IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIの特許一覧

<>
  • 特許-バーナ 図1
  • 特許-バーナ 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】バーナ
(51)【国際特許分類】
   F23D 1/00 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
F23D1/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020096891
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021188861
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】須古 敏行
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-024500(JP,A)
【文献】特開2005-291534(JP,A)
【文献】実開昭48-019245(JP,U)
【文献】特開平09-126441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼用空気を供給する内筒と、前記内筒の外周に設けられてバイオマス燃料を噴射する外筒とを備えるバーナであって、
前記外筒の外周に設けられる断熱材を備え
前記外筒の外側であって、前記外筒の吐出口側に設けられる燃焼用空気流路壁を備え、 前記断熱材は、前記燃焼用空気流路壁よりも上流側に設けられることを特徴とするバーナ。
【請求項2】
前記断熱材の外周を覆う断熱材カバーを備えることを特徴とする請求項1記載のバーナ。
【請求項3】
前記外筒の外周面から径方向に向けて立設されたピンを備え、
前記断熱材は、前記ピンが挿し込まれることを特徴とする請求項1または2記載のバーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年においては、二酸化炭素の削減が求められていることから、二酸化炭素の発生が少ない燃料による燃焼が行われている。例えば、特許文献1には、木質系バイオマスを燃焼可能なバーナが開示されている。特許文献1において、木質系バイオマスは、粉砕して微粉状とした状態で供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-24500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなバイオマス燃料を用いるバーナにおいては、バイオマス燃料が噴射される外筒の外周に燃焼用空気の流路が形成されている。そして、バーナの消火時においては、バイオマス燃料の一部が外筒内に残留し、燃焼用空気の熱を受ける。これにより、外筒内に残留したバイオマス燃料が溶融し、タール状となって壁面に付着したり、外筒内で発火する可能性がある。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、バイオマス燃料が外筒内で加熱されることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の手段として、燃焼用空気を供給する内筒と、前記内筒の外周に設けられてバイオマス燃料を噴射する外筒とを備えるバーナであって、前記外筒の外周に設けられる断熱材を備える、という構成を採用する。
【0007】
本発明では、第2の手段として、上記第1の手段において、前記外筒の外側であって、前記外筒の吐出口側に設けられる燃焼用空気流路壁を備え、前記断熱材は、前記燃焼用空気流路壁よりも上流側に設けられる、という構成を採用する。
【0008】
本発明では、第3の手段として、上記第1または第2の手段において、前記断熱材の外周を覆う断熱材カバーを備える、という構成を採用する。
【0009】
本発明では、第4の手段として、上記第1~3のいずれかの手段において、前記外筒の外周面から径方向に向けて立設されたピンを備え、前記断熱材は、前記ピンが挿し込まれる、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バイオマス燃料が外筒内で加熱されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るバーナの模式的な全体図である。
図2】本発明の一実施形態に係るバーナの外筒の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係るバーナの一実施形態について説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係るバーナ1が設けられる火炉壁100には、内側と外側とを連通する火炉開口110が形成されている。この火炉開口110には、火炉の内部へと向けて拡径するようにスロートが形成されている。また、燃焼器においては、複数の粉炭バーナ及びバイオマス専焼バーナが対向配置されている。
【0014】
バーナ1は、木質ペレット等のバイオマス燃料であるバイオマス燃料を燃焼させ、燃焼器に火炎を形成するバイオマス専焼バーナである。このバーナ1は、火炉壁100の火炉開口110から一部が露出するように設けられており、バイオマス燃料供給配管2と、オイルガン3と、バーナノズル4(ノズル部)と、空気供給部5と、断熱材6と、断熱材カバー部7とを有している。
【0015】
バイオマス燃料供給配管2は、図1(b)に示すように、外筒ノズル4bに対して直交して接続された配管である。
【0016】
オイルガン3は、軸心Lと同軸上に配置された円筒形状の管である。このオイルガン3は、重油または軽油等の液体燃料が貯留される不図示のタンクに接続されており、内部に液体燃料が流通する。このようなオイルガン3は、バイオマス燃料の燃焼初期における着火のために、火炉開口110から火炉壁100に向けて霧状の液体燃料を吐出する。
また、このオイルガン3の吐出口の近傍には、不図示の点火装置が設けられており、この点火装置によって、オイルガン3から吐出される液体燃料が点火される。
【0017】
バーナノズル4は、内筒ノズル4aと、外筒ノズル4bとを有し、二重管構造となっている。内筒ノズル4aは、軸心Lと同軸上に、オイルガン3の外周に設けられた円筒形状の管であり、空気供給部5の二次空気の一部を内筒ノズル4aに供給する配管と接続されている。これにより、この内筒ノズル4aと、オイルガン3との間に形成された内筒流路R1には、二次空気の一部が分配され、三次空気として流通する。なお、オイルガン3は、軸心L方向に沿って移動可能とされており、通常時は開口端がバーナノズル4の開口端よりも内側となるように配置され、液体燃料を吐出する際に火炉壁100に向けて突出される。
【0018】
外筒ノズル4bは、軸心Lと同軸上に、内筒ノズル4aの外周に設けられた円筒形状の管であり、バイオマス燃料供給配管2の管壁と連結されている。これにより、外筒ノズル4bと内筒ノズル4aとの間に形成された外筒流路R2には、一次空気と燃料とが混合された状態で供給される。このような外筒ノズル4bは、上流側から下流側に向けて縮径する形状とされている。さらに、外筒ノズル4bの火炉壁100側の端部である吐出口の近傍においては、さらに縮径度の大きなテーパが形成されている。外筒ノズル4bには、バイオマス燃料供給配管2が軸心Lに対して偏心した位置に接続されていることにより、接線方向からバイオマス燃料が供給されている。これにより、外筒流路R2においてバイオマス燃料及び一次空気は、外筒ノズル4bの管壁に沿って螺旋状にスクロールしながら流れ、吐出口から高速で吐出される。
【0019】
空気供給部5は、火炎に対して加熱された二次空気を供給する装置であり、二次空気流路部材5a(燃焼用空気流路壁)と、外側スロート5bと、内側スロート5cと、主空気調整機構5dと、空気調整機構5eとを有している。
【0020】
二次空気流路部材5aは、外筒ノズル4bの外周であって吐出口の近傍に設けられる流路構成部材である。この二次空気流路部材5aは、火炉壁100との間に二次空気の流路を形成する。なお、この二次空気流路部材5aには、二次空気が昇温された状態で供給される。外側スロート5bは、二次空気流路部材5aと火炉開口110とを接続しており、二次空気流路部材5aから火炉開口110に向けて縮径されている。
【0021】
内側スロート5cは、外側スロート5bと外筒ノズル4bの間に設けられた略円環状の部材である。この内側スロート5cは火炉開口110に向けて縮径されている。外側スロート5bと、内側スロート5cとの間には、火炉壁100へと二次空気(燃焼用空気)を供給する空気吐出流路R3が形成される。この二次空気は、300℃以上まで加熱された状態でバーナ1へと供給される。また、内側スロート5cと外筒ノズル4bとの間には、火炉壁100へと二次空気を供給する補助空気吐出流路R4が形成される。
【0022】
主空気調整機構5dは、空気吐出流路R3及び補助空気吐出流路R4の上流に設けられている。この主空気調整機構5dは、ベーンと、該ベーンを回動させるモータ等の駆動装置を有し、ベーンの向きを調整することにより、空気吐出流路R3及び補助空気吐出流路R4へと流入する空気の旋回力を調節する機構である。空気調整機構5eは、補助空気吐出流路R4の上流側に設けられており、ベーンにより補助空気吐出流路R4へと流れる二次空気の旋回力を微調節する機構である。主空気調整機構5d及び空気調整機構5eにより、火炉壁100へと供給される二次空気の旋回力が調整され、炉内において内部循環流を形成し、高温の炉内ガスをバーナポートまで引き込む。なお、空気供給部5に流れる二次空気は、空気供給部5の上流に設けられた不図示の加熱装置によって加熱されており、常温よりも高い温度となっている。
【0023】
断熱材6は、外筒ノズル4bの外周面において、外筒ノズル4bの上流側から、二次空気流路部材5aが設けられる位置までの部位に巻回される断熱性の高い、例えば、ウレタン等の部材である。この断熱材6は、仮止めピン6aを有している。仮止めピン6aは、図2に示すように、細長の金属部材をL字状に屈曲して形成された部材とされる。仮止めピン6aは、外筒ノズル4bの周方向及び軸心L方向において等間隔に複数個所に設けられ、端部が外筒ノズル4bの外周面に対して溶接等により固定されている。断熱材6は、この仮止めピン6aに突き刺された状態とされている。
【0024】
断熱材カバー部7は、カバー7aと、端部フランジ7bとを有している。カバー7aは、断熱材6の外周に設けられる金属製の円筒状部材である。このカバー7aは、端部フランジ7bに固定されている。端部フランジ7bは、外筒ノズル4bの外周から立設されており、カバー7aを支持している。このような断熱材カバー部7は、断熱材6を外筒ノズル4bに対して押し付けた状態で固定している。
【0025】
続いて、上記構成のバーナ1の動作について、図1を参照して説明する。
【0026】
バイオマス燃料供給配管2を通過したバイオマス燃料及び一次空気は、外筒ノズル4bに流入すると、外筒ノズル4bの内部において、外筒ノズル4bの管壁に沿って、軸心Lを中心として螺旋状に旋回しながら火炉壁100に向けて移動する。これにより、外筒ノズル4bの内部におけるバイオマス燃料は、一次空気に拡散されると共に、管内部に堆積することなく流れる。さらに、外筒ノズル4bの内部のバイオマス燃料は、遠心力により径方向外側へと移動し、軸心Lを中心として旋回しながら火炉壁100に供給される。外筒ノズル4bから火炉壁100に供給されたバイオマス燃料は、空気供給部5から供給される二次空気と混合された状態で着火する。
【0027】
また、バーナ1の消火時においては、バイオマス燃料の噴射停止後に、二次空気の噴射が停止される。すなわち、外筒ノズル4bの外側には、二次空気が流れている状態とされている。バイオマス燃料の噴射停止時においては、外筒ノズル4bの内部にバイオマス燃料の一部が滞留した状態となる。このような状態において、従来では、300℃程度の二次空気が隣接して流れていることにより、滞留するバイオマス燃料が二次空気により加熱され、溶融することがあった。
【0028】
しかしながら、本実施形態におけるバーナ1によれば、二次空気の流れが形成される外筒ノズル4bの外周に断熱材6が設けられている。これにより、バーナ1の消火時において、バイオマス燃料が滞留した場合においても、二次空気と断熱された状態となり、バイオマス燃料が加熱されて溶融することがない。したがって、バイオマス燃料が溶融し、さらにバイオマス燃料が付着することによる発火や、外筒ノズル4bの詰まりを防止できる。
【0029】
また、本実施形態に係るバーナ1によれば、断熱材6は、断熱材カバー部7により覆われている。したがって、断熱材6は、灰や燃料等により表面が劣化することがなく、長期的に断熱効果を得ることができる。したがって、バイオマス燃料が付着することによる発火を長期的に防止できる。
【0030】
また、本実施形態に係るバーナ1によれば、断熱材6は、仮止めピン6aに挿し込まれた状態で固定されている。したがって、断熱材6の外筒ノズル4bへの固定が容易であり取付が容易となる。
【0031】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0032】
上記実施形態においては、バーナ1はバイオマス専焼バーナとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、バーナ1は、バイオマスと微粉炭との混焼バーナ、または微粉炭による燃焼とバイオマスによる燃焼とを交互に行うバーナとしてもよい。
【0033】
上記実施形態においては、仮止めピン6aを設けるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、外筒ノズル4bと断熱材6との間に、接着剤等を塗布するものとしてもよい。
【0034】
また、上記実施形態において、バイオマス燃料は燃料の種類および含水率によってタール化および発火温度が変化する。断熱材6は、このようなバイオマス燃料のタール化の生じる温度特性と二次空気の温度に応じてタール化を防止するように選定される。このようなバイオマス燃料のタール化が生じる要因としては酸素濃度の寄与も大きいので、断熱材6の選定、設定には酸素濃度も考慮される。例えば、断熱材6は、このようなバイオマス燃料のタール化を勘案し、材質・厚さが決定される。
【符号の説明】
【0035】
1 バーナ
2 バイオマス燃料供給配管
3 オイルガン
4 バーナノズル
4a 内筒ノズル
4b 外筒ノズル
5 空気供給部
5a 二次空気流路部材
5b 外側スロート
5c 内側スロート
5d 主空気調整機構
5e 空気調整機構
6 断熱材
6a ピン
7 断熱材カバー部
7a カバー
7b 端部フランジ
100 火炉壁
110 火炉開口
図1
図2