(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】磁気平衡式電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20240110BHJP
G01R 19/32 20060101ALI20240110BHJP
G01R 31/50 20200101ALI20240110BHJP
G01R 15/20 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01R19/00 B
G01R19/00 M
G01R19/32
G01R31/50
G01R15/20 B
(21)【出願番号】P 2020173371
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 肇臣
(72)【発明者】
【氏名】有坂 直樹
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-068452(JP,A)
【文献】特開平10-051948(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047553(WO,A1)
【文献】特開2000-179667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
G01R 19/32
G01R 31/50
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出体を流れる電流を検出する磁気平衡式電流センサであって、
前記電流によって発生する対象磁界に基づいた検出信号を出力するセンサ部(10)と、
前記センサ部が検出する対象磁界を相殺する相殺磁界を発生させる電磁石(31)と、前記電磁石と直列に接続されたシャント抵抗体(32)と、を有するメイン出力部(30)と、
前記メイン出力部と接続され、前記検出信号に基づいて前記相殺磁界を発生させるフィードバック電流(I1、I2)を前記電磁石および前記シャント抵抗体に流す制御回路部(20)と、
前記制御回路部に対し、前記電磁石および前記シャント抵抗体と並列に配置された比較抵抗体(41b)を有する比較抵抗部(41)を含み、前記電磁石および前記シャント抵抗体の電位差変動をモニタする冗長回路部(40)と、
前記シャント抵抗体の両端の電位差に基づくメイン信号(Vout、Vdout)と、前記比較抵抗体の両端の電位差に基づく比較信号(Vcom、Vdcom)とを比較し、前記メイン信号と前記比較信号との差が所定の閾値範囲外であると判定した場合、異常が発生していると判定する判定部(50)と、を備える磁気平衡式電流センサ。
【請求項2】
前記冗長回路部は、前記比較抵抗体と接続されて一定電圧に維持されている電位固定部(43、45)を有している請求項1に記載の磁気平衡式電流センサ。
【請求項3】
前記メイン出力部および前記冗長回路部と、前記判定部との間には、前記シャント抵抗体の両端の電位差に基づくメインアナログ信号(Vout)をメインデジタル信号(Vdout)に変換して前記メイン信号とすると共に、前記比較抵抗体の両端の電位差に基づく比較アナログ信号(Vcom)を比較デジタル信号(Vdcom)に変換して前記比較信号とするAD変換回路部(63)が備えられている請求項1または2に記載の磁気平衡式電流センサ。
【請求項4】
前記メイン出力部と前記AD変換回路部との間に配置され、所定期間毎に前記メインアナログ信号をサンプリングして保持する第1サンプルホールド回路部(61)と、
前記冗長回路部と前記AD変換回路部との間に配置され、前記第1サンプルホールド回路部でサンプリングする時点に対し、前記メインアナログ信号と前記比較アナログ信号の位相差に対応した時間差で、前記比較アナログ信号をサンプリングして保持する第2サンプルホールド回路部(62)と、を備え、
前記AD変換回路部は、前記第1サンプルホールド回路部で保持された前記メインアナログ信号を前記メインデジタル信号に変換して前記メイン信号とすると共に、前記第2サンプルホールド回路部で保持された前記比較アナログ信号を前記比較デジタル信号に変換して前記比較信号とする請求項3に記載の磁気平衡式電流センサ。
【請求項5】
前記メインアナログ信号に対して所定の補正を行うアナログ補正回路部(34)と、
前記AD変換回路部と前記判定部との間に配置され、前記比較デジタル信号に対し、所定の補正に対応する補正をデジタルで行うデジタル補正回路部(64)と、を備えている請求項3または4に記載の磁気平衡式電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気平衡式電流センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、バスバー等の被検出体に流れる電流を検出する磁気平衡式電流センサが提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この磁気平衡式電流センサは、被検出体を流れる電流によって発生する対象磁界を相殺するための相殺磁界を発生させるフィードバックコイルと、対象磁界と相殺磁界との差に基づく差磁界に応じた検出信号を出力するセンサ部とを備えている。また、磁気平衡式電流センサは、センサ部から出力される検出値に応じてフィードバックコイルにフィードバック電流を流す制御回路部と、フィードバックコイルと直列に接続された抵抗体とを備えている。
【0003】
そして、このような磁気平衡式電流センサは、差磁界がゼロに近づくようにフィードバック電流が制御され、フィードバック電流によって発生する抵抗体の両端の電位差に基づいて被検出体を流れる電流が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような磁気平衡式電流センサでは、センシング部として機能するフィードバックコイルと直列に接続された抵抗体の抵抗値変動や、フィードバック電流が流れる部分の断線等の異常判定を行いたいという要望がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、異常判定を行うことのできる磁気平衡式電流センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1では、被検出体を流れる電流を検出する磁気平衡式電流センサであって、電流によって発生する対象磁界に基づいた検出信号を出力するセンサ部(10)と、センサ部が検出する対象磁界を相殺する相殺磁界を発生させる電磁石(31)と、電磁石と直列に接続されたシャント抵抗体(32)と、を有するメイン出力部(30)と、メイン出力部と接続され、検出信号に基づいて相殺磁界を発生させるフィードバック電流(I1、I2)を電磁石およびシャント抵抗体に流す制御回路部(20)と、制御回路部に対し、抵抗体1電磁石および抵抗体1シャント抵抗体と並列に配置された比較抵抗体(41b)を有する比較抵抗部(41)を含み、電磁石およびシャント抵抗体の電位差変動をモニタする冗長回路部(40)と、シャント抵抗体の両端の電位差に基づくメイン信号(Vout、Vdout)と、比較抵抗体の両端の電位差に基づく比較信号(Vcom、Vdcom)とを比較し、メイン信号と比較信号との差が所定の閾値範囲外であると判定した場合、異常が発生していると判定する判定部(50)と、を備える。
【0008】
これによれば、メイン信号と比較信号との差が閾値範囲内にあるか否かを判定することにより、フィードバック電流が流れるメイン出力部の感度変動やオフセット変動(すなわち、抵抗値変動)、断線等の異常判定を容易に判定できる。また、このような構成では、冗長回路部で電磁石およびシャント抵抗体の電位差変動をモニタすることによって異常判定を行うため、被検出体に流れる電流の検出を停止することなく、異常判定を行うことができる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態における磁気平衡式電流センサの回路図である。
【
図2A】第1実施形態の変形例における磁気平衡式電流センサの回路図である。
【
図2B】第1実施形態の変形例における磁気平衡式電流センサの回路図である。
【
図3】第2実施形態における磁気平衡式電流センサの回路図である。
【
図4】第2実施形態の変形例における磁気平衡式電流センサの回路図である。
【
図5】第3実施形態における磁気平衡式電流センサの回路図である。
【
図6】第4実施形態における磁気平衡式電流センサの回路図である。
【
図7】時間と、メイン信号、比較信号、第1サンプルホールド回路部、第2サンプルホールド回路部、AD変換回路部の状態との関係を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の磁気平衡式電流センサは、例えば、電気自動車等に搭載され、電気自動車等を駆動するモータ電流等を検出するのに利用されると好適である。以下では、集磁コアを必要としないコアレス型の磁気平衡式電流センサを説明する。但し、以下の構成は、集磁コアを備える磁気平衡式電流センサにも適用可能である。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態の磁気平衡式電流センサは、センサ部10、制御回路部20、メイン出力部30、冗長回路部40、および判定部50等を有する構成とされている。
【0014】
センサ部10は、本実施形態では、第1~第4磁気抵抗素子11~14がブリッジ回路を構成するようにセンサチップ等に形成されており、周囲の磁界に応じた電圧を検出信号として出力する。なお、第1~第4磁気抵抗素子11~14は、特に図示しないが、例えば、ピン磁性層、非磁性層、フリー磁性層が順に積層されたTMR(Tunnel Magneto Resistanceの略)素子やGMR(Giant Magnetic Resistanceの略)素子で構成されている。ピン磁性層は、磁化の向きが固定された強磁性金属層である。非磁性層は、フリー磁性層からピン磁性層に電流を流すための層である。フリー磁性層は、外部の磁界の影響を受けて磁化の向きが変化する強磁性金属層である。そして、センサ部10は、特に図示しないが、被検出体と対向するように配置される。
【0015】
制御回路部20は、後述するフィードバックコイル31と接続されてフィードバックコイル31が相殺磁界を形成するように、フィードバック電流I1、またはフィードバック電流I2を流すものであり、フィードバックアンプ21等で構成されている。フィードバックアンプ21は、一方の入力端子に、第1磁気抵抗素子11と第2磁気抵抗素子12との間の中点電圧V1が入力され、他方の入力端子に、第3磁気抵抗素子13と第4磁気抵抗素子14との間の中点電圧V2が入力されるように、センサ部10と接続されている。そして、フィードバックアンプ21は、中点電圧V1および中点電圧V2に基づいて、第1出力端子21aと第2出力端子21bとの間にフィードバック電流I1またはフィードバック電流I2を流す。なお、フィードバック電流I1、I2(すなわち、電流の向き)は、中点電圧V1と中点電圧V2との大きさに応じて変化する。
【0016】
メイン出力部30は、フィードバックコイル31、シャント抵抗体32、差動アンプ33等を有する構成とされている。フィードバックコイル31およびシャント抵抗体32は、フィードバックアンプ21の第1出力端子21aと第2出力端子21bとの間において、直列に接続されている。なお、特に図示しないが、フィードバックコイル31は、本実施形態では被検出体に対向して配置されており、被検出体に流れる電流によって発生する対象磁界を相殺するための相殺磁界を発生する。このため、センサ部10は、対象磁界と相殺磁界との差である差磁界に応じて中点電圧V1および中点電圧V2を出力する。また、本実施形態では、フィードバックコイル31が電磁石に相当する。
【0017】
差動アンプ33は、シャント抵抗体32の両端と接続されている。そして、差動アンプ33は、シャント抵抗体32の両端の電位差を差動増幅してメインアナログ信号Voutを出力する。差動アンプ33の出力端子は、外部回路部100と接続されていると共に、後述する判定部50の差動アンプ51と接続されている。そして、外部回路部100では、メインアナログ信号Voutに基づいて所定の処理が実行される。なお、本実施形態では、メインアナログ信号Voutがメイン信号に相当している。
【0018】
冗長回路部40は、フィードバックコイル31およびシャント抵抗体32の電位差変動をモニタするものであり、比較抵抗部41および差動アンプ42等を有する構成とされている。本実施形態では、比較抵抗部41は、第1比較抵抗体41aおよび第2比較抵抗体41bがフィードバックアンプ21の第1出力端子21aと第2出力端子21bとの間に直列に配置されて構成されている。つまり、比較抵抗部41は、制御回路部20に対してフィードバックコイル31およびシャント抵抗体32と並列に配置されている。
【0019】
差動アンプ42は、第2比較抵抗体41bの両端と接続されている。そして、差動アンプ42は、第2比較抵抗体41bの両端の電位差を差動増幅して比較アナログ信号Vcomを出力する。つまり、冗長回路部40は、フィードバックコイル31およびシャント抵抗体32の電位差変動をモニタした比較アナログ信号Vcomを出力する。このため、比較抵抗部41は、フィードバックコイル31およびシャント抵抗体32の模擬回路を構成しているといえる。差動アンプ42の出力端子は、後述する判定部50の差動アンプ51と接続されている。本実施形態では、比較アナログ信号Vcomが比較信号に相当している。
【0020】
なお、比較抵抗部41は、フィードバック電流I1、I2が流れ難いように抵抗値が大きくされている。つまり、比較抵抗部41は、シャント抵抗体32に流れるフィードバック電流I1、I2に影響しないように抵抗値が大きくされている。また、本実施形態では、第1比較抵抗体41aおよび第2比較抵抗体41bは、シャント抵抗体32等にフィードバック電流I1、I2が流れた際、感度変動、オフセット変動、断線等の異常が発生していない場合には、比較アナログ信号Vcomがメインアナログ信号Voutと一致するように抵抗値、または後段の回路が調整されている。つまり、第1比較抵抗体41aおよび第2比較抵抗体41bは、フィードバックコイル31およびシャント抵抗体32と対応するように抵抗値が調整されている。
【0021】
判定部50は、差動アンプ51および制御部52等を有する構成とされている。差動アンプ51は、一方の入力端子にメインアナログ信号Voutが入力され、他方の入力端子に比較アナログ信号Vcomが入力されるように差動アンプ33、42と接続されている。そして、差動アンプ51は、メインアナログ信号Voutと比較アナログ信号Vcomとを差動増幅して判定アナログ信号Vjud1を出力する。
【0022】
制御部52は、CPUや、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等の非遷移的実体的記憶媒体で構成される記憶部等を備えたマイクロコンピュータ等で構成される。CPUは、Central Processing Unitの略であり、ROMは、Read Only Memoryの略であり、RAMは、Random Access Memoryの略であり、HDDはHard Disk Driveの略である。記憶部には、アナログ用閾値範囲が設定されている。
【0023】
そして、制御部52は、差動アンプ51と接続されており、CPUが記憶部から各種データを読み出して所定の処理を行う。具体的には、制御部52は、判定アナログ信号Vjud1とアナログ用閾値範囲とを比較する。そして、制御部52は、判定アナログ信号Vjud1がアナログ用閾値範囲内にある場合に正常であると判定し、判定アナログ信号Vjud1がアナログ用閾値範囲外にある場合に異常が発生していると判定する。なお、アナログ用閾値範囲は、ノイズの影響や搭載される車種等に応じて適宜設定される。
【0024】
以上説明した本実施形態によれば、磁気平衡式電流センサは、メイン出力部30に対応した構成を有する冗長回路部40を備えている。このため、メインアナログ信号Voutと比較アナログ信号Vcomとの差に基づいた判定アナログ信号Vjud1がアナログ用閾値範囲内にあるか否かを判定することにより、フィードバック電流I1、I2が流れるメイン出力部30に異常が発生しているか否かを判定することができる。
【0025】
また、本実施形態では、フィードバックコイル31およびシャント抵抗体32を有する冗長回路部40の電位差変動をモニタすることによって異常判定を行うことができる。このため、被検出体に流れる電流の検出を停止することなく、異常判定を行うことができる。
【0026】
(第1実施形態の変形例)
上記第1実施形態の変形例について説明する。上記第1実施形態において、冗長回路部40の比較抵抗部41を構成する比較抵抗体の数は、適宜変更可能である。例えば、
図2Aに示されるように、比較抵抗部41は、第1~第3比較抵抗体41a~41cが直列に接続される構成としてもよいし、
図2Bに示されるように、第2比較抵抗体41bのみで構成されるようにしてもよい。
【0027】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、冗長回路部40の構成を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0028】
本実施形態の磁気平衡式電流センサは、
図3に示されるように、冗長回路部40には、比較抵抗部41および差動アンプ42に加え、比較抵抗部41と接続され、一定電圧に維持される電源部43が配置されている。具体的には、電源部43は、調整抵抗体44を介して比較抵抗部41の第1比較抵抗体41aと直列に接続されている。このため、差動アンプ42は、フィードバックアンプ21と冗長回路部40との間で断線等が発生した際、電源部43の電圧に応じた比較アナログ信号Vcomを出力する。
【0029】
なお、電源部43の電圧は、フィードバックアンプ21と冗長回路部40との間で断線等が発生した際に差動アンプ42から出力されるVcomと、断線等が発生していない正常状態で差動アンプ42から出力され得るVcomとが異なる値となるように調整されている。また、本実施形態では、電源部43が電位固定部に相当している。
【0030】
以上説明した本実施形態によれば、磁気平衡式電流センサが冗長回路部40を備えているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0031】
(1)本実施形態では、比較抵抗部41は、電位固定部としての電源部43と接続されている。このため、例えば、フィードバックアンプ21と冗長回路部40との間で断線等が発生したとしても、差動アンプ42は、電源部43の電圧に応じた比較アナログ信号Vcomを出力する。したがって、比較アナログ信号Vcomが不安定となり、誤判定をしてしまうことを抑制できる。なお、この場合の比較アナログ信号Vcomは、シャント抵抗体32にフィードバック電流I1、I2を流す制御回路部20に基づくものではないため、判定アナログ信号Vjud1は、アナログ用閾値範囲外なる。このため、制御部52は、このような場合には異常が発生していると判定する。
【0032】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態の変形例について説明する。上記第2実施形態において、
図4に示されるように、電位固定部は、比較抵抗部41と直列に接続されたグランド部45であってもよい。この場合、グランド部45は、調整抵抗体46を介して比較抵抗部41の第2比較抵抗体41bと直列に接続される。
【0033】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、冗長回路部40の構成を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0034】
本実施形態の磁気平衡式電流センサは、
図5に示されるように、冗長回路部40には、比較抵抗部41および差動アンプ42に加え、差動アンプ47および差動アンプ48が備えられている。
【0035】
差動アンプ47は、フィードバックコイル31の両端と接続されている。そして、差動アンプ47は、フィードバックコイル31の両端の電位差を差動増幅し、アナログ信号であるコイル信号Vcaを出力する。なお、差動アンプ47の出力端子は、判定部50の後述する差動アンプ53と接続される。
【0036】
差動アンプ48は、第1比較抵抗体41aの両端と接続されている。そして、差動アンプ48は、第1比較抵抗体41aの両端の電位差を差動増幅し、アナログ信号であるコイル比較信号Vcbを出力する。なお、差動アンプ48の出力端子は、判定部50の後述する差動アンプ53と接続される。
【0037】
判定部50は、差動アンプ51および制御部52に加え、差動アンプ53も備えている。差動アンプ53は、一方の入力端子にコイル信号Vcaが入力され、他方の入力端子にコイル比較信号Vcbが入力されるように差動アンプ47、48と接続されている。そして、差動アンプ53は、コイル信号Vcaとコイル比較信号Vcbとを差動増幅して判定アナログ信号Vjud2を出力する。
【0038】
制御部52は、差動アンプ53とも接続されており、記憶部に、アナログ用閾値範囲に加え、コイル用閾値範囲も記憶されている。そして、制御部52は、判定アナログ信号Vjud2がコイル用閾値範囲内にある場合にフィードバックコイル31が正常であると判定し、判定アナログ信号Vjud2がコイル用閾値範囲外にある場合にフィードバックコイル31が異常であると判定する。
【0039】
以上説明した本実施形態によれば、磁気平衡式電流センサが冗長回路部40を備えているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0040】
(1)本実施形態では、冗長回路部40に、差動アンプ47および差動アンプ48も備えられている。このため、フィードバックコイル31が正常であるか否かの判定を行うこともできる。
【0041】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、デジタル信号で異常判定を行うようにしたものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0042】
本実施形態の磁気平衡式電流センサは、
図6に示されるように、メイン出力部30にアナログ補正回路部34が配置されている。アナログ補正回路部34は、差動アンプ33の出力端子と接続されており、メインアナログ信号Voutに対して所定のアナログ補正処理を行う。本実施形態の磁気平衡式電流センサは、特に図示しないが、被検出体の温度を検出する温度センサを備えている。そして、アナログ補正回路部34は、温度センサの検出結果に基づき、メインアナログ信号Voutに対して温度補正等の補正を行う。
【0043】
また、本実施形態の磁気平衡式電流センサは、メイン出力部30および冗長回路部40と判定部50との間に、事前処理部60が備えられている。事前処理部60は、第1サンプルホールド(以下では、第1S/Hともいう)回路部61、第2サンプルホールド(以下では、第2S/H)回路部62、AD変換回路部63、デジタル補正回路部64等を有している。
【0044】
第1S/H回路部61は、メイン出力部30と接続されており、所定期間毎にメインアナログ信号Voutを一定期間保持する。第2S/H回路部62は、冗長回路部40と接続されており、所定期間毎に比較アナログ信号Vcomを一定期間保持する。
【0045】
ここで、冗長回路部40は、上記のようにフィードバックコイル31およびシャント抵抗体32に対応する比較抵抗部41を備えている。このため、メインアナログ信号Voutおよび比較アナログ信号Vcomは、位相を一致させるように特別な回路設計等をしない場合、
図7に示されるように、周期が等しく、位相差が発生した状態となる。したがって、本実施形態の第1S/H回路部61および第2S/H回路部62は、第1S/H回路部61でサンプリングされるメインアナログ信号Voutの波形の箇所と、第2S/H回路部62でサンプリングされる比較アナログ信号Vcomの波形の箇所とが同じとなるように、サンプリング期間が設定されている。
【0046】
すなわち、第1S/H回路部61は、メインアナログ信号Voutの波形における所定箇所の値を定期的に保持するように構成されている。第2S/H回路部62は、比較アナログ信号Vcomの波形において、メインアナログ信号Voutの所定箇所に対応する箇所の値を定期的に保持するように構成されている。詳しくは、第2S/H回路部62は、比較アナログ信号Vcomに対し、第1S/H回路部61がメインアナログ信号Voutをサンプリングする時点から位相差に基づく時間差だけ経過した時点の値を定期的にサンプリングするように構成されている。これにより、本実施形態では、第1S/H回路部61でサンプリングされるメインアナログ信号Voutの波形の箇所と、第2S/H回路部62でサンプリングされる比較アナログ信号Vcomの波形の箇所とは、メイン出力部30および冗長回路部40に異常が発生していない場合には同じとなる。
【0047】
AD変換回路部63は、所定の変換周期で順次連続してAD変換するものであり、例えば、グランドと所定電圧との間の電圧を量子化可能に構成されている。そして、AD変換回路部63は、第1S/H回路部61に接続されており、第1S/H回路部61に保持されているメインアナログ信号VoutをAD変換してメインデジタル信号Vdoutを出力する。また、AD変換回路部63は、第2S/H回路部62に接続されており、第2S/H回路部62に保持されている比較アナログ信号VcomをAD変換して比較デジタル信号Vdcomを出力する。本実施形態では、メインデジタル信号Vdoutがメイン信号に相当し、比較デジタル信号Vdcomが比較信号に相当している。
【0048】
この場合、AD変換回路部63は、アナログ信号をデジタル信号に変換する際に所定の処理時間を要する。このため、第1S/H回路部61および第2S/H回路部62が備えられていない場合には、AD変換回路部63でメインデジタル信号Vdoutおよび比較デジタル信号Vdcomを生成する際にタイミング誤差が発生する。すなわち、AD変換回路部63は、第1S/H回路部61および第2S/H回路部62が備えられていない場合、メインアナログ信号Voutの波形と比較アナログ信号Vcomの波形とにおいて、異なる箇所のアナログ信号をデジタル信号に変換する可能性が高くなる。このため、後述する判定精度が低下する可能性がある。
【0049】
これに対し、本実施形態では、第1S/H回路部61および第2S/H回路部62を備えており、上記のようにサンプリング期間が調整されている。このため、AD変換回路部63は、
図7に示されるように、メインアナログ信号Voutの波形と比較アナログ信号Vcomの波形とにおいて、同じ箇所のアナログ信号をデジタル信号に変換できる。
【0050】
なお、AD変換回路部63がAD変換する変換周期は、第1S/H回路部61でのメインアナログ信号Voutの保持期間、および第2S/H回路部62での比較アナログ信号Vcomの保持期間に基づいて設定される。本実施形態では、AD変換回路部63は、
図7に示されるように、第1S/H回路部61および第2S/H回路部62での各保持期間に1回AD変換するように、時点T11~時点T18、時点T21~時点T28で順にAD変化する。
【0051】
デジタル補正回路部64は、AD変換回路部63と接続されており、比較デジタル信号Vdcomに対し、アナログ補正回路部34の補正に対応する補正をデジタルで行う。すなわち、本実施形態では、デジタル補正回路部64は、図示しない温度センサと接続されており、温度センサの検出結果に基づき、比較デジタル信号Vdcomに対して温度補正等の補正をデジタルで行う。
【0052】
判定部50は、制御部52を有する構成とされ、差動アンプ51は備えられていない。制御部52は、記憶部に、アナログ用閾値範囲の代わりにデジタル用閾値範囲が記憶されている。制御部52は、メインデジタル信号Vdoutと、比較デジタル信号Vdcomとを比較する。そして、制御部52は、メインデジタル信号Vdoutと比較デジタル信号Vdcomとの差が所定のデジタル用閾値範囲内の場合に正常と判定し、所定のデジタル用閾値範囲外である場合に異常と判定する。
【0053】
以上説明した本実施形態によれば、磁気平衡式電流センサが冗長回路部40を備えているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
(1)本実施形態のように、メインアナログ信号Voutをメインデジタル信号Vdoutに変換し、比較アナログ信号Vcomを比較デジタル信号Vdcomに変換して異常判定を行うこともできる。
【0055】
(2)本実施形態では、第1S/H回路部61および第2S/H回路部62にて、メインアナログ信号Voutおよび比較アナログ信号Vcomの波形における同じ個所をサンプリングするようにしている。このため、AD変換回路部63で変換されるメインデジタル信号Vdoutおよび比較デジタル信号Vdcomを比較することにより、容易に異常判定を実行できる。
【0056】
(3)本実施形態では、外部回路部100に出力するメインアナログ信号Voutに対してアナログ補正回路部34で所定の補正を行っている。そして、異常判定に用いる比較アナログ信号Vcomに対しては、比較デジタル信号Vdcomに変換した後に、デジタル補正回路部64で所定の補正を行っている。このため、比較アナログ信号Vcomに対してアナログ的に補正を行う場合と比較して、デジタル的に補正を行う場合の方が回路構成を簡略化し易いため、回路構成が大型化することを抑制できる。
【0057】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0058】
上記各実施形態において、センサ部10の構成は、適宜変更可能であり、例えば、磁気抵抗素子がハーフブリッジ回路を構成するように配置されていてもよい。
【0059】
上記第1~第3実施形態では、比較抵抗部41がフィードバックコイル31およびシャント抵抗体32に対応した抵抗値とされている例について説明した。しかしながら、比較抵抗部41は、フィードバックコイル31およびシャント抵抗体32に対応した抵抗値ではなく、所定の抵抗値とされていてもよい。このような場合には、アナログ用閾値範囲を適宜変更して判定を行うようにすればよい。同様に、上記第4実施形態においても、比較抵抗部41は、フィードバックコイル31およびシャント抵抗体32に対応した抵抗値ではなく、所定の抵抗値とされていてもよい。
【0060】
上記第4実施形態において、アナログ補正回路部34およびデジタル補正回路部64は備えられていなくてもよい。また、上記第4実施形態において、第1S/H回路部61および第2S/H回路部62は備えられていなくてもよい。なお、第1S/H回路部61および第2S/H回路部62が備えられていない場合には、サンプリングするタイミング(すなわち、サンプリングされる波形の位置)に応じてデジタル用閾値範囲を設定すればよい。
【0061】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 センサ部
20 制御回路部
31 フィードバックコイル(電磁石)
32 シャント抵抗体
42 比較抵抗部
41b 比較抵抗体
50 判定部