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特許7415837電力変換装置の光通信システムおよび光通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】電力変換装置の光通信システムおよび光通信方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240110BHJP
   H02M 7/483 20070101ALI20240110BHJP
   H04B 10/275 20130101ALI20240110BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H02M7/48 B
H02M7/483
H04B10/275
H04L12/28 200Z
H04L12/28 400
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020132792
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2022029510
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】森田 一徳
(72)【発明者】
【氏名】漆畑 正太
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-186067(JP,A)
【文献】特開平06-069937(JP,A)
【文献】特開平05-207045(JP,A)
【文献】特開2011-199420(JP,A)
【文献】特表2002-513241(JP,A)
【文献】特開昭63-119341(JP,A)
【文献】特許第5506890(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 7/483
H04B 10/275
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力変換回路と、
前記複数の電力変換回路を各々制御する複数の制御器と、
前記各電力変換回路用の変換回路制御信号を含むシリアル通信用通信フレームを生成し、それをデジタル変換して伝送する機能を有した中央制御装置と、
前記中央制御装置と複数の制御器各々に設けられた第1光送受信器および第2光送受信器と、
前記中央制御装置と複数の制御器の間をデイジーチェーン接続する光ケーブルであって、中央制御装置の第1光送受信器から前記各制御器の第1光送受信器および第2光送受信器を介して中央制御装置の第2光送受信器に至る第1のループで、前記シリアル通信用通信フレームを伝送するための第1の光ケーブル群と、
前記中央制御装置と複数の制御器の間をデイジーチェーン接続する光ケーブルであって、中央制御装置の第2光送受信器から前記各制御器の第2光送受信器および第1光送受信器を介して中央制御装置の第1光送受信器に至る第2のループで、前記シリアル通信用通信フレームを伝送するための第2の光ケーブル群と、を備え、
前記各制御器は、
伝送されるシリアル通信用通信フレームを、第1光送受信器および第2光送受信器を介して受信し、再送信する回路と、
前記受信したシリアル通信用通信フレーム内の変換回路制御信号を復調し、保持するデジタル復調バッファ回路と、
前記第1のループ又は第2のループで伝送されるシリアル通信用通信フレームのうち、後に受信した通信フレームの受信開始時刻又は受信終了時刻から、先に受信した通信フレームの受信開始時刻又は受信終了時刻を減算し、その時間差の半分を遅延時間として求める遅延時間演算部と、
前記シリアル通信用通信フレームの受信時刻と前記遅延時間に基づいてデータ更新タイミングを決定し、その決定されたデータ更新タイミングで前記デジタル復調バッファ回路に保持されている変換回路制御信号を電力変換回路へ出力するデータ更新タイミング調整回路と、を有し、
前記データ更新タイミング調整回路は、
第1のループ又は第2のループのいずれか一方で通信異常が発生した場合、第1のループおよび第2のループにより伝送されたシリアル通信用通信フレームを両方とも正常受信した際の、どちらか先にシリアル通信用通信フレームを受信した時刻を基準時刻とし、該基準時刻に、前記遅延時間演算部で求められた遅延時間と、シリアル通信用通信フレームのフレーム間周期とを加算した時刻をデータ更新タイミングに決定することを特徴とする電力変換装置の光通信システム。
【請求項2】
複数の電力変換回路と、
前記複数の電力変換回路を各々制御する複数の制御器と、
前記各電力変換回路を制御する制御装置であって、各電力変換回路用の変換回路制御信号を含むシリアル通信用通信フレームを生成し、それをデジタル変換して伝送する機能を有した中央制御装置と、
前記中央制御装置と複数の制御器各々に設けられた第1光送受信器および第2光送受信器と、
前記中央制御装置と複数の制御器の間をデイジーチェーン接続する光ケーブルであって、中央制御装置の第1光送受信器から前記各制御器の第1光送受信器および第2光送受信器を介して中央制御装置の第2光送受信器に至る第1のループで、前記シリアル通信用通信フレームを伝送するための第1の光ケーブル群と、
前記中央制御装置と複数の制御器の間をデイジーチェーン接続する光ケーブルであって、中央制御装置の第2光送受信器から前記各制御器の第2光送受信器および第1光送受信器を介して中央制御装置の第1光送受信器に至る第2のループで、前記シリアル通信用通信フレームを伝送するための第2の光ケーブル群と、を備えた電力変換装置において、
中央制御装置が、前記第1のループおよび第2のループでシリアル通信用通信フレームを伝送するステップと、
前記各制御器が、伝送されるシリアル通信用通信フレームを、第1光送受信器および第2光送受信器を介して受信し、再送信するステップと、
前記各制御器のデジタル復調バッファ回路が、前記受信したシリアル通信用通信フレーム内の変換回路制御信号を復調し、保持するステップと、
前記各制御器の遅延時間演算部が、前記第1のループ又は第2のループで伝送されるシリアル通信用通信フレームのうち、後に受信した通信フレームの受信開始時刻又は受信終了時刻から、先に受信した通信フレームの受信開始時刻又は受信終了時刻を減算し、その時間差の半分を遅延時間として求めるステップと、
前記各制御器のデータ更新タイミング調整回路が、前記シリアル通信用通信フレームの受信時刻と前記遅延時間に基づいてデータ更新タイミングを決定し、その決定されたデータ更新タイミングで前記デジタル復調バッファ回路に保持されている変換回路制御信号を電力変換回路へ出力するステップであり、第1のループ又は第2のループのいずれか一方で通信異常が発生した場合、第1のループおよび第2のループにより伝送されたシリアル通信用通信フレームを両方とも正常受信した際の、どちらか先にシリアル通信用通信フレームを受信した時刻を基準時刻とし、該基準時刻に、前記遅延時間演算部で求められた遅延時間と、シリアル通信用通信フレームのフレーム間周期とを加算した時刻をデータ更新タイミングに決定するステップと、を有していることを特徴とする電力変換装置の光通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号による同期通信制御装置を備える電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、モジュラーマルチレベル変換器と呼ばれる単相電力変換器(セル)をカスケード接続して構成する電力変換装置の光通信システムについて提案している。中央制御装置と、複数のセルが有する制御装置を光ケーブルで数珠つなぎし(デイジーチェーン接続し)、いわゆるループ型の通信経路を構成することで、従来一般的に用いられていた、中央演算装置からすべてのセルの制御装置に向かって通信線を配置するスター型の通信経路構成と比較し、ケーブル数、ケーブル長を少なくする事ができ、またケーブルに必要な耐電圧をより小さくすることができる特長がある。
【0003】
特許文献1の段落番号「0091」~「0112」にかけて、各セルの制御装置に中央制御装置からデータ(各セルの電圧指令値など)を送信し、かつ通信にともなう伝送遅延を補償する(データの更新するタイミングを変換器が正しく動作するように所望のタイミングになるように同期する)手法が述べられている。
【0004】
また段落番号「0113」から「0114」にかけて、ループ状の通信経路を2重にし、一つのループで故障等により通信が途絶した場合にももう一つのループで同様の通信を行うことで、変換器の冗長性を確保する方法について述べられている。
【0005】
特許文献1では、各セルの通信を同期する方法として、
・中央制御装置からデータ送信(どのようなデータでも良い)を実施し、各セルを介してデータが中央制御装置に帰ってくるまでの時間を測定する。
【0006】
各制御装置間の通信において発生する遅延時間は均等という想定の下で、セル毎に適切な遅延時間を計算・設定する。
【0007】
・中央制御装置から各セルの制御装置に遅延時間を送信し設定する。もしくは、事前に測定および設定を行う。
【0008】
・受信した通信フレームの最後(信号終了マーク)の受信タイミングを基準に、設定された遅延時間TBが経過した後、受信したデータを更新・ラッチする。
【0009】
という方法で、データ更新タイミングを同期している。
【0010】
2重ループとした場合の同期についても上記と同様と考えられる。
【0011】
また、非特許文献1においても同様のシステム構成、および同様の通信方法、データ同期方法が、以下のように述べられている。
【0012】
・中央制御装置からデータを送信し、各セルを介してデータが中央制御装置に帰ってくるまでの時間を測定する。
【0013】
・各セルの制御装置が、通信フレームを受信してから、次のセルにフレーム送信を開始するまでの遅延時間(制御装置内で信号処理や送受信動作にかかる時間)をそれぞれ計測し、そのデータを中央制御装置に通信によって送信する。
【0014】
・中央制御装置で、中央制御装置から各セルを介して中央制御装置まで通信フレームが戻ってくる時間と、各セルの制御装置が測定した遅延時間から、光ケーブル中を信号伝送するために要する時間を計算する。
【0015】
・全てのセルに光ケーブルによる遅延時間と、各セルで発生する遅延時間を送信する。
【0016】
・各セルが受信した通信フレームの最後の時刻を基準に、受信した遅延データから計算される遅延時間が経過した後に受信したデータを更新・ラッチする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特許5449893号公報
【非特許文献】
【0018】
【文献】H.Tu and S.Lukic、“Comparative Study of PES Net and SyCCo Bus:Communication Protocols for Modular Multilevel Converter”、2017IEEE Energy Conversion Congress and Exposition (ECCE)、Cincinnati,OH、2017、pp.1487-1492.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
<特許文献1の手法の問題点>
・装置の始動開始時に初期化手段が必要。事前にループ状の通信経路1周の通信にかかる遅延時間を中央制御装置で計測する必要がある。また、1周に必要な時間からセル毎の遅延時間を計算する必要がある。加えてその遅延時間をセル毎内のコントローラに伝達(通信などの手段)する必要がある。
【0020】
計測、計算、伝達を手動で行う場合には、人間がそれぞれ実施する手間が掛かる。装置を始動させる毎にそれら手間が掛かる。装置が自力で行う場合、中央制御装置にそのようなシステムを組む必要があり、中央制御装置が複雑化する。各セルに通信する別の手段が必要になる。計測モード、伝達モードなど、装置始動時に追加の動作モードを用意する必要がある。
【0021】
運転中の環境の変化やシステムの状態(劣化などを含む)によって通信時間が微妙に変化した場合、運転を中断するなどをして同様の初期化手段を実施し、再度遅延時間を調整する必要がある。
【0022】
・二重ループ構成で冗長化した場合の遅延時間調整方法については特別な方法は言及されておらず、上記初期化手段が同様に適用される。従って一重ループの場合と課題は同様であり、例えばループ毎に遅延が異なる等の課題が考えられる。
【0023】
<非特許文献1の手法の問題点>
・特許文献1の方式と同様に、複雑な初期化手続き(計測、計算、伝達)が必要になる。セル毎に設定すべき遅延時間を中央制御装置および各セルの制御装置が測定し、各セルにおける遅延時間を中央制御装置に送信し、中央制御装置で各セルのデータ更新時間を同期するための遅延時間を計算するために必要なデータを計算し、セル毎にそれらデータを送信し、同期を実現する。
【0024】
非常に複雑かつ手間の掛かる初期化手段が必要で、中央制御装置および各セルの制御装置が複雑化し、システムコストが増加する。遅延時間が変化した場合に再度調整(初期化動作)が必要になる点も同様である。
【0025】
また、二重ループ構成については言及されていない。
【0026】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的は、二重ループで構成された、中央制御装置と、複数の電力変換回路および制御器を備えた電力変換装置において、簡単な構成により、全ての電力変換回路に送信するデータの更新タイミングを同期させることができる光通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題を解決するための請求項1に記載の電力変換装置の光通信システムは、
複数の電力変換回路と、
前記複数の電力変換回路を各々制御する複数の制御器と、
前記各電力変換回路用の変換回路制御信号を含むシリアル通信用通信フレームを生成し、それをデジタル変換して伝送する機能を有した中央制御装置と、
前記中央制御装置と複数の制御器各々に設けられた第1光送受信器および第2光送受信器と、
前記中央制御装置と複数の制御器の間をデイジーチェーン接続する光ケーブルであって、中央制御装置の第1光送受信器から前記各制御器の第1光送受信器および第2光送受信器を介して中央制御装置の第2光送受信器に至る第1のループで、前記シリアル通信用通信フレームを伝送するための第1の光ケーブル群と、
前記中央制御装置と複数の制御器の間をデイジーチェーン接続する光ケーブルであって、中央制御装置の第2光送受信器から前記各制御器の第2光送受信器および第1光送受信器を介して中央制御装置の第1光送受信器に至る第2のループで、前記シリアル通信用通信フレームを伝送するための第2の光ケーブル群と、を備え、
前記各制御器は、
伝送されるシリアル通信用通信フレームを、第1光送受信器および第2光送受信器を介して受信し、再送信する回路と、
前記受信したシリアル通信用通信フレーム内の変換回路制御信号を復調し、保持するデジタル復調バッファ回路と、
前記第1のループ又は第2のループで伝送されるシリアル通信用通信フレームのうち、後に受信した通信フレームの受信開始時刻又は受信終了時刻から、先に受信した通信フレームの受信開始時刻又は受信終了時刻を減算し、その時間差の半分を遅延時間として求める遅延時間演算部と、
前記シリアル通信用通信フレームの受信時刻と前記遅延時間に基づいてデータ更新タイミングを決定し、その決定されたデータ更新タイミングで前記デジタル復調バッファ回路に保持されている変換回路制御信号を電力変換回路へ出力するデータ更新タイミング調整回路と、を有し、
前記データ更新タイミング調整回路は、
第1のループ又は第2のループのいずれか一方で通信異常が発生した場合、第1のループおよび第2のループにより伝送されたシリアル通信用通信フレームを両方とも正常受信した際の、どちらか先にシリアル通信用通信フレームを受信した時刻を基準時刻とし、該基準時刻に、前記遅延時間演算部で求められた遅延時間と、シリアル通信用通信フレームのフレーム間周期とを加算した時刻をデータ更新タイミングに決定することを特徴とする。
【0031】
請求項2に記載の電力変換装置の光通信方法は、
複数の電力変換回路と、
前記複数の電力変換回路を各々制御する複数の制御器と、
前記各電力変換回路を制御する制御装置であって、各電力変換回路用の変換回路制御信号を含むシリアル通信用通信フレームを生成し、それをデジタル変換して伝送する機能を有した中央制御装置と、
前記中央制御装置と複数の制御器各々に設けられた第1光送受信器および第2光送受信器と、
前記中央制御装置と複数の制御器の間をデイジーチェーン接続する光ケーブルであって、中央制御装置の第1光送受信器から前記各制御器の第1光送受信器および第2光送受信器を介して中央制御装置の第2光送受信器に至る第1のループで、前記シリアル通信用通信フレームを伝送するための第1の光ケーブル群と、
前記中央制御装置と複数の制御器の間をデイジーチェーン接続する光ケーブルであって、中央制御装置の第2光送受信器から前記各制御器の第2光送受信器および第1光送受信器を介して中央制御装置の第1光送受信器に至る第2のループで、前記シリアル通信用通信フレームを伝送するための第2の光ケーブル群と、を備えた電力変換装置において、
中央制御装置が、前記第1のループおよび第2のループでシリアル通信用通信フレームを伝送するステップと、
前記各制御器が、伝送されるシリアル通信用通信フレームを、第1光送受信器および第2光送受信器を介して受信し、再送信するステップと、
前記各制御器のデジタル復調バッファ回路が、前記受信したシリアル通信用通信フレーム内の変換回路制御信号を復調し、保持するステップと、
前記各制御器の遅延時間演算部が、前記第1のループ又は第2のループで伝送されるシリアル通信用通信フレームのうち、後に受信した通信フレームの受信開始時刻又は受信終了時刻から、先に受信した通信フレームの受信開始時刻又は受信終了時刻を減算し、その時間差の半分を遅延時間として求めるステップと、
前記各制御器のデータ更新タイミング調整回路が、前記シリアル通信用通信フレームの受信時刻と前記遅延時間に基づいてデータ更新タイミングを決定し、その決定されたデータ更新タイミングで前記デジタル復調バッファ回路に保持されている変換回路制御信号を電力変換回路へ出力するステップであり、第1のループ又は第2のループのいずれか一方で通信異常が発生した場合、第1のループおよび第2のループにより伝送されたシリアル通信用通信フレームを両方とも正常受信した際の、どちらか先にシリアル通信用通信フレームを受信した時刻を基準時刻とし、該基準時刻に、前記遅延時間演算部で求められた遅延時間と、シリアル通信用通信フレームのフレーム間周期とを加算した時刻をデータ更新タイミングに決定するステップと、を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
(1)請求項1、2に記載の発明によれば、簡単な構成により、全ての電力変換回路に送信するデータの更新タイミングを同期させることができる。電力変換回路とその制御器からなる電力変換セルの信号の同期タイミングを、各セルの受信信号を用いて各セル内で計算し設定することができ、システムをセットアップするもしくは始動する際に必要な、手動もしくは専用プログラムによる測定手段による同期タイミングの調整が不要となり、セットアップ・始動時間の短縮、プログラムの簡素化、演算装置のコスト低減が可能となる。
【0033】
また、運転中に装置の特性が変化し、それぞれ通信における遅延時間などに変化が生じても、上記特別な手段を執る必要がなくなるため、調整時間の短縮、運転継続性の向上、装置性能低下の防止などが可能となる。
(2)前記(1)の効果に加えて、同期タイミングの基準となる時刻を、正常に受信できた受信フレームの受信開始時刻もしくは受信終了時刻を基準に設定することで、一つのループにおいて通信異常や断線などが発生した場合でも、中央制御装置とやりとりするなどの特別な処理をする事無く、直ちに、同期タイミングを維持し続けることが可能となり、装置の運転継続性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施形態例で用いる電力変換回路の一例を示す構成図。
図2】本発明の実施形態例による電力変換装置の全体構成図。
図3図2の中央制御装置の構成図。
図4図2の1つの電力変換セルの構成図。
図5】本発明の実施形態例のシリアル通信用通信フレームの構成を示す説明図。
図6】本発明の実施例1におけるデータ更新タイミングの説明図。
図7】本発明の実施例2におけるデータ更新タイミングの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0036】
図2は、本実施形態例による電力変換装置の全体構成を示している。図2の電力変換装置は、中央制御装置200と、制御器(301)および電力変換回路(302)から成る電力変換セル(300)を複数個、本例では5個(3001~3005)備えて構成されている。
【0037】
中央制御装置200は、各電力変換回路(3021~3025)用の変換回路制御信号を含むシリアル通信用通信フレームを生成し、それをデジタル変換して伝送する機能を有し、光送受信器202a(第1光送受信器)および光送受信器202b(第2光送受信器)が設けられている。
【0038】
電力変換回路3021~3025を各々制御する制御器3011~3015には、光送受信器303a(第1光送受信器)および光送受信器303b(第2光送受信器)が各々設けられている。
【0039】
中央制御装置200と複数の制御器3011~3015の間を数珠つなぎ、すなわちデイジーチェーン接続する光ケーブルであって、中央制御装置200の光送受信器202aから前記各制御器3011~3015の光送受信器303a,303bを介して中央制御装置200の光送受信器202bに至るループ1(第1のループ)で、前記シリアル通信用通信フレームを伝送するための第1の光ケーブル群が設けられている。
【0040】
この第1の光ケーブル群は、中央制御装置200の光送受信器202aと制御器3011の光送受信器303aを結ぶ光ケーブル1001と、制御器3011の光送受信器303bと制御器3012の光送受信器303aを結ぶ光ケーブル1012と、制御器3012の光送受信器303bと制御器3013の光送受信器303aを結ぶ光ケーブル1023と、制御器3013の光送受信器303bと制御器3014の光送受信器303aを結ぶ光ケーブル1034と、制御器3014の光送受信器303bと制御器3015の光送受信器303aを結ぶ光ケーブル1045と、制御器3015の光送受信器303bと中央制御装置200の光送受信器202bを結ぶ光ケーブル1050とで構成されている。
【0041】
さらに、二重のループを構成するために、前記中央制御装置200と複数の制御器3011~3015の間をデイジーチェーン接続する光ケーブルであって、中央制御装置200の光送受信器202bから前記各制御器3011~3015の光送受信器303b、303aを介して中央制御装置200の光送受信器202aに至るループ2(ループ1とは逆の信号伝送方向の第2のループ)で、前記シリアル通信用通信フレームを伝送するための第2の光ケーブル群が設けられている。
【0042】
この第2の光ケーブル群は、中央制御装置200の光送受信器202bと制御器3015の光送受信器303bを結ぶ光ケーブル1005と、制御器3015の光送受信器303aと制御器3014の光送受信器303bを結ぶ光ケーブル1054と、制御器3014の光送受信器303aと制御器3013の光送受信器303bを結ぶ光ケーブル1043と、制御器3013の光送受信器303aと制御器3012の光送受信器303bを結ぶ光ケーブル1032と、制御器3012の光送受信器303aと制御器3011の光送受信器303bを結ぶ光ケーブル1021と、制御器3011の光送受信器303aと中央制御装置200の光送受信器202aを結ぶ光ケーブル1010とで構成されている。
【0043】
尚、以下、制御器3011~3015を制御器1~5と称し、電力変換回路3021~3025を電力変換回路1~5と称することもある。
【0044】
電力変換回路1~5の出力は、例えば図1の電力変換装置103のように、互いに接続する構成として良い。図1は特許文献1の図1に記載されたMMC(Modular Multi-Level Converter)と呼ばれる電力変換回路構成であり、単相インバータと電圧源から構成される電力変換回路の出力を直列に数珠つなぎにすることで一相の電力変換回路レグが構成される。このように一つの電力変換装置を実現する回路構成でも良いし、電力変換回路を並列構成とした電力変換装置を構成したり、複数の電力変換装置を構成したりしても良い。
【0045】
図1の電力変換装置103は次のように構成されている。電力変換装置103は、変圧器102を介して三相電力系統101に連系している。電力変換装置103のU点、V点、W点は変圧器102の2次側に接続されている。また、電力変換装置103のP点とN点の間に、負荷装置115を接続している。
【0046】
電力変換装置103は、複数のセル105をカスケード接続して構成されている。各セル105は、直流コンデンサを備えた双方向チョッパ回路である。1つ又は複数のセル105をカスケード接続して構成した回路を、変換器アーム104と呼び、図1では、1つの変換器アーム104がN個のセル105を含んでいるとする。
【0047】
電力変換装置103は、6つの変換器アーム104と6つのリアクトル106を、図1に示すように接続することによって構成されている。
【0048】
尚、107は電力変換装置103を制御する中央制御装置である。
【0049】
図2の中央制御装置200は図3のように構成されている。図3において、図2の電力変換セル(300)内の各電力変換回路1~5に送信する変換回路制御信号(例えばインバータであれば電圧指令値や電流指令値など)を電力変換装置制御器210で生成する。
【0050】
その変換回路制御信号を、デジタル変調回路201に入力し、デジタル変調回路201では、その制御信号を含むシリアル通信用通信フレーム(後述する図5)を生成し、そのフレームをデジタル通信で送受信を行うための伝送路符号変調を施したデジタル通信信号に変換する。
【0051】
デジタル通信信号は、ループ1の光送信器202aaとループ2の光送信器202baに同じものが入力され、これら光送信器202aa,202baを介して同時に光ケーブル1001(ループ1用の光ケーブル)と光ケーブル1005(ループ2用の光ケーブル)から光信号として送信される。
【0052】
ループ1の経路で各電力変換セルを通過して戻ってきた信号は、光ケーブル1050を通って光受信器202bbで受信され、ループ2の経路で各電力変換セルを通過して戻ってきた信号は、光ケーブル1010を通って光受信器202abで受信される。
【0053】
これら光受信器202bb,202abで受信された信号は、図3に示すようにデジタル復調回路203で復調してもよい。各電力変換セル(300)内の制御器3011~3015内を信号が通過する際に、シリアル通信用通信フレーム内の当該セル用のデータ部に、セル情報(例えば電圧・電流値や、セル内の状態を示す信号など)を埋め込む処理をした場合、ここでそのデータを復調し、電力変換回路状態信号として電力変換装置制御器210に取り込むことができる。ループ1、ループ2それぞれのデータは、基本的に同じとなるため、どちらのループから受け取った電力変換回路状態信号を使用しても良い。
【0054】
尚、光送信器202aaおよび光受信器202abが図2の光送受信器202aを構成し、光送信器202baおよび光受信器202bbが図2の光送受信器202bを構成している。
【0055】
図2の電力変換セル(3001~3005)は各々図4のように構成されている。図4では1つの電力変換セル(300)の構成を示しており、他の4つの電力変換セルも同様に構成されている。
【0056】
制御器301には、光送信器303aa,303ba,光受信器303ab,303bbと、それらに対応して送信回路304aa,304ba,受信回路304ab,304bbが設けられている。
【0057】
光送信器303aaおよび光受信器303abが図2の光送受信器303a(第1光送受信器)を構成し、光送信器303baおよび光受信器303bbが図2の光送受信器303b(第2光送受信器)を構成している。
【0058】
ループ1の光信号を光受信器303abで受信し、受信回路304abでデジタル通信信号を受信した上でその通信信号を送信回路304baに送り、光送信器303baを介してループ1上の隣の電力変換セル(又は数珠つなぎの最終端のセルの場合は中央制御装置200)へ再送信する。
【0059】
ループ2の光信号も前記と同様に、光受信器303bbで受信し、受信回路304bbでデジタル通信信号を受信した上でその通信信号を送信回路304aaに送り、光送信器303aaを介してループ2上の隣の電力変換セル(又は数珠つなぎの最終端のセルの場合は中央制御装置200)へ再送信する。
【0060】
ここで、再送信の際に、図示していない回路により、電力変換回路302から取得した電力変換回路の状態信号(例えば電圧・電流等の検出信号や、変換回路内部の状態信号)などを、後述する図5のシリアル通信用通信フレーム内の当該電力変換回路用のデータ格納場所にデジタル変調を施した上で入替をしてもよい。
【0061】
ループ1とループ2のそれぞれの受信信号は、デジタル復調バッファ回路305にて、前記フレーム内の規定の位置に埋め込まれた変換回路制御信号を復調し、同時に保持する(このとき、同じ信号を受信することになるため、どちらのループの信号を復調・保持しても良い)。
【0062】
また、同時にそれぞれの受信信号は、受信開始時間差測定回路306に入力され、2つのループの受信開始時間の差を計測する。その時間差を遅延時間演算回路307に入力し、受信したデータを更新するタイミングを決定する更新タイミング信号を生成する。
【0063】
デジタル復調バッファ回路305で保持されているデータと、更新タイミング信号の両方を、データ更新タイミング調整回路308に入力し、更新タイミング信号のきっかけによって電力変換回路302に入力される変換回路制御信号を更新する。
【0064】
中央制御装置200と、各電力変換セル(3001~3005)の送信側と受信側のクロック信号を同期するため、中央制御装置および各電力変換セルは、それぞれの受信器で受信したデジタル信号を図示しないPLL回路に入力することによってクロック信号の同期をかける。
【0065】
図5はシリアル通信用通信フレームの例を示し、フレームは、各電力変換セル(3001~3005)の電力変換回路1~5を制御するために必要な変換回路制御信号を含む。図5の例では8ビットの変換回路制御信号を電力変換セルの分(本例では5セル分)含んでいる。これに加え、各変換器に共通の信号や、開始フラグ、誤り訂正符号、終了フラグなどを含んでいても良い。これら信号は中央制御装置200のデジタル変調回路201で生成される。その際、例えばNRZ(Non-Return-to-Zero)やCMI(Code Mark Inversion)などの伝送路符号変調を施しても良い。
【0066】
次に通信の動作について、図6を用いて説明する。図6は、図2の装置構成の場合における、中央制御装置200および各電力変換セル300の制御器1~5(3011~3015)が送信・受信するフレームと時間の関係を示している。横軸は時間で、右に進むほど時間が経過している事を示している。中央制御装置、各制御器1~5の黒色で示す長方形がループ1の送信・受信通信フレームを示しており、白色で示す長方形がループ2の通信フレームを示している。
【0067】
通信フレームは常に一定の周期で、中央制御装置200から各ループに対して送信される。その周期の長さは、フレーム長の長さと同じか、それ以上に設定する(図6ではフレーム長より長く設定している)。シリアル通信のため、データ送信には一定の時間(図の長方形で示す時間)が掛かる。
【0068】
中央制御装置200は時刻tAにおいて、通信フレーム1の送信を開始する。ループ1では、制御器1は時刻tA1から光ケーブル1001を介して伝送されるフレームを受信開始する。tAからtA1までの時間差は、中央制御装置200と制御器1の間の光通信(送信、伝搬、受信)に要した時間を示している。
【0069】
受信したデータは、ほぼ同時に光ケーブル1012を介して制御器2に対して再送信される(ここで、この図では、簡略化のため受信データは同時に送信されると仮定し、図示を省略している)。
【0070】
時刻tA1にループ1の制御器1の光送信器303baから光ケーブル1012を介して送信されたフレームは、時刻tA2から制御器2の光受信器303abで受信が開始される。同様に制御器3、制御器4、制御器5、中央制御装置200と再送信・受信が行われ、その受信開始時刻はそれぞれ時刻tA3、時刻tB4、時刻tB5、時刻tBYとなる。
【0071】
一方ループ2における通信は、ループ1と同様に時刻tAにおいて図6の最下段に示すように、中央制御装置200から光ケーブル1005を介して制御器5へのフレーム送信が開始される。制御器5は時刻tA5においてそのフレームの受信を開始し、同時に光ケーブル1054を介して制御器4へ再送信する。そして制御器4は時刻tA4にフレームの受信を開始し、同時に光ケーブル1043を介して制御器3に再送信する。
【0072】
以降ループ1と同じように制御器3、制御器2、制御器1で受信・再送信が行われ、その受信開始時刻はそれぞれ時刻tB3、時刻tB2、時刻tB1、時刻tBXとなる。
【0073】
各制御器1~5の受信開始時間差測定回路306において、2つのループのうち後に受信したフレームの受信開始時刻tBxから、先に受信したフレームの時刻tAxを減算することで、その時間差を測定する。全ての制御器(3011~3015)間および中央制御装置200と制御器間の通信にかかる時間が同じと仮定すると、この時間差の中央の時刻は、全ての制御器において同じ時刻になる。
【0074】
実際には受信器、送信器の動作や、制御器、光通信ケーブルの長さなどが異なるため、全く同じにはならない。しかし、例えば光通信ケーブルの長さによる影響は、通常想定される隣り合う電力変換回路間の距離(例えば数10m以下)であれば、その通過時間は数ns以下となり、ほとんど同じと考えられる。
【0075】
光送受信器303a,303bやその出力から制御器1~5に用いられるICなどに至るまでの配線経路・回路動作による遅延時間の差も、それぞれの機器・回路が有する特性のバラツキや環境など条件の違い、変化などによって同じにはならないが、通常は問題にならないほど小さいほか、バラツキが小さくなるような部品を選定するなどにより、遅延時間の差をさらに抑制できる。
【0076】
そのため、この時間差を2で除算すると、受信開始時刻から中央の時刻までの時間tdelayxを計算できる。
【0077】
(tAx-tBx)/2=tdelayx
例えば制御器1では(tA1-tB1)/2の演算を行い、tdelay1を算出する。同様に全ての制御器がtdelayを計算する。
【0078】
次に、このtdelayをデータ更新タイミング調整回路308で同期に用いる。中央制御装置200から次のフレーム(通信フレーム2)が時刻tCにループ1、ループ2に送信される。それに伴い、ループ1では中央制御装置200から制御器1、制御器2、制御器3、制御器4、制御器5の順に通信フレームが送信され、一方ループ2では中央制御装置200から、制御器5、制御器4、制御器3、制御器2、制御器1の順に通信フレームが送信される。
【0079】
ここで、各制御器1~5が2つのループからそれぞれフレームを受け取るが、先に受け取るフレームの受信開始時刻をそれぞれtC1、tC2、tC3、tC4、tC5とする。各制御器1~5のデータ更新は、これらフレーム受信開始時刻tCxからtdelayx遅らせた時間を基準に更新する。これにより、全ての電力変換セル(3001~3005)がほぼ同時にデータ更新することができる。例えば電力変換セル3001の制御器1の場合の更新タイミングはtC1+tdelay1となる。
【0080】
以上の説明では受信開始時刻から時間差を測定していたが、受信終了時刻から時間差を測定しても同じである。tdelayの算出においては、複数回のフレーム受信におけるtdelayの平均値をとっても良い。更新タイミングはtCxとtdelayxとの和に加えて、全てのセルに一定の時間を更に追加してもよい。
【0081】
以上のように実施例1によれば、各電力変換セル(300)の信号の同期タイミングを、各セルの受信信号を用いて、各セル内で計算し設定することができ、システムをセットアップするもしくは始動する際に必要な、手動もしくは専用プログラムによる測定手段による同期タイミングの調整が不要となり、セットアップ・始動時間の短縮、プログラムの簡素化、演算装置のコスト低減が可能となる。
【0082】
また、運転中に装置の特性が変化し、それぞれ通信における遅延時間などに変化が生じても、上記特別な手段を執る必要がなくなるため、調整時間の短縮、運転継続性の向上、装置性能低下の防止などが可能となる。
【実施例2】
【0083】
実施例1では、通信フレーム1の次に伝送された通信フレーム2を受信した時刻を用いてデータ更新タイミングを決定していたが、本実施例2では通信が途絶してしまうこと等を考慮し、最初のフレーム(通信フレーム1)を正常に受信した時刻を基準にデータ更新タイミングを決定するように構成した。
【0084】
基本的な構成(図2図5)は実施例1と同様である。図7図2の装置構成の場合における、中央制御装置200および各電力変換セル300の制御器1~5(3011~3015)が送信・受信するフレームと時間の関係を示している。図6と同様に横軸は時間で、右に進むほど時間が経過している事を示している。中央制御装置、各制御器1~5の黒色で示す長方形がループ1の送信・受信通信フレームを示しており、白色で示す長方形がループ2の通信フレームを示している。
【0085】
時刻tAにおいて、中央制御装置200からループ1、ループ2に対して通信フレームが送られ、制御器1~5に順に通信フレームが転送される。そして、各制御器1~5において、二つのループから到達した通信フレームの受信開始時間の差を受信開始時間差測定回路306で計算する。各制御器1~5は先に受信した通信フレームの受信開始時刻又は受信終了時刻を記憶しておき、その時刻を基準にtdelayxと、一定の周期Tcを足した時間分遅らせた時刻において、受信したフレームのデータを更新する。例えば、制御器1では時刻tA1を基準にし、tA1+tdelay1+Tcの時刻において、データを更新する。
【0086】
Tcは任意の時間とすれば良いが、時刻tAで送信を開始した変換回路制御信号をデータ更新するためには、少なくとも片側のループのデータが全て受信完了し、復調が完了している必要があり、そのためにはTCをフレーム長以上に設定する必要がある。
【0087】
通信中に片側のループにおいて断線等の故障が発生し、通信が途絶すると、時間差が測定できなくなるだけでなく、先に受信した通信フレームの受信開始時刻がずれてしまう。その場合は、正常に受信できた(2つのループのいずれもが受信できた)際における、先に受信した通信フレームを基準時刻とし、前記tdelayに加え、フレーム間周期を加算した時間を更新タイミングとする。その際、受信データは正常に受信できたフレームのデータを利用する。
【0088】
更に次のフレームでも正常に受信できなかった場合は、フレーム間周期を更に加算した時刻を更新タイミングとする。以上のようにすると、片側のループで異常が発生しても、データの更新タイミングを同期し続けることができる。ただし、通信時間のバラツキや、計算の誤差などの影響で、次第に同期できなくなるため、その場合は停止する必要がある。しかし、しばらくの間同期できることで、安全に変換器動作を停止する等、処理を実行する時間を稼ぐことができる。
【0089】
以上のように実施例2によれば、実施例1の効果に加えて、実施例1の方法に対し、同期タイミングの基準となる時刻を、正常に受信できた受信フレームの受信開始時刻もしくは受信終了時刻に設定することで、一つのループにおいて通信異常や断線などが発生した場合でも、中央制御装置200とやりとりするなどの特別な処理をする事無く、直ちに、同期タイミングを維持し続けることが可能となり、装置の運転継続性を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0090】
1001,1012,1023,1034,1045,1050,1054,1043,1032,1021,1010…光ケーブル
200…中央制御装置
201…デジタル変調回路
202a,202b,303a,303b…光送受信器
202aa,202ba,303aa,303ba…光送信器
202ab,202bb,303ab,303bb…光受信器
203…デジタル復調回路
210…電力変換装置制御器
300(3001~3005)…電力変換セル
3011~3015…制御器
3021~3025…電力変換回路
304aa,304ba…送信回路
304ab,304bb…受信回路
305…デジタル復調バッファ回路
306…受信開始時間差測定回路
307…遅延時間演算回路
308…データ更新タイミング調整回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7