(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】車両用ステップ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 3/02 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B60R3/02
(21)【出願番号】P 2020188533
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】三輪 政史
(72)【発明者】
【氏名】村松 厚志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝央
(72)【発明者】
【氏名】加藤 則郎
(72)【発明者】
【氏名】木下 公宏
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-086551(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0294196(US,A1)
【文献】実開平05-018994(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の外側に取り付けられるベースと、
前記ベースに回転可能に設けられるアームと、
前記アームによって支持されて前記ベースに対して移動可能に設けられるステップと、を備え、前記アームの回転によって、前記ステップが使用される展開状態と、前記ステップが前記車体の下に格納される格納状態とをとる、車両用ステップ装置であって、
前記アームの基端の第1回転軸線および前記アームの先端の第2回転軸線は、前記車両用ステップ装置が車体に取り付けられた取付状態で車幅外方に向けて上方に傾斜する
ように構成され、
前記ステップには、前記アームの先端が回転可能に取り付けられる取付部が設けられ、
前記取付部には、前記アームの先端が取り付けられる第2軸部が設けられており、
前記取付部は、前記アームによって支持される支持面を有し、前記支持面は、前記第2軸部の前記第2回転軸線に対して交差しており、
前記取付部および前記第2軸部は、前記ステップの上面よりも下方にある
車両用ステップ装置。
【請求項2】
前記第1回転軸線に沿う方向における前記アームの厚幅は、前記アームの長手方向において、前記アームの先端に向かって漸減している
請求項1に記載の車両用ステップ装置。
【請求項3】
前記展開状態で、前記アームは車幅外方に向けて下方に傾斜する
請求項1または2に記載の車両用ステップ装置。
【請求項4】
前記ベースにおいて、前記アームを支持する部分は、前記第1回転軸線に対して直交する部分を有する
請求項1~
3のいずれか一項に記載の車両用ステップ装置。
【請求項5】
前記格納状態における前記ステップの位置は、前記展開状態における前記ステップの位置よりも高い
請求項1~
4のいずれか一項に記載の車両用ステップ装置。
【請求項6】
前記格納状態において、前記アームの基端は、前記ステップの下端よりも上方にある
請求項1~
5のいずれか一項に記載の車両用ステップ装置。
【請求項7】
前記格納状態で、前記ステップは前記ベースの下部に接触する
請求項1~
6のいずれか一項に記載の車両用ステップ装置。
【請求項8】
前記ベースおよび前記ステップの少なくとも一方は、接触部を有し、
前記格納状態において、前記接触部は、前記ベースおよび前記ステップのうちで前記接触部が設けられる部材とは異なる他方の部材に接触するように構成される
請求項1~
7のいずれか一項に記載の車両用ステップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ステップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用ステップ装置が開示されている。同文献に記載の車両用ステップ装置において、ステップを移動させる機構は、車体の下の範囲で、上下方向および車幅方向に移動する部分を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、道路に走行に対する障害物が置かれていたり、道路に段差があったりすることから、車体の下に配置される部分は、車幅方向および上下方向において小さいことが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決する車両用ステップ装置は、車体の外側に取り付けられるベースと、前記ベースに回転可能に設けられるアームと、前記アームによって支持されて前記ベースに対して移動可能に設けられるステップと、を備え、前記アームの回転によって、前記ステップが使用される展開状態と、前記ステップが前記車体の下に格納される格納状態とをとる、車両用ステップ装置であって、前記アームの基端の第1回転軸線および前記アームの先端の第2回転軸線は、前記車両用ステップ装置が車体に取り付けられた取付状態で車幅外方に向けて上方に傾斜する。
【0006】
この構成によれば、アームを回転させることによって、ステップを上下方向かつ車幅方向に移動できる。アームは、アームの基端で支持される。アームの基端は、車幅方向に移動しない。このような構造のため、車体の下に配置される部分を車幅方向および上下方向において小さくできる。
【0007】
(2)上記車両用ステップ装置において、前記第1回転軸線に沿う方向における前記アームの厚幅は、前記アームの長手方向において、前記アームの先端に向かって漸減している。
【0008】
この構成によれば、アームの曲げ強度の低下を抑制しつつ、アームの先端を薄くできる。アームの先端を薄くできることによって、アームの先端で支持されている部分におけるステップの厚幅を薄くできる。厚幅は、上下方向における物の厚みを示す。
【0009】
(3)上記車両用ステップ装置において、前記展開状態で、前記アームは車幅外方に向けて下方に傾斜する。
この構成によれば、展開状態において、ステップをアームの基端よりも下方の位置に配置できる。
【0010】
(4)上記車両用ステップ装置において、前記ステップにおいて前記アームによって支持される支持面は、前記第2回転軸線に対して直交する。この構成によれば、ステップを円滑に移動できる。
【0011】
(5)上記車両用ステップ装置において、前記ベースにおいて、前記アームを支持する部分は、前記第1回転軸線に対して直交する部分を有する。この構成によれば、アームに加わる力を、第1回転軸線に対して直交する部分によって受けることができるため、ベースの変形を抑制できる。
【0012】
(6)上記車両用ステップ装置において、前記格納状態における前記ステップの位置は、前記展開状態における前記ステップの位置よりも高い。
この構成によれば、展開状態におけるステップの位置よりも高い位置で、ステップを格納できる。
【0013】
(7)上記車両用ステップ装置において、前記格納状態において、前記アームの基端は、前記ステップの下端よりも上方にある。
この構成によれば、車両用ステップ装置が格納状態から展開状態に移行する場合に、ステップを円滑に移動させることができる。
【0014】
(8)上記車両用ステップ装置において、前記格納状態で、前記ステップは前記ベースの下部に接触する。
ステップの上に隙間がある場合、ステップが上下に振動し、アームに負荷が加わる。この点、この構成によれば、ステップの上下の振動が抑制されるようになり、振動時においてアームに加わる負荷を低減できる。
【0015】
(9)上記車両用ステップ装置において、前記ベースおよび前記ステップの少なくとも一方は、接触部を有し、前記格納状態において、前記接触部は、前記ベースおよび前記ステップのうちで前記接触部が設けられる部材とは異なる他方の部材に接触するように構成される。
【0016】
ステップがベースのいずれの部分とも接触していない場合、振動によって、ステップがベースに接触し、異音が発生する虞がある。これに対して、上記構成によれば、ステップとベースとは互いに接触するため、このような異音の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
車両用ステップ装置は、幅方向および上下方向において小さい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】第1回転軸線に沿う軸方向からみた、車両用ステップ装置の図。
【
図3】ステップが格納位置に配置された車両用ステップ装置の斜視図。
【
図4】ステップが展開位置に配置された車両用ステップ装置の斜視図。
【
図7】
図4のVII-VII線に沿う車両用ステップ装置の断面図。
【
図11】
図4のXI-XI線に沿う車両用ステップ装置の断面図。
【
図12】ステップが展開位置に配置された車両用ステップ装置の背面図。
【
図13】ステップが展開位置に配置された車両用ステップ装置の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1~
図13を参照して、車両用ステップ装置について説明する。本実施形態において車両用ステップ装置1の前後方向は、車両用ステップ装置1を車両2に取り付けた状態において、車両2の前後方向に一致する。車両用ステップ装置1の上下方向DZは、車両用ステップ装置1を車両2に取り付けた状態において、鉛直方向に一致する。車両用ステップ装置1の車幅方向DXは、車両用ステップ装置1を車両2に取り付けた取付状態において、車両2の幅方向に一致する。
【0020】
図1に示されるように、車両用ステップ装置1は、車両2に取り付けられる。例えば、車両用ステップ装置1は、車体3の底板の下面に取り付けられる(
図12参照)。車両用ステップ装置1は、車体3の底板において、ドアによって閉鎖される車両乗降口の付近に取り付けられる。車両用ステップ装置1のステップ7は、ステップ7の使用時、乗降用の補助ステップとして使用される目的で、車両乗降口の下端よりも下方に配置される。一例では、車両用ステップ装置1のステップ7は、モータ31の動力によって移動する。
【0021】
図2に示されるように、車両用ステップ装置1は、車体3の外側に取り付けられるベース4と、ベース4に回転可能に設けられるアーム6と、ステップ7とを備える。ステップ7は、アーム6によって支持されてベース4に対して移動可能に設けられる。つまり、車両用ステップ装置1は車体3の室内ではなく車体3の外側に取り付けられる。車両用ステップ装置1は、アーム6の回転によって、ステップ7が使用される展開状態と、ステップ7が車体3の下に格納される格納状態とをとる。展開状態では、ステップ7は展開位置に配置される。格納状態では、ステップ7は格納位置に配置される。ステップ7は、アーム6の回転によって、展開位置と、格納位置との間で移動する。
【0022】
車両用ステップ装置1は、乗降の際の第1指令信号によって、格納状態から展開状態に移行する。第1指令信号は、人の操作に基づく指令信号であってもよいし、ドアの開放移動に基づいた指令信号であってもよい。
【0023】
車両用ステップ装置1は、第2指令信号によって、展開状態から格納状態に移行する。第2指令信号は、人の操作の基づく指令信号であってもよいし、ドアの閉鎖移動に基づいた指令信号であってもよい。
【0024】
図3に示されるように、車両用ステップ装置1の格納状態では、ステップ7は、アーム6の先端が基端の前方に配置されることによって、ベース4の近くの格納位置に配置される。ステップ7の格納位置は、車両用ステップ装置1が車体3に取り付けられた取付状態において、展開位置よりも車幅内方DIに位置し、ベース4の斜め前方の位置にある。
【0025】
図4に示されるよう、車両用ステップ装置1の展開状態では、アーム6の先端が基端から車幅外方DEに離れた位置に配置されることによって、ステップ7はベース4から離れた展開位置に配置される。ステップ7の展開位置は、車両用ステップ装置1が車体3に取り付けられた取付状態において、ベース4に対して車幅方向DXに所定距離を隔てた位置にある。車両用ステップ装置1の展開状態では、アーム6は、車幅外方DEに向けて下方に傾斜する(
図12参照)。ステップ7が展開位置に配置されるとき、平面視で、ステップ7の少なくとも一部は、車体3から露出する。
【0026】
車両用ステップ装置1の格納状態では、アーム6の先端は、展開状態におけるアーム6の先端よりも高い位置に配置され、かつ、アーム6の基端よりも前方に配置される。格納状態におけるステップ7の位置は、展開状態におけるステップ7の位置よりも高い。
【0027】
格納状態において、アーム6の基端は、ステップ7の下端よりも上方にある。すなわち、格納状態において、ステップ7の下端は、アーム6の基端よりも下方にある。格納状態では、アーム6は、前方に向けて下方に僅かに傾斜する。
【0028】
図3に示されるように、格納状態において、ステップ7はベース4の下部に接触する。ベース4およびステップ7の少なくとも一方は、接触部70を有する。格納状態において、接触部70は、ベース4およびステップ7のうちで接触部70が設けられる部材とは異なる他方の部材に接触するように構成される。本実施形態では、接触部70は、ベース4の下面にゴム材の板として設けられている。接触部70はステップ7の上面に接触する。一例では、接触部70は、第1ブラケット11の下面11aおよび第2ブラケット12の下面12aに設けられる。他の実施例として、ステップ7の上面に設けられていてもよいし、ブラケット10の下面に下方の突出する凸部として設けられていてもよい。ステップ7の上面に設ける場合には、滑り止め部として、ステップ7の上面7aから突出する凸部として構成することもできる。
【0029】
接触部70は、弾性部材によって構成される。例えば、弾性部材は、ゴム、プラスチックを含む。接触部70は、弾性を有する金属またはプラスチックによって構成されてもよい。弾性を有する金属またはプラスチックの例として、板バネが挙げられる。
【0030】
図2に示されるように、車両用ステップ装置1は、複数のアーム6を含む。ステップ7は、複数のアーム6によって支持される。さらに、車両用ステップ装置1は、アーム6を動作させる駆動部8を備える。車両用ステップ装置1は、アーム6として、第1アーム21、第2アーム22および第3アーム23を備える。
【0031】
ベース4は、ベース本体5と、3個のブラケット10とを含む。ベース4は、車両用ステップ装置1が車体3に取り付けられた取付状態において、車両2の前後方向に延びるように構成される。本実施形態では、3個のブラケット10を前から順に第1ブラケット11、第2ブラケット12、第3ブラケット13と呼ぶ。ベース本体5には、駆動部8と、第1アーム21と、第2アーム22とが取り付けられる。ベース本体5は、第1ブラケット11および第2ブラケット12を介して車体3に取り付けられる。第3ブラケット13は、第1ブラケット11および第2ブラケット12と独立して、車体3に取り付けられる。第3ブラケット13には、第3アーム23が取り付けられる。第3ブラケット13は、車体3に取り付けられる。
【0032】
各アーム6の基端は、ベース4に回転可能に取り付けられる。各アーム6の基端の第1回転軸線CAは、互いに平行である。各アーム6の先端は、ステップ7に回転可能に取り付けられる。各アーム6の先端の第2回転軸線CBは、互いに平行である。さらに、各アーム6の先端の第2回転軸線CBは、各アーム6の基端の第1回転軸線CAと互いに平行である。
【0033】
第1アーム21、第2アーム22、および第3アーム23は、前から、第1アーム21、第2アーム22、第3アーム23の順に配置される。第1アーム21の長さ、第2アーム22の長さ、および第3アーム23の長さは、ともに等しい。アーム6の長さは、アーム6の基端の第1回転軸線CAとアーム6の先端の第2回転軸線CBとの間の距離として定義される。
【0034】
第1アーム21の基端21aには第1軸部24が設けられる。第1アーム21の基端21aは、第1軸部24を介してベース4に取り付けられる。第1アーム21の先端21bは、第2軸部25を介してステップ7に取り付けられる。
【0035】
第2アーム22の基端22aには第1軸部24が設けられる。第2アーム22の基端22aは、第1軸部24を介してベース4に取り付けられる。第2アーム22の先端22bは、第2軸部25を介してステップ7に取り付けられる。
【0036】
第3アーム23の基端23aには第1軸部24が設けられる。第3アーム23の基端23aは、第1軸部24を介してベース4に取り付けられる。第3アーム23の先端23bは、第2軸部25を介してステップ7に取り付けられる。
【0037】
第1アーム21と、第2アーム22と、第3アーム23とは、車幅方向DXにおいて同じ位置に配置される。具体的には、第1アーム21の第1軸部24と、第2アーム22の第1軸部24と、第3アーム23の第1軸部24とは、車幅方向DXにおいて同じ位置に配置される。第1アーム21の第2軸部25と、第2アーム22の第2軸部25と、第3アーム23の第2軸部25とは、車幅方向DXにおいて同じ位置に配置される。
【0038】
第1アーム21の第2軸部25と、第2アーム22の第2軸部25と、第3アーム23の第2軸部25とは、上下方向DZにおいて同じ高さに配置される。第1アーム21の第1軸部24と、第2アーム22の第1軸部24と、第3アーム23の第1軸部24とは、上下方向DZにおいて互いの位置関係を保持した状態で、ステップ7の移動に伴って移動する。
【0039】
図5に示されるように、駆動部8は、モータ31と、減速部32と、動力伝達部33と、モータカバー35とを備える。駆動部8は、少なくとも1つのアーム6を回動させる。本実施形態では、駆動部8は、第1アーム21を回動させる。
【0040】
モータ31は、モータ支持部材を介してベース本体5に取り付けられる。モータカバー35は、モータ31、減速部32、および動力伝達部33を収容する。減速部32は、モータ31の出力軸の回転速度を減速する減速ギア(図示省略)と、減速ギアの回転に基づいて回転するピニオンギア34とを有する。ピニオンギア34は、動力伝達部33のラック36に噛み合う。
【0041】
図5を参照して、動力伝達部33を説明する。
動力伝達部33は、ベース4に往復運動可能に支持されたラック36と、連結部品38とを備える。連結部品38は、ラック36の端部と、第1アーム21の基端21aから突出する突出部21cを連結する。突出部21cは、第1アーム21の基端21aから第1軸部24の第1回転軸線CAに対する径方向に突出する。突出部21cは、第1アーム21の基端21aに固定されている。連結部品38の一方の端部は、ラック36の端部に回転可能に取り付けられ、かつ、連結部品38の他方の端部は、第1アーム21の突出部21cに回転可能に取り付けられる。
【0042】
ラック36は、モータ31の回転動力によって移動する。モータ31の回転動力はピニオンギア34に伝えられる。ピニオンギア34の回転によってラック36が移動し、ラック36の移動によって、ラック36と連結部品38によって連結されている第1アーム21が回動する。第1アーム21が回動することによって、ステップ7が移動する。第2アーム22および第3アーム23は、ステップ7の移動に従うように回動する。要するに、モータ31の回転動力によって第1アーム21が回動し、第1アーム21の回動によってステップ7が移動する。
【0043】
図6および
図7を参照して、第1アーム21の第1軸部24の構造を説明する。
第1軸部24は、ベース本体5と軸支持部材60とによって支持される。ベース4は、ベース本体5において第1回転軸線CAに対して直交する部分5aを有する。軸支持部材60は、受部61において第1回転軸線CAに対して直交する部分61aを有する。第1軸部24は、ベース4において第1回転軸線CAに対して直交する部分5aと、軸支持部材60において第1回転軸線CAに対して直交する部分61aとによって支持される。ベース4および軸支持部材60において、第1回転軸線CAに対して直交する部分5a,61aに沿う面は、車両用ステップ装置1の取付状態において、車幅外方DEに向けて下方DDに傾斜する。
【0044】
第1軸部24は、第1アーム21に固定される筒体51と、筒体51に挿通する軸体52と、軸体52と筒体51との間に配置される軸受53とを備える。
軸支持部材60は、ベース本体5に取り付けられる。軸支持部材60は、第1軸部24の下端部を受ける受部61と、受部61から延びる一対の側部62とを備える。受部61の両端それぞれに側部62が設けられる。側部62は、ベース本体5に向かって延びる延長部62aと、延長部62aに繋がっておりベース本体5に固定される固定部62bとを有する。軸支持部材60は、受部61がベース本体5に平行となるように、ベース本体5に取り付けられる。
【0045】
図6に示されるように、第1軸部24の上端部はベース本体5に固定される。第1軸部24の下端部は、留め金55によって軸支持部材60に固定される。第1軸部24の筒体51および軸体52は、軸支持部材60の一対の側部62の間に配置される。第1アーム21の基端21aは、筒体51に固定される。第1アーム21と筒体51とは、軸体52に対して一体に回転する。筒体51の端面と軸支持部材60の受部61との間には、ワッシャ54が配置される。
【0046】
各アーム6の基端の第1回転軸線CAおよび先端の第2回転軸線CBは、車両用ステップ装置1が車体3に取り付けられた取付状態で、車幅外方DEに向けて上方DUに傾斜する。具体的には、車両用ステップ装置1が車体3に取り付けられた取付状態において、正面からみて、第1回転軸線CAおよび第2回転軸線CBは、車幅外方DEに向けて上方DUに傾斜する。車両用ステップ装置1が車体3に取り付けられた取付状態において、側面からみて、第1回転軸線CAおよび第2回転軸線CBは、傾いていない。すなわち、第1回転軸線CAおよび第2回転軸線CBは、前後方向には傾いていない。
【0047】
ベース本体5は、第1アーム21および第2アーム22の第1軸部24の第1回転軸線CAが車幅外方DEに向けて上方DUに傾斜するように、第1ブラケット11および第2ブラケット12を介して車体3に取り付けられる。第3ブラケット13は、第3アーム23の第1軸部24の第1回転軸線CAが車幅外方DEに向けて上方DUに傾斜するように、車体3に直接に取り付けられる。
【0048】
図8~
図10を参照して、ステップ7について説明する。ステップ7の長さは、例えば、車両乗降口の長さに応じた長さに構成される。ステップ7は、フレーム71と、フレーム71の上に取り付けられるシート72と、ステップカバー73と、下カバー74とを備える。シート72は、樹脂または金属によって形成される。フレーム71は、複数のフレーム部材71aによって構成されてもよいし、金属板によって構成されてもよい。フレーム部材71aとして、角柱パイプが挙げられる。ステップカバー73は、シート72の上に重ねられる。ステップカバー73は、樹脂または金属によって形成される。下カバー74は、フレーム71の下に取り付けられる。一例では、下カバー74は、車幅方向DXにおいてフレーム71の下であって外縁に沿うように設けられる。下カバー74は、樹脂または金属によって形成される。
【0049】
図9に示されるように、ステップカバー73は、複数のステップカバー構成部材90によって構成されてもよい。複数のステップカバー構成部材90は、前後に並べられて、互いに結合される。互いに結合される2個のステップカバー構成部材90の一方は、第1結合部90aを有し、他方は、第1結合部90aの上に重ねられる第2結合部90bを有する。第1結合部90aは、ステップカバー構成部材90の上面から裏面に向かって延びる段差面90cを有する段差部として構成される。
【0050】
図10に示されるように、第2結合部90bは、ステップカバー構成部材90の裏面から上面に向かって延びる段差面90dを有する段差部として構成される。
複数のステップカバー構成部材90それぞれは、滑り止め部90eを有する。滑り止め部90eは、ステップカバー構成部材90の上面から突出する凸部として構成される。一例では、滑り止め部90eは、ステップカバー構成部材90に設けられる貫通孔90fと、貫通孔90fに嵌め込められるゴム部材90gとを備える(
図11参照)。貫通孔90fは、ステップ7の長手方向に延びる。
【0051】
一例では、
図9に示されるように、ステップカバー73は、5個のステップカバー構成部材90によって構成される。ステップカバー73は、ステップカバー73の前部に配置される第1ステップカバー構成部材91と、ステップカバー73の中間部に配置される第2ステップカバー構成部材92と、ステップカバー73の後部に配置される第3ステップカバー構成部材93と、を備える。第1ステップカバー構成部材91の後端には、第2結合部90bが設けられる。第2ステップカバー構成部材92の前端には、第1結合部90aが設けられ、第2ステップカバー構成部材92の後端には、第2結合部90bが設けられる。第3ステップカバー構成部材93の前端には、第1結合部90aが設けられる。第1ステップカバー構成部材91および第2ステップカバー構成部材92それぞれの第2結合部90bは、同じ形状を有する。第2ステップカバー構成部材92および第3ステップカバー構成部材93それぞれの第1結合部90aは、同じ形状を有する。この構成によって、第1ステップカバー構成部材91、第2ステップカバー構成部材92および第3ステップカバー構成部材93において、様々な組み合わせが出来るようになり、ステップカバー73の長さを容易に変更できる。例えば、第2ステップカバー構成部材92を省略して、第1ステップカバー構成部材91と第3ステップカバー構成部材93とによって短いステップカバー73を構成できる。また、第2ステップカバー構成部材92の個数を調整することによって、簡単にステップカバー73の長さを変更できる。このようにステップカバー73は、長さを調整できる構造を有するため、ステップ7の長さが異なる複数種の車両用ステップ装置1の生産において、ステップ7の部品の共通化を図ることができ、生産効率を向上できる。また、第1結合部90aと第2結合部90bとの間に溝が設けられることによって、排水溝が構成される。この排水溝によって、ステップ7に溜まる雨水を効率的に排水することができる。
【0052】
図11を参照して、アーム6の先端の取付構造について説明する。
図11は、
図4のXI-XI線に沿う車両用ステップ装置1の断面図である。
ステップ7のフレーム71には、取付部75が設けられる。取付部75には、第1アーム21の先端21bが回転可能に取り付けられる。取付部75は、フレーム71の下部に取り付けられる。
【0053】
取付部75は、アーム6によって支持される支持部76と、支持部76に設けられる2個の側部77とを備える。支持部76は、アーム6によって支持される支持面76aを有する。支持面76aは、アーム6の先端の上面に配置されるワッシャ85に接触する。または、支持面76aは、アーム6の先端の上面に直接に接触してもよい。
【0054】
2個の側部77は、フレーム71に支持部76を固定するための部品である。2個の側部77は、ステップ7の長手方向に間隔をあけて支持部76に設けられる。側部77は、支持部76と一体に構成されてもよい。
【0055】
支持部76の支持面76aは、第2軸部25の第2回転軸線CBに直交する。一例では、ステップ7を長手方向に沿って見たときに、支持面76aは、車幅外方DEに向かいつつ下方DDに行くように傾斜する。さらに、取付部75は、車両用ステップ装置1が車体3に取り付けられた取付状態において、ステップ7が展開位置に配置されるときに、ステップ7の上面7aが水平となるように、構成される。
【0056】
取付部75には、第2軸部25が設けられる。第2軸部25は、第1ピン81と、第1ピン81に結合する第2ピン82とを備える。第1ピン81は、第2ピン82の孔への圧入によって、第2ピン82に結合される。第2ピン82は、取付部75の支持部76の孔に圧入することによって、取付部75に固定される。第2ピン82の下端面82aと第1ピン81のフランジ81aとの間には、抜け止め板83が設けられる。抜け止め板83は、第2ピン82の下端面82aと第1ピン81のフランジ81aとによって挟持される。抜け止め板83は、アーム6の先端が第2軸部25から抜けることを防止する。抜け止め板83は、第1ピン81のフランジ81aと一体に構成されてもよい。
【0057】
第2軸部25には、ローラ84が回転可能に取り付けられる。第1アーム21の先端21bは、ローラ84を介して第2軸部25に取り付けられる。具体的には、第1アーム21の先端21bの貫通孔にローラ84が収容される。ローラ84の孔に第2軸部25が挿通する。
【0058】
第1アーム21の先端21bがローラ84を介して第2軸部25に取り付けられた状態において、第1アーム21の先端21bの上面と取付部75の支持面76aの間にはワッシャ85が配置される。
【0059】
ステップ7において、第2アーム22の先端22bが配置される部分の構造は、第1アーム21の先端が配置される部分の構造に準じた構造を有する。
ステップ7において、第3アーム23の先端23bが配置される部分の構造は、第1アーム21の先端が配置される部分の構造に準じた構造を有する。
【0060】
図12および
図13を参照して本実施形態の作用を説明する。
図12は、ステップ7が展開位置に配置されたときの車両用ステップ装置1の背面図であり、
図13は、ステップ7が展開位置に配置されたときの車両用ステップ装置1の側面図である。
図12および
図13において、2点鎖線は、格納位置にあるステップ7を示す。
【0061】
各アーム6の第1軸部24の第1回転軸線CAは、車幅外方DEに向けて上方DUに傾斜する。各アーム6の第1軸部24の第1回転軸線CAは、互いに平行である。この構成によって、各アーム6の回転によって、各アーム6の先端は、最も低い位置から、上方DUに向かいつつ車幅内方DIかつ前に移動する。このような各アーム6の先端の移動の軌跡によって、ステップ7は、最も低い位置から、上方DUに向かいつつ車幅内方DIかつ前に移動できる。
【0062】
ステップ7の移動において、アーム6の基端は移動しない。また、ステップ7の移動において、アーム6は、アーム6の基端よりも車幅外方DEの領域で回転する。このように、車両用ステップ装置1では、ステップ7の移動において、車体3の下の空間が使われない。このように、車両用ステップ装置1において車体3の下に配置される部分は、車体3の下にリンク機構が設けられるような従来の車両用ステップ装置に比べて、車幅方向DXにおいて小さく、上下方向DZにおいても小さい。
【0063】
本実施形態の効果を説明する。
(1)車両用ステップ装置1において、アーム6の基端の第1回転軸線CAおよびアーム6の先端の第2回転軸線CBは、車両用ステップ装置1が車体3に取り付けられた取付状態で車幅外方DEに向けて上方DUに傾斜する。
【0064】
この構成によれば、アーム6を回転させることによって、ステップ7を上下方向DZかつ車幅方向DXに移動できる。アーム6は、アーム6の基端で支持される。アーム6の基端は、車幅方向DXに移動しない。このような構造のため、車体3の下に配置される部分を車幅方向DXおよび上下方向DZにおいて小さくできる。
【0065】
(2)上記車両用ステップ装置1において、展開状態で、アーム6は、車幅外方DEに向けて下方に傾斜する。
この構成によれば、展開状態において、ステップ7をアーム6の基端よりも下方の位置に配置できる。
【0066】
(3)ステップ7において、アーム6によって支持される支持面76aは、第2回転軸線CBに対して直交する。この構成によれば、ステップ7を円滑に移動できる。
(4)ベース4において、アーム6を支持する部分は、第1回転軸線CAに対して直交する部分を有する。この構成によれば、アーム6に加わる力を、第1回転軸線CAに対して直交する部分によって受けることができるため、ベース4の変形を抑制できる。
【0067】
(5)車両用ステップ装置1において、格納状態におけるステップ7の位置は、展開状態におけるステップ7の位置よりも高い。
この構成によれば、展開状態におけるステップ7の位置よりも高い位置で、ステップ7を格納できる。
【0068】
(6)車両用ステップ装置1において、格納状態において、アーム6の基端は、ステップ7の下端よりも上方にある。
この構成によれば、車両用ステップ装置1が格納状態から展開状態に移行する場合に、ステップ7を円滑に移動させることができる。
【0069】
(7)車両用ステップ装置1において、格納状態で、ステップ7はベース4の下部に接触する。
ステップ7の上に隙間がある場合、ステップ7が上下に振動し、アーム6に負荷が加わる。この点、この構成によれば、ステップ7の上下の振動が抑制されるようになり、振動時においてアーム6に加わる負荷を低減できる。
【0070】
(8)車両用ステップ装置1において、ベース4およびステップ7の少なくとも一方は、接触部70を有する。格納状態において、接触部70は、ベース4およびステップ7のうちで接触部70が設けられる部材とは異なる他方の部材に接触するように構成される。
【0071】
ステップ7がベース4のいずれの部分とも接触していない場合、振動によって、ステップ7がベース4に接触し、異音が発生する虞がある。これに対して、上記構成によれば、ステップ7とベース4とは互いに接触するため、このような異音の発生を抑制できる。接触部70は、ステップ7に設けられてもよく、ベース本体5に設けてもよく、ブラケット10に設けてもよい。
【0072】
<その他の実施形態>
上記実施形態は、上記構成の例に限定されない。上記実施形態は、以下のように変更され得る。なお、以下の変形例では、上記実施形態の構成と実質的に変更のない構成については、上記実施形態の構成と同一の符号をつけて説明する。
【0073】
・本実施形態では、第1軸部24の軸体52は、ベース4に固定されている。アーム6は、軸体52に対して回転する。これに対して、第1軸部24の軸体52は、アーム6に固定されてもよい。この場合、ベース4には、軸体52を受ける軸受が設けられる。
【0074】
・本実施形態では、第2軸部25の第1ピン81と第2ピン82とは、ステップ7の取付部75に固定されている。アーム6は、第1ピン81および第2ピン82に対して回転する。これに対して、第1ピン81と第2ピン82とに替えて、アーム6に軸体が固定されてもよい。この場合、ステップ7の取付部75には、軸体を受ける軸受が設けられる。
【0075】
・ステップ7に設けられる第2軸部25の設置位置は限定されない。例えば、第2軸部25は、ステップ7の側面から車幅内方DIに突き出るようにステップ7に設けられてもよい。
【0076】
・
図14に示されるように、アーム6の厚幅DTは、次のように構成されてもよい。第1回転軸線CAに沿う方向DAにおけるアーム6の厚幅DTは、アーム6の長手方向DLにおいて、アーム6の先端に向かって漸減している。一例では、第1回転軸線CAに沿う方向DAにおけるアーム6の厚幅DTは、アーム6の長手方向DLにおける少なくとも一部の範囲で、アーム6の先端に向かって漸減する。
【0077】
このような構造を有する第1アーム21の一例を説明する。
図14は、展開状態において、第1アーム21の変形例を背面から見た背面図である。この例では、第1アーム21の長手方向DLにおいて、第1アーム21の基端21aと先端21bとを除いた中間範囲21dで、第1アーム21の厚幅DTが、第1アーム21の先端21bに向かって漸減する。次の参照のアームに比較して、先端が薄い。参照のアームは、第1アーム21と同じ長さであり、長手方向DLに沿って厚幅DTが均等であって、かつ第1アーム21と曲げ強度が等しい。
【0078】
このような構成のアーム6によれば、アーム6の曲げ強度の低下を抑制しつつ、アーム6の先端を薄くできる。アーム6の先端を薄くできることによって、アーム6の先端で支持されている部分におけるステップ7の厚幅を薄くできる。
【符号の説明】
【0079】
CA…第1回転軸線
CB…第2回転軸線
DT…厚幅
1…車両用ステップ装置
3…車体
4…ベース
6…アーム
7…ステップ
70…接触部
76a…支持面