(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】織機における締結部材及び織機における支持体の固定装置
(51)【国際特許分類】
D03D 49/60 20060101AFI20240110BHJP
D03D 47/30 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
D03D49/60
D03D47/30
(21)【出願番号】P 2020154259
(22)【出願日】2020-09-15
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】八木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】濱口 真崇
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-201864(JP,A)
【文献】特開昭52-006185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 49/60
D03D 47/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スレイ
の前部に形成された
傾斜面に凹設された支持溝の前面開口に挿入可能な頭部と、
前記頭部と連結され
、径方向外側へ突出する一対の突起を有する軸部と、
前記軸部に形成される雄ねじ部と、を備え、
前記支持溝に前記頭部が挿入されると前記軸部は前記前面開口から突出し、
前記頭部が前記軸部の軸心を中心にして前記支持溝内で回転するように、前記軸部を回転させることにより、前記頭部が前記支持溝内に係止される織機における締結部材
と、
前記雄ねじ部に螺着するナットと、
前記軸部を挿入し、前記突起が孔壁に当接することで前記締結部材の回転が規制される貫通孔が形成された支持体とを備えた織機における支持体の固定装置であって、
前記頭部は、一対の長辺と、一対の短辺とを有する略四角形状であり、
前記短辺は、直線部を有し、前記短辺の一端と前記軸心との距離は前記短辺の他端と前記軸心との距離よりも大きく、
前記頭部が前記支持溝に挿入され、一方の前記短辺が前記支持溝の上壁面に対向し、他方の前記短辺が前記支持溝の下壁面に対向する状態において、
前記直線部は、前記軸心を通り前記直線部に対して直角な直交線と交差することを特徴とする織機における
支持体の固定装置。
【請求項2】
前記短辺は、前記他端側に切欠き部を備え、
前記切欠き部は、前記直線部と前記長辺との間を結ぶ切欠き線部によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の織機における締結部材。
【請求項3】
前記切欠き線部は、曲線により形成されていることを特徴とする請求
項2に記載の織機における締結部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、織機における締結部材及び織機における支持体の固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
織機における締結部材及び織機における支持体の固定装置に関する従来技術としては、例えば、特許文献1に開示されている締結部材を挙げることができる。特許文献1に開示されている締結部材は、軸部と、軸部の一端側に形成されたT形頭部と、を備えている。T形頭部は、平行四辺形に形成されている。T形頭部は短辺、及び長辺を有する。短辺はスレイにおけるT溝(支持溝)の前面開口に挿入可能な長さに形成されている。長辺は、T溝の前面開口から挿入されて一定角度回転されると、回転が規制されるとともに前面開口から脱出不能な長さに形成されている。支持体をスレイに固定する場合、作業者は、締結部材を支持体に仮止めしてから支持溝の前面開口から頭部をT溝内に挿入し、支持体を回転する。回転される支持体がスレイの位置決め溝に嵌合することにより、T形頭部の上下の短辺がT溝の上壁及び下壁と接触し、T形頭部の回転が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作業の都合によっては、作業者が締結部材のみを支持溝に挿入し、支持溝に挿入した状態の締結部材を支持体に固定することがある。しかしながら、特許文献1の締結部材は、作業者が手を離すと回転してしまい、T形頭部の上下の短辺が支持溝の上壁及び下壁と接触する状態(回転の規制状態)を維持することができない。締結部材が回転してしまうと、T形頭部が支持溝から抜け落ちてしまうおそれがある。そのため、作業者は締結部材を手で支えた状態を維持しつつ支持体に固定しなければならず作業性が悪い。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、スレイの支持溝内へ挿入された締結部材への支持体固定作業の作業性に優れた織機における締結部材及び織機における支持体の固定装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、スレイの前部に形成された傾斜面に凹設された支持溝の前面開口に挿入可能な頭部と、前記頭部と連結され、径方向外側へ突出する一対の突起を有する軸部と、前記軸部に形成される雄ねじ部と、を備え、前記支持溝に前記頭部が挿入されると前記軸部は前記前面開口から突出し、前記頭部が前記軸部の軸心を中心にして前記支持溝内で回転するように、前記軸部を回転させることにより、前記頭部が前記支持溝内に係止される織機における締結部材と、前記雄ねじ部に螺着するナットと、前記軸部を挿入し、前記突起が孔壁に当接することで前記締結部材の回転が規制される貫通孔が形成された支持体とを備えた織機における支持体の固定装置であって、前記頭部は、一対の長辺と、一対の短辺とを有する略四角形状であり、前記短辺は、直線部を有し、前記短辺の一端と前記軸心との距離は前記短辺の他端と前記軸心との距離よりも大きく、前記頭部が前記支持溝に挿入され、一方の前記短辺が前記支持溝の上壁面に対向し、他方の前記短辺が前記支持溝の下壁面に対向する状態において、前記直線部は、前記軸心を通り前記直線部に対して直角な直交線と交差することを特徴とする。
【0007】
本発明では、締結部材は頭部の短辺における直線部が支持溝内に当接し、軸部が前面開口においてスレイに当接する。また、直線部は、軸心を通り直線部に対して直角な直交線と交差する。そのため、締結部材が回転して直線部が支持溝内に当接して支持溝内から受ける反力と、軸部がスレイから受ける反力とが軸心方向から見て直線上にて対向する。その結果、頭部の回転を規制することができる。
【0008】
また、前記短辺は、前記他端側に切欠き部を備え、前記切欠き部は、前記直線部と前記長辺との間を結ぶ切欠き線部によって形成される構成としてもよい。
この場合、切欠き部は、支持溝内における頭部の一方向への回転を実現することができる。このため、頭部が回転して、直線部が支持溝内に当接可能になる。その結果、頭部の回転を規制することができる。
【0009】
また、上記の織機における締結部材において、前記切欠き線部は、曲線により形成されている構成としてもよい。
この場合、切欠き線部を曲線にすることによって、頭部が支持溝内において滑らかに回転することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スレイの支持溝内へ挿入された締結部材への支持体固定作業の作業性に優れた織機における締結部材及び織機における支持体の固定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るエアジェット織機の要部を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る締結部材および支持体の固定装置を示す断面側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る締結部材およびスレイを示す断面側面図である。
【
図4】(a)は本発明の実施形態に係る締結部材および支持体の固定装置を示す正面図であり、(b)は
図2におけるA-A線矢視図である。
【
図5】(a)は本発明の実施形態に係る締結部材を示す軸部側から見た斜視図であり、(b)は本発明の実施形態に係る締結部材を示す頭部側から見た斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る締結部材を示す軸部側から見た正面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る締結部材を示す頭部側から見た正面図である。
【
図8】(a)は本発明の実施形態に係る締結部材の作用説明図であり、(b)は比較例に係る締結部材の作用説明図である。
【
図9】本発明のその他の実施形態に係る締結部材を軸部側から見た作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る織機における締結部材及び織機における支持体の固定装置について図面を参照して説明する。本実施形態の織機はエアジェット織機である。なお、本実施形態においては、説明の便宜上、
図2の右側を前とし、
図2の左側を後とし、
図2の上側及び下側をそれぞれ上、下として説明する。
【0014】
図1に示すように、エアジェット織機は、機台(図示せず)の幅方向に延在し、前後に揺動するスレイ11と、スレイ11の長手方向に配列される多数の筬12と、スレイ11に支持される支持体13と、支持体13に支持されるサブノズル14と、を備えている。
図2に示すように、スレイ11は、楔部材16を介して筬12を固定するための凹溝15と、スレイ11の前部に形成された傾斜面17と、傾斜面17に凹設された支持溝18と、を有している。楔部材16によりスレイ11に固定される筬12には、飛走する緯糸(図示せず)を案内する緯糸案内通路19が形成されている。傾斜面17は、スレイ11の前部において斜め上方に向けて形成されており、スレイ11の長手方向にわたって形成されている。
【0015】
図3に示すように、支持溝18は、上壁面21、第1下壁面22A、第2下壁面22B、上前壁面23、下前壁面24及び後壁面25により区画形成される溝空間20と、傾斜面17から溝空間20と連通する前面開口26と、を有している。上壁面21は、溝空間20の上部に位置し、前方から後方下方へ向かう傾斜面であって、傾斜面17に対して垂直な傾斜面である。上壁面21の下端から後壁面25が下方へ向けて延在する。上壁面21の上端から上前壁面23が前方下方へ向けて延在する。後壁面25の下端から第2下壁面22Bが前方へ向けて延在する。第1下壁面22Aは、第2下壁面22Bの前端から前方上方へ向けて延在する。下前壁面24は、第1下壁面22Aの前端から後方上方へ向けて延在する。
【0016】
前面開口26は、傾斜面17に対して垂直であって、互いに対向する上開口面27と下開口面28と、によって区画形成される。上開口面27は、上前壁面23と直交して接続されている。下開口面28は下前壁面24と直交して接続されている。上壁面21と第1下壁面22Aとの間の距離は溝幅Hである。上開口面27と下開口面28との間の距離は開口幅hである。上前壁面23は、下前壁面24と同一の平面に存在する。したがって、支持溝18は、断面が略T字状の溝である。また、支持溝18はスレイ11の長手方向にわたって形成されている。傾斜面17には、支持体13の位置決め溝29がスレイ11の長手方向にわたって凹設されている。下開口面28は、位置決め溝29との境界に位置する前側下縁28Aを有する。上開口面27は、位置決め溝29との境界に位置し、前側下縁28Aに対となる前側上縁28Bを有する。
図2、
図3に示すように、スレイ11は、支持溝18の下方に空洞30が形成されている。空洞30はスレイ11の長手方向にわたって形成されている。
【0017】
次に、スレイ11に支持される支持体13について説明する。
図2、
図4(a)に示すように、支持体13は直方体であり、第1面31と、第1面31と平行な第2面32と、第2面32に対して垂直な第3面33と、第3面33と平行な第4面34と、第1面31および第3面33に対して垂直な第5面35と、第5面35と平行な第6面36と、を有する。支持体13は、第1面31と第2面32とを貫通するサブノズル用挿通孔37と、第3面33と第4面34とを貫通する貫通孔としての締結部材用挿通孔38を有している。締結部材用挿通孔38は長孔状の孔である。また、支持体13は、第3面33からサブノズル用挿通孔37へ貫通するボルト孔39を有している。
【0018】
支持体13のサブノズル用挿通孔37には、サブノズル14が挿通され、ボルト孔39に固定用ボルト40が螺入されることにより、サブノズル14は支持体13に固定される。支持体13の締結部材用挿通孔38には、後述する締結部材46が挿通される。
【0019】
ところで、本実施形態では、エアジェット織機は、支持体13の固定装置45(以下、単に「固定装置45」と表記する)を備えている。固定装置45は、サブノズル14を支持する支持体13をスレイ11に固定する装置である。固定装置45は、締結部材46と、締結部材46に螺着されるナット47と、を備える。
【0020】
図3、
図5(a)、
図5(b)に示すように、締結部材46は、軸心Pを中心とした円柱状の軸部48と、軸部48の基端部に連結された略直方体の頭部49と、を備えている。軸部48は、基端部と反対側の先端部の外周面に雄ねじ部50が形成されている。軸部48の先端部の端面には、径方向に横断する凹条51が設けられている。凹条51は頭部49の長手方向(長辺)と平行である。軸部48において雄ねじ部50が設けられていない外周面には軸部48の径方向外側へ突出する一対の突起52が設けられている。一対の突起52は、軸部48の外周面において互いに180°となるように位置する。軸部48における一対の突起52の軸方向の位置は、支持体13の締結部材用挿通孔38に対応している。
【0021】
図5(a)、
図5(b)に示すように、頭部49は、軸部48の基端部が連結する略四角形の連結側端面53と、連結側端面53の反対側に位置する略四角形の非連結側端面54と、連結側端面53の外周縁と非連結側端面54の外周縁との間に形成される面に存在する側面55と、を有している。
図6、
図7に示すように、頭部49の連結側端面53および非連結側端面54は、軸心P方向から見たとき同一形状である。
【0022】
連結側端面53は、略長方形である。
図6に示すように、連結側端面53の外周縁は、連結側第1長辺61、連結側第2長辺62、連結側第1短辺63及び連結側第2短辺64を有する。連結側第1長辺61と連結側第2長辺62とは、互いに平行になるように対向している。連結側第1短辺63と連結側第2短辺64とは、互いに平行になるように対向している。連結側第1長辺61と連結側第1短辺63による角部は面取りされている。連結側第2長辺62と連結側第2短辺64による角部は面取りされている。
【0023】
連結側第1短辺63と連結側第2長辺62との角部は、面取りされた連結側第1切欠き部65が形成されている。したがって、連結側第1短辺63は、連結側第1長辺61側から延びる直線の連結側第1直線部66と、連結側第1切欠き部65を形成する連結側第1切欠き線部67と、を有する。連結側第1切欠き線部67は、軸心Pを中心とした一定の曲率からなる円弧を含む曲線によって形成されている。連結側第1切欠き線部67の一方の端部は、連結側第1直線部66の端部と接続され、他方の端部が連結側第2長辺62の端部と接続されている。
【0024】
連結側第2短辺64と連結側第1長辺61との角部は、面取りされた連結側第2切欠き部68が形成されている。したがって、連結側第2短辺64は、連結側第2長辺62側から延びる直線の連結側第2直線部69と、連結側第2切欠き部68を形成する連結側第2切欠き線部70と、を有する。連結側第2切欠き線部70は、軸心Pを中心とした一定の曲率からなる円弧を含む曲線によって形成されている。連結側第2切欠き線部70の一方の端部は、連結側第2直線部69の端部と接続され、他方の端部が連結側第1長辺61の端部と接続されている。したがって、連結側第2短辺64は、軸心Pを中心として連結側第1短辺63と点対称の関係にある。
【0025】
次に、非連結側端面54を説明すると、非連結側端面54は略長方形である。
図7に示すように、非連結側端面54の外周縁は、非連結側第1長辺71、非連結側第2長辺72、非連結側第1短辺73及び非連結側第2短辺74を有する。非連結側第1長辺71と非連結側第2長辺72とは、互いに平行になるように対向している。非連結側第1短辺73と非連結側第2短辺74とは、互いに平行になるように対向している。非連結側第1長辺71と非連結側第1短辺73による角部は面取りされている。非連結側第2長辺72と非連結側第2短辺74による角部は面取りされている。
【0026】
非連結側第1短辺73と非連結側第2長辺72との角部は、面取りされた非連結側第1切欠き部75が形成されている。したがって、非連結側第1短辺73は、非連結側第1長辺71側から延びる直線の非連結側第1直線部76と、非連結側第1切欠き部75を形成する非連結側第1切欠き線部77と、を有する。非連結側第1切欠き線部77は、軸心Pを中心とした一定の曲率からなる円弧を含む曲線によって形成されている。非連結側第1切欠き線部77の一方の端部は、非連結側第1直線部76の端部と接続され、他方の端部が非連結側第2長辺72の端部と接続されている。したがって、非連結側第2短辺74は、軸心Pを中心として非連結側第1短辺73と点対称の関係にある。
【0027】
非連結側第2短辺74と非連結側第1長辺71との角部は、面取りされた非連結側第2切欠き部78が形成されている。したがって、非連結側第2短辺74は、非連結側第2長辺72側から延びる直線の非連結側第2直線部79と、非連結側第2切欠き部78を形成する非連結側第2切欠き線部80と、を有する。非連結側第2切欠き線部80は、軸心Pを中心とした一定の曲率からなる円弧を含む曲線によって形成されている。非連結側第2切欠き線部80の一方の端部は、非連結側第2直線部79の端部と接続され、他方の端部が非連結側第1長辺71の端部と接続されている。したがって、非連結側第2短辺74は、軸心Pを中心として非連結側第1短辺73と点対称の関係にある。
【0028】
図5(a)、
図5(b)に示すように、側面55は、一対の長辺側平面56、一対の短辺側平面57、一対の曲面58を有する。一方の長辺側平面56は、連結側第1長辺61と非連結側第1長辺71との間に形成される平面である。他方の長辺側平面56は、連結側第2長辺62と非連結側第2長辺72との間に形成される。一方の短辺側平面57は、連結側第1直線部66と非連結側第1直線部76との間に形成される。他方の短辺側平面57は、連結側第2直線部69と非連結側第2直線部79との間に形成される。一方の曲面58は、連結側第1切欠き線部67と非連結側第1切欠き線部77との間に形成される曲面である。他方の曲面58は、連結側第2切欠き線部70と非連結側第2切欠き線部80との間に形成される曲面である。一方の短辺側平面57と一方の曲面58とは連続するなだらかな面を形成する。他方の短辺側平面57と曲面58とは連続するなだらかな面を形成する。
【0029】
頭部49の大きさは、支持溝18の前面開口26から支持溝18へ挿入可能かつ支持溝18の内部において所定の位置まで回転可能な大きさである。具体的には、
図6、
図7に示すように、連結側第1長辺61、連結側第2長辺62、非連結側第1長辺71および非連結側第2長辺72は、溝幅Hの長さよりも短く開口幅hよりも長い。連結側第1短辺63、連結側第2短辺64、非連結側第1短辺73および非連結側第2短辺74は、開口幅hの長さよりも短い。連結側第1長辺61と連結側第1短辺63との間に形成される角部と、連結側第2長辺62と連結側第2短辺64との間に形成される角部とを結ぶ直線の長さを連結側最大長さL1とする。非連結側第1長辺71と非連結側第1短辺73との間に形成される角部と、非連結側第2長辺72と非連結側第2短辺74との間に形成される角部とを結ぶ直線の長さを非連結側最大長さL2とする。連結側最大長さL1は、連結側端面53において最大の長さを取りうる直線の長さである。非連結側最大長さL2は、非連結側端面54において最大の長さを取りうる直線の長さである。連結側最大長さL1および非連結側最大長さL2は、互いに同じ長さであり、溝幅Hの長さよりも長い。
図8(a)に示すように、連結側第1長辺61と連結側第1短辺63との間に形成される角部において、連結側第1短辺63の一端と軸心Pとを結ぶ最短距離を連結側第1距離M1とする。連結側第2長辺62と連結側第1短辺63との間に形成される角部において、連結側第1短辺63の他端と軸心Pとを結ぶ最短距離を連結側第2距離M2とする。連結側第1短辺63の他端側には、連結側第1切欠き部65が形成される。連結側第1距離M1は、連結側第2距離M2よりも大きい。軸部48は、雄ねじ部50とは反対側の端部において、軸心Pが頭部49の回転軸となるように連結側端面53に連結される。連結側第1直線部66は、直交線Qと交差する。直交線Qは、軸心Pを通り連結側第1直線部66に対して直角な直線である。一方の短辺側平面57と他方の短辺側平面57との間の溝幅H方向の長さは、溝幅Hよりも短く開口幅hよりも長い。軸部48は、軸心P方向にわたって同径の円柱を形成し、直径が開口幅hよりも短い。頭部49の重心(頭部重心g)は、頭部49の内部の軸心P上に位置する。締結部材46の重心(締結部材重心G)は、少なくとも軸部48の軸心P上に位置する。
【0030】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図3、
図4(a)、(b)、
図8(a)に示すように、上記構成の締結部材46をスレイ11に取り付けるに際しては、まず初めに作業者が頭部49を前面開口26から溝空間20へ挿入する。頭部49が前面開口26に挿入されるとき、一方の長辺側平面56は下開口面28に対向し、他方の長辺側平面56は上開口面27に対向する。頭部49が前面開口26を通過し溝空間20へ挿入されたとき、一方の長辺側平面56は第1下壁面22Aに対向し、他方の長辺側平面56は上壁面21に対向し、連結側端面53は、前面開口26に対向し溝空間20に位置している(
図4(a)における二点鎖線により示す締結部材46を参照)。軸部48は、前面開口26から支持溝18の外側へ向かって突出している。軸部48の先端部の端面に設けられた凹条51の長手方向は、スレイ11の長手方向と平行である。
【0031】
次に、作業者は、軸部48を下開口面28の前側下縁28Aに接触させつつ、締結部材46を軸心Pが中心になるように一方向(
図6では時計回り)に回転させる。これにより、一方の短辺側平面57が上壁面21に対向し、他方の短辺側平面57が第1下壁面22Aに対向する。さらに作業者が締結部材46を回転させると、
図4(b)に示すように、一方の短辺側平面57の一部(連結側第1短辺63の一端側にて軸心P方向にわたって存在する短辺側平面57)が上壁面21に当接し、他方の短辺側平面57の一部が第1下壁面22Aに当接する。このとき、軸部48は、前面開口26において下開口面28と上開口面27とから離れた状態である。締結部材重心Gは、軸部48の軸心P上にあって、支持溝18の前面開口26よりも外側に位置している。
【0032】
次に、作業者が締結部材46を手放すと、軸部48には重力による下側方向の力が働くことにより、頭部49は軸部接点48Aを支点にして上側に傾く。これにより、作業者が締結部材46を手放すと、締結部材46は、連結側第1直線部66が上前壁面23に当接する(
図3を参照)。このため、締結部材46の頭部49は上前壁面23から下側方向の反力である分布反力T1を受ける。分布反力T1は、
図8(a)に示すように、頭部49が連結側第1直線部66の全長にわたって上前壁面23から受ける分布荷重である。締結部材46は、軸部48が前側下縁28Aに軸部接点48Aにて当接するため、前側下縁28Aから上側方向の軸部反力F1を受ける。分布反力T1は、反力の1成分としての頭部反力t1を有する。直線Q’は、鉛直方向において軸心Pを通る直線である。頭部反力t1は、軸心P方向から見ると直線Q’に重なる。軸部反力F1は、軸心P方向から見て直線Q’に重なる。上前壁面23に当接する連結側第1直線部66における点である頭部接点66Aを頭部反力t1の始点とすると、頭部接点66Aは、軸心P方向から見て連結側第1直線部66が直線Q’と交差するように示される交差点である。頭部反力t1と軸部反力F1とは、軸心P方向から見て直線Q’と重なって示され、対向している。そのため、締結部材46は、少なくとも軸心P方向から見て直線Q’上において頭部反力t1と軸部反力F1とが対向することによって、上前壁面23と前側下縁28Aとに挟まれて固定される。その結果、締結部材46は、支持溝18内にて頭部49の回転が規制される。
図8(a)に示すように、頭部49は、直交線Qが軸心P方向から見て直線Q’に重なるような位置に図示している。しかし、
図8は、締結部材46にかかる力の関係を模式的に示しているため、頭部49の位置は実際の位置とは異なる場合がある。実際には、頭部49は、直交線Qが軸心Pを中心にして直線Q’よりも一方向(
図8(a)では時計回り)へ回転した位置にある場合がある。
【0033】
比較例について説明する。
図8(b)に示す比較例の締結部材100は、軸心Pを中心とした円柱状の軸部101と、軸部101の基端部に連結された略直方体の頭部102と、を備えている。頭部102の連結側端面は、略平行四辺形である。連結側端面の外周縁は、連結側第1長辺103、連結側第2長辺104、連結側第1短辺105及び連結側第2短辺106を有する。連結側第1長辺103および連結側第2長辺104は、直線部によって構成されている。上記構成の締結部材100をスレイ11に取り付けるに際しては、作業者は、頭部102を前面開口26に挿入した後、軸部101を下開口面28の前側下縁28Aと接触させつつ、軸心Pを中心に締結部材100を一方向(
図8(b)では時計回り)へ回転させる。作業者が所定の位置まで締結部材100を回転させ、手放したとき、締結部材100は、連結側第1短辺105の直線部が上前壁面23に当接し、軸部101が前側下縁28Aと当接する。このため、締結部材100の頭部102は、上前壁面23から下側方向の反力である分布反力T2を受ける。分布反力T2は、頭部102が直線部の全長にわたって上前壁面23から受ける分布荷重である。締結部材100は、軸部101が前側下縁28Aに軸部接点101Aにて当接するため、前側下縁28Aから上側方向の軸部反力F2を受ける。分布反力T2は、反力の1成分としての頭部反力t2を有する。連結側第1短辺105は、支持溝18の前面開口26から見たときに直線Q’を境にして他方向(
図8(b)では反時計回り)側に位置する。そのため、軸部接点101Aは軸部101の軸心P方向から見て直線Q’上に重なって位置するが、頭部接点105Aは軸部101の軸心P方向から見て直線Q’上に重なって位置しない。したがって、軸部接点101Aから軸部101にかかる上側方向の軸部反力F2と、頭部接点105Aから頭部102にかかる下側方向の頭部反力t2とが軸部101の軸心P方向から見て直線Q’上に重なって位置しない。そのため、締結部材100は、軸部接点101Aを中心に他方向(
図8(b)では反時計回り)へ回転する力が働く。その結果、締結部材100は、支持溝18内にて頭部102の回転が規制されない。
【0034】
次に、スレイ11の支持溝18内にて頭部49の回転が規制されている締結部材46に支持体13を取り付ける例を説明する。まず初めに、作業者は、支持体13の第4面34が支持溝18の前面開口26に対向する位置に支持体13を移動させる。そして作業者は、支持体13の締結部材用挿通孔38に支持溝18内にて係止されている締結部材46を挿通させ、支持体13をスレイ11の位置決め溝29に嵌合させる。この状態のとき、軸部48の外周面に設けられた突起52が締結部材用挿通孔38において孔壁と当接することによって、締結部材46が他方向(
図4(b)では反時計回り)に回転することが規制される。
【0035】
次に、作業者は、支持体13の締結部材用挿通孔38から突出した雄ねじ部50にナット47を螺合する。頭部49はナット47の回転に伴って一方向(
図6では時計回り)に回転し、連結側第1短辺63側の短辺側平面57が上壁面21に当接し、連結側第2短辺64側の短辺側平面57が第1下壁面22Aに当接する。このとき、連結側最大長さL1を取りうる角部がそれぞれ上壁面21と第1下壁面22Aに当接し、非連結側最大長さL2を取りうる角部がそれぞれ上壁面21と第1下壁面22Aに当接する。その結果、締結部材46は支持溝18内にて頭部49の回転が規制されるため、支持体13は締結部材46とナット47とによってスレイ11に固定される。サブノズル14は、サブノズル用挿通孔37に挿通され、ボルト孔39に固定用ボルト40が螺入されることにより、支持体13に固定される。
【0036】
本実施形態によれば以下の作用効果を奏する。
(1)頭部49における連結側第1直線部66が支持溝18内の内壁面の上部である上前壁面23に当接するとき、軸部48は、スレイ11の下開口面28における前側下縁28Aに当接する。このとき、連結側第1直線部66における頭部接点66Aと、軸部48における軸部接点48Aとは、軸部48の軸心P方向から見たときに直線Q’に重なって位置する。これにより、軸部接点48Aから軸部48にかかる上側方向の軸部反力F1と、連結側第1直線部66における頭部接点66Aから頭部49にかかる下側方向の頭部反力t1とは軸心P方向から見て直線Q’に重なって示され、互いに逆向きになる。そのため、締結部材46は、軸部反力F1と頭部反力t1とが対向することによって、上前壁面23と前側下縁28Aとに挟まれて固定される。したがって、頭部102が平行四辺形の場合に締結部材100にかかる軸部反力F2と頭部反力t2に比べて、頭部49が支持溝18内にて回転することを規制できる。
【0037】
(2)頭部49は、連結側第1短辺63の他端側に連結側第1切欠き部65を備え、連結側第1切欠き部65は、連結側第1切欠き線部67により形成される。連結側第1長辺61と連結側第1短辺63との角部が上壁面21に接近する回転を一方向への回転とし、連結側第1切欠き部65が上壁面21に接近する回転を他方向への回転とする。この場合、連結側第1切欠き部65には、頭部49の回転時に上壁面21に当接して回転が規制される角部が存在しないため、支持溝18内において一方向への回転を実現することができる。これにより、頭部49が回転して、一方の短辺側平面57の一部が上壁面21に当接可能になる。
【0038】
(3)頭部49の連結側第1切欠き線部67は、曲線により形成されている。これにより、頭部49を滑らかに一方向へ回転させることができる。
【0039】
(4)支持体13は、支持溝18内にて他方向への回転を規制された締結部材46に挿入されてスレイ11に固定される。このため、締結部材46を支持体13に挿入してスレイ11に固定される場合と比べて、支持体13のスレイ11上における位置決めが容易になる。
【0040】
(5)軸部48の先端部の端面には、頭部49の長手方向と平行に凹条51が設けられている。このため、頭部49が支持溝18内にあるときに、頭部49の回転方向における位置がわかる。
【0041】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0042】
〇 上記の実施形態では、頭部49の連結側第1直線部66が上前壁面23に当接するようにしたが、この限りではない。例えば、頭部49の非連結側第1直線部76が内壁面の上部である上壁面21に当接するようにしてもよい。この場合、連結側第1直線部66が上前壁面23に当接する場合と同様に、締結部材46を支持溝18内に係止することが可能となる。
〇 上記の実施形態では、頭部49の連結側端面53と非連結側端面54とは、略長方形であるとしたが、この限りではない。例えば、
図9に示すその他の実施形態のように、頭部91の連結側端面53および非連結側端面54の形状が略平行四辺形である締結部材90としてもよい。連結側端面53の外周縁は、連結側第1短辺92と連結側第2短辺93と、を有する。連結側第1短辺92および連結側第2短辺93は直線部をそれぞれ有しており、両直線部は互いに平行になるように対向している。連結側第1短辺92の直線部は、直交線Qと交差する。直交線Qは、軸心Pを通り連結側第1短辺92の直線部と直角な直線である。この場合、連結側第1短辺92の直線部が直交線Qと直交するので、上記の実施形態と同様に、支持溝18内にて軸心P方向から見て、分布反力T3の1成分である頭部反力t3と軸部反力F3とが直線Q’に重なって示され、互いに逆向きになる。これにより、頭部91は、上前壁面23と前側下縁28Aとに挟まれて固定される。その結果、締結部材90は、支持溝18内にて頭部91の回転が規制される。
〇 上記の実施形態では、頭部49は、連結側第1短辺63と連結側第2長辺62との角部に面取りされて形成された連結側第1切欠き部65と、連結側第2短辺64と連結側第1長辺61との角部に面取りされて形成された連結側第2切欠き部68と、非連結側第1短辺73と非連結側第2長辺72との角部に面取りされて形成された非連結側第1切欠き部75と、非連結側第2短辺74と非連結側第1長辺71との角部に面取りされて形成された非連結側第2切欠き部78と、を有する。このため、作業者は支持溝18内において締結部材46の頭部49を支持溝18に挿入して、一方の短辺側平面57の一部が上壁面21に当接し、他方の短辺側平面57の一部が第1下壁面22Aに当接するまで一方向に回転させることができるとしたが、この限りではない。例えば、頭部49は、連結側第1短辺63と連結側第1長辺61との角部に面取りされて形成された連結側第1切欠き部65と、連結側第2短辺64と連結側第2長辺62との角部に面取りされて形成された連結側第2切欠き部68と、非連結側第1短辺73と非連結側第1長辺71との角部に面取りされて形成された非連結側第1切欠き部75と、非連結側第2短辺74と非連結側第2長辺72との角部に面取りされて形成された非連結側第2切欠き部78と、を有するようにしてもよい。この場合、作業者は支持溝18内において締結部材46の頭部49を支持溝18に挿入して、一方の短辺側平面57の一部が上壁面21に当接し、他方の短辺側平面57の一部が第1下壁面22Aに当接するまで他方向に回転させることができる。
〇 上記の実施形態では、作業者が締結部材46を回転させて、一方の短辺側平面57の一部が上壁面21に当接し、他方の短辺側平面57の一部が第1下壁面22Aに当接するとき、軸部48は、前面開口26において下開口面28と上開口面27とから離れた状態であるとしたが、この限りではない。例えば、軸部48は、前面開口26において下開口面28の前側下縁28Aに接触した状態としてもよい。この場合、軸部48が前面開口26において下開口面28と上開口面27とから離れた状態と同様に、支持溝18内にて頭部49の回転を規制することができる。
【符号の説明】
【0043】
11 スレイ
13 支持体
18 支持溝
21 上壁面
23 上前壁面
26 前面開口
27 上開口面
28 下開口面
45 固定装置
46 締結部材
47 ナット
48 軸部
49 頭部
50 雄ねじ部
53、54 端面
61 連結側第1長辺(長辺としての)
62 連結側第2長辺(長辺としての)
63 連結側第1短辺(短辺としての)
64 連結側第2短辺(短辺としての)
65 連結側第1切欠き部(切欠き部としての)
66 連結側第1直線部(直線部としての)
67 連結側第1切欠き線部(切欠き線部としての)
68 連結側第2切欠き部(切欠き部としての)
69 連結側第2直線部(直線部としての)
70 連結側第2切欠き線部(切欠き線部としての)
71 非連結側第1長辺(長辺としての)
72 非連結側第2長辺(長辺としての)
73 非連結側第1短辺(短辺としての)
74 非連結側第2短辺(短辺としての)
75 非連結側第1切欠き部(切欠き部としての)
76 非連結側第1直線部(直線部としての)
77 非連結側第1切欠き線部(切欠き線部としての)
78 非連結側第2切欠き部(切欠き部としての)
79 非連結側第2直線部(直線部としての)
80 非連結側第2切欠き線部(切欠き線部としての)
P 軸心
Q 直交線
H 溝幅