(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】スタッカクレーン制御システム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/04 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B65G1/04 537A
(21)【出願番号】P 2021007749
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-01-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】清川 渉
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-060507(JP,A)
【文献】特開2010-018426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路に沿って走行する走行台車と、上下方向に沿う姿勢で前記走行台車に支持された支柱と、前記支柱に沿って規定の昇降範囲で昇降する昇降体と、前記昇降体を昇降させる昇降装置と、前記昇降体に支持された移載装置と、を備え、前記移載装置は、物品を保持する保持部を備え、前記保持部と移載対象箇所との間で前記物品の移載動作を行うように構成されたスタッカクレーンを制御対象とするスタッカクレーン制御システムであって、
前記昇降体が前記昇降範囲の上限に位置する場合の前記移載装置の最下部の高さ以上に設定された検出高さでの、前記支柱の揺れ量である基準揺れ量を検出する揺れ検出部と、
前記昇降体の各時点での高さである昇降高さを示す昇降高さ情報を取得する昇降高さ取得部と、
前記移載装置を制御する移載制御部と、を備え、
前記移載制御部は、前記揺れ検出部により検出された前記基準揺れ量を、前記昇降高さ情報に示された前記昇降高さでの前記支柱の揺れ量である昇降高さ揺れ量に換算し、前記昇降高さ揺れ量が定常的に規定の判定閾値以下となったことを条件として、前記移載装置の移載動作を開始
し、
前記走行台車は、前記走行経路に沿う方向の複数個所に予め設定された基準停止位置に停止するように制御され、
前記走行台車が前記基準停止位置に停止し、且つ、前記支柱が静止した状態における前記検出高さでの前記支柱の位置を支柱基準位置として、
複数の前記基準停止位置のそれぞれに前記走行台車を停止させて計測した前記支柱基準位置の情報を記憶した記憶部を更に備え、
前記揺れ検出部は、前記走行経路に沿う方向における前記検出高さでの前記支柱の位置を動的に検出する位置検出センサと、前記走行台車が複数の前記基準停止位置のいずれに停止したかを示す停止位置情報を取得する停止位置取得部と、を備え、前記停止位置情報に示された前記基準停止位置についての前記支柱基準位置を前記記憶部から取得し、当該支柱基準位置と前記位置検出センサによる検出結果との差分を前記基準揺れ量として検出する、スタッカクレーン制御システム。
【請求項2】
前記停止位置取得部は、前記走行台車の実際の停止位置である実停止位置を検出する停止位置検出センサを備え、
前記揺れ検出部は、前記実停止位置と当該実停止位置に対応する前記基準停止位置との差分に応じて前記支柱基準位置を補正した補正後支柱基準位置を求め、当該補正後支柱基準位置と前記位置検出センサによる検出結果との差分を前記基準揺れ量として検出する、請求項
1に記載のスタッカクレーン制御システム。
【請求項3】
前記位置検出センサによる検出結果に示される前記検出高さでの前記支柱の位置の動的変化の振幅を取得し、当該振幅を前記基準揺れ量として検出する、請求項1
または2に記載のスタッカクレーン制御システム。
【請求項4】
前記基準揺れ量は前記検出高さでの前記支柱の揺れの振幅であり、前記昇降高さ揺れ量は前記昇降高さでの前記支柱の揺れの振幅であり、
前記移載制御部は、前記検出高さをH1、前記昇降体の高さをH2、前記基準揺れ量をX1として、
X2=X1×(H2/H1)
3・・・(1)で表される式(1)により定まるX2を前記昇降高さ揺れ量として求める、請求項1
から3の何れか一項に記載のスタッカクレーン制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッカクレーンを制御対象とするスタッカクレーン制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなスタッカクレーン制御システムの一例が、特公平4-22801号公報(特許文献1)に開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における符号及び名称を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1のスタッカクレーン制御システムは、スタッカクレーン(1)の揺れに影響を与えるパラメータを、当該スタッカクレーン(1)の停止以前に検知し、当該検知したパラメータを用いて、停止時以降におけるスタッカクレーン(1)の揺れ状態を推定する。そして、推定した揺れ状態が許容揺れ量以下になるまでの待ち時間を決定し、当該待ち時間の経過後、直ちに移載装置(フォーク装置8)を動作させる制御を行う。ここで、スタッカクレーン(1)の揺れに影響を与えるパラメータとして、物品(荷13)を含む昇降体(7)の重量、及び、昇降体(7)の昇降高さが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、待ち時間の決定に用いられるスタッカクレーンの揺れ状態は、あくまで昇降体の重量や昇降高さといったパラメータを用いて理論的に推定したものであり、実際の揺れ状態とは異なる場合があり得る。そして、推定した揺れ量よりも実際の揺れ量の方が大きかった場合には、物品の移載を適切に行うことができない場合が生じ得る。一方、そのような事態を回避するために待ち時間を長めに設定した場合には、物品の移載動作の開始が遅れ、スタッカクレーンの動作効率が低下する。
【0006】
また、これらのことを回避するために、スタッカクレーンの実際の揺れ量を検出するとしても、各時点での昇降体の昇降高さによって移載装置の揺れ量が異なるため、全ての高さにおける実際の揺れ量を検出しようとすると、多数のセンサが必要になる。その場合、スタッカクレーンの設置コストが高くならざるを得ない。
【0007】
そこで、スタッカクレーンの設置コストの上昇を抑えつつ、スタッカクレーンの実際の揺れ量に基づいて適切な時期に移載動作を開始することができる技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るスタッカクレーン制御システムは、走行経路に沿って走行する走行台車と、上下方向に沿う姿勢で前記走行台車に支持された支柱と、前記支柱に沿って規定の昇降範囲で昇降する昇降体と、前記昇降体を昇降させる昇降装置と、前記昇降体に支持された移載装置と、を備え、前記移載装置は、物品を保持する保持部を備え、前記保持部と移載対象箇所との間で前記物品の移載動作を行うように構成されたスタッカクレーンを制御対象とするスタッカクレーン制御システムであって、前記昇降体が前記昇降範囲の上限に位置する場合の前記移載装置の最下部の高さ以上に設定された検出高さでの、前記支柱の揺れ量である基準揺れ量を検出する揺れ検出部と、前記昇降体の各時点での高さである昇降高さを示す昇降高さ情報を取得する昇降高さ取得部と、前記移載装置を制御する移載制御部と、を備え、前記移載制御部は、前記揺れ検出部により検出された前記基準揺れ量を、前記昇降高さ情報に示された前記昇降高さでの前記支柱の揺れ量である昇降高さ揺れ量に換算し、前記昇降高さ揺れ量が定常的に規定の判定閾値以下となったことを条件として、前記移載装置の移載動作を開始し、前記走行台車は、前記走行経路に沿う方向の複数個所に予め設定された基準停止位置に停止するように制御され、前記走行台車が前記基準停止位置に停止し、且つ、前記支柱が静止した状態における前記検出高さでの前記支柱の位置を支柱基準位置として、複数の前記基準停止位置のそれぞれに前記走行台車を停止させて計測した前記支柱基準位置の情報を記憶した記憶部を更に備え、前記揺れ検出部は、前記走行経路に沿う方向における前記検出高さでの前記支柱の位置を動的に検出する位置検出センサと、前記走行台車が複数の前記基準停止位置のいずれに停止したかを示す停止位置情報を取得する停止位置取得部と、を備え、前記停止位置情報に示された前記基準停止位置についての前記支柱基準位置を前記記憶部から取得し、当該支柱基準位置と前記位置検出センサによる検出結果との差分を前記基準揺れ量として検出する。
【0009】
本構成によれば、揺れ検出部により検出される支柱の実際の揺れ量と、昇降高さ取得部により取得される昇降体の各時点での実際の昇降高さとに基づいて、当該昇降高さでの支柱の揺れ量である昇降高さ揺れ量を求めることができる。そして、当該昇降高さ揺れ量が定常的に規定の判定閾値以下となったことを条件として、移載装置の移載動作を開始する。このように、支柱の実際の揺れ量を検出した結果に基づいて、移載動作を開始するため、様々な運転条件によって変化する支柱の実際の揺れ量に応じて、適切な時期に移載装置の移載動作を開始することができる。さらに、本構成によれば、走行台車が走行経路に沿う方向の複数個所に予め設定された基準停止位置に停止するように制御される構成において、予め計測して記憶部に記憶した支柱基準位置の情報と、位置検出センサによる検出結果とに基づいて、検出高さでの支柱の実際の揺れ量である基準揺れ量を適切に検出することができる。
【0010】
スタッカクレーン制御システムの更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】走行台車が停止した後の支柱の揺れを模式的に示す図
【
図5】基準揺れ量及び昇降高さ揺れ量の時間変化を模式的に示す図
【
図8】第1の実施形態に係る移載動作の開始判定処理を示すフローチャート
【
図9】第2の実施形態に係る移載動作の開始判定処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1の実施形態〕
スタッカクレーン制御システムの第1の実施形態について、図面(
図1~
図8)を参照して説明する。ここでは、本開示に係るスタッカクレーン制御システムを、
図1に例示するような物品搬送設備に適用した場合を例として説明する。なお、本実施形態では、制御システム1が「スタッカクレーン制御システム」に相当する。
【0013】
図1に示すように、制御システム1(
図2参照)による制御対象となるスタッカクレーン20は、走行台車21と、支柱22と、昇降体24と、昇降装置25と、移載装置26と、を備えている。走行台車21は、走行経路4に沿って走行する。走行台車21の走行動作は、後述する走行制御部16(
図2参照)によって制御される。走行制御部16は、走行台車21が備える走行用駆動部(例えば、サーボモータ等の電動モータ)の駆動を制御することで、走行台車21の走行動作を制御する。ここで、走行経路4の長手方向(走行経路4が延びる方向)を経路長手方向Lとし、走行経路4の幅方向を経路幅方向Wとする。経路幅方向Wは、経路長手方向L及び上下方向V(鉛直方向)の双方に直交する方向である。本実施形態では、経路長手方向Lが「走行経路に沿う方向」に相当する。
【0014】
図1に示すように、走行経路4は、走行レール7によって形成されている。走行レール7は、床部5(
図3参照)に設けられている。走行台車21は、走行レール7の走行面を転動する走行輪を備えており、走行輪が走行用駆動部により回転駆動されることで、走行台車21が走行レール7に沿って走行する。なお、
図3では、スタッカクレーン20を簡略化して示すと共に、床部5に設けられた走行レール7や、天井部6に設けられた後述する案内レール8を省略している。
【0015】
図1及び
図3に示すように、支柱22は、上下方向Vに沿う姿勢で走行台車21に支持されている。支柱22は、走行台車21から上側に向かって延びるように走行台車21に立設されている。本実施形態では、2つの支柱22が、経路長手方向Lに並ぶ状態で走行台車21に支持されている。2つの支柱22のそれぞれの上端部は、上部フレーム等の連結部23によって連結されている。連結部23は、天井部6等の天井側に設けられた案内レール8に案内される案内輪を備えており、連結部23は、案内レール8に案内されながら経路長手方向Lに移動する。
【0016】
昇降装置25は、昇降体24を昇降させる。昇降装置25による昇降体24の昇降動作は、後述する昇降制御部17(
図2参照)によって制御される。昇降制御部17は、昇降装置25が備える昇降用駆動部(例えば、サーボモータ等の電動モータ)の駆動を制御することで、昇降装置25による昇降体24の昇降動作を制御する。昇降装置25は、例えば、昇降体24に連結されたワイヤが巻回される巻き取りドラムを、昇降用駆動部の駆動により回転させて、ワイヤを巻き取り又は繰り出すことで、昇降体24を上昇又は下降させる。
【0017】
昇降体24は、支柱22に沿って規定の昇降範囲E(
図3参照)で昇降する。昇降体24は、昇降範囲Eの上限E1と下限E2との間を昇降する。昇降体24は、支柱22に案内される案内輪を備えており、支柱22に案内されながら支柱22に沿って昇降する。本実施形態では、昇降体24は、経路長手方向Lに並ぶ2つの支柱22の間に配置された状態で昇降する。昇降体24は、例えば、ワイヤにより吊り下げられた状態で、支柱22に沿って昇降する。
【0018】
移載装置26は、昇降体24に支持されている。
図1及び
図3に示すように、移載装置26は、物品2を保持する保持部27を備えており、保持部27と移載対象箇所3との間で物品2の移載動作を行う。移載装置26は、走行台車21の走行動作と昇降体24の昇降動作とにより移載対象箇所3に対応する位置(具体的には、移載対象箇所3と経路幅方向Wに対向する位置)に配置された状態で、移載動作を行う。本実施形態では、保持部27は、物品2(具体的には、物品2における経路長手方向Lの中央部分)を下側から支持する(言い換えれば、載置支持する)ことで、当該物品2を保持する。移載装置26による物品2の移載動作は、後述する移載制御部18(
図2参照)によって制御される。移載制御部18は、移載装置26が備える移載用駆動部(例えば、サーボモータ等の電動モータ)の駆動を制御することで、移載装置26の移載動作を制御する。
【0019】
本実施形態では、移載装置26は、保持部27を経路幅方向Wに出退移動(昇降体24から離れる側への出移動、及び昇降体24に近づく側への退移動)させるように構成されている。そして、移載装置26による保持部27の出退動作と昇降装置25による昇降体24の昇降動作とによって、保持部27と移載対象箇所3との間で物品2が移載される。すなわち、本実施形態では、移載装置26の移載動作は、保持部27の出退動作であり、移載装置26と昇降装置25との協働によって(具体的には、移載装置26の移載動作に合わせて昇降体24の昇降動作を行うことで)、保持部27と移載対象箇所3との間で物品2が移載される。
【0020】
具体的には、保持部27から移載対象箇所3に物品2を移載する場合には、物品2を保持している保持部27が、引退位置(昇降体24側に引退した位置)から突出位置(移載対象箇所3側に突出した位置)まで出移動した後、昇降体24が下降し、その後、保持部27が突出位置から引退位置まで退移動するように、移載装置26の移載動作及び昇降装置25による昇降体24の昇降動作が行われる。これにより、物品2が保持部27から移載対象箇所3に降ろされて、保持部27から移載対象箇所3に物品2が移載される。また、移載対象箇所3から保持部27に物品2を移載する場合には、物品2を保持していない保持部27が、引退位置から突出位置まで出移動した後、昇降体24が上昇し、その後、保持部27が突出位置から引退位置まで退移動するように、移載装置26の移載動作及び昇降装置25による昇降体24の昇降動作が行われる。これにより、物品2が保持部27によって掬われて、移載対象箇所3から保持部27に物品2が移載される。
【0021】
図1に示すように、物品搬送設備100は、収納棚30を備えている。収納棚30は、経路長手方向Lが棚横幅方向となり且つ経路幅方向Wが棚奥行方向となる向きで配置されている。走行経路4は、収納棚30の前面側(収納棚30に対して物品2が出し入れされる側)に形成されている。収納棚30は、物品2を収納する複数の収納部31を備えている。複数の収納部31は、上下方向Vに複数段且つ経路長手方向Lに複数列配置されている。
図1に示す例では、物品2は、経路長手方向Lの両側の部分を下側から支持された状態で、収納部31に収納される。
図1に示す例では、収納棚30は、走行経路4に対して経路幅方向Wの両側に設けられている。本実施形態では、収納部31が移載対象箇所3に含まれる。収納部31は、経路長手方向L及び上下方向Vのそれぞれの複数箇所に設定される移載対象箇所3である。
【0022】
物品搬送設備100は、物品2を支持する支持部40(
図1に示す例では、走行経路4を挟んで経路幅方向Wに対向する一対の支持部40)を備えている。支持部40は、収納棚30に搬入する物品2を支持する搬入部として用いられる。また、支持部40は、収納棚30から搬出された物品2を支持する搬出部として用いられる。本実施形態では、支持部40が移載対象箇所3に含まれる。
【0023】
図2に示すように、制御システム1は、スタッカクレーン20の動作を制御する動作制御部15を備えている。詳細は後述するが、制御システム1は、動作制御部15以外にも、揺れ検出部10、昇降高さ取得部14、及び記憶部19を備えている。制御システム1の各機能(具体的には、揺れ検出部10、昇降高さ取得部14、及び動作制御部15の各機能)は、演算処理装置等のハードウェアと、当該ハードウェア上で実行されるプログラムとの協働により実現される。記憶部19は、例えば、フラッシュメモリやハードディスク等の記憶媒体を備える。
【0024】
制御システム1の複数の構成要素は、互いに情報の受け渡しを行うことが可能に構成されている。なお、
図2に示す制御システム1の各構成要素は、少なくとも論理的に区別されるものであり、物理的には必ずしも区別される必要はない。また、制御システム1の各構成要素は、スタッカクレーン20(例えば、スタッカクレーン20が備える機器コントローラ)に設けられても、スタッカクレーン20とは独立に設けられてもよい。制御システム1の一部の構成要素がスタッカクレーン20に設けられ、制御システム1の残りの構成要素がスタッカクレーン20とは独立に設けられてもよい。
【0025】
動作制御部15は、走行制御部16、昇降制御部17、及び移載制御部18を備えている。走行制御部16は、走行台車21の走行動作を制御し、昇降制御部17は、昇降装置25による昇降体24の昇降動作を制御し、移載制御部18は、移載装置26の移載動作を制御する。本実施形態では、移載制御部18が移載装置26の移載動作を制御するのに合わせて、昇降制御部17が昇降装置25による昇降体24の昇降動作を制御することで、保持部27と移載対象箇所3との間で物品2が移載される。
【0026】
動作制御部15は、上位の制御装置等からの指令に基づいて、物品2を収納部31に搬入する搬入動作や、物品2を収納部31から搬出する搬出動作を、スタッカクレーン20に行わせる。
【0027】
動作制御部15が物品2の搬入動作をスタッカクレーン20に行わせる場合には、移載装置26が支持部40に対応する位置(具体的には、支持部40と経路幅方向Wに対向する位置)に配置されるように、走行制御部16が走行台車21の走行動作を制御すると共に、昇降制御部17が昇降装置25による昇降体24の昇降動作を制御する。そして、支持部40から保持部27に物品2を移載するように、移載制御部18が移載装置26の移載動作を制御する。次に、移載装置26が物品2の搬入先の収納部31に対応する位置(具体的には、当該収納部31と経路幅方向Wに対向する位置)に配置されるように、走行制御部16が走行台車21の走行動作を制御すると共に、昇降制御部17が昇降装置25による昇降体24の昇降動作を制御する。そして、保持部27から当該収納部31に物品2を移載するように、移載制御部18が移載装置26の移載動作を制御する。
【0028】
また、動作制御部15が物品2の搬出動作をスタッカクレーン20に行わせる場合には、移載装置26が物品2の搬出元の収納部31に対応する位置に配置されるように、走行制御部16が走行台車21の走行動作を制御すると共に、昇降制御部17が昇降装置25による昇降体24の昇降動作を制御する。そして、当該収納部31から保持部27に物品2を移載するように、移載制御部18が移載装置26の移載動作を制御する。次に、移載装置26が支持部40に対応する位置に配置されるように、走行制御部16が走行台車21の走行動作を制御すると共に、昇降制御部17が昇降装置25による昇降体24の昇降動作を制御する。そして、保持部27から支持部40に物品2を移載するように、移載制御部18が移載装置26の移載動作を制御する。
【0029】
本実施形態では、走行台車21は、経路長手方向Lの複数個所に予め設定された基準停止位置S(
図6参照)に停止するように制御される。基準停止位置Sは、移載対象箇所3ごとに設定される。走行台車21を基準停止位置Sに停止させた状態で、昇降体24を移載対象箇所3(当該基準停止位置Sの設定対象の移載対象箇所3)に対応する位置に配置することができるように、基準停止位置Sが設定される。経路長手方向Lの同じ位置に配置される複数の移載対象箇所3には、共通の基準停止位置Sを設定してもよい。例えば、同じ列に属する複数の収納部31の間の経路長手方向Lの位置ずれが小さい場合に、同じ列に属する複数の収納部31に対して共通の基準停止位置Sを設定してもよい。
【0030】
ところで、
図4に模式的に示すように、走行台車21の減速時に発生する慣性力により、走行台車21が停止した後しばらくの期間、支柱22は、走行台車21との連結部(言い換えれば、支柱22の下端)を支点として揺れる。支柱22の揺れに合わせて、昇降体24及びそれに支持された移載装置26が経路長手方向Lに揺れる。なお、
図4では、支柱22の揺れが収まって支柱22が静止した静止状態のスタッカクレーン20を実線で示し、支柱22が静止状態に対して経路長手方向Lの一方側(図中右側)に撓んだ状態の支柱22を一点鎖線で示している。支柱22は、静止状態に対して経路長手方向Lの両側に撓みながら、静止状態の姿勢に収束する。
【0031】
スタッカクレーン20の動作効率の低下を抑制するためには、例えば、移載装置26の移載動作に不具合が生じない揺れ量の範囲で、できるだけ迅速に移載動作を開始できることが望ましい。本実施形態では、制御システム1を以下のように構成することで、スタッカクレーン20の設置コストの上昇を抑えつつ、スタッカクレーン20の実際の揺れ量に基づいて適切な時期に移載動作を開始すること(例えば、移載装置26の移載動作に不具合が生じない揺れ量の範囲で、できるだけ迅速に移載動作を開始すること)が可能となっている。
【0032】
図2に示すように、制御システム1は、揺れ検出部10と、昇降高さ取得部14と、移載装置26を制御する上述した移載制御部18と、を備えている。本実施形態では、制御システム1は、記憶部19を更に備えている。本実施形態では、揺れ検出部10は、位置検出センサ11と、停止位置取得部12と、を備えている。本実施形態では、停止位置取得部12は、停止位置検出センサ13を備えている。
【0033】
揺れ検出部10は、検出高さH1での支柱22の揺れ量Xである基準揺れ量X1(
図4、
図5参照)を検出する。ここで、検出高さH1は、
図3に示すように、昇降体24が昇降範囲Eの上限E1に位置する場合の移載装置26の最下部26aの高さ以上に設定される。
図4に示す例では、検出高さH1を、支柱22の上端(最上部)の高さとしている。揺れ量Xに、経路長手方向Lの揺れに加えて上下方向Vの揺れも含めてもよいが、本実施形態では、揺れ量Xを、経路長手方向Lの揺れとしている。
【0034】
図2及び
図3に示すように、本実施形態では、揺れ検出部10は、経路長手方向Lにおける検出高さH1での支柱22の位置を動的に検出する位置検出センサ11を備えている。
図3に示すように、本実施形態では、位置検出センサ11は、光学式の距離検出センサである。位置検出センサ11は、第1反射板51に向けて検出光Dを投射し、第1反射板51からの反射光を受光することで、位置検出センサ11と第1反射板51との間の距離を検出する。位置検出センサ11と第1反射板51との間の距離に基づき、経路長手方向Lにおける検出高さH1での支柱22の位置が導出される。
【0035】
位置検出センサ11及び第1反射板51の一方(
図3に示す例では、第1反射板51)は、天井部6等の経路長手方向Lの位置が変化しない箇所に固定される。位置検出センサ11及び第1反射板51の他方(
図3に示す例では、位置検出センサ11)は、スタッカクレーン20における固定対象部位に固定される。固定対象部位は、支柱22における検出高さH1に配置される部分(
図4に示す例では、支柱22の上端)の揺れ量Xと同等(同一或いは同程度)の揺れ量で揺れる部位である。
図4に示す例では、位置検出センサ11は、固定対象部位としての連結部23に固定されている。なお、位置検出センサ11として、光学式の距離検出センサ以外のセンサ(例えば、ロータリエンコーダ)を用いてもよい。
【0036】
支柱22の揺れ量Xの時間Tに対する変化を表す
図5に示されているように、走行台車21の停止後、支柱22は、静止状態の位置である基準位置Aを中心として振動しながら減衰する。本実施形態では、揺れ検出部10は、基準位置Aと位置検出センサ11による検出結果との差分を基準揺れ量X1として検出する。基準位置Aの導出方法については後述する。
【0037】
昇降高さ取得部14は、昇降高さH2を示す昇降高さ情報を取得する。ここで、昇降高さH2は、
図3及び
図4に示すように、昇降体24の各時点での高さ(上下方向Vの位置)である。昇降高さH2は、昇降体24の昇降範囲Eの上限E1と下限E2との間で変化する。昇降高さ取得部14は、昇降体24の高さを検出する高さ検出センサ28を備えており、高さ検出センサ28の検出結果を昇降高さ情報として取得する。高さ検出センサ28は、昇降制御部17による昇降体24の昇降動作の制御に用いられるセンサと共通のものであっても別のものであってもよい。
【0038】
図3に示すように、本実施形態では、高さ検出センサ28は、光学式の距離検出センサである。
図3に示す例では、高さ検出センサ28は、スタッカクレーン20における上下方向Vの位置が変化しない箇所に固定されている。そして、高さ検出センサ28は、昇降体24(具体的には、昇降体24に設けられた反射板)に向けて検出光Dを投射し、昇降体24からの反射光を受光することで、高さ検出センサ28と昇降体24との間の距離を検出する。高さ検出センサ28と昇降体24との間の距離に基づき、昇降体24の高さが導出される。このような構成と異なり、高さ検出センサ28が昇降体24に設けられる構成とすることもできる。また、高さ検出センサ28として、光学式の距離検出センサ以外のセンサ(例えば、ロータリエンコーダ)を用いてもよい。
【0039】
移載制御部18は、揺れ検出部10により検出された基準揺れ量X1を、昇降高さ情報に示された昇降高さH2での支柱22の揺れ量Xである昇降高さ揺れ量X2(
図4、
図5参照)に換算する。昇降高さ揺れ量X2は、昇降体24の揺れ量に相当する。すなわち、移載制御部18は、検出高さH1での支柱22の揺れ量Xを、昇降体24の揺れ量に換算する。基準揺れ量X1から昇降高さ揺れ量X2への換算は、例えば、変位を3次関数で近似する振動モデルに基づき行うことができる。この場合、移載制御部18は、下記の式(1)に基づき基準揺れ量X1から昇降高さ揺れ量X2を求めることができる。
X2=X1×(H2/H1)
3・・・(1)
基準揺れ量X1から昇降高さ揺れ量X2への換算を、変位を1次関数で近似する振動モデルに基づき行うこともできる。この場合、移載制御部18は、下記の式(2)に基づき基準揺れ量X1から昇降高さ揺れ量X2を求めることができる。
X2=X1×(H2/H1)・・・(2)
なお、これらの式における検出高さH1や昇降高さH2(昇降体24の高さ)は、共通の基準高さからの高さであり、この基準高さは、支柱22における走行台車21との連結部(言い換えれば、支柱22の下端)とすることができる。
【0040】
移載制御部18は、検出高さH1での支柱22の揺れの振幅(基準位置Aを基準とする振幅)を基準揺れ量X1として上記の換算を行う。そのため、移載制御部18が導出する昇降高さ揺れ量X2は、昇降高さH2での支柱22の揺れの振幅(波高値)を表す。このように、上記の式(1)や式(2)では、基準揺れ量X1は、検出高さH1での支柱22の揺れの振幅であり、昇降高さ揺れ量X2は、昇降高さH2での支柱22の揺れの振幅である。
【0041】
揺れ検出部10は、基準揺れ量X1を繰り返し取得し、基準揺れ量X1の時系列データから、検出高さH1での支柱22の揺れの振幅を検出する。揺れ検出部10は、基準揺れ量X1の時系列データに対して微分等の処理を行うことで、支柱22の揺れのピーク(振動波形のピーク)を検出し、当該ピークでの基準揺れ量X1の値(絶対値)を、検出高さH1での支柱22の揺れの振幅として検出する。支柱22の揺れのピークは、支柱22の揺れの固有周期の半分の周期で現れ、
図5に示す例では、時刻T1、時刻T2、時刻T3、時刻T4、及び時刻T5において、支柱22の揺れのピークが現れている。移載制御部18は、揺れ検出部10がこのように検出した検出高さH1での支柱22の揺れの振幅を、昇降高さH2での支柱22の揺れの振幅に換算する。
【0042】
上記のように、移載制御部18は、基準揺れ量X1を昇降高さ揺れ量X2に換算して、昇降高さ揺れ量X2を導出する。そして、移載制御部18は、昇降高さ揺れ量X2が定常的に規定の判定閾値ΔX以下となったことを条件として、移載装置26の移載動作を開始する。「定常的に」とは、例えば、規定の判定時間以上であることを意味する。上述したように、本実施形態では、移載制御部18は、上記の換算により、昇降高さH2での支柱22の揺れの振幅を昇降高さ揺れ量X2として導出する。そして、移載制御部18は、導出した昇降高さ揺れ量X2が判定閾値ΔX以下である場合に、昇降高さ揺れ量X2が定常的に規定の判定閾値ΔX以下となったと判定して、移載装置26の移載動作を開始する。この場合、昇降高さ揺れ量X2が、少なくとも上記固有周期の4分の1の時間、判定閾値ΔX以下の状態となっている状態で、昇降高さ揺れ量X2が定常的に規定の判定閾値ΔX以下となったと判定される。
図5に示す例では、時刻T2において、昇降高さ揺れ量X2が定常的に規定の判定閾値ΔX以下となったと判定される。
【0043】
このように、移載制御部18は、昇降高さ揺れ量X2を、昇降体24に支持された移載装置26の揺れ量とみなして、移載装置26による移載動作の開始判定を行う。上記の判定閾値ΔXは、移載装置26の移載動作に不具合が生じない範囲で、できるだけ大きな値に設定すると好適である。また、判定閾値ΔXは、昇降体24と移載装置26との連結関係や位置関係などを考慮して(例えば、昇降体24と移載装置26との連結部で揺れが増幅されること等を考慮して)設定すると好適である。
【0044】
上述したように、本実施形態では、揺れ検出部10は、基準位置Aと位置検出センサ11による検出結果との差分を基準揺れ量X1として検出する。以下、本実施形態の制御システム1における基準位置Aの導出方法について説明する。
【0045】
上述したように、本実施形態では、走行台車21は、経路長手方向Lの複数個所に予め設定された基準停止位置S(
図6参照)に停止するように制御される。そして、走行台車21が基準停止位置Sに停止し、且つ、支柱22が静止した状態(静止状態)における検出高さH1での支柱22の位置を支柱基準位置A0として、本実施形態では、制御システム1は、複数の基準停止位置Sのそれぞれに走行台車21を停止させて計測した支柱基準位置A0の情報を記憶した記憶部19(
図2参照)を備えている。支柱基準位置A0の情報は、基準停止位置S(具体的には、当該支柱基準位置A0が計測された基準停止位置S)に関連付けて記憶部19に記憶されている。
図6には、第1停止位置S1、第2停止位置S2、及び第3停止位置S3の、3つの基準停止位置Sのそれぞれについて、静止状態での支柱22及び支柱基準位置A0を示している。
【0046】
基準停止位置Sと支柱基準位置A0との経路長手方向Lの位置関係は、設計上は、
図6に示すように複数の基準停止位置Sの間で共通となる。しかしながら、実際には、走行レール7のレベル差(高低差)等によって、この位置関係は基準停止位置Sごとに異なる関係となり得る。この点に関して、本実施形態では、上記のように、複数の基準停止位置Sのそれぞれに走行台車21を停止させて支柱基準位置A0を計測するため、上記の位置関係が基準停止位置Sごとに異なる場合であっても、複数の基準停止位置Sのそれぞれについての支柱基準位置A0を適切に設定することができる。
【0047】
図2に示すように、揺れ検出部10は、走行台車21が複数の基準停止位置Sのいずれに停止したかを示す停止位置情報を取得する停止位置取得部12を備えている。停止位置取得部12は、例えば、動作制御部15(具体的には、走行制御部16)から停止位置情報を取得する。基準停止位置Sが、同じ列に属する複数の収納部31に対して共通の位置に設定される場合、停止位置情報は、例えば、走行台車21が収納棚30のどの列に停止したかを示す情報とされる。揺れ検出部10は、停止位置情報に示された基準停止位置Sについての支柱基準位置A0を記憶部19から取得し、当該支柱基準位置A0と位置検出センサ11による検出結果との差分を基準揺れ量X1として検出する。すなわち、この場合、支柱基準位置A0が、上述した基準位置A(
図4、
図5参照)となる。
【0048】
ところで、走行台車21が基準停止位置Sに停止するように制御される場合に、走行台車21の実際の停止位置である実停止位置Rが、基準停止位置Sからずれる場合がある。
図7には、第2停止位置S2に停止するように制御された走行台車21が、第2停止位置S2から停止位置誤差ΔLだけずれた位置に停止している状況を示している。なお、
図7では、理解しやすくするために停止位置誤差ΔLを誇張して示している。この停止位置誤差ΔLを考慮して、以下に述べるように、基準揺れ量X1を検出する基準となる基準停止位置Sを補正することもできる。
【0049】
基準停止位置Sを補正する場合、
図2に示すように、停止位置取得部12は、実停止位置Rを検出する停止位置検出センサ13を備える。停止位置検出センサ13は、走行制御部16による走行台車21の走行動作の制御に用いられるセンサと共通のものであっても別のものであってもよい。
【0050】
図3に示すように、本実施形態では、停止位置検出センサ13は、光学式の距離検出センサである。停止位置検出センサ13は、第2反射板52に向けて検出光Dを投射し、第2反射板52からの反射光を受光することで、停止位置検出センサ13と第2反射板52との間の距離を検出する。走行台車21が停止している状態での停止位置検出センサ13と第2反射板52との間の距離に基づき、実停止位置Rが導出される。
【0051】
停止位置検出センサ13及び第2反射板52の一方(
図3に示す例では、第2反射板52)は、床部5等の経路長手方向Lの位置が変化しない箇所に固定される。停止位置検出センサ13及び第2反射板52の他方(
図3に示す例では、停止位置検出センサ13)は、走行台車21に固定される。なお、停止位置検出センサ13として、光学式の距離検出センサ以外のセンサ(例えば、ロータリエンコーダ)を用いてもよい。
【0052】
揺れ検出部10は、停止位置検出センサ13による実停止位置Rの検出結果に基づき、補正後支柱基準位置A1を求める。具体的には、揺れ検出部10は、実停止位置Rと当該実停止位置Rに対応する基準停止位置Sとの差分に応じて支柱基準位置A0を補正した補正後支柱基準位置A1を求める。
図7に示す例では、実停止位置Rと当該実停止位置Rに対応する基準停止位置S(ここでは、第2停止位置S2)との差分は停止位置誤差ΔLであり、実停止位置Rの基準停止位置Sに対するずれの方向と同じ方向に、支柱基準位置A0を停止位置誤差ΔLだけずらした位置が、補正後支柱基準位置A1となっている。そして、揺れ検出部10は、補正後支柱基準位置A1と位置検出センサ11による検出結果との差分を基準揺れ量X1として検出する。すなわち、この場合、補正後支柱基準位置A1が、上述した基準位置A(
図4、
図5参照)となる。
【0053】
次に、本実施形態に係る制御システム1において実行される、移載装置26による移載動作の開始判定処理の手順について、
図8を参照して説明する。本明細書で開示する制御システム1の技術的特徴は、スタッカクレーン20の制御方法にも適用可能であり、スタッカクレーン20の制御方法も本明細書に開示されている。この制御方法には、
図8や
図9に示す各処理(各ステップ)を行う工程が含まれる。
【0054】
図8に示すように、移載装置26を移載対象箇所3に対応する位置に配置するための、走行台車21の走行動作及び昇降装置25による昇降体24の昇降動作が完了し、これらの走行動作及び昇降動作が停止すると(ステップ#01:Yes)、揺れ検出部10(具体的には、位置検出センサ11)が、経路長手方向Lにおける検出高さH1での支柱22の位置を検出する(ステップ#02)。ステップ#02の支柱22の位置の検出は、支柱22の揺れのピークが検出されるまでの間(ステップ#03:No)、繰り返し行われる。そして、支柱22の揺れのピークが検出されると(ステップ#03:Yes)、揺れ検出部10は、基準揺れ量X1(具体的には、検出高さH1での支柱22の揺れの振幅)を演算する(ステップ#04)。本実施形態では、揺れ検出部10は、基準位置A(支柱基準位置A0又は補正後支柱基準位置A1)と位置検出センサ11による検出結果との差分を基準揺れ量X1として導出する。
【0055】
次に、移載制御部18が、昇降高さ揺れ量X2(具体的には、昇降高さH2での支柱22の揺れの振幅)を演算する(ステップ#05)。移載制御部18は、ステップ#04にて演算された基準揺れ量X1を昇降高さ揺れ量X2に換算して、昇降高さ揺れ量X2を導出する。ステップ#02~#05の処理は、ステップ#05にて演算される昇降高さ揺れ量X2が判定閾値ΔX以下となるまでの間(ステップ#06:No)、繰り返し行われる。そして、ステップ#05にて演算された昇降高さ揺れ量X2が判定閾値ΔX以下となると(ステップ#06:Yes)、移載制御部18は、移載装置26の移載動作を開始する(ステップ#07)。
【0056】
〔第2の実施形態〕
スタッカクレーン制御システムの第2の実施形態について、図面(
図9)を参照して説明する。本実施形態では、揺れ検出部10による基準揺れ量X1の検出方法が、第1の実施形態とは異なっている。以下では、本実施形態のスタッカクレーン制御システムについて、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。特に明記しない点については、第1の実施形態と同様であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
第1の実施形態では、揺れ検出部10は、基準位置Aと位置検出センサ11による検出結果との差分を基準揺れ量X1として検出する。これに対して、本実施形態では、揺れ検出部10は、位置検出センサ11による検出結果を基準揺れ量X1として検出し、基準位置Aを用いずに、検出高さH1での支柱22の揺れの振幅を検出する。そのため、本実施形態では、揺れ検出部10が停止位置取得部12を備える必要はなく、支柱基準位置A0の情報を記憶部19に記憶させる必要もない。
【0058】
本実施形態では、揺れ検出部10は、位置検出センサ11による検出結果に示される検出高さH1での支柱22の位置の動的変化の振幅(すなわち、支柱22の揺れの振幅)を取得し、当該振幅を基準揺れ量X1として検出する。具体的には、揺れ検出部10は、位置検出センサ11による検出結果を繰り返し取得する。揺れ検出部10は、位置検出センサ11による検出結果の時系列データに対して微分等の処理を行うことで、支柱22の揺れのピークを検出し、当該ピークでの位置検出センサ11による検出結果を波高値として取得する。そして、揺れ検出部10は、支柱22の揺れのピークを検出した場合に、今回取得した波高値と前回取得した波高値との差(すなわち、ピークピーク値)の半分の値を、検出高さH1での支柱22の位置の動的変化の振幅として(すなわち、基準揺れ量X1として)検出する。
図5に示す例では、例えば時刻T2において、時刻T2での位置検出センサ11による検出結果と時刻T1での位置検出センサ11による検出結果との差の半分の値が、基準揺れ量X1として検出される。
【0059】
次に、本実施形態に係る制御システム1において実行される、移載装置26による移載動作の開始判定処理の手順について、
図9を参照して説明する。
【0060】
図9に示すように、移載装置26を移載対象箇所3に対応する位置に配置するための、走行台車21の走行動作及び昇降装置25による昇降体24の昇降動作が完了し、これらの走行動作及び昇降動作が停止すると(ステップ#10:Yes)、揺れ検出部10(具体的には、位置検出センサ11)が、経路長手方向Lにおける検出高さH1での支柱22の位置を検出する(ステップ#11)。ステップ#11の支柱22の位置の検出は、支柱22の揺れのピークが検出されるまでの間(ステップ#12:No)、繰り返し行われる。そして、支柱22の揺れのピークが検出されると(ステップ#12:Yes)、揺れ検出部10は、当該ピークでの位置検出センサ11による検出結果を波高値として取得し、当該波高値を前回値として記憶する(ステップ#13)。
【0061】
次に、揺れ検出部10(具体的には、位置検出センサ11)が、経路長手方向Lにおける検出高さH1での支柱22の位置を検出する(ステップ#14)。ステップ#14の支柱22の位置の検出は、支柱22の揺れのピークが検出されるまでの間(ステップ#15:No)、繰り返し行われる。そして、支柱22の揺れのピークが検出されると(ステップ#15:Yes)、揺れ検出部10は、基準揺れ量X1(具体的には、検出高さH1での支柱22の位置の動的変化の振幅)を演算する(ステップ#16)。本実施形態では、揺れ検出部10は、今回検出されたピークでの位置検出センサ11による検出結果を波高値として取得し、今回取得した波高値と前回取得した波高値(前回値として記憶されている波高値)との差の半分の値を、基準揺れ量X1として導出する。
【0062】
次に、移載制御部18が、昇降高さ揺れ量X2(具体的には、昇降高さH2での支柱22の揺れの振幅)を演算する(ステップ#17)。移載制御部18は、ステップ#16にて演算された基準揺れ量X1を昇降高さ揺れ量X2に換算して、昇降高さ揺れ量X2を導出する。ステップ#17にて演算された昇降高さ揺れ量X2が判定閾値ΔX以下ではない場合には(ステップ#18:No)、揺れ検出部10が今回取得した波高値で前回値を更新した後(ステップ#19)、処理はステップ#14に戻される。ステップ#14~#17,#19の処理は、ステップ#17にて演算される昇降高さ揺れ量X2が判定閾値ΔX以下となるまでの間(ステップ#18:No)、繰り返し行われる。そして、ステップ#17にて演算された昇降高さ揺れ量X2が判定閾値ΔX以下となると(ステップ#18:Yes)、移載制御部18は、移載装置26の移載動作を開始する(ステップ#20)。
【0063】
〔その他の実施形態〕
次に、スタッカクレーン制御システムのその他の実施形態について説明する。
【0064】
(1)上記第1の実施形態では、複数の基準停止位置Sのそれぞれに走行台車21を停止させて計測した支柱基準位置A0の情報が、記憶部19に記憶される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、基準停止位置Sと支柱基準位置A0との経路長手方向Lの位置関係を一定とみなしても移載装置26の移載動作に不具合が生じない場合には、1つの基準停止位置Sに走行台車21を停止させて計測した支柱基準位置A0の情報に基づき、複数の基準停止位置Sについての支柱基準位置A0を設定してもよい。
【0065】
(2)上記第1の実施形態では、支柱基準位置A0又は補正後支柱基準位置A1を基準位置A(静止状態での支柱22の位置)として、揺れ検出部10が、基準位置Aと位置検出センサ11による検出結果との差分を基準揺れ量X1として検出する構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、実停止位置Rと基準位置Aとの位置関係を一定とみなしても移載装置26の移載動作に不具合が生じない場合には、揺れ検出部10が、実停止位置Rに応じて設定される基準位置Aと、位置検出センサ11による検出結果との差分を、基準揺れ量X1として検出する構成とすることもできる。
【0066】
(3)上記の各実施形態では、移載装置26が保持部27を経路幅方向Wに出退移動させるように構成され、保持部27の出退動作によって(具体的には、更に昇降体24の昇降動作によって)、保持部27と移載対象箇所3との間で物品2が移載される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、移載装置26が、物品2に対して経路長手方向Lの両側に配置される一対の出退部材(例えば、一対のクランプ部、又は、フックを備える一対のアーム)を、経路幅方向Wに出退移動させるように構成され、移載装置26の移載動作(具体的には、一対の出退部材の出退動作)によって、保持部27と移載対象箇所3との間で物品2が移載される構成とすることもできる。この場合、物品2を経路幅方向Wに搬送するコンベヤ(例えば、ベルトコンベヤ)を、保持部27又は上記の出退部材が備え、一対の出退部材の出退動作に加えてコンベヤの搬送動作によって、保持部27と移載対象箇所3との間で物品2が移載される構成としてもよい。
【0067】
(4)上記の各実施形態では、2つの支柱22が経路長手方向Lに並ぶ状態で走行台車21に支持される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、1つの支柱22のみが走行台車21に支持され、昇降体24と当該1つの支柱22とが経路長手方向Lに並んで配置される構成とすることもできる。
【0068】
(5)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0069】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明したスタッカクレーン制御システムの概要について説明する。
【0070】
走行経路に沿って走行する走行台車と、上下方向に沿う姿勢で前記走行台車に支持された支柱と、前記支柱に沿って規定の昇降範囲で昇降する昇降体と、前記昇降体を昇降させる昇降装置と、前記昇降体に支持された移載装置と、を備え、前記移載装置は、物品を保持する保持部を備え、前記保持部と移載対象箇所との間で前記物品の移載動作を行うように構成されたスタッカクレーンを制御対象とするスタッカクレーン制御システムであって、前記昇降体が前記昇降範囲の上限に位置する場合の前記移載装置の最下部の高さ以上に設定された検出高さでの、前記支柱の揺れ量である基準揺れ量を検出する揺れ検出部と、前記昇降体の各時点での高さである昇降高さを示す昇降高さ情報を取得する昇降高さ取得部と、前記移載装置を制御する移載制御部と、を備え、前記移載制御部は、前記揺れ検出部により検出された前記基準揺れ量を、前記昇降高さ情報に示された前記昇降高さでの前記支柱の揺れ量である昇降高さ揺れ量に換算し、前記昇降高さ揺れ量が定常的に規定の判定閾値以下となったことを条件として、前記移載装置の移載動作を開始する。
【0071】
本構成によれば、揺れ検出部により検出される支柱の実際の揺れ量と、昇降高さ取得部により取得される昇降体の各時点での実際の昇降高さとに基づいて、当該昇降高さでの支柱の揺れ量である昇降高さ揺れ量を求めることができる。そして、当該昇降高さ揺れ量が定常的に規定の判定閾値以下となったことを条件として、移載装置の移載動作を開始する。このように、支柱の実際の揺れ量を検出した結果に基づいて、移載動作を開始するため、様々な運転条件によって変化する支柱の実際の揺れ量に応じて、適切な時期に移載装置の移載動作を開始することができる。
【0072】
ここで、前記基準揺れ量は前記検出高さでの前記支柱の揺れの振幅であり、前記昇降高さ揺れ量は前記昇降高さでの前記支柱の揺れの振幅であり、前記移載制御部は、前記検出高さをH1、前記昇降体の高さをH2、前記基準揺れ量をX1として、
X2=X1×(H2/H1)3・・・(1)
で表される式(1)により定まるX2を前記昇降高さ揺れ量として求めると好適である。
【0073】
本構成によれば、走行台車に支持された支柱の揺れによる実際の変形を考慮して、揺れ検出部により検出される支柱の実際の揺れ量を、昇降高さでの支柱の揺れ量である昇降高さ揺れ量に換算することができる。従って、昇降高さ揺れ量を高精度に求めることができる。
【0074】
また、前記走行台車は、前記走行経路に沿う方向の複数個所に予め設定された基準停止位置に停止するように制御され、前記走行台車が前記基準停止位置に停止し、且つ、前記支柱が静止した状態における前記検出高さでの前記支柱の位置を支柱基準位置として、複数の前記基準停止位置のそれぞれに前記走行台車を停止させて計測した前記支柱基準位置の情報を記憶した記憶部を更に備え、前記揺れ検出部は、前記走行経路に沿う方向における前記検出高さでの前記支柱の位置を動的に検出する位置検出センサと、前記走行台車が複数の前記基準停止位置のいずれに停止したかを示す停止位置情報を取得する停止位置取得部と、を備え、前記停止位置情報に示された前記基準停止位置についての前記支柱基準位置を前記記憶部から取得し、当該支柱基準位置と前記位置検出センサによる検出結果との差分を前記基準揺れ量として検出すると好適である。
【0075】
本構成によれば、走行台車が走行経路に沿う方向の複数個所に予め設定された基準停止位置に停止するように制御される構成において、予め計測して記憶部に記憶した支柱基準位置の情報と、位置検出センサによる検出結果とに基づいて、検出高さでの支柱の実際の揺れ量である基準揺れ量を適切に検出することができる。
【0076】
上記のように前記揺れ検出部が前記支柱基準位置と前記位置検出センサによる検出結果との差分を前記基準揺れ量として検出する構成において、前記停止位置取得部は、前記走行台車の実際の停止位置である実停止位置を検出する停止位置検出センサを備え、前記揺れ検出部は、前記実停止位置と当該実停止位置に対応する前記基準停止位置との差分に応じて前記支柱基準位置を補正した補正後支柱基準位置を求め、当該補正後支柱基準位置と前記位置検出センサによる検出結果との差分を前記基準揺れ量として検出すると好適である。
【0077】
本構成によれば、走行台車の実際の停止位置である実停止位置と基準停止位置との誤差を考慮して、基準揺れ量を検出する基準となる基準停止位置を補正することができる。従って、本構成によれば、基準揺れ量の検出精度を高めることができる。
【0078】
上記の各構成のスタッカクレーン制御システムにおいて、前記揺れ検出部は、前記走行経路に沿う方向における前記検出高さでの前記支柱の位置を動的に検出する位置検出センサを備え、前記位置検出センサによる検出結果に示される前記検出高さでの前記支柱の位置の動的変化の振幅を取得し、当該振幅を前記基準揺れ量として検出すると好適である。
【0079】
本構成によれば、位置検出センサによる検出結果に示される検出高さでの支柱の位置の動的変化の振幅に基づいて、検出高さでの支柱の実際の揺れ量である基準揺れ量を適切に検出することができる。従って、本構成によれば、支柱基準位置の情報を記憶部に記憶する等の必要がなく、比較的簡易な構成により、基準揺れ量を適切に検出することができる。また、本構成によれば、走行台車の停止位置が予め設定された位置に限られない場合であっても、基準揺れ量を適切に検出することができる。
【0080】
本開示に係るスタッカクレーン制御システムは、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0081】
1:制御システム(スタッカクレーン制御システム)
2:物品
3:移載対象箇所
4:走行経路
10:揺れ検出部
11:位置検出センサ
12:停止位置取得部
13:停止位置検出センサ
14:昇降高さ取得部
18:移載制御部
19:記憶部
20:スタッカクレーン
21:走行台車
22:支柱
24:昇降体
25:昇降装置
26:移載装置
26a:最下部
27:保持部
A0:支柱基準位置
A1:補正後支柱基準位置
E:昇降範囲
E1:上限
H1:検出高さ
H2:昇降高さ
L:経路長手方向(走行経路に沿う方向)
R:実停止位置
S:基準停止位置
V:上下方向
X:揺れ量
X1:基準揺れ量
X2:昇降高さ揺れ量
ΔX:判定閾値