(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】自律走行車
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240110BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240110BHJP
G01C 21/28 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G06T7/00 650A
G05D1/02 K
G01C21/28
(21)【出願番号】P 2020144839
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松浦 翼
【審査官】真木 健彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/131198(WO,A1)
【文献】特開2019-185465(JP,A)
【文献】特開2014-095553(JP,A)
【文献】特開2009-129237(JP,A)
【文献】久徳 遙矢,遠赤外線カメラを用いたエピポーラ幾何に基づく照明環境の違いに頑健な自車位置推定に関する基礎検討,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.119 No.481,PRMU2019-68 (2020-03),日本,一般社団法人電子情報通信学会,2020年03月09日,P.15-20
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06V 10/30
G05D 1/02
G01C 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の下面に設置され、前記車体の下方の路面を撮影するカメラと、
前記車体の下面に設置され、前記路面における前記カメラの撮影領域に光を照射する光源と、
予め前記路面を撮影しておいた地図画像を記憶する記憶部と、
前記カメラにより撮影された前記路面の画像から抽出された特徴と、前記地図画像から抽出された特徴とを比較することにより自律走行車の自己位置を推定する自己位置推定部と、を備える自律走行車であって、
地理的同一地点において
同一の前記カメラにより取得した
時刻の異なる複数の前記路面の画像における各画像での特徴点の位置を比較してノイズを検出する判定部と、
前記地理的同一地点における
同一の前記カメラによる前記路面の画像について前記判定部において検出したノイズをマスクして前記自己位置推定部における前記路面の画像とするノイズマスク部と、を備えることを特徴とする自律走行車。
【請求項2】
前記判定部は、前記各画像での特徴点間の距離に基づいてノイズを検出することを特徴とする請求項1に記載の自律走行車。
【請求項3】
前記判定部は、前記カメラの画像を構成する平面における基準点から前記各画像での特徴点までの距離に基づいてノイズを検出することを特徴とする請求項1に記載の自律走行車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無人車両の状態(位置情報など)を推定する技術としてSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)がある。SLAMは、移動体の自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術であり、移動体が未知の環境下で環境地図を作成できる。構築した地図情報を使って障害物などを回避しつつ特定のタスクを遂行する。
【0003】
自律走行車の自己位置を推定する技術として路面画像を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、車体の下面に路面を撮影するカメラを設置し、予め撮影しておいた画像(地図画像)と、現時点での路面画像(実際の画像)のそれぞれから特徴を検出し、それらを比較して自己位置を推定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、例えば
図8に示すように、カメラにより取得した路面画像P10に存在する特徴(パターン)F11~F15を用いて自律走行車の自己位置推定を行う場合、例えば画像を取得する際の照明用の光源の照度によって、画像での特徴の位置が異なる。特に、例えば路面での暗い箇所を撮影した画像では、例えば
図9に示すように、本来そこにあるべき物を特徴点としては取得することができず、ノイズN10を特徴とする場合がある。その結果、自律走行車の自己位置推定を行う際にノイズN10による特徴点を使用してしまい、自律走行車の正しい自己位置を推定できなくなる懸念がある。
【0006】
本発明の目的は、自己位置推定精度を向上させることができる自律走行車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための自律走行車は、車体の下面に設置され、前記車体の下方の路面を撮影するカメラと、前記車体の下面に設置され、前記路面における前記カメラの撮影領域に光を照射する光源と、予め前記路面を撮影しておいた地図画像を記憶する記憶部と、前記カメラにより撮影された前記路面の画像から抽出された特徴と、前記地図画像から抽出された特徴とを比較することにより自律走行車の自己位置を推定する自己位置推定部と、を備える自律走行車であって、地理的同一地点において前記カメラにより取得した複数の前記路面の画像における各画像での特徴点の位置を比較してノイズを検出する判定部と、前記地理的同一地点における前記カメラによる前記路面の画像について前記判定部において検出したノイズをマスクして前記自己位置推定部における前記路面の画像とするノイズマスク部と、を備えることを要旨とする。
【0008】
これによれば、地理的同一地点においてカメラにより取得した複数の路面の画像における各画像での特徴点の位置を比較することでノイズを検出して路面の画像におけるノイズをマスクする。これにより、ノイズの少ない画像を得ることにより自律走行車の自己位置推定の際にノイズによる影響を受けにくくして自己位置推定精度を向上させることができる。
【0009】
また、自律走行車において、前記判定部は、前記各画像での特徴点間の距離に基づいてノイズを検出するとよい。
また、自律走行車において、前記判定部は、前記カメラの画像を構成する平面における基準点から前記各画像での特徴点までの距離に基づいてノイズを検出するとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自己位置推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図6】(a),(b),(c)は画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、自律走行車10は、四輪車両であって、車体11と、車体11の下部に配置された駆動輪102と、車体11の下部に配置された操舵輪105と、を備える。
【0013】
図1、
図2に示すように、自律走行車10は、カメラ20を備える。カメラ20は、車体11の下面中央部に設置され、車体11の下方の路面Srを撮影することができる。
図3には、カメラ20による画像P1の一例を示す。画像P1は、円形をなしている。
図3の画像P1は、自律走行車10の進行方向をX方向とし、進行方向(X方向)に直交する方向(自律走行車10の幅方向)をY方向としている。なお、
図1、
図2においては、水平方向のうちの自律走行車10の進行方向をX方向とするとともにX方向に直交する方向をY方向として表わし、さらに、上下方向をZ方向として表わしている。
【0014】
図1、
図2、
図4に示すように、自律走行車10は、照明用の光源30を備える。光源30は、車体11の下面に設置されている。光源30は、複数の発光ダイオード(以下、単にLEDという)31よりなる。光源30は、路面Srにおけるカメラ20の撮影領域に光を照射するためのものである。光源30は、車体11の下面においてカメラ20の周囲を囲むように複数のLED31が配置されている。
図2に示すように、各LED31の光軸Axは、LED31から真下(鉛直方向)に延びている。
【0015】
光源30の各LED31は、カメラ20の撮影タイミングに同期して点灯してカメラ20の撮影領域に光を照射する。
図4に示すように、自律走行車10は、制御装置40と、モータドライバ100,103と、走行モータ101と操舵モータ104を備える。制御装置40にはカメラ20が接続されている。制御装置40は、モータドライバ100を介して走行モータ101を制御して駆動輪102を駆動することができるようになっている。制御装置40は、モータドライバ103を介して操舵モータ104を制御して操舵輪105を駆動することができるようになっている。
【0016】
図4に示すように、自律走行車10は、LEDドライバ90を備える。制御装置40は、LEDドライバ90を介して光源30である各LED31を制御することができる。
図4に示すように、制御装置40は、処理部50と、記憶部60と、判定部70と、ノイズマスク部80を備える。処理部50は、自己位置推定部51を備える。自己位置推定部51は、特徴抽出部52とマッチング部53を有する。判定部70は、特徴点間距離測定部71と比較部72を有する。
【0017】
記憶部60には、自律走行車10を制御するための種々のプログラムが記憶されている。制御装置40は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路:ASICを備えていてもよい。制御装置40は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、それらの組み合わせを含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU、並びに、RAM及びROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆるものを含む。
【0018】
制御装置40は、記憶部60に記憶されたプログラムに従い、走行モータ101及び操舵モータ104を制御することで、自律走行車10を動作させる。本実施形態の自律走行車10は、搭乗者による操作が行われることなく、制御装置40による制御によって自動で走行、操舵の動作を行う車両である。
【0019】
記憶部60には、予め路面Srを撮影しておいた地図画像61が記憶されている。地図画像61は、地理的位置情報が紐付けられた状態で作成されている。
自己位置推定部51は、例えば
図3に示すようにカメラ20により撮影された路面Srの画像から抽出された特徴(点群)F1~F5と、記憶部60の地図画像61から抽出された特徴とを比較することにより自律走行車の自己位置を推定することができる。自己位置とは、車体11の一点を示す座標であり、例えば、車体11の水平方向の中央の座標である。
【0020】
詳しくは、特徴抽出部52において、
図3に示すように、現時点での路面画像(実際の画像)である画像P1から特徴点を検出するとともに、その特徴点についての特徴量、即ち、特徴点のあるピクセルに対する周りのピクセルでの輝度の大きさの程度を表す特徴量を検出する。同様に、特徴抽出部52において、予め撮影しておいた地図画像から特徴点を検出するとともに、その特徴点についての特徴量、即ち、特徴点のあるピクセルに対する周りのピクセルでの輝度の大きさの程度を表す特徴量を検出する。そして、マッチング部53において、現時点での路面画像(実際の画像)における各特徴点の特徴量と、予め撮影しておいた地図画像における各特徴点の特徴量を比較することにより自律走行車の自己位置を推定する。
【0021】
地図画像61を予め記憶部60に記憶する場合、路面の模様の座標を環境地図として記憶する。環境地図は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)によるマッピングにより作成される。SLAMは、移動体の自己位置推定と環境地図作成を同時に行うものであり、移動体が未知の環境下で環境地図を作成できる。構築した地図情報を使って特定のタスクを遂行する。自己位置推定の際、カメラで取得した路面画像と事前に取得した地図画像を比較することで自律走行車の自己位置を推定する。
【0022】
制御装置40は、地図上での自律走行車10の位置を推定する自己位置推定を行いながら走行モータ101及び操舵モータ104を制御することで、所望の位置に自律走行車10を移動させることが可能である。
【0023】
次に、作用について説明する。
図5に、制御装置40が実行する処理を示す。
制御装置40は、
図5のステップS10において、カメラ20で自律走行車10の走行路における地理的同一地点(同じ箇所)の路面Srを撮影した、時刻の異なる画像を複数枚用意する。
図5のフローチャートでは、複数枚の画像は、3枚の画像P1a,P1b,P1cとしている。
【0024】
ステップS10の処理の一例を
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)を用いて説明する。
時刻の異なる複数枚の画像P1a,P1b,P1cを、
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)に示す。
図6(a)は、時刻t1での画像P1aである。
図6(b)は、時刻t1から一定時間T1経過後の時刻t2(=t1+T1)での画像P1bである。
図6(c)は、時刻t2から一定時間T2経過後の時刻t3(=t2+T2)での画像P1cである。
【0025】
制御装置40は、
図5のステップS11において、画像P1a,P1b,P1cそれぞれの特徴点を抽出し、各特徴点の画像での位置を記録する。
ステップS11の処理の一例を
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)を用いて説明する。
【0026】
図6(a)においては、特徴点Pf1~Pf8を有し、
図6(b)においては、特徴点Pf11~Pf18を有し、
図6(c)においては、特徴点Pf21~Pf28を有する。
【0027】
制御装置40は、
図5のステップS12において、画像P1a,P1b,P1cそれぞれの各特徴点毎の距離を算出する。
ステップS12の処理の一例を
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)を用いて説明する。
【0028】
図6(a)においては、特徴点毎の距離L1~L7を測定する。即ち、図中左下の特徴点Pf1を共通の基準とし、順に近い特徴点を測定対象として、特徴点Pf1と特徴点Pf2との間の距離L1、特徴点Pf2と特徴点Pf3との間の距離L2、特徴点Pf3と特徴点Pf4との間の距離L3、特徴点Pf4と特徴点Pf5との間の距離L4、特徴点Pf5と特徴点Pf6との間の距離L5、特徴点Pf6と特徴点Pf7との間の距離L6、特徴点Pf7と特徴点Pf8との間の距離L7を測定する。
図6(b)においては、特徴点毎の距離L11~L17を測定する。即ち、図中左下の特徴点Pf11を共通の基準とし、順に近い特徴点を測定対象として、特徴点Pf11と特徴点Pf12との間の距離L11、特徴点Pf12と特徴点Pf13との間の距離L12、特徴点Pf13と特徴点Pf14との間の距離L13、特徴点Pf14と特徴点Pf15との間の距離L14、特徴点Pf15と特徴点Pf16との間の距離L15、特徴点Pf16と特徴点Pf17との間の距離L16、特徴点Pf17と特徴点Pf18との間の距離L17を測定する。
図6(c)においては、特徴点毎の距離L21~L27を測定する。即ち、図中左下の特徴点Pf21を共通の基準とし、順に近い特徴点を測定対象として、特徴点Pf21と特徴点Pf22との間の距離L21、特徴点Pf22と特徴点Pf23との間の距離L22、特徴点Pf23と特徴点Pf24との間の距離L23、特徴点Pf24と特徴点Pf25との間の距離L24、特徴点Pf25と特徴点Pf26との間の距離L25、特徴点Pf26と特徴点Pf27との間の距離L26、特徴点Pf27と特徴点Pf28との間の距離L27を測定する。
【0029】
制御装置40の判定部70は、
図5のステップS13において、特徴点間距離の差が一定以上の特徴点をノイズ特徴点とする。
ステップS13の処理の一例を
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)を用いて説明する。
【0030】
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)においては、特徴点間距離L1と特徴点間距離L11と特徴点間距離L21とは、ほぼ等しい(L1≒L11≒L21)。特徴点間距離L2と特徴点間距離L12と特徴点間距離L22とは、ほぼ等しい(L2≒L12≒L22)。特徴点間距離L3と特徴点間距離L13と特徴点間距離L23とは、ほぼ等しい(L3≒L13≒L23)。特徴点間距離L4と特徴点間距離L14と特徴点間距離L24とは、ほぼ等しい(L4≒L14≒L24)。
【0031】
一方、特徴点間距離L5と特徴点間距離L15と特徴点間距離L25とは、異なる(L5≠L15≠L25)。特徴点間距離L6と特徴点間距離L16と特徴点間距離L26とは、異なる(L6≠L16≠L26)。特徴点間距離L7と特徴点間距離L17と特徴点間距離L27とは、異なる(L7≠L17≠L27)。
【0032】
よって、
図6(a)においては、特徴点Pf1,Pf2,Pf3,Pf4,Pf5、
図6(b)においては、特徴点Pf11,Pf12,Pf13,Pf14,Pf15、
図6(c)においては、特徴点Pf21,Pf22,Pf23,Pf24,Pf25が、正規の特徴点である。即ち、画像において、路面の特徴は、どんなタイミングでも、ほとんど同じ位置に表れる。一方、
図6(a)においては、特徴点Pf6,Pf7,Pf8、
図6(b)においては、特徴点Pf16,Pf17,Pf18、
図6(c)においては、特徴点Pf26,Pf27,Pf28がノイズによる特徴点である。即ち、画像において、ノイズによる特徴は、タイミング毎に、表れる位置が異なる。
【0033】
このようにして、判定部70は、地理的同一地点においてカメラ20により取得した複数の路面Srの画像P1における各画像P1a,P1b,P1cでの特徴点の位置を比較してノイズを検出する。
【0034】
詳しくは、
図4の判定部70の特徴点間距離測定部71は、カメラ20により取得した複数の路面Srの画像P1における各画像P1a,P1b,P1cでの特徴点間の距離を測定する。比較部72は、各画像P1a,P1b,P1cにおける特徴点間の距離の差(例えば、|L1-L11|、|L11-L21|)が閾値よりも大きいと、各画像P1a,P1b,P1cでの特徴点の位置を比較した結果としてノイズを検出したとする。
【0035】
制御装置40のノイズマスク部80は、
図5のステップS14において、画像でのノイズ特徴点の多い領域(範囲)を判定し、当該領域に対し動的にマスクをかける。即ち、必要に応じて処理中にノイズをマスクする動作を行う。
【0036】
ステップS14の処理の一例を
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)を用いて説明する。
図6(a)においては、特徴点Pf6,Pf7,Pf8を含む楕円形の領域Z1が、画像P1aでのノイズ特徴点の多い領域(範囲)であると判定する。そして、画像P1aでのノイズ特徴点の多い領域Z1にマスクをかけることによりノイズを隠す。
図6(b)においては、特徴点Pf16,Pf17,Pf18を含む楕円形の領域Z2が、画像P1bでのノイズ特徴点の多い領域(範囲)であると判定する。そして、画像P1bでのノイズ特徴点の多い領域Z2にマスクをかけることによりノイズを隠す。
図6(c)においては、特徴点Pf26,Pf27,Pf28を含む楕円形の領域Z3が、画像P1cでのノイズ特徴点の多い領域(範囲)であると判定する。そして、画像P1cでのノイズ特徴点の多い領域Z3にマスクをかけることによりノイズを隠す。
【0037】
領域Z1,Z2,Z3は、照明用の光源30(LED31)の照度が低い箇所であり、ノイズ特徴点が表れやすい。
図5の処理を行うタイミングについて、基本はカメラ20や光源30(照明)の設定が変わったタイミングで1回行い、設定等が変わるまで、同じ場所(領域)にマスクをかける。ただし、
図5の処理を起動時に行ったり、定期的に行いマスクをかける場所(領域)を変更してもよい。
【0038】
そして、自己位置推定部51において、カメラ20により撮影された路面Srの画像でのノイズ特徴点の多い領域にマスクをかけることによりノイズを隠した画像から抽出された特徴と、記憶部60の地図画像61から抽出された特徴とを比較することにより自律走行車の自己位置の推定が行われる。
【0039】
このようにして、ノイズマスク部80は、地理的同一地点におけるカメラ20による路面Srの画像について、検出したノイズをマスクして自己位置推定部51における路面Srの画像とする。つまり、定点で撮影した画像を比較することで、ノイズを特徴としている領域(範囲)を特定し、ノイズをマスクする。即ち、ノイズを隠す処理を行う。これにより、定点箇所、即ち、地理的同一地点において得られた複数の画像を用いてノイズの多い領域(範囲)Z1,Z2,Z3を特定し、動的にマスクを生成することで、自己位置推定精度を向上させる。
【0040】
つまり、地理的同一地点でのカメラ画像を複数取得し、それらの特徴点の位置を比較することで、ノイズを判定する。これにより、ノイズの少ない画像を取得することで、ノイズによる自己位置推定精度低下を抑えることができる。
【0041】
詳しく説明する。
カメラ画像でのノイズによる特徴点は、周期的に異なる位置に存在する。つまり、路面の模様による特徴であれば、地理的同一地点で複数カメラ画像を取得したときには各カメラ画像での同じ位置に存在しており、カメラ画像での同じ位置に特徴が存在する。
【0042】
ところが、カメラ画像の明暗により存在するノイズによる特徴は地理的同一地点で複数カメラ画像を取得したときにカメラ画像での位置が異なる傾向にある。
そこで、地理的同一地点で複数カメラ画像を取得してカメラ画像での特徴点の位置を比較することで、特徴点の位置が変わる場所はノイズであると判定することができる。
【0043】
これによって、ノイズの少ない画像を得るアルゴリズムを用いて自己位置推定の際にノイズによる影響を受けにくくして自己位置推定精度の向上を図ることができる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0044】
(1)カメラ20により撮影された路面Srの画像P1から抽出された特徴と、地図画像61から抽出された特徴とを比較することにより自律走行車10の自己位置を推定する自己位置推定部51を備える自律走行車10の構成として、次のようにした。地理的同一地点においてカメラ20により取得した複数の路面Srの画像P1における各画像P1a,P1b,P1cでの特徴点Pf1~Pf8、Pf11~Pf18、Pf21~Pf28の位置を比較してノイズを検出する判定部70を備える。また、地理的同一地点におけるカメラ20による路面Srの画像について判定部70において検出したノイズをマスクして自己位置推定部51における路面Srの画像とするノイズマスク部80を備える。
【0045】
これによれば、地理的同一地点においてカメラにより取得した複数の路面の画像における各画像での特徴点の位置を比較することでノイズを検出して路面の画像におけるノイズをマスクする。これにより、ノイズの少ない画像を得ることにより自律走行車の自己位置推定の際にノイズによる影響を受けにくくして自己位置推定精度を向上させることができる。
【0046】
(2)判定部70は、各画像での特徴点間の距離に基づいてノイズを検出するので、容易にノイズを検出することができる。
(3)ノイズマスク部80は、ノイズによる特徴点が多い領域をマスクするので、容易にノイズをマスクすることができる。
【0047】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
〇
図5において複数の画像は、3枚の画像P1a,P1b,P1cであったが、画像は、2枚以上であればよい。
【0048】
○ノイズによる特徴を判別するために特徴点間の距離(例えば
図6(a)の距離L1~L7、
図6(b)の距離L11~L17、
図6(c)の距離L21~L27)を用いたが、これに代わり次のようにしてもよい。
図7に示すように、カメラの画像を構成する平面(直交するX軸及びY軸よりなるXY平面)において基準点Prを設け、基準点Prと各特徴点Pf31~Pf38までの距離L31~L38でもよい。即ち、基準点Prと特徴点Pf31との間の距離L31、基準点Prと特徴点Pf32との間の距離L32、基準点Prと特徴点Pf33との間の距離L33、基準点Prと特徴点Pf34との間の距離L34、基準点Prと特徴点Pf35との間の距離L35、基準点Prと特徴点Pf36との間の距離L36、基準点Prと特徴点Pf37との間の距離L37、基準点Prと特徴点Pf38との間の距離L38を測定する。そして、各画像における基準点Prから特徴点までの距離の差が閾値よりも小さいと正規の特徴点であり、各画像における基準点Prから特徴点までの距離の差が閾値よりも大きいとノイズによる特徴点であると判定する。
【0049】
図7においては、基準点Prと各特徴点Pf31~Pf38までの距離L31~L38について、特徴点Pf36~Pf38が、各画像における基準点Prから特徴点までの距離の差が閾値よりも大きいノイズによる特徴点であり、特徴点Pf36~Pf38を含む楕円形の領域Z10が、画像でのノイズ特徴点の多い領域(範囲)である。そして、画像でのノイズ特徴点の多い領域Z10にマスクをかけることによりノイズを隠す。
【0050】
このようにして、
図4に仮想線で示す判定部200は、カメラ20の画像を構成する平面(XY平面)における基準点Prからカメラ20により取得した複数の路面Srの画像における各画像での特徴点までの距離を測定する基準点・特徴点間距離測定部201を有する。また、
図4に仮想線で示す判定部200は、基準点Prから各画像における特徴点までの距離の差が閾値よりも大きいと、各画像での特徴点の位置を比較した結果としてノイズを検出したとする比較部202を有する。
【0051】
このように判定部200は、カメラ20の画像を構成する平面における基準点Prから各画像での特徴点までの距離に基づいてノイズを検出することにより、容易にノイズを検出することができる。このとき、ノイズマスク部80は、ノイズによる特徴点が多い領域をマスクするので、容易にノイズをマスクすることができる。
【0052】
○光源としてLEDを用いたが、これに限ることなく例えばハロゲンランプ等であってもよい。また、光源の色は何色でもよく、例えば、赤、青、白等であってもよい。
〇自律走行車の種類は問わない。例えば、空港で機体を移動させるトーイングカー等であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…自律走行車、11…車体、20…カメラ、30…光源、51…自己位置推定部、60…記憶部、61…地図画像、70…判定部、80…ノイズマスク部、200…判定部、L1~L7…距離、L11~L17…距離、L21~L27…距離、L31~L38…距離、P1…画像、P1a,P1b,P1c…画像、Pf1~Pf8…特徴点、Pf11~Pf18…特徴点、Pf21~Pf28…特徴点、Pf31~Pf38…特徴点、Pr…基準点、Sr…路面。