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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】作業機械のキャッチ
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20240110BHJP
   B62D 25/12 20060101ALI20240110BHJP
   E05C 19/14 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
E02F9/00 N
B62D25/12 N
E05C19/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020163686
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055954
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳田 歩
(72)【発明者】
【氏名】天野 真一郎
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-204287(JP,A)
【文献】特開2013-204288(JP,A)
【文献】特開2015-221591(JP,A)
【文献】特開2014-122525(JP,A)
【文献】特開2003-206551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
B62D 25/12
E05C 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルで周囲が覆われた機械室が設置されている作業機械において、前記パネルに形成されている開口部を開閉するカバー部材を、閉じた状態に保持するためのキャッチであって、
前記カバー部材および前記パネルのどちらか一方の第1取付部位に配置される掛止部材と、
前記掛止部材に掛け止められるように、前記カバー部材および前記パネルの他方の第2取付部位に配置される操作部材と、
を備え、
前記操作部材は、
前記第2取付部位に固定されるブラケットと、
前記ブラケットに軸支されるレバーと、
を有し、
前記レバーは、
前記ブラケットに一端が軸支されていて、前記掛止部材に掛け止める閉じ方向および当該閉じ方向とは逆の開き方向の双方に回動する基端部と、
前記基端部の他端に回動可能に連結されていて、前記掛止部材に掛け止められる先端部と、
を有し、
前記ブラケットは、支持軸を介して前記基端部をその両側から軸支する一対の軸支部を有し、
前記軸支部の各々は、
前記支持軸の端部を支持する支持壁部と、
前記支持壁部の基端から屈曲して前記第2取付部位に締結される取付壁部と、
を有し、
前記ブラケットが更に、前記軸支部の各々と一体化される連結板部を有し、前記基端部が前記開き方向に所定角度回動したときに突き当たる回動規制部が前記連結板部に設けられている、キャッチ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャッチにおいて、
前記連結板部が、前記取付壁部の各々の下面に上面が接合される接合板からなり、
前記接合板の中間部分に前記回動規制部が設けられているキャッチ。
【請求項3】
請求項1に記載のキャッチにおいて、
前記連結板部が、前記一対の支持壁部の一方の側縁間をつなぐ架設板からなり、当該架設板によって前記回動規制部が構成されているキャッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、油圧ショベル等の作業機械が備える機械室を開閉するカバー部材を、閉じた状態に保持するためのキャッチに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のキャッチは、大略、掛止部材と操作部材とで構成されている。操作部材を掛止部材に掛け止めることで、カバー部材は閉じた状態に保持される。
【0003】
スプリングの無いタイプではあるが、機械室の上部の開口を覆う開閉カバーを閉じた状態に保持するキャッチが特許文献1に開示されている。そのキャッチは、開閉カバーに取り付けられる第1部材と、第1部材に掛け止められるレバーなどで構成されている。レバーは、左右一対のL型金具によって回動自在に軸支される。これらL型金具の各々を、所定の台座にボルト止めすることにより、台座にレバーが軸支されている。
【0004】
そして、開閉カバーを開けた場合に、そのレバーが所定角度以上倒れなくするために、設置箇所に設けられている通風口を利用し、そのルーバーの間の奥方に、レバーを軸支した台座を設置している。そして、レバーが所定角度倒れた時に、ルーバーの突端に当たって回動が規制されるように、ルーバーの高さを調節している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-206551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のキャッチの場合、通風口を利用するので、設置できる場所が限られる。しかも、レバーが突き当たるルーバーの突端は、塗装が剥げ落ちる。従って、見た目に悪いし、錆びるおそれもある。
【0007】
更に、台座をルーバーの間の奥方に設置する必要があり、クリアランスの調整など、台座を適切に取り付ける作業が難しい。また、台座にボルト止めするL型金具は、それぞれが独立した部品となっているため、これら一つ一つを適切に台座に取り付けること自体も容易でない。例えば、L型金具を台座に強固に締結しようとすると、レバーとともに他方のL型金具が連れまわりして位置がずれてしまう。
【0008】
通常、このような作業機械のカバーは、大きく、重量も重い。しかも、作業機械の場合、作業時に大きな振動や衝撃が加わる。そのため、そのような振動等が加わっても、大きくて重いカバーを閉じた状態に安定して保持し得る、高度な強度および剛性が、キャッチには要求される。
【0009】
そのため、作業機械のキャッチは、それ自体が頑丈に形成されていて、開閉操作にも強い力が必要になる。従って、開き操作時には、レバーは勢いよく回動し易いので、特許文献1のキャッチでは、レバーおよびルーバーの塗装が直ぐに剥げ落ちて、見栄えが悪化する。またレバーおよびルーバーが変形するおそれもある。特に、スプリングキャッチの場合、スプリングの弾性力を利用してカバーを閉じた状態に保持するので、レバーはその弾性力の反発によって、より勢いよく回動し易い。
【0010】
開示する技術の主たる目的は、簡単に設置できるうえに見栄えもよい作業機械のキャッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示する技術は、パネルで周囲が覆われた機械室が設置されている作業機械において、前記パネルに形成されている開口部を開閉するカバー部材を、閉じた状態に保持するためのキャッチに関する。
【0012】
前記キャッチは、前記カバー部材および前記パネルのどちらか一方の第1取付部位に配置される掛止部材と、前記掛止部材に掛け止められるように、前記カバー部材および前記パネルの他方の第2取付部位に配置される操作部材と、を備える。前記操作部材は、前記第2取付部位に固定されるブラケットと、前記ブラケットに軸支されるレバーと、を有している。
【0013】
前記レバーは、前記ブラケットに一端が軸支されていて、前記掛止部材に掛け止める閉じ方向および当該閉じ方向とは逆の開き方向の双方に回動する基端部と、前記基端部の他端に回動可能に連結されていて、前記掛止部材に掛け止められる先端部と、を有している。前記ブラケットは、支持軸を介して前記基端部をその両側から軸支する一対の軸支部を有し、前記軸支部の各々は、前記支持軸の端部を支持する支持壁部と、前記支持壁部の基端から屈曲して前記第2取付部位に締結される取付壁部と、を有している。
【0014】
そして、前記ブラケットが更に、前記軸支部の各々と一体化される連結板部を有し、前記基端部が前記開き方向に所定角度回動したときに突き当たる回動規制部が前記連結板部に設けられている。
【0015】
すなわち、このキャッチは、作業機械の機械室を開閉するカバー部材を閉じた状態に保持するためのものである。その操作部材は、ブラケットとレバーとを有しており、レバーを回動操作して、その先端部を掛止部材に掛け止めることにより、カバー部材は閉じた状態に保持される。
【0016】
ブラケットは、第2取付部位に締結されてレバーの基端部をその両側から軸支する一対の軸支部とともに、これら軸支部と一体化される連結板部を有している。すなわち、ブラケットを第2取付部位に締結する際、軸支部を個別に締結しなくてもよい。各軸支部は、予め適正な位置に配置された状態で、連結板部と一体化されているので、強固に締結しても、連れまわりはしない。
【0017】
従って、各軸支部がずれ動くことは無い。各軸支部の取付位置を調整する必要がなく、ブラケットを簡単かつ適切に取り付けることができる。しかも、各軸支部を連結板部と一体化したことで、ブラケットの強度および剛性を向上できる。
【0018】
更に、その連結板部には、レバーの基端部が開き方向に所定角度回動したときに突き当たる回動規制部が設けられている。従って、開き操作により、レバーが勢いよく回動しても、その基端部が所定角度以上に回動することが防止される。
【0019】
その結果、レバーがパネル等に衝突して、塗装が剥げ落ちるのを防止できる。回動規制部と、その回動規制部に突き当たる基端部の部位とは、塗装が剥げ落ちるおそれはあるが、視認し難い部位であるので、仮に塗装が剥げ落ちても、キャッチの美観が損なわれるのを抑制できる。
【0020】
また、レバーを所定角度で保持することができるので、レバーを作業や歩行の邪魔にならない状態に配置できる。従って、作業性も向上できる。
【0021】
前記キャッチはまた、前記連結板部が、前記取付壁部の各々の下面に上面が接合される接合板からなり、前記接合板の中間部分に前記回動規制部が設けられている、としてもよい。
【0022】
そうすれば、比較的簡単な加工を施した接合板を接合するだけで、連結板部を構成できる。しかも、回動規制部は、基端部の下方に位置することとなり、操作部材を外方から見た場合、回動規制部は、ほとんど見えない状態となる。
【0023】
回動規制部で基端部を受け止めることができるので、基端部の傷付きや変形を抑制できる。従って、キャッチの美観および耐久性が向上する。
【0024】
前記キャッチはまた、前記連結板部が、前記一対の支持壁部の一方の側縁間をつなぐ架設板からなり、当該架設板によって前記回動規制部が構成されている、としてもよい。
【0025】
そうすれば、いわゆる製缶板金加工によって一対の軸支部および架設板を一体化でき、ブラケットを一つの金具で構成できる。架設板によって回動規制部が構成されているので、レバーがパネル等に衝突して、塗装が剥げ落ちるのを防止できる。
【発明の効果】
【0026】
開示する技術を適用したキャッチによれば、簡単に設置できるうえに、見栄えや耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る作業機械の一例を示す概略図である。
図2】機械室の要部を斜め上方から見た概略斜視図である。矢印で示す図は、メンテナンス時等の状態を示している。
図3A】キャッチの外観を示す概略斜視図である。
図3B】キャッチの構造を示す概略断面図である。
図4】ブラケットの構造を説明するための概略斜視図である。
図5】(a)~(d)は、キャッチの開き操作の一連の流れを示す概略図である。
図6】第1の変形例のキャッチの要部を示す概略斜視図である。
図7】第2の変形例のキャッチの要部を示す概略斜視図である。
図8A】第3の変形例のキャッチの加工前のブラケットを示す概略平面図である。
図8B】第3の変形例のキャッチの加工後のブラケットを示す概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、開示する技術の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。説明で用いる前後、左右、および上下の方向は、図示の矢印に従うものとする。
【0029】
<作業機械1>
図1及び図2に、開示する技術が適用可能な作業機械の一例を示す。この作業機械は、油圧ショベル1であり、下部走行体2の上に、作業を行う機械本体3が、旋回自在に搭載されている。この油圧ショベル1は、運転質量が数十トン程度の、中型ないし大型の機種に相当する。
【0030】
下部走行体2は、その左右の両側に一対のクローラ2a,2aを有している。油圧ショベル1は、これらクローラ2a,2aの駆動を油圧で制御することによって走行する。
【0031】
機械本体3は、台状のアッパーフレーム3aを有している。アッパーフレーム3aは、下部走行体2に旋回自在に支持されている。そのアッパーフレーム3aの上に、キャブ4、アタッチメント5、機械室10などが設置されている。キャブ4は、オペレータが油圧ショベル1の操作を行う箱型の運転室であり、アッパーフレーム3aの前左隅部に設置されている。
【0032】
アタッチメント5は、ブーム5a、アーム5b、バケット5c等で構成されており、アッパーフレーム3aの前中央部に設置されている。アタッチメント5は、油圧シリンダ5dの油圧制御によって作動し、掘削等の作業を行う。アタッチメント5との間で前後のバランスを調整するために、アッパーフレーム3aの後端部には、高重量なカウンターウエイト6が設置されている。
【0033】
機械室10は、パネル11で周囲が覆われた箱型の構造物からなり、アッパーフレーム3aの後部の広い範囲に設置されている。図2に示すように、この油圧ショベル1の場合、機械室10は、アッパーフレーム3aの後縁に沿って左右に延びる後部機械室10aと、後部機械室10aの左端部からアッパーフレーム3aの左縁に沿って前方に延びる側部機械室10bとを備えている。図示しないが、後部機械室10aには、エンジンや油圧ポンプが設置されている。
【0034】
そして、機械室10の所定箇所(詳細には、機械室10を覆うパネル11の所定箇所)には、メンテナンス等を行うために、開口部12が形成されている。この油圧ショベル1の場合、図2に矢印で示す図のように、後部機械室10aの左右方向の中央部分に、後部機械室10aの上面を大きく開放するメイン開口12aが形成されている。また、側部機械室10bにも、その側面を開放するサブ開口12bが形成されている。
【0035】
そして、機械室10には、これら開口部12を開閉するカバー部材13が設けられている。この油圧ショベル1の場合、後部機械室10aには、メイン開口12aを開閉する上部開閉カバー13aが設けられ、側部機械室10bには、サブ開口12bを開閉する側部開閉カバー13bが設けられている。上部開閉カバー13aおよび側部開閉カバー13bの各々は、後縁部がヒンジを介して回動可能に軸支されており、その後縁部を支点に揺動することで、メイン開口12aおよびサブ開口12bの各々が開閉する。
【0036】
後部機械室10aにおけるメイン開口12aが形成されている部分の前側には、ステッププレート14が、前後および左右の方向に拡がるように設置されている。また、メイン開口12aの内部にも、同様に、補助ステップ15が設置されている。これらステッププレート14および補助ステップ15を足場にして、オペレータが、機械室10の上部に昇降し、メイン開口12aやサブ開口12bを通じてメンテナンス等の作業を行う。
【0037】
メイン開口12aおよびサブ開口12bの各々は、作業時を除き、通常は、図2に示すように、上部開閉カバー13aおよび側部開閉カバー13bの各々によって閉じられている。そして、これら上部開閉カバー13aおよび側部開閉カバー13bの各々を閉じた状態に安定して保持するため、機械室10の外面には、スプリングキャッチ20が設置されている。
【0038】
作業時の油圧ショベル1は、大きく上下動したり傾いたりする。強い振動も加わる。そのため、スプリングキャッチ20は、それに応じた頑丈な作りになっている。特に、大きく高重量な上部開閉カバー13a用のスプリングキャッチ20は、メイン開口12aの前縁部の両側2箇所に設置されている。側部開閉カバー13b用のスプリングキャッチ20は、サブ開口12bの前縁部の1箇所に設置されている。
【0039】
<スプリングキャッチ20>
上部開閉カバー13a用および側部開閉カバー13b用の各々のスプリングキャッチ20は、いずれも同じである。ここでは、上部開閉カバー13a用のスプリングキャッチ20を例に説明する。
【0040】
図3A図3Bに示すように、スプリングキャッチ20は、掛止部材30と操作部材40とで構成されている。図2に示すように、掛止部材30は、上部開閉カバー13aの前縁部の外面の所定位置(第1取付部位)に配置され、ボルトの締結によって上部開閉カバー13aに固定されている。操作部材40は、その掛止部材30に掛け止められるように、メイン開口12aの前縁部を構成しているパネル11の外面の所定位置(第2取付部位)に配置され、ボルトの締結によってパネル11に固定されている。
【0041】
掛止部材30は、1つの金具からなり、基部31と、被係合部32と、掛止部33とを有している。基部31は、被係合部32および掛止部33の両側に拡がる板状の部分であり、その各々には、対称状にボルト長孔31a,31aが形成されている。これらボルト長孔31a,31aに挿通したボルトが、上部開閉カバー13aに締結される。
【0042】
被係合部32は、基部31から一段高く形成された台状の部分である。被係合部32は、基部31の一方の端部に設けられている。被係合部32の上面には、係合孔32aが形成されている。
【0043】
掛止部33は、基部31の他方の端部から上方に延びて互いに対向する一対の対向壁部33a,33aと、これら対向壁部33a,33aの突端部分に架設された掛止棒33bとで構成されている。掛止棒33bは、被係合部32の上面よりも上方に位置している。掛止部33は、被係合部32よりも掛止部33の方が、操作部材40の側に位置するようにして、上部開閉カバー13aに配置される。
【0044】
一方、操作部材40は、パネル11に固定されるブラケット41と、ブラケット41に軸支されるレバー42とを有している。レバー42は更に、基端部50と先端部60とを有している。そして、基端部50は、第1金具51、連結棒52、第2金具53、スプリング54などで構成されている。
【0045】
(レバー42)
第1金具51は、基端部50をブラケット41に軸支する部分であり、いわゆる製缶板金加工品からなる。第1金具51は、矩形状の主壁51aと、主壁51aの一方の対辺から曲げられて互いに対向している一対の矩形状の対向壁51b,51bと、主壁51aの他方の対辺の一辺から両対向壁51b,51bの間に曲げられて、両対向壁51b,51bの縁と両側縁が連結されている矩形状の副壁51cとを有している。
【0046】
対向壁51bの各々には、貫通した第1軸孔51dが形成されている。これら第1軸孔51dに、第1支持軸50aが回動可能に挿通されていて、各対向壁51bの両側に突出している。その第1支持軸50aの突端部分が、ブラケット41に軸支されている。
【0047】
主壁51aの中央には、連結棒52が挿通される第1棒孔51eが形成されている。連結棒52は、ボルト状の部材からなり、円柱状の支柱と、その一端に設けられた、支柱より大径の頭部と、その他端に設けられたネジ部とを有している。連結棒52は、その頭部を両対向壁51b,51bの間に収容した状態で、第1棒孔51eに挿通されている。
【0048】
第2金具53は、基端部50の主体となる部分であり、いわゆる製缶板金加工品からなる。第2金具53は、一方の側面および一方の端面が開放された中空角柱状の金具本体53aと、一対の支持腕53b,53bとを有している。一対の支持腕53b,53bは、対向している一対の側面を、開放された端面の側に延出することによって形成されている。各支持腕53bの先端部分には、第2軸受孔53dが形成されている。
【0049】
金具本体53aの他方の端面には、第2棒孔53cが形成されている。その第2棒孔53cに、第1棒孔51eから突出した連結棒52が挿通されることにより、連結棒52が金具本体53aの内側に収容されている。その金具本体53aに収容されている連結棒52に、連結棒52よりも短いコイル状のスプリング54が装着されている。そして、ワッシャ55を介してボルト56が連結棒52のネジ部に締結されている。
【0050】
それにより、スプリング54は、ワッシャ55と金具本体53aの端面の間に挟持されている。連結棒52を介して連結されている第1金具51および第2金具53は、伸縮可能となっている。すなわち、第2金具53は、スプリング54の弾性力を受けずに、第1金具51に近づけることができ、基端部50を縮めることができる。
【0051】
一方、第2金具53を第1金具51から大きく離す場合には、スプリング54の弾性力が作用する。従って、基端部50を所定の長さ以上に伸ばす場合には、スプリング54の弾性力に抗して引っ張る必要がある。
【0052】
先端部60は、金属部材からなり、グリップ61、係合突起62、フック63、軸受64などを有している。軸受64に、第2支持軸65が回動可能に挿通されていて、軸受64の両側に突出した第2支持軸65の突端部分が、各第2軸受孔53dに抜け止めされた状態で挿通されている。それにより、先端部60は、第2支持軸65を中心に、基端部50に対して回動する。
【0053】
軸受64の先端側に、係合突起62が設けられている。係合突起62は、円柱状の部分であり、係合孔32aに係合するように形成されている。グリップ61は、係合突起62よりも更に先端側に突き出すように設けられている。グリップ61は、係合突起62の側に僅かに湾曲した形状をしている。
【0054】
フック63は、軸受64からグリップ61の逆方向に突き出すように設けられていて、その突端には、側面視がU形状の凹部63aが形成されている。閉じた状態では、この凹部63aに掛止棒33bが入り込む。
【0055】
(ブラケット41)
ブラケット41は、一対の軸支部70,70を有している。これら軸支部70,70により、基端部50は、その両側から第1支持軸50aを介して軸支されている。各軸支部70は、L型の金具からなり、第1軸受孔71aが形成された支持壁部71と、支持壁部71の基端から屈曲してパネル11に締結される取付壁部72とを有している。
【0056】
各第1軸受孔71aに、各第1支持軸50aの端部が抜け止めされた状態で支持されている。それにより、レバー42は、第1支持軸50aを中心に、ブラケット41に対して回動する。具体的には、基端部50の第1金具51が、ブラケット41に軸支されていて、閉じ方向(掛止部材30に掛け止める方向)および開き方向(閉じ方向とは逆の方向)の双方に回動する。各取付壁部72には、ボルトを挿通するボルト孔72aが形成されている。
【0057】
そして、このブラケット41は更に、図4に示すように、軸支部70,70の各々と一体化される接合板80(連結板部)を有している。接合板80は、いわゆる製缶板金加工品からなり、所定間隔を隔てて位置する一対の接合部81,81と、これら接合部81,81の間に連なる連結部82とを有している。各接合部81は、各軸支部70の取付壁部72と略同じ形状および寸法からなり、そこには、ボルト孔72aと重なるボルト下孔81aが形成されている。
【0058】
各軸支部70の取付壁部72の各々の下面に、各接合部81の上面を重ねて接合(溶接)することにより、各軸支部70は接合板80と一体に構成されている。各軸支部70は、予め適正な位置に配置された状態で、接合板80と一体化されているので、ブラケット41をパネル11に固定する際には、ボルトを強固に締結しても、連れまわりはしない。
【0059】
従って、各軸支部70がずれ動くことは無い。各軸支部70の取付位置を調整する必要がなく、ブラケット41を簡単かつ適切に取り付けることができる。しかも、各軸支部70を接合板80と一体化したことで、ブラケット41の強度および剛性を向上できる。
【0060】
更に、連結部82の利用により、レバー42を開き操作した時に、パネル11等にレバー42が突き当たるのを防止できるようにしている。すなわち、連結部82に、基端部50が開き方向に所定角度回動したときに突き当たる回動規制部が設けられている。
【0061】
具体的には、連結部82は、接合板80の一方の側縁に沿って延びる、接合部81よりも幅が狭い帯板状の第1部位82aと、この第1部位82aから接合板80の他方の側縁の側に張り出す矩形状の第2部位82bとを有している。この第2部位82bを上方に曲げることにより、回動規制部が設けられている。
【0062】
第2部位82b(回動規制部)は、接合板80の幅方向の略中間の位置で略L状に曲げられていて、図3Bに示すように、側方から見て、第1軸受孔71aのほぼ真下に立設されている。第2部位82bの突端は、第1軸受孔71aよりも下方に位置している。それにより、第2部位82bは、基端部50の下方に位置することとなり、図3Aに示すように、操作部材40を外方から見た場合、第2部位82bはほとんど見えない状態となっている。従って、第2部材の存在によって、スプリングキャッチ20の美観が損なわれるおそれはない。
【0063】
また、レバー42を所定角度で保持することができるので、レバー42を作業や歩行の邪魔にならない状態に配置できる。従って、作業性も向上できる。
【0064】
第2部位82bには、接合部81に対して略垂直な面が形成されている。そして、その一方の面により、基端部50を面で受け止める当て面82cが構成されている。すなわち、レバー42が開き方向に所定角度回動した場合に、第1金具51の副壁51cの端面90が当て面82cに突き当たるように構成されている。
【0065】
図5に、上部開閉カバー13aを開く時のスプリングキャッチ20の操作の概略を示す。図5の(a)は、上部開閉カバー13aを閉じた状態に保持しているスプリングキャッチ20を表している。
【0066】
このとき、先端部60は、基端部50と共に閉じ方向に回動操作することによって、係合突起62が係合孔32aに入り込んだ状態で、フック63が掛止棒33bに掛け止められている。そして、基端部50は、スプリング54の弾性力に抗して延びた状態となっている。それにより、常時、フック63等に強い弾性力が作用し、上部開閉カバー13aに外力が作用しても、閉じた状態に安定して保持できるように設定されている。
【0067】
上部開閉カバー13aを開く場合、図5の(b)に示すように、スプリング54の弾性力に抗して、グリップ61を持ち上げる。そうすることにより、掛止棒33bが支点になった状態で、先端部60が、第2支持軸65を中心に開き方向に回動し、係合突起62が係合孔32aから抜け出すとともに、フック63が掛止棒33bから外れるようになる。
【0068】
係合突起62が係合孔32aから抜け出して、フック63が掛止棒33bから外れると、図5の(c)に示すように、レバー42は、開き方向に回動していく。このとき、弾性力の反発により、レバー42は、開き方向に勢いよく回動し易い。そして、図5の(d)に示すように、所定角度、レバー42が回動すると、副壁51cの端面90が第2部位82bの当て面82cに突き当たる。それにより、レバー42が、その角度以上に回動することが規制される。
【0069】
その結果、レバー42がパネル11等に衝突して、レバー42やパネル11等の塗装が剥げ落ちるのを防止できる。第2部位82bは、外部からほとんど見えないので、第2部位82bの塗装が剥がれても、スプリングキャッチ20の美観を損なうおそれはほとんどない。面で受け止めるので、塗装が剥げ難いし、変形も抑制できる。従って、耐久性にも優れる。
【0070】
<第1の変形例>
図6に、スプリングキャッチ20の第1の変形例を示す。
【0071】
上述した実施形態では、軸支部70の各々と一体化される連結板部を接合板80で構成したスプリングキャッチ20を例示した。それに対し、この変形例では、連結板部が、一対の支持壁部71,71の一方の側縁間をつなぐ架設板100で構成されている。なお、掛止部材30等、その他の構成は、実施形態と同じである。そのため、同じ部材には同じ符号を用い、その説明は省略する(他の変形例も同様)。
【0072】
本変形例の架設板100は、各支持壁部71における開き方向側に位置する側縁から、互いに対向した状態で、取付壁部72の側に傾斜して張り出す一対の傾斜板部101,101と、これら傾斜板部101,101の突端に連なる規制板部102とを有し、アーチ状に形成されている。本変形例では、いわゆる製缶板金加工により、一対の軸支部70,70および架設板100は、一つの金具で構成されている。
【0073】
そして、所定角度、レバー42が回動すると、第1金具51の副壁51cが、その架設板100の上縁部分に突き当たるように構成されている。それにより、レバー42が、その角度以上に回動することが規制される。架設板100の上縁部分に突き当たるようにすれば、その衝撃は主に板幅方向に伝わるので、衝突耐性が向上し、架設板100の変形を抑制できる。
【0074】
この場合、規制板部102の上縁を面取りすることにより、基端部50を面で受け止める当て面102aを設けるのが好ましい。第1金具51の副壁51cが、規制板部102の上縁部分で受け止められると、副壁51cに傷が付き易い。それに対し、当て面102aを設けて、面で受け止めるようにすることで、そのような傷付きを抑制できる。
【0075】
<第2の変形例>
図7に、スプリングキャッチ20の第2の変形例を示す。第1の変形例では、一対の軸支部70,70および架設板100を一つの金具で構成する場合を例示した。それに対し、本変形例では、一対の軸支部70,70と架設板100とを、それぞれ別の部材で構成し、いわゆる製缶板金加工により、これらを接合(溶接)することによって構成されている。
【0076】
本変形例の架設板110は、互いに対向する一対の固定部111,111と、これら固定部111,111の一端に連なる掛け渡し部112と、掛け渡し部112の上縁から、固定部111とは逆方向に張り出す当て板113とを有している。各固定部111を、各支持壁部71に接合することにより、架設板100と一対の軸支部70,70とが一体化されている。
【0077】
そして、所定角度、レバー42が回動すると、第1金具51の副壁51cが、当て板113に突き当たり、面で受け止められるように構成されている。それにより、レバー42が、その角度以上に回動することが規制される。
【0078】
この場合、既存のブラケット、つまり一対の軸支部70,70が個別に設けられているブラケットが利用できるので、汎用性に優れる。架設板110を接合するだけでよいので、安価かつ簡単に実現できる。
【0079】
<第3の変形例>
図8に、スプリングキャッチ20の第3の変形例を示す。本変形例は、第2の変形例のような当て板113を有するスプリングキャッチ20を、第1の変形例のように、いわゆる製缶板金加工により、一つの金具で構成する場合を例示している。
【0080】
すなわち、図8Aに示すような形状に打ち抜いた金属板120を、図8Bに示すように、折り曲げて加工する。そうすることにより、第2の変形例のような当て板113を有する第1の変形例のようなブラケット41を、1つの金具で形成することができる。
【0081】
なお、開示する技術にかかる作業機械のキャッチは、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。作業機械は、油圧ショベルに限らない。例えばクレーン等であってもよい。下部走行体は、車輪で走行するホイール式であってもよい。機械本体は下部走行体に対して旋回しなくてもよい。キャッチは、必ずしもスプリングキャッチでなくてもよい。
【0082】
キャッチの具体的な構造は、仕様に応じて適宜変更できる。例えば、回動規制部によって受け止めた時のレバーの角度は、当て板の角度調整によって任意に設定できる。掛止部材やレバーの構造も、一例であり、仕様に応じて変更可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 油圧ショベル(作業機械)
2 下部走行体
3 機械本体
4 キャブ
5 アタッチメント
6 カウンターウエイト
10 機械室
11 パネル
12 開口部
13 カバー部材
13a 上部開閉カバー
13b 側部開閉カバー
14 ステッププレート
15 補助ステップ
20 スプリングキャッチ(キャッチ)
30 掛止部材
40 操作部材
41 ブラケット
42 レバー
50 基端部
51 第1金具
52 連結棒
53 第2金具
54 スプリング
60 先端部
61 グリップ
62 係合突起
63 フック
70 軸支部
71 支持壁部
72 取付壁部
80 接合板(連結板部)
81 接合部
82 連結部
82a 第1部位
82b 第2部位(回動規制部)
82c 当て面
90 端面
100 架設板(連結板部)
110 架設板(連結板部)
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B