤差が小さくなるため、生体信号の精度が向上する。したがって、人の心拍数の精度が向上する。
【0289】
第4の観点によれば、特定アンテナおよび複数のノイズ除去アンテナは、車両の席に、車両の幅方向に並んで配置されている。これにより、ノイズの推定誤差が小さくなるため、生体信号の精度が向上する。したがって、人の心拍数の精度が向上する。
【0290】
第5の観点によれば、ノイズ推定部は、車両の幅方向のうち一方側から伝播されるノイズと車両の幅方向のうち他方側から伝播されるノイズとの合成波を推定することにより、生体信号以外のノイズを推定する。
【0291】
第6の観点によれば、生体情報検知システムは、特定アンテナで受信される電波の強度を検出する強度検出部をさらに備え、ノイズ推定部は、特定アンテナで受信される電波の強度に基づいて、生体信号以外のノイズを推定する。これにより、ノイズの推定誤差が小さくなるため、生体信号の精度が向上する。したがって、人の心拍数の精度が向上する。
【0292】
第7の観点によれば、特定アンテナおよびノイズ除去アンテナは、電波を受信する複数の受信アンテナであって、生体信号以外のノイズに対する生体信号の比が基準値より大きい信号に対応する特定アンテナを、複数の受信アンテナから選定する選定部をさらに備え、算出部は、選定部により選定された特定アンテナで受信された電波に応じた信号およびノイズ推定部により推定されたノイズに基づいて、生体情報を算出する。これにより、算出部は、受信アンテナのうち、受信するノイズが少ない受信アンテナを選択的に利用して人2の心拍数を算出することができる。このため、選定部により特定アンテナが選定されない場合に比べて、算出部は、人の心拍数を高い精度で算出することができる。
【0293】
第8の観点によれば、選定部は、生体信号以外のノイズに対する生体信号の比が基準値以下の信号に対応するノイズ除去アンテナを、複数の受信アンテナから選定し、ノイズ推定部は、選定部により選定されたノイズ除去アンテナで受信された電波に応じた信号に基づいて、生体信号以外のノイズを推定する。これにより、算出部は、受信アンテナのうち、受信するノイズが少ない受信アンテナを選択的に利用して人2の心拍数を算出することができる。このため、選定部により特定アンテナが選定されない場合に比べて、算出部は、人の心拍数を高い精度で算出することができる。
【0294】
第9の観点によれば、選定部は、車両が停止しているときに、特定アンテナを、複数の受信アンテナから選定する。これにより、車両の走行に伴う振動等のノイズが比較的小さい状態で、生体情報推定用の特定アンテナが選定されるため、生体情報推定用の特定アンテナの選定の正確性が向上する。
【0295】
第10の観点によれば、生体情報検知システムは、送信アンテナおよび位相検出部に所定の周波数の信号を送信する発信機をさらに備え、送信アンテナは、発信機からの信号に応じた電波を放射し、位相検出部は、発信機からの信号の位相と特定アンテナで受信される電波の位相とを比較することにより、特定アンテナで受信される電波の位相を検出し、発信機からの信号の位相とノイズ除去アンテナで受信される電波の位相とを比較することにより、ノイズ除去アンテナで受信される電波の位相を検出する。
【0296】
第11の観点によれば、ノイズ推定部は、ノイズ除去アンテナで受信される電波の位相を所定の範囲で複数設定して特定アンテナにおける送信アンテナから人を透過した電波に応じた生体信号以外のノイズを複数の位相のそれぞれに対して推定し、算出部は、特定アンテナで受信される電波に応じた信号からノイズ推定部により推定されたノイズを除去した信号の時刻に対する強度の極大値を複数の位相のそれぞれに対して算出し、複数の位相のそれぞれに対して算出した信号のうち極大値の数が最小となる信号を算出することにより、生体情報を算出する。
【0297】
第12の観点によれば、ノイズ推定部は、ノイズ除去アンテナで受信される電波の位相を所定の範囲で複数設定して特定アンテナにおける送信アンテナから人を透過した電波に応じた生体信号以外のノイズを複数の位相のそれぞれに対して推定し、算出部は、特定アンテナで受信される電波に応じた信号からノイズ推定部により推定されたノイズを除去した信号の時刻に対する強度の極小値を複数の位相のそれぞれに対して算出し、複数の位相のそれぞれに対して算出した信号のうち極小値の数が最小となる信号を算出することにより、生体情報を算出する。
【0298】
第13の観点によれば、ノイズ推定部は、ノイズ除去アンテナで受信される電波の位相を所定の範囲で複数設定して特定アンテナにおける送信アンテナから人を透過した電波に応じた生体信号以外のノイズを複数の位相のそれぞれに対して推定し、算出部は、特定アンテナで受信される電波に応じた信号からノイズ推定部により推定されたノイズを除去した信号の時刻に対する強度の極大値および極小値を複数の位相のそれぞれに対して算出し、複数の位相のそれぞれに対して算出した信号のうち極大値の数と極小値の数との和が最小となる信号を算出することにより、生体情報を算出する。
【符号の説明】
【0299】
2 人
3 運転席
4 生体情報検知装置
12 送信アンテナ
13a、13b、13c 受信アンテナ
44 処理部
441 選定部
442 算出部
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