(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】蒸発燃料処理装置
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
F02M25/08 Z
(21)【出願番号】P 2020149722
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雄一郎
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-185528(JP,A)
【文献】特開2020-105958(JP,A)
【文献】特開2015-052284(JP,A)
【文献】特開2004-300997(JP,A)
【文献】特開2004-003440(JP,A)
【文献】特開2006-170074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発燃料を吸着するキャニスタ(23)とべーパ通路(20)を介して接続された燃料タンク(21)、前記キャニスタと大気開放口(33)とを接続する大気通路(30)に設けられた大気開閉弁(32)、及び、前記キャニスタと吸気通路(50)とを接続するパージ通路(40)に設けられたパージ弁(42)により区画されるエバポレーション配管系(200)の洩れ判定を行う蒸発燃料処理装置であって、
前記洩れ判定時に、前記エバポレーション配管系の内圧である系内圧力を、大気圧に対して正圧側に加圧、又は、負圧側に減圧するように作動するポンプ(15)と、
前記系内圧力を検出する圧力センサ(16)と、
前記圧力センサが検出した前記系内圧力に基づき、前記エバポレーション配管系の洩れ穴の有無、及び、前記ポンプの異常を判定する異常判定部(17)と、
を備え、
前記異常判定部は、
前記ポンプの作動により前記系内圧力の絶対値が目標値に到達した場合、前記ポンプが正常であることを前提として前記エバポレーション配管系の洩れ穴の有無を判定する通常洩れ判定モードに移行し、前記ポンプの停止から判定時間経過後の前記系内圧力の絶対値が通常洩れ判定閾値(A)以下のとき、前記エバポレーション配管系に洩れ穴が有ると判定し、
前記ポンプの作動により前記系内圧力の絶対値が目標値に到達しない場合、前記ポンプの異常を判定するポンプ異常判定モードに移行
し、
前記ポンプ異常判定モードにおいて、前記ポンプの停止から判定時間経過後の前記系内圧力の絶対値を、前記通常洩れ判定モードの前記通常洩れ判定閾値より小さく設定されたポンプ異常判定閾値(B)と比較し、
前記系内圧力の絶対値が前記ポンプ異常判定閾値より大きいとき、前記ポンプが異常であると判定し、
前記系内圧力の絶対値が前記ポンプ異常判定閾値以下のとき、少なくとも前記エバポレーション配管系に洩れ穴が有ると判定する蒸発燃料処理装置。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記ポンプ異常判定モードにおいて、前記ポンプの停止時における前記系内圧力の絶対値又はその相関値に応じて前記ポンプ異常判定閾値を変更する請求項
1に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項3】
前記異常判定部は、
前記ポンプの作動により前記系内圧力の絶対値が目標値に到達しない場合、暫定異常が一回発生したとカウントし、前記ポンプの停止から所定時間待機した後に前記ポンプを再作動して前記系内圧力の絶対値が目標値に到達したか否かを再判定し、
前記暫定異常の回数が指定回数以上となったとき、前記ポンプ異常判定モードに移行する請求項1
または2に記載の蒸発燃料処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料タンクの蒸発燃料を回収し吸気通路に供給する蒸発燃料処理装置において、エバポレーション配管系の洩れ判定を行う装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1に開示された蒸発燃料処理装置は、封鎖弁よりもキャニスタ側の領域に接続されキャニスタと燃料タンクとを含む系内を加圧するポンプと、系内の圧力を検出する圧力センサとを備える。診断装置は、封鎖弁を閉じた状態でポンプを作動させ、系内を加圧状態とした後、封鎖弁を開き、燃料タンク内に空気を送り込んでタンク内圧を周辺の大気圧より高い診断所定圧にする。その後、診断装置は、封鎖弁を閉じ、タンク内圧の時間変化を調べて洩れを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の診断装置では、ポンプ故障によりタンク内圧を既定の圧力まで加圧できない場合、或いは、タンクに穴が開いてポンプでタンク内圧を既定の圧力まで加圧できない場合、異常を正しく診断することができないという問題がある。
【0006】
なお、特許文献1の装置では、燃料の蒸発促進を避ける観点から系内を減圧する方法は好ましくないとして加圧ポンプが用いられているが、負圧ポンプにより系内を減圧しても同様の洩れ判定は可能である。以下、本明細書では、洩れ判定時にポンプにより加圧又は減圧される洩れ判定の対象範囲を「エバポレーション配管系」という。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、エバポレーション配管系の洩れ判定に用いられるポンプの異常を判定可能な蒸発燃料処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エバポレーション配管系の洩れ判定を行う蒸発燃料処理装置である。エバポレーション配管系は、蒸発燃料を吸着するキャニスタ(23)とべーパ通路(20)を介して接続された燃料タンク(21)、キャニスタと大気開放口(33)とを接続する大気通路(30)に設けられた大気開閉弁(32)、及び、キャニスタと吸気通路(50)とを接続するパージ通路(40)に設けられたパージ弁(42)により区画される。
【0009】
この蒸発燃料処理装置は、ポンプ(15)と、圧力センサ(16)と、異常判定部(17)とを備える。ポンプは、洩れ判定時に、エバポレーション配管系の内圧である系内圧力を、大気圧に対して正圧側に加圧、又は、負圧側に減圧するように作動する。圧力センサは系内圧力を検出する。異常判定部は、圧力センサが検出した系内圧力に基づき、エバポレーション配管系の洩れ穴の有無、及び、ポンプの異常を判定する。
【0010】
異常判定部は、ポンプの作動により系内圧力の絶対値が目標値に到達した場合、ポンプが正常であることを前提としてエバポレーション配管系の洩れ穴の有無を判定する「通常洩れ判定モード」に移行する。そして異常判定部は、ポンプの停止から判定時間経過後の系内圧力の絶対値が通常洩れ判定閾値(A)以下のとき、エバポレーション配管系に洩れ穴が有ると判定する。
【0011】
また、異常判定部は、ポンプの作動により系内圧力の絶対値が目標値に到達しない場合、ポンプの異常を判定する「ポンプ異常判定モード」に移行する。異常判定部は、ポンプ異常判定モードにおいて、ポンプの停止から判定時間経過後の系内圧力の絶対値を、通常洩れ判定モードの通常洩れ判定閾値より小さく設定されたポンプ異常判定閾値(B)と比較する。異常判定部は、系内圧力の絶対値がポンプ異常判定閾値より大きいとき、ポンプが異常であると判定し、系内圧力の絶対値がポンプ異常判定閾値以下のとき、少なくともエバポレーション配管系に洩れ穴が有ると判定する。
【0012】
本発明では、ポンプが十分に機能せず、系内圧力の絶対値が目標値に到達しない場合、ポンプ異常判定を実施することで、ポンプの故障とエバポレーション配管系の洩れとを判別することができ、洩れ誤判定を防止することができる。また、修理の際の調査工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】蒸発燃料処理装置による洩れ判定の対象となるエバポレーション配管系の全体構成図。
【
図2】第1実施形態による(a)通常洩れ判定、(b)ポンプ異常判定のタイムチャート。
【
図3】第1実施形態による洩れ及びポンプ異常判定のフローチャート。
【
図4】系内圧力に応じてポンプ異常判定閾値を可変する図。
【
図5】第2実施形態による洩れ及びポンプ異常判定のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による蒸発燃料処理装置の複数の実施形態を、図面に基づいて説明する。蒸発燃料処理装置は、車両において燃料タンクから蒸発した燃料をキャニスタで回収し、吸気通路に供給する。特に本実施形態の蒸発燃料処理装置は、エバポレーション配管系の洩れ判定、及び、その洩れ判定に用いられるポンプの異常判定を行う。
【0015】
[エバポレーション配管系の全体構成]
最初に
図1を参照し、蒸発燃料処理装置による洩れ判定の対象となるエバポレーション配管系200の全体構成について説明する。エバポレーション配管系200には、燃料タンク21、べーパ通路20、キャニスタ23、大気通路30、及び、パージ通路40等が含まれる。燃料が貯留された燃料タンク21は、べーパ通路20を介して、蒸発燃料を吸着するキャニスタ23と接続されている。
【0016】
大気通路30は、キャニスタ23と大気開放口33とを接続する通路であり、大気通路30の途中には大気開閉弁32が設けられている。パージ通路40は、キャニスタ23と吸気通路50とを接続する通路であり、パージ通路40の途中にはパージ弁42が設けられている。パージ通路40が接続される吸気通路50は、エアフィルタ56からインテークマニホールド57を経て内燃機関58に至る。
【0017】
大気開閉弁32及びパージ弁42が開いた状態で、キャニスタ23に吸着された蒸発燃料は、大気通路30を介して導入された空気と共に、パージ通路40を介して吸気通路50にパージされる。このとき、パージ弁42の開度に応じて、キャニスタ23から吸気通路50にパージされる蒸発燃料の量が調整される。
【0018】
また、
図1に示す構成例では、べーパ通路20に封鎖弁22が設けられている。封鎖弁22は、原則として給油時以外は燃料タンク21とキャニスタ23との間を遮断して燃料タンク21を密閉状態とする。ただし、封鎖弁22が設けられない構成であってもよい。その場合、
図1の封鎖弁22が常に開放された状態と等価である。
【0019】
このように、燃料タンク21、大気開閉弁32、及びパージ弁42で区画された範囲が蒸発燃料、又は蒸発燃料に混合される大気が流通するエバポレーション配管系200として区画される。燃料タンク21のタンクキャップが閉じられていることを前提とすると、大気開閉弁32及びパージ弁42を閉じ、封鎖弁22を開いた状態では、燃料タンク21の内部を含めたエバポレーション配管系200が閉じられている。また、大気開閉弁32、パージ弁42及び封鎖弁22を全て閉じた状態では、封鎖弁22よりもキャニスタ23側のエバポレーション配管系200が閉じられている。以下、エバポレーション配管系200の内圧を「系内圧力」という。
【0020】
例えば
図1にはパージ通路40の配管に洩れ穴LHが有る場合を示す。このようにエバポレーション配管系200の部品や配管に生じた洩れ穴からの蒸発燃料の洩れを判定する構成として、本実施形態の蒸発燃料処理装置10は、ポンプ15、圧力センサ16及び異常判定部17を備えている。その他、キャニスタ23、大気開閉弁32、パージ弁42等のエバポレーション配管系200の各要素が「蒸発燃料処理装置」の構成要素として含まれるか否かは、状況に応じて解釈されればよい。
【0021】
図1の構成例では、ポンプ15は、大気通路30における大気開閉弁32よりもキャニスタ23側に設けられている。ポンプ15は、洩れ判定時に系内圧力を、大気圧に対して正圧側に加圧、又は、負圧側に減圧するように作動する。大気圧を基準値、すなわち0とすると、加圧ポンプの場合、ポンプ15の作動により系内圧力は0から正方向に増加し、減圧ポンプの場合、ポンプ15の作動により系内圧力は0から負方向に減少する。後述の系内圧力の変化に関する説明では、加圧ポンプ及び減圧ポンプでの作用を包括するため、大気圧を0としたときの「系内圧力の絶対値」をパラメータとして説明する。
【0022】
圧力センサ16は系内圧力を検出する。
図1の構成例の圧力センサ16は、燃料タンク21の上部空間の気体圧力を検出するように設けられている。
図1の構成例では、封鎖弁22を開いた状態で系内圧力が検出される。
【0023】
異常判定部17は、圧力センサ16が検出した系内圧力に基づき、エバポレーション配管系200の洩れ穴の有無、及び、ポンプ15の異常を判定する。「ポンプ15の異常」とは、主に機械部品の摩耗、劣化や電気的な接触不良等により、本来の加減圧機能が発揮されない事象を想定する。
【0024】
具体的に異常判定部17はECU等により構成される。
図1に破線で示すように、封鎖弁22、大気開閉弁32、パージ弁42等の開閉制御は異常判定部17が兼ねてもよく、異常判定部17と相互に通信する他の制御回路により実行されてもよい。また、異常判定部17は上位の車両制御回路18と相互に通信し、必要に応じて異常情報等を通知する。
【0025】
[漏れ及びポンプ異常判定]
次に、異常判定部17による漏れ及びポンプ異常判定の詳細について実施形態毎に説明する。第1実施形態及び第2実施形態の装置構成自体は同じであり、異常判定のフローチャートにおけるステップの一部が異なる。
【0026】
〈第1実施形態〉
図2~
図4を参照し、第1実施形態による洩れ及びポンプ異常判定について説明する。
図2のタイムチャートには、ポンプ15の作動及び停止と、系内圧力の経時変化との関係を示す。異常判定部17は、ポンプ15の最大作動時間Tpmax以内に系内圧力の絶対値が目標値に到達したかにより、到達した場合は「通常洩れ判定モード」、到達しない場合は「ポンプ異常判定モード」の2つの判定モードを切り替える。
図2(a)には通常洩れ判定モード、
図2(b)にはポンプ異常判定モードにおける減圧ポンプでの経時変化を示す。加圧ポンプの場合、縦軸の正負を反転して同様に表される。
【0027】
図2(a)に示す通常洩れ判定モードでは、ポンプ15が正常であることを前提としてエバポレーション配管系200の洩れ穴の有無が判定される。時刻t0にポンプ15の作動が開始されると、系内圧力の絶対値|P|が次第に増加する。時刻t0から最大作動時間Tpmax以内の時刻t1に系内圧力の絶対値|P|が目標値に到達すると、異常判定部17はポンプ15を停止する。
【0028】
続いて、時刻t1から判定時間Tj経過後の時刻t3における系内圧力の絶対値|P|が通常洩れ判定閾値Aと比較される。ここで通常洩れ判定閾値Aは、目標値よりやや小さく設定されている。時刻t3における系内圧力の絶対値|P|が通常洩れ判定閾値Aより大きいとき、洩れ穴が無いと判定され、通常洩れ判定閾値A以下のとき、洩れ穴が有ると判定される。
【0029】
図2(b)に示すポンプ異常判定モードでは、ポンプ15の異常が判定される。詳しくは、ポンプ15の異常であるか、エバポレーション配管系200の洩れであるかかが判別される。時刻t0にポンプ15の作動が開始されると、系内圧力の絶対値|P|が次第に増加するが、時刻t0から最大作動時間Tpmaxが経過した時刻t2においても目標値に到達しない。異常判定部17は時刻t2にポンプ15を停止する。
【0030】
続いて、時刻t2から判定時間Tj経過後の時刻t4における系内圧力の絶対値|P|がポンプ異常判定閾値Bと比較される。ここでポンプ異常判定閾値Bは、通常洩れ判定閾値Aよりも小さく、且つ後述のように、最大作動時間Tpmax経過時における系内圧力の絶対値|P|に応じて設定されている。時刻t4における系内圧力の絶対値|P|がポンプ異常判定閾値Bより大きいとき、洩れ穴が無くポンプ異常であると判定され、ポンプ異常判定閾値B以下のとき、洩れ穴が有ると判定される。
【0031】
図3のフローチャートで記号「S」はステップを示す。ここで、封鎖弁22の開閉に関し、燃料タンク21を含めた系で洩れ穴をチェックする場合、封鎖弁22を開いた状態で洩れ判定が行われ、燃料タンク21よりもキャニスタ23側での洩れ穴をチェックする場合、封鎖弁22を閉じた状態で洩れ判定が行われる。封鎖弁22を設けない構成では、常に燃料タンク21を含めた系での洩れ判定が行われる。
図3以下のフローチャートでは、封鎖弁22の開閉ステップの図示を省略する。
【0032】
S01ではエンジンのバッテリ電圧が電圧閾値より大きいか判断され、NOの場合、S02でバッテリ充電異常と判定されて処理が終了する。S01でYESの場合、異常判定部17は、S03でポンプ15を作動開始した後、最大作動時間Tpmax以内にS04で、系内圧力の絶対値|P|が目標値以上であるか否か判断する。加圧ポンプが用いられる場合、大気圧を基準とする系内圧力Pは正圧(P>0)となり、減圧ポンプが用いられる場合、大気圧を基準とする系内圧力Pは負圧(P<0)となる。
【0033】
ポンプ15の作動により系内圧力の絶対値|P|が目標値に到達し、S04でYESと判断された場合、異常判定部17は、S10でポンプ15を停止し、「通常洩れ判定モード」に移行する。通常洩れ判定モードでは、ポンプ15が正常であることを前提としてエバポレーション配管系200の洩れ穴の有無が判定される。
【0034】
通常洩れ判定モードのS12では、ポンプ15の停止から判定時間Tj経過後の系内圧力の絶対値|P|が通常洩れ判定閾値Aより大きいか否か判断される。異常判定部17は、S12でYESの場合、S13で「洩れ穴無し」と判定し、S12でNOの場合、S14で「洩れ穴有り」と判定してルーチンが終了する。
【0035】
次に、ポンプ15を作動開始した後、最大作動時間Tpmaxが経過しても、ポンプ15の作動により系内圧力の絶対値|P|が目標値に到達せず、S04でNOと判断された場合について、
図6に示す比較例と対比しつつ説明する。比較例の洩れ判定でのS01からS14までは
図3と同じである。比較例ではS04でNOと判断された場合、S19で「洩れ穴有り」と判定する。つまり、実際にはポンプ15の異常の場合にも、洩れ穴が有ると誤判定する場合がある。
【0036】
図3に戻り第1実施形態では、S04でNOと判断された場合、異常判定部17は、S20でポンプ15を停止し、「ポンプ異常判定モード」に移行する。ポンプ異常判定モードでは、通常洩れ判定モードの通常洩れ判定閾値Aより小さく設定されたポンプ異常判定閾値Bを用いて、エバポレーション配管系の洩れの有無、及び、ポンプ15の異常が判定される。
【0037】
S21では、最大作動時間Tpmaxの経過時、すなわちポンプ15の停止時における系内圧力の絶対値|P|に応じてポンプ異常判定閾値Bが変更される。或いは、ポンプ15の停止時点での系内圧力の絶対値|P|に代えて、その相関値、例えばポンプ15の停止時の直前もしくは直後の系内圧力の絶対値|P|に応じてポンプ異常判定閾値Bが変更されてもよい。
【0038】
図4に示すように、最大作動時間Tpmaxの経過時(すなわち
図2の時刻t2)における系内圧力の絶対値|P|が大きいほどポンプ異常判定閾値Bは大きく設定される。系内圧力の絶対値|P|が目標値以上の場合、S21とは関係なく、通常洩れ判定モードで通常洩れ判定閾値Aが用いられる。系内圧力の絶対値|P|が目標値未満で且つ目標値に限りなく近いとき、ポンプ異常判定閾値Bは、通常洩れ判定閾値Aよりやや小さい最大値Bmaxに設定される。系内圧力の絶対値|P|が大気圧に近い「洩れ判定中止圧力」のとき、ポンプ異常判定閾値Bは最小値Bminに設定される。
【0039】
なお、系内圧力の絶対値|P|が「洩れ判定中止圧力」より小さいとき、重度の洩れ、又は、重度のポンプ故障が発生していると認められるため、異常判定部17は洩れ判定を中止し、例えば車両制御回路18に対し警告を通知する。
図3では図示を省略する。
【0040】
ポンプ異常判定モードのS22では、ポンプ15の停止から判定時間Tj経過後の系内圧力の絶対値|P|がポンプ異常判定閾値Bより大きいか否か判断される。異常判定部17は、S22でYESの場合、S23で「ポンプ異常(洩れ穴無し)」と判定する。つまり、系内圧力の絶対値|P|が維持されているため洩れ穴は無く、洩れ穴が無いにもかかわらず系内圧力の絶対値|P|が目標値に到達しなかったのはポンプ15の異常が要因であると判断される。また、異常判定部17は、S22でNOの場合、S24で少なくとも「洩れ穴有り」と判定する。なお、S24には「洩れ穴有り、且つ、ポンプ異常」の複合異常の場合が含まれる。こうしてルーチンが終了する。
【0041】
このように第1実施形態では、ポンプ15が十分に機能せず、系内圧力の絶対値|P|が目標値に到達しない場合、ポンプ異常判定を実施することで、ポンプ15の故障とエバポレーション配管系200の洩れとを判別することができ、洩れ誤判定を防止することができる。また、修理の際の調査工数を低減することができる。
【0042】
また、ポンプ異常判定モードのポンプ異常判定閾値Bは、通常洩れ判定モードの通常洩れ判定閾値Aより小さく設定されているため、適切な閾値でポンプ異常判定を実施することができる。さらに、ポンプ異常判定閾値Bは、ポンプ15の停止時点での系内圧力の絶対値|P|又はその相関値に応じて変更されるため、より適切な閾値でポンプ異常判定を実施することができる。
【0043】
(第2実施形態)〉
次に
図5のフローチャートを参照し、第2実施形態による洩れ及びポンプ異常判定について説明する。
図5は、
図3に対しS05~S07が追加されている。それ以外の共通するステップについては
図3と同一のステップ番号を付し、重複する説明を省略する。
【0044】
第1実施形態による
図3のS04では、系内圧力の絶対値|P|が目標値に到達せず、NOと判断された場合、すぐにS20に移行する。しかし、温度上昇によるベーパの発生等のイレギュラーな事象により、ポンプ15が正常であっても系内圧力の絶対値|P|が目標値に到達しない場合が起こり得る。そこで第2実施形態では、S04の判定を、条件が安定するまで時間をおいて複数回行うことで、誤判定を防止することを目的とする。
【0045】
第2実施形態では、
図5のS04でNOと判断されると、S05で「暫定異常が一回発生した」とカウントされる。具体的には、暫定異常回数のカウンタがインクリメントされる。S06では、暫定異常回数が指定回数未満であるか否か判定される。S06でYESの場合、異常判定部17はS07でポンプ15の停止から所定時間待機した後、S01の前に戻る。そして異常判定部17は、S03でポンプ15を再作動し、S04で系内圧力の絶対値|P|が目標値に到達したか否かを再判定する。
【0046】
再度S04でNO、S06でYESと判断されると、このループが繰り返される。ループの途中にS04でYESと判断された場合、S10の通常洩れ判定モードに移行する。一方、暫定異常回数が指定回数に達すると、S06でNOと判断され、S20のポンプ異常判定モードに移行する。これにより第2実施形態では、ポンプ異常に係る誤判定を適切に防止することができる。
【0047】
(その他の実施形態)
本発明の蒸発燃料処理装置10の構成は、
図2に例示したものに限らない。例えば上述のように封鎖弁22は無くてもよい。また、ポンプ15や圧力センサ16は、エバポレーション配管系200内における他の位置に設けられてもよい。
【0048】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0049】
10・・・蒸発燃料処理装置、
15・・・ポンプ、 16・・・圧力センサ、 17・・・異常判定部、
200・・・エバポレーション配管系、
20・・・ベーパ通路、 21・・・燃料タンク、 23・・・キャニスタ、
30・・・大気通路、 32・・・大気開閉弁、 33・・・大気開放口、
40・・・パージ通路、 42・・・パージ弁、 50・・・吸気通路。