(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】構造系異常診断装置および構造系異常診断方法
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20240110BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01M99/00 A
G01H17/00 A
(21)【出願番号】P 2020140630
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】井坂 一貴
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-159863(JP,A)
【文献】特開昭54-151489(JP,A)
【文献】特開2018-036124(JP,A)
【文献】特開2019-045472(JP,A)
【文献】特開2019-060828(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0178755(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 17/00
G01M 13/00 - 13/045
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械の構造系異常を診断する構造系異常診断装置であって、
垂直方向、水平方向、軸方向の学習用振動波形データおよび診断用振動波形データを分割する波形データ分割部と、
分割された前記学習用振動波形データと前記診断用振動波形データの回転周波数成分と前記回転周波数成分の高調波を抽出するマルチバンドパスフィルタ処理部と、
フィルタ処理した前記学習用振動波形データと前記診断用振動波形データに基づいて、複数の構造特徴パラメータ基準データと複数の診断用構造特徴パラメータを算出する構造特徴パラメータ計算部と、
前記構造特徴パラメータ基準データの平均と分散、および、前記診断用構造特徴パラメータの平均と分散に基づいて、複数の前記診断用構造特徴パラメータの異常値を算出する構造特徴パラメータ異常値算出部と、
複数の前記診断用構造特徴パラメータの異常値の中からいくつか選択して平均をとり、各異常状態の異常値を算出する構造系異常異常値算出部と、
を備えたことを特徴とする構造系異常診断装置。
【請求項2】
分割された前記学習用振動波形データと前記診断用振動波形データの正常状態の回転周波数の前後数Hzの範囲で周波数成分が最も高い周波数を補正後回転周波数として求める回転周波数補正部を備え、
前記マルチバンドパスフィルタ処理部は、前記補正後回転周波数および前記補正後回転周波数の高調波を抽出することを特徴とする請求項1記載の構造系異常診断装置。
【請求項3】
垂直方向、水平方向、軸方向の異常値が求められる前記診断用構造特徴パラメータの垂直方向、水平方向、軸方向の異常値を平均化して1つの異常値として出力する3軸方向異常値平均処理部を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の構造系異常診断装置。
【請求項4】
前記構造特徴パラメータ計算部は、前記構造特徴パラメータ基準データ、および、前記診断用構造特徴パラメータとして、回転周波数成分率、回転周波数の2次高調波率、回転周波数の3次高調波率、回転周波数の高次高調波率、高低周波数成分率、フィルタ処理後の振動波形データの歪度の差、フィルタ処理後の振動波形データの尖度の差、垂直方向と水平方向の回転周波数成分の振幅比、垂直方向と軸方向の回転周波数の振幅比、水平方向と軸方向の回転周波数成分の振幅比を計算することを特徴とする請求項1~3のうち何れかに記載の構造系異常診断装置。
【請求項5】
回転機械の構造系異常を診断する構造系異常診断方法であって、
波形データ分割部が、垂直方向、水平方向、軸方向の学習用振動波形データを分割し、
マルチバンドパスフィルタ処理部が、分割された前記学習用振動波形データの回転周波数成分と前記回転周波数成分の高調波を抽出し、
構造特徴パラメータ計算部が、フィルタ処理した前記学習用振動波形データに基づいて、複数の構造特徴パラメータ基準データを算出し、
波形データ分割部が、垂直方向、水平方向、軸方向の診断用振動波形データを分割し、
マルチバンドパスフィルタ処理部が、分割された前記診断用振動波形データの回転周波数成分と前記回転周波数成分の高調波を抽出し、
構造特徴パラメータ計算部が、フィルタ処理した前記診断用振動波形データに基づいて、複数の診断用構造特徴パラメータを算出し、
構造特徴パラメータ異常値算出部が、前記構造特徴パラメータ基準データの平均と分散と、前記診断用構造特徴パラメータの平均と分散に基づいて、複数の前記診断用構造特徴パラメータの異常値を算出し、
構造系異常異常値算出部が、複数の前記診断用構造特徴パラメータの異常値の中からいくつか選択して平均をとり、各異常状態の異常値を算出する、
ことを特徴とする構造系異常診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械の振動波形データによる構造系異常診断の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、多位置・多方向で計測された振動波形データから構造系異常を特定するための構造特徴パラメータを計算し、構造特徴パラメータを用いた逐次多変量解析(主成分分析)を行うことで構造系の異常状態を特定する診断手法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】関照議、外5名、「多位置・多方向振動信号融合と逐次多変量解析による回転機械構造系異常診断法」、日本設備管理学会誌、第29巻2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1には以下の(1)~(4)の4点の問題点がある。
【0005】
(1)構造系異常の種類を特定するが、定量的に評価されていない
非特許文献1では構造特徴パラメータを用いて主成分分析を行い、判別したい状態の分布と診断時の分布が一定距離以内かそれ以上かで状態を判別している。そのため、状態がどれくらい異常なのか定量的に評価されておらず、設備の状態が緊急性を要する状態なのか、もう少し稼働に耐えうる状態なのかが判断できない。
【0006】
(2)逐次的に状態の判別を行っているので、1種類の状態しか特定できない
非特許文献1では逐次多変量解析により異常の判別を行っている。逐次的な判別というのは、例えば、(I)~(III)の処理である。
(I)正常とそれ以外の状態で判別。
(II)正常を除き、アンバランスとそれ以外の状態で判別。
(III)正常とアンバランスを除き、ミスアライメントとそれ以外の状態で判別。
【0007】
この手法だと前段で状態が判別されてしまうと残りの状態判別が行われないので、正常にもミスアライメントにも判別できる振動波形データがあった場合、上記の例では正常状態としか判定されない。
【0008】
(3)回転周波数ズレが考慮されていない
構造特徴パラメータは回転周波数成分やその高次成分を使用するパラメータが多く、また、マルチバンドパスフィルタの処理を行う上でも回転周波数が正しく求められることが重要になる。
【0009】
構造系異常が発生すると、異常の状態によっては回転数が遅くなることがあり、回転周波数の位置がずれることがある。
図9に示されるように、正常時の回転周波数f
rが異常時に回転周波数f’
rにずれると、正常時の高調波2f
r,3f
r,4f
r,5f
rと異常時の高調波2f’
r,3f’
r,4f’
r,5f’
rのズレは何倍にもなるため、マルチバンドパスフィルタをかける際に回転周波数の高次高調波成分がフィルタ処理により残すことができない場合がある。
【0010】
(4)構造特徴パラメータの一部は計測軸毎に計算することができるが、どの軸方向(非特許文献1では回転体負荷側の垂直方向・水平方向・回転軸方向と反負荷側の垂直方向・水平方向の5方向)のパラメータを使用すべきか議論されていない。
【0011】
非特許文献1の中で構造特徴パラメータを用いて診断を行っているが、この構造特徴パラメータには、“水平方向と垂直方向の振幅比”や“左右(負荷側・反負荷側)の垂直振幅比”等といった複数の軸方向の情報を用いて求められるパラメータと、“回転周波数成分率”や“歪度の差”等といった軸毎に求められるパラメータがある。非特許文献1では後者のパラメータについて、どの軸方向のパラメータを使用すべきなのかが言及されていない。
【0012】
また、構造系の異常はどの方向に振動が大きくなるかわからないものもあるため、1方向に定めてしまうと異常状態であるにも関わらず、正常状態であると判定したり別の異常種類であると判定してしまう。
【0013】
以上示したようなことから、構造系異常診断装置において、異常の種類毎に異常の程度を定量的に算出して診断することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、回転機械の構造系異常を診断する構造系異常診断装置であって、垂直方向、水平方向、軸方向の学習用振動波形データおよび診断用振動波形データを分割する波形データ分割部と、分割された前記学習用振動波形データと前記診断用振動波形データの回転周波数成分と前記回転周波数成分の高調波を抽出するマルチバンドパスフィルタ処理部と、フィルタ処理した前記学習用振動波形データと前記診断用振動波形データに基づいて、複数の構造特徴パラメータ基準データと複数の診断用構造特徴パラメータを算出する構造特徴パラメータ計算部と、前記構造特徴パラメータ基準データの平均と分散、および、前記診断用構造特徴パラメータの平均と分散に基づいて、複数の前記診断用構造特徴パラメータの異常値を算出する構造特徴パラメータ異常値算出部と、複数の前記診断用構造特徴パラメータの異常値の中からいくつか選択して平均をとり、各異常状態の異常値を算出する構造系異常異常値算出部と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、その一態様として、分割された前記学習用振動波形データと前記診断用振動波形データの正常状態の回転周波数の前後数Hzの範囲で周波数成分が最も高い周波数を補正後回転周波数として求める回転周波数補正部を備え、前記マルチバンドパスフィルタ処理部は、前記補正後回転周波数および前記補正後回転周波数の高調波を抽出することを特徴とする。
【0016】
また、その一態様として、垂直方向、水平方向、軸方向の異常値が求められる前記診断用構造特徴パラメータの垂直方向、水平方向、軸方向の異常値を平均化して1つの異常値として出力する3軸方向異常値平均処理部を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、その一態様として、前記構造特徴パラメータ計算部は、前記構造特徴パラメータ基準データ、および、前記診断用構造特徴パラメータとして、回転周波数成分率、回転周波数の2次高調波率、回転周波数の3次高調波率、回転周波数の高次高調波率、高低周波数成分率、フィルタ処理後の振動波形データの歪度の差、フィルタ処理後の振動波形データの尖度の差、垂直方向と水平方向の回転周波数成分の振幅比、垂直方向と軸方向の回転周波数の振幅比、水平方向と軸方向の回転周波数成分の振幅比を計算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、構造系異常診断装置において、異常の種類毎に異常の程度を定量的に算出して診断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態1における構造系異常診断装置の解析処理を示す図。
【
図4】マルチバンドパスフィルタ処理部の処理内容を示す概要図。
【
図5】実施形態2における構造系異常診断装置の解析処理を示す図。
【
図7】実施形態3における構造系異常診断装置の解析処理を示す図。
【
図8】3軸で求めた構造特徴パラメータの異常値平均処理を示す概要図。
【
図9】正常時、異常時における回転周波数および高次高調波を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本願発明における構造系異常診断装置および構造系異常診断方法の実施形態1~3を
図1~
図8に基づいて詳述する。
【0021】
[実施形態1]
図1に本実施形態1における構造系異常診断装置の解析処理を示す。本実施形態1において、診断対象機器は回転機械であり、診断対象異常は構造系異常(ミスアライメント,アンバランス等)である。本実施形態1では、回転機械に振動センサを取り付け、振動センサから得られた振動波形データから回転機械の構造系異常特有の特徴的な構造特徴パラメータを算出する。
【0022】
本実施形態1では、この構造特徴パラメータを用いて構造系異常の異常程度を異常種類毎に定量化(数値化)して診断できるようにする手法を示し、非特許文献1の問題点(1)~(2)を解決する。
【0023】
本実施形態1の手法では学習機能と診断機能の二つの機能を有する。
【0024】
学習機能では
図1の学習機能のフローを行うことによって学習時(正常時)の各構造特徴パラメータ基準データ(平均と分散)が生成される。
【0025】
診断機能でも同様に診断時の各構造特徴パラメータの平均と分散を求め、学習機能と診断機能で得られた各構造特徴パラメータの平均と分散を使って異常値を求める。
【0026】
また、構造特徴パラメータを算出する際、振動波形データのスペクトルを求め特定の周波数成分がある構造特徴パラメータとなるが、入力された振動波形データが1計測分だと、スペクトルの結果を用いた構造特徴パラメータの平均と分散が算出できないため、計算可能となるように学習時・診断時共に波形データ分割部を有する。
【0027】
以下、本実施形態1における構造系異常診断装置の各機能の作用・動作について説明する。
【0028】
[学習機能]
[学習用振動波形データ1]
本実施形態1において、学習用振動波形データ1は垂直方向・水平方向・軸方向の3方向の振動波形データが必要であり、それぞれの方向に対して1計測分または複数の振動波形データが考えられる。この時、学習用振動波形データ1は構造系異常の発生していない正常な状態の振動波形データであればより診断精度が上がる。
【0029】
[波形データ分割部2]
波形データ分割部2では、学習用振動波形データ1の分割を行う。ここでの分割は、例えば
図2に示すように等分割することが考えられる。例えば、1つの学習用振動波形データ1を8分割し、データ数N個の8つの学習用振動波形データ1を得る。
【0030】
また、
図3に示すように、N個のデータ数を保持したまま重ね合わせしながら波形データを分割する(この場合“切り出す”)ことにより複数の波形データを得る方法も考えられる。例えば、1つの学習用振動波形データ1からデータ数N個の8つの学習用振動波形データ1を得る。
【0031】
[マルチバンドパスフィルタ処理部3]
マルチバンドパスフィルタ処理部3では、非特許文献1と同様に、学習用振動波形データ1に対してマルチバンドパスフィルタの処理を行う。
図4にマルチバンドパスフィルタ処理部3の処理を示す。マルチバンドパスフィルタ処理部3により構造特徴パラメータで用いる回転周波数成分とその高調波のみを抽出し、その他の周波数のスペクトル値をゼロにする。
【0032】
図4(a)に示す学習用振動波形データ1(回転周波数をf
rとする)のスペクトル波形は
図4(b)となる。
図4(b)に示すように、回転周波数f
r、2次高調波2f
r、3次高調波3f
r、4次高調波4f
r、5次高調波5f
r以外にも波形が見られる。マルチバンドパスフィルタ処理部3でフィルタ処理したスペクトル波形は
図4(c)に示すように、回転周波数f
r、2次高調波2f
r、3次高調波3f
r、4次高調波4f
r、5次高調波5f
rの数Hz前後のみ抽出し、それ以外は除去される。マルチバンドパスフィルタ処理部3でフィルタ処理した学習用振動波形データ1は
図4(d)に示したような波形となる。
【0033】
[構造特徴パラメータ計算部4]
本実施形態1では非特許文献1で用いられている構造特徴パラメータ12種類の内、8種類(以下で示されるp1~p8)をそのまま使用し、3軸方向の振動波形データの関係性を考慮したパラメータ2種類(以下で示されるp9,p10)を追加した10種類の構造特徴パラメータを定義する。
【0034】
10種類の構造特徴パラメータをp1~p10とし、学習用振動波形データ1の周波数fにおける周波数成分をFn(f)とする。また、回転周波数をfrとし、高調波成分の次数をiと定義する。
【0035】
[回転周波数成分率p1]
【0036】
【0037】
[回転周波数の2次高調波率p2]
【0038】
【0039】
[回転周波数の3次高調波率p3]
【0040】
【0041】
[回転周波数の高次高調波率(4~10次高調波)p4]
【0042】
【0043】
[高低周波成分率p5]
【0044】
【0045】
[フィルタ処理後の振動波形データの歪度p6]
【0046】
【0047】
※フィルタ処理後の学習用振動波形データ1の歪度をSnとする。
【0048】
[フィルタ処理後の振動波形データの尖度p7]
【0049】
【0050】
※フィルタ処理後の学習用振動波形データ1の尖度をKnとする。
【0051】
また、学習用振動波形データ1の周波数fにおける垂直方向の周波数成分をFnv(f)、水平方向の周波数成分をFnh(f)、軸方向の周波数成分をFna(f)とする。
【0052】
[垂直方向と水平方向の回転周波数成分の振幅比p8]
【0053】
【0054】
[垂直方向と軸方向の回転周波数成分の振幅比p9]
【0055】
【0056】
[水平方向と軸方向の回転周波数成分の振幅比p10]
【0057】
【0058】
上記の構造特徴パラメータp1~p10を分割された複数の学習用振動波形データ1毎に計算し、構造パラメータ毎に学習用振動波形データ1の数だけの学習用の構造特徴パラメータ基準データ5をそれぞれ得る。
【0059】
[診断機能]
[診断用振動波形データ6]
診断用振動波形データ6は学習用振動波形データ1と同様に垂直方向・水平方向・軸方向の3方向の振動波形データが必要であり、それぞれの方向に対して1計測分または複数の振動波形データが考えられる。
【0060】
この時、常設された振動センサから定期的に診断用振動波形データ6が得られることを想定すると、1計測の診断用振動波形データ6で診断を行い定量化された異常状態の値を時系列に並べることによって状態の傾向を監視することができる。
【0061】
[波形データ分割部7]
波形データ分割部2と同様である。
【0062】
[マルチバンドパスフィルタ処理部8]
マルチバンドパスフィルタ処理部3と同様である。
【0063】
[構造特徴パラメータ計算部9]
構造特徴パラメータ計算部4と同様である。構造特徴パラメータ毎に診断用振動波形データ6の数だけ診断用構造特徴パラメータ10をそれぞれ得る。以下、10種類の構造特徴パラメータをp1~p10とし、診断用振動波形データ6の周波数fにおける周波数成分をFd(f)とする。
【0064】
[回転周波数成分率p1]
【0065】
【0066】
[回転周波数の2次高調波率p2]
【0067】
【0068】
[回転周波数の3次高調波率p3]
【0069】
【0070】
[回転周波数の高次高調波率(4~10次高調波)p4]
【0071】
【0072】
[高低周波成分率p5]
【0073】
【0074】
[フィルタ処理後の振動波形データの歪度p6]
【0075】
【0076】
※フィルタ処理後の診断用振動波形データ6の歪度をSdとする。
【0077】
[フィルタ処理後の振動波形データの尖度p7]
【0078】
【0079】
※フィルタ処理後の診断用振動波形データ6の尖度をKdとする。
【0080】
また、診断用振動波形データ6の周波数fにおける垂直方向の周波数成分をFdv(f)、水平方向の周波数成分をFdh(f)、軸方向の周波数成分をFda(f)とする。
【0081】
[垂直方向と水平方向の回転周波数成分の振幅比p8]
【0082】
【0083】
[垂直方向と軸方向の回転周波数成分の振幅比p9]
【0084】
【0085】
[水平方向と軸方向の回転周波数成分の振幅比p10]
【0086】
【0087】
上記の構造特徴パラメータp1~p10を分割された複数の診断用振動波形データ6毎に計算し、構造パラメータ毎に診断用振動波形データ6の数だけの診断用構造特徴パラメータ10をそれぞれ得る。
【0088】
[構造特徴パラメータ異常値算出部11]
学習機能で得られた各構造特徴パラメータ基準データ5の平均と分散と、診断機能で得られた各診断用構造特徴パラメータ10の平均と分散に基づいて、各診断用構造特徴パラメータ毎の異常値を下記の計算により行う。
【0089】
ある診断用構造特徴パラメータ10の異常値をY、学習機能で得られたある構造特徴パラメータ基準データ5の平均値をμ0、分散値をσ0、診断機能で得られたある診断用構造特徴パラメータ10の平均値をμ,分散値をσとする。また、機器の設置状況や稼働状況に応じて設定される判定係数Kを定義する。
【0090】
【0091】
これにより診断用振動波形データ6の診断用構造特徴パラメータ10の異常値Yが算出される。
【0092】
[構造系異常の異常値算出部12]
複数の診断用構造特徴パラメータ10の異常値Yの中からいくつか選択し平均を取ることで各異常状態の異常値とする。この異常状態の異常値を計算するための診断用構造特徴パラメータ10の選択は診断対象である回転機械の設置状況や大きさ等で最適なパラメータが違う。表1に、ある機器のアンバランス異常時の異常値の結果の例を示す。この各異常の異常値を時系列グラフにすることにより、傾向監視が可能となる。
【0093】
【0094】
以上示したように、本実施形態1によれば、逐次処理を行わず各異常状態について異常値を求める事で、各異常状態の見逃しを無くすことができる。
【0095】
また、各異常状態について異常の度合いを定量化したので、時系列に監視する事で傾向監視ができるようになる。
【0096】
また、波形を分割したことで、1計測分の振動波形データで診断できるようになるため、少ないデータ数で状態を診る事ができる。
【0097】
また、構造系異常のほとんどは周期的に振動波形データに表れる事象なので、波形を分割しても分割した波形それぞれに現れる。よって、各構造系特徴パラメータの分散を求めた際に分散の値が小さくなり、異常値計算式において異常値が高く出やすい。つまり、構造系異常を捉えやすくなる。
【0098】
[実施形態2]
非特許文献1の問題点(3)でも述べた通り、構造特徴パラメータは回転周波数成分やその高次成分を使用するパラメータが多く、また、マルチバンドパスフィルタの処理を行う上でも回転周波数が正しく求められることが重要になる。本実施形態2では、マルチバンドパスフィルタの処理の前に回転周波数を求める機能を追加し、非特許文献1の問題点(3)を解決した。
【0099】
本実施形態2における構造系異常診断装置の解析処理を
図5に示す。学習機能、診断機能共にマルチバンドパスフィルタ処理部3,8の前に回転周波数補正部13,14を追加している。
【0100】
追加した回転周波数補正部13,14の機能のみ説明する。処理の概要図を
図6に示す。回転周波数補正部13,14では、学習用振動波形データ1,診断用振動波形データ6と機器の正常状態の回転周波数f
r(または回転数)を入力し、入力された振動波形データの補正後回転周波数f’
rを求める。
【0101】
処理は
図6の概要図に示される通り、入力された学習用振動波形データ1、診断用振動波形データ6からスペクトル波形を求め、正常状態の回転周波数f
rの前後数Hzの範囲で周波数成分が最も高い周波数を求める。この周波数を補正後回転周波数f’
rとする。マルチバンドパスフィルタ処理部3,8では、この補正後回転周波数f’
rに基づいて、補正後回転周波数f’
rおよび補正後回転周波数f’
rの高調波を抽出するようにフィルタ処理を行う。
【0102】
以上示したように、本実施形態2によれば、マルチバンドパスフィルタ処理部3,8の前に補正後回転周波数f’rを正しく求めておくことで補正後回転周波数f’rや補正後回転周波数f’rの高調波が残るようにフィルタ処理し、構造特徴パラメータをより精度よく求めることが可能となる。
【0103】
[実施形態3]
非特許文献1の問題点の(4)で述べた通り、構造特徴パラメータの異常値は3軸方向それぞれに求められ、異常の状態によってどの軸方向に異常な振動が現れるかわからず、垂直方向だけ、水平方向だけといったように1軸方向のみの構造特徴パラメータの異常値を用いるわけにいかない。本実施形態3では、各軸方向の構造特徴パラメータの異常値の情報を失わないために、各異常値の平均をとることで非特許文献1の問題点(4)を解決する。
【0104】
本実施形態3における構造系異常診断装置の解析処理を
図7に示す。診断機能の中の構造特徴パラメータ異常値算出部11の後に3軸方向異常値平均処理部15を追加している。また、3軸方向異常値平均処理部15の処理の流れを
図8に示す。
【0105】
3軸方向異常値平均処理部15では、構造特徴パラメータ計算部9で求められたある特定の診断用構造特徴パラメータ10の3軸方向の異常値を入力する。ここでいう特定の診断用構造特徴パラメータ10は実施形態1内の構造特徴パラメータのp1~p7の7種類の構造特徴パラメータを指す。すなわち、垂直方向、水平方向、軸方向の異常値が求められる診断用構造特徴パラメータである。
【0106】
図8に示すように、回転機械から振動センサによりh(水平)方向、v(垂直)方向、a(軸)方向の振動波形データが得られる。この3方向の振動波形データからそれぞれ、h(水平)方向の構造特徴パラメータp1h,p2h,…、v(垂直)方向の構造特徴パラメータp1v,p2v,…、a(軸)方向の構造特徴パラメータp1a,p2a,…が得られる。p
1~p
7までの診断用構造特徴パラメータ10は各軸方向(水平方向・垂直方向・軸方向)毎に異常値Yが求められる。3軸方向異常値平均処理部15では、この各軸方向の異常値Yを平均化して1つの異常値として出力する。
【0107】
3軸方向の診断用振動波形データ6によって求められる各診断用構造特徴パラメータ10の異常値Yの平均をとることによって各方向の振動情報を考慮した診断を行う事ができる。そのため、3軸のどの振動方向に異常が発生したとしても異常を捉えられるようになる。
【0108】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0109】
なお、実施形態1~3では、波形データ分割部2,7、マルチバンドパスフィルタ処理部3,8、構造特徴パラメータ計算部4,9、回転周波数補正部13,14をそれぞれ別の符号を付して説明したが、それぞれ別々の部として設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1…学習用振動波形データ
2,7…波形データ分割部
3,8…マルチバンドパスフィルタ処理部
4,9…構造特徴パラメータ計算部
5…構造特徴パラメータ基準データ
6…診断用振動波形データ
10…診断用構造特徴パラメータ
11…構造特徴パラメータ異常値算出部
12…構造系異常異常値算出部
13,14…回転周波数補正部
15…3軸方向異常値平均処理部