(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02D 13/02 20060101AFI20240110BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20240110BHJP
F02N 11/08 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F02D13/02 H
F02D29/02 321B
F02N11/08 V
(21)【出願番号】P 2020532277
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2019027296
(87)【国際公開番号】W WO2020022062
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2018141484
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】藤本 精一
(72)【発明者】
【氏名】小▲崎▼ 友裕
(72)【発明者】
【氏名】金子 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】神谷 卓
(72)【発明者】
【氏名】花浦 淳
(72)【発明者】
【氏名】奥出 竜騎
(72)【発明者】
【氏名】深尾 友晶
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-089707(JP,A)
【文献】特開2007-239461(JP,A)
【文献】特開2013-241879(JP,A)
【文献】特開2007-182855(JP,A)
【文献】特開2009-203819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/02, 29/02,
F02N 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気弁および排気弁が設けられた内燃機関本体と、
前記内燃機関本体の始動開始時の環境温度に基づいて、前記内燃機関本体の回転数を所定の回転数に設定して、前記内燃機関本体の燃焼室に燃料を供給して最初に点火するまでの期間において、設定した前記所定の回転数により前記内燃機関本体を駆動させる制御を行う制御部とを備え、
前記制御部による制御により、前記吸気弁の開閉タイミングを調整可能な可変動弁機構をさらに備え、
前記制御部は、前記所定の回転数に基づく最も外気を導入可能な前記吸気弁の閉タイミングに設定するタイミング制御を行うように構成されている、内燃機関。
【請求項2】
前記制御部は、前記燃焼室に燃料を供給して最初の点火を行う際の1サイクル目まで前記タイミング制御を継続するとともに、2サイクル目以降では、前記可変動弁機構により定常運転時の前記吸気弁のバルブタイミングに復帰させるように構成されている、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記制御部は、前記燃焼室内の温度を推定する推定ロジックに基づいて、前記燃焼室内の温度が所定の設定温度を超えたタイミングで、前記燃焼室に燃料を供給して最初の点火を行うように構成されている、請求項1
または2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記推定ロジックは、前記燃焼室内の温度と、前記所定の回転数による前記内燃機関本体の駆動継続時間との関係を示すマップを含む、請求項
3に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記環境温度とは、前記内燃機関本体の周囲の外気温度、および、前記内燃機関本体の冷却水温度の少なくとも一方を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項6】
ピストンを駆動させるハイブリッド駆動用モータをさらに備え、
前記制御部は、前記内燃機関本体の始動開始時の前記環境温度に基づいて、前記内燃機関本体の回転数を前記所定の回転数に設定して、前記燃焼室に燃料を供給して最初に点火するまでの期間において、前記ハイブリッド駆動用モータによって、設定した前記所定の回転数により前記内燃機関本体を駆動させる制御を行うように構成されている、請求項1~
5のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項7】
吸気弁および排気弁が設けられた内燃機関本体と、
前記内燃機関本体の始動開始時の環境温度に基づいて、前記内燃機関本体の回転数を所定の回転数に設定して、前記内燃機関本体の燃焼室に燃料を供給して最初に点火するまでの期間において、設定した前記所定の回転数により前記内燃機関本体を駆動させる制御を行う制御部とを備え、
吸気管内の温度を測定する温度センサをさらに備え、
前記制御部は、前記温度センサの温度が所定の設定温度を超えたタイミングで、前記燃焼室に燃料を供給して最初の点火を行うように構成されている、内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関し、特に、最初の点火を行うまでに燃焼室内を暖機する制御を行う制御部を備える内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、最初の点火を行うまでに燃焼室内を暖機する制御を行う制御部を備える内燃機関が知られている。このような内燃機関は、たとえば、特開2009-299538号公報に開示されている。
【0003】
特開2009-299538号公報には、モータリングにより最初の点火を行うまでに燃焼室内を暖機する制御を行う制御装置と、可変バルブタイミング機構とを備えるエンジンが開示されている。制御装置は、モータリングの際に、可変バルブタイミング機構により、吸気弁を閉じるタイミングを、一律に、基準タイミング(定常運転時)よりも進角側に設定するように構成されている。これにより、エンジンは、吸気弁を下死点側で早閉じして多くの吸気をシリンダ内に留めることにより、吸気を圧縮してシリンダ内の温度を高めている。なお、シリンダ内の温度が高くなると、燃料の霧化が効果的に行われるため、初爆直後の排気ガスが低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2009-299538号公報に記載のエンジンでは、モータリングの際に、吸気弁を閉じるタイミングを、一律に、基準タイミング(定常運転時)よりも進角側に設定しており、エンジンの環境温度に応じて排気ガスを低減するための適切な制御を行うことが困難であるという問題点がある。すなわち、上記特許文献1に記載のエンジンでは、可変バルブタイミング機構に対して、冷間始動などの環境温度を考慮した制御を行っていない。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、内燃機関の環境温度に応じて排気ガスを低減するための適切な制御を行うことが可能な内燃機関を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における内燃機関は、吸気弁および排気弁が設けられた内燃機関本体と、内燃機関本体の始動開始時の環境温度に基づいて、内燃機関本体の回転数を所定の回転数に設定して、内燃機関本体の燃焼室に燃料を供給して最初に点火するまでの期間において、設定した所定の回転数により内燃機関本体を駆動させる制御を行う制御部とを備え、制御部による制御により、吸気弁の開閉タイミングを調整可能な可変動弁機構をさらに備え、制御部は、所定の回転数に基づく最も外気を導入可能な吸気弁の閉タイミングに設定するタイミング制御を行うように構成されている。
この発明の一の局面による内燃機関では、上記のように、内燃機関本体の始動開始時の環境温度に基づいて、内燃機関本体の回転数を所定の回転数に設定して、内燃機関本体の燃焼室に燃料を供給して最初に点火するまでの期間において、設定した所定の回転数により内燃機関本体を駆動させる制御を行う制御部を設ける。これにより、たとえば、環境温度が低い場合(冷間始動の場合)に、内燃機関本体の回転数を特に大きく設定すると、気筒とピストンとの間の摩擦および慣性過給により、燃焼室内を効果的に暖機することが可能になるので、内燃機関の環境温度に応じて排気ガスを低減するための適切な制御を行うことができる。なお、燃焼室内を暖機すると、燃料の霧化が促進され、最初に点火した際に発生する排気ガスを低減することができる。また、内燃機関本体の回転数に基づく慣性過給や吸気脈動などを考慮して、効果的に(最も)外気を燃焼室に導入することができる。その結果、燃焼室内の圧力を効果的に高めて燃焼室内を効果的に暖機することができるので、内燃機関の環境温度に応じて排気ガスを低減するためのより適切な制御を行うことができる。
上記一の局面による内燃機関において、好ましくは、制御部は、燃焼室に燃料を供給して最初の点火を行う際の1サイクル目までタイミング制御を継続するとともに、2サイクル目以降では、可変動弁機構により定常運転時の吸気弁のバルブタイミングに復帰させるように構成されている。
ここで、2サイクル目以降では、EGRガスの再循環などの影響により1サイクル目よりも吸気量が増加するため、所定のバルブタイミングに設定する必要がある。そこで、上記のように構成すれば、最初の点火前の期間のうちの初期のみでタイミング制御を終える場合と比較して、タイミング制御をより長く継続することができるので、燃焼室内をより効果的に暖機することができる。その結果、内燃機関の環境温度に応じて排気ガスを低減するためのより適切な制御を行うことができる。
【0017】
上記一の局面による内燃機関において、好ましくは、制御部は、燃焼室内の温度を推定する推定ロジックに基づいて、燃焼室内の温度が所定の設定温度を超えたタイミングで、燃焼室に燃料を供給して最初の点火を行うように構成されている。
【0018】
このように構成すれば、推定ロジックを用いることにより、制御部において、最初の点火を行うタイミングを判断する演算などが不要となるので、制御部の制御負荷を軽減することができる。
【0019】
この場合、好ましくは、推定ロジックは、燃焼室内の温度と、所定の回転数による内燃機関本体の駆動継続時間との関係を示すマップを含む。
【0020】
このように構成すれば、燃焼室内の温度と、所定の回転数による内燃機関本体の駆動継続時間(モータリング継続時間)との関係を示すマップにより、最初の点火を行うタイミングを、複雑な演算を行うことなく容易に決定することができる。
【0023】
上記一の局面による内燃機関において、好ましくは、環境温度とは、内燃機関本体の周囲の外気温度、および、内燃機関本体の冷却水温度の少なくとも一方を含む。
【0024】
このように構成すれば、内燃機関が一般的に備える内燃機関本体の周囲の外気温度を測定する温度センサ、または、内燃機関本体の冷却水温度を測定する温度センサを用いて、最初の点火を行うまでに燃焼室内を暖機する制御を行うことができる。
【0025】
上記一の局面による内燃機関において、好ましくは、ピストンを駆動させるハイブリッド駆動用モータをさらに備え、制御部は、内燃機関本体の始動開始時の環境温度に基づいて、内燃機関本体の回転数を所定の回転数に設定して、燃焼室に燃料を供給して最初に点火するまでの期間において、ハイブリッド駆動用モータによって、設定した所定の回転数により内燃機関本体を駆動させる制御を行うように構成されている。
【0026】
このように構成すれば、ハイブリッド駆動用モータを用いて、モータリングを行うことによって、内燃機関の環境温度に応じて排気ガスを低減するための適切な制御を行うことができる。
この発明の第2の局面における内燃機関は、吸気弁および排気弁が設けられた内燃機関本体と、内燃機関本体の始動開始時の環境温度に基づいて、内燃機関本体の回転数を所定の回転数に設定して、内燃機関本体の燃焼室に燃料を供給して最初に点火するまでの期間において、設定した所定の回転数により内燃機関本体を駆動させる制御を行う制御部とを備え、吸気管内の温度を測定する温度センサをさらに備え、制御部は、温度センサの温度が所定の設定温度を超えたタイミングで、燃焼室に燃料を供給して最初の点火を行うように構成されている。
この発明の第2の局面による内燃機関では、上記のように、内燃機関本体の始動開始時の環境温度に基づいて、内燃機関本体の回転数を所定の回転数に設定して、内燃機関本体の燃焼室に燃料を供給して最初に点火するまでの期間において、設定した所定の回転数により内燃機関本体を駆動させる制御を行う制御部を設ける。これにより、たとえば、環境温度が低い場合(冷間始動の場合)に、内燃機関本体の回転数を特に大きく設定すると、気筒とピストンとの間の摩擦および慣性過給により、燃焼室内を効果的に暖機することが可能になるので、内燃機関の環境温度に応じて排気ガスを低減するための適切な制御を行うことができる。なお、燃焼室内を暖機すると、燃料の霧化が促進され、最初に点火した際に発生する排気ガスを低減することができる。また、温度センサにより燃焼室に燃料を供給して最初の点火を行うタイミングを精度よく判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1(第2)実施形態による車両の構成を概略的に示した図である。
【
図2】第1実施形態によるエンジン、可変動弁機構およびECUの構成を示した図である。
【
図3】第1実施形態による環境温度とモータリング回転数との関係を示した図である。
【
図4】第1実施形態によるモータリング回転数とIVCとの関係を示した図である。
【
図5】(a)~(c)は、互いに異なるモータリング回転数におけるバルブタイミングを示した図である。
【
図6】第1実施形態によるモータリング継続時間と環境温度との関係(マップ)を示した図である。
【
図7】第2実施形態によるエンジン、可変動弁機構およびECUの構成を示した図である。
【
図8】第2実施による超遅閉制御時におけるバルブタイミングを示した図である。
【
図9】第2実施によるエンジンのECUによるエンジン始動時の制御処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
[第1実施形態]
図1~
図6を参照して、第1実施形態によるエンジン1(内燃機関の一例)の構成について説明する。
【0030】
図1に示すように、第1実施形態のエンジン1は、ハイブリット車10に組み込まれている。
【0031】
エンジン1は、エンジン本体2(内燃機関本体の一例)と、可変動弁機構3(
図2参照)と、エンジン本体2の上流側に接続される吸気管4a(
図2参照)と、エンジン本体2の下流側に接続される排気管4bと、モータリングに使用される電気モータ5(ハイブリッド駆動用モータの一例)と、ECU(Engine Control Unit)6(制御部の一例)とを備えている。
【0032】
図2に示すように、エンジン本体2は、シリンダブロック21と、シリンダブロック21の上部に取り付けられるシリンダヘッド22とを含んでいる。シリンダブロック21は、燃焼室23が内側に設けられた気筒24を有している。エンジン本体2内には、クランクシャフト(図示せず)が設けられている。また、エンジン本体2には、吸気弁26aおよび排気弁26bが設けられている。エンジン1は、クランクシャフトの動力によりカムシャフト25aおよび25bを回転させることによって、吸気弁26aおよび排気弁26bをそれぞれ所定のバルブタイミングにより開閉する。
【0033】
シリンダブロック21には、エンジン1を冷却する冷却水Wを流通させるためのウォータージャケット27が設けられている。ウォータージャケット27は、燃焼室23に隣接して配置されている。モータリングの際に、エンジン1(燃焼室23、気筒24)は、ピストンPと気筒24との間における摩擦や、気筒24内(燃焼室23内)での空気の圧縮により、温度上昇する。このため、モータリングの際に、冷却水Wも、温度上昇したエンジン1から熱を奪うことにより、温度上昇する。
【0034】
可変動弁機構3は、燃焼室23の吸気弁26aおよび排気弁26bの開閉タイミングを調整可能に構成されている。詳細には、また、可変動弁機構3は、吸気弁26aおよび排気弁26bの開閉のタイミングをずらすために、カムシャフト25aおよび25bの回転をそれぞれ独立して遅角方向または進角方向にずらすように構成されている。可変動弁機構3は、タイミングチェーン(図示せず)に設置されており、吸気弁26a(排気弁26b)の開閉タイミングを、カムの位相およびリフト量のプロフィールを維持しながら連続的に変更するように構成されている。したがって、吸気弁26a(排気弁26b)の開弁期間の角度幅は変わることがない。また、可変動弁機構3は、エンジン始動前でも稼働可能な電動式の機構である。
【0035】
すなわち、可変動弁機構3は、吸気弁26aの開くタイミング(以下、IVO(Intake Valve Open))および閉じるタイミング(以下、IVC(Intake Valve Close))を、共に早めるか、または、共に遅らせるように構成されている。
【0036】
また、可変動弁機構3は、排気弁26bの開くタイミング(以下、EVO(Exhaust Valve Open))および閉じるタイミング(以下、EVC(Exhaust Valve Close))を、共に早めるか、または、共に遅らせるように構成されている。なお、可変動弁機構3は、ECU6による制御の下、駆動されるように構成されている。
【0037】
吸気管4aは、吸気弁26aを介して燃焼室23に吸気を供給するように構成されている。排気管4bは、排気弁26bを介して燃焼室23から排出された排気(排気ガス)を外部(大気)に放出するように構成されている。排気管4bには、触媒Cと、触媒Cの下流側に配置されるマフラーFとが設けられている。
【0038】
吸気管4aおよび排気管4bには、EGRガス(排気ガス)を再循環するためのEGR管4cが設けられている。EGR管4cには、EGR管4cを開閉するEGRバルブ(図示せず)と、EGRガスを冷却するEGRガスクーラ―(図示せず)とが設けられている。なお、吸気管4a(吸気弁26aの上流側)には、吸気通路に燃料を噴射するインジェクタ(図示せず)が設けられている。
【0039】
電気モータ5は、モータリングの際に、エンジン本体2を所定の回転数(設定回転数)で駆動させるように構成されている。所定の回転数(設定回転数)とは、一定の回転数ではなく、モータリングを行うごとに改めて設定される回転数である。設定された所定の回転数(設定回転数)は、1回のモータリングの途中で変動することはない。なお、電気モータ5は、ECU6による制御の下、駆動されるように構成されている。
【0040】
〈ECUの構成〉
ECU6は、エンジン1の各部を制御するように構成されている。ECU6は、モータリングの際に、エンジン本体2(気筒24内、燃焼室23内)が効果的に暖機されるように、電気モータ5および可変動弁機構3を制御するように構成されている。これにより、ECU6は、気筒24内(燃焼室23内)を効果的に昇圧して、初爆時(燃焼室23に燃料を供給して最初に点火する際)の燃料の霧化を促進し、初爆直後の排気ガスを低減するように構成されている。
【0041】
詳細には、第1実施形態では、ECU6は、エンジン本体2の始動開始時の環境温度に基づいて、エンジン本体2の回転数を所定の回転数に設定する制御を行うように構成されている。そして、ECU6は、エンジン本体2の燃焼室23に燃料を供給して最初に点火するまでの期間において、電気モータ5によって、設定した所定の回転数(設定回転数)によりエンジン本体2を駆動させる制御を行うように構成されている。
【0042】
なお、ECU6は、環境温度が高くなる程、所定の回転数(設定回転数)を小さく設定し、環境温度が低くなる程、所定の回転数(設定回転数)を大きく設定するように構成されている。
【0043】
ここで、環境温度とは、エンジン本体2のウォータージャケット27内を流れる冷却水Wの冷却水温度である。エンジン本体2には、環境温度(冷却水Wの冷却水温度)を測定するための温度センサS1が設けられている。ECU6は、モータリングを開始する前に、温度センサS1から環境温度(冷却水Wの冷却水温度)の情報を取得するように構成されている。
【0044】
たとえば、
図3に示すように、ECU6は、環境温度がT1[℃]である場合には、モータリングを行う際のエンジン本体2の回転数(設定回転数)を、R1[rpm]に設定するように構成されている。
【0045】
また、ECU6は、環境温度がT1[℃]よりも高いT2[℃]である場合には、モータリングを行う際のエンジン本体2の回転数(設定回転数)を、R1[rpm]よりも小さいR2[rpm]に設定するように構成されている(T1<T2、R1>R2)。
【0046】
また、ECU6は、環境温度がT2[℃]よりも高いT3[℃]である場合には、モータリングを行う際のエンジン本体2の回転数(設定回転数)を、R2[rpm]よりも小さいR3[rpm]に設定するように構成されている(T2<T3、R2>R3)。なお、回転数が低い程、エンジン1は、NV(Noise Vibration、騒音振動)を小さく抑えることが可能である。
【0047】
なお、一例ではあるが、モータリングの際のエンジン本体2の回転数は、約1000[rpm]以上約4000[rpm]以下の範囲内で設定される。
【0048】
また、
図4に示すように、ECU6は、所定の回転数(設定回転数)を大きく設定するのに伴い、可変動弁機構3により吸気弁26aを閉じるタイミングを遅角側に設定するタイミング制御を行うように構成されている。タイミング制御は、最も外気を燃焼室23に導入可能なように吸気弁26aの閉タイミングを設定する制御である。なお、タイミング制御において、吸気弁26aを閉じるタイミングは、少なくとも、ピストンPが下死点から上死点に移動する間における下死点と上死点との中間の位相αよりも進角側となるように設定される(
図5参照)。
【0049】
たとえば、ECU6は、環境温度がT1[℃]であることに基づいて、エンジン本体2の回転数(設定回転数)をR1[rpm]に設定した場合には、吸気弁26aを閉じるタイミング(IVC)をa11[度]に設定するように構成されている。以下では、回転数がR1、IVCがa11[度]となるモータリングのための設定を、第1モータリング設定とする。
【0050】
また、ECU6は、環境温度がT1[℃]よりも高いT2[℃]であることに基づいて、エンジン本体2の回転数(設定回転数)をR2[rpm]に設定した場合には、吸気弁26aを閉じるタイミング(IVC)をa11[度]よりも進角側のa21[度]に設定するように構成されている。以下では、回転数がR2[rpm]、IVCがa21[度]となるモータリングのための設定を、第2モータリング設定とする。
【0051】
また、ECU6は、環境温度がT2[℃]よりも高いT3[℃]であることに基づいて、エンジン本体2の回転数(設定回転数)をR3[rpm]に設定した場合には、吸気弁26aを閉じるタイミング(IVC)をa21[度]よりも進角側のa31[度]に設定するように構成されている。以下では、回転数がR3[rpm]、IVCがa31[度]となるモータリングのための設定を、第3モータリング設定とする。
【0052】
なお、
図5に示すように、いずれのモータリング設定の場合でも、EVCおよびEVOは同一角度に設定されている。
図5では、EVCをa41[度]、EVOをa42[度]で示している。また、第1モータリング設定でのIVOをa12[度]で示している。また、第2モータリング設定でのIVOをa22[度]で示している。また、第3モータリング設定でのIVOをa32[度]で示している。
【0053】
ECU6は、燃焼室23内の温度を推定する推定ロジックに基づいて、筒内温度(推定された環境温度)が所定の設定温度(点火開始温度T10[℃])を超えたタイミングで、燃焼室23に燃料を供給して最初の点火を行うように構成されている。すなわち、ECU6は、推定ロジックに基づいて、モータリングを終えるための制御を行うように構成されている。なお、推定ロジックにより推定される筒内の所定の設定温度(点火開始温度T10[℃])は、燃料の霧化が適切に行われ、初爆後において、排気ガスを低減することが可能であると推定される所定の温度である。なお、設定温度(点火開始温度T10[℃])は、第1~第3モータリング設定の各設定に対して共通の温度である。
【0054】
推定ロジックは、
図6に示すように、環境温度(筒内温度)と、所定の回転数によるエンジン本体2本体の駆動継続時間(モータリング継続時間)との関係を示すマップMである。
【0055】
なお、
図6では、各モータリング設定において、点火開始温度T10[℃]に達するモータリング継続時間が互いに略同じとなるように図示しているが、点火開始温度T10[℃]に達するモータリング継続時間が互いに異なっていてもよい。
【0056】
ECU6は、燃焼室23に燃料を供給して最初の点火を行う際の1サイクル目までタイミング制御を継続するとともに、2サイクル目以降では、可変動弁機構3により定常運転時の吸気弁26aのバルブタイミングに復帰させるように構成されている。なお、2サイクル目以降では、EGRガス(排気ガス)が、EGR管4cを介して排気管4bから吸気管4aに再循環される。
【0057】
(ECUによるモータリングの際の制御の流れ)
次に、
図2~
図6を参照して、ECU6によるモータリングの際の制御の流れについて説明する。
【0058】
まず、ECU6は、エンジン本体2の始動開始時に、エンジン本体2に設けられた温度センサS1(
図2参照)から、環境温度(冷却水Wの冷却水温度)の情報を取得する。そして、ECU6は、取得した環境温度に基づいて、エンジン本体2の回転数を所定の回転数に設定する。また、ECU6は、所定の回転数(設定回転数)に応じて、可変動弁機構3により吸気弁26aを閉じるタイミングを調整する制御(タイミング制御)を行う。
【0059】
次に、ECU6は、電気モータ5により、エンジン本体2を所定の回転数(設定回転数)で駆動させる。そして、ECU6は、燃焼室23内の温度(環境温度(筒内温度))を推定する推定ロジック(マップM)に基づいて、燃焼室23内の温度(環境温度(筒内温度))が所定の設定温度(点火開始温度)を超えたタイミングで、燃焼室23に燃料を供給して最初の点火を行う。
【0060】
なお、ECU6は、燃焼室23に燃料を供給して最初の点火を行う際の1サイクル目までタイミング制御を継続する。そして、ECU6は、2サイクル目以降では、可変動弁機構3により定常運転時の吸気弁26aのバルブタイミングに復帰させる。
【0061】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0062】
第1実施形態では、上記のように、エンジン本体2の始動開始時の環境温度に基づいて、エンジン本体2の回転数を所定の回転数に設定して、エンジン本体2の燃焼室23に燃料を供給して最初に点火するまでの期間において、設定した所定の回転数によりエンジン本体2を駆動させる制御を行うECU6を設ける。これによって、たとえば、環境温度が低い場合(冷間始動の場合)に、エンジン本体2の回転数を特に大きく設定すると、気筒24とピストンPとの間の摩擦および慣性過給により、燃焼室23内を効果的に暖機することが可能になるので、エンジン1の環境温度に応じて排気ガスを低減するための適切な制御を行うことができる。なお、燃焼室23内を暖機すると、燃料の霧化が促進され、最初に点火した際に発生する排気ガスを低減することができる。
【0063】
第1実施形態では、上記のように、ECU6による制御により、吸気弁26aの開閉タイミングを調整可能な可変動弁機構3をさらに備え、ECU6は、所定の回転数に基づく最も外気を導入可能な吸気弁26aの閉タイミングに設定するタイミング制御を行うように構成されている。これによって、エンジン本体2の回転数に基づく慣性過給や吸気脈動などを考慮して、効果的に(最も)外気を燃焼室23に導入することができる。その結果、気筒24内の圧力を効果的に高めて燃焼室23内を効果的に暖機することができるので、エンジン1の環境温度に応じて排気ガスを低減するためのより適切な制御を行うことができる。なお、慣性過給の観点から、エンジン1が高回転数である程、吸気弁26aの閉タイミング(IVC)を遅角側にすると吸気量が大きくなるが、吸気脈動(空気抵抗)を考慮すると、エンジン1が中回転数(約3000rpmから約4000rpm)で慣性過給効果が大きくなり、高回転数では慣性過給効果が小さくなる。したがって、エンジン1の高速回転時には進角側にした方が、吸気量が大きくなる場合がある。
【0064】
第1実施形態では、上記のように、ECU6は、燃焼室23に燃料を供給して最初の点火を行う際の1サイクル目までタイミング制御を継続するとともに、2サイクル目以降では、可変動弁機構3により定常運転時の吸気弁26aのバルブタイミングに復帰させる制御(点火制御)を行うように構成されている。ここで、2サイクル目以降では、EGRガスの再循環などの影響により1サイクル目よりも吸気量が増加するため、所定のバルブタイミングに設定する必要がある。そこで、上記のように構成することにより、最初の点火前の期間のうちの初期のみでタイミング制御を終える場合と比較して、タイミング制御をより長く継続することができるので、燃焼室23内をより効果的に暖機することができる。その結果、エンジン1の環境温度に応じて排気ガスを低減するためのより適切な制御を行うことができる。
【0065】
第1実施形態では、上記のように、ECU6は、燃焼室23内の温度を推定する推定ロジックに基づいて、燃焼室23内の温度が所定の設定温度を超えたタイミングで、燃焼室23に燃料を供給して最初の点火を行うように構成されている。これによって、推定ロジックを用いることによって、ECU6において、最初の点火を行うタイミングを判断する演算などが不要となるので、ECU6の制御負荷を軽減することができる。
【0066】
第1実施形態では、上記のように、推定ロジックは、燃焼室23内の温度と、所定の回転数によるエンジン本体2の駆動継続時間との関係を示すマップMを含む。これによって、燃焼室23内の温度と、所定の回転数によるエンジン本体2の駆動継続時間(モータリング継続時間)との関係を示すマップMにより、最初の点火を行うタイミングを、複雑な演算を行うことなく容易に決定することができる。
【0067】
第1実施形態では、上記のように、ピストンPを駆動させる電気モータ5をさらに備え、ECU6は、エンジン本体2の始動開始時の環境温度に基づいて、エンジン本体2の回転数を所定の回転数に設定して、燃焼室23に燃料を供給して最初に点火するまでの期間において、電気モータ5によって、設定した所定の回転数によりエンジン本体2を駆動させる制御を行うように構成されている。これによって、電気モータ5を用いて、モータリングを行うことによって、エンジン1の環境温度に応じて排気ガスを低減するための適切な制御を行うことができる。
【0068】
[第2実施形態]
次に、
図1および
図7~
図9を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、ECU6によりタイミング制御を行う第1実施形態の構成とは異なり、タイミング制御を行うことなく、ECU206(制御部の一例)により吸気弁26aを閉じるタイミングを、上記第1実施形態のタイミング(
図5参照)よりもさらに遅くする例(超遅角制御を行う例)について説明する。なお、上記第1実施形態と同様の構成は、第1実施形態と同じ符号を付して図示するとともに説明を省略する。
【0069】
図7に示す第2実施形態のエンジン201(内燃機関の一例)は、吸気弁26aを閉じるタイミングを大きく遅角側に設定する超遅角制御を行うECU206を備えている。また、エンジン201は、吸気管4a内のガスの温度を測定する温度センサS2を備えている。なお、温度センサS2は、スロットルバルブ(図示せず)の下流側に設けられている。
【0070】
ここで、超遅角制御とは、エンジン201が始動不能となり、かつ、エンジン201に燃料噴射および点火を行ってもエンジン201の自律的な稼働が不能となるような位相に達するまで可変動弁機構3により吸気弁26aの相対回転位相を遅角側に設定するECU206の制御である。
【0071】
具体的には、
図8に示すように、ECU206は、燃焼室23に燃料を供給して最初に点火するまでの期間において、ピストンPが下死点から上死点に移動する間における下死点と上死点との中間の位相αよりも遅角側で、吸気弁26aを閉じる(IVCをa52[度]に設定する)ように構成されている。より具体的には、ECU206は、燃焼室23に燃料を供給して最初に点火するまでの期間において、上死点(または上死点近傍)で吸気弁26aを閉じるように構成されている。
【0072】
一例ではあるが、IVCがa52[度]に設定された場合、ピストンPが上死点から下死点に移動する間における上死点と下死点との中間βの位相よりも遅角側のa51[度]にIVOが設定される。
【0073】
なお、超遅角制御が行われた場合、
図7に示すエンジン201は、吸気弁26aが開いた状態でピストンPが下死点に到達してからピストンPが上死点に到達するまでの略すべでの位相(時間)において、気筒24内のガスを吸気管4a側に吹き戻すように構成されている。この際、気筒24の内周面とピストンPとの摺動により発生した摩擦熱によって気筒24内のガスの温度が上昇し、温度上昇(高温化)したガスが、気筒24内から吸気管4a側に吹き戻される。その結果、吸気通路に燃料を噴射するインジェクタ(図示せず)から燃料が噴射された際に、効果的に燃料を霧化させることができる。
【0074】
ECU206は、温度センサS2の温度が所定の設定温度を超えたタイミングで、インジェクタから燃料を噴射することにより、燃焼室23に燃料を供給して、最初の点火を行うように構成されている。
【0075】
(エンジン始動時のECUの制御処理)
次に、
図9を参照して、エンジン始動時のECU206の制御処理について説明する。
【0076】
まず、ステップS1において、ECU206により、環境温度に基づいてエンジン本体2の回転数が所定の回転数に設定される。この制御については、上記第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0077】
次に、ステップS2において、ECU206により、温度センサS1を介して取得した環境温度に基づいて冷間始動であるか否かを判断する。たとえば、温度センサS1を介して取得した環境温度が所定のしきい値温度以上であるか未満であるかを判断して、冷間始動であるか否かを判断する。そして、冷間始動である場合、ステップS3に進む。また、冷間始動でない場合、ステップS7に進む。
【0078】
次に、ステップS3において、ECU206により、超遅角制御が行われる。すなわち、ECU206により、上死点(または上死点近傍)で吸気弁26aを閉じるバルブタイミング(
図8に示す超遅閉じのバルブタイミング)に設定される。
【0079】
次に、ステップS4において、ECU206により、可変動弁機構12を介して吸気弁26aがステップS3で設定された通りの超遅閉じのバルブタイミングに変更されたか否かが判断される。超遅閉じのバルブタイミングに変更された場合、ステップS5に進む。一方、未だ超遅閉じのバルブタイミングに変更されていない場合、ステップS4が繰り返される。なお、ステップS4のECU206による判断は、可変動弁機構12に設けられた所定の回転角度センサ(図示せず)などを用いて行われる。後述するステップS8も同様である。
【0080】
次に、ステップS5において、ECU206により、電気モータ5(
図1参照)が駆動されてモータリング(ピストンPの駆動)が開始される。その結果、気筒24の内周面とピストンPとの摺動により発生した摩擦熱によって、気筒24内のガスの温度が上昇し始める。
【0081】
次に、ステップS6において、ECU206により、温度センサS2(
図7参照)により測定されるガスの温度が所定の設定温度を超えたか否かが判断される。温度センサS2の測定温度が所定の設定温度を超えている場合、ステップS7に進む。一方、未だ温度センサS2の測定温度が所定の設定温度を超えていない場合、ステップS6が繰り返される。
【0082】
次に、ステップS7において、ECU206により、点火を行う所定のバルブタイミングに吸気弁26aが設定される。
【0083】
次に、ステップS8において、ECU206により、可変動弁機構12を介して吸気弁26aがステップS7で設定された通りの点火を行う所定のバルブタイミングに変更されたか否かが判断される。点火を行う所定のバルブタイミングに変更された場合、ステップS9に進む。一方、未だ点火を行う所定のバルブタイミングに変更されていない場合、ステップS8が繰り返される。
【0084】
次に、ステップS9において、ECU206により、エンジン201の点火が開示される。
【0085】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0086】
第2実施形態では、上記のように、ECU206による制御により、吸気弁26aの開閉タイミングを調整可能な可変動弁機構12を備え、燃焼室23に燃料を供給して最初に点火するまでの期間において、ECU206は、ピストンPが下死点から上死点に移動する間における下死点と上死点との中間の位相αよりも遅角側で、吸気弁26aを閉じるように構成されている。これによって、ピストンPと気筒24との摩擦などにより高温化した気筒24内のガスを、ピストンPが下死点から上死点に向けて移動する間において、比較的長い時間にわたり吸気管4a側に吹き戻すことができる。すなわち、少なくとも、ピストンPが下死点から上死点に向けて移動するのに要する時間の半分よりも長い時間にわたり吸気管4a側に高温化したガスを吹き戻すことができる。その結果、燃料の霧化を効果的に促進することができるので、未燃燃料を低減し、排気ガスを低減することができる。これによって、冷間始動時の燃料の噴射量も低減することができる。なお、排気ガスを低減することができることから、触媒に用いられる貴金属の量を減らせる可能性がある。
【0087】
第2実施形態では、上記のように、燃焼室23に燃料を供給して最初に点火するまでの期間において、ECU206は、上死点または上死点近傍で吸気弁26aを閉じるように構成されている。これによって、高温化した気筒24内のガスを、ピストンPが下死点から上死点に向けて移動する間において、より長い時間にわたり吸気管4a側に吹き戻すことができる。その結果、燃料の霧化をより効果的に促進することができる。
【0088】
第2実施形態では、上記のように、吸気管4a内の温度を測定する温度センサS2を備え、ECU206は、温度センサS2の温度が所定の設定温度を超えたタイミングで、燃焼室23に燃料を供給して最初の点火を行うように構成されている。これによって、温度センサS2により燃焼室23に燃料を供給して最初の点火を行うタイミングを精度よく判断することができる。
【0089】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0090】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、環境温度をエンジンの冷却水の温度とした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、環境温度をエンジン本体の周囲の外気温度、吸気温度または車両の外の温度(外気温度)などとしてもよい。
【0091】
また、上記第1実施形態では、モータリングの際に、ECUにより吸気弁のバルブタイミングを通常の定常運転時とは異なるタイミングに変更した(タイミング制御を行った)例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、モータリングの際に、吸気弁のバルブタイミングを通常の定常運転時と同じタイミングに設定してもよい(タイミング制御を行わなくてもよい)。
【0092】
また、上記第1実施形態では、推定ロジックを、燃焼室内の温度と、所定の回転数によるエンジン本体の駆動継続時間との関係を示すマップとした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、推定ロジックを、所定の回転数によるエンジン本体の駆動継続時間から、燃焼室内の温度を導出する所定の計算式としてもよい。
【0093】
また、上記第1実施形態では、推定ロジックに基づいて、最初の点火のタイミングをECUにより判断した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、推定ロジックに基づくことなく、燃焼室内の温度を測定可能な温度センサなどの測定結果に基づいて、最初の点火のタイミングをECUにより判断してもよい。
【0094】
また、上記第1および第2実施形態では、
図3に示すように、環境温度とエンジン本体の回転数とに非線形的(2次曲線的)な関係を持たせて、エンジン本体の回転数を設定した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、環境温度とエンジン本体の回転数とに線形的(直線的)な関係を持たせて、エンジン本体の回転数を設定してもよい。
【0095】
また、上記第1実施形態では、電気モータによるモータリングの際に、ECUによる所定の制御を行った例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、セルモータによるクランキングの際に、ECUによる所定の制御を行ってもよい。
【0096】
また、上記第1実施形態では、設定温度(点火開始温度)を、第1~第3モータリング設定の各設定に対して共通の温度とした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、設定温度(点火開始温度)を、第1~第3モータリング設定の各設定に対して、互いに異なる温度としてもよい。たとえば、設定温度(点火開始温度)を、第1~第3モータリング設定の各設定におけるモータリング開始時の環境温度に、T[℃](たとえば20[℃])を加えた温度としてもよい。
【0097】
また、上記第1実施形態では、所定の回転数(設定回転数)を大きく設定するのに伴い、吸気弁の閉タイミングを遅角側に設定するように、ECUを構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、所定の回転数(設定回転数)を大きく設定するのに伴い、吸気弁の閉タイミングを進角側に設定するように、ECUを構成してもよい。
【0098】
また、上記第2実施形態では、吸気管に設けられた温度センサに基づいて最初の点火を行うタイミングを判断するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上記第1実施形態のように、推定ロジックに基づいて最初の点火を行うタイミングを判断してもよい。
【0099】
また、上記第2実施形態では、説明の便宜上、制御部の処理を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部の処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0100】
1、201 エンジン(内燃機関)
2 エンジン本体(内燃機関本体)
3 可変動弁機構
4a 吸気管
6、206 ECU(制御部)
10 電気モータ(ハイブリッド駆動用モータ)
23 燃焼室
26a 吸気弁
26b 排気弁
P ピストン
S2 温度センサ