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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】分析用機器及び分析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/24 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
G01N30/24 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020187058
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076609
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003993
【氏名又は名称】弁理士法人野口新生特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌之
(72)【発明者】
【氏名】小島 雅弘
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-118530(JP,A)
【文献】特開2013-025822(JP,A)
【文献】特開2007-108006(JP,A)
【文献】特開2000-131325(JP,A)
【文献】国際公開第2020/183597(WO,A1)
【文献】中国実用新案第208013155(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/24
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析に関する動作を実行するための動作部、及び、前記動作部と電気的に接続された回路部を備え、分析装置とともに分析システムを構成する分析用機器であって、
ケーブルを外部から着脱可能に接続するための複数の接続ポートが、互いに異なる位置に、かつ、前記ケーブルを受ける向きが互いに異なるように設けられており、
前記複数の接続ポートのうち任意の前記接続ポートに接続された前記ケーブルと前記回路部とが電気的に導通するように構成されており
前記ケーブルは、前記回路部と前記分析装置との間で通信を行なうための通信ケーブルを含む、分析用機器。
【請求項2】
分析に関する動作を実行するための動作部、及び、前記動作部と電気的に接続された回路部を備え、分析装置とともに分析システムを構成する分析用機器であって、
ケーブルを外部から着脱可能に接続するための複数の接続ポートが、互いに異なる位置に、かつ、前記ケーブルを受ける向きが互いに異なるように設けられており、
前記複数の接続ポートのうち任意の前記接続ポートに接続された前記ケーブルと前記回路部とが電気的に導通するように構成されており、
前記分析用機器は、分析装置であるガスクロマトグラフに対して試料を注入するオートインジェクタである、分析用機器。
【請求項3】
前記ケーブルは、前記回路部へ電力を供給するための電源ケーブルを含む、請求項1又は2に記載の分析用機器。
【請求項4】
前記複数の接続ポートのうちの1つは常時露出しているメインポートであり、
前記複数の接続ポートのうち前記メインポート以外のポートは着脱可能なカバーが取り外されたときにのみ露出するサブポートである、請求項1又は2に記載の分析用機器。
【請求項5】
前記分析用機器は、前面及び背面を有し、前記複数の接続ポートのうちの1つは前方を向くように設けられ、前記複数の接続ポートのうち他の1つは後方を向くように設けられている、請求項1又は2に記載の分析用機器。
【請求項6】
前面及び背面を有するガスクロマトグラフと、
前面が前記ガスクロマトグラフの前面と同じ方向を向くように前記ガスクロマトグラフ上に配置され、第1ケーブルを介して前記ガスクロマトグラフと電気的に接続されている第1のオートインジェクタと、
背面が前記第1のオートインジェクタの背面と対向するように前記ガスクロマトグラフ上に配置され、第2ケーブルを介して前記ガスクロマトグラフと電気的に接続されている第2のオートインジェクタと、を備え、
前記第1のオートインジェクタ及び前記第2のオートインジェクタはいずれも請求項2に記載のオートインジェクタであり、
前記第1のオートインジェクタは前記第1のオートインジェクタの背面側から前記第1ケーブルを受けており、
前記第2のオートインジェクタは前記第2のオートインジェクタの前面側から前記第2ケーブルを受けている、分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析用機器及び分析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフィ分析システムや液体クロマトグラフィ分析システムなどの分析システムには、インジェクタなどの分析用機器(モジュール)の組合せによって構築されるものがある(例えば、特許文献1参照)。ガスクロマトグラフィ分析システムは、ガスクロマトグラフ(分析装置)にオートインジェクタなどの分析用機器が組み合わされて構築される。オートインジェクタは、ガスクロマトグラフ上に配置され、ガスクロマトグラフの試料気化室へ試料を自動的に注入する機器である。オートインジェクタのような分析用機器は、電力供給を受けたり、ガスクロマトグラフや他の機器との間で動作を同期させたりする必要があるため、ケーブルを介してガスクロマトグラフなどと電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/183632
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オートインジェクタのような分析用機器は、様々な向きでガスクロマトグラフ上に配置され得る。そのため、オートインジェクタの配置方向によっては、オートインジェクタに接続されているケーブルが分析システムの前方や側方へ飛び出て、ユーザが作業する際に邪魔になったり他のオプション機器に干渉したりするなどの問題が生じ得る。
【0005】
また、2台のオートインジェクタが併用される場合のほか、オートインジェクタに対してサンプルを搬送するオートサンプラが追加される場合もある。そのような場合にも、オートインジェクタに接続されているケーブルによって追加のオートインジェクタやオートサンプラの配置が阻害されるといった問題も生じ得る。
【0006】
そこで、本発明は、分析用機器に接続されているケーブルが干渉しにくいようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る分析用機器は、分析に関する動作を実行するための動作部、及び、前記動作部と電気的に接続された回路部を備え、分析装置とともに分析システムを構成するものであって、ケーブルを外部から着脱可能に接続するための複数の接続ポートが、互いに異なる位置に、かつ、前記ケーブルを受ける向きが互いに異なるように設けられており、前記複数の接続ポートのうち任意の前記接続ポートに接続された前記ケーブルと前記回路部とが電気的に導通するように構成されている。
【0008】
本発明に係る分析システムは、前面及び背面を有するガスクロマトグラフと、前面が前記ガスクロマトグラフの前面と同じ方向を向くように前記ガスクロマトグラフ上に配置され、第1ケーブルを介して前記ガスクロマトグラフと電気的に接続されている第1のオートインジェクタと、背面が前記第1の分析用機器の背面と対向するように前記ガスクロマトグラフ上に配置され、第2ケーブルを介して前記ガスクロマトグラフと電気的に接続されている第2のオートインジェクタと、を備えている。前記第1のオートインジェクタ及び前記第2のオートインジェクタのそれぞれは、上述した本発明に係る分析用機器であり、前記第1のオートインジェクタは背面側から前記第1ケーブルを受けており、前記第2のオートインジェクタは前面側から前記第2ケーブルを受けている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る分析用機器によれば、互いに異なる位置で互いに異なる方向からケーブルを受けるように設けられた複数の接続ポートを備えており、任意の接続ポートに接続されたケーブルが回路部と電気的に導通するように構成されているので、ユーザは、当該分析用機器に接続されたケーブルが作業の邪魔になったり他の機器と干渉したりしないように、分析用機器へのケーブルの接続位置を選ぶことができる。これにより、分析用機器に接続されているケーブルがユーザの作業や他の機器に干渉しにくくなる。
【0010】
本発明に係る分析システムによれば、ガスクロマトグラフ上において2台のオートインジェクタを互いの背面が対向するように配置されているものの、2台のオートインジェクタにそれぞれ接続されているケーブルのいずれもがガスクロマトグラフの背面側へ飛び出すので、各オートインジェクタに接続されたケーブルが作業の邪魔になったり他の機器と干渉したりすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】オートインジェクタの一実施例の正面図である。
図2】同実施例の背面図である。
図3】同実施例のポートカバーを取り外した状態を示す正面図である。
図4】同実施例の電気配線構造を示す概念図である。
図5】オートインジェクタを備えた分析システムの一実施例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る分析用機器の一実施例と、その分析用機器を備えた分析システムの一実施例について、図面を用いて説明する。
【0013】
分析用機器の一実施例について、図1図3を用いて説明する。図1及び図3は正面図、図2は背面図である。ここでは、分析用機器として、ガスクロマトグラフィ分析用のオートインジェクタを例に挙げて説明する。
【0014】
オートインジェクタ2は、インジェクタ本体4、ターレット6及びベース8を備えている。インジェクタ本体4とベース8は一体となっている。
【0015】
ターレット6はベース8上において水平面内で回転する円形のテーブルである。ターレット6には、試料、溶媒などの液体を収容する複数のバイアルVが同一円周上にセットされ、各バイアルVがターレット6の回転に伴って円軌道を描くように搬送される。ベース8は、ターレット6を回転駆動するためのターレット駆動機構(図示は省略)を備えている。
【0016】
インジェクタ本体4の内部には、ターレット6にセットされたバイアルから液体を採取して分析装置であるガスクロマトグラフへ注入するサンプリング機構(図示は省略)が設けられている。サンプリング機構には、液体の吸入及び吐出を行なうためのシリンジ、及び、シリンジを駆動するシリンジ駆動機構が含まれる。
【0017】
ターレット駆動機構及びシリンジ駆動機構は、分析に関する動作を実行するための動作部18(図4参照)を構成する。また、インジェクタ本体4の内部には、動作部18と電気的に接続されて動作部18への電力供給及び動作部18の動作制御を行なうための回路部20(図4参照)が設けられている。
【0018】
インジェクタ2は、ケーブルを接続するための2つの接続ポート10及び12を備えている。接続ポート10は、背面側へ常時露出しているメインポートであり、背面側からケーブルを受けるように設けられている。接続ポート12は、通常時は着脱可能なカバー16によって覆われたサブポートであり、カバー16が取り外されたときに前面側へ露出して前面側からケーブルを受けるように設けられている。インジェクタ本体4内の回路部20(図4参照)は、接続ポート10及び12のいずれとも電気的に導通しており、ユーザは、接続ポート10及び12のうちのいずれかの接続ポートを使用することができる。
【0019】
なお、この実施例では、背面側からと前面側からケーブルを受ける2つの接続ポート10及び12が設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の方向からケーブルを受けるための接続ポートが、接続ポート10及び12に加えて、又は接続ポート10及び12に代えて、設けられていてもよい。
【0020】
図4は、インジェクタ2内における配線構造の一例を示す概念図である。
【0021】
回路部20は、ターレット駆動機構及びシリンジ駆動機構を含む動作部18に対して動作制御を行なうための制御回路、及び、動作部18に対して電力供給を行なうための電源回路を含んでいる。回路部20からは、通信線及び電力供給線がそれぞれ引き出されている。通信線は、ガスクロマトグラフなどとの間で通信を行なうために使用され、電力供給線は、外部から電力供給を受けるために使用されるものである。通信線及び電力供給線はともに、途中で分岐して接続ポート10及び12へ引き出されている。回路部20は、接続ポート10及び12のいずれの接続ポートに接続されたケーブルとも電気的に導通するように構成されており、接続ポート10又は12のいずれかに接続されたケーブルを介してガスクロマトグラフなどと通信を行なうと同時に、電力供給を受けるように構成されている。
【0022】
また、この実施例では、接続ポート10又は12に接続されるケーブルとして、通信ケーブル及び電源ケーブルとしての機能を備えたものが使用されることを前提としている。一方で、本発明はこれに限定されるものではなく、通信ケーブル及び電源ケーブルをそれぞれ使用するように構成されていてもよい。その場合、通信ケーブルを接続するための接続ポート、及び/又は、電源ケーブルを接続するための接続ポートをオートインジェクタ2の複数の箇所に設けることができる。
【0023】
図5は、分析システムの一実施例を示す図である。
【0024】
この分析システム1は、分析装置であるガスクロマトグラフ100、ガスクロマトグラフ100上に搭載されたオートインジェクタ2F及び2Bを備えている。オートインジェクタ2F及び2Bは、図1図4を用いて説明したオートインジェクタ2と同等の構成を有するものである。オートインジェクタ2F及び2Bは、互いの背面が対向するように、ガスクロマトグラフ100の前後方向(図において左右方向)に並んで配置されている。前方のオートインジェクタ2F(第1のオートインジェクタ)は、ガスクロマトグラフ100と同じ方向(すなわち、分析システム1の前方)を向き、後方オートインジェクタ2B(第2のオートインジェクタ)はガスクロマトグラフ100とは反対方向(すなわち、分析システム1の後方)を向いている。
【0025】
オートインジェクタ2Fとガスクロマトグラフ100とは、ケーブル200(第1ケーブル)を介して電気的に接続されており、両者の間において通信や電力供給が行われる。オートインジェクタ2Bとガスクロマトグラフ100とは、ケーブル300(第2ケーブル)を介して電気的に接続されており、両者の間において通信や電力供給が行われる。ケーブル200のコネクタ200Aは、オートインジェクタ2Fの接続ポート10に接続されており、ケーブル300のコネクタ300Aは、オートインジェクタ2Bの接続ポート12に接続されている。すなわち、分析システム1の前方を向くオートインジェクタ2Fは背面側からケーブル200を受けており、分析システム1の後方を向くオートインジェクタ2Bは前面側からケーブル300を受けている。
【0026】
上記の構成により、オートインジェクタ2F、2B及びガスクロマトグラフ100に対するケーブル200及び300の接続のすべてが、分析システム1の後方からコネクタを差し込む方式でなされており、分析システム1の前方や側方へケーブル200及び300が飛び出すような状態が回避されている。これにより、分析システム1の前方や側方においてユーザが何らかの作業を行なう際に、ケーブル200及び300がユーザの作業に干渉しにくく邪魔になりにくい。また、オートインジェクタ2F及び2Bの側方にオートサンプラが配置される場合があるが、そのような場合にも、ケーブル200及び300がオートサンプラに干渉しにくい。
【0027】
以上においては、ガスクロマトグラフィ分析用のオートインジェクタを例に挙げて分析用機器及び分析システムの実施形態について説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、分析装置とともに分析システムを構成する他の分析用機器に対して本発明を適用することができる。すなわち、以上において説明した実施例は、本発明に係る分析用機器及び分析システムの実施形態の例示に過ぎない。本発明に係る分析用機器及び分析システムの実施形態は、以下に示すとおりである。
【0028】
本発明に係る分析用機器の一実施形態は、分析に関する動作を実行するための動作部、及び、前記動作部と電気的に接続された回路部を備え、分析装置とともに分析システムを構成する分析用機器であって、ケーブルを外部から着脱可能に接続するための複数の接続ポートが、互いに異なる位置に、かつ、前記ケーブルを受ける向きが互いに異なるように設けられており、前記複数の接続ポートのうち任意の前記接続ポートに接続された前記ケーブルと前記回路部とが電気的に導通するように構成されている。
【0029】
本発明に係る分析用機器の上記実施形態の第1態様では、前記ケーブルは、前記回路部へ電力を供給するための電源ケーブルを含む。
【0030】
本発明に係る分析用機器の上記実施形態の第2態様では、前記ケーブルは、前記回路部と前記分析装置との間で通信を行なうための通信ケーブルを含む。この第2態様は、上記第1態様と組み合わせることができる。
【0031】
本発明に係る分析用機器の上記実施形態の第3態様では、前記複数の接続ポートのうちの1つは常時露出しているメインポートであり、前記複数の接続ポートのうち前記メインポート以外のポートは着脱可能なカバーが取り外されたときにのみ露出するサブポートである。このような態様により、ユーザがサブポートを使用したいときにはカバーを取り外す必要があるため、メインポートとサブポートにケーブルが同時に接続されることが防止される。この第3態様は、上記第1態様及び/又は第2態様と組み合わせることができる。
【0032】
本発明に係る分析用機器の上記実施形態の第4態様では、前記分析用機器は、前面及び背面を有し、前記複数の接続ポートのうちの1つは前方を向くように設けられ、前記複数の接続ポートのうち他の1つは後方を向くように設けられている。この第4態様は、上記第1態様から第3態様のいずれかと自由に組み合わせることができる。
【0033】
本発明に係る分析用機器の上記実施形態の第5態様では、前記分析用機器は、分析装置であるガスクロマトグラフに対して試料を注入するオートインジェクタである。この第5態様は、上記第1態様から第4態様のいずれかと自由に組み合わせることができる。
【0034】
本発明に係る分析システムの一実施例では、前面及び背面を有するガスクロマトグラフと、前面が前記ガスクロマトグラフの前面と同じ方向を向くように前記ガスクロマトグラフ上に配置され、第1ケーブルを介して前記ガスクロマトグラフと電気的に接続されている第1のオートインジェクタと、背面が前記第1のオートインジェクタの背面と対向するように前記ガスクロマトグラフ上に配置され、第2ケーブルを介して前記ガスクロマトグラフと電気的に接続されている第2のオートインジェクタと、を備え、前記第1のオートインジェクタ及び前記第2のオートインジェクタはいずれも上述のオートインジェクタであり、前記第1のオートインジェクタは背面側から前記第1ケーブルを受けており、前記第2のオートインジェクタは前面側から前記第2ケーブルを受けている。
【符号の説明】
【0035】
1 分析システム
2,2F,2B オートインジェクタ(分析用機器)
4 インジェクタ本体
6 ターレット
8 ベース
10,12 接続ポート
16 カバー
18 動作部
20 回路部
100 ガスクロマトグラフ(分析装置)
200,300 ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5