(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】エアジェット織機の緯入れ制御装置
(51)【国際特許分類】
D03D 47/30 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
D03D47/30
(21)【出願番号】P 2020203436
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】八木 大輔
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-80426(JP,A)
【文献】特開2018-193628(JP,A)
【文献】特開2016-186144(JP,A)
【文献】実開平6-33982(JP,U)
【文献】特開平1-250440(JP,A)
【文献】特開昭60-75649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 29/00-51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインノズル及びサブノズルからのエア噴射により、緯糸が緯糸通路を経て緯入れされるエアジェット織機を制御する緯入れ制御装置であって、
前記緯糸通路の入口を検知範囲とし、前記緯糸通路の入口に前記緯糸の先端が到達する入口到達タイミングを検知する入口センサと、
前記入口到達タイミングに基づいて、前記緯糸を緯入れする際の緯入れ条件を調整する制御部と、
を有するエアジェット織機の緯入れ制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記緯入れ条件の調整として、緯糸測長貯留部において貯留されている前記緯糸を解舒する解舒タイミングを調整する、
請求項1に記載のエアジェット織機の緯入れ制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記緯入れ条件の調整として、前記メインノズル及び前記サブノズルの少なくとも一方のエア噴射開始タイミングを調整する、
請求項1または請求項2に記載のエアジェット織機の緯入れ制御装置。
【請求項4】
前記緯糸通路の入口における経糸の開口量を検知する経糸センサを有し、
前記制御部は、前記経糸センサにより検知された前記経糸の開口量に基づき、前記入口到達タイミングの目標値を決定する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエアジェット織機の緯入れ制御装置。
【請求項5】
前記入口センサは、前記経糸センサとしても機能する、
請求項4に記載のエアジェット織機の緯入れ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアジェット織機の緯入れ制御装置に関し、特に、緯糸通路の入口に緯糸の先端が到達するタイミングに応じて緯入れ条件を適切に調整可能なエアジェット織機の緯入れ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアジェット織機は、複数の筬羽の間に経糸を通し、経糸と直交する方向に、緯糸測長貯留部からの緯糸をノズルからのエア噴射によって通すことにより製織を行っている。ここで、所定の緯入れ位置に緯糸を所定タイミングで到達させることが品質の良い織布を織る上で重要である。
【0003】
緯糸測長貯留部には、貯留ドラムに貯留された緯糸を解舒する緯糸解舒ピンと、貯留ドラムから解舒される緯糸を検知して緯糸解舒信号を発信する緯糸解舒検知器とが設けられている。ここで、メインノズルから緯糸の飛走が開始される緯入れ開始タイミングを緯糸解舒信号に基づいて算出し、算出された緯入れ開始タイミングに応じて緯入れに関する各種の調整を行っている。このような緯入れ開始タイミングを利用した緯入れの調整手法は、以下の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、緯糸が貯留ドラムから解舒された解舒タイミングから緯糸の飛走が開始される緯入れ開始タイミングを算出しているが、緯糸の解舒タイミングと、メインノズルからの緯糸の飛走が開始された後、緯糸の先端が緯糸通路の入口に到達するタイミングとの間には時間差が存在しており、その時間差は一定していない。このため、上記特許文献1に記載の手法では、各種の緯入れ条件を適切に調整できない課題が存在していた。
【0006】
本開示は、緯糸の先端が緯糸通路の入口に到達するタイミングを正確に把握し、緯入れ条件を適切に調整可能なエアジェット織機の緯入れ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のエアジェット織機の緯入れ制御装置は、メインノズル及びサブノズルからのエア噴射により、緯糸が緯糸通路を経て緯入れされるエアジェット織機を制御する緯入れ制御装置であって、緯糸通路の入口を検知範囲とし、緯糸通路の入口に緯糸の先端が到達する入口到達タイミングを検知する入口センサと、入口到達タイミングに基づいて、緯糸を緯入れする際の緯入れ条件を調整する制御部とを有する。
【0008】
本開示のエアジェット織機の緯入れ制御装置において、制御部は、緯入れ条件の調整として、緯糸測長貯留部において貯留されている緯糸を解舒する解舒タイミングを調整する。
【0009】
本開示のエアジェット織機の緯入れ制御装置において、制御部は、緯入れ条件の調整として、メインノズル及びサブノズルの少なくとも一方のエア噴射開始タイミングを調整する。
【0010】
本開示のエアジェット織機の緯入れ制御装置において、緯糸通路の入口における経糸の開口量を検知する経糸センサを有し、制御部は、経糸センサにより検知された経糸の開口量に基づき、入口到達タイミングの目標値を決定する。ここで、入口センサは、経糸センサとしても機能する。
【発明の効果】
【0011】
本開示のエアジェット織機の緯入れ制御装置によれば、緯糸の先端が緯糸通路の入口に到達する入口到達タイミングを正確に把握し、緯入れ条件を適切に調整することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1におけるエアジェット織機の緯入れ制御装置を含む緯入れ装置を示す構成図である。
【
図2】実施の形態1のエアジェット織機の緯入れ装置における筬羽と入口センサとの関係を示す斜視図である。
【
図3】実施の形態1のエアジェット織機における緯糸の各種タイミングを示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、エアジェット織機の緯入れ制御装置の実施の形態につき、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一部分には同一番号を付している。
【0014】
実施の形態1.
はじめに、実施の形態1におけるエアジェット織機の緯入れ制御装置を含む緯入れ装置100の構成について、
図1~
図3を参照して説明する。
図1は、実施の形態1におけるエアジェット織機の緯入れ制御装置を含む緯入れ装置100を示す構成図である。
図2は、実施の形態1のエアジェット織機の緯入れ装置100における筬150と入口センサ180との関係を示す斜視図である。
図3は、実施の形態1のエアジェット織機における緯糸Yの各種タイミングを示す特性図である。
【0015】
なお、本明細書では、緯糸を経糸開口内に緯入れし、緯糸を搬送する緯入れ方向に対し、緯入れ方向と反対側を上流、緯入れ方向側を下流とする。また、圧縮エアの流れる方向について、源流側を上流、源流と反対側を下流とする。
【0016】
[緯入れ装置100の構成]
図1に示される緯入れ装置100は、主に、制御部110、メイン系統M、サブ系統S、筬150、エンドセンサ170、入口センサ180、及びカッタ190を備えている。なお、
図1に示す緯入れ装置100は、1つのメイン系統Mを有する状態を具体例として示すが、2つ以上のメイン系統Mを有するものであってもよい。
【0017】
制御部110には、CPU111と、ファンクションパネル112とが設けられている。CPU111は、緯入れ装置100における各種の制御を実行する。ファンクションパネル112は、各種の情報を報知する報知部であり、表示機能及び入力機能を有し、CPU111から指示された内容に基づいて各種情報を表示し、入力された情報をCPU111に伝達する。なお、制御部110は、後述する入口センサ180と共に、緯入れ制御装置として機能する。
【0018】
メイン系統Mには、給糸部120と、緯糸測長貯留部130と、緯入れノズル140とが設けられている。
給糸部120は、緯糸測長貯留部130の上流側に設けられ、緯糸Yを保持している。給糸部120の緯糸Yは、緯糸測長貯留部130により引き出される。
【0019】
緯糸測長貯留部130には、貯留ドラム131と、緯糸解舒ピン132と、バルーンセンサ133とが設けられている。貯留ドラム131は、給糸部120の緯糸Yを引き出し、緯糸Yを巻き付けた状態で貯留する。緯糸解舒ピン132及びバルーンセンサ133は、貯留ドラム131の周囲に配設されている。バルーンセンサ133は、緯糸解舒ピン132に対して緯糸Yの解舒方向側に並べて配置されている。
【0020】
緯糸解舒ピン132は、制御部110に予め設定された織機回転角度において、貯留ドラム131に貯留された緯糸Yを解舒する。なお、従来は、バルーンセンサ133で検知される緯糸解舒信号に基づき緯入れ開始タイミングを算出していた。しかし、本実施の形態1において、緯入れ開始タイミングは、緯糸通路153の入口153in(
図1及び
図2参照)に緯糸Yの先端が到達する入口到達タイミングTin(
図3参照)とする。そして、入口到達タイミングTinにより、緯糸解舒ピン132による緯糸Yの解舒が行われるタイミングを調整する。
【0021】
バルーンセンサ133は、緯入れ中に貯留ドラム131から解舒される緯糸Yを検知し、制御部110に緯糸解舒信号を発信する。制御部110は、予め設定された回数の緯糸解舒信号を受信すると、緯糸解舒ピン132を係止状態にする。これにより、緯糸解舒ピン132は、貯留ドラム131から解舒される緯糸Yを係止し、緯糸Yの緯入れが終了する。
【0022】
緯糸解舒ピン132が緯糸Yを係止するための作動タイミングは、織幅TLに相当する長さの緯糸Yを貯留ドラム131に貯留するために要する巻き付け回数に応じて設定されている。
【0023】
本実施の形態1では、貯留ドラム131に3巻された緯糸Yの長さが織幅TLに相当する場合を想定する。このため、制御部110は、バルーンセンサ133の緯糸解舒信号を3回受信すると、緯糸Yを係止する動作信号を緯糸解舒ピン132に発信するように設定されている。バルーンセンサ133の緯糸検知信号は、貯留ドラム131からの緯糸Yの解舒信号であり、制御部110において、エンコーダから得られる織機回転角度信号に基づき、緯糸解舒タイミングとして認識される。
【0024】
緯入れノズル140として、タンデムノズル141と、メインノズル142とが設けられている。タンデムノズル141は、圧縮エアの噴射により、貯留ドラム131から緯糸Yを引き出す。タンデムノズル141の上流側には、緯入れ終了前に、飛走する緯糸Yを制動するブレーキ147が設けられている。メインノズル142は、圧縮エアの噴射により、緯糸Yを筬150の緯糸通路153に緯入れする。
【0025】
メインノズル142は、配管P146を介してメインバルブ146に接続されている。メインバルブ146は、配管P144を介してメインタンク144に接続されている。タンデムノズル141は、配管P145を介してタンデムバルブ145に接続されている。タンデムバルブ145は、配管P144を介してメインバルブ146と共通のメインタンク144に接続されている。
【0026】
織布工場に設置されたエアコンプレッサ10から供給された圧縮エアは、メインレギュレータ143により設定圧力に調整され、配管P143を介してメインタンク144に供給されて貯蔵される。圧力センサ144sは、メインタンク144に貯蔵されている圧縮エアの圧力を検知し、検知結果を制御部110に伝達する。
【0027】
筬150は、メイン系統Mの緯入れノズル140の下流側に配設され、
図2に示されるように、複数の筬羽150a~150nにより構成されている。複数の筬羽150a~150nのそれぞれの間は、経糸を通すように構成されている。複数の筬羽150a~150nの上下方向中央付近の凹部により、緯糸の飛走しうる緯糸通路153が形成されている。筬150には、緯糸通路153に沿って、サブノズル160(以下、複数のサブノズル群160)を構成する複数のノズルと、エンドセンサ170と、入口センサ180とが配置されている。筬150の緯糸通路153の入口153inの付近には、カッタ190が設けられている。カッタ190は、筬打ち後に、緯糸Yを切断して織布から切り離す。なお、緯糸通路153の入口153inとは、最もメインノズル142に近い筬羽150aの中央付近に形成された凹部及びその近傍を指す。
【0028】
サブ系統Sにおいて、複数のサブノズル群160は、エア噴射により緯糸通路153において緯糸Yを飛走させるため、筬150の緯糸通路153に沿って配設されている。複数のサブノズル群160は一例として6群に分けられ、各サブノズル群160A~160Fは、各群ごとにそれぞれ4本のサブノズルにより構成されている。
各サブノズル群160A~160Fは、それぞれ複数の配管群166を介して、各群ごとに複数のサブバルブ165に接続されている。複数の配管群166は、複数のサブノズル群160に対応して6群に分けられ、各配管群166A~166Fは、各群ごとにそれぞれ4本の配管により構成されている。複数のサブバルブ165は、各配管群166A~166Fに合わせて、サブバルブ165A~165Fにより構成され、共通のサブタンク164に接続されている。
【0029】
サブタンク164は、配管163によりサブレギュレータ162に接続されている。また、サブレギュレータ162は、配管161により、メインレギュレータ143とメインタンク144間の配管P143に接続されている。このため、サブタンク164には、メインレギュレータ143経由で、サブレギュレータ162により設定圧力に調整された圧縮エアが貯蔵される。圧力センサ164sは、サブタンク164に貯蔵されている圧縮エアの圧力を検知し、検知結果を制御部110に伝達する。
【0030】
エンドセンサ170は、緯糸通路153の下流側であって、織幅TLよりも下流側の織端に配置され、検知範囲170d(
図2参照)に到達した緯糸Yを光学的に検知する。エンドセンサ170は、検知範囲170dに到達した緯糸Yを検知するため、発光部、受光部、及び導光部を備えていてもよい。エンドセンサ170は、緯糸Yを検知して生成した緯糸検知信号を制御部110に伝達する。エンドセンサ170による緯糸検知信号は、緯糸Yの緯糸末端到達信号であり、制御部110により末端到達タイミングTend(
図3参照)として認識される。
【0031】
入口センサ180は、
図2に示されるように、緯糸通路153の入口153inを検知範囲180dに含み、緯糸通路153の入口153inに到達した緯糸Yを光学的に検知する。入口センサ180は、検知範囲180dに到達した緯糸Yを検知するため、発光部、受光部、及び導光部を備えていてもよい。入口センサ180は、緯糸Yの先端を検知して生成した緯糸検知信号を制御部110に伝達する。入口センサ180による緯糸検知信号は、緯糸入口到達信号であり、緯糸Y先端の入口到達タイミングTinとして制御部110において認識される。なお、入口センサ180として織幅内センサを使用し、織幅TLの内側に入口センサ180を設置してもよい。
【0032】
[緯入れの制御]
次に、エアジェット織機の緯入れ制御装置による緯入れの制御について説明する。ここで、エアジェット織機の緯入れ制御装置は、緯糸通路153の入口153inに緯糸Yの先端が到達する入口到達タイミングTinを検知する入口センサ180と、入口到達タイミングTinに基づいて、緯糸Yを緯入れする際の緯入れ条件を調整する制御部110とにより構成されている。
【0033】
貯留ドラム131に貯留されていた緯糸Yは、緯糸解舒ピン132により解舒され、タンデムノズル141からのエア噴射により、貯留ドラム131から引き出される。貯留ドラム131から引き出された緯入Yは、メインノズル142からのエア噴射により、緯糸通路153に緯入れされる。緯糸通路153に緯入れされた緯糸Yは、複数のサブノズル群160からのエア噴射により、緯糸通路153内を飛走する。
【0034】
入口センサ180は、緯糸通路153の入口153inに到達した緯糸Yを光学的に検知して緯糸検知信号を生成し、緯糸検知信号を制御部110に伝達する。制御部110は、入口センサ180により生成された緯糸検知信号により、緯糸Yの先端が緯糸通路153の入口153inに到達した入口到達タイミングTinであると認識する。そして、制御部110は、入口到達タイミングTinに基づいて、緯糸Yを緯入れする際の各種の緯入れ条件を以下のように調整する。
【0035】
制御部110は、緯入れ条件の調整として、緯糸測長貯留部130において貯留されている緯糸Yを解舒する緯糸解舒ピン132の解舒タイミングを調整する。例えば、入口到達タイミングTinが予め定められた目標値Trefより早い場合、制御部110は、緯糸解舒ピン132による緯糸Yの解舒タイミングを遅らせる方向に調整する。この結果、入口到達タイミングTinが遅くなって目標値Trefに近づくことで、充分に開口していない経糸に緯糸Yが引っかかって緯入れミスとなってしまうことが防止され、緯糸Yの適切な緯入れを実現することができる。
【0036】
一方、入口到達タイミングTinが目標値Trefより遅い場合、制御部110は、緯糸解舒ピン132による緯糸Yの解舒タイミングを早める方向に調整する。この結果、入口到達タイミングTinが早まって目標値Trefに近づくことで、緯入れノズル140やサブノズル群160による緯入れ時間に余裕を持たせることができ、緯糸Yの適切な緯入れを実現することができる。
【0037】
制御部110は、緯入れ条件の調整として、メインノズル142及び複数のサブノズル群160の少なくとも一方のエア噴射開始タイミングを調整する。
例えば、入口到達タイミングTinが目標値Trefより早い場合、制御部110は、メインノズル142のエア噴射開始タイミングを遅らせる方向に調整する。この結果、入口到達タイミングが遅くなって、目標値Trefに近づくことで、緯糸Yの適切な緯入れを実現することができる。また、複数のサブノズル群160のエア噴射開始タイミングは、目標値Trefよりも早い入口到達タイミングTiに応じて早められる。これによりサブノズル群160に緯糸Yの先端が到達するタイミングとサブノズル群160が噴射を開始するタイミングのズレが防止される。
【0038】
一方、入口到達タイミングTinが目標値Trefより遅い場合、制御部110は、メインノズル142のエア噴射開始タイミングを早める方向に調整する。この結果、入口到達タイミングTinが早まって、目標値Trefに近づくことで、緯糸Yの適切な緯入れを実現することができる。また、複数のサブノズル群160のエア噴射開始タイミングは、目標値Trefよりも遅い入口到達タイミングTinに応じて遅らせられる。これによりサブノズル群160に緯糸Yの先端が到達するタイミングとサブノズル群160が噴射を開始するタイミングのズレが防止される。
また、以上のような調整により、無駄なエア噴射を抑制できるため、消費電力の削減にも寄与することができる。
【0039】
緯糸Yは、緯糸通路153において、図示されない経糸が開口している領域を通過することで緯入れされる。このため、制御部110は、緯入れ条件の調整として、経糸の開口量を検知し、検知した開口量に基づいて、入口到達タイミングの目標値Trefを決定することができる。制御部110は、検知した経糸の開口量と緯糸Yの入口到達タイミングとの関係を適切に保つように、入口到達タイミングの目標値Trefを決定する。
【0040】
例えば、制御部110は、経糸の開口量が最大値に達する前であって、緯糸Yの通過可能な開口量の限界値となるタイミングを狙って、緯糸Yの入口到達タイミングの目標値Trefを決定することができる。これにより、緯糸Yの適切で無駄のない、安定した緯入れを実現することができる。ここで、経糸の開口量を求めるために入口センサ180とは別の専用の経糸センサを設けてもよいが、入口センサ180が経糸の開口量を更に検知することができる。例えば、開口運動により経糸が入口センサ180の検知範囲から外れると、経糸からの反射光が減少して検知信号に変動を生じる。この検知信号の変動タイミングから緯入れに適した経糸の開口量となるタイミングを算出することができる。
【0041】
[実施の形態により得られる効果]
以上説明したように、本開示の実施の形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
【0042】
本開示におけるエアジェット織機の緯入れ制御装置は、メインノズル142及びサブノズル群160からのエア噴射により、緯糸Yが緯糸通路153を経て緯入れされる緯入れ装置100を制御するもので、緯糸通路153の入口153inを検知範囲180dとし、緯糸通路153の入口に緯糸Yの先端が到達する入口到達タイミングを検知する入口センサ180と、入口到達タイミングTinに基づいて緯糸Yを緯入れする際の緯入れ条件を調整する制御部110とを有している。この緯入れ制御装置によれば、緯糸Yの先端が緯糸通路153の入口に到達する入口到達タイミングTinを正確に把握し、緯入れ条件を適切に調整することが可能になる。
【0043】
本開示の緯入れ制御装置において、制御部110は、緯入れ条件の調整として、緯糸測長貯留部130において貯留されている緯糸Yを解舒する解舒タイミングを調整する。このような緯入れ条件の調整により、緯糸Yの入口到達タイミングTinを目標値Trefに近づけることができ、緯糸Yの適切な緯入れを実現することができる。
【0044】
本開示の緯入れ制御装置において、制御部110は、緯入れ条件の調整として、メインノズル142及びサブノズル群160の少なくとも一方のエア噴射開始タイミングを調整する。このような緯入れ条件の調整により、緯糸Yの入口到達タイミングTinを目標値Trefに近づけることができ、緯糸Yの適切な緯入れを実現することができる。また、以上のような調整により、エア噴射のタイミングを適切に管理し、無駄なエア噴射を抑制することができるため、エネルギー消費の削減にも寄与することができる。
【0045】
本開示の緯入れ制御装置において、緯糸Yは、緯糸通路153において経糸の開口内を経て緯入れされ、緯糸通路153の入口153inにおける経糸の開口量を検知する経糸センサを有し、制御部110は、経糸センサにより検知された経糸の開口量に基づき、入口到達タイミングの目標値Trefを決定する。
ここで、制御部110は、経糸の開口量と緯糸Yの入口到達タイミングTinとの関係を適切に保つように、経糸の開口量に基づいて入口到達タイミングの目標値Trefを決定する。
このようにして、緯糸Yの入口到達タイミングの目標値Trefを決定することにより、緯糸Yの適切で無駄のない、安定した緯入れを実現することができる。また、緯入れに有効な開口時間を拡大することができるため、生産性の向上を期待できる。
【0046】
本開示の緯入れ制御装置において、入口センサ180が経糸センサとしても機能し、経糸の開口量を算出することができる。この結果、専用の経糸センサの設置を省略することができ、センサの増設といった機材の変更をすることなく、緯糸Yの入口到達タイミングの目標値Trefを決定することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 エアコンプレッサ、100 緯入れ装置、110 制御部、111 CPU、112 ファンクションパネル、120 給糸部、130 緯糸測長貯留部、131 貯留ドラム、132 緯糸解舒ピン、133 バルーンセンサ、140 緯入れノズル、141 タンデムノズル、142 メインノズル、143 メインレギュレータ、144 メインタンク、144s 圧力センサ、145 タンデムバルブ、146 メインバルブ、147 ブレーキ、150 筬、150a~150n 筬羽、153 緯糸通路、153in 入口、160,160A~160F サブノズル群、161 配管、162 サブレギュレータ、163 配管、164 サブタンク、164s 圧力センサ、165,165A~165F サブバルブ、166,166A~166F 配管群、170 エンドセンサ、170d 検知範囲、180 入口センサ、180d 検知範囲、190 カッタ、TL 織幅、P143,P144,P145,P146 配管、M メイン系統、S サブ系統、Tin 入口到達タイミング、Tend 末端到達タイミング、Tref 目標値、Y 緯糸。