IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許-車両用システム及び物標識別プログラム 図1
  • 特許-車両用システム及び物標識別プログラム 図2
  • 特許-車両用システム及び物標識別プログラム 図3
  • 特許-車両用システム及び物標識別プログラム 図4
  • 特許-車両用システム及び物標識別プログラム 図5
  • 特許-車両用システム及び物標識別プログラム 図6
  • 特許-車両用システム及び物標識別プログラム 図7
  • 特許-車両用システム及び物標識別プログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】車両用システム及び物標識別プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20240110BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240110BHJP
   G01S 7/40 20060101ALI20240110BHJP
   G01S 7/497 20060101ALI20240110BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20240110BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20240110BHJP
【FI】
G08G1/09 H
G08G1/16 A
G01S7/40 191
G01S7/497
G01S13/931
G01S17/931
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020138673
(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公開番号】P2022034796
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュイク
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-079316(JP,A)
【文献】特開2018-081609(JP,A)
【文献】特開2007-310457(JP,A)
【文献】特開2019-079315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 ~ 1/16
G01S 7/40
G01S 7/497
G01S 13/931
G01S 17/931
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車のセンサのセンサ情報に基づいて自車から見通し内にある物標に関する物標情報を第1物標情報として検出する物標情報検出部(6)と、
搭載物のセンサのセンサ情報に基づいて検出された物標に関する物標情報を第2物標情報として取得する物標情報取得部(12)と、
複数の前記第2物標情報により個々に特定される複数の物標を、同一個体又は個別個体の何れかとして識別する物標識別部(17)と、
前記物標識別部により同一個体として識別された個体を、前記第1物標情報に基づいて見通しあり物標と見通しなし物標とに区分する物標区分部(18)と、を備え
前記物標識別部は、
前記搭載物に対して位置補正を実施する位置補正実施部(17a)と、
自車の測位情報を座標系の基準点に変換する測位情報変換部(17b)と、
前記搭載物の測位情報を自車基準点座標系に変換する第1座標系変換部(17c)と、
前記搭載物のセンサのセンサ情報に基づいて検出された物標情報により特定される物標の相対距離及び移動方位を前記自車基準点座標系に合成し、前記物標に対する前記自車基準点座標系に変換する第2座標系変換部(17d)と、
前記自車基準点座標系において位置が重複する物標を抽出する物標抽出部(17e)と、
前記物標抽出部により抽出された物標の種別が同一であるか否かを判定する種別判定部(17f)と、
種別が同一であると前記種別判定部により判定された物標の移動速度及び移動方位が同一であるか否かを判定する速度方位判定部(17g)と、
移動速度及び移動方位の両方が同一であると前記速度方位判定部により判定された物標を同一個体として識別する個体識別部(17h)と、を備える車両用システム。
【請求項2】
前記個体識別部は、種別が同一でないと前記種別判定部により判定された物標を個別個体として識別する請求項1に記載した車両用システム。
【請求項3】
前記個体識別部は、移動速度及び移動方位のうち少なくとも何れかが同一でないと前記速度方位判定部により判定された物標を個別個体として識別する請求項1又は2に記載した車両用システム。
【請求項4】
前記種別判定部は、前記搭載物の位置精度が所定レベル以上であることを条件とし、前記抽出部により抽出された物標の種別が同一であるか否かを判定する請求項1から3の何れか一項に記載した車両用システム。
【請求項5】
前記種別判定部は、前記搭載物の信頼度が所定レベル以上であることを条件とし、前記抽出部により抽出された物標の種別が同一であるか否かを判定する請求項から4の何れか一項に記載した車両用システム。
【請求項6】
前記物標区分部は、
前記物標情報検出部により前記第1物標情報として検出された物標情報により特定される物標の相対距離及び移動方位を自車基準点座標系に合成し、前記物標に対する前記自車基準点座標系に変換する第3座標系変換部(18a)と、
見通しあり物標を生成する見通しあり物標生成部(18b)と、
前記物標識別部により同一個体であると識別された物標と、前記見通しあり物標生成部により生成された見通しあり物標とを合成し、見通しなし物標を生成する見通しなし物標生成部(18c)と、を備える請求項から5の何れか一項に記載した車両用システム。
【請求項7】
前記第1物標情報を送信する場合の対象メッセージフォーマットを動的に変更する物標情報送信制御部(16)を備える請求項1から6の何れか一項に記載した車両用システム。
【請求項8】
前記物標情報送信制御部は、
任意送信項目の送信必要の有無を判定する第1必要有無判定部(16a)と、
任意送信項目の送信必要の無が判定されると、その送信必要の無が判定された任意送信項目に対応するデータを前記対象メッセージフォーマットから削除する第1データ削除部(16b)と、を備える請求項7に記載した車両用システム。
【請求項9】
前記物標情報送信制御部は、
自由送信項目の送信必要の有無を判定する第必要有無判定部(16)と、
自由送信項目の送信必要の無が判定されると、その送信必要の無が判定された自由送信項目に対応するデータを前記対象メッセージフォーマットから削除する第データ削除部(16)と、を備える請求項8に記載した車両用システム。
【請求項10】
車両用システム(1)に、
自車のセンサのセンサ情報に基づいて自車から見通し内にある物標に関する物標情報を第1物標情報として検出する物標情報検出手順と、
搭載物のセンサのセンサ情報に基づいて検出された物標に関する物標情報を第2物標情報として取得する物標情報取得手順と、
複数の前記第2物標情報により個々に特定される複数の物標を、同一個体又は個別個体の何れかとして識別する物標識別手順と、
前記物標識別手順により同一個体として識別された個体を、前記第1物標情報に基づいて見通しあり物標と見通しなし物標とに区分する物標区分手順と、を実行させ、
前記物標識別手順は、
前記搭載物に対して位置補正を実施する第1手順と、
自車の測位情報を座標系の基準点に変換する第2手順と、
前記搭載物の測位情報を自車基準点座標系に変換する第3手順と、
前記搭載物のセンサのセンサ情報に基づいて検出された物標情報により特定される物標の相対距離及び移動方位を前記自車基準点座標系に合成し、前記物標に対する前記自車基準点座標系に変換する第4手順と、
前記自車基準点座標系において位置が重複する物標を抽出する第5手順と、
前記第5手順により抽出した物標の種別が同一であるか否かを判定する第6手順と、
種別が同一であると前記第6手順により判定した物標の移動速度及び移動方位が同一であるか否かを判定する第7手順と、
移動速度及び移動方位の両方が同一であると前記第7手順により判定した物標を同一個体として識別する第8手順と、を含む物標識別プログラム
【請求項11】
前記第1物標情報を送信する場合の対象メッセージフォーマットを動的に変更する物標情報送信制御手順を実行させる請求項10に記載した物標識別プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用システム及び物標識別プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自車のセンサのセンサ情報に基づいて自車から見通し内にある歩行者や自転車等の物標に関する位置情報、移動速度、移動方位、種別情報等の物標情報を検出し、その検出した物標情報を用いて自車と物標との相関情報を安全サービスとして提供するシステムが供されている。又、例えば他車や道路インフラ等の搭載物との間で車車間通信や路車間通信を行うことで、その搭載物から送信された搭載物に関する位置情報、移動速度、移動方位、種別情報等の搭載物情報や、搭載物のセンサのセンサ情報に基づいて検出された物標情報を受信し、その受信した搭載物情報や物標情報を用いて自車と物標との相関情報を安全サービスとして提供するシステムが供されている。例えば特許文献1には、自車のセンサのセンサ情報に基づいて物標情報を検出すると共に、他車や道路インフラ等の搭載物との間で車車間通信や路車間通信を行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-79316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した2つのシステムが共存する構成では、以下に示す問題がある。即ち、自車の周囲に複数の搭載物が存在する場合であれば、複数の搭載物から送信された複数の物標情報を受信することになるので、安全サービスの信頼性を高めるには、複数の物標情報により個々に特定される複数の物標が同一個体であるか個別個体であるかを判定して物標の個体を識別する必要があり、その識別した個体を状況に応じて処理する必要がある。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、物標の個体を適切に識別し、その識別した個体を状況に応じて適切に処理することで、安全サービスを適切に提供することができる車両用システム及び物標識別プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した発明によれば、物標情報検出部(6)は、自車のセンサのセンサ情報に基づいて自車から見通し内にある物標に関する物標情報を第1物標情報として検出する。物標情報取得部(12)は、搭載物のセンサのセンサ情報に基づいて検出された物標に関する物標情報を第2物標情報として取得する。物標識別部(17)は、複数の第2物標情報により個々に特定される複数の物標を、同一個体又は個別個体の何れかとして識別する。物標区分部18は、物標識別部により同一個体として識別された個体を、第1物標情報に基づいて見通しあり物標と見通しなし物標とに区分する。前記物標識別部は、前記搭載物に対して位置補正を実施する位置補正実施部(17a)と、自車の測位情報を座標系の基準点に変換する測位情報変換部(17b)と、前記搭載物の測位情報を自車基準点座標系に変換する第1座標系変換部(17c)と、前記搭載物のセンサのセンサ情報に基づいて検出された物標情報により特定される物標の相対距離及び移動方位を前記自車基準点座標系に合成し、前記物標に対する前記自車基準点座標系に変換する第2座標系変換部(17d)と、前記自車基準点座標系において位置が重複する物標を抽出する物標抽出部(17e)と、前記物標抽出部により抽出された物標の種別が同一であるか否かを判定する種別判定部(17f)と、種別が同一であると前記種別判定部により判定された物標の移動速度及び移動方位が同一であるか否かを判定する速度方位判定部(17g)と、移動速度及び移動方位の両方が同一であると前記速度方位判定部により判定された物標を同一個体として識別する個体識別部(17h)と、を備える。
【0007】
複数の第2物標情報により個々に特定される複数の物標を、同一個体又は個別個体の何れかとして識別し、同一個体として識別された個体を、第1物標情報に基づいて見通しあり物標と見通しなし物標とに区分する。即ち、搭載物のセンサのセンサ情報に基づいて検出された複数の物標情報により特定される複数の物標を、同一個体又は個別個体の何れかとして識別し、同一個体として識別された個体を、第1物標情報に基づいて見通しあり物標と見通しなし物標とに区分するようにした。物標の個体を適切に識別し、その識別した個体を状況に応じて適切に処理することで、安全サービスを適切に提供することができる。即ち、複数の物標を同一個体又は個別個体の何れとして識別することで、システムの信頼性を高めることができ、見通しあり物標と見通しなし物標とに区分して処理対象を限定することで、処理負荷を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態を示す機能ブロック図
図2】物標識別部の機能ブロック図
図3】物標区分部の機能ブロック図
図4】物標情報送信制御部の機能ブロック図
図5】物標認識処理を示すフローチャート(その1)
図6】物標認識処理を示すフローチャート(その2)
図7】物標区分処理を示すフローチャート
図8】物標情報送信制御処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、車両に搭載されている車両用システム1は、第1システム2と第2システム3とがバスを介してデータ通信可能に構成されている。バスは、例えばCAN(Controller Area Network)(登録商標)、LIN(Local Interconnect Network)(登録商標)、CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)(登録商標)、FlexRay(登録商標)、MOST(Media Oriented Systems Transport)(登録商標)等である。第1システム2と第2システム3は、それぞれ電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)から構成されていても良い。
【0010】
第1システム2は、ADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能を備えるシステムである。第1システム2は、自車周囲を撮影するカメラ4と、自車周囲を検出エリアとするミリ波センサ5とを接続しており、カメラ4の画像情報を入力し、ミリ波センサ5の検出情報を入力する。カメラ4やミリ波センサ5は、自車のセンサに相当し、カメラ4の画像情報やミリ波センサ5の検出情報は、自車のセンサのセンサ情報に相当する。尚、本実施形態では、カメラ4から画像情報を入力し、ミリ波センサ5から検出情報を入力する構成を例示しているが、自車周囲を検出エリアとするレーダやライダ(LiDAR:Light Detection and Ranging)を接続し、レーダやライダの検出情報を入力する構成でも良い。即ち、自車周囲の状況を検出するセンサとして、どのようなセンサを採用しても良い。
【0011】
第1システム2は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びI/O(Input/Output)を備えるマイクロコンピュータを備える。マイクロコンピュータは、非遷移的実体的記憶媒体に格納されている制御プログラムを実行することで当該制御プログラムに対応する処理を実行し、第1システム2の動作を制御する。第1システム2は、マイクロコンピュータが実行する機能ブロックとして、物標情報検出部6を備える。
【0012】
物標情報検出部6は、カメラ4から画像情報を入力し、ミリ波センサ5から検出情報を入力すると、その入力した画像情報や検出情報を処理し、自車から見通し内にある物標に関する位置情報、移動速度、移動方位、種別情報等の物標情報を検出する。物標情報検出部6により検出される物標は、自車周囲に存在する物標であり、歩行者や自転車等であり、自車の走行に影響を及ぼし得る物標である。即ち、物標情報検出部6は、自車周囲に存在する歩行者や自転車等の位置情報、移動速度、移動方位、種別情報等の物標情報を検出する。物標情報検出部6は、物標情報を検出すると、その検出した物標情報を第1物標情報として第2システム3に送信する。
【0013】
第1システム2は、物標情報を検出することで、物標への衝突を回避する等の運転制御を行う。即ち、第1システム2は、アクセル制御を行うアクセル制御ECU、ブレーキ制御を行うブレーキ制御ECU、ステアリング制御を行うステアリング制御ECU等と連携し、自車が物標に衝突する可能性ありを判定すると、その物標への衝突を回避するようにアクセル制御、ブレーキ制御、ステアリング制御等を行う。
【0014】
第2システム3は、V2Xの機能を備えるシステムである。V2Xは、自車と他車との間のデータ通信であるV2V(Vehicle to Vehicle)、自車と路上機との間のデータ通信であるV2I(Vehicle to Infrastructure)、自車と自転車や歩行者との間のデータ通信であるV2P(Vehicle to Pedestrian)等の総称である。
【0015】
第2システム3は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機7を接続しており、GNSS受信機7により測位された測位情報を自車の測位情報として入力する。GNSSとは、GPSS(Global Positioning System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、Galileo等の衛星測位システムの総称である。
【0016】
第2システム3は、無線通信機8を接続している。搭載物9は、搭載物9の周囲を撮影するカメラ10と、搭載物9の周囲を検出エリアとするミリ波センサ10とを搭載している。無線通信機8は、搭載物9に搭載されている無線通信機との間でデータ通信を行うことで、搭載物9に関する位置情報、移動速度、移動方位、種別情報等の搭載物情報を受信すると共に、搭載物9に搭載されているカメラ10の画像情報やミリ波センサ11の検出情報に基づいて検出された物標に関する位置情報、移動速度、移動方位、種別情報等の物標情報を受信する。搭載物9に搭載されているカメラ10やミリ波センサ11は、搭載物9のセンサに相当し、カメラ10の画像情報やミリ波センサ11の検出情報は、搭載物9のセンサのセンサ情報に相当する。尚、本実施形態では、カメラ10の画像情報を用い、ミリ波センサ10から検出情報の用いる構成を例示しているが、搭載物9の周囲を検出エリアとするレーダやライダの検出情報を用いる構成でも良い。即ち、搭載物9の周囲の状況を検出するセンサとして、どのようなセンサを採用しても良い。
【0017】
搭載物9は、他車、路上機、自転車を運転する人物により携帯される携帯情報端末、歩行者により携帯される携帯情報端末等である。携帯情報端末は、例えばスマートフォンやタブレット端末等である。即ち、搭載物9が他車であれば、第2システム3は、他車に関する搭載物情報を受信すると共に、他車に搭載されているカメラの画像情報やミリ波センサの検出情報に基づいて検出された物標に関する物標情報を受信する。搭載物9が路上機であれば、第2システム3は、路上機に関する搭載物情報を受信すると共に、路上機に搭載されているカメラの画像情報やミリ波センサの検出情報に基づいて検出された物標に関する物標情報を受信する。搭載物9が自転車を運転する人物や歩行者により携帯される携帯情報端末であれば、自転車や歩行者に関する搭載物情報を受信すると共に、自転車を運転する人物や歩行者により携帯される携帯情報端末に搭載されているカメラの画像情報やミリ波センサの検出情報に基づいて検出された物標に関する物標情報を受信する。ここで、自車のカメラ4の画像情報やミリ波センサ5の検出情報に基づいて検出される物標は、自車から見通し内にある物標であるのに対し、搭載物9のカメラ10の画像情報やミリ波センサ11の検出情報に基づいて検出される物標は、自車から見通し内にある物標だけでなく見通し外にある物標も含む。
【0018】
第2システム3は、CPU、ROM、RAM及びI/Oを備えるマイクロコンピュータを備える。マイクロコンピュータは、非遷移的実体的記憶媒体に格納されている制御プログラムを実行することで当該制御プログラムに対応する処理を実行し、第2システムの動作を制御する。第2システムは、マイクロコンピュータが実行する機能ブロックとして、物標情報取得部12と、相関関係処理部13と、見通し外物標情報記憶部14と、相関関係特定部15と、物標情報送信制御部16とを備える。
【0019】
物標情報取得部12は、搭載物9から送信された搭載物情報及び物標情報が無線通信機8により受信され、その無線通信機8から出力された搭載物情報及び物標情報を入力することで、搭載物情報及び物標情報を取得する。この場合、物標情報取得部12は、物標情報を第2物標情報として取得する。相関関係処理部13は、物標の相関関係を処理する機能ブロックであり、物標識別部17と、物標区分部18とを備える。
【0020】
物標識別部17は、物標情報取得部12から複数の第2物標情報を入力すると、その複数の第2物標情報により個々に特定される複数の物標が同一個体であるか個別個体であるかを判定し、物標の個体を識別する機能ブロックである。物標識別部17は、図2に示すように、位置補正実施部17aと、測位情報変換部17bと、第1座標系変換部17cと、第2座標系変換部17dと、物標抽出部17eと、種別判定部17fと、速度方位判定部17gと、個体識別部17hとを備える。
【0021】
位置補正実施部17aは、搭載物9に対して移動速度及び移動方位に基づいて時間による位置補正を実施する。測位情報変換部17bは、自車の測位情報をXY座標系のゼロ点に変換し、自車ゼロ点XY座標系を生成する。自車の測位情報は緯度経度により確定される。XY座標系のゼロ点は座標系の基準点に相当する。第1座標系変換部17cは、搭載物9の測位情報を自車ゼロ点XY座標系に変換する。搭載物9の測位情報も緯度経度により確定される。第2座標系変換部17dは、搭載物9のカメラ10の画像情報やミリ波センサ11の検出情報に基づいて検出された物標情報により特定される物標の相対距離及び移動方位を自車ゼロ点XY座標系に合成し、物標に対する自車ゼロXY座標系に変換する。
【0022】
物標抽出部17eは、自車ゼロXY座標系において位置が一定誤差内で重複する物標を抽出する。即ち、物標抽出部17eは、複数の搭載物9のカメラ10の画像情報やミリ波センサ11の検出情報に基づいて複数の物標情報が検出された場合に、その検出された複数の物標情報の個々により特定される物標の位置が重複するか否かを判定する。
【0023】
種別判定部17fは、位置が重複する物標が物標抽出部17eにより抽出されると、搭載物9の位置精度及び信頼度を判定し、搭載物9の位置精度が所定レベル以上であり、且つ搭載物9の信頼度が所定レベル以上であることを条件とし、その抽出された位置が重複する物標の種別が同一であるか否かを判定する。速度方位判定部17gは、その抽出された位置が重複する物標の種別が同一であると種別判定部17fにより判定されると、その種別が同一であると判定された物標の移動速度及び移動方位が同一であるか否かを判定する。
【0024】
個体識別部17hは、種別が同一である物標の移動速度及び移動方位が同一であると速度方位判定部17gにより判定されると、その種別が同一であり、且つ移動速度及び移動方位が同一である物標を同一個体として識別する。一方、個体識別部17hは、種別が同一でないと種別判定部17fにより判定されると、その種別が同一でないと判定された物標を個別個体として識別する。又、個体識別部17hは、種別が同一であるが物標の移動速度及び移動方位のうち少なくとも何れかが同一でないと速度方位判定部17gにより判定されると、その種別が同一であるが物標の移動速度及び移動方位のうち少なくとも何れかが同一でないと判定された物標を個別個体として識別する。
【0025】
物標区分部18は、同一個体であると識別された物標を見通しあり物標と見通しなし物標とに区分する機能ブロックであり、図3に示すように、第3座標系変換部18aと、見通しあり物標生成部18bと、見通しなし物標生成部18cとを備える。見通しあり物標は、上記した自車から見通し内にある物標であり、自車のカメラ4の撮像エリア内やミリ波センサ5の検出エリア内に存在する物標である。見通しあり物標は、カメラ4の画像情報やミリ波センサ5の検出情報から直接的に検出可能な物標である。見通しなし物標は、上記した自車から見通し外にある物標であり、自車のカメラ4の撮像エリア外やミリ波センサ5の検出エリア外に存在する物標である。見通しなし物標は、カメラ4の画像情報やミリ波センサ5の検出情報から直接的に検出不能であるが間接的に検出可能な物標である。
【0026】
第3座標系変換部18aは、物標情報検出部6により第1物標情報として検出された物標情報により特定される自車から見通し内にある物標の相対距離及び移動方位を自車ゼロ点XY座標系に合成し、物標に対する自車ゼロ点XY座標系に変換する。見通しあり物標生成部18bは、自車ゼロ点XY座標系に変換した物標を見通しあり物標として生成する。見通しなし物標生成部18cは、物標識別部17により同一個体として識別された物標と、見通しあり物標生成部18bにより生成された見通しあり物標とを合成し、見通しなし物標を生成する。
【0027】
見通し外物標情報記憶部14は、見通しなし物標が物標区分部18により区分されると、その区分された見通しなし物標に関する物標情報を見通し外物標情報として記憶する。相関関係特定部15は、見通し外物標情報記憶部14に記憶されている見通し外物標情報の相関関係を特定する。
【0028】
物標情報送信制御部16は、物標情報を送信制御する機能ブロックであり、図4に示すように、第1必要有無判定部16aと、第1データ削除部16bと、第2必要有無判定部16cと、第2データ削除部16dとを備える。
【0029】
第1必要有無判定部16aは、対象メッセージフォーマットに任意送信項目を確認し、その任意送信項目の送信条件を確認し、任意送信項目の送信必要の有無を判定する。任意送信項目とは、例えばイベント発生等の任意の条件により送信するデータである。第1データ削除部16dは、任意送信項目の送信必要の無が第1必要有無判定部16aにより判定されると、その送信必要の無が判定された任意送信項目に対応するデータを対象メッセージフォーマットから削除する。
【0030】
第2必要有無判定部16cは、対象メッセージフォーマットに自由送信項目を確認し、その自由送信項目の送信条件を確認し、自由送信項目の送信必要の有無を判定する。自由送信項目とは、例えば走行速度等のシステム側で自由に設定して送信するデータである。第2データ削除部16dは、自由送信項目の送信必要の無が第2必要有無判定部16cにより判定されると、その送信必要の無が判定された自由送信項目に対応するデータを対象メッセージフォーマットから削除する。
【0031】
次に、上記した構成の作用について図5から図8を参照して説明する。ここでは、物標識別部17が行う物標識別処理、物標区分部18が行う物標区分処理、物標情報送信制御部16が行う物標情報送信制御処理について順次説明する。尚、自車の周囲に複数の搭載物9が存在し、複数の搭載物9の個々が複数の物標情報を検出し得ることから、図5から図8において、搭載物(n)は複数の搭載物9が対象であることを示し、物標(n)は複数の物標が対象であることを示す。
【0032】
(1)物標識別処理
物標識別部17が行う物標識別処理について図5及び図6を参照して説明する。
物標識別部17は、物標識別処理を開始すると、搭載物(n)のセンサのセンサ情報に基づいて検出された物標(n)に関する物標情報を取得し(物標情報取得手順に相当する)、搭載物(n)に対して移動速度及び移動方位に基づいて時間による位置補正を実施する(S1)。物標識別部17は、自車の測位情報(緯度経度)をXY座標系のゼロ点に変換する(S2)。物標識別部17は、搭載物(n)の測位情報(緯度経度)を自車ゼロ点XY座標系に変換する(S3)。
【0033】
物標識別部17は、物標(n)の相対距離及び移動方位を自車ゼロ点XY座標系に合成し、物標に対する自車ゼロXY座標系に変換する(S4)。物標識別部17は、自車ゼロXY座標系において位置が一定誤差内で重複する物標(n)を抽出する(S5)。物標識別部17は、位置が一定誤差内で重複する物標(n)を抽出すると、搭載物(n)の位置精度が所定レベル以上であるか否かを判定する(S6)。物標識別部17は、搭載物(n)の位置精度が所定レベル以上であると判定すると(S6:YES)、搭載物(n)の信頼度が所定レベル以上であるか否かを判定する(S7)。物標識別部17は、搭載物(n)の信頼度が所定レベル以上であると判定すると(S7:YES)、その抽出した位置が重複する物標(n)の種別が同一であるか否かを判定する(S8)。物標識別部17は、その抽出した位置が重複する物標(n)の種別が同一であると判定すると(S8:YES)、その種別が同一である物標(n)の移動速度及び移動方位が同一であるか否かを判定する(S9)。
【0034】
物標識別部17は、その種別が同一である物標(n)の移動速度及び移動方位が同一であると判定すると(S9:YES)、その種別が同一であり且つ移動速度及び移動方位が同一である物標(n)を同一個体として識別し(S10、物標識別手順に相当する)、物標識別処理を終了する。一方、物標識別部17は、その抽出した位置が重複する物標(n)の種別が同一でないと判定すると(S8:NO)、その種別が同一でないと判定した物標(n)を個別個体として識別し(S11、物標識別手順に相当する)、物標識別処理を終了する。
【0035】
又、物標識別部17は、種別が同一であるが物標の移動速度及び移動方位のうち少なくとも何れかが同一でないと判定すると(S9:NO)、その種別が同一であるが物標の移動速度及び移動方位のうち少なくとも何れかが同一でないと判定した物標(n)を個別個体として識別する(S11)。尚、物標識別部17は、搭載物(n)の位置精度が所定レベル以上でないと判定すると(S6:NO)、又は搭載物(n)の信頼度が所定レベル以上でないと判定すると(S7:NO)、個体を識別せずに物標識別処理を終了する。
【0036】
(2)物標区分処理
物標区分部18が行う物標区分処理について図7を参照して説明する。
物標区分部18は、物標区分処理を開始すると、第1システム2から入力した第1物標情報に基づいて自車から見通し内にある物標(n)の位置情報、移動速度、移動方位及び種別を含む物標情報を検出する(S21、物標情報検出手順に相当する)。物標区分部18は、搭載物(n)から物標情報を取得し(S22)、同一個体として識別した物標(n)を生成する(S23)。
【0037】
物標区分部18は、物標情報検出部6により第1物標情報として検出された物標情報により特定される物標(n)の相対距離及び移動方位を自車ゼロ点XY座標系に合成し、物標(n)に対する自車ゼロ点XY座標系に変換し(S24)、自車ゼロ点XY座標系に変換した物標を見通しあり物標(n)として生成する(S25、物標区分手順に相当する)。物標区分部18は、同一個体を識別した物標(n)と、その生成した見通しあり物標(n)とを合成し、見通しなし物標(n)を生成し(S26、物標区分手順に相当する)、物標区分処理を終了する。
【0038】
(3)物標情報送信制御処理
物標情報送信制御部16が行う物標情報送信制御処理について図8を参照して説明する。
物標情報送信制御部16は、物標情報送信制御処理を開始すると、対象メッセージフォーマットに任意送信項目を確認し(S31)、その任意送信項目の送信条件を確認し(S32)、任意送信項目の送信必要の有無を判定する(S33、物標情報送信制御手順に相当する)。物標情報送信制御部16は、任意送信項目の送信必要の無を判定すると(S33:NO)、その送信必要の無を判定した任意送信項目に対応するデータを対象メッセージフォーマットから削除する(S34、物標情報送信制御手順に相当する)。即ち、物標情報送信制御部16は、その送信必要の無を判定した任意送信項目に対応するデータを対象メッセージフォーマットから削除することで、対象メッセージフォーマットを動的に変更する。
【0039】
物標情報送信制御部16は、対象メッセージフォーマットに自由送信項目を確認し(S35)、その自由送信項目の送信条件を確認し(S36)、自由送信項目の送信必要の有無を判定する(S37、物標情報送信制御手順に相当する)。物標情報送信制御部16は、自由送信項目の送信必要の無を判定すると、その送信必要の無を判定した自由送信項目に対応するデータを対象メッセージフォーマットから削除する(S38物標情報送信制御手順に相当する)。即ち、物標情報送信制御部16は、その送信必要の無を判定した自由送信項目に対応するデータを対象メッセージフォーマットから削除することで、対象メッセージフォーマットを動的に変更する。
【0040】
物標情報送信制御部16は、対象メッセージフォーマットの最大送信量を確認する(S39)。物標情報送信制御部16は、必要な項目に対応するデータを、対象メッセージフォーマットの最大送信量まで格納し(S40)、物標情報送信制御処理を終了する。
【0041】
以上に説明したように本実施形態によれば、以下に示す作用効果を得ることができる。
車両用システム1において、搭載物9のカメラ10の画像情報やミリ波センサ11の検出情報に基づいて検出された複数の物標情報により特定される複数の物標を、同一個体又は個別個体の何れかとして識別し、同一個体として識別された個体を、自車のカメラ4の画像情報やミリ波センサ5の検出情報に基づいて見通しあり物標と見通しなし物標とに区分するようにした。物標の個体を適切に識別し、その識別した個体を状況に応じて適切に処理することで、安全サービスを適切に提供することができる。即ち、複数の物標を同一個体又は個別個体の何れとして識別することで、システムの信頼性を高めることができ、見通しあり物標と見通しなし物標とに区分して処理対象を限定することで、処理負荷を低減させることができる。
【0042】
又、車両用システム1において、物標情報を送信する場合の対象メッセージフォーマットを動的に変更するようにした。物標情報を周辺車両にブロードキャスト送信する場合には、限られたデータ通信量の許容範囲内で物標情報を周辺車両にブロードキャスト送信する必要があるが、対象メッセージフォーマットを動的に変更することで、限られたデータ通信量の許容範囲内で物標情報を周辺車両に適切にブロードキャスト送信することができる。
【0043】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、更には、それらに一要素のみ、それ以上、或いはそれ以下を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0044】
本開示に記載の制御部及びその手法は、制御プログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。或いは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によりプロセッサを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。若しくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路により構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されても良い。又、制御プログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていても良い。
【符号の説明】
【0045】
図面中、1は車両用システム、2は第1システム、3は第2システム、6は物標情報検出部、12は物標情報取得部、13は相関関係処理部、16は物標情報送信制御部、16aは第1必要有無判定部、16bは第1データ削除部、16cは第2必要有無判定部、16dは第2データ削除部、17は物標識別部、17aは位置補正実施部、17bは測位情報変換部、17cは第1座標系変換部、17dは第2座標系変換部、17eは物標抽出部、17fは種別判定部、17gは速度方位判定部、17hは個体識別部、18は物標区分部、18aは第3座標系変換部、18bは見通しあり物標生成部、18cは見通しなし物標生成部である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8