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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20240110BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240110BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240110BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240110BHJP
   B60L 58/20 20190101ALI20240110BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20240110BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H02J7/34 B
H02J7/00 P
H02J7/00 S
H01M10/44 P
H01M10/48 P
B60L58/20
B60L3/00 H
B60L1/00 L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020180040
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070775
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2022-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】森田 哲生
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-26215(JP,A)
【文献】特開2017-127112(JP,A)
【文献】特開2016-187236(JP,A)
【文献】特開2018-182864(JP,A)
【文献】特開2016-22774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/34
H02J 7/00
H01M 10/44
H01M 10/48
B60L 58/20
B60L 3/00
B60L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源(10,12)から第1通電経路(LA1)を介して電気負荷(34,36)に電力を供給する第1系統(ES1)と、
第2電源(16)から第2通電経路(LA2)を介して前記電気負荷に電力を供給する第2系統(ES2)と、
前記第1通電経路と前記第2通電経路とを接続する接続経路(LB)に設けられた系統間スイッチ(SW1)と、を有する電源システム(100)であって、
前記第1電源は、前記電気負荷の駆動を可能にする電源電圧を出力し、
前記第2電源は、前記第1電源の電源電圧により充電可能な蓄電池(16)を含み、
前記第2通電経路における前記接続経路との接続点(PB)と前記第2電源との間に、互いに並列に第1経路(LC1)及び第2経路(LC2)が設けられており、
前記系統間スイッチを閉鎖した第1状態と、開放した第2状態とを切り替える切替制御部(40)と、
前記第1経路に設けられ、前記第1状態において前記第1電源からの電力供給により当該第1電源の電源電圧よりも高い電圧に前記蓄電池を充電する充電部(26)と、
前記第2経路に設けられ、前記第2系統での前記蓄電池の放電を規制する放電規制部(24)と、
前記放電規制部で異常が発生したことを判定する異常判定部(40)と、
前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合に前記第2電源の使用を制限する使用制限部(40)と、を備える電源システム。
【請求項2】
前記充電部は、前記第1電源の電源電圧を昇圧する昇圧動作を実施するものであり、
前記異常判定部は、前記充電部の昇圧動作中において、前記第2電源側における前記第1経路及び前記第2経路の分岐点(PC)の電圧と前記接続点の電圧との間の電圧差を取得し、その電圧差に基づいて前記放電規制部の異常を判定する請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記放電規制部は、前記第2経路を開放又は閉鎖する電池用スイッチ(SW2,SW3,SW8,SW9)を含み、
前記切替制御部は、前記電池用スイッチの開閉を制御し、
前記異常判定部は、前記充電部の昇圧動作中において、前記電池用スイッチを開放制御した状態で前記電圧差が所定の第1閾値よりも小さい場合に、又は前記電池用スイッチを閉鎖制御した状態で前記電圧差が所定の第2閾値よりも大きい場合に、前記放電規制部で異常が生じていると判定する請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記放電規制部は、前記第2経路において前記接続点から前記蓄電池への電流の流れを規制し、かつ前記蓄電池の電圧と前記電源電圧との間に所定の基準電圧差を生じさせる整流素子(DA4~DA6)を含み、
前記充電部の昇圧量を、前記基準電圧差に対応する対応値よりも大きい値まで調整可能な昇圧制御部(40)を備え、
前記異常判定部は、前記昇圧量が前記対応値よりも小さい状態で前記整流素子に電流が流れた場合に、又は前記昇圧量が前記対応値よりも大きい状態で前記整流素子に電流が流れない場合に、前記放電規制部で異常が生じていると判定する請求項1に記載の電源システム。
【請求項5】
前記異常判定部は、前記昇圧量のバラツキの程度を示すバラツキ情報を取得し、このバラツキ情報に応じて前記対応値を変化させる請求項4に記載の電源システム。
【請求項6】
前記第2通電経路において、前記第2電源側における前記第1経路及び前記第2経路の分岐点(PC)と前記第2電源との間に設けられた系統内スイッチ(SW4)を備え、
前記異常判定部は、前記系統内スイッチを開放した状態で前記放電規制部の異常を判定する請求項1から5までのいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項7】
前記切替制御部は、前記系統内スイッチの開閉を制御し、
前記異常判定部は、前記切替制御部が前記系統内スイッチを開放した状態から閉鎖した状態に切り替えた場合における前記分岐点の電圧の変化の有無に基づいて前記系統内スイッチで異常が発生したことを判定する請求項6に記載の電源システム。
【請求項8】
車両に搭載された電源システムであって、
前記電気負荷は、前記車両において運転に必要な少なくとも1つの機能を実施する負荷であって、かつ前記車両の運転支援機能を実施する負荷であり、
前記車両は、前記運転支援機能を用いる第1モードによる走行と、前記運転支援機能を用いない第2モードによる走行が可能であり、
前記異常判定部により、前記放電規制部で異常が発生していないと判定されたことを条件に、前記車両の走行モードを前記第2モードから前記第1モードに切り替えることを許可するモード制御部(40)を備える請求項1から7までのいずれか一項に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば車両に適用され、この車両の各種装置に電力を供給する電源システムが知られている。この電源システムでは、車両の運転時に、例えば電動ブレーキ装置や電動ステアリング装置など、車両の運転に必要な機能を実施する電気負荷に電力を供給する系統で異常が発生し、これによりその機能が失われてしまうと、車両の運転を継続することができない。車両の運転中における異常発生時でも、その機能が失われないようにするために、電気負荷に電力を供給する電源として第1電源及び第2電源を有する装置が知られている。
【0003】
この装置に適用される電源システムとして、例えば特許文献1では、1つの機能を実施する電気負荷として第1負荷及び第2負荷を有し、第1負荷に接続された第1電源を含む第1系統と、第2負荷に接続された第2電源を含む第2系統と、を有するものが知られている。この電源システムでは、各系統を接続する接続経路に系統間スイッチが設けられており、系統間スイッチは、コントローラにより一方の系統で異常が発生したと判定された場合に開放される。これにより、異常が発生していない他方の系統の電気負荷により車両の運転に必要な機能を確保し、車両の運転を継続することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-62727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記電源システムにおいて、第2系統の第2電源を蓄電池とする構成が考えられる。かかる構成において、第1電源からの電力供給により第2電源の蓄電池を充電しておけば、第1系統で電源異常が生じても、第2電源の電力を用いて負荷の駆動が可能となる。この場合、第2電源の蓄電池を所望の通りに用いるには、蓄電池の充電と放電とを適正に行うことが望ましく、技術的な改善の余地があると考えられる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電気負荷への電力供給を適正に実施しつつ、蓄電池の充電と放電とを適正に行うことができる電源システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の手段は、第1電源から第1通電経路を介して電気負荷に電力を供給する第1系統と、第2電源から第2通電経路を介して前記電気負荷に電力を供給する第2系統と、前記第1通電経路と前記第2通電経路とを接続する接続経路に設けられた系統間スイッチと、を有する電源システムであって、前記第1電源は、前記電気負荷の駆動を可能にする電源電圧を出力し、前記第2電源は、前記第1電源の電源電圧により充電可能な蓄電池を含み、前記第2通電経路における前記接続経路との接続点と前記第2電源との間に、互いに並列に第1経路及び第2経路が設けられており、前記系統間スイッチを閉鎖した第1状態と、開放した第2状態とを切り替える切替制御部と、前記第1経路に設けられ、前記第1状態において前記第1電源からの電力供給により当該第1電源の電源電圧よりも高い電圧に前記蓄電池を充電する充電部と、前記第2経路に設けられ、前記第2系統での前記蓄電池の放電を規制する放電規制部と、前記放電規制部で異常が発生したことを判定する異常判定部と、前記異常判定部により異常が発生したと判定された場合に前記充電部による前記第2電源の使用を制限する使用制限部と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、第1電源から第1通電経路を介して電気負荷に電力を供給する第1系統と、第2電源から第2通電経路を介して電気負荷に電力を供給する第2系統とが設けられている。そのため、電気負荷に対して、第1電源及び第2電源による冗長的な電力供給が可能となる。また、第1,第2通電経路を互いに接続する接続経路に系統間スイッチが設けられている。そのため、いずれか一方の系統で異常が発生したと判定された場合には、系統間スイッチを開放した第2状態とすることで、異常が発生していない他方の系統の電源からの電力供給により電気負荷の作動を継続することが可能となっている。
【0009】
ここで、第1電源からの電力供給により第2電源の蓄電池を第1電源の電源電圧よりも高い電圧に充電しておけば、例えば低温状態や高負荷状態において電気負荷で必要とされる電圧が高くなった場合でも蓄電池からの電力供給により電気負荷を適正に作動させることができる。この場合、蓄電池を電源電圧よりも高い電圧で充電するとともに、蓄電池からの不要な放電を規制することが望ましい。そこで、第2通電経路における接続経路との接続点と第2電源との間に、第1経路及び第2経路を互いに並列に設け、第1経路において、充電部により、系統間スイッチを閉鎖した第1状態において、第1電源からの電力供給により第1電源の電源電圧よりも高い電圧で蓄電池を充電するとともに、第2経路において、放電規制部により、蓄電池からの不要な放電を規制することとしている。ここで、放電規制部に異常が発生していると、蓄電池の充電時において、放電により蓄電池の電圧が十分に上昇しないにも関わらず蓄電池への電力供給が継続されて電源システムの電力消費が増大するなど、蓄電池の充電と放電とを適正に行うことができないことが懸念される。
【0010】
この点、上記構成では、放電規制部で異常が発生したことを判定し、異常が発生したと判定された場合に第2電源の使用を制限するようにした。これにより、放電規制部の異常発生時において、蓄電池への電力供給等が抑制され、蓄電池の充電と放電とを適正に行うことができる。
【0011】
第2の手段では、前記充電部は、前記第1電源の電源電圧を昇圧する昇圧動作を実施するものであり、前記異常判定部は、前記充電部の昇圧動作中において、前記第2電源側における前記第1経路及び前記第2経路の分岐点の電圧と前記接続点の電圧との間の電圧差を取得し、その電圧差に基づいて前記放電規制部の異常を判定する。
【0012】
放電規制部の異常を判定するために、第2通電経路における分岐点の電圧と接続点の電圧と間に所定の電圧差を生じさせるとよい。上記構成では、充電部の昇圧動作により当該電圧差を生じさせ、その電圧差に基づいて放電規制部で異常が発生したことを判定するようにした。充電部を適正に制御することで、第2通電経路において分岐点の電圧と接続点の電圧と間に電圧差を生じさせる他の構成を用いることなく放電規制部の異常を判定することができ、電源システムの構成を簡略化することができる。
【0013】
第3の手段では、前記放電規制部は、前記第2経路を開放又は閉鎖する電池用スイッチを含み、前記切替制御部は、前記電池用スイッチの開閉を制御し、前記異常判定部は、前記充電部の昇圧動作中において、前記電池用スイッチを開放制御した状態で前記電圧差が所定の第1閾値よりも小さい場合に、又は前記電池用スイッチを閉鎖制御した状態で前記電圧差が所定の第2閾値よりも大きい場合に、前記放電規制部で異常が生じていると判定する。
【0014】
上記構成では、放電規制部としての電池用スイッチを設け、電池用スイッチを開放制御した状態で電圧差が所定の第1閾値よりも小さい場合に、又は電池用スイッチを閉鎖制御した状態で電圧差が所定の第2閾値よりも大きい場合に、放電規制部で異常が生じていると判定するようにした。これにより、電池用スイッチが閉鎖したままとなる閉鎖異常や、電池用スイッチが開放したままとなる開放異常を判定することができる。
【0015】
第4の手段では、前記放電規制部は、前記第2経路において前記接続点から前記蓄電池への電流の流れを規制し、かつ前記蓄電池の電圧と前記電源電圧との間に所定の基準電圧差を生じさせる整流素子を含み、前記充電部の昇圧量を、前記基準電圧差に対応する対応値よりも大きい値まで調整可能な昇圧制御部を備え、前記異常判定部は、前記昇圧量が前記基準電圧差に対応する対応値よりも小さい状態で前記整流素子に電流が流れた場合に、又は前記昇圧量が前記対応値よりも大きい状態で前記整流素子に電流が流れない場合に、前記放電規制部で異常が生じていると判定する。
【0016】
上記構成では、放電規制部としての整流素子を設け、その整流素子により、第2経路において接続点から蓄電池への電流の流れを規制し、かつ蓄電池の電圧と電源電圧とに所定の基準電圧差を生じさせる。そして、充電部の昇圧量を、基準電圧差に対応する対応値よりも大きい値まで調整可能としておき、この昇圧量が、基準電圧差に対応する対応値よりも小さい状態で整流素子に電流が流れた場合に、又は対応値よりも大きい状態で整流素子に電流が流れない場合に、放電規制部で異常が生じていると判定するようにした。これにより、整流素子に基準電圧差の変動を伴う異常が発生したことを判定することができる。
【0017】
第5の手段では、前記異常判定部は、前記昇圧量のバラツキの程度を示すバラツキ情報を取得し、このバラツキ情報に応じて前記対応値を変化させる。
【0018】
例えば充電部の昇圧量の最適値が蓄電池の温度に依存して変化する場合、蓄電池の温度特性により昇圧量にバラツキが生じる。その点、上記構成では、昇圧量のバラツキの程度を示すバラツキ情報を取得し、このバラツキ情報に応じて対応値を変化させるようにした。これにより、昇圧量のバラツキの程度に応じた対応値を用いて、放電規制部の異常を適正に判定することができる。
【0019】
第6の手段では、前記第2通電経路において、前記第2電源側における前記第1経路及び前記第2経路の分岐点(PC)と前記第2電源との間に設けられた系統内スイッチを備え、前記異常判定部は、前記系統内スイッチを開放した状態で前記放電規制部の異常を判定する。
【0020】
放電規制部の異常を判定する場合において、例えば蓄電池の電圧が昇圧部による昇圧後の電圧と異なると、蓄電池の電圧の影響により放電規制部の異常を適正に判定することができない。この点、上記構成では、第2通電経路における分岐点と第2電源との間に設けられた系統内スイッチを開放した状態で放電規制部の異常を判定するため、蓄電池の電圧の影響を抑制して、放電規制部の異常を適正に判定することができる。
【0021】
第7の手段では、前記切替制御部は、前記系統内スイッチの開閉を制御し、前記異常判定部は、前記切替制御部が前記系統内スイッチを開放した状態から閉鎖した状態に切り替えた場合における前記分岐点の電圧の変化の有無に基づいて前記系統内スイッチで異常が発生したことを判定する。
【0022】
系統内スイッチの一端側と他端側とには、各々別の電源が接続されており、それら電源に起因して系統内スイッチの両端に印加される電圧が相違する場合には、系統内スイッチを開放した状態から閉鎖した状態に切り替えると、分岐点の電圧が変化する。一方、系統内スイッチに閉鎖異常や開放異常が発生している場合には、分岐点の電圧が変化しない。上記構成では、系統内スイッチを開放した状態から閉鎖した状態に切り替えた場合における分岐点の電圧の変化の有無に基づいて系統内スイッチで異常が発生したことを判定するようにした。そのため、系統内スイッチの閉鎖異常や開放異常を判定することができる。
【0023】
第8の手段では、車両に搭載された電源システムであって、前記電気負荷は、前記車両において運転に必要な少なくとも1つの機能を実施する負荷であって、かつ前記車両の運転支援機能を実施する負荷であり、前記車両は、前記運転支援機能を用いる第1モードによる走行と、前記運転支援機能を用いない第2モードによる走行が可能であり、前記異常判定部により、前記放電規制部で異常が発生していないと判定されたことを条件に、前記車両の走行モードを前記第2モードから前記第1モードに切り替えることを許可するモード制御部を備える。
【0024】
運転に必要な機能であって、かつ運転支援機能を実施する電気負荷を有する車両に適用される電源システムにおいて、運転支援機能を用いる第1モードによる走行と、運転支援機能を用いない第2モードによる走行とを切り替え可能なものがある。ここで、上記構成では、放電規制部で異常が発生していないと判定されたことを条件に、車両の走行モードを第2モードから第1モードに切り替えることを許可するようにした。つまり、第1モードへの切り替えの事前に、放電規制部の異常を判定するようにした。そのため、第1モードへの切り替え後において仮に低温環境下となったとしても、蓄電池からの電力供給により電気負荷への電力供給を適正に実施することができる。これにより、第1モードによる走行の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態の電源システムの全体構成図。
図2】第1実施形態の制御処理の手順を示すフローチャート。
図3】第1実施形態の異常判定処理の手順を示すフローチャート。
図4】第1実施形態の異常判定処理の一例を示すタイムチャート。
図5】第1実施形態の異常判定処理の一例を示すタイムチャート。
図6】第2実施形態の電源システムの全体構成図。
図7】第2実施形態の制御処理の手順を示すフローチャート。
図8】第2実施形態の異常判定処理の手順を示すフローチャート。
図9】第2実施形態の異常判定処理の一例を示すタイムチャート。
図10】第2実施形態の電源システムの全体構成図。
図11】第3実施形態の制御処理の手順を示すフローチャート。
図12】第3実施形態の異常判定処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る電源システムを車載の電源システム100として具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1に示すように、電源システム100は、一般負荷30及び特定負荷32に電力を供給するシステムである。電源システム100は、高圧蓄電池10と、第1DCDCコンバータ(以下、第1コンバータ)12と、第1蓄電池14と、第2蓄電池16と、スイッチ部20と、第2DCDCコンバータ(以下、第2コンバータ)26と、切替制御部としての制御装置40と、を備えている。
【0028】
高圧蓄電池10は、第1蓄電池14及び第2蓄電池16よりも高い定格電圧(例えば数百V)を有しており、例えばリチウムイオン蓄電池である。第1コンバータ12は、高圧蓄電池10から供給される電力を電源電圧VAの電力に変換して、一般負荷30及び特定負荷32に供給する電圧生成部である。本実施形態では、電源電圧VAは、一般負荷30及び特定負荷32の駆動を可能にする電圧である。
【0029】
一般負荷30は、移動体としての車両において運転制御に用いられない電気負荷(以下、単に負荷)であり、例えばエアコン、オーディオ装置、パワーウィンドウ等である。
【0030】
一方、特定負荷32は、車両の運転制御に用いられる少なくとも1つの機能を実施する負荷であり、例えば車両の操舵を制御する電動パワーステアリング装置50、車輪に制動力を付与する電動ブレーキ装置51、車両周囲の状況を監視する走行制御装置52等である。なお、本実施形態において、特定負荷32が「電気負荷」に相当する。
【0031】
そのため、これらの特定負荷32に異常が発生し、その機能の全てが失われると、運転制御を行うことができない。そのため、特定負荷32では、異常が発生した場合でもその機能の全てが失われないようにするため、機能毎に冗長に設けられた第1負荷34と第2負荷36とを有している。具体的には、電動パワーステアリング装置50は、第1ステアリングモータ50Aと第2ステアリングモータ50Bとを有している。電動ブレーキ装置51は、第1ブレーキ装置51Aと第2ブレーキ装置51Bとを有している。走行制御装置52は、カメラ52Aとレーザレーダ52Bとを有している。第1ステアリングモータ50Aと第1ブレーキ装置51Aとカメラ52Aとが、第1負荷34に相当し、第2ステアリングモータ50Bと第2ブレーキ装置51Bとレーザレーダ52Bとが、第2負荷36に相当する。
【0032】
第1負荷34と第2負荷36とは、併せて1つの機能を実現するものであるが、それぞれ単独でもその機能の一部を実現可能なものである。例えば電動パワーステアリング装置50では、第1ステアリングモータ50Aと第2ステアリングモータ50Bとにより車両の自由な操舵が可能であり、操舵速度や操舵範囲等に一定の制限がある中で、各ステアリングモータ50A,50Bにより車両の操舵が可能である。
【0033】
各特定負荷32は、手動運転において、ドライバによる制御を支援する機能を実現する。また、各特定負荷32は、車両の走行や停止などの挙動を自動で制御する自動運転において、自動運転に必要な機能を実現する。そのため、特定負荷32は、車両の運転に必要な少なくとも1つの機能を実施する負荷ともいうことができる。
【0034】
第1負荷34は、第1通電経路LA1を介して第1コンバータ12に接続されており、この第1通電経路LA1に第1蓄電池14及び一般負荷30が接続されている。第1蓄電池14は、例えば鉛蓄電池であり、第1コンバータ12の電源電圧VAにより充電可能に構成されている。本実施形態では、第1通電経路LA1により接続された第1コンバータ12、第1蓄電池14、一般負荷30及び第1負荷34により、第1系統ES1が構成されている。なお、本実施形態において、高圧蓄電池10及び第1コンバータ12が「第1電源」に相当する。
【0035】
また、第2負荷36は、第2通電経路LA2を介して第2蓄電池16に接続されている。第2蓄電池16は、例えばリチウムイオン蓄電池である。本実施形態では、第2通電経路LA2により接続された第2蓄電池16及び第2負荷36により、第2系統ES2が構成されている。なお、本実施形態において、第2蓄電池16が「第2電源、蓄電池」に相当する。
【0036】
スイッチ部20は、各系統を互いに接続する接続経路LBに設けられている。接続経路LBの一端は、接続点PAにおいて第1通電経路LA1に接続されており、接続経路LBの他端は、接続点PBにおいて第2通電経路LA2と接続されている。スイッチ部20は、第1スイッチング素子(以下、単に第1スイッチ)SW1を備えている。本実施形態では、第1スイッチSW1として、NチャネルMOSFET(以下、単にMOSFET)が用いられている。なお、本実施形態において、第1スイッチSW1が「系統間スイッチ」に相当する。
【0037】
第1通電経路LA1には、第1電流検出部27が設けられており、接続経路LBには、第2電流検出部28が設けられている。第1電流検出部27は、第1通電経路LA1のうち接続点PAと第1負荷34との間の部分に設けられており、当該部分に流れる第1系統内電流IAの大きさ及び向きを検出する。第2電流検出部28は、接続経路LBのうちスイッチ部20よりも第1系統ES1側の部分に設けられており、当該部分に流れる系統間電流IBの大きさ及び向きを検出する。
【0038】
第2コンバータ26は、第2通電経路LA2に設けられている。詳細には、第2コンバータ26は、第2通電経路LA2において、接続経路LBとの接続点PBと第2蓄電池16との間に設けられており、第1コンバータ12からの電力供給により、電源電圧VAよりも高い電圧に電力変換して第2蓄電池16を充電する。つまり、第2コンバータ26は、電源電圧VAを昇圧する昇圧動作を実施するものであり、第2蓄電池16は、電源電圧VAにより充電可能な蓄電池である。なお、本実施形態において、第2コンバータ26が「充電部」に相当する。
【0039】
制御装置40は、第1,第2電流検出部27,28の検出値に基づいて、第1スイッチSW1を切替操作すべく、第1切替信号SC1を生成し、第1切替信号SC1による指令を第1スイッチSW1に出力する。第1切替信号SC1により、第1スイッチSW1を開放した状態と、第1スイッチSW1を閉鎖した状態とが切り替えられる。また、制御装置40は、第1,第2コンバータ12,26を動作制御すべく、第1,第2制御信号SD1,SD2を生成し、第1,第2制御信号SD1,SD2による指令を第1,第2コンバータ12,26に出力する。第1,第2制御信号SD1,SD2により、第1,第2コンバータ12,26の動作状態と動作停止状態とが切り替えられるとともに、第2コンバータ26の昇圧動作による第2蓄電池16の電圧と電源電圧VAとの電圧差、つまり第2コンバータ26の昇圧量BAが制御される。なお、本実施形態において、第1スイッチSW1を開放した状態が「第1状態」に相当し、第1スイッチSW1を閉鎖した状態が「第2状態」に相当する。
【0040】
また、制御装置40は、報知部44と、IGスイッチ45と、入力部46とに接続されており、これらを制御する。報知部44は、視覚的又は聴覚的にドライバに報知する装置であり、例えば車室内に設置されたディスプレイやスピーカである。IGスイッチ45は、車両の起動スイッチである。制御装置40は、IGスイッチ45の開放又は閉鎖を監視する。入力部46は、ドライバの操作を受け付ける装置であり、例えばハンドル、レバー、ボタン、ペダル、音声入力装置である。
【0041】
制御装置40は、上述した特定負荷32を用いて車両を手動運転及び自動運転する。制御装置40は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えている。CPUは、ROM内の演算プログラムや制御データを参照して、手動運転及び自動運転するための種々の機能を実現する。
【0042】
なお、手動運転とは、ドライバの操作によって車両を運転制御する状態を表す。また、自動運転とは、ドライバの操作によらず制御装置40による制御内容で車両を運転制御する状態を表す。具体的には、自動運転とは、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)によって定められたレベル0からレベル5までの自動運転レベルのうち、レベル3以上の自動運転のことをいう。レベル3は、制御装置40が、走行環境を観測しつつ、ハンドル操作と加減速との両方を制御するレベルである。
【0043】
また、制御装置40は、上述した特定負荷32を用いて、LKA(Lane Keeping Assist)、LCA(Lane Change Assist)、PCS(Pre-Crash Safety)等の運転支援機能を実施可能である。制御装置40は、車両の運転モードを、運転支援機能を用いる第1モードと、運転支援機能を用いない第2モードとに切り替え可能であり、車両は各運転モードによる走行が可能となっている。制御装置40は、入力部46を介したドライバの切替指示により、第1モードと第2モードとを切り替える。ここで、第1モードには、ドライバが運転支援機能を用いて車両を手動運転するモードとともに、車両を自動運転するモードが含まれる。第2モードは、ドライバが運転支援機能を用いずに車両を手動運転するモードである。
【0044】
第1モードにおいて、制御装置40は、第1系統ES1及び第2系統ES2に異常が発生したか否かを判定し、いずれの系統ES1,ES2でも異常が発生していないと判定された場合、第1負荷34と第2負荷36とを用いて車両の自動運転及び運転支援が行われる。これにより、第1,第2負荷34,36は協働して自動運転及び運転支援に必要な1つの機能を実施する。本実施形態において、異常は、地絡や断線等の電源失陥異常である。
【0045】
一方、いずれか一方の系統ES1,ES2で異常が発生したと判定された場合、第1スイッチSW1を開放し、第1系統ES1と第2系統ES2とを電気的に絶縁する。これにより、いずれか一方の系統ES1,ES2で異常が発生した場合でも、異常が発生していない他方の系統ES1,ES2の負荷34,36を駆動させることができる。
【0046】
ところで、第1コンバータ12からの電力供給により第2蓄電池16を電源電圧VAよりも高い電圧に充電しておけば、例えば低温状態や高負荷状態において第1,第2負荷34,36で必要とされる電圧が高くなった場合でも第2蓄電池16からの電力供給により第1,第2負荷34,36を適正に作動させることができる。この場合、第2蓄電池16を電源電圧VAよりも高い電圧で充電するとともに、第2蓄電池16からの不要な放電を規制することが望ましい。
【0047】
そこで、第2系統ES2では、第2通電経路LA2における接続経路LBとの接続点PBと第2蓄電池16との間に、第1経路LC1及び第2経路LC2を互いに並列に設けるようにした。第1経路LC1には、前述の第2コンバータ26が設けられており、第2コンバータ26により、第1スイッチSW1を閉鎖した状態で、第1コンバータ12からの電力供給により電源電圧VAよりも高い電圧で第2蓄電池16が充電される。本実施形態では、第2コンバータ26は、電源電圧VAを昇圧して第2蓄電池16を充電する昇圧回路のみを有する一方向の電力変換回路である。
【0048】
また、第2経路LC2には、放電規制部24が設けられている。放電規制部24は、第2系統ES2での第2蓄電池16の放電を規制するものであり、第2経路LC2を開放又は閉鎖する第2,第3スイッチング素子(以下、単に第2,第3スイッチ)SW2,SW3を備えている。本実施形態では、第2,第3スイッチSW2,SW3としてMOSFETが用いられている。制御装置40は、第2,第3スイッチSW2,SW3を切替操作すべく、第2,第3切替信号SC2,SC3を生成し、第2,第3切替信号SC2,SC3による指令を第2,第3スイッチSW2,SW3に出力する。なお、本実施形態において、第2,第3スイッチSW2,SW3が「電池用スイッチ」に相当する。
【0049】
第2スイッチSW2には、寄生ダイオードとして第2ダイオードDA2が並列接続されており、第3スイッチSW3には、寄生ダイオードとして第3ダイオードDA3が並列接続されている。本実施形態では、第2,第3ダイオードDA2,DA3の向きが等しくなるように、第2,第3スイッチSW2,SW3が直列接続されている。詳細には、各ダイオードDA2,DA3は、カソードを接続経路LB側、アノードを第2蓄電池16側となるように配置されている。各ダイオードDA2,DA3の順方向電圧降下量は、それぞれVFである。
【0050】
第2蓄電池16側における第1,第2経路LC1,LC2の分岐点PCと第2蓄電池16との間には、第4スイッチング素子(以下、単に第4スイッチ)SW4が設けられている。本実施形態では、第4スイッチSW4として、MOSFETが用いられている。制御装置40は、第4スイッチSW4を切替操作すべく、第4切替信号SC4を生成し、第4切替信号SC4による指令を第4スイッチSW4に出力する。なお、本実施形態において、第4スイッチSW4が「系統内スイッチ」に相当する。
【0051】
放電規制部24では、第2,第3切替信号SC2,SC3により第2,第3スイッチング素子SW2,SW3を開放した状態とすることで、第2蓄電池16からの不要な放電が規制される。また、第2,第3切替信号SC2,SC3により第2,第3スイッチング素子SW2,SW3を閉鎖した状態とすることで、第2蓄電池16から第1,第2負荷34,36へ放電することができる。
【0052】
しかし、例えば第2スイッチSW2が閉鎖したままとなる閉鎖異常が生じていると、第2コンバータ26による第2蓄電池16の充電時において、第2スイッチSW2及び第3ダイオードDA3を介した放電により第2蓄電池16の電圧が十分に上昇しないにも関わらず第2蓄電池16への電力供給が継続されて電源システム100の電力消費が増大するなど、第2蓄電池16の充電を適正に行うことができないことが懸念される。
【0053】
また、例えば第3スイッチSW3が開放したままとなる開放異常が生じていると、例えば低温状態や高負荷状態において、第2スイッチSW2及び第3ダイオードDA3を介して放電が行われるため、第3ダイオードDA3の順方向電圧降下量VFにより第2蓄電池16からの電力供給により第1,第2負荷34,36に印加される電圧が低下し、第1,第2負荷34,36を適正に作動させることができないなど、第2蓄電池16の放電を適正に行うことができないことが懸念される。
【0054】
本実施形態では、制御処理において、放電規制部24で異常が発生したことを判定し、異常が発生したと判定された場合に第2蓄電池16の使用を制限するようにした。具体的には、第2コンバータ26による第2蓄電池16の充電を制限し、第2蓄電池16の充放電を制限するようにした。これにより、放電規制部24の異常発生時において、第2蓄電池16への電力供給等が抑制され、第2蓄電池16の充電と放電とを適正に行うことができる。
【0055】
図2に、本実施形態の制御処理のフローチャートを示す。制御装置40は、IGスイッチ45が閉鎖されると、所定の制御周期毎に制御処理を繰り返し実施する。なお、IGスイッチ45の閉鎖当初において、車両の運転モードは第2モードに設定されている。また、第1スイッチSW1は閉鎖されており、第1コンバータ12が動作状態とされている。
【0056】
制御処理を開始すると、まずステップS10において、車両の運転モードが第2モードであるか否かを判定する。ステップS10で肯定判定すると、ステップS11において、第2蓄電池16の残存容量SAを算出し、ステップS12に進む。残存容量SAは、例えば第2蓄電池16の蓄電状態を示すSOC(State Of Charge)である。残存容量SAは、第2蓄電池16が通電状態(充電状態又は放電状態)である場合には、第2蓄電池16の充放電電流の時間積分値である電流積算値を用いて算出される。
【0057】
ステップS12では、ステップS11で算出した残存容量SAが、所定の容量閾値Sthよりも大きいか否かを判定する。ここで容量閾値Sthは、第2蓄電池16の電圧である電池電圧VBが電源電圧VAよりも所定値以上高い状態となる容量である。第2蓄電池16の残存容量SAが容量閾値Sthよりも小さい場合には、電池電圧VBが電源電圧VAよりも所定値以上高くなく、第1モード実施の前提条件が成立していないため、ステップS12で否定判定し、ステップS30に進む。
【0058】
また、第2蓄電池16の残存容量SAが容量閾値Sthよりも大きい場合には、電池電圧VBが電源電圧VAよりも所定値以上高く、第1モード実施の前提条件が成立しているため、ステップS12で肯定判定する。この場合、ステップS13において、第2コンバータ26を、第2蓄電池16の残存容量SAに応じて、動作状態(充電状態)と動作停止状態(充電停止状態)とに適宜切り替えるように制御する。続くステップS14では、車両の運転モードを第2モードから第1モードに切り替えることを許可し、制御処理を終了する。なお、第1モードへの切り替えは、例えば入力部46を介してドライバから運転支援機能を用いる指示、又は自動運転の指示等の切替指示が入力された場合に実施される。本実施形態において、ステップS14の処理が「モード制御部」に相当する。
【0059】
また、ステップS10で否定判定すると、ステップS15において、ドライバ報知中であるかを判定する。ここで、ドライバ報知は、第1系統ES1及び第2系統ES2のいずれか一方で異常が発生したことをドライバに知らせるとともに、ドライバに第1モードを中止する旨を知らせ、第2モードへの切り替えを促すものである。
【0060】
ステップS15で否定判定すると、ステップS20,S21において、第1系統ES1及び第2系統ES2のいずれか一方で異常が発生したことを判定する。具体的には、ステップS20において、第1系統ES1に異常が発生したか否かを判定する。ステップS20で否定判定すると、ステップS21において、第2系統ES2に異常が発生したか否かを判定する。
【0061】
なお、各系統ES1,ES2での異常の発生は、第1,第2電流検出部27,28で検出される各電流IA,IBの大きさにより判定することができる。例えば第1系統ES1で地絡が発生した場合、第1電流検出部27で検出される第1系統内電流IAの大きさは、地絡判定のための所定の地絡判定電流閾値Ith1以上となる。また例えば第2系統ES2で地絡が発生した場合、第2電流検出部28で検出される系統間電流IBの大きさは、地絡判定電流閾値Ith1以上となる。したがって、第1,第2電流検出部27,28で検出される各電流IA,IBの大きさにより、どちらの系統ES1,ES2で異常が発生したかを判定することができる。
【0062】
いずれの系統ES1,ES2でも異常が発生していないと判定された場合、ステップS21で否定判定する。この場合、制御処理を終了する。これにより、第1スイッチSW1が閉鎖された状態に維持され、第1コンバータ12及び第2蓄電池16による各系統ES1,ES2への電力供給が可能となる。
【0063】
また、いずれか一方の系統ES1,ES2で異常が発生したと判定された場合、異常が発生した系統側への電力供給を停止させるとともに、異常が発生していない系統の電気負荷への電力供給を継続させる処理を実施する。
【0064】
具体的には、ステップS20で肯定判定すると、まずステップS22において、第1スイッチSW1を開放する。続くステップS23において、第2,第3スイッチSW2,SW3を閉鎖し、第2経路LC2の放電規制を解除する。つまり、第1系統ES1で異常が発生したと判定された場合に、第1スイッチSW1を開放した後に第2,第3スイッチSW2,SW3を閉鎖する。その結果、第2経路LC2を介した第2蓄電池16から第2負荷36への電力供給が確保される。続くステップS24において、第1,第2コンバータ12,26を動作停止状態とする指令を出力し、ステップS27に進む。
【0065】
また、ステップS21で肯定判定すると、まずステップS25において、第1,第4スイッチSW1,SW4を開放する。その結果、第1系統ES1における第1コンバータ12から第1負荷34への電力供給が継続される。続くステップS26において、第2コンバータ26を動作停止状態とする指令を出力し、ステップS27に進む。
【0066】
ステップS27では、報知部44を介してドライバに第1モードを中止する旨を報知し、制御処理を終了する。
【0067】
また、ステップS15で肯定判定すると、ステップS16において、入力部46を介してドライバから第2モードへの切替指示が入力されたか否かを判定する。つまり、報知に応じたドライバの応答があったか否かを判定する。ステップS16で否定判定すると、制御処理を終了し、異常が発生していない系統側の負荷34,36を用いて、第1モードでの車両の走行が継続される。
【0068】
また、ステップS16で肯定判定すると、ステップS17において、車両の運転モードを第1モードから第2モードに切り替え、制御処理を終了する。
【0069】
一方、ステップS30では、第2蓄電池16の充電が開始されているか否かを判定する。具体的には、後述するステップS43において第2蓄電池16の充電が開始されたか否かを判定する。ステップS30で肯定判定すると、ステップS31,32に進み、ステップS30で否定判定すると、ステップS40に進む。
【0070】
ステップS31,32では、第1系統ES1及び第2系統ES2のいずれか一方で異常が発生したことを判定する。具体的には、ステップS31において、第1系統ES1に異常が発生したか否かを判定する。ステップS31で否定判定すると、ステップS32において、第2系統ES2に異常が発生したか否かを判定する。
【0071】
いずれの系統ES1,ES2でも異常が発生していないと判定された場合、ステップS32で否定判定する。この場合、制御処理を終了し、第2モードでの車両の走行及び第2蓄電池16の充電が継続される。
【0072】
また、いずれか一方の系統ES1,ES2で異常が発生したと判定された場合、続くステップS33~S38において、異常が発生した系統側への電力供給を停止させるとともに、異常が発生していない系統の電気負荷への電力供給を継続させる処理を実施する。なお、ステップS33~S38の処理は、ステップS22~S27の処理と同一の処理であるため、説明を省略する。
【0073】
ステップS40では、放電規制部24又は第4スイッチSW4で異常が発生したことを判定する異常判定を実施する。異常判定は、第2コンバータ26の動作状態、つまり第2コンバータ26の昇圧動作中に実施される。その異常判定処理を、図3のフローチャートにより説明する。なお、本実施形態において、ステップS50の処理が「異常判定部」に相当する。
【0074】
異常判定処理では、まずステップS50において、第2コンバータ26及び第2~第4スイッチSW2~SW4を初期設定し、ステップS51に進む。具体的には、第2コンバータ26を動作状態とする指令を出力し、第2~第4スイッチSW2~SW4を開放する。ステップS50では、第2コンバータ26の昇圧量BAが、第2,第3ダイオードDA2,DA3による電圧差(2VF)と等しくなるように設定される。
【0075】
ステップS51では、分岐点PCの電圧である分岐点電圧VCと、接続点PBに印加される電源電圧VAとの電圧差ΔVを取得し、この電圧差ΔVが所定の第1閾値Vth1よりも小さいか否かを判定する。第1閾値Vth1は、順方向電圧降下量VFよりも大きく、順方向電圧降下量VFの2倍よりも小さい電圧差に設定されている。
【0076】
図4に、第2,第3スイッチSW2,SW3を開放する指令を出力した場合の電圧差ΔVの変化を示す。図4に示すように、第2,第3スイッチSW2,SW3が正常である場合、第2コンバータ26の昇圧動作中の時刻t1に第2,第3切替信号SC2,SC3により第2,第3スイッチSW2,SW3を開放する指令を出力すると、電圧差ΔVが順方向電圧降下量VFの2倍となる(図4(B)の実線参照)。一方、第2,第3スイッチSW2,SW3の一方に閉鎖異常が生じている場合、電圧差ΔVが順方向電圧降下量VFとなり(図4(B)の破線参照)、第1閾値Vth1よりも小さくなるため、ステップS51で肯定判定する。この場合、ステップS52において、第2,第3スイッチSW2,SW3の一方に閉鎖異常が生じていると判定し、異常判定処理を終了する。
【0077】
また、ステップS51で否定判定すると、ステップS53において、第4スイッチSW4を閉鎖する。続くステップS54では、第4スイッチSW4の閉鎖前後における分岐点電圧VCの変化の有無を判定する。
【0078】
第1コンバータ12の電源電圧VAから生成される分岐点電圧VCと、第2蓄電池16の電池電圧VBとが相違する場合には、第4スイッチSW4を開放した状態から閉鎖した状態に切り替えると、電池電圧VBの影響により分岐点電圧VCが所定の規定電圧以上変化する。第4スイッチSW4に閉鎖異常又は開放異常が生じている場合、分岐点電圧VCが規定電圧以上変化しないため、ステップS54で否定判定する。この場合、ステップS55において、第4スイッチSW4に閉鎖異常又は開放異常が生じていると判定し、異常判定処理を終了する。
【0079】
つまり、ステップS54では、第4スイッチSW4を開放した状態から閉鎖した状態に切り替えた場合における分岐点電圧VCの変化の有無に基づいて、第4スイッチSW4で異常が発生したことを判定する。
【0080】
一方、第4スイッチSW4が正常であると、ステップS54で肯定判定し、ステップS56において、第2,第3スイッチSW2,SW3を閉鎖する。続くステップS57では、電圧差ΔVを取得し、この電圧差ΔVが所定の第2閾値Vth2よりも大きいか否かを判定する。第2閾値Vth2は、ゼロよりも大きく、順方向電圧降下量VFよりも小さい電圧差に設定されている。
【0081】
図5に、第2,第3スイッチSW2,SW3を閉鎖する指令を出力した場合の電圧差ΔVの変化を示す。図5に示すように、第2,第3スイッチSW2,SW3が正常である場合、第2コンバータ26の昇圧動作中の時刻t2に第2,第3切替信号SC2,SC3により第2,第3スイッチSW2,SW3を閉鎖する指令を出力すると、電圧差ΔVがゼロとなる(図5(B)の実線参照)。一方、第2,第3スイッチSW2,SW3の一方に開放異常が生じている場合、電圧差ΔVが順方向電圧降下量VFとなり(図5(B)の破線参照)、第2閾値Vth2よりも大きくなるため、ステップS57で肯定判定する。この場合、ステップS58において、第2,第3スイッチSW2,SW3の一方に開放異常が生じていると判定し、異常判定処理を終了する。
【0082】
つまり、ステップS51,S57では、第2コンバータ26の昇圧動作中において分岐点電圧VCと電源電圧VAとの電圧差ΔVを取得し、その電圧差ΔVに基づいて第2,第3スイッチSW2,SW3、すなわち放電規制部24の異常を判定する。
【0083】
また、ステップS57で否定判定すると、ステップS59において、第2~第4スイッチSW2~SW4の全てが正常であると判定し、異常判定処理を終了する。
【0084】
図2に戻り、ステップS41では、ステップS40での判定結果が、第2~第4スイッチSW2~SW4の少なくとも一つに異常が発生したとするものであるか否かを判定する。ステップS41で肯定判定すると、ステップS42において、第2コンバータ26による第2蓄電池16の充電を制限する。具体的には、第2コンバータ26を動作停止状態として、ステップS38に進む。これにより、報知部44を介してドライバに第1モードが使用できないことが報知される。なお、本実施形態において、ステップS42の処理が「使用制限部」に相当する。
【0085】
また、ステップS41で否定判定すると、ステップS43において、第2蓄電池16の充電を開始し、制御処理を終了する。具体的には、第2コンバータ26を動作状態とする指令を出力し、第2,第3スイッチSW2,SW3を開放するとともに第4スイッチSW4を閉鎖して、第2蓄電池16の充電を開始する。
【0086】
第2蓄電池16の充電が開始されることにより、ステップS12において、第2蓄電池16の残存容量SAが容量閾値Sthよりも大きくなり、ステップS14において、車両の運転モードが第2モードから第1モードに切り替えられる。そのため、ステップS14では、ステップS40で異常が発生していないと判定されたことを条件に、車両の運転モードが第2モードから第1モードに切り替えることを許可する、ということができる。
【0087】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0088】
・本実施形態では、第2系統ES2における接続経路LBとの接続点PBと第2蓄電池16との間に、第1経路LC1及び第2経路LC2が互いに並列に設けられている。第1経路LC1においては、第2コンバータ26により、第1コンバータ12からの電力供給により第1コンバータ12の電源電圧VAよりも高い電圧で第2蓄電池16が充電される。また、第2経路LC2では、放電規制部24により、第2系統ES2での第2蓄電池16の放電が規制されるようになっている。
【0089】
この場合、第2蓄電池16が電源電圧VAよりも高い電圧に充電されていることにより、仮に低温環境下であっても、第2蓄電池16からの電力供給により第1,第2負荷34,36を適正に作動させることができる。また、第2コンバータ26とは並列に放電規制部24が設けられているため、第2蓄電池16が電源電圧VAよりも高電圧になっていても、第2蓄電池16からの不要な放電が規制される。これにより、複数の電源系統を有する電源システム100において第1,第2負荷34,36への電力供給を適正に実施することができる。
【0090】
その上で、本実施形態では、これら第2コンバータ26及び放電規制部24のうち、放電規制部24で異常が発生したことを判定し、異常が発生したと判定された場合に第2蓄電池16の使用を制限するようにした。具体的には、第2コンバータ26による第2蓄電池16の充電を制限し、第2蓄電池16の充放電を制限するようにした。そのため、放電規制部24の異常発生時において、第2蓄電池16への電力供給等が抑制される。これにより、第2蓄電池16の無駄な充電や放電が抑制され、電源システム100の電力消費を抑制して蓄電池の充電と放電とを適正に行うことができる。
【0091】
・第2コンバータ26の異常を判定するためには、第2通電経路LA2における分岐点電圧VCと電源電圧VAと間に所定の電圧差ΔVを生じさせるとよい。本実施形態では、第2コンバータ26の昇圧動作により当該電圧差ΔVを生じさせ、その電圧差ΔVに基づいて放電規制部24で異常が発生したことを判定するようにした。第2コンバータ26を適正に制御することで、第2通電経路LA2において分岐点電圧VCと電源電圧VAと間に電圧差ΔVを生じさせる他の構成を用いることなく放電規制部24の異常を判定することができ、電源システム100の構成を簡略化することができる。
【0092】
・本実施形態では、放電規制部24として第2,第3スイッチSW2,SW3を設け、第2,第3スイッチSW2,SW3を開放制御した状態で電圧差ΔVが所定の第1閾値Vth1よりも小さい場合に、又は第2,第3スイッチSW2,SW3を閉鎖制御した状態で電圧差ΔVが所定の第2閾値Vth2よりも大きい場合に、放電規制部24で異常が生じていると判定するようにした。これにより、第2,第3スイッチSW2,SW3が閉鎖したままとなる閉鎖異常や、第2,第3スイッチSW2,SW3が開放したままとなる開放異常を判定することができる。
【0093】
・第4スイッチSW4の一端側と他端側とには、各々別の電源12,16が接続されており、それらの電源12,16に起因して第4スイッチSW4の両端に印加される電源電圧VAと分岐点電圧VCとが相違する場合には、第4スイッチSW4を開放した状態から閉鎖した状態に切り替えると、分岐点電圧VCが変化する。一方、第4スイッチSW4に開放異常や閉鎖異常が発生している場合には、分岐点電圧VCが変化しない。本実施形態では、第4スイッチSW4を開放した状態から閉鎖した状態に切り替えた場合における分岐点電圧VCの変化の有無に基づいて第4スイッチSW4で異常が発生したことを判定するようにした。そのため、第4スイッチSW4の閉鎖異常や開放異常を判定することができる。
【0094】
・運転に必要な機能であって、かつ運転支援機能を実施する電気負荷を有する車両に適用される電源システム100において、運転支援機能を用いる第1モードによる走行と、運転支援機能を用いない第2モードによる走行とを切り替え可能なものがある。ここで、本実施形態では、放電規制部24で異常が発生していないと判定されたことを条件に、車両の走行モードを第2モードから第1モードに切り替えることを許可するようにした。つまり、第1モードへの切り替えの事前に、放電規制部24の異常を判定するようにした。そのため、第1モードへの切り替え後において仮に低温環境下となったとしても、第2蓄電池16からの電力供給により第1,第2負荷34,36への電力供給を適正に実施することができる。これにより、第1モードによる走行の信頼性を向上させることができる。
【0095】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図6図9を参照しつつ説明する。
【0096】
本実施形態では、図6に示すように、放電規制部24が、互いに直列接続された第4~第6ダイオードDA4~DA6を備える点で、第1実施形態と異なる。各ダイオードDA4~DA6は、カソードを接続経路LBとの接続点PB側、アノードを第2蓄電池16側となるように配置されており、第2経路LC2において接続点PBから第2蓄電池16への電流の流れを規制する。
【0097】
また、各ダイオードDA4~DA6は、所定の順方向電圧降下量を有している。そのため、電池電圧VBと電源電圧VAとの間に、第4~第6ダイオードDA4~DA6の順方向電圧降下量の合計値による電圧差(以下、第4~第6ダイオードDA4~DA6による電圧差)を生じさせており、第4~第6ダイオードDA4~DA6の正常時において、この電圧差が所定の基準電圧差VKとなるように設定されている。なお、本実施形態において、第4~第6ダイオードDA4~DA6の直列接続体が「整流素子」に相当する。
【0098】
また、電源システム100は、第3電流検出部29と、温度センサ25と、を備える。第3電流検出部29は、第1経路LC1における第2コンバータ26の第2蓄電池16側、つまり第2コンバータ26の出力部側に設けられており、当該部分に流れる第2系統内電流ICの大きさ及び向きを検出する。温度センサ25は、第2蓄電池16の温度である電池温度TAを検出する。第3電流検出部29及び温度センサ25の検出値は、制御装置40に入力される。
【0099】
図7に本実施形態の制御処理のフローチャートを示す。本実施形態の制御処理では、ステップS23,S34の処理が存在しない点を除いて先の図2に示した処理と同一であり、説明を省略する。
【0100】
また、図8に本実施形態の異常判定処理のフローチャートを示す。本実施形態の異常判定処理では、まずステップS70において、温度センサ25を用いて電池温度TAを取得する。続くステップS71では、ステップS70で取得した電池温度TAに基づいて、昇圧量BAのバラツキの程度を示すバラツキ情報ΔBAを算出し、ステップS72に進む。
【0101】
本実施形態では、昇圧量BAの最適値が電池温度TAに依存して所定の基準値から変化しており、第2蓄電池16の温度特性により昇圧量BAにバラツキが生じている。制御装置40には、第2蓄電池16の温度特性とバラツキ情報ΔBAとの相関関係を示す情報が記憶されており、ステップS71では、この情報を用いてバラツキ情報ΔBAを算出により取得し、ステップS72に進む。
【0102】
ステップS72では、ステップS71で算出した昇圧量BAのバラツキ情報ΔBAに応じて適正範囲BH(図9参照)を設定し、ステップS73に進む。適正範囲BHは、基準電圧差VKに対応する昇圧量BAである基準昇圧量BKを中心として、その幅がバラツキ情報ΔBAに応じて変化するように設定される範囲である。なお、本実施形態において、適正範囲BHが「対応値」に相当する。
【0103】
ステップS73では、第2コンバータ26及び第4スイッチSW4を初期設定する。具体的には、第2コンバータ26を動作状態とする指令を出力し、第4スイッチSW4を開放する。続くステップS74では、昇圧量BAを調整し、ステップS75に進む。ステップS74では、昇圧量BAを適正範囲BHよりも大きい最大昇圧量BXまで調整しており、具体的には、昇圧量BAがゼロから最大昇圧量BXまで徐々に上昇するように昇圧量BAを調整する。なお、本実施形態において、ステップS74の処理が「昇圧制御部」に相当する。
【0104】
ステップS75では、第3電流検出部29に電流が流れたか、つまり第1,第2経路LC1,LC2により構成される環状経路に電流が流れたか否かを判定する。具体的には、第3電流検出部29で検出される第2系統内電流ICの大きさが、導通判定のための所定の導通判定電流閾値Ith2よりも大きいか否かを判定する。ステップS76で否定判定すると、ステップS76に進む。また、ステップS76で肯定判定すると、ステップS80に進む。
【0105】
ステップS76では、昇圧量BAが最大昇圧量BXに到達したか否かを判定する。ステップS76で否定判定すると、ステップS75に戻る。また、ステップS76で肯定判定すると、ステップS77において、第4~第6ダイオードDA4~DA6に昇圧量BAが最大昇圧量BXまで上昇しても第2経路LC2に電流が流れない絶縁異常が生じていると判定し、異常判定処理を終了する。
【0106】
ステップS80では、第3電流検出部29に電流が流れ始めた昇圧量BAが適正範囲BH内であるか否かを判定する。ステップS80で否定判定すると、ステップS81に進み、ステップS80で肯定判定すると、ステップS84に進む。
【0107】
ステップS81では、第3電流検出部29に電流が流れ始めた昇圧量BAが短絡判定のための所定の短絡昇圧量BLよりも低いか否かを判定する。ステップS81で肯定判定すると、ステップS82において、第4~第6ダイオードDA4~DA6に昇圧量BAが短絡昇圧量BLまで上昇しなくても第2経路LC2に電流が流れる短絡異常が生じていると判定し、異常判定処理を終了する。
【0108】
また、ステップS81で否定判定すると、ステップS83において、第4~第6ダイオードDA4~DA6に、第4~第6ダイオードDA4~DA6による電圧差が基準電圧差VKと異なっている降下量異常が生じていると判定し、異常判定処理を終了する。降下量異常には、第4~第6ダイオードDA4~DA6による電圧差が基準電圧差VKよりも小さくなる異常である低側異常が含まれるとともに、第4~第6ダイオードDA4~DA6による電圧差が基準電圧差VKよりも大きくなる異常である高側異常が含まれる。
【0109】
つまり、異常判定処理では、昇圧量BAが適正範囲BHよりも小さい状態で第4~第6ダイオードDA4~DA6に電流が流れた場合に、又は昇圧量BAが適正範囲BHよりも大きい状態で第4~第6ダイオードDA4~DA6に電流が流れない場合に、第4~第6ダイオードDA4~DA6を含む放電規制部24で異常が生じていると判定する。
【0110】
ステップS84では、第4スイッチSW4を閉鎖する。つまり、上述したステップS73~S83の処理は、第4スイッチSW4を開放した状態で実施され、第4スイッチSW4を開放した状態で放電規制部24の異常を判定する。続くステップS84では、第4スイッチSW4の閉鎖前後における分岐点電圧VCの変化の有無を判定する。ステップS84で否定判定すると、ステップS86において、第4スイッチSW4に閉鎖異常又は開放異常が生じていると判定し、異常判定処理を終了する。
【0111】
また、ステップS84で肯定判定すると、ステップS87において、第4~第6ダイオードDA4~DA6及び第4スイッチSW4の全てが正常であると判定し、異常判定処理を終了する。
【0112】
図7に戻り、ステップS41では、ステップS40での判定結果が、第4~第6ダイオードDA4~DA6及び第4スイッチSW4の少なくとも一つに異常が発生したとするものであるか否かを判定する。ステップS41で肯定判定すると、ステップS42において、第2コンバータ26による第2蓄電池16の充電を制限し、ステップS38に進む。
【0113】
また、ステップS41で否定判定すると、ステップS43において、第2蓄電池16の充電を開始し、制御処理を終了する。具体的には、第2コンバータ26を動作状態とする指令を出力し、第4スイッチSW4を閉鎖して、第2蓄電池16の充電を開始する。
【0114】
続いて、図9に、異常判定処理の一例を示す。図9は、昇圧量BAの調整制御中における第2系統内電流ICの推移を示す。図9において、(A)は、第2制御信号SD2による指令の推移を示し、(B)は、昇圧量BAの推移を示し、(C)は、第2系統内電流ICの推移を示し、(D)は、第4~第6ダイオードDA4~DA6の判定結果を示す。
【0115】
図9に示すように、時刻t3に第2コンバータ26を動作状態とする指令が出力されると、時刻t3からの経過時間に比例して、昇圧量BAがゼロから最大昇圧量BXまで上昇する。これにより、昇圧量BAは、時刻t4に短絡昇圧量BLに到達し、時刻t5に適正範囲BHの下限値に到達し、時刻t6に適正範囲BHの上限値に到達し、時刻t7に最大昇圧量BXに到達する。
【0116】
図9(C)に実線で示すように、第4~第6ダイオードDA4~DA6の正常時において、第2系統内電流ICは、時刻t5から時刻t6までの期間において、第3電流検出部29に電流が流れない非導通状態から第3電流検出部29に電流が流れる導通状態に切り替わる。図9(C)では、基準昇圧量BKに対応する時刻tAにおいて、第2系統内電流ICが非導通状態から導通状態に切り替わる様子が示されている。
【0117】
しかし、図9(C)に破線で示すように、例えば時刻t4から時刻t5までの間の時刻tB期間において、第2系統内電流ICが非導通状態から導通状態に切り替わった場合、第3電流検出部29に電流が流れ始めた昇圧量BAが短絡昇圧量BLよりも大きく、且つ適正範囲BHよりも小さくなる。そのため、第3電流検出部29に電流が流れ始めた昇圧量BAに基づいて、放電規制部24に低側異常が生じていると判定することができる。他の異常についても同様である。
【0118】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0119】
・本実施形態では、放電規制部24として、第4~第6ダイオードDA4~DA6を設け、それら第4~第6ダイオードDA4~DA6により、第2経路LC2において接続点PBから第2蓄電池16への電流の流れを規制し、かつ電池電圧VBと電源電圧VAとに所定の基準電圧差VKを生じさせる。そのため、例えば低温状態や高負荷状態において第1,第2負荷34,36で必要とされる電圧が高くなり、それに伴って第1,第2負荷34,36に印加される電圧が低下した場合に第2蓄電池16から第1,第2負荷34,36への放電が可能となっている。また、第1系統ES1での異常発生時には、第2系統ES2において第2負荷36に印加される電圧が低下することに伴い第2蓄電池16からの放電が行われ、第2負荷36に早期の電力供給を行うことができる。
【0120】
その上で、本実施形態では、第2コンバータ26の昇圧量BAを調整し、この昇圧量BAが、基準電圧差VKに対応する適正範囲BHよりも小さい状態で第4~第6ダイオードDA4~DA6に電流が流れた場合に、又は適正範囲BHよりも大きい状態で第4~第6ダイオードDA4~DA6に電流が流れない場合に、放電規制部24で異常が生じていると判定するようにした。これにより、第4~第6ダイオードDA4~DA6に基準電圧差VKの変動を伴う異常が発生したことを判定することができる。
【0121】
・昇圧量BAの最適値が電池温度TAに依存して変化する場合、第2蓄電池16の温度特性により昇圧量BAにバラツキが生じる。本実施形態では、昇圧量BAにバラツキの程度を示すバラツキ情報ΔBAを取得し、このバラツキ情報ΔBAに応じて適正範囲BHを変化させるようにした。これにより、昇圧量BAにバラツキ情報ΔBAに応じた適正範囲BHを用いて、放電規制部24の異常を適正に判定することができる。
【0122】
・放電規制部24の異常を判定する場合において、例えば電池電圧VBが第2コンバータ26による昇圧後の電圧、つまり分岐点電圧VCと異なると、電池電圧VBの影響により放電規制部24の異常を適正に判定することができない。この点、本実施形態では、分岐点PCと第2蓄電池16との間に設けられた第4スイッチSW4を開放した状態で放電規制部24の異常を判定するため、電池電圧VBの影響を抑制して、放電規制部24の異常を適正に判定することができる。
【0123】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、第2実施形態との相違点を中心に図10図12を参照しつつ説明する。
【0124】
本実施形態では、図10に示すように、第2経路LC2が、互いに並列に設けられた第1規制経路LD1と第2規制経路LD2とにより構成されている点で、第1実施形態と異なる。つまり、本実施形態では、第2系統ES2における接続経路LBとの接続点PBと第2蓄電池16との間に、第1経路LC1、第1規制経路LD1及び第2規制経路LD2が互いに並列に設けられている。
【0125】
第1規制経路LD1には、第4~第6ダイオードDA4~DA6と第7スイッチング素子(以下、単に第7スイッチ)SW7とが設けられている。第1規制経路LD1において、第4~第6ダイオードDA4~DA6は、第7スイッチSW7よりも接続経路LB側に設けられている。また、第2規制経路LD2には、直列に接続された第8スイッチング素子(以下、単に第8スイッチ)SW8と第9スイッチング素子(以下、単に第9スイッチ)SW9とが設けられている。第2規制経路LD2において、第9スイッチSW9は、第8スイッチSW8よりも接続経路LB側に設けられている。そして、第4~第6ダイオードDA4~DA6及び第7~第9スイッチSW7~SW9により放電規制部24が構成されている。
【0126】
第7スイッチSW7は、第1規制経路LD1を開放又は閉鎖し、第8,第9スイッチSW8,SW9は、第2規制経路LD2を開放又は閉鎖する。本実施形態では、第7~第9スイッチSW7~SW9として、MOSFETが用いられている。制御装置40は、制御処理において、第7~第9スイッチSW7~SW9を切替操作すべく、第7~第9切替信号SC7~SC9を生成し、第7~第9切替信号SC7~SC9による指令を第7~第9スイッチSW7~SW9に出力する。
【0127】
第7スイッチSW7には、寄生ダイオードとして第7ダイオードDA7が並列接続されている。第7ダイオードDA7は、第1規制経路LD1においてカソードを第2蓄電池16側、アノードを接続経路LB側となるように配置されている。そのため、第1規制経路LD1において、第4~第6ダイオードDA4~DA6と第7ダイオードDA7の向きが反対となるように設けられている。
【0128】
また、第8スイッチSW8には、寄生ダイオードとして第8ダイオードDA8が並列接続されており、第9スイッチSW9には、寄生ダイオードとして第9ダイオードDA9が並列接続されている。本実施形態では、第8,第9ダイオードDA8,DA9の向きが反対となるように設けられている。詳細には、第8ダイオードDA8は、アノードを接続経路LB側、カソードを第2蓄電池16側となるように配置されており、第9ダイオードDA9は、アノードを第2蓄電池16側、カソードを接続経路LB側となるように配置されている。
【0129】
図11に本実施形態の制御処理のフローチャートを示す。図11において、先の図7に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0130】
本実施形態の制御処理では、ステップS12で肯定判定すると、ステップS13において、第2コンバータ26を、動作停止状態に切り替える。続くステップS90では、第7,第9スイッチSW7,SW9を閉鎖するとともに第8スイッチSW8を開放し、ステップS90に進む。つまり、第1モードへの切り替え時において、第4~第6ダイオードDA4~DA6と第8スイッチSW8とにより第2蓄電池16の放電を規制する。
【0131】
また、ステップS20で肯定判定すると、ステップS91において、第1スイッチSW1が開放されているか否かを判定する。ステップS91で否定判定すると、ステップS92において、第1スイッチSW1を開放する。続くステップS93では、第8,第9スイッチSW8,SW9を閉鎖する。つまり、第1系統ES1で異常が発生したと判定された場合に、第1スイッチSW1を開放した後に第8,第9スイッチSW8,SW9を閉鎖する。続くステップS94において、第1,第2コンバータ12,26を動作停止状態とする指令を出力し、制御処理を終了する。
【0132】
また、ステップS91で肯定判定すると、つまり既にステップS92~S94の処理が実施されている場合には、ステップS95において、第7スイッチSW7を開放し、ステップS27に進む。そのため、第7スイッチSW7は、第8,第9スイッチSW8,SW9が閉鎖された後に開放される。
【0133】
また、ステップS31で肯定判定すると、ステップS100~104の処理を実施する。なお、ステップS100~104の各処理は、ステップS91~95の各処理と同一の処理であるため、説明を省略する。
【0134】
図12に本実施形態の異常判定処理のフローチャートを示す。図12において、先の図8に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0135】
本実施形態の制御処理では、ステップS73において、第2コンバータ26及び第4,第7~第9スイッチSW4,SW7~SW9を初期設定する。具体的には、第2コンバータ26を動作状態とする指令を出力し、第7スイッチSW7を閉鎖するとともに第4,第8,第9スイッチSW4,SW8,SW9を開放する。
【0136】
また、ステップS76で肯定判定すると、ステップS77において、第4~第6ダイオードDA4~DA6に絶縁異常が生じている、又は第7スイッチSW7に開放異常が生じていると判定し、異常判定処理を終了する。本実施形態では、第4~第6ダイオードDA4~DA6に短絡異常が生じている場合、又は第7スイッチSW7に開放異常が生じている場合に、第3電流検出部29に電流が流れないため、ステップS77ではこれらの異常の少なくとも一方が生じていると判定する。
【0137】
また、ステップS81で否定判定すると、ステップS83において、第4~第6ダイオードDA4~DA6に降下量異常が生じている、又は第8,第9スイッチSW8,SW9の少なくとも一方に閉鎖異常が生じていると判定し、異常判定処理を終了する。本実施形態では、第4~第6ダイオードDA4~DA6に降下量異常が生じている場合、又は第8,第9スイッチSW8,SW9の少なくとも一方に閉鎖異常が生じている場合に、昇圧量BAが適正範囲BH内でなくても第3電流検出部29に電流が流れるため、ステップS83ではこれらの異常の少なくとも一方が生じていると判定する。
【0138】
また、ステップS80で肯定判定すると、ステップS110において、第7スイッチSW7を開放する。続くステップS111では、第3電流検出部29に電流が流れたか否かを判定する。ステップS111で肯定判定すると、ステップS84に進む。また、ステップS111で否定判定すると、ステップS112において、第7スイッチSW7に閉鎖異常が生じていると判定し、異常判定処理を終了する。
【0139】
また、ステップS85で肯定判定すると、ステップS113において、第8,第9スイッチSW8,SW9を閉鎖する。続くステップS114では、第8,第9スイッチSW8,SW9の閉鎖により電源電圧VAと分岐点電圧VCとが等しくなったか否かを判定する。ステップS114で肯定判定すると、ステップS87に進む。また、ステップS114で否定判定すると、ステップS115において、第8,第9スイッチSW8,SW9の少なくとも一方に開放異常が生じていると判定し、異常判定処理を終了する。
【0140】
図11に戻り、ステップS41では、ステップS40での判定結果が、第4~第6ダイオードDA4~DA6、第4,第7~第9スイッチSW4,SW7~SW9の少なくとも一つに異常が発生したとするものであるか否かを判定する。ステップS41で肯定判定すると、ステップS42において、第2コンバータ26による第2蓄電池16の充電を制限し、ステップS38に進む。
【0141】
また、ステップS41で否定判定すると、ステップS43において、第2蓄電池16の充電を開始し、制御処理を終了する。具体的には、第2コンバータ26を動作状態とする指令を出力し、第4スイッチSW4を閉鎖するとともに第7~第9スイッチSW7~SW9を開放して、第2蓄電池16の充電を開始する。
【0142】
以上詳述した本実施形態によれば、例えば低温状態や高負荷状態において、又は第1系統ES1での異常発生時において、第4~第6ダイオードDA4~DA6により第2蓄電池16から第1,第2負荷34,36への放電が行われることで、早期の電力供給が可能となるが、第4~第6ダイオードDA4~DA6による電圧差により第1,第2負荷34,36に印加される電圧が低下する。本実施形態では、第4~第6ダイオードDA4~DA6が設けられる第1規制経路LD1とは別に第2規制経路LD2を設け、この第2規制経路LD2に第8,第9スイッチSW8,SW9を設けるようにした。これにより、例えば低温状態や高負荷状態において、又は第1系統ES1での異常発生時において、第4~第6ダイオードDA4~DA6による早期の電力供給を可能としつつ、第8,第9スイッチSW8,SW9による電圧低下を抑制した電力供給を行うことができる。
【0143】
(その他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、次のように実施されてもよい。
【0144】
・各負荷34,36は、例えば以下の装置であってもよい。
【0145】
車両に走行用動力を付与する走行用モータとその駆動回路であってもよい。この場合、第1,第2負荷34,36のそれぞれは、例えば3相の永久磁石同期モータと3相インバータ装置である。
【0146】
制動時の車輪のロックを防止するアンチロックブレーキ装置であってもよい。この場合、第1,第2負荷34,36のそれぞれは、例えば制動時のブレーキ油圧を独立に調整できるABSアクチュエータである。
【0147】
自車両の前を走行する前走車を検出し、前走車が検知された場合には前走車との車間距離を一定に維持し、前走車が検知されなくなった場合には自車両を予め設定された車速で走行させるクルーズコントロール装置であってもよい。この場合、第1,第2負荷34,36のそれぞれは、例えばミリ波レーダである。
【0148】
・各負荷34,36は、必ずしも同じ構成の組合せである必要がなく、同等の機能を異なる形式の機器で実現する組合せであってもよい。また、第1,第2負荷34,36は、それぞれが異なる負荷ではなく、同一の負荷であってもよい。つまり、第1,第2負荷34,36が、第1通電経路LA1及び第2通電経路LA2の両方から電力供給を受ける同一の負荷であってもよい。
【0149】
・第1電源は、コンバータに限られず、オルタネータであってもよい。
【0150】
・第2経路LC2に設けられる整流素子は、ダイオードに限られず、サイリスタであってもよい。
【0151】
・上記実施形態では、第2コンバータ26が昇圧回路のみを有し、昇圧動作のみを実施する例を示したが、昇圧回路とともに降圧回路を有しており、降圧動作を実施するものであってもよい。そして、第2コンバータ26が降圧動作を実施するものであれば、異常判定を第2コンバータ26の降圧動作中に実施するようにしてもよい。
【0152】
・上記第2実施形態では、第4~第6ダイオードDA4~DA6の異常判定に用いるパラメータとして、第3電流検出部29で検出される第2系統内電流ICを用いる例を示したが、これに限られない。例えば、電圧差ΔVを第2系統内電流ICで割った抵抗値を求め、この抵抗値を第4~第6ダイオードDA4~DA6の異常判定に用いるパラメータとして用いてもよい。
【0153】
・上記第2実施形態では、昇圧量BAのバラツキの原因として、第2蓄電池16の温度特性を例示したが、これに限られず、第2蓄電池16の劣化等もその原因の一つである。
【符号の説明】
【0154】
10…高圧蓄電池、12…コンバータ、16…第2蓄電池、24…放電規制部、26…第2コンバータ、40…制御装置、34…第1負荷、36…第2負荷、100…電源システム、ES1…第1系統、ES2…第2系統、LA1…第1通電経路、LA2…第2通電経路、LB…接続経路、LC1…第1経路、LC2…第2経路、PB…接続点、SW1…第1スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12