(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】X線検査装置及びX線検査装置の劣化判定方法
(51)【国際特許分類】
H05G 1/00 20060101AFI20240110BHJP
G01N 23/04 20180101ALI20240110BHJP
【FI】
H05G1/00 W
G01N23/04
(21)【出願番号】P 2020186406
(22)【出願日】2020-11-09
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松花 文太
(72)【発明者】
【氏名】神戸 悟郎
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-289396(JP,A)
【文献】特開2016-149251(JP,A)
【文献】特開2013-250136(JP,A)
【文献】特開2017-054678(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0008053(US,A1)
【文献】国際公開第2003/092336(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05G 1/00-2/00
H01J 35/00-35/32
A61B 6/00-6/14
G01N 23/00-23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生するX線管と、
前記X線管に管電圧を供給してX線を発生させる高圧電源と、
前記高圧電源に管電圧の供給を開始させる第1制御信号と、前記高圧電源に管電圧の供給を停止させる第2制御信号とを出力して前記高圧電源を制御するX線照射制御部と、
前記X線照射制御部から前記高圧電源に出力される前記第1制御信号及び前記第2制御信号の少なくとも一方をカウントし、カウントしたカウント値と、予め設定されたしきい値とを比較して、前記X線管を構成する構成部品の劣化状態を判定する判定部と、を備える、X線検査装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記X線照射制御部から前記高圧電源に出力される前記第1制御信号及び前記第2制御信号の少なくとも一方をカウントし、カウントしたカウント値が、前記しきい値に含まれる第1しきい値以上である場合に、前記X線管の管内に充填された絶縁油の熱膨張による増加分を吸収するゴム部材を劣化状態と判定する、請求項1記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記X線照射制御部から前記高圧電源に出力される前記第1制御信号及び前記第2制御信号の少なくとも一方をカウントし、カウントしたカウント値が、前記しきい値に含まれる第2しきい値以上である場合に、前記X線管に含まれるフィラメントを劣化状態と判定する、請求項1記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記X線照射制御部から前記高圧電源に出力される前記第1制御信号及び前記第2制御信号の少なくとも一方をカウントし、カウントしたカウント値が、前記しきい値に含まれる第1しきい値以上である場合に、前記X線管の管内に充填された絶縁油の熱膨張による増加分を吸収するゴム部材を劣化状態と判定し、
前記第1制御信号及び前記第2制御信号の少なくとも一方をカウントし、カウントしたカウント値が、前記しきい値に含まれ、前記第1しきい値とは異なる第2しきい値以上である場合に、前記X線管に含まれるフィラメントを劣化状態と判定する、請求項1記載のX線検査装置。
【請求項5】
通信部と、
前記通信部を制御してネットワーク接続されたサーバ装置と通信を行う通信制御部と、を備え、
前記通信制御部は、前記判定部が劣化状態を判定した場合に、前記サーバ装置に、劣化状態と判定された構成部品を通知する、請求項2から4のいずれか一項に記載のX線検査装置。
【請求項6】
X線を発生するX線管と、前記X線管に管電圧を供給してX線を発生させる高圧電源と、を備えるX線検査装置の劣化判定方法であって、
前記高圧電源に管電圧の供給を開始させる第1制御信号と、前記高圧電源に管電圧の供給を停止させる第2制御信号との少なくとも一方をカウントするステップと、
カウントしたカウント値と、予め設定されたしきい値とを比較して、前記X線管を構成する構成部品の劣化状態を判定するステップと、を有する、X線検査装置の劣化判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置及びX線検査装置の劣化判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線検査装置は、X線管を備え、X線管が備えるフィラメントを加熱し、加熱されたフィラメントから発生する熱電子をターゲットへ当てることによってX線を発生する。X線管には複数の消耗品が含まれ、これらの消耗品の交換時期を予測する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1は、フィラメントの通電時間に基づいてフィラメントの消耗度を判定するX線管動作状態取得装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
X線管にはフィラメント以外にも複数の消耗品が含まれる。フィラメントを含む消耗品の交換時期を精度よく判定できれば、ダウンタイムの発生を回避し、又はダウンタイムを短縮することが可能である。
【0006】
本発明は、X線管を構成する構成部品の劣化判定の判定精度を高めたX線検査装置及びX線検査装置の劣化判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係るX線検査装置は、X線を発生するX線管と、前記X線管に管電圧を供給してX線を発生させる高圧電源と、前記高圧電源に管電圧の供給を開始させる第1制御信号と、前記高圧電源に管電圧の供給を停止させる第2制御信号とを出力して前記高圧電源を制御するX線照射制御部と、前記X線照射制御部から前記高圧電源に出力される前記第1制御信号及び前記第2制御信号の少なくとも一方をカウントし、カウントしたカウント値と、予め設定されたしきい値とを比較して、前記X線管を構成する構成部品の劣化状態を判定する判定部と、を備える。
【0008】
本発明の第2態様に係るX線検査装置の劣化判定方法は、X線を発生するX線管と、前記X線管に管電圧を供給してX線を発生させる高圧電源と、を備えるX線検査装置の劣化判定方法であって、前記高圧電源に管電圧の供給を開始させる第1制御信号と、前記高圧電源に管電圧の供給を停止させる第2制御信号との少なくとも一方をカウントするステップと、カウントしたカウント値と、予め設定されたしきい値とを比較して、前記X線管を構成する構成部品の劣化状態を判定するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1態様のX線検査装置、及び本発明の第2態様に係るX線検査装置の劣化判定方法によれば、高圧電源からX線管への管電圧の供給回数に基づいてX線管を構成する構成部品の劣化状態を判定することができる。従って、X線管に管電圧が供給されることで劣化する構成部品の劣化状態を精度よく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。
【0012】
[1.構成]
図1は、X線検査装置1の構成図である。
X線検査装置1は、X線照射部10と、表示部60と、操作部70と、通信部80と、制御装置100とを備える。また、X線照射部10は、X線発生部20、X線検出部30、ステージ40及び移動機構50を備える。X線照射部10は、X線遮蔽部材より構成されるケーシングの内部に配設される。
【0013】
X線発生部20は、X線管210(
図2参照)を備え、ステージ40上に載置された被検査物であるワークWに向けてX線を照射する。
【0014】
X線検出部30は、ステージ40上のワークWを透過したX線を検出する。X線検出部30は、例えば、多数のX線検出素子が線状に並んだラインセンサにより構成され、ワークWを透過したX線を検出する。
【0015】
ステージ40は、ワークWを載置するための部材であって、X線発生部20と、X線検出部30との間に配置される。ステージ40は、不図示のモータを備える移動機構50により駆動され、水平面内あるいは垂直方向において互いに直交する2方向に移動可能に構成される。
【0016】
図2は、X線発生部20の概略構成を示す図である。
ここで、
図2を参照しながらX線発生部20の構成について説明する。
X線発生部20は、筐体203と蓋体205とから構成されるチャンバー201内に、X線管210と高圧電源220とを収納した構成である。チャンバー201内には、絶縁油が充填されている。また、チャンバー201内には、絶縁油のチャンバー201外への漏れを防止するゴム部材250が設けられている。ゴム部材250は、ゴムベローズであり、絶縁油に接している。ゴム部材250は、熱膨張による絶縁油の体積変化を吸収し、チャンバー201内での絶縁油の圧力調整を行う。
【0017】
X線管210は、ガラス管体211を備える。ガラス管体211内には、ターゲットTを含む陽極部213と、フィラメントFを含む陰極部215と、が配置される。ターゲットTには、例えば、タングステンやモリブデン等の金属が用いられ、フィラメントFには、例えば、タングステンが用いられる。
【0018】
陽極部213は、端子231及び配線233を介して高圧電源220に接続される。
陰極部215は、端子235、配線体237及び端子239を介して高圧電源220に接続される。
高圧電源220は、陽極部213及び陰極部215のそれぞれに所定の電圧を供給し、陽極部213と陰極部215との間に電位差(以下、管電圧という)を生じさせる。また、高圧電源220は、陰極部215にフィラメント電流を供給する。陽極部213と陰極部215との間に所定の電位差が生じている状態で、陰極部215にフィラメント電流が供給されると、陰極部215が加熱され、陰極部215から熱電子が放出される。陰極部215から放出された熱電子が陽極部213に衝突することでX線が生じる。生じたX線は、不図示のX線照射窓を介してX線管210の外部に射出される。
【0019】
X線管210は、フィラメントFやターゲットT等を密封容器であるガラス管体211内に配置した密閉型の構成を有する。しかしながら、フィラメントFやターゲットT等を単体として交換可能な開放型のX線管を備えたX線検査装置1に適用することもできる。
【0020】
図1に戻りX線検査装置1の構成について説明する。
表示部60は、表示パネル65を備える。表示部60は、制御装置100から入力される表示データに基づく画像を表示パネル65に表示する。この表示データに基づく画像には、X線検出部30により検出されたX線画像が含まれる。
操作部70は、複数の操作ボタンを備える。操作部70は、操作を受け付けた操作ボタンに対応した操作信号を制御装置100に出力する。
通信部80は、有線又は無線によりインターネット等のネットワークNに接続される。通信部80は、ネットワークNに接続されたサーバ装置300と相互にデータ通信を行う。
【0021】
制御装置100は、メモリ110と、プロセッサ130とを備えるコンピュータ装置である。
【0022】
メモリ110は、例えば、フラッシュメモリや、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性のメモリを備える。また、メモリ110は、不揮発性のメモリに加え、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリを備える構成であってもよい。メモリ110には、プロセッサ130が実行する制御プログラムや、X線検出部30により検出されたX線画像が記憶される。また、メモリ110は、第1制御信号及び第2制御信号を検出した回数である第1カウント値111及び第2カウント値113を記憶する。第1制御信号及び第2制御信号の詳細に付いては後述する。また、メモリ110は、X線検査装置1を一意に識別する識別情報115を記憶する。
【0023】
プロセッサ130は、CPU(Central Processing Unit)や、CPUを搭載したMCU(Micro Controller Unit)、MPU(Micro Processor Unit)等のマイコンにより構成される。また、制御装置100を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現してもよい。
【0024】
制御装置100は、画像処理部131、表示制御部132、移動制御部133、X線照射制御部134、判定部135及び通信制御部136を備える。これらの機能ブロックは、メモリ110に記憶された制御プログラムをプロセッサ130が実行することで実現される制御装置100の機能を示すものである。
【0025】
画像処理部131は、X線検出部30により検出されたX線画像に所定の画像処理を施す。表示制御部132は、画像処理部131により画像処理が施されたX線画像に基づき、表示部60に表示させる表示データを生成し、生成した表示データを表示部60に出力する。これにより、表示部60の表示パネル65にX線画像が表示される。
【0026】
移動制御部133は、移動機構50を駆動する駆動信号を出力し、ステージ40を、水平面内において互いに直交する2方向に移動させる。
【0027】
X線照射制御部134は、高圧電源220を制御してX線発生部20にX線を照射させる。X線照射制御部134は、高圧電源220に第1制御信号及び第2制御信号を出力する。第1制御信号は、高圧電源220に、管電圧の出力を指示する信号である。第2制御信号は、高圧電源220に、管電圧の出力の停止を指示する信号である。
X線照射制御部134は、例えば、ステージ40上にワークWが載置され、操作部70により検査開始の指示を受け付けた場合に、高圧電源220に第1制御信号を出力する。また、X線照射制御部134は、ワークWへのX線の照射が完了すると、高圧電源220に第2制御信号を出力して、X線の照射を終了させる。
【0028】
判定部135は、X線照射制御部134から高圧電源220に出力される第1制御信号及び第2制御信号の少なくとも一方をカウントする。判定部135は、カウントしたカウント値と、予め設定されたしきい値とを比較して、X線管210を構成する構成部品の劣化状態を判定する。しきい値には、第1しきい値と第2しきい値とが含まれる。本実施形態の判定部135は、X線管210の構成部品として、ゴム部材250及びフィラメントFの劣化状態を判定する。
【0029】
チャンバー201の内部には、絶縁油が隙間なく充填されている。X線管210に管電圧が付与され、陰極部215にフィラメント電流が供給されることで、陰極部215が加熱され、発生した熱により絶縁油が膨張する。また、X線管210への管電圧の付与が停止すると、陰極部215の温度が下がり、膨張した絶縁油は収縮する。
【0030】
ゴム部材250は、熱膨張による絶縁油の体積変化を吸収し、チャンバー201内での絶縁油の圧力調整を行う部材であり、絶縁油の膨張と収縮に合わせて膨張と収縮とを繰り返す。ゴム部材250は、膨張と収縮とを繰り返すことで劣化する。ゴム部材250が劣化し、絶縁油の体積を吸収できない場合、油漏れが発生し、X線検査装置1が正常に動作しない。
【0031】
また、X線管210内のフィラメントFは、フィラメント電流が流れることで負荷を受ける。フィラメントFは、酸化アルミニウム等により被覆され、絶縁加工が施されている。特許文献1に開示された技術のようにフィラメントFへの累積通電時間を監視する方法では、膨張と収縮による酸化アルミニウへの影響を精度よく検出することができず、酸化アルミニウの劣化度を正確に判定することができない。
【0032】
このため、判定部135は、X線照射制御部134から高圧電源220に出力される第1制御信号及び第2制御信号の少なくとも一方の回数をカウントして、ゴム部材250が膨張又は収縮した回数を検出し、フィラメントFが負荷を受けた回数を検出する。
本実施形態の判定部135は、第1制御信号を検出後、第2制御信号が検出された場合に、第1カウント値111及び第2カウント値113を1加算する。メモリ110には、判定部135がカウントした第1カウント値111及び第2カウント値113が記憶される。
【0033】
第1カウント値111は、ゴム部材250の劣化状態の判定に用いられる。
判定部135は、第1カウント値が予め設定された第1しきい値以上になった場合、ゴム部材250を劣化状態と判定し、通信制御部136に、サーバ装置300への通知動作を実行させる。また、判定部135は、ゴム部材250が交換され、操作部70により所定の操作を受け付けると、第1カウント値111をリセットする。
【0034】
また、第2カウント値113は、フィラメントFの劣化状態の判定に用いられる。判定部135は、第2カウント値113が予め設定された第2しきい値以上になった場合、フィラメントFを劣化状態と判定し、通信制御部136に通知動作を実行させる。第2しきい値は、例えば、1万回に設定することができる。また、判定部135は、フィラメントFが交換され、操作部70により所定の操作を受け付けると、第2カウント値113をリセットする。
【0035】
本実施形態の判定部135は、第1制御信号が検出された後、第2制御信号が検出された場合に、第1カウント値111及び第2カウント値113を1加算したが、第1制御信号及び第2制御信号のいずれか一方を検出して、第1カウント値111及び第2カウント値113の値を1加算する構成であってもよい。このような構成であっても、ゴム部材250の膨張及び収縮の回数と、フィラメントFが負荷を受けた回数とを精度よく検出することができる。
【0036】
通信制御部136は、判定部135により第1カウント値111が第1しきい値以上であると判定された場合に、通信部80を介してサーバ装置300に判定結果を通知する。通信制御部136は、判定結果として、ゴム部材250を劣化状態と判定したことを示す情報と、X線検査装置1の識別情報115とをサーバ装置300に送信する。
【0037】
また、通信制御部136は、判定部135により第2カウント値113が第2しきい値以上であると判定された場合に、通信部80を介してサーバ装置300に判定結果を通知する。通信制御部136は、判定結果として、フィラメントFを劣化状態と判定したことを示す情報と、X線検査装置1の識別情報115とをサーバ装置300に送信する。
【0038】
また、表示制御部132は、判定部135により第1カウント値111が第1しきい値以上であると判定された場合、又は第2カウント値113が第2しきい値以上であると判定された場合に、表示部60に所定の表示を表示させてもよい。例えば、表示制御部132は、判定部135により第1カウント値111が第1しきい値以上であると判定された場合、ゴム部材250の交換を案内する案内表示を表示部60に表示させる。また、表示制御部132は、判定部135により第2カウント値113が第2しきい値以上であると判定された場合に、フィラメントFの交換を案内する案件表示を表示部60に表示させる。
【0039】
[2.動作]
図3は、制御装置100の動作を示すフローチャートである。
図3を参照しながら制御装置100の動作について説明する。
まず、制御装置100は、第1制御信号を高圧電源220に出力したか否かを判定する(ステップS1)。制御装置100は、第1制御信号を高圧電源220に出力していない場合(ステップS1/NO)、ステップS1の判定に戻る。
【0040】
また、制御装置100は、第1制御信号を高圧電源220に出力した場合(ステップS1/YES)、第2制御信号を高圧電源220に出力したか否かを判定する(ステップS2)。制御装置100は、第2制御信号を高圧電源220に出力していない場合(ステップS2/NO)、ステップS2の判定に戻る。
【0041】
また、制御装置100は、第2制御信号を高圧電源220に出力した場合(ステップS2/YES)、第1カウント値111及び第2カウント値113の値を1加算する(ステップS3)。その後、制御装置100は、第1カウント値111が第1しきい値以上であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0042】
制御装置100は、第1カウント値111が第1しきい値以上である場合(ステップS4/YES)、ゴム部材250を劣化状態と判定する。制御装置100は、ゴム部材250を劣化状態と判定したことを示す情報と、X線検査装置1の識別情報とをサーバ装置300に送信する(ステップS5)。また、制御装置100は、ゴム部材250を劣化状態と判定したことを案内する案内表示を表示部60に表示させてもよい(ステップS5)。その後、制御装置100は、ゴム部材250が交換され、操作部70により所定の操作が入力されると(ステップS6/YES)、第1カウント値111をリセットする(ステップS7)。その後、制御装置100は、ステップS1の判定に戻る。
【0043】
また、制御装置100は、第1カウント値111が第1しきい値以上ではない場合(ステップS4/NO)、第2カウント値113が第2しきい値以上であるか否かを判定する(ステップS8)。制御装置100は、第2カウント値113が第2しきい値以上ではない場合(ステップS8/NO)、ステップS1の判定に戻る。
【0044】
また、制御装置100は、第2カウント値113が第2しきい値以上である場合(ステップS8/YES)フィラメントFを劣化状態と判定する。制御装置100は、フィラメントFを劣化状態と判定したことを示す情報と、X線検査装置1の識別情報とをサーバ装置300に送信する(ステップS9)。また、制御装置100は、フィラメントFを劣化状態と判定したことを案内する案内表示を表示部60に表示させてもよい(ステップS9)。その後、制御装置100は、フィラメントFが交換され、操作部70により所定の操作が入力されると(ステップS10/YES)、第2カウント値113をリセットする(ステップS11)。その後、制御装置100は、ステップS1の判定に戻る。
【0045】
[3.態様と効果]
上述した本実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0046】
(第1項)
第1態様に係るX線検査装置は、X線を発生するX線管と、前記X線管に管電圧を供給してX線を発生させる高圧電源と、前記高圧電源に管電圧の供給を開始させる第1制御信号と、前記高圧電源に管電圧の供給を停止させる第2制御信号とを出力して前記高圧電源を制御するX線照射制御部と、前記X線照射制御部から前記高圧電源に出力される前記第1制御信号及び前記第2制御信号の少なくとも一方をカウントし、カウントしたカウント値と、予め設定されたしきい値とを比較して、前記X線管を構成する構成部品の劣化状態を判定する判定部と、を備える。
【0047】
第1項に記載のX線検査装置によれば、高圧電源からX線管に供給される管電圧の供給回数に基づいてX線管を構成する構成部品の劣化状態を判定することができる。従って、X線管に管電圧が供給されることで劣化する構成部品の劣化状態を精度よく判定することができ、ダウンタイムの発生を回避し、又はダウンタイムを短縮することができる。
【0048】
(第2項)
第1項に記載のX線検査装置において、前記判定部は、前記X線照射制御部から前記高圧電源に出力される前記第1制御信号及び前記第2制御信号の少なくとも一方をカウントし、カウントしたカウント値が、前記しきい値に含まれる第1しきい値以上である場合に、前記X線管の管内に充填された絶縁油の熱膨張による増加分を吸収するゴム部材を劣化状態と判定する。
【0049】
第2項に記載のX線検査装置によれば、X線管の管内に充填された絶縁油の熱膨張による増加分を吸収するゴム部材の劣化状態を精度よく判定し、ダウンタイムの発生を回避し、又はダウンタイムを短縮することができる。
【0050】
(第3項)
第1項に記載のX線検査装置において、前記判定部は、前記X線照射制御部から前記高圧電源に出力される前記第1制御信号及び前記第2制御信号の少なくとも一方をカウントし、カウントしたカウント値が、前記しきい値に含まれる第2しきい値以上である場合に、前記X線管に含まれるフィラメントを劣化状態と判定する。
【0051】
第3項に記載のX線検査装置によれば、X線管に含まれるフィラメントの劣化状態を精度よく判定し、ダウンタイムの発生を回避し、又はダウンタイムを短縮することができる。
【0052】
(第4項)
第1項に記載のX線検査装置において、前記判定部は、前記X線照射制御部から前記高圧電源に出力される前記第1制御信号及び前記第2制御信号の少なくとも一方をカウントし、カウントしたカウント値が、前記しきい値に含まれる第1しきい値以上である場合に、前記X線管の管内に充填された絶縁油の熱膨張による増加分を吸収するゴム部材を劣化状態と判定し、前記第1制御信号及び前記第2制御信号の少なくとも一方をカウントし、カウントしたカウント値が、前記しきい値に含まれ、前記第1しきい値とは異なる第2しきい値以上である場合に、前記X線管に含まれるフィラメントを劣化状態と判定する。
【0053】
第4項に記載のX線検査装置によれば、X線管の管内に充填された絶縁油の熱膨張による増加分を吸収するゴム部材の劣化状態を精度よく判定することができ、また、X線管に含まれるフィラメントの劣化状態を精度よく判定することができる。このため、ダウンタイムの発生を回避し、又はダウンタイムを短縮することができる。
【0054】
(第5項)
第1項から第4項のいずれか一項に記載のX線検査装置において、通信部と、前記通信部を制御してネットワーク接続されたサーバ装置と通信を行う通信制御部と、を備え、前記通信制御部は、前記判定部が劣化状態を判定した場合に、前記サーバ装置に、劣化状態と判定された構成部品を通知する。
【0055】
第5項に記載のX線検査装置によれば、サーバ装置と通信して、劣化状態と判定された構成部品をサーバ装置に登録することができる。このため、サーバ装置に登録された情報を参照して、X線検査装置の部品を交換することができる。
【0056】
(第6項)
第1態様に係るX線検査装置の劣化判定方法は、X線を発生するX線管と、前記X線管に管電圧を供給してX線を発生させる高圧電源と、を備えるX線検査装置の劣化判定方法であって、前記高圧電源に管電圧の供給を開始させる第1制御信号と、前記高圧電源に管電圧の供給を停止させる第2制御信号との少なくとも一方をカウントするステップと、カウントしたカウント値と、予め設定されたしきい値とを比較して、前記X線管を構成する構成部品の劣化状態を判定するステップと、を有する。
【0057】
第6項に記載のX線検査装置の劣化判定方法によれば、高圧電源からX線管への管電圧の供給回数に基づいてX線管を構成する構成部品の劣化状態を判定することができる。従って、X線管に管電圧が供給されることで劣化する構成部品の劣化状態を精度よく判定することができ、ダウンタイムの発生を回避し、又はダウンタイムを短縮することができる。
【0058】
[4.その他の実施形態]
なお、本実施形態に係るX線検査装置1は、あくまでも本発明に係るX線検査装置の態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形および応用が可能である。
例えば、本実施形態では、X線検査装置1の制御装置100が、画像処理部131、表示制御部132、移動制御部133、X線照射制御部134、判定部135及び通信制御部136を備えるが、本発明の実施形態は、これに限定されない。例えば、制御装置100を、X線検査装置1とは別体で構成してもよい。また、X線検査装置1の制御装置100が一部の機能を実行し、X線検査装置1とは別体で設けた制御装置に、X線検査装置1の制御装置100が実行する機能以外の機能を実行させてもよい。例えば、X線検査装置1とは別体で設けた制御装置に、判定部135及び通信制御部136の機能を実行させてもよい。
【0059】
また、
図1に示した各機能部は機能的構成を示すものであって、具体的な実装形態は特に制限されない。つまり、必ずしも各機能部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサがプログラムを実行することで複数の機能部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上記実施形態においてソフトウェアで実現される機能の一部をハードウェアで実現してもよく、或いは、ハードウェアで実現される機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。
【0060】
また、
図3に示すフローチャートの処理単位は、制御装置100の処理を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。
図3のフローチャートに示す処理単位の分割の仕方や名称によって制限されることはなく、処理内容に応じて、さらに多くの処理単位に分割することもできるし、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割することもできる。また、上記のフローチャートの処理順序も、図示した例に限られるものではない。
【0061】
また、制御装置100が備えるプロセッサ130に実行させる制御プログラムは、コンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体に記録しておくことも可能である。記録媒体としては、磁気的、光学的記録媒体又は半導体メモリデバイスを用いることができる。具体的には、フレキシブルディスク、HDD、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD、Blu-ray(登録商標) Disc、光磁気ディスク、フラッシュメモリ、カード型記録媒体等の可搬型、或いは固定式の記録媒体が挙げられる。また、制御プログラムをサーバ装置等に記憶させておき、サーバ装置から制御装置100に、制御プログラムをダウンロードしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 X線検査装置
10 X線照射部
20 X線発生部
30 X線検出部
40 ステージ
50 移動機構
70 操作部
80 通信部
100 制御装置
110 メモリ
111 第1カウント値
113 第2カウント値
115 識別情報
130 プロセッサ
131 画像処理部
133 移動制御部
134 X線照射制御部
135 判定部
136 通信制御部
201 チャンバー
203 筐体
205 蓋体
210 X線管
211 ガラス管体
213 陽極部
215 陰極部
220 高圧電源
231 端子
233 配線
235 端子
237 配線体
239 端子
250 ゴム部材
300 サーバ装置
F フィラメント