(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】微小振動体の位置決め構造、慣性センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01C 19/5691 20120101AFI20240110BHJP
【FI】
G01C19/5691
(21)【出願番号】P 2020210554
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】明石 照久
(72)【発明者】
【氏名】船橋 博文
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 優輝
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0094024(US,A1)
【文献】特開2008-078212(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0107761(US,A1)
【文献】特開2012-042452(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110749315(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/5691
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状曲面を備える曲面部(21)および前記曲面部から凹んだ凹部(22)を有する微小振動体(2)と、実装基板(3)とを有してなり、前記微小振動体の前記凹部が前記実装基板のうち枠体状の実装部(51)の内側領域に搭載され、前記曲面部が中空状態である慣性センサ(1)の製造に用いられる位置決め構造(100)であって、
前記実装基板と、
前記実装基板との着脱が可能であって、前記微小振動体と前記実装基板との位置決めに用いられるガイド板材(6)と、を備え、
前記実装基板は、互いに距離を隔てつつ、前記実装部を囲む配置とされる複数の電極部(53)と、互いに距離を隔てつつ、複数の前記電極部を囲む配置とされる複数の外枠部(54)と、複数の前記電極部よりも複数の前記外枠部の側に位置する部位に設けられ、前記ガイド板材の一部が嵌め込まれる嵌め込み溝(543、56)と、を有しており、
前記ガイド板材は、前記微小振動体を前記実装部に搭載する際に、前記微小振動体に当接する接触部(61)と、前記接触部に接続され、前記接触部を囲む枠体状の枠体部(62)と、前記枠体部の外周側に配置される複数の把持部(64)と、複数の前記把持部と前記枠体部とをそれぞれ接続する複数の支持部(63)と、を有しており、
前記微小振動体が前記実装基板に搭載された際の前記実装基板の厚み方向に沿った方向を高さ方向として、前記ガイド板材は、前記微小振動体よりも高さ方向の寸法が小さい、位置決め構造。
【請求項2】
前記接触部は、環状の枠体形状であり、
前記嵌め込み溝は、複数の前記電極部と複数の前記外枠部との隙間であり、
前記枠体部は、前記嵌め込み溝に嵌め込まれる、請求項1に記載の位置決め構造。
【請求項3】
複数の前記外枠部のうち隣接する前記外枠部の隙間は、前記ガイド板材と前記実装基板との位置決め溝(55)となっており、
前記支持部が前記位置決め溝に嵌め込まれる、請求項1または2に記載の位置決め構造。
【請求項4】
前記枠体部は、前記把持部を変位させたときに連動して変位する複数の梁部(621、622)と、前記梁部に接続され、前記実装基板との位置決めに用いられる位置決め嵌合部(65)とを有すると共に、
前記嵌め込み溝は、複数の前記外枠部に形成されており、
前記位置決め嵌合部は、前記嵌め込み溝に嵌め込まれる、請求項1または2に記載の位置決め構造。
【請求項5】
複数の前記支持部は、第一の方向に沿って延設された第一の前記支持部と、前記第一の方向に交差する第二の方向に沿って延設された第二の前記支持部とにより構成されている、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の位置決め構造。
【請求項6】
前記支持部のうち前記把持部の側の一端と前記枠体部の側の他端とを繋げる方向を接続方向として、前記支持部は、前記把持部を前記接続方向に沿って変位させたときに、前記把持部の変位よりも前記接触部の変位を小さくするための弾性変形部(67)を備える、請求項4に記載の位置決め構造。
【請求項7】
前記枠体部は、前記接触部を囲む環状の枠体形状である、請求項1または2に記載の位置決め構造。
【請求項8】
前記枠体部は、一方向に延びた第一の梁部(621)と、前記一方向とは異なる方向に延びた第二の梁部(622)とを有してなる、請求項4または6に記載の位置決め構造。
【請求項9】
前記支持部のうち前記把持部の側の一端と前記枠体部の側の他端とを繋ぐ方向を接続方向として、前記接触部は、前記接続方向の延長線上に配置され、前記把持部を前記接続方向に沿って変位させたときに、前記把持部の変位に連動して前記接続方向に沿って変位する、請求項4、6、8のいずれか1つに記載の位置決め構造。
【請求項10】
複数の前記梁部は、それぞれ異なる1つの前記支持部を介して異なる1つの前記把持部に接続されると共に、接続された前記支持部のうち前記把持部の側の一端と前記梁部の側の他端とを繋ぐ方向を接続方向として、前記把持部を前記接続方向に沿って変位させたときに、前記接続方向に沿って弾性変形する、請求項4、6、8、9のいずれか1つに記載の位置決め構造。
【請求項11】
前記枠体部は、前記把持部を変位させたときに、前記梁部が前記把持部の変位に連動して変位しやすくするためのバネ部(66)をさらに有する、請求項4、6、8、9、10のいずれか1つに記載の位置決め構造。
【請求項12】
前記接触部のうち前記枠体部とは反対側の面を内周面とし、前記内周面のうち前記実装基板の側とは反対側を上端とし、前記上端の側に前記実装部に向かって突出する凸部(611)を備える、請求項4、6、9、10のいずれか1つに記載の位置決め構造。
【請求項13】
前記接触部のうち前記枠体部とは反対側の面を内周面とし、前記内周面のうち前記実装基板の側の下端として、前記下端の側に前記実装部に向かって突出する爪部(612)を備える、請求項4、6、9、10のいずれか1つに記載の位置決め構造。
【請求項14】
環状曲面を備える曲面部(21)および前記曲面部から凹んだ凹部(22)を有する微小振動体(2)と、
枠体状の実装部(51)と、互いに距離を隔てつつ、前記実装部を囲む配置とされる複数の電極部(53)と、互いに距離を隔てつつ、複数の前記電極部を囲む配置とされる複数の外枠部(54)と、を有してなり、接合部材(52)を介して前記実装部の内側領域に前記微小振動体の前記凹部が接続される実装基板(3)と、を備え、
前記微小振動体が前記実装部に搭載されたとき、前記曲面部が中空状態となる慣性センサ(1)の製造方法であって、
前記微小振動体を前記実装基板に搭載するときの位置決めに用いられ、前記微小振動体を前記実装部に搭載する際に、前記微小振動体に当接する接触部(61)と、前記接触部に接続され、前記接触部を囲む枠体状の枠体部(62)と、前記枠体部の外周側に配置される複数の把持部(64)と、複数の前記把持部と前記枠体部とをそれぞれ接続する複数の支持部(63)と、を有するガイド板材を用意することと、
前記微小振動体を用意することと、
複数の前記電極部よりも複数の前記外枠部の側に位置する部位に設けられ、前記ガイド板材の一部が嵌め込まれる嵌め込み溝(543、56)を有する前記実装基板を用意することと、
前記実装部の前記内側領域に前記接合部材を塗布することと、
前記嵌め込み溝に前記ガイド板材の一部を装着し、前記微小振動体の位置決め構造(100)を形成することと、
前記位置決め構造を形成した後、前記微小振動体を前記ガイド板材の前記接触部に接触させ、前記実装基板に対する位置合わせをしつつ、前記接触部よりも内側の位置に前記微小振動体を挿入することと、
前記微小振動体を挿入した後、前記微小振動体の前記凹部のうち前記実装基板とは反対側の吸着面(22a)を押圧した状態で、前記接合部材を介して前記微小振動体を前記実装部の前記内側領域に接合することと、
前記微小振動体と前記実装基板との接合後に、前記実装基板から前記ガイド板材を取り外すことと、を含む、慣性センサの製造方法。
【請求項15】
前記実装基板を用意することにおいては、複数の前記外枠部のうち隣接する前記外枠部の隙間が前記ガイド板材の前記支持部が嵌め込まれる位置決め溝(55)になっているものを用意し、
前記位置決め構造を形成することにおいては、前記実装基板に前記ガイド板材を装着したとき、前記位置決め溝に前記ガイド板材の前記支持部が嵌め込まれることで、前記ガイド板材が前記実装基板に一時的に固定され、不動の状態となる、請求項14に記載の慣性センサの製造方法。
【請求項16】
前記ガイド板材を用意することにおいては、前記把持部を変位させたときに連動して変位する複数の梁部(621、622)と、前記梁部に接続され、前記実装基板との位置決めに用いられる位置決め嵌合部(65)と、を有してなる前記枠体部を備える前記ガイド板材を用意し、
前記位置決め構造を形成することにおいては、前記ガイド板材の前記位置決め嵌合部を前記実装基板の前記嵌め込み溝に嵌め込み、
前記微小振動体を前記接触部よりも内側に挿入した後、前記微小振動体が前記実装基板に対して位置ズレが生じているとき、前記支持部のうち前記把持部の側の一端と前記枠体部の側の他端とを繋ぐ方向を接続方向として、前記把持部を前記接続方向に沿って変位させることで前記接触部を前記把持部の変位に連動して変位させつつ、前記接触部を介して前記微小振動体を押し、前記微小振動体の位置を調整すること、をさらに含む、請求項14に記載の慣性センサの製造方法。
【請求項17】
前記ガイド板材を用意することにおいては、前記把持部を変位させたときに連動して変位する複数の梁部(621、622)と、前記梁部に接続され、前記実装基板との位置決めに用いられる位置決め嵌合部(65)と、を有してなる前記枠体部を備える前記ガイド板材を用意し、
前記位置決め構造を形成することにおいては、前記ガイド板材の前記位置決め嵌合部を前記実装基板の前記嵌め込み溝に嵌め込み、
前記微小振動体を挿入することにおいては、前記把持部を前記接触部とは反対側に引っ張って前記接触部を変位させ、対向する前記接触部の隙間を広くした状態で、前記微小振動体を挿入した後、前記把持部を解放し、前記接触部の復元力を利用して前記微小振動体の位置合わせを行う、請求項14に記載の慣性センサの製造方法。
【請求項18】
前記ガイド板材を用意することにおいては、前記把持部を変位させたときに連動して変位する複数の梁部(621、622)と、前記梁部に接続され、前記実装基板との位置決めに用いられる位置決め嵌合部(65)と、を有してなる前記枠体部、およびを前記接触部のうち前記枠体部とは反対側の内周面であって、当該内周面のうち前記実装基板の側の下端側から突出する爪部(612)を備える前記ガイド板材を用意し、
前記位置決め構造を形成することにおいては、前記ガイド板材の前記位置決め嵌合部を前記実装基板の前記嵌め込み溝に嵌め込み、
前記微小振動体を挿入することにおいては、前記爪部で前記微小振動体を支えた状態にし、前記微小振動体を前記実装基板に接触しない状態で前記実装基板に対する位置合わせをし、
前記微小振動体を前記実装部の前記内側領域に接合することにおいては、前記微小振動体の前記吸着面を押圧する前に、前記把持部を前記接触部とは反対側に引っ張って前記接触部を変位させ、対向する前記接触部の隙間を前記微小振動体の幅よりも広くすることで、前記微小振動体を前記実装基板に落下させ、前記微小振動体の前記凹部と前記接合部材とを接触させる、請求項14に記載の慣性センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小振動体を備える慣性センサの製造に用いられる位置決め構造および慣性センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の自動運転のシステム開発が進められており、この種のシステムでは、高精度の自己位置の推定技術が必要である。例えば、いわゆるレベル3の自動運転向けに、GNSS(Global Navigation Satellite Systemの略)とIMU(Inertial Measurement Unitの略)とを備える自己位置推定システムの開発が進められている。IMUは、例えば、3軸のジャイロセンサと3軸の加速度センサから構成される6軸の慣性力センサである。将来的に、いわゆるレベル4以上の自動運転を実現するためには、現状よりもさらに高感度のIMUが求められる。
【0003】
このような高感度のIMUを実現するためのジャイロセンサとしては、BRG(Bird-bath Resonator Gyroscopeの略)が有力視されている。BRGは、ワイングラスモードで振動する三次元曲面を有する微小振動体が実装基板に搭載されてなる(例えば特許文献1)。この微小振動体は、振動の状態を表すQ値が106以上に達するため、従来よりも高感度が見込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2019/0094024A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この微小振動体は、例えば、数十μmの厚みの石英等で構成されるため、実装基板への搭載において傷を付けない取り扱いが求められる。微小振動体のベースとなる基材(例えば石英等)やその表面に形成される電極膜に傷が付いたり、電極膜が剥がれたりすると、Q値が低下し、ジャイロセンサの感度が低下してしまう。また、この微小振動体を実装基板に搭載する際には、実装基板に対する微小振動体の位置決め精度が要求される。そのため、BRGを製造するにあたっては、微小振動体に傷を付けない取り扱いと実装基板への位置決め精度との両立が必要である。
【0006】
特許文献1に記載のBRGは、実装基板の一部として微小振動体の位置決め用の可動治具が形成されており、微小振動体を実装基板に載置し、可動治具により微小振動体の位置調整を行った後に、微小振動体が実装基板に接合される。その後、実装基板のうち可動治具の部分は、エッチング等の処理により実装基板から解放され、除去される。
【0007】
しかし、この手法は、実装基板における微小振動体の位置決め精度を確保できるものの、プロセスが多く、製造コストが増大するおそれがある。そのため、微小振動体を傷付けず、かつ実装基板における位置決めを簡便にすることが求められる。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑み、この種の微小振動体を備える慣性センサにおいて、微小振動体を実装基板に搭載する際における微小振動体の傷付き防止と所定以上の精度が得られる簡便な位置決めとを両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の微小振動体の位置決め構造は、環状曲面を備える曲面部(21)および曲面部から凹んだ凹部(22)を有する微小振動体(2)と、実装基板(3)とを有してなり、微小振動体の凹部が実装基板のうち枠体状の実装部(51)の内側領域に搭載され、曲面部が中空状態である慣性センサ(1)の製造に用いられる位置決め構造(100)であって、実装基板と、実装基板との着脱が可能であって、微小振動体と実装基板との位置決めに用いられるガイド板材(6)と、を備える。このような構成において、実装基板は、互いに距離を隔てつつ、実装部を囲む配置とされる複数の電極部(53)と、互いに距離を隔てつつ、複数の電極部を囲む配置とされる複数の外枠部(54)と、複数の電極部よりも複数の外枠部の側に位置する部位に設けられ、ガイド板材の一部が嵌め込まれる嵌め込み溝(543、56)と、を有している。ガイド板材は、微小振動体を実装部に搭載する際に、微小振動体に当接する接触部(61)と、接触部に接続され、接触部を囲む枠体状の枠体部(62)と、枠体部の外周側に配置される複数の把持部(64)と、複数の把持部と枠体部とをそれぞれ接続する複数の支持部(63)と、を有しており、微小振動体が実装基板に搭載された際の実装基板の厚み方向に沿った方向を高さ方向として、ガイド板材は、微小振動体よりも高さ方向の寸法が小さい。
【0010】
これによれば、微小振動体と接触し、実装基板に対する微小振動体の位置決めに用いられる接触部を有するガイド板材が、着脱が可能な状態で実装基板に取り付けられてなる位置決め構造となる。また、この位置決め構造は、ガイド板材の高さが微小振動体に比べて小さく、ガイド板材を介して微小振動体を実装基板に搭載した際に、微小振動体が傾くことを抑制できると共に、実装基板からの取り外しが容易である。そのため、微小振動体が実装基板に搭載されてなる慣性センサの製造において、微小振動体の傷付きを抑制しつつも、簡便に、所定以上の精度で実装基板に対する位置決めを行うことが可能となる。
【0011】
請求項14に記載の慣性センサの製造方法は、環状曲面を備える曲面部(21)および曲面部から凹んだ凹部(22)を有する微小振動体(2)と、枠体状の実装部(51)と、互いに距離を隔てつつ、実装部を囲む配置とされる複数の電極部(53)と、互いに距離を隔てつつ、複数の電極部を囲む配置とされる複数の外枠部(54)と、を有してなり、接合部材(52)を介して実装部の内側領域に微小振動体の凹部が接続される実装基板(3)と、を備え、微小振動体が実装部に搭載されたとき、曲面部が中空状態となる慣性センサ(1)の製造方法であって、微小振動体を実装基板に搭載するときの位置決めに用いられ、微小振動体を実装部に搭載する際に、微小振動体に当接する接触部(61)と、接触部に接続され、接触部を囲む枠体状の枠体部(62)と、枠体部の外周側に配置される複数の把持部(64)と、複数の把持部と枠体部とをそれぞれ接続する複数の支持部(63)と、を有するガイド板材を用意することと、微小振動体を用意することと、複数の電極部よりも複数の外枠部の側に位置する部位に設けられ、ガイド板材の一部が嵌め込まれる嵌め込み溝(543、56)を有する実装基板を用意することと、実装部の内側領域に接合材料を塗布することと、嵌め込み溝にガイド板材の一部を装着し、微小振動体の位置決め構造(100)を形成することと、位置決め構造を形成した後、微小振動体をガイド板材の接触部に接触させ、実装基板に対する位置合わせをしつつ、接触部よりも内側の位置に微小振動体を挿入することと、微小振動体を挿入した後、微小振動体の凹部のうち実装基板とは反対側の吸着面(22a)を押圧した状態で、接合部材を介して微小振動体を実装部の内側領域に接合することと、微小振動体と実装基板との接合後に、実装基板からガイド板材を取り外すことと、を含む。
【0012】
これによれば、着脱可能なガイド板材を実装基板に取り付けて位置決め構造を構成した後、微小振動体をガイド板材のうち位置決め用の接触部に接触させつつ、実装基板に搭載することとなる。位置決め構造を構成するガイド板材に微小振動体を接触させることで、実装基板に対する微小振動体の位置決め精度が所定以上となり、かつ微小振動体を実装基板に搭載した後に、ガイド板材が実装基板からの取り外しができるため、従来よりも簡便な工程となる。そのため、微小振動体の傷付きを抑制しつつも、簡便に、所定以上の精度で位置決めされた微小振動体が実装基板に搭載されてなる慣性センサを製造することができる。
【0013】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】微小振動体を備える慣性センサを示す上面レイアウト図である。
【
図3】
図2中のIII-III間の断面構成を示す断面図である。
【
図4A】微小振動体の形成工程のうち部材の用意工程を示す図である。
【
図5】微小振動体が搭載される前の実装基板を示す上面レイアウト図である。
【
図6】
図1中のVI-VI間の断面構成を示す断面図である。
【
図7】
図1中のVII-VII間の断面構成を示す断面図である。
【
図8】第1実施形態に係る微小振動体の位置決め構造を示す上面レイアウト図である。
【
図9】
図8中のIX-IX間の断面構成を示す断面図である。
【
図10】
図8中のX-X間の断面構成を示す断面図である。
【
図11】
図8中のXI-XI間の断面構成を示す断面図である。
【
図12A】慣性センサの製造における微小振動体の搭載工程を示す図であって、部材の用意工程を示す図である。
【
図13】第2実施形態に係る微小振動体の位置決め構造を示す上面レイアウト図である。
【
図14】第3実施形態に係る微小振動体の位置決め構造を示す上面レイアウト図である。
【
図15】第4実施形態に係る微小振動体の位置決め構造を示す上面レイアウト図である。
【
図16】第5実施形態に係る微小振動体の位置決め構造を示す上面レイアウト図である。
【
図17】第6実施形態に係る微小振動体の位置決め構造を示す上面レイアウト図である。
【
図18A】第6実施形態に係る慣性センサの製造における微小振動体の搭載工程を示す図であって、微小振動体の挿入工程を示す図である。
【
図19】第7実施形態に係る微小振動体の位置決め構造を示す上面レイアウト図である。
【
図20】第8実施形態に係る微小振動体の位置決め構造を示す上面レイアウト図である。
【
図21】第9実施形態に係る微小振動体の位置決め構造を示す上面レイアウト図である。
【
図22】第10実施形態に係る微小振動体の位置決め構造を示す上面レイアウト図である。
【
図23】
図22の位置決め構造の一部を拡大した図であって、当該構造における実装基板とガイド板材との着脱を説明するための説明図である。
【
図24】第11実施形態に係る微小振動体の位置決め構造を示す断面図である。
【
図25A】第11実施形態に係る慣性センサの製造における微小振動体の搭載工程を示す図であって、微小振動体の挿入工程を示す図である。
【
図26】第12実施形態に係る微小振動体の位置決め構造を示す断面図である。
【
図27A】第12実施形態に係る慣性センサの製造における微小振動体の搭載工程を示す図であって、微小振動体の挿入工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態の慣性センサ1およびこれに用いられる位置決め構造100について、図面を参照して説明する。
【0017】
以下、説明の便宜上、
図1に示すように、紙面における左右方向に沿った方向を「x方向」と、同紙面上においてx方向に直交する方向を「y方向」と、xy平面に対する法線方向を「z方向」と、それぞれ称する。
図3以降の図中のx、y、z方向は、
図1のx、y、z方向にそれぞれ対応するものである。また、本明細書における「上」とは、図中のz方向に沿った方向であって、矢印側を意味し、「下」とは上の反対側を意味する。さらに、本明細書では、例えば
図1等に示すように、z方向上側から慣性センサ1あるいはその一部、または位置決め構造100を見た状態を「上面視」と称することがある。
【0018】
〔慣性センサ〕
本実施形態の慣性センサ1は、例えば、
図1に示すように、微小振動体2と、実装基板3とを備え、微小振動体2の一部が実装基板3に接合されてなる。慣性センサ1は、ワイングラスモードで振動することが可能な微小振動体2と実装基板3のうち後述する複数の電極部53との間における静電容量の変化に基づき、慣性センサ1に印加された角速度を検出する構成となっている。慣性センサ1は、例えば、BRG構造のジャイロセンサであって、自動車等の車両に搭載される用途に適用されると好適であるが、勿論、他の用途にも適用されうる。
【0019】
微小振動体2は、例えば、
図2に示すように、略半球形の三次元曲面の外形を有する曲面部21と、環状曲面形状の曲面部21の頂点側から球の中心側に向かうように凹んだ凹部22とを備える。微小振動体2は、例えば
図3に示すように、凹部22のうち外側の面が実装基板3に接続される際の吸着搬送に用いられる吸着面22aであり、凹部22のうち吸着面22aとは反対側が実装基板3に接続される実装面22bである。微小振動体2は、実装面22bの径が実装基板3のうち後述する枠体状の実装部51の内側領域の径よりも小さくなっており、実装基板3に搭載したときに、実装部51に当接しない形状となっている。微小振動体2は、例えば、慣性センサ1が駆動していない状態においてリム211と複数の電極部53との間隔が等間隔となるように、リム211が略円筒形状とされる。微小振動体2は、凹部22の実装面22b側が実装基板3に搭載されたとき、リム211を含む三次元曲面形状の部分が中空の状態となり、ワイングラスモードで振動することが可能となっている。微小振動体2は、曲面部21が椀状の三次元曲面を有し、その振動のQ値が例えば10
6以上となっている。
【0020】
微小振動体2は、例えば、石英、ガラス、シリコンやセラミック等の材料で構成されるが、三次元曲面形状とされた曲面部21および凹部22を形成でき、ワイングラスモードで振動することが可能なものであればよく、これらの材料に限定されない。微小振動体2は、例えば、その厚みが20μm~80μmといった具合の数十μmの薄肉構成となっている。微小振動体2は、例えば、実装基板3の厚み方向に沿った方向を高さ方向として、高さ方向の寸法が2.5mm、その径が5mmといったミリサイズの形状ある。微小振動体2は、その表面が導電層23で覆われている。導電層23は、例えば、限定するものではないが、下地側からCr(クロム)あるいはTi(チタン)と、Au(金)やPt(白金)等の任意の導電性材料との積層膜で構成され、電極膜として機能する。
【0021】
微小振動体2は、例えば、次のような工程により形成される。
【0022】
まず、例えば
図4Aに示すように、石英板20、三次元曲面形状を形成するための型Mおよび型Mを冷却するための冷却体Cを用意する。型Mは、例えば、石英板20に三次元曲面形状を形成する際のスペースとなる凹部M1と、凹部M1の中心において、凹部M1の深さ方向に沿って延設され、加工時に石英板20の一部を支える支柱部M2とを備え、凹部M1の底面に貫通孔M11が形成されている。冷却体Cは、型Mが嵌め込まれる嵌め込み部C1と、嵌め込み部C1の底面に排気用の排気口C11とを備え、石英板20を加工する際に型Mを冷却する役割を果たす。石英板20は、型Mの凹部M1の全域を覆うように配置される。
【0023】
続けて、例えば
図4Bに示すように、石英板20に向けてトーチTから火炎Fを吹きかけ、石英板20を溶融される。このとき、型Mの凹部M1は、図示しない真空機構により冷却体Cの排気口C11を通じて真空引きされている。これにより、石英板20のうち溶融した部分は、凹部M1の底面に向かって引き延ばされると共に、その中心周辺領域が支柱部M2により支えられた状態となる。その後、石英板20の加熱をやめて冷却することで、石英板20は、略半球形の三次元曲面形状とされた曲面部201と、曲面部201の中心近傍で凹んだ凹部202と、曲面部201の外周端に位置し、平坦形状とされた端部203とを有する形状となる。
【0024】
次いで、型Mの凹部M1を常圧に戻し、加工後の石英板20を取り外し、例えば
図4Cに示すように、任意の硬化性樹脂材料によりなる封止材Eで石英板20を封止する。その後、例えば、封止材Eを端部203側の面から研磨およびCMP(Chemical Mechanical Polishingの略)を行い、封止材Eごと端部203を除去し、凹部202を残す。そして、加熱や薬液を用いた溶解等の任意の方法により、封止材Eをすべて除去し、石英板20を取り出す。最後に、例えば、スパッタリング、蒸着、原子層堆積(ALD)や化学蒸着(CVD)等の任意の成膜プロセスにより、上記の加工後の石英板20の両面に導電層23を形成する。
【0025】
なお、微小振動体2は、例えば、上記のような製造プロセスにより製造され、Z方向を回転軸として回転対称な略ハーフトロイダル形状とされるが、上記の方法に限定されるものではなく、他の公知の方法が採用されても構わない。
【0026】
微小振動体2は、例えば
図8等を参照して後述するガイド板材6を実装基板3に装着してなる位置決め構造100を利用することにより、所定以上の位置合わせ精度で実装基板3に搭載される。この詳細については後述する。
【0027】
実装基板3は、例えば
図5に示すように、下部基板4と、上部基板5とを備え、これらが接合された構成となっている。例えば、実装基板3は、絶縁材料のホウケイ酸ガラスにより構成された下部基板4に、半導体材料のSi(シリコン)により構成された上部基板5を陽極接合することで得られる。実装基板3は、微小振動体2が搭載される実装部51と、実装部51を囲むように互いに離隔して配置された複数の電極部53と、電極部53を囲むように互いに離隔して配置された複数の外枠部54とを備える。
【0028】
実装基板3は、例えば
図5や
図6に示すように、環状の実装部51よりも外周側の位置に、実装部51を囲む環状のエッチング溝41が形成されている。これにより、微小振動体2が実装基板3に搭載されたとき、
図6や
図7に示すように、微小振動体2のリム211を含む曲面部21が中空状態となる。実装基板3は、下部基板4のエッチング溝41を跨ぐブリッジ配線42を備え、実装部51と4つの外枠部54とが電気的に接続され、同電位となっている。ブリッジ配線42は、例えばAl(アルミニウム)等の導電性材料により構成されると共に、複数の電極部53の間を通過する配置とされ、複数の電極部53と電気的に独立している。なお、
図6、
図7では、見易くするため、微小振動体2の導電層23を省略している。
【0029】
実装基板3は、例えば、環状の実装部51の内側領域にAuペースト等の接合部材52が塗布されており、接合部材52を介して微小振動体2が接合される。また、実装基板3は、ブリッジ配線42の一端が実装部51により、他端が外枠部54により、それぞれ覆われている。これにより、実装基板3は、微小振動体2が搭載されたとき、実装部51、ブリッジ配線42および外枠部54が微小振動体2と電気的に接続された状態となる。
【0030】
実装基板3は、例えば
図5や
図7に示すように、エッチング溝41の外周側の位置において、実装部51を囲むように互いに離れて配置された複数の電極部53を備える。複数の電極部53は、微小振動体2が搭載されたとき、微小振動体2のリム211と所定の距離を隔てた状態となり、それぞれが微小振動体2とキャパシタを形成する。複数の電極部53は、上面に電極膜531が形成されると共に、例えば、電極膜531に図示しないワイヤが接続され、図示しない外部の回路基板等と電気的に接続される。これにより、実装基板3は、複数の電極部53を介して、微小振動体2との間の静電容量を検出したり、微小振動体2との間に静電引力を生じさせ、微小振動体2をワイングラスモードで振動させたりすることが可能となっている。複数の電極部53は、例えば
図1に示すように、上面視にて、内周側および外周側の辺がそれぞれ円弧状となっており、内周側および外周側の辺それぞれを繋げると、径の異なる断続的な円を描く状態となっている。言い換えると、複数の電極部53は、実装部51を囲む円環枠体を所定間隔で均等に分割した構成となっている。
【0031】
なお、実装基板3の「内周側」とは、
図5に示すような上面視において、実装部51の内側領域の中心側を意味し、「外周側」とは、内周側とは反対に位置する側を意味する。また、
図1等には、実装基板3に16個の電極部53が互いに離れて環を描くように均等配置された例を示しているが、これに限定されるものではなく、電極部53の数や配置については微小振動体2の形状やサイズ等に応じて適宜変更されうる。
【0032】
実装基板3は、例えば
図5に示すように、複数の電極部53の外周側において、4つの外枠部54が複数の電極部53を取り囲むように互いに離れて配置されている。外枠部54は、x方向およびy方向において、他の外枠部54と所定の距離を隔てて配置されており、これらの隙間が後述するガイド板材6の位置決め溝55として機能する配置となっている。また、複数の外枠部54は、上面視にて、内周側の辺が円弧状となっており、これらの辺を繋ぐと、複数の電極部53を囲む断続的な円を描く形状となっている。複数の外枠部54のうち内周側の円弧部分は、複数の電極部53の外周側の円弧部分と所定の距離を隔てた略円環状の溝を構成しており、この溝が後述するガイド板材6のうち枠体部62が嵌め込まれる嵌め込み溝56として機能する。位置決め溝55および嵌め込み溝56については、後述する微小振動体2の位置決め構造100の説明にて述べる。
【0033】
複数の外枠部54は、それぞれ、例えば
図5や
図6に示すように、上面にAl等によりなる電極膜541を備えると共に、電極膜541に図示しないワイヤが接続され、図示しない外部の回路基板等と電気的に接続される。これにより、実装基板3は、電極膜541に接続される図示しない外部の電源等により、複数の外枠部54を介して微小振動体2の電位を所望の値に制御することが可能となっている。
【0034】
実装基板3は、例えば、次のような工程により製造されうる。
【0035】
まず、例えば、ホウケイ酸ガラスによりなる下部基板4を用意し、バッファードフッ酸を用いたウエットエッチングにより円環状のエッチング溝41を形成する。その後、エッチング溝41を跨ぐブリッジ配線42をAlのスパッタによる成膜を用いたリフトオフ法により形成する。なお、ブリッジ配線42の厚みは、例えば、0.1μm程度とされる。
【0036】
続けて、例えば、SiによりなるSi基板(後の上部基板5)を用意し、ホウケイ酸ガラスの下部基板4と陽極接合する。次にSi基板に後の実装部51、電極部53、外枠部54となる領域に区画する溝を公知のエッチング方法により形成する。
【0037】
例えば、DRIE(Deep Reactive Ion Etchingの略)によりトレンチエッチングを行って、下部基板4を露出させ、実装部51、電極部53、外枠部54の各領域を分離させる。これにより、Si基板は、互いに離隔した実装部51、複数の電極部53、および複数の外枠部54を備える上部基板5となる。
【0038】
最後に、例えば、複数の電極部53および外枠部54の上面にスパッタ等により電極膜531、541を形成した後、実装部51の内側領域にディスペンサー等により接合部材52を塗布する。
【0039】
なお、
図5等で示す1つの実装基板3は、例えば、ウエハに上記構造の複数の実装基板3となる領域を形成し、ダイシングカット等により個片化することにより得られる。言い換えると、実装基板3やこれを利用した位置決め構造100の製造については、ウエハレベルでの対応が可能である。
【0040】
以上が、慣性センサ1の基本的な構成である。慣性センサ1は、駆動時には、複数の電極部53の一部と微小振動体2との間に静電引力を生じさせることで、微小振動体2をワイングラスモードで振動させる。慣性センサ1は、微小振動体2が振動状態のときに、外部からコリオリ力が印加されると、微小振動体2が変位してその振動モードの節の位置が変化する。慣性センサ1は、この振動モードの節の変化を微小振動体2と複数の電極部53との静電容量で検出することで、慣性センサ1に働く角速度の検出が可能となっている。
【0041】
慣性センサ1の製造においては、次に説明する位置決め構造100を用いることで、微小振動体2を実装基板3に対する位置決め精度を所定以上としつつも、簡便に搭載することが可能である。
【0042】
〔微小振動体の位置決め構造〕
次に、微小振動体2を実装基板3に搭載する際に用いる位置決め構造100について、
図8~
図11を参照して説明する。
【0043】
位置決め構造100は、例えば
図8に示すように、実装基板3にガイド板材6が装着されてなる。ガイド板材6は、微小振動体2を位置決めしつつ搭載する際に、実装基板3に嵌合され、微小振動体2を実装基板3に接合した後に実装基板3から取り外される。つまり、ガイド板材6は、実装基板3への着脱が可能となっている。
【0044】
なお、本明細書における「嵌合」および「嵌め込む」とは、ガイド板材6が後ほど実装基板3からの取り外しができるように所定以下のクリアランス(限定するものではないが、例えば5μmなど)を有した状態で実装基板3に一時的に装着されることを意味する。
【0045】
ガイド板材6は、実装部51の外周側に配置され、微小振動体2を搭載する際に微小振動体2に接触する接触部61と、接触部61に接続され、接触部61を囲む枠体部62と、枠体部62の外周面に接続される複数の支持部63および把持部64を備える。ガイド板材6は、例えば、シリコンや金属材料等の任意の材料で構成されるが、微小振動体2と接触する際に、微小振動体2に傷を付けないように、微小振動体2の構成材料に応じて適宜変更されうる。ガイド板材6は、プレス打ち抜き加工やエッチング等の方法で形成されうる。
【0046】
ガイド板材6は、例えば
図9~
図11に示すように、実装基板3の厚み方向、すなわちz方向における寸法が実装基板3の厚み寸法よりも大きく、かつ微小振動体2のz方向における高さ寸法よりも小さくなっている。また、ガイド板材6のz方向における高さは、例えば、微小振動体2のリム211よりも高くされる。これは、微小振動体2を接触部61の内側領域に挿入する際に、微小振動体2が傾いた状態となることを抑制しつつ、微小振動体2を挿入する際に意図しない箇所で必要以上に接触することを抑制するためである。
【0047】
接触部61は、例えば
図9や
図10に示すように、実装基板3との嵌合状態において、実装部51よりも外周側、かつ複数の電極部53よりも内周側に配置される部位である。接触部61は、微小振動体2を実装基板3に搭載する際に、微小振動体2のリム211に当接することで、実装基板3に対する微小振動体2の位置決めをする役割を果たす。接触部61は、本実施形態では、例えば
図8に示すように、上面視にて、円環状の枠体形状となっており、その径については微小振動体2のうちリム211の外径に合わせて適宜変更されうる。
【0048】
枠体部62は、上面視にて、接触部61の外周面側に接続されると共に、接触部61を囲む枠体形状の部位である。枠体部62は、例えば
図9や
図10に示すように、接触部61よりも厚みが大きくなっている。枠体部62は、本実施形態では、上面視にて、円環形状とされると共に、実装基板3のうち複数の電極部53と外枠部54との隙間によりなる嵌め込み溝56に嵌め込まれる。
【0049】
支持部63は、例えば
図8に示すように、枠体部62の外周面に位置し、枠体部62と後述する把持部64とを接続する部材であり、第一の方向に沿って延設されたものと、第一の方向に交差する第二の方向に延設されたものによりなる。具体的には、支持部63は、例えば、x方向に沿って延設された2つの支持部63と、y方向に沿って延設された2つの支持部63とにより構成されている。つまり、ガイド板材6は、枠体部62を挟んだx方向の両端およびy方向の両端それぞれに1つの支持部63が配置されており、合計4つの支持部63を備えている。支持部63は、本実施形態では、例えば
図8や
図11に示すように、実装基板3のうち隣接する2つの外枠部54の隙間で構成された位置決め溝55に嵌め込まれ、実装基板3に対するガイド板材6の位置決めに用いられる。
【0050】
把持部64は、例えば、ガイド板材6を搬送する際に図示しない搬送装置などにより把持される部位であり、支持部63のうち枠体部62の側を一端として、その反対の他端側に配置される。把持部64は、例えば、それぞれの支持部63の他端側に設けられると共に、支持部63よりも幅広形状とされる。把持部64は、実装基板3にガイド板材6を嵌合したとき、上面視にて、実装基板3の外郭外側に配置される。
【0051】
以上が、本実施形態の位置決め構造100の基本的な構成である。位置決め構造100は、実装基板3とガイド板材6とが嵌合状態となっており、微小振動体2を後述の方法でガイド板材6の接触部61の内側に挿入することで、簡便に、所定以上の精度で微小振動体2の位置合わせを可能とする。
【0052】
〔慣性センサの製造方法〕
次に、本実施形態の慣性センサ1の製造方法について
図12A~
図12Fを参照して説明するが、微小振動体2、実装基板3およびガイド板材6自体の製造については上記したため、ここでは、ガイド板材6を用いた微小振動体2の実装について主に説明する。
【0053】
なお、
図12A~
図12Eは、
図9に示す断面図に相当するものである。また、
図12C~
図12Eでは、見易くするため、後述するピックアップ機構300の一部のみを簡易的に示すと共に、コレット302の内部を破線で示している。
【0054】
まず、
図12Aに示すように、例えば、上記の方法により製造した微小振動体2、実装基板3およびガイド板材6を用意する。その後、例えば、
図12Bに示すように、実装部51の内側領域に、図示しないディスペンサー装置等を用いてAuペーストによりなる接合部材52を塗布する。そして、例えば、実装基板3を図示しないマウンタ装置の吸着面に載置し、真空吸着により実装基板3を固定する。なお、この図示しないマウンタ装置は、吸着面を加熱可能な加熱機構を備えた構成となっている。
【0055】
続いて、一時的に固定した実装基板3にガイド板材6を取り付ける。具体的には、ガイド板材6は、例えば
図8に示すように、枠体部62が実装基板3の嵌め込み溝56に、支持部63が実装基板3の位置決め溝55に、それぞれ嵌め込まれ、実装基板3に対する位置合わせされた状態で装着され、動かない状態となっている。
【0056】
次いで、例えば
図12Cに示すように、微小振動体2のうち凹部22の吸着面22aにピックアップ機構300の一部を挿入し、真空吸着により微小振動体2を把持する。ピックアップ機構300は、例えば、台座部301と、略円筒形状のコレット302とを備え、台座部301が図示しない搬送部および真空機構に接続されており、コレット302による真空吸着と、吸着した物体の搬送とが可能な構成となっている。ピックアップ機構300は、例えば
図12Cに示すように、コレット302の最大径が凹部22の内径よりも小さくされ、コレット302の先端部の外径が他の部分よりも小さくなっている。また、ピックアップ機構300は、コレット302の長さが微小振動体2の凹部22の深さよりも大きくなっており、コレット302を微小振動体2の凹部22に挿入した際に、コレット302が微小振動体2の吸着面22a以外に当接しない構成となっている。
【0057】
このようなピックアップ機構300を用いて、微小振動体2の吸着面22aを真空吸着により把持しつつ、微小振動体2をガイド板材6のうち環状の接触部61の内側領域に挿入する。このとき、微小振動体2のうち略円筒形状のリム211を表面に余計な傷が生じないように必要最小限で接触させながら円筒形状の接触部61に挿入することで、微小振動体2が傾くことを抑制しつつも、実装基板3との位置決めを簡便に行うことができる。
【0058】
以下、説明の便宜上、微小振動体2をガイド板材6に挿入する際に、微小振動体2を接触部61に当接させることで、実装基板3に対する位置合わせ(位置決め)をすることを「パッシブアライメント」と称することがある。
【0059】
そして、例えば
図12Dに示すように、ピックアップ機構300により微小振動体2をさらに挿入し、その実装面22bを接合部材52に接触させる。その後、図示しないマウンタ装置により実装基板3を吸着した状態で加熱し、接合部材52を溶融させた後に、吸着面の温度を下げ、溶融した接合部材52を固化させることで微小振動体2と実装基板3とを接合する。
【0060】
微小振動体2と実装基板3との接合後、例えば
図12Eに示すように、コレット302の内部を常圧に戻して微小振動体2の真空吸着を解除し、ピックアップ機構300を退避させ、コレット302を微小振動体2の凹部22から抜き出す。その結果、微小振動体2は、例えば
図12Fに示すように、上面視にて、ガイド板材6の接触部61の内側領域に配置され、接合部材52を介して実装基板3に接合された状態となる。その後、例えば図示しない搬送装置により、ガイド板材6の把持部64を持ち上げることで、実装基板3からガイド板材6を取り外す。
【0061】
続いて、図示しないマウンタ装置による吸着を解除し、微小振動体2が接合された実装基板3を吸着面から取り外す。そして、実装基板3を図示しない回路基板等に搭載し、実装基板3の電極膜531、541にワイヤボンディングをし、回路基板等と実装基板3の電極部53および外枠部54とを電気的に接続し、真空機密封止を行うことで慣性センサ1を製造することができる。
【0062】
以上が、本実施形態の慣性センサ1の基本的な製造方法である。
【0063】
ここで、上記の製造方法による効果について説明する。
【0064】
BRG構造の慣性センサ1を製造する場合、微小振動体2のリム211と複数の電極部53とのそれぞれの間隔を同じとし、1つの電極部53と対向する微小振動体2とで構成されるキャパシタにおける初期の静電容量を一定にする必要がある。これは、電極部53ごとに微小振動体2とのギャップが異なると、外力が慣性センサ1に印加されたときの微小振動体2の変位に伴う上記キャパシタにおける静電容量の変化が電極部53ごとに異なることとなり、センサ精度が低下するためである。そのため、微小振動体2を実装基板3に搭載するとき、その位置決めについては所定以上の高い精度が求められる。
【0065】
このような高精度が求められる位置決め実装としては、画像処理を利用してエッジ検出を行い、各部材の特徴点を抽出する方法が挙げられる。具体的には、微小振動体2および実装基板3を撮像した後、公知の画像処理により微小振動体2や実装基板3のエッジを検出して特徴点を抽出し、その位置関係を推定し、位置合わせをしつつ、微小振動体2を実装基板3に搭載することが想定される。
【0066】
しかし、三次元曲面形状の微小振動体2の曲面部21やリム211を把持すると、把持機構により微小振動体2の一部が隠れてしまい、エッジ検出による微小振動体2の特徴点の抽出が難しくなる。そのため、画像処理だけを利用した微小振動体2の実装方法は、工程が煩雑となり、位置ズレによって微小振動体2やその電極膜に傷が付いたり、製造コストが増大したりするおそれがある。
【0067】
また、実装基板3の一部に微小振動体2の位置決め機構を設ける方法の場合には、微小振動体2の位置決め精度について確保できるものの、工程が複雑になり、製造コストが増大してしまう。
【0068】
したがって、微小振動体2のエッジ検出を妨げない把持をしつつ、画像処理だけを利用した場合や実装基板3に位置決め機構を設ける場合に比べて、より簡便に微小振動体2を実装基板3に搭載する方法が求められる。
【0069】
上記の位置決め構造100を用いることにより、画像処理だけを利用した方法に比べて、微小振動体2と実装基板3との位置決めをより簡便に行うことが可能となる。また、微小振動体2を搭載する際に、凹部22の吸着面22aにコレット302を挿入して真空吸着により把持することで、微小振動体2のうち搬送機構により隠される部分が減少し、エッジ検出を妨げない。そのため、画像処理を利用したアライメントを行う場合でも、微小振動体2の実装基板3への実装工程が煩雑となることを防ぐことができる。
【0070】
上記の方法によれば、実装基板3に着脱可能なガイド板材6を取り付けた位置決め構造100を構成し、ガイド板材6の接触部61に微小振動体2を当接させながら搭載することで、簡便に、所定以上の精度で微小振動体2の位置合わせを行うことができる。その結果、微小振動体2に意図しない傷や導電層23(電極膜)の剥がれが生じることを抑制でき、簡便に信頼性の高い慣性センサ1を製造することができる。
【0071】
本実施形態によれば、微小振動体2やその電極膜に傷がつくことが抑制され、信頼性が高く、高感度な慣性センサ1となる。また、上記の位置決め構造100を構成することで、簡便に、微小振動体2の傷等を抑制しつつ、所定以上の精度での位置合わせが可能となり、製造コストの増大が抑制される。
【0072】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る位置決め構造100について、
図13を参照して説明する。
図13では、後述するガイド板材6の接触部61と微小振動体2との当接状態を分かり易くするため、実装基板3に搭載される微小振動体2の外郭を破線で示している。
【0073】
本実施形態の慣性センサ1を製造する際に用いる位置決め構造100は、例えば
図13に示すように、ガイド板材6の接触部61が上面視にて略棒状となっている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0074】
複数の接触部61は、本実施形態では、上面視にて略棒状とされており、微小振動体2のパッシブアライメント時における微小振動体2との接触面積が上記第1実施形態よりも小さくなっている。具体的には、接触部61は、例えば
図13に示すように、それぞれ近接する支持部63の延長線上に位置し、その先端が実装部51に向かうにつれて細くなっており、当該延長線上でのみ微小振動体2と接触する形状となっている。言い換えると、上記第1実施形態におけるガイド板材6の接触部61と微小振動体2との接触状態を「面接触」としたとき、接触部61は、本実施形態では、微小振動体2といわば「線接触」をするような形状となっている。
【0075】
なお、本実施形態の位置決め構造100を用いて製造される慣性センサ1の構造は、上記第1実施形態と同じである。
【0076】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様に、信頼性が高く、高感度の慣性センサ1を簡便に製造することができる。また、接触部61が上面視にて略棒状とされることで、微小振動体2の位置決め時に微小振動体2との接触面積が上記第1実施形態よりも小さくなり、微小振動体2やその電極膜の傷付き抑制の効果がより高まる。
【0077】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る位置決め構造100について、
図14を参照して説明する。
図14では、
図13と同様に、搭載される微小振動体2の外郭を破線で示している。
【0078】
本実施形態の位置決め構造100は、例えば
図14に示すように、上記第1実施形態に対して、ガイド板材6の接触部61の形状が上面視にて略T字形状に変更されたものに相当する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0079】
複数の接触部61は、上面視にて、実装部51側のそれぞれの先端部分が微小振動体2のリム211の外形に対応する円弧形状となっている。複数の接触部61は、微小振動体2のパッシブアライメント時に、円弧形状の先端部で微小振動体2に当接する。
【0080】
なお、本実施形態の位置決め構造100を用いて製造される慣性センサ1の構造は、上記第1実施形態と同じである。
【0081】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。また、上記第2実施形態と同様に、上記第1実施形態に比べて、パッシブアライメント時における微小振動体2との接触面積が小さくなりため、より微小振動体2に傷が付きにくい位置決め構造100となる。さらに、上記第2実施形態と比べて、パッシブアライメント時における微小振動体2との接触面積が大きいため、微小振動体2がz方向を軸として回転するような位置ズレが抑制され、微小振動体2の傷抑制と位置ズレ抑制とのバランスが取れたものとなる。
【0082】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る位置決め構造100について、
図15を参照して説明する。
図15では、
図13と同様に、搭載される微小振動体2の外郭を破線で示している。
【0083】
本実施形態の位置決め構造100は、例えば
図15に示すように、上面視にて、ガイド板材6の枠体部62が四角形の枠体形状とされ、実装基板3の外枠部54の形状が枠体部62に対応する形状に変更されている。また、位置決め構造100は、上記第2実施形態と同様に、上面視にて、接触部61が略棒状となっている。
【0084】
位置決め構造100は、これらの点で上記第1実施形態と相違する。後者の相違点については上記第2実施形態で既に述べたため、本実施形態では、前者の相違点について主に説明する。
【0085】
複数の外枠部54は、本実施形態では、上面視にて、内周側の外郭が曲面形状でなく、ガイド板材6のうち対向する枠体部62に沿った2つの平面形状の部分を備え、これらの平面形状の部分が交差する形状となっている。また、複数の外枠部54は、内周側の平面形状部分が交差する箇所が外周側に向かって凹んだ溝状の逃げ溝542となっている。これは、ガイド板材6を実装基板3に装着して位置決め構造100を構成する際に、枠体部62の四隅の角部が外枠部54に接触し、ガイド板材6が実装基板3に嵌合できなくなることを防止するためである。つまり、複数の外枠部54は、内郭の四隅に逃げ溝542が設けられた1つの略四角形枠体を4つに等分割した形状となっている。また、下部基板4のブリッジ配線42は、実装部51と外枠部54との距離が大きくなった分だけ、上記第1実施形態よりも長くなっているが、その機能については上記第1実施形態と同じである。
【0086】
なお、
図15では、位置決め溝55に近接する位置に電極膜541が形成され、それぞれ2つの電極膜541を備えた外枠部54を代表例として示しているが、これに限定されるものではなく、電極膜541の位置や数については適宜変更されうる。
【0087】
ガイド板材6の枠体部62は、本実施形態では、上面視にて、一方向に沿って延設された第一の梁部621と、一方向とは異なる他の方向に沿って延設された第二の梁部622とを備える四角形枠体状となっている。具体的には、枠体部62は、例えば、x方向に延設され、平行配置された2つの第一の梁部621と、y方向に沿って延設され、平行配置された2つの第二の梁部622とが連結された構成となっている。枠体部62は、4つの外枠部54の内周面で構成される仮想四角形の寸法よりも所定の分(例えば限定するものではないが、10μm以下)だけ小さいサイズとされている。これにより、実装基板3は、4つの外枠部54の内周面が枠体部62の嵌め込み溝56として機能する構成となっている。
【0088】
なお、本実施形態の位置決め構造100を利用して製造される慣性センサ1は、上記第1実施形態に対して、実装基板3の外枠部54およびブリッジ配線42の形状等が変更された構造に相当するが、角速度の検出部分の構成については同じである。
【0089】
本実施形態によれば、上記第1実施形態および上記第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0090】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る位置決め構造100について、
図16を参照して説明する。
図16では、
図13と同様に、搭載される微小振動体2の外郭を破線で示している。
【0091】
本実施形態の位置決め構造100は、例えば
図16に示すように、上記第4実施形態に対して、上面視にて、接触部61の形状を略T字形状に変更したものに相当する。また、この位置決め構造100を利用して製造できる慣性センサ1の構造は、上記第4実施形態と同じである。
【0092】
本実施形態によれば、上記第4実施形態と同様の効果に加えて、微小振動体2のパッシブアライメント時にz方向を軸に回転する位置ズレを抑制でき、微小振動体2の傷付き抑制と位置ズレ抑制とのバランスが両立する効果も得られる。
【0093】
(第6実施形態)
第6実施形態に係る位置決め構造100について、
図17~
図18Dを参照して説明する。
【0094】
図17では、
図13と同様に、搭載される微小振動体2の外郭を破線で示している。
図18A~
図18Dでは、
図17中のXVIIIA-XVIIIA間の断面に対応する断面を示すと共に、接触部61、枠体部62、支持部63および把持部64の境界を便宜的に二点鎖線で示している。また、
図17、
図18Cでは、後述するアクティブアライメントにおける把持部64およびこれに伴う支持部63等の可動方向を白抜き矢印で示している。
【0095】
本実施形態の位置決め構造100は、例えば
図17に示すように、上面視にて、ガイド板材6の枠体部62が略四角形枠体状とされると共に、その四隅に円形状の位置決め嵌合部65を備える。位置決め構造100は、上記第4実施形態に対して、実装基板3の外枠部54の逃げ溝542を位置決め嵌合部65に対応する嵌合溝543に変更しつつ、隣接する外枠部54の隙間を大きくしたものに相当する。また、位置決め構造100は、上記第2実施形態と同様に、上面視にて、接触部61が略棒状となっている。
【0096】
位置決め構造100は、これらの点で上記第1実施形態と相違する。接触部61の形状およびその効果については上記第2実施形態で既に述べたため、本実施形態では、その他の相違点について主に説明する。
【0097】
〔位置決め構造〕
複数の外枠部54は、上記第4実施形態の外枠部54における逃げ溝542を枠体部62の位置決め嵌合部65が嵌め込まれる嵌合溝543に変更したものに相当する。つまり、複数の外枠部54の嵌合溝543は、ガイド板材6を実装基板3に装着する際の位置決め溝55として機能する。また、複数の外枠部54の対向する内周面同士の間隔は、枠体部62の梁部621、622によりなる略四角形枠体の外径に対して所定のクリアランスを有するように調整される。これにより、複数の外枠部54の内周面は、嵌め込み溝56として機能する。
【0098】
複数の外枠部54は、ガイド板材6の支持部63を拘束しないようにするため、x方向およびy方向の寸法が小さくされ、隣接する外枠部54の間隔が上記第1~第4実施形態よりも広くなっている。これにより、ガイド板材6を実装基板3に嵌合した状態であっても、複数の把持部64は、それぞれ
図17において白抜き矢印で示す方向に変位させることが可能となっている。
【0099】
複数の把持部64は、枠体部62のx方向両端に配置されたものについてはx方向に沿って、枠体部62のy方向両端に配置されたものについてはy方向に沿って、それぞれ変位可能となっている。具体的には、ガイド板材6は、本実施形態では、把持部64に外力が印加されると、支持部63を介して当該把持部64に接続された枠体部62の梁部621が当該支持部63の接続方向に沿って弾性変形し、外力を加えた把持部64が変位する。その結果、ガイド板材6は、把持部64が変位すると、当該把持部64の変位方向に沿って、接触部61が連動して変位する構成となっている。言い換えると、ガイド板材6は、微小振動体2を実装基板3に載置した後においても、接触部61により微小振動体2を押圧することで、微小振動体2をx方向およびy方向に動かすことができる構成となっている。
【0100】
以下、説明の便宜上、ガイド板材6の接触部61を変位させ、接触部61を介して微小振動体2を押圧することで、実装基板3に対する微小振動体2の位置の微調整を行うことを「アクティブアライメント」と称することがある。
【0101】
枠体部62は、本実施形態では、例えば
図17に示すように、上面視にて、四角形枠体状とされ、x方向に沿って延設された第一の梁部621と、y方向に沿って延設された第二の梁部622と、これらの交差部分に設けられた位置決め嵌合部65とを備える。枠体部62は、上面視にて、位置決め嵌合部65が外枠部54の嵌合溝543により固定される一方で、梁部621、622が撓むことができる構成となっている。そのため、枠体部62は、把持部64をガイド板材6の中心側に変位させたとき、当該把持部64に接続された梁部621あるいは梁部622が弾性変形をし、接触部61がこれに連動して変位する。つまり、接触部61は、接続された支持部63のうち枠体部62側の一端と把持部64側の他端とを繋ぐ方向を接続方向として、把持部64と共に接続方向に沿って移動可能となっている。
【0102】
以上が、本実施形態の位置決め構造100の基本的な構成である。この位置決め構造100は、上記第1~第5実施形態では実装基板3との嵌合状態においてガイド板材6が不動であったのに対し、嵌合状態であっても、把持部64を介して接触部61が可動である特徴を備える。
【0103】
〔慣性センサ1の製造方法〕
次に、本実施形態の位置決め構造100を用いた慣性センサ1の製造方法について説明するが、部分的に上記第1実施形態と同じ工程を含むため、ここでは、
図18A~
図18Dを参照しつつ、上記第1実施形態と相違する工程について主に説明する。
【0104】
まず、上記第1実施形態と同様に、微小振動体2、実装基板3およびガイド板材6を用意した後、実装基板3を図示しないマウンタ装置に吸着固定し、接合部材52を塗布する。そして、実装基板3にガイド板材6を装着し、
図17に示す位置決め構造100を構成する。
【0105】
続いて、例えば
図18Aに示すように、ピックアップ機構300のコレット302を微小振動体2の凹部22に挿入し、吸着面22aでの真空吸着により微小振動体2を把持する。その後、把持した微小振動体2をガイド板材6の接触部61の内側領域に挿入し、実装面22bを接合部材52に接触させる。この挿入工程において、微小振動体2は、接触部61に当接することで、パッシブアライメントがなされる。このとき、微小振動体2と実装基板3との位置合わせ精度をさらに向上させたい場合には、必要に応じて、アクティブアライメントの工程を行う。
【0106】
アクティブアライメントの工程を行う場合には、例えば
図18Bに示すように、微小振動体2を実装基板3に載置した後、コレット302による微小振動体2の吸着把持を解除し、ピックアップ機構300を一時的に退避させる。これにより、微小振動体2は、外力が加われば移動する状態となる。
【0107】
そして、例えば
図18Cに白抜き矢印で示すように、図示しない搬送装置等により把持部64を実装部51に向かうように変位させることで、接触部61を介して微小振動体2を押圧する。これにより、微小振動体2を意図する所定の方向に移動させるアクティブアライメントによって、微小振動体2の位置合わせ精度をさらに向上させることができる。
【0108】
なお、
図18Cでは、把持部64を変位させる前の状態を便宜的に破線で示している。また、微小振動体2を移動させる方向については、例えば、画像処理によりエッジ検出を利用した微小振動体2の推定位置に基づいて決定されうる。
【0109】
アクティブアライメントが終了した後、例えば
図18Dに示すように、再度、ピックアップ機構300を作動させ、コレット302を凹部22に挿入して微小振動体2を実装基板3側に押圧し、微小振動体2が外力により動かない状態とする。
【0110】
その後、上記第1実施形態と同様の工程により、接合部材52を介して微小振動体2を実装基板3に接合し、ガイド板材6を実装基板3から取り外す。最後に、回路基板等への搭載、ワイヤボンディング、および真空気密封止を行うことで、慣性センサ1を製造することができる。
【0111】
なお、本実施形態の位置決め構造100を利用して製造できる慣性センサ1は、外枠部54のうち嵌合溝543、および隣接する外枠部54の間隔以外の部分については、上記第5実施形態の慣性センサ1と同じ構造である。
【0112】
本実施形態によっても、微小振動体2やその電極膜の傷付きを抑制しつつ、簡便に、所定以上の精度で微小振動体2の位置決めが可能な位置決め構造100となり、信頼性が高く、高感度の慣性センサ1を製造することができる。また、パッシブアライメントに加えて、必要に応じて、アクティブアライメントによる微小振動体2の位置を再調整することができるため、上記第1~第5実施形態よりも位置決め精度が向上する効果も得られる。
【0113】
(第7実施形態)
第7実施形態に係る位置決め構造100について、
図19を参照して説明する。
【0114】
図19では、
図13と同様に、搭載される微小振動体2の外郭を破線で示している。また、
図19では、
図17と同様に、アクティブアライメントにおける把持部64およびこれに伴う支持部63等の可動方向を白抜き矢印で示している。
【0115】
本実施形態の位置決め構造100は、例えば
図19に示すように、上記第6実施形態に対して、上面視にて、接触部61の形状を略T字形状に変更したものに相当する。また、この位置決め構造100を利用して製造できる慣性センサ1の構造は、上記第6実施形態と同じである。
【0116】
本実施形態によれば、上記第6実施形態と同様の効果に加えて、微小振動体2のパッシブアライメント時にz方向を軸に回転する位置ズレを抑制でき、微小振動体2の傷付き抑制と位置ズレ抑制とのバランスが両立する効果も得られる。
【0117】
(第8実施形態)
第8実施形態に係る位置決め構造100について、
図20を参照して説明する。
【0118】
図20では、
図13と同様に、搭載される微小振動体2の外郭を破線で示している。また、
図20では、
図17と同様に、アクティブアライメントにおける把持部64およびこれに伴う支持部63等の可動方向を白抜き矢印で示している。
【0119】
本実施形態の位置決め構造100は、例えば
図20に示すように、上記第7実施形態に対して枠体部62のうち梁部621、622の交差部分にバネ部66がさらに形成されたものに相当する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0120】
枠体部62は、本実施形態では、アクティブアライメントにおける梁部621、622の変形をより容易にするため、第一の梁部621と第二の梁部622との交差部分にバネ部66が形成されている。言い換えると、枠体部62は、梁部621、622それぞれの両端がバネ部66となっている。これにより、梁部621、622は、バネ部66を備えることにより剛性が低下し、把持部64を変位させたときの変形が容易となる。具体的には、第一の梁部621は、x方向における両端がバネ部66とされることで、y方向に沿った変形が容易となる。第二の梁部622は、y方向における両端がバネ部66とされることで、x方向に沿った変形が容易となる。
【0121】
なお、バネ部66は、梁部621、622の剛性を低下させ、これらが弾性変形しやすくなればよく、
図20に示すように略S字状の形状に限られるものではなく、形状やサイズ等については適宜変更されうる。
【0122】
本実施形態によれば、上記第7実施形態の効果に加えて、アクティブアライメントをより行いやすくなる効果も得られる。
【0123】
(第9実施形態)
第9実施形態に係る位置決め構造100について、
図21を参照して説明する。
【0124】
図21では、
図13と同様に、搭載される微小振動体2の外郭を破線で示している。また、
図21では、
図17と同様に、アクティブアライメントにおける把持部64およびこれに伴う支持部63等の可動方向を白抜き矢印で示している。
【0125】
本実施形態の位置決め構造100は、例えば
図21に示すように、上記第8実施形態に対して支持部63に弾性変形部67がさらに形成されたものに相当する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0126】
ガイド板材6の支持部63は、本実施形態では、把持部64を変位させたときに、これに接続された接触部61が把持部64よりも小さく変位するようにするため、弾性変形部67を有した構成となっている。なお、弾性変形部67は、ガイド板材6のうち外枠部54の内側に配置されるバネ部66を「内バネ」としたとき、外枠部54の外側に配置されるため、「外バネ」とも称されうる。
【0127】
弾性変形部67は、例えば、上面視にて、支持部63に対して直交するように延設され、その延設方向に沿った貫通溝が設けられた形状、すなわち矩形枠体状となっている。これにより、弾性変形部67は、把持部64を変位させたときに追従して変形することで、接触部61に伝搬する変位量を小さくする減衰機構としての役割を果たす。そのため、ガイド板材6は、把持部64を変位させたときの接触部61の最小変位量が小さくなることで、より高精度にアクティブアライメントを行うことが可能な構成となる。
【0128】
本実施形態によれば、上記第7実施形態の効果に加えて、アクティブアライメントにおける微小振動体2の最小変位量を小さくすることでより高精度の位置決め精度となる効果も得られる。
【0129】
(第10実施形態)
第10実施形態に係る位置決め構造100について、
図22を参照して説明する。
【0130】
図22では、
図13と同様に、搭載される微小振動体2の外郭を破線で示している。また、
図22では、
図17と同様に、アクティブアライメントにおける把持部64およびこれに伴う支持部63等の可動方向を白抜き矢印で示している。
【0131】
本実施形態の位置決め構造100は、例えば
図22に示すように、上記第9実施形態に対して位置決め嵌合部65が上面視にて略台形状とされ、これに対応して嵌合溝543の形状が変更されたものに相当する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0132】
ガイド板材6の位置決め嵌合部65は、本実施形態では、例えば
図22に示すように、上面視にて、ガイド板材6の中心位置を軸とする径方向(以下、単に「径方向」という)に向かうにつれて幅が広くなる略台形状となっている。具体的には、位置決め嵌合部65は、例えば
図23に示すように、径方向の外側から内側に向かう方向を「内側方向DR1」とし、その反対方向を「外側方向DR2」として、内側方向DR1の幅よりも外側方向DR2の幅のほうが大きくなっている。
【0133】
そして、本実施形態では、ガイド板材6は、実装基板3に嵌合させる際、位置決め嵌合部65を外側方向DR2に引っ張って枠体部62を弾性変形させた状態で取り付けることとなる。その結果、ガイド板材6の位置決め嵌合部65を実装基板3に嵌合させたとき、位置決め嵌合部65には内側方向DR1に向かう復元力が働き、ガイド板材6は、外枠部54の嵌合溝543により強固に嵌め込まれる。そのため、ガイド板材6の実装基板3に対する位置決め精度が向上する。
【0134】
一方、ガイド板材6を実装基板3から脱着させる場合には、位置決め嵌合部65を外側方向DR2に向かって再度引っ張ることで、ガイド板材6は、実装基板3と離隔した状態、すなわち実装基板3から取り外すことが容易な状態となる。
【0135】
つまり、ガイド板材6は、位置決め嵌合部65が上面視にて略台形状とされることで、実装基板3の着脱が容易な構造となっている。
【0136】
本実施形態によれば、上記第8実施形態の効果に加えて、実装基板3に対するガイド板材6の着脱が容易となる効果も得られる。
【0137】
(第11実施形態)
第11実施形態に係る位置決め構造100について、
図24~
図25Dを参照して説明する。
【0138】
図24~
図25Dでは、
図18Aに示す断面に相当する断面を示すと共に、接触部61、枠体部62、支持部63および把持部64の境界を便宜的に二点鎖線で示している。また、
図24では、位置決め構造100に搭載される微小振動体2を破線で示している。さらに、
図25A~
図25Cでは、ガイド板材6に作用する力の方向を白抜き矢印で示している。加えて、
図25A、
図25Dでは、コレット302の内部を破線で示している。
【0139】
本実施形態の位置決め構造100は、上記第6~第10実施形態に対して、例えば
図24に示すように、接触部61の内周面のうち実装基板3とは反対の上端側に突出する凸部611が形成されたものである。本実施形態では、この凸部611について主に説明する。
【0140】
〔位置決め構造〕
本実施形態の位置決め構造100は、ガイド板材6の接触部61が凸部611を有する構成とされると共に、ガイド板材6の初期状態において、接触部61のうち凸部611の内側領域の外径が微小振動体2のリム211の外径よりも小さくなっている。また、この位置決め構造100は、ガイド板材6が実装基板3に嵌合している状態において、把持部64を介して接触部61を移動させることが可能な構成である。
【0141】
なお、ここでいう「初期状態」とは、ガイド板材6に図示しない搬送装置等による外力が何ら加えられておらず、外力に起因する復元力がガイド板材6に生じていない状態を意味する。
【0142】
接触部61は、本実施形態では、内周面のうち少なくとも微小振動体2が実装基板3に搭載されたときのリム211よりもz方向上側の位置に凸部611が形成されている。凸部611は、接触部61により微小振動体2のリム211を押圧する際に、微小振動体2の曲面部21のうちリム211よりも上の部分で当接し、微小振動体2が実装基板に対して傾く状態となることを抑制する役割を果たす。
【0143】
なお、凸部611は、微小振動体2に当接して傾きを抑制できればよく、接触部61の内周面の周方向に沿って連続的あるいは断続的に設けられてもよいし、微小振動体2の形状等に合わせてその数や配置等については適宜変更されうる。また、凸部611は、複数の接触部61のすべてに設けられてもよいし、一部の接触部61にのみ設けられてもよい。
【0144】
〔慣性センサの製造方法〕
次に、本実施形態の位置決め構造100を用いた慣性センサ1の製造方法について説明するが、上記第1実施形態と同じ工程を含むため、ここでは、
図25A~
図25Dを参照しつつ、上記第1実施形態と相違する工程について主に説明する。
【0145】
まず、微小振動体2、実装基板3およびガイド板材6を用意し、接合部材52を塗布した実装基板3にガイド板材6を取り付け、本実施形態の位置決め構造100を構成する。そして、例えば
図25Aに示すように、ガイド板材6の把持部64を図示しない搬送装置等によりx方向の外側に引っ張り、接触部61同士の間隔を広げ、少なくとも凸部611の内側領域の外径がリム211の外径よりも大きい状態にする。この把持部64の引っ張りを維持した状態で、ピックアップ機構300により吸着把持した微小振動体2を、接触部61の内側に挿入し、実装面22bを接合部材52に接触させる。
【0146】
微小振動体2を接合部材52に接触させた後、ガイド板材6の引っ張り状態を維持したまま、コレット302による真空吸着を解除し、例えば
図25Bに示すように、ピックアップ機構300を一時的に退避させる。これにより、微小振動体2は、接合部材52上に凹部22が載置され、外力が加えられると移動する状態となる。
【0147】
続けて、例えば
図25Cに示すように、把持部64を解放してガイド板材6の引っ張り状態を解除し、復元力を利用して接触部61を微小振動体2に接触させる。これにより、微小振動体2は、接触部61の内周面のうち実装基板3側の下端付近でリム211が押圧されると共に、曲面部21のうちリム211よりも上の部位が凸部611に押圧された状態となる。その結果、微小振動体2は、凸部611により実装基板3に対して傾くことを抑制されたまま、接触部61の他の部分により押圧され、実装基板3に対するパッシブアライメントがなされる。
【0148】
次いで、例えば
図25Dに示すように、ピックアップ機構300のコレット302を微小振動体2の凹部22に挿入してピックアップ機構300により微小振動体2を実装基板3側に押圧した状態とする。
【0149】
その後、上記第1実施形態と同様の工程により、接合部材52を介して微小振動体2を実装基板3に接合し、ガイド板材6を実装基板3から取り外す。最後に、回路基板等への搭載、ワイヤボンディング、および真空気密封止を行うことで、慣性センサ1を製造することができる。
【0150】
なお、本実施形態の位置決め構造100を利用して製造できる慣性センサ1は、外枠部54のうち嵌合溝543、および隣接する外枠部54の間隔以外の部分の基本的な構造については、上記第5実施形態の慣性センサ1と同じである。
【0151】
本実施形態によっても、微小振動体2やその電極膜の傷付きを抑制しつつ、簡便に、所定以上の精度で微小振動体2の位置決めが可能な位置決め構造100となり、信頼性が高く、高感度の慣性センサ1を製造することができる。また、ガイド板材6が凸部611を有することにより、微小振動体2が搭載時に傾くことが抑制され、より位置決め精度が向上する効果も得られる。
【0152】
(第12実施形態)
第12実施形態に係る位置決め構造100について、
図26~
図27Dを参照して説明する。
【0153】
図26~
図27Dでは、
図18Aに示す断面に相当する断面を示すと共に、接触部61、枠体部62、支持部63および把持部64の境界を便宜的に二点鎖線で示している。また、
図26では、位置決め構造100に搭載される微小振動体2を破線で示している。さらに、
図27C、
図27Dでは、ガイド板材6に作用する力の方向を白抜き矢印で示している。加えて、
図27A~
図27Dでは、コレット302の内部を破線で示している。
【0154】
本実施形態の位置決め構造100は、上記第6~第10実施形態に対して、例えば
図26に示すように、接触部61の内周面のうち下端側に突出する爪部612が形成されたものである。本実施形態では、この爪部612について主に説明する。
【0155】
〔位置決め構造〕
本実施形態の位置決め構造100は、ガイド板材6の接触部61が爪部612を有する構成とされると共に、ガイド板材6の初期状態において、接触部61のうち爪部612の内側領域の外径が微小振動体2のリム211の外径よりも小さくなっている。また、この位置決め構造100は、上記第11実施形態と同様に、把持部64を介して接触部61が移動可能な構成である。
【0156】
爪部612は、例えば、接触部61の内周面のうち下端に設けられ、一時的に微小振動体2を支持する役割を果たす。爪部612は、例えば、リム211の厚み以上の幅となるように突出している。
【0157】
なお、爪部612は、ガイド板材6の初期状態にて微小振動体2のリム211を支えて支持できればよく、接触部61の内周面の周方向に沿って連続的または断続的に形成されてもよいし、幅や配置等については微小振動体2の形状等に合わせて適宜変更されうる。また、爪部612は、複数の接触部61のすべてに設けられてもよいし、一部の接触部61にのみ設けられてもよい。
【0158】
〔慣性センサの製造方法〕
次に、本実施形態の位置決め構造100を用いた慣性センサ1の製造方法について説明するが、上記第1実施形態と同じ工程を含むため、ここでは、
図27A~
図27Dを参照しつつ、上記第1実施形態と相違する工程について主に説明する。
【0159】
まず、微小振動体2、実装基板3およびガイド板材6を用意し、接合部材52を塗布した実装基板3にガイド板材6を取り付け、本実施形態の位置決め構造100を構成する。
そして、例えば
図27Aに示すように、ピックアップ機構300により吸着把持した微小振動体2を接触部61の内側領域に挿入し、微小振動体2のリム211を爪部612に当接させる。
【0160】
続けて、例えば
図27Bに示すように、コレット302による真空吸着を解除し、ピックアップ機構300を一時的に退避させる。これにより、微小振動体2は、接触部61のうち爪部612よりもz方向上側の部分に接触することでパッシブアライメントをされた後、爪部612上に載置された状態となる。なお、微小振動体2は、上記第1実施形態で説明したように、リム211下端面がCMPで加工されることで所定以上の平坦性が確保されるため、爪部612上に載置されたとき、実装基板3に対して傾くことなく支持された状態となる。
【0161】
そして、例えば
図27Cに示すように、図示しない搬送装置等により把持部64を外側に引っ張り、接触部61のうち少なくとも爪部612の内側領域の外径がリム211の外径よりも大きい状態とする。これにより、前工程でパッシブアライメントがなされた微小振動体2は、実装基板3上に落下し、実装面22bが接合部材52に接触した状態となる。
【0162】
その後、ガイド板材6の引っ張り状態を維持したまま、例えば
図27Dに示すように、ピックアップ機構300のコレット302を微小振動体2の凹部22に挿入し、微小振動体2を吸着把持する。そして、この状態のまま、ピックアップ機構300により微小振動体2を実装基板3側に押圧した状態とする。
【0163】
その後、上記第1実施形態と同様の工程により、接合部材52を介して微小振動体2を実装基板3に接合し、ガイド板材6を実装基板3から取り外す。最後に、回路基板等への搭載、ワイヤボンディング、および真空気密封止を行うことで、慣性センサ1を製造することができる。
【0164】
本実施形態によっても、微小振動体2やその電極膜の傷付きを抑制しつつ、簡便に、所定以上の精度で微小振動体2の位置決めが可能な位置決め構造100となり、信頼性が高く、高感度の慣性センサ1を製造することができる。
【0165】
(他の実施形態)
本発明は、実施例に準拠して記述されたが、本発明は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本発明は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本発明の範疇や思想範囲に入るものである。
【0166】
(1)例えば、上記第11実施形態では、接触部61の内周面に凸部611が形成された例について説明したが、これに限定されるものではなく、断面視にて、内周面が微小振動体2の曲面部21の外形に沿った湾曲形状であってもよいし、テーパ形状であってもよい。つまり、上記第11実施形態では、ガイド板材6の把持部64の引っ張りを解除し、復元力が生じた状態において、接触部61は、微小振動体2が実装基板3に対して傾かないように押圧できる形状であればよい。そのため、接触部61は、凸部611を備える形状、湾曲形状やテーパ形状などの任意の形状とされても構わない。なお、接触部61の内周面がテーパ形状や微小振動体2の外形に沿った湾曲形状とされた場合、平坦面とされた場合に比べて、微小振動体2との接触面積が増加し、パッシブアライメント時により確実に復元力の力が伝わり、位置決め精度が向上する。
【0167】
(2)例えば、上記第1実施形態では、接触部61が連続した1つの環をなす枠体形状とされた例について説明したが、これに限定されるものではなく、仮に一部が途切れた略環状の枠体形状であっても、特に支障はない。これは、枠体部62についても同様である。つまり、接触部61あるいは枠体部62の枠体形状とは、途切れることなく連続した形状だけでなく、一部が途切れた断続的な形状も含み得る。
【符号の説明】
【0168】
1・・・慣性センサ、2・・・微小振動体、21・・・曲面部、22・・・凹部、
22a・・・吸着面、3・・・実装基板、51・・・実装部、52・・・接合材料、
53・・・電極部、54・・・外枠部、543、56・・・嵌め込み溝、
55・・・位置決め溝、6・・・ガイド板材、61・・・接触部、611・・・凸部、
612・・・爪部、62・・・枠体部、621、622・・・梁部、63・・・支持部、
64・・・把持部、65・・・位置決め嵌合部、66・・・バネ部、
67・・・弾性変形部