(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】測光装置
(51)【国際特許分類】
G01J 3/50 20060101AFI20240110BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01J3/50
G01J1/02 T
(21)【出願番号】P 2020530897
(86)(22)【出願日】2019-04-15
(86)【国際出願番号】 JP2019016205
(87)【国際公開番号】W WO2020017118
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2018135574
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 通
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-002255(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012478(WO,A1)
【文献】特開2002-310800(JP,A)
【文献】特開2000-221113(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0172509(US,A1)
【文献】特開2016-053550(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0052648(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00- G01J 3/51
G01J 1/02- G01J 1/06
G01J 1/42
G01M 11/00
G01N 21/00- G01N 21/01
G01N 21/17- G01N 21/61
G02B 5/00
G02B 6/00- G02B 6/02
G02B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光入射側端面および光出射側端面が多角形状である、多角柱または多角錐台の導光部材と、
被測定光源の像を、前記導光部材の前記光入射側端面に形成する対物光学系と、
前記被測定光源から前記対物光学系を介して前記導光部材に入射し、前記導光部材の前記光出射側端面から出射される光を受光する受光部とを備え、
前記受光部は、特性の異なる複数のセンサを有して、前記導光部材の前記光出射側端面の直後に配置され、または、前記導光部材の前記光出射側端面と前記受光部の受光面とが共役となるように、前記導光部材の前記光出射側端面との間にリレー光学系を介して配置されており、
α/β>2
を満足する、測光装置;
ただし、
L
0sinα={L-L
0(1-cosα)}tanθ
P
tan(β/2)=(D
2-D
1)/2L
L
0=D
2L/(D
2-D
1)
n
Psinθ
P=sinθ
であり、
L
:前記導光部材の光軸方向の長さ(mm)
θ
:前記導光部材の光入射側端面の中心に入射する光線と前記光入射側端面の法線とのなす角度の最大値(°)
D
1:前記導光部材の光入射側端面の内接円の直径(mm)
D
2:前記導光部材の光出射側端面の内接円の直径(mm)
n
P:前記導光部材の屈折率
であり、D
1=D
2の場合、
α/β=Ltanθ
p/D
2>2
である。
【請求項2】
前記対物光学系は、前記被測定光源側に位置する前側レンズ系と、前記導光部材側に位置する後側レンズ系と、前記被測定光源の1点から出射される光の広がり角を規制する絞りとを含み、
前記絞りは、前記前側レンズ系の後側焦点位置に配置されている、請求項1に記載の測光装置。
【請求項3】
前記受光部の前記複数のセンサは、それぞれ、受光面が正方形または長方形である受光素子と、前記受光素子の光入射側に配置される光学フィルタとを含み、
前記光学フィルタの少なくとも2つは、
互いに異なる波長域の光を透過させる、請求項1または2に記載の測光装置。
【請求項4】
前記受光部の前記複数のセンサは、それぞれ、受光面が正方形または長方形である受光素子と、前記受光素子の光入射側に配置される光学フィルタとを含み、
前記光学フィルタの少なくとも2つは、互いに異なる等色関数に対応する波長域の光を透過させる、請求項1または2に記載の測光装置。
【請求項5】
前記導光部材の前記光出射側端面から出射される光が前記受光部を照射するときの照射範囲は、前記受光部の前記複数のセンサの各受光範囲を全て包含する、請求項1から4のいずれかに記載の測光装置。
【請求項6】
前記受光部の前記複数のセンサは、それぞれ、等色関数X、Y、Zに対応する測定感度を有している、請求項1から5のいずれかに記載の測光装置。
【請求項7】
前記導光部材の前記光入射側端面および前記光出射側端面は、四角形であり、
前記受光部の複数のセンサは、1つの四角形の四隅にそれぞれ位置する四角形の受光面を有している、請求項1から6のいずれかに記載の測光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定光源の特性を測定する測光装置に関し、特に、被測定光源から出射される光の輝度や色度を測定する色彩輝度計などの測光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
色彩輝度計などの測光装置では、色を測定するために、測定光を3つに分割して各センサで受光する。測定光を3つに分割する手段として、例えば特許文献1では、多数本の光ファイバーを束ねた導光体が提案されている。この導光体は、測定光の入射側が1本のファイバー束にまとめられ、出射側が3本のファイバー束に分割されて構成されている。上記3本のファイバー束の端面から出射される光は、それぞれ、赤(R)、緑(G)、青(B)の光を透過させる特性を有するフィルタを介して受光素子に入射する。
【0003】
上記多数本の光ファイバーは、測定光の入射側の端面に結像した像形成光束の結像位置関係が擬似的にランダムとなるように束ねられて形成される。これにより、光出射側の3本のファイバー束の端面から出射されて各受光素子に入射する像形成光束が擬似的にランダムに混合されるため、像形成光束の光量ムラが軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-2255号公報(請求項1、4、段落〔0001〕、〔0023〕~〔0028〕、
図1~
図3等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、測光装置による色の測定は、測定対象物(被測定光源)の被測定面に測光装置を接触させ、または非接触で近づけ、被測定面の所定の領域から所定の角度範囲で出射された光を測光装置で受光することによって行われる。このとき、被測定面の発光強度(発光輝度)に、発光位置および発光角度によるムラ(位置ムラ、角度ムラ)があると、その影響を測光装置側でも受ける。そして、測光装置側で、上記影響を受けて測定感度の位置ムラおよび角度ムラが大きくなると、測定する位置および測定する角度の違いによって測定値の差(測定誤差)が大きくなる。なお、測定感度の位置ムラとは、被測定光源の被測定面の異なる位置から同じ方向(例えば上記面に垂直な方向)に出射される各光について、測定感度が異なることを指す。また、測定感度の角度ムラとは、被測定光源の被測定面の同じ位置から異なる方向に出射される各光について、測定感度が異なることを指す。したがって、色の測定にあたっては、測定する位置および測定する角度の違いによる測定誤差を小さくするために、被測定光源の発光強度の位置ムラおよび角度ムラの影響を受けにくくして、測定感度の位置ムラおよび角度ムラを低減することが必要となる。
【0006】
上記した特許文献1では、多数本のファイバーを束ねた導光体を用いて測定光を導光するようにしているが、光量ムラを減らして測定誤差を小さくするために、各ファイバーをランダムに編み込むことが必要となり、高コストである。また、ファイバーの充填具合、曲げの状態、応力の状態等の制御が難しいため、被測定光源の発光強度の位置ムラおよび角度ムラの影響を受けにくくするような導光体の設計が困難であり、結果として、測定感度の位置ムラおよび角度ムラを低減することが困難となる。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、安価な導光部材を用いた構成で、被測定光源の発光強度の位置ムラおよび角度ムラの影響を受けにくくすることができ、これによって、測定感度の位置ムラおよび角度ムラを低減することができる測光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る測光装置は、光入射側端面および光出射側端面が多角形状である、多角柱または多角錐台の導光部材と、被測定光源の像を、前記導光部材の前記光入射側端面に形成する対物光学系と、前記被測定光源から前記対物光学系を介して前記導光部材に入射し、前記導光部材の前記光出射側端面から出射される光を受光する受光部とを備え、前記受光部は、特性の異なる複数のセンサを有して、前記導光部材の前記光出射側端面の直後に配置され、または、前記導光部材の前記光出射側端面と前記受光部の受光面とが共役となるように、前記導光部材の前記光出射側端面との間にリレー光学系を介して配置されている。
【発明の効果】
【0009】
被測定光源から出射される光を、対物光学系と導光部材と(必要に応じてリレー光学系と)を介して受光部に導く構成において、導光部材は、単純な多角柱または多角錐台の形状であるため、複数本のファイバーをランダムに編み込んで導光する従来の導光体に比べて、構成が簡単であり、安価である。また、多角柱または多角錐台の形状の導光部材に入射する被測定光源からの光は、導光部材への入射角度に応じた回数だけ導光部材の側面(光入射側端面および光出射側端面以外の面)で全反射されて導光され、受光部に入射する。このため、受光部の各センサは、被測定光源の被測定面の様々な位置から出射された光および被測定面から様々な角度で出射された光が混合された光を受光することになる。その結果、被測定光源の被測定面の発光強度(発光輝度)に位置ムラおよび角度ムラがあっても、受光部側でその影響を受けにくくすることができ、これによって、測定感度の位置ムラおよび角度ムラを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の一形態および実施例1の測光装置の概略の構成を示す説明図である。
【
図2A】上記測光装置の導光部材の一構成例を示す斜視図である。
【
図2B】上記導光部材の他の構成例を示す斜視図である。
【
図2C】上記導光部材のさらに他の構成例を示す斜視図である。
【
図2D】上記導光部材のさらに他の構成例を示す斜視図である。
【
図3】
図2Aの導光部材の光入射側端面を測定範囲規制絞り側から見たときの状態を模式的に示す平面図である。
【
図4】上記測光装置の受光部の構成を示す平面図である。
【
図6】上記導光部材の内部で導光される光線の光路を模式的に示す説明図である。
【
図7】
図2Dの導光部材の内部で導光される光線の光路を展開して示した説明図である。
【
図8】
図2Bの導光部材の光入射側端面を測定範囲規制絞り側から見たときの状態を模式的に示す平面図である。
【
図9】
図2Bの導光部材を用いた場合の受光部の平面形状を模式的に示す平面図である。
【
図10】
図2Cの導光部材の光入射側端面を測定範囲規制絞り側から見たときの状態を模式的に示す平面図である。
【
図11】
図2Cの導光部材を用いた場合の受光部の平面形状を模式的に示す平面図である。
【
図12】実施例2の測光装置の概略の構成を模式的に示す説明図である。
【
図13】実施例3の測光装置の概略の構成を模式的に示す説明図である。
【
図14】実施例4の測光装置の概略の構成を模式的に示す説明図である。
【
図15】実施例5の測光装置の概略の構成を模式的に示す説明図である。
【
図16】実施例6の測光装置の概略の構成を模式的に示す説明図である。
【
図17】実施例7の測光装置の概略の構成を模式的に示す説明図である。
【
図18】実施例8の測光装置の概略の構成を模式的に示す説明図である。
【
図19】実施例9の測光装置の概略の構成を模式的に示す説明図である。
【
図20】比較例1の測光装置の概略の構成を模式的に示す説明図である。
【
図21】測定感度の空間分布および角度分布のシミュレーション結果の一例を模式的に示す説明図である。
【
図22】被測定光源の座標系を模式的に示す説明図である。
【
図23】比較例1の4つのセンサの1つであるセンサA’での測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした結果を示す説明図である。
【
図24】比較例1の4つのセンサの1つであるセンサB’での測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした結果を示す説明図である。
【
図25】比較例1の4つのセンサの1つであるセンサC’での測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした結果を示す説明図である。
【
図26】比較例1の4つのセンサの1つであるセンサD’での測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした結果を示す説明図である。
【
図27】実施例1の4つのセンサの1つであるセンサAでの測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした結果を示す説明図である。
【
図28】実施例1の4つのセンサの1つであるセンサBでの測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした結果を示す説明図である。
【
図29】実施例1の4つのセンサの1つであるセンサCでの測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした結果を示す説明図である。
【
図30】実施例1の4つのセンサの1つであるセンサDでの測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした結果を示す説明図である。
【
図31】実施例2の任意のセンサでの測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした結果を示す説明図である。
【
図32】実施例3の任意のセンサでの測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした結果を示す説明図である。
【
図33】実施例4の任意のセンサでの測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした結果を示す説明図である。
【
図34】実施例5の任意のセンサでの測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした結果を示す説明図である。
【
図35】実施例6の任意のセンサでの測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした結果を示す説明図である。
【
図36】実施例7の任意のセンサでの測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした結果を示す説明図である。
【
図37】実施例8の任意のセンサでの測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした結果を示す説明図である。
【
図38】実施例9の任意のセンサでの測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
図1は、本実施形態(実施例1)の測光装置1の概略の構成を示す説明図である。測光装置1は、導光部材2と、対物光学系3と、リレー光学系4と、受光部5とを有して構成されている。上記の測光装置1の構成では、被測定光源LSの被測定面LS
0から出射された光を、対物光学系3を介して導光部材2に導き、導光部材2の内部で導光した後、リレー光学系4を介して受光部5に導く。以下、測光装置1を構成する各部材について説明する。
【0012】
(導光部材)
図2Aは、導光部材2の一構成例を示す斜視図である。導光部材2は、光入射側端面2aおよび光出射側端面2bを有し、光入射側端面2aから内部に入射した光を導光して光出射側端面2bから出射する光学素子であり、本実施形態では、ガラス製の中実(中身が詰まった)ロッドで構成されている。本実施形態では、導光部材2は、光入射側端面2aおよび光出射側端面2bが同じ大きさの四角形(例えば正方形)である四角柱の形状であるが、この形状に限定されるわけではない。
【0013】
図2Bは、導光部材2の他の構成例を示す斜視図である。また、
図2Cは、導光部材2のさらに他の構成例を示す斜視図である。これらの図に示すように、導光部材2は、光入射側端面2aおよび光出射側端面2bが同じ大きさの三角形(例えば正三角形)である三角柱の形状や、光入射側端面2aおよび光出射側端面2bが同じ大きさの六角形(例えば正六角形)である六角柱の形状などであってもよい。つまり、導光部材2は、光入射側端面2aおよび光出射側端面2bが同じ大きさの多角形である多角柱の形状であってもよい。
【0014】
また、
図2Dは、導光部材2のさらに他の構成例を示す斜視図である。同図に示すように、導光部材2は、光入射側端面2aおよび光出射側端面2bが異なる大きさの四角形である四角錐台の形状であってもよい。その他、図示はしないが、光入射側端面2aおよび光出射側端面2bが異なる大きさの三角形である三角錐台の形状、光入射側端面2aおよび光出射側端面2bが異なる大きさの六角形である六角錐台の形状であってもよい。つまり、導光部材2は、光入射側端面2aおよび光出射側端面2bが異なる大きさの多角形である多角錐台の形状であってもよい。
【0015】
導光部材2が上記した多角柱または多角錐台形状であることにより、導光部材2の内部に光入射側端面2aを介して入射した光は、光入射側端面2aに対する入射角度に応じた回数だけ、導光部材2の側面2c(導光部材2における空気との界面)で全反射して導光され、光出射側端面2bから出射される。なお、側面2cは、光入射側端面2aおよび光出射側端面2bを連結する面であり、光入射側端面2aおよび光出射側端面2bを構成する多角形の頂点(または辺)の数だけ設けられる。
【0016】
なお、例えば、光入射側端面2aの中心(光入射側端面2aと対物光学系3の光軸との交点)に垂直またはそれに近い角度で入射する光については、導光部材2の内部に光入射側端面2aを介して入射した後、側面2cで全反射されずに導光されて光出射側端面2bから出射される。したがって、上記の「入射角度に応じた回数」には、0回も含まれる。
【0017】
なお、導光部材2は、例えば断面が多角形の中空のパイプ(ライトパイプ)で構成されてもよい。この場合、パイプの内面に金属からなる反射膜を形成することにより、導光部材2に入射した光をその内面(反射膜)で反射させて導光することができる。また、導光部材2を構成する材料は、ガラスには限定されず、アクリルなどの透明樹脂であってもよい。
【0018】
(対物光学系)
対物光学系3は、被測定光源LSの像を、導光部材2の光入射側端面2aに縮小形成する光学系である。この対物光学系3は、被測定光源LS側に位置する前側レンズ系31と、導光部材2側に位置する後側レンズ系32と、被測定光源LSの1点から出射される光の広がり角を規制する絞りAP1(測定角規制絞り)と、被測定光源LSの測定範囲を規制する絞りAP2(測定範囲規制絞り、視野絞り)とを有して構成されている。
【0019】
対物レンズ系3の配置により、被測定光源LSの被測定面LS0と導光部材2の光入射側端面2aとは、共役な関係となっている。すなわち、被測定光源LSの被測定面LS0上のある点から出射された光は、導光部材2の光入射側端面2aのある点に集光する。本実施形態では、前側レンズ系31は、2枚のレンズで構成されており、後側レンズ系32は、3枚のレンズで構成されているが、上記の共役な関係を実現できる構成であればよく、前側レンズ系31および後側レンズ系32のレンズの枚数は特に限定されない。
【0020】
絞りAP1は、前側レンズ系31の後側焦点位置に配置されている。絞りAP1(開口部)の面内の各点は、被測定光源LSの被測定面LS0での光の出射角度に対応している。絞りAP1の配置により、被測定面LS0から出射される光の測定角度(出射角度)を過不足なく適切に規制し、測定したい角度範囲の光だけを測定することが可能となる。なお、本実施形態では、絞りAP1の開口部の形状は円形であるが、矩形であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0021】
絞りAP2は、導光部材2の光入射側端面2aの直前に配置されている。絞りAP2(開口部)の面内の各点は、被測定光源LSの被測定面LS0上の各点に対応している。絞りAP2の配置により、被測定光源LSの測定範囲(測定領域)を過不足なく適切に規制し、測定したい範囲の光だけを測定することが可能となる。
【0022】
図3は、
図2Aの導光部材2の光入射側端面2aを絞りAP2側から見たときの状態を模式的に示している。本実施形態では、絞りAP2の開口部AP2aは、円形であり、その直径は、導光部材2の光入射側端面2aの内接円の直径よりも若干小さく設定されている。なお、絞りAP2の開口部AP2aは、矩形であってもよいし、他の形状であってもよい。また、絞りAP2の配置を省略することも可能である。この場合、被測定光源LSの被測定面LS
0の測定範囲は、導光部材2の光入射側端面2aの形状と相似になる。
【0023】
(リレー光学系)
リレー光学系4は、導光部材2の光出射側端面2bと受光部5の受光面5aとが共役となるように、導光部材2の光出射側端面2bから出射される光を受光部5に導く光学系である。つまり、リレー光学系4の配置により、導光部材2の光出射側端面2b上のある点から出射された光は、受光部5の受光面5aのある点に集光し、導光部材2の光出射側端面2bの像が、受光部5の受光面5aに拡大結像される。本実施形態では、リレー光学系4は、4枚のレンズで構成されているが、上記の共役関係を実現できる構成であればよく、リレー光学系4のレンズの枚数は特に限定されない。
【0024】
(受光部)
受光部5は、被測定光源LSから対物光学系3を介して導光部材2に入射し、導光部材2の光出射側端面2bから出射される光を受光する。この受光部5は、特性の異なる複数のセンサ51で構成されている。本実施形態では、受光部5の複数のセンサ51は、それぞれ、等色関数X、Y、Zに対応する測定感度を有している。以下、受光部5の構成についてより詳細に説明する。
【0025】
図4は、受光部5の構成を示す平面図であり、
図5は、受光部5の構成を示す断面図である。受光部5は、4つのセンサ51(51a~51d)を有している。各センサ51は、受光素子52と、光学フィルタ53とで構成されている。各受光素子52は、例えばシリコンフォトダイオードで構成されており、光の受光量に応じた電気信号が後段の電気回路(図示せず)に出力される。各受光素子52の受光面5aは、正方形または長方形であり、1つの四角形の四隅にそれぞれ位置している。このことから、受光部5の複数のセンサ51は、1つの四角形の四隅にそれぞれ位置する四角形の受光面5aを有していると言うことができる。なお、各受光面5aは、四角形以外の多角形(例えば三角形)であってもよいし、円形であってもよい。
【0026】
各センサ51の光学フィルタ53は、所定の波長域の光を透過させる光学特性を有しており、受光素子52よりも大きいサイズで形成されて、受光素子52の光入射側に配置されている。本実施形態では、4つのセンサ51のうち、3つのセンサ51(例えばセンサ51a~51c)の光学フィルタ53は、それぞれ、等色関数X、Y、Zに対応する波長域の光を透過させる光学フィルタ53X、53Y、53Zで構成されている。これにより、上記3つのセンサ51は、それぞれ、等色関数X、Y、Zに対応する測定感度を有することになる。上記3つのセンサ51の光学フィルタ53X、53Y、53Zをそれぞれ透過した光は、対応する受光素子52で受光される。各受光素子52から出力される電気信号を電気回路で処理することにより、色や輝度を測定することができる。
【0027】
つまり、受光部5の複数のセンサ51が、それぞれ、等色関数X、Y、Zに対応する測定感度を有していることにより、各センサ51(各受光素子52)から出力される電気信号(XYZの3刺激値に対応)に基づいて、電気回路にて、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の比率を求めたり、輝度(例えば(R+G+B)/3)を求めることが可能となる。これにより、色や輝度を求める色彩輝度計(測色計)を実現することが可能となる。
【0028】
また、上記4つのセンサ51のうちで残りのセンサ51(例えばセンサ51d)の光学フィルタ53は、等色関数Yに対応する波長域の光を透過させる光学フィルタ53Yで構成されている。上記光学フィルタ53Yを透過した光を受光する受光素子52は、例えばフリッカ検出用の電気回路と接続されている。これにより、上記受光素子52から出力される電気信号に基づき、フリッカを検出することが可能となる。
【0029】
なお、2つの光学フィルタ53Yのうちの一方を、例えば赤外線を透過させる光学フィルタで構成してもよい。この場合、4種類の光学フィルタ53が配置されるため、4種類の光学特性を同時に測定することが可能となる。
【0030】
本実施形態では、4つの光学フィルタ53のうち、3つの光学フィルタ53X、53Y、53Zの光学特性が互いに異なっているが、少なくとも2つの光学フィルタ53の特性が互いに異なっていればよい(複数の光学フィルタ53の全てが同じ特性となっていなければよい)。受光部5の複数のセンサ51が、それぞれ、受光面5aが正方形または長方形である受光素子52と、受光素子52の光入射側に配置される光学フィルタ53とを含み、光学フィルタ53の少なくとも2つの特性が互いに異なっていることで、
図4のように、複数の特性のセンサ51を簡易にまとめて配置することが可能となる。
【0031】
各センサ51は、受光素子52よりも光入射側に光学フィルタ53が位置し、かつ、受光素子52および光学フィルタ53が間隙を介して配置されるように、保持部材54の凹部54aに収容されて保持される。凹部54aは、光学フィルタ53の配置側から受光素子52の配置側に向かって開口径が段階的に狭くなる階段状の形状であり、これによって、光学フィルタ53および受光素子52を上記の位置関係となるように凹部54a内に収容することができる。
【0032】
上記の保持部材54は、隣り合って位置するセンサ51を区切る遮光壁を兼ねている。つまり、隣り合う2つのセンサ51の間に保持部材54が遮光壁として存在するため、隣り合う一方のセンサ51の光学フィルタ53を通過した光が、隣り合う他方のセンサ51の受光素子52に入射することが防止され、測定誤差を低減することが可能となる。
【0033】
また、本実施形態のように、複数のセンサ51(光学フィルタ53および受光素子52)を並べて保持部材54で保持する構成では、複数のセンサ51の配置領域が広がる。しかし、リレー光学系4により、導光部材2の光出射側端面2bの像が受光面5aに拡大結像されるため、複数のセンサ51を保持部材54で保持する構成であっても、各センサ51に対して十分な広さの照明範囲を確保することが可能となる。
【0034】
また、
図4に示すように、導光部材2の光出射側端面2bから出射される光が受光部5を照射するときの照射範囲Rは、受光部5の複数のセンサ51の各受光範囲、つまり、各受光素子52の受光面5aを全て包含している。これにより、光学系の組み立て時の誤差(各部品の位置や傾きのズレ)や、環境変化(温度変化、湿度変化、振動、衝撃等)による光学系の変化等によって、各受光面5aに対して照射範囲R(導光部材2の光出射側端面2bの像の結像範囲)の位置がずれても、受光量(測定値)の変化が小さくなるため、安定した測定が可能となる。
【0035】
特に、本実施形態では、導光部材2の光入射側端面2aおよび光出射側端面2bは、四角形であり(
図2A参照)、受光部5の複数のセンサ51は、1つの四角形の四隅にそれぞれ位置する四角形の受光面5aを有している。これにより、導光部材2の光出射側端面2bから出射される光を、受光部5の必要な範囲(各受光面5a)に効率良く導くことができる。したがって、光の利用効率が上がるため(照明光の大部分を受光できるため)、S/N(Signal-to-Noise)比の高い測定が可能となる。
【0036】
また、上記した光学フィルタ53としては、ガラス基板に干渉膜を形成した干渉膜フィルタを用いることが可能である。干渉膜フィルタを用いた場合、干渉膜に対する光線の入射角によって分光透過率が変化するが、本実施形態では、リレー光学系4により、導光部材2の光出射側端面2bの像が受光面5aに拡大結像されることで、各センサ51への光線の入射角が小さくなる。これにより、干渉膜フィルタにおける光線入射角による分光透過率の変化を低減することができる。
【0037】
なお、光学フィルタ53として、特定の波長域の光を吸収する色ガラスフィルタ、広い波長域の光を減光させるND(Neutral Density)フィルタ、直線偏光板、波長板等を用いることも可能である。また、1つの受光素子52の光入射側に、複数の光学フィルタ53を配置してもよい。
【0038】
なお、光学フィルタ53は、全て同じフィルタで構成されてもよい。ただし、この場合、複数のセンサ51で特性を異ならせるために、受光素子52として異なるセンサを用いる必要がある。例えば、可視光用のシリコンフォトダイオードと、赤外光用のInGaAsフォトダイオードとを組み合わせて用いたり、高感度測定が可能な受光素子と、高速測定が可能な受光素子とを組み合わせて用いることにより、同じ光学フィルタ53を用いながら多様な光学特性を同時に測定することが可能となる。
【0039】
なお、受光部5を構成するセンサ51の数は、本実施形態の4個には限定されない。例えば、センサ51を9個用いて3行3列で配置したり、16個用いて4行4列で配置するなど、より多くのセンサ51を用いて適切に配置することにより、より多くの光学特性を同時に測定することも可能である。
【0040】
(導光部材による測定感度の位置ムラおよび角度ムラの低減効果について)
次に、本実施形態の導光部材2を用いることにより、測定感度の位置ムラおよび角度ムラを低減できる効果について説明する。
【0041】
本実施形態のように、多角柱または多角錐台の形状の導光部材2を用いた構成では、上述したように、被測定光源LSから出射されて導光部材2の内部に入射した光は、光入射側端面2aでの入射角度に応じた回数だけ、導光部材2の側面2cで全反射を繰り返し、光出射側端面2bから出射される。この構成では、光出射側端面2bのある1点を考えると、上記1点が、導光部材2の光入射側端面2aの様々な点からの光で照明されていることになる。また、被測定光源LSの被測定面LS0と導光部材2の光入射側端面2aとが対物光学系3によって共役であり、導光部材2の光出射側端面2bと受光部5の受光面5aとがリレー光学系4によって共役であることから、結局、被測定光源LSの様々な点からの光が、導光部材2を介して受光部5の各センサ51を照明することになる。すなわち、被測定光源LSの被測定面LS0の発光強度(輝度)に位置ムラがあっても、各センサ51は、被測定面LS0の様々な位置の光が導光部材2によって混合された光を受光することで、被測定面LS0における位置ムラの影響を受けにくくなる。これにより、各センサ51において、測定感度の位置ムラを低減することができ、安定した測定が可能となる。
【0042】
また、多角柱または多角錐台の形状の導光部材2を用いた構成では、被測定光源LSから出射される光の出射角度に応じて、導光部材2の光入射側端面2aに入射する角度が変わる。光入射側端面2aを介して導光部材2の内部に入射した光は、その角度に応じた回数だけ、導光部材2の側面2cで全反射を繰り返し、光出射側端面2bの様々な位置(導光部材2への入射角度に応じた位置)に到達することになる。したがって、上記と同様に光出射側端面2bのある1点を考えると、上記1点は様々な角度の光で照明されていることになる。被測定光源LSからの光の出射角度は、導光部材2の光入射側端面2aにおける光の入射角度と対応しており、導光部材2の光出射側端面2bと受光部5の受光面5aとが共役であることから、結局、被測定光源LSから様々な角度で出射された光が、導光部材2を介して受光部5の各センサ51を照明することになる。すなわち、被測定光源LSの被測定面LS0の発光強度(輝度)に角度ムラがあっても、各センサ51は、被測定面LS0から出射された様々な角度の光が導光部材2によって混合された光を受光することで、被測定面LS0における角度ムラの影響を受けにくくなる。これにより、各センサ51において、測定感度の角度ムラを低減することができ、安定した測定が可能となる。
【0043】
しかも、導光部材2は、単純な多角柱または多角錐台の形状であるため(
図2A~
図2D参照)、複数本のファイバーをランダムに編み込んで導光する従来の導光体に比べて、構成が簡単であり、安価である。したがって、安価な導光部材2を用いた簡単な構成で、測定感度の位置ムラおよび角度ムラを低減する効果を得ることができる。特に、本実施形態では、上述したように、特性の異なる複数のセンサ51を受光部5が有していることにより、色や輝度を測定することができるため、そのような色や輝度の測定を行う色彩輝度計において上述の効果を得ることができる。
【0044】
また、
図6は、導光部材2の内部で導光される光線の光路を模式的に示す説明図である。対物光学系3(
図1参照)によって、被測定光源LSの被測定面LS
0の像を、導光部材2の光入射側端面2aに縮小結像させることにより、細い導光部材2(光入射側端面2aの内接円の直径D
1および光出射側端面2bの内接円の直径D
2が小さい導光部材)を用いることが可能となり、かつ、被測定光源LSから出射される光の出射角度よりも、導光部材2の光入射側端面2aにおける光の入射角度θが大きくなる(したがって、導光部材2の内部での屈折角θ
Pも大きくなる)。
図6より、光入射側端面2aにおける光の入射角度θが大きいほど(屈折角θ
Pが大きいほど)、または、直径D
1およびD
2が小さいほど、導光部材2の内部に入射した光の側面2cでの反射回数は増加することがわかる。
【0045】
本実施形態では、D1=D2であり、被測定光源LSから出射されて導光部材2の光入射側端面2aに入射する光線のうち、光軸AXとのなす角度θが最大となる光線LTが、導光部材2の側面2cで反射する、おおよその回数は、
(LtanθP)/D1、または(LtanθP)/D2
で表される。ただし、nPを導光部材2の屈折率としたとき、屈折角θPは、nPsinθP=sinθを満足する角度である。また、上記の光軸AXは、導光部材2の光入射側端面2aの内接円の中心と、光出射側端面2bの内接円の中心とを結ぶ軸であって、対物光学系3およびリレー光学系4の光軸と同軸とする。
【0046】
前述のように、本実施形態の構成では、導光部材2の光出射側端面2aのある1点を考えたときに、上記1点は、被測定光源LSから出射された様々な角度の光で照明されていることになり、被測定光源LSの角度ムラの影響を低減することができる。導光部材2の内部で光線が反射されると、光線の角度が反転するため、光線の反射回数が増えると、より様々な角度の光で上記の1点が照明されることになる。このため、より効果的に、被測定光源LSの角度ムラの影響を低減して、測定感度の角度ムラを低減することができ、より安定した測定が可能となる。
【0047】
また、導光部材2での反射回数を一定としたとき、屈折角θPが大きく、D1またはD2が小さいほど、導光部材2の光軸AX方向の長さLを小さくすることができる。この場合、測光装置1の小型化が可能となる。
【0048】
(多角錐台の導光部材を用いたときの反射回数について)
図7は、導光部材2として、
図2Dで示した多角錐台形状の導光部材2を用いたときの、導光部材2の内部で導光される光線の光路を展開して示した説明図である。上記の導光部材2では、光入射側端面2aおよび光出射側端面2bの形状は正方形であるが、光出射側端面2bの面積が光入射側端面2aの面積よりも大きい。このような多角錐台の導光部材2を用いた場合、導光部材2の光出射側端面2bの直後に受光部5を配置しても(リレー光学系4を介在させなくても)、導光部材2の光出射側端面2bから出射される光を受光部5全体に導くことができる。このように、導光部材2の光出射側端面2bの直後に受光部5を配置して、リレー光学系4の配置を省略することにより、安価な測光装置1を実現することが可能となる。
【0049】
ここで、多角錐台の形状の導光部材2を用いたときに内部で導光される光の反射回数については、以下のように考えることができる。すなわち、多角錐台形状の導光部材2を用いた場合、被測定光源LSから出射されて導光部材2の光入射側端面2aに入射する光線のうち、光軸AXとのなす角度θが最大となる光線LTが、導光部材2の側面2cで反射する、おおよその回数は、α/βで表される。ただし、
図7において、αは、点Aと点Oとを結ぶ直線と、光軸AXとのなす角度(°)であり、βは、光軸AXを含む断面における導光部材2の側面2cと光軸AXとのなす角度の2倍の角度(°)である。ここで、点Oは、光軸AXを含む断面において、導光部材2の側面2cを延長したときに光軸AXと交わる点を指し、点Aは、光線LTが導光部材2の光入射側端面2aで屈折した後の光線(光軸AXとなす角はθ
P)を延長した直線(破線LP)と、中心が点Oで半径L
0の円とが交わる点である。具体的には、αおよびβは、以下の関係式を満足する角度となる。すなわち、
L
0sinα={L-L
0(1-cosα)}tanθ
P
tan(β/2)=(D
2-D
1)/2L
L
0=D
2L/(D
2-D
1)
n
Psinθ
P=sinθ
であり、
L
:導光部材2の光軸AX方向の長さ(mm)
θ
:導光部材2の光入射側端面2aの中心に入射する光線と光入射側端面2aの法線とのなす角度の最大値(°)
D
1:導光部材2の光入射側端面2aの内接円の直径(mm)
D
2:導光部材2の光出射側端面2bの内接円の直径(mm)
n
P:導光部材2の屈折率
である。
【0050】
α/β>1であれば、つまり、光線LTの導光部材2の側面2cでの反射回数が少なくとも1回あれば、光線LTを側面2cで反射させることで、被測定面LS0の様々な位置から出射される光、および被測定面LS0から様々な角度で出射される光を導光部材2で混合することができる。したがって、被測定光源LSの位置ムラおよび角度ムラの影響を低減して、測定感度の位置ムラおよび角度ムラを低減することができる。特に、α/β>2であることが、光線LTを側面2cで複数回反射させて、被測定光源LSの位置ムラおよび角度ムラの影響を確実に低減し、測定感度の位置ムラおよび角度ムラを確実に低減できるため、望ましい。なお、本実施形態の効果をさらに確実に得る観点では、後述する実施例の結果より、α/β>4であることがより望ましく、α/β>7であることがより一層望ましく、α/β>10であることがさらに望ましい。
【0051】
なお、α≪1、β≪1の場合、
α≒(L/L0)tanθP={(D2-D1)/D2}/tanθP
β≒(D2-D1)/L
となり、
α/β≒(LtanθP)/D2
となる。つまり、この場合、α/βは、上述したD1=D2の場合の、おおよその反射回数と一致する。
【0052】
(導光部材の他の形状と受光部との関係)
図8は、
図2Bで示した三角柱状の導光部材2を用いたときに、その光入射側端面2aを絞りAP2側から見たときの状態を模式的に示している。同図のように、三角柱状の導光部材2を用いた場合でも、絞りAP2の円形の開口部AP2aの大きさは、導光部材2の光入射側端面2aの内接円よりも若干小さく設定されればよい。
【0053】
図9は、
図2Bの導光部材2を用いた場合の受光部5の平面形状を模式的に示している。受光部5は、平面視で円形の3つのセンサ51(51a~51c)で構成され、各センサ51が、1つの正三角形の各頂点に対応して位置するように配置されていてもよい。導光部材2の光出射側端面2bの形状が正三角形であるため、導光部材2の光出射側端面2bから出射される光が受光部5を照射するときの照射範囲Rも、受光部5の3つのセンサ51の各受光範囲を全て包含する正三角形状となる。
【0054】
図10は、
図2Cで示した六角柱状の導光部材2を用いたときに、その光入射側端面2aを絞りAP2側から見たときの状態を模式的に示している。同図のように、六角柱状の導光部材2を用いた場合でも、絞りAP2の円形の開口部AP2aの大きさは、導光部材2の光入射側端面2aの内接円よりも若干小さく設定されればよい。
【0055】
図11は、
図2Cの導光部材2を用いた場合の受光部5の平面形状を模式的に示している。受光部5は、平面視で正方形または長方形の7つのセンサ51(51a~51g)で構成され、各センサ51が、1つの正六角形の各頂点および中心に対応して位置するように配置されていてもよい。導光部材2の光出射側端面2bの形状が正六角形であるため、導光部材2の光出射側端面2bから出射される光が受光部5を照射するときの照射範囲Rも、受光部5の7つのセンサ51の各受光範囲を全て包含する正六角形状となる。
【0056】
(実施例)
次に、本発明の具体的な実施例について、実施例1~9として説明する。また、各実施例との比較のため、比較例についても併せて説明する。なお、実施例9は、本発明の単なる参考例であり、本発明の範囲には属さないものである。
【0057】
図12~
図19は、それぞれ実施例2~9の測光装置1の概略の構成を模式的に示している。また、
図20は、比較例1の測光装置1’の概略の構成を模式的に示している。なお、実施例1の測光装置1の構成は、
図1で示した通りである。なお、
図1、
図12~
図20では、便宜的に、各測光装置のスケールを調整して図示している(スケールは同一ではない)。
【0058】
実施例2の測光装置1は、実施例1の測光装置1に比べて、射出瞳の位置が被測定光源LS側にずれており、それ以外は、実施例1の測光装置1と同様の構成である。ここで、射出瞳の位置とは、絞りAP1によって形成される像の位置を指す。
【0059】
実施例3の測光装置1は、実施例2の測光装置1に比べて、射出瞳の位置が被測定光源LS側にずれており、それ以外は、実施例2の測光装置1と同様の構成である。実施例4の測光装置1は、実施例1の測光装置1に比べて、射出瞳の位置が受光部5側にずれており、それ以外は、実施例1の測光装置1と同様の構成である。
【0060】
実施例5の測光装置1は、実施例1の測光装置1に比べて、導光部材2の光軸方向の長さを増大させ、導光部材2の内部に入射する光線の側面2cでの反射回数(α/β)を増大させた以外は、実施例1の測光装置1と同様の構成である。
【0061】
実施例6の測光装置1は、実施例1の測光装置1の四角柱状の導光部材2を、四角錐台の導光部材2(
図2D参照)に置き換え、リレー光学系4を配置せずに、導光部材2の光出射側端面2bの直後に受光部5を配置した以外は、実施例1の測光装置1と同様の構成である。
【0062】
実施例7の測光装置1は、実施例1の測光装置1の四角柱状の導光部材2を、三角柱状の導光部材2(
図2B参照)に置き換え、4つの四角形状のセンサ51を有する受光部5の代わりに、3つの円形のセンサ51を有する受光部5(
図9参照)を用いた以外は、実施例1の測光装置1と同様の構成である。実施例8の測光装置1は、実施例1の測光装置1の四角柱状の導光部材2を、六角柱状の導光部材2(
図2C参照)に置き換え、4つの四角形状のセンサ51を有する受光部5の代わりに、7つの四角形状のセンサ51を有する受光部5(
図11参照)を用いた以外は、実施例1の測光装置1と同様の構成である。
【0063】
実施例9の測光装置1は、実施例1の測光装置1に比べて、導光部材2の光軸方向の長さを短くし、導光部材2の内部に入射する光線の側面2cでの反射回数(α/β)を減少させた以外は、実施例1の測光装置1と同様の構成である。
【0064】
比較例1の測光装置1’は、実施例1の測光装置1において、導光部材2の配置を省略した以外は、実施例1の測光装置1と同様の構成である。
【0065】
表1は、実施例1~9および比較例1における各パラメータを示している。
【0066】
【0067】
(評価)
各実施例1~9、比較例1の構成による効果を確認するために、受光部5の少なくとも1つのセンサ51での測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした。測定感度の空間分布および角度分布のシミュレーションは、被測定光源LSの被測定面LS
0が、一様な完全拡散面光源とした場合に、被測定面LS
0の各位置から出射される光がどの程度受光素子に到達するか、および被測定面LS
0から各方向に出射される光がどの程度受光素子に到達するかを、光学ソフトウェアを用いてシミュレーションしたものである。例えば
図21は、1つのセンサ51での測定感度の空間分布および角度分布のシミュレーション結果の一例を模式的に示している。これらの分布において、白色部は、相対的に測定感度が高く、黒色部は、相対的に測定感度が低いことを表している。
【0068】
また、
図22は、被測定光源LS(被測定面LS
0)の座標系を模式的に示している。
図21で示した測定感度の空間分布の水平方向(x方向)の位置および垂直方向(y方向)の位置は、被測定面LS
0内の水平方向(X方向)の位置および垂直方向(Y方向)の位置とそれぞれ対応している。また、測定感度の角度分布の水平方向の角度(θx)および垂直方向の角度(θy)は、被測定面LS
0の法線(Z方向)に対する出射光線の水平方向(X方向)の角度(θX)および垂直方向(Y方向)の角度(θY)とそれぞれ対応している。
【0069】
図23~
図26は、比較例1の4つのセンサ51(ここでは、センサA’、センサB’、センサC’、センサD’と称する)での測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした結果を示している。なお、上記センサA’、センサB’、センサC’、センサD’は、
図4のセンサ51a、センサ51b、センサ51c、センサ51dにそれぞれ対応している。これらの図より、比較例1では、センサA’~D ’の間で測定感度の空間分布が非常に不均一であることがわかる。
【0070】
これに対して、
図27~
図30は、実施例1の受光部5の4つのセンサ51(ここでは、センサA、センサB、センサC、センサDと称する)での測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした結果を示している。なお、上記のセンサA、センサB、センサC、センサDは、
図4のセンサ51a、センサ51b、センサ51c、センサ51dにそれぞれ対応している。これらの図より、センサA~Dの間で、測定感度の空間分布として同じような分布が得られており、また、測定感度の角度分布についても同じような分布が得られていることがわかる。したがって、実施例1では、複数のセンサ間で、測定感度の空間分布および角度分布を同時に均一にできることがわかる。
【0071】
また、
図31~
図38は、実施例2~9の受光部5を構成する複数のセンサ51の中の任意のセンサ(ここではセンサAとする)での測定感度の空間分布および角度分布をシミュレーションした結果を示している。なお、上記のセンサAは、
図4のセンサ51a(実施例2~6、9)、
図9のセンサ51a(実施例7)、または
図11のセンサ51a(実施例8)に対応している。実施例2~9についても、実施例1と同様に、測定感度の空間分布は、測定範囲内でほぼ均一となっている。導光部材2の配置により、実施例1~9の各センサ51は、測定感度分布の重みで平均化された光量を受光することになるため、被測定光源LSの被測定面LS
0の発光強度(輝度)に位置ムラがあっても、受光部5では、上記位置ムラの影響を低減して安定した測定を行うことが可能となる。
【0072】
また、実施例1~9において、測定感度の角度分布に関しては、実施例により程度の差はあるが、どの実施例においても、測定範囲内の広い範囲に感度分布を持っている。導光部材2の配置により、実施例1~9の各センサ51は、測定感度分布の重みで平均化された光量を受光することになるため、被測定光源LSの被測定面LS0の発光強度(輝度)に角度ムラがあっても、受光部5では上記角度ムラの影響を低減して安定した測定を行うことが可能となる。
【0073】
以上で示した各実施例1~9のシミュレーション結果から分かるように、測定感度の空間分布および角度分布は、導光部材2の長さLおよび射出瞳位置によって変化する。したがって、導光部材2の長さLや射出瞳位置を調整することにより、所望の測定感度の均一性をもつ測光装置1を設計することが可能となる。
【0074】
〔その他〕
以上で説明した本実施形態の測光装置は、以下のように表現されてもよい。
【0075】
本実施形態の測光装置は、光入射側端面および光出射側端面が多角形状である、多角柱または多角錐台の導光部材と、被測定光源の像を、前記導光部材の前記光入射側端面に形成する対物光学系と、前記被測定光源から前記対物光学系を介して前記導光部材に入射し、前記導光部材の前記光出射側端面から出射される光を受光する受光部とを備え、前記受光部は、特性の異なる複数のセンサを有して、前記導光部材の前記光出射側端面の直後に配置され、または、前記導光部材の前記光出射側端面と前記受光部の受光面とが共役となるように、前記導光部材の前記光出射側端面との間にリレー光学系を介して配置されている。
【0076】
上記の測光装置において、前記対物光学系は、前記被測定光源側に位置する前側レンズ系と、前記導光部材側に位置する後側レンズ系と、前記被測定光源の1点から出射される光の広がり角を規制する絞りとを含み、前記絞りは、前記前側レンズ系の後側焦点位置に配置されていてもよい。
【0077】
上記の測光装置は、
α/β>2
を満足していることが望ましい。ただし、
L0sinα={L-L0(1-cosα)}tanθP
tan(β/2)=(D2-D1)/2L
L0=D2L/(D2-D1)
nPsinθP=sinθ
であり、
L:前記導光部材の光軸方向の長さ(mm)
θ:前記導光部材の光入射側端面の中心に入射する光線と前記光入射側端面の法線とのなす角度の最大値(°)
D1:前記導光部材の光入射側端面の内接円の直径(mm)
D2:前記導光部材の光出射側端面の内接円の直径(mm)
nP:前記導光部材の屈折率
であり、D1=D2の場合、
α/β=Ltanθp/D2>2
である。
【0078】
上記の測光装置において、前記受光部の前記複数のセンサは、それぞれ、受光面が正方形または長方形である受光素子と、前記受光素子の光入射側に配置される光学フィルタとを含み、前記光学フィルタの少なくとも2つは、特性が互いに異なっていてもよい。
【0079】
上記の測光装置において、前記導光部材の前記光出射側端面から出射される光が前記受光部を照射するときの照射範囲は、前記受光部の前記複数のセンサの各受光範囲を全て包含してもよい。
【0080】
上記の測光装置において、前記受光部の前記複数のセンサは、それぞれ、等色関数X、Y、Zに対応する測定感度を有していてもよい。
【0081】
上記の測光装置において、前記導光部材の前記光入射側端面および前記光出射側端面は、四角形であり、前記受光部の複数のセンサは、1つの四角形の四隅にそれぞれ位置する四角形の受光面を有していてもよい。
【0082】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、例えば色彩輝度計に利用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 測光装置
2 導光部材
2a 光入射側端面
2b 光出射側端面
2c 側面
3 対物光学系
4 リレー光学系
5 受光部
5a 受光面
31 前側レンズ系
32 後側レンズ系
51 センサ
52 受光素子
53 光学フィルタ
AP1 絞り
LS 被測定光源