(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】密閉型電磁接触器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/04 20060101AFI20240110BHJP
H01H 50/54 20060101ALI20240110BHJP
H01H 1/66 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01H50/04 C
H01H50/54 C
H01H1/66
(21)【出願番号】P 2021008375
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】堤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】小西 弘純
(72)【発明者】
【氏名】足立 日出央
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/123793(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/161207(WO,A1)
【文献】特開2013-8531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/04
H01H 50/54
H01H 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に主固定接点を有し他端に主回路に接続される端子部を有する一対の主固定接触子、及び前記主固定接点に対して接触及び離間する一対の主可動接点を有する主可動接触子を有し、前記主回路の電路を開閉する主接点部と、
前記主可動接触子を支持する接点支えと、
前記接点支えを介して前記主接点部の開閉を切り替える電磁石部と、
前記主接点部と前記電磁石部とが内部に配置され、前記内部に遮断用ガスが封入された樹脂製の密閉容器と、を備え
、
前記密閉容器内にばね部材を配置し、
前記ばね部材により前記電磁石部を前記密閉容器の前記主接点部側に押圧することを特徴とする密閉型電磁接触器。
【請求項2】
一端側が前記密閉容器の内側に配置され、他端側が前記密閉容器の外側で制御回路に接続されるコイル接触子と、
前記電磁石部のスプールに固定されており、前記電磁石部のコイルが接続される中継接触子と、を備え、
前記ばね部材は、前記コイル接触子と前記中継接触子との間に配置されていることを特徴とする請求項
1記載の密閉型電磁接触器。
【請求項3】
前記コイル接触子は、化学エッチングによる表面処理が施されており、インサート成形によって前記密閉容器に一体化されていることを特徴とする請求項
2に記載の密閉型電磁接触器。
【請求項4】
前記主接点部を複数備えることを特徴とする請求項1~
3の何れか一項に記載の密閉型電磁接触器。
【請求項5】
前記密閉容器は、前記主接点部同士の間を仕切る樹脂製の隔壁部材を内部に備えることを特徴とする請求項
4に記載の密閉型電磁接触器。
【請求項6】
前記一対の主固定接触子は、平板状であり、前記主接点部が開閉する方向と直交する面に沿って延在していることを特徴とする請求項1~
5の何れか一項に記載の密閉型電磁接触器。
【請求項7】
一端に主固定接点を有し他端に主回路に接続される端子部を有する一対の主固定接触子、及び前記主固定接点に対して接触及び離間する一対の主可動接点を有する主可動接触子を有し、前記主回路の電路を開閉する主接点部と、
前記主可動接触子を支持する接点支えと、
前記接点支えを介して前記主接点部の開閉を切り替える電磁石部と、
前記主接点部と前記電磁石部とが内部に配置され、前記内部に遮断用ガスが封入された樹脂製の密閉容器と、を備え
、
前記主固定接触子は、化学エッチングによる表面処理を施されており、インサート成形によって前記密閉容器に一体化されていることを特徴とする密閉型電磁接触器。
【請求項8】
一端に主固定接点を有し他端に主回路に接続される端子部を有する一対の主固定接触子、及び前記主固定接点に対して接触及び離間する一対の主可動接点を有する主可動接触子を有し、前記主回路の電路を開閉する主接点部と、
前記主可動接触子を支持する接点支えと、
前記接点支えを介して前記主接点部の開閉を切り替える電磁石部と、
前記主接点部と前記電磁石部とが内部に配置され、前記内部に遮断用ガスが封入された樹脂製の密閉容器と
、
前記密閉容器の内側で一端側同士が間隔をあけて並び、夫々の一端側に補助固定接点が形成されており、夫々の他端側が前記密閉容器の外側で補助回路に接続される一対の補助固定接触子と、
前記接点支えに支持されており、両端側に補助可動接点が形成され、前記補助可動接点の夫々を前記補助固定接点に対して接触及び離間させる補助可動接触子と、を備え、
一対の前記補助固定接触子は、化学エッチングによる表面処理が施されており、インサート成形によって前記密閉容器に一体化されていることを特徴とする密閉型電磁接触器。
【請求項9】
一対の前記補助固定接触子は、平板状であり、前記密閉容器の外側に位置する他端側には、前記補助回路と接続する端子ねじの雄ねじ部外径よりも大きな挿通穴が形成され、
前記密閉容器には、前記密閉容器の外側に位置する前記補助固定接触子の裏面側に端子受部が形成され、
前記端子受部には、前記端子ねじと嵌り合う有底のねじ穴が形成された金属製のナット部材が設けられ、
前記ナット部材は、化学エッチングによる表面処理を施されており、インサート成形によって前記端子受部に一体化されていることを特徴とする請求項
8に記載の密閉型電磁接触器。
【請求項10】
前記密閉容器は、粘土結晶の積層膜によってガスバリアコーティングされていることを特徴とする請求項1~
9の何れか一項に記載の密閉型電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型電磁接触器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
引用文献1に示される密閉型電磁接触器では、セラミックで蓋をした金属製の密閉容器内に接点部を収容し、そこに水素等の加圧された遮断用ガスを封入することで、消弧スペースを大型化することなく、接点の遮断性能を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セラミックで蓋をした金属製の密閉容器を使用した構成では、小型軽量化や設計自由度に限界があった。
本発明の目的は、密閉型電磁接触器において、小型軽量化を図ると共に、設計自由度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る密閉型電磁接触器は、一端に主固定接点を有し他端に主回路に接続される端子部を有する一対の主固定接触子、及び主固定接点に対して接触及び離間する一対の主可動接点を有する主可動接触子を有し、主回路の電路を開閉する主接点部と、主可動接触子を支持する接点支えと、主接点部の開閉を切り替える電磁石部と、主接点部と電磁石部とが内部に配置され、内部に遮断用ガスが封入された樹脂製の密閉容器と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、樹脂製の密閉容器を用いることで、小型軽量化を図ると共に、設計自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図7】コイル接触子、支持ばね、及び中継接触子を示す図である。
【
図10】密閉型電磁接触器の外観図である(2極)。
【
図13】組み付け後の隔壁部材、接点支え、及び電磁石部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《第一実施形態》
《構成》
以下の説明では、互いに直交する三方向を、便宜的に、縦方向、幅方向、及び奥行方向とする。
図1は、密閉型電磁接触器の外観図である(1極)。
密閉型電磁接触器11は、主回路の電路を開閉する1極型であり、主回路の開閉に連動して補助回路の電路を開閉する補助接点が付いている。密閉型電磁接触器11は、ケース12と、主端子カバー13と、補助端子カバー14と、密閉容器15と、を備える。
ケース12は、電気絶縁性を有する樹脂であり、奥行方向における奥側の四隅に設けられた取付穴を介して取り付けられる。
【0010】
主端子カバー13は、電気絶縁性を有する樹脂であり、ケース12における奥行方向の手前側に取り付けられ、主端子の露出を防ぐことで、作業者による保守・点検時の安全性を高めている。主端子カバー13は、一次側と二次側とが一体であり、一次側も二次側も主端子に締結された通しボルトの端部に対して、樹脂ナット16を嵌め合わせることで固定される。樹脂ナット16は、電気絶縁性を有する樹脂であり、奥行方向の手前側が袋状に閉塞されており、頭部にはプラス溝が形成されている。
補助端子カバー14は、電気絶縁性を有する樹脂であり、補助端子の露出を防ぐことによって作業者による保守・点検時の安全性を高めている。補助端子カバー14は、一次側と二次側とが別体であり、密閉容器15に対して嵌め込まれて固定される。
密閉容器15は、電気絶縁性を有する樹脂であり、ケース12に収容され固定されている。
【0011】
図2は、密閉容器の外観図である(1極)。
図3は、密閉容器の分解図である(1極)。
図4は、密閉容器の断面図である(1極)。
ここでは、幅方向の中心を通り、縦方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
密閉容器15には、主接点部21と、補助接点部22と、電磁石部23と、が収容されており、さらに水素や窒素等の加圧された遮断用ガスが封入されている。密閉容器15は、容器部24と、蓋部25と、キャップ部26と、をエポキシ樹脂系の接着剤で固定したうえ、境界部を含む外周面の全てが粘土結晶の積層膜によってガスバリアコーティングされている。具体的には、精製したスメクタイトの層間イオンを置換し、PVA(ポリビニルアルコール)や水溶性ナイロン等の有機バインダーでつなぎ合わせることで、迷路効果を発現し、水素や窒素等のガス分子の透過を防いでいる。積層膜は厚み方向に積層されており、厚さは例えば2μmである。ガスバリアコーティングは、例えば塗液をミスト化して密閉容器15に塗布するスプレー方式とし、例えば150℃以上の、層間イオンが粘土結晶内に取り込まれる温度で焼成されることで完成される。このように、外周面の全てがガスバリアコーティングされる関係で、密閉容器15の外周形状は、できるだけ凹凸が少なく直線的な平面で構成した多角形とすることが好ましい。
【0012】
容器部24は、奥行方向の奥側、縦方向の両側、及び幅方向の両側が閉塞され、奥行方向の手前側が開放された角型の箱形状である。
蓋部25は、容器部24の開放端に嵌り合い、容器部24における奥行方向の手前側を閉塞する。蓋部25の中心には、奥行方向の手前側に突出した小筒部27が形成されることで略ハット状に形成されている。小筒部27は、奥行方向の奥側が容器部24の内側に連通し、奥行方向の手前側が開放された角型の筒形状である。
キャップ部26は、小筒部27の開放端に嵌り合い、小筒部27における奥行方向の手前側を閉塞する。
【0013】
主接点部21は、通しボルトを介して主回路に接続され、主回路の電路を開閉するものであり、密閉容器15は、一対の主固定接触子31と、主可動接触子32と、を備える。
一対の主固定接触子31は、導電性を有する金属であり、縦方向に延び、縦方向及び幅方向に沿った長尺状の平板であり、密閉容器15の内側で縦方向に沿って間隔をあけて直列に並んでいる。すなわち、一対の主固定接触子31は、主接点部21が開閉する方向と直交する面に沿って延在している。向かい合った側となる夫々の一端側には、奥行方向における奥側の面に主固定接点33がろう付けされている。背き合った側となる夫々の他端側には、密閉容器15の外側に主端子部が形成され、一方は主回路の一次側に接続され、他方は主回路の二次側に接続される。
【0014】
一対の主固定接触子31は、インサート成形によって蓋部25の側壁を突き抜けた状態で一体化されている。具体的には、主固定接触子31の表面に、化学エッチングによってミクロンサイズの微細な凹凸形状を形成しておき、インサート成形を行なう。これにより、溶かした樹脂が凹凸形状の内部に入り込み、樹脂が固化することで、金属と樹脂が界面レベルで接合され、ラビリンス効果による複雑な接合となり、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防いでいる。金属表面処理技術としては、例えばメック株式会社の「AMALPHA/アマルファ」(登録商標)がある。
【0015】
主可動接触子32は、導電性を有する金属であり、縦方向に延び、縦方向及び幅方向に沿った長尺状の平板であり、一対の主固定接触子31よりも奥行方向の奥側に配置されている。主可動接触子32の両端側には、奥行方向における手前側の面に主可動接点34がろう付けされている。主可動接触子32は、奥行方向の奥側に後退しているときに、主可動接点34の夫々を主固定接点33に対して離間させ、奥行方向の手前側に前進しているときに、主可動接点34の夫々を主固定接点33に対して接触させる。主接点部21は、主固定接点33、及び主可動接点34によって形成される。
【0016】
補助接点部22は、端子ねじを介して補助回路に接続され、補助回路の電路を開閉するものであり、密閉容器15は、一対の補助固定接触子41と、補助可動接触子42と、を備える。
一対の補助固定接触子41は、導電性を有する金属であり、縦方向に延び、縦方向及び幅方向に沿った長尺状の平板であり、密閉容器15の内側で縦方向に沿って間隔をあけて直列に並んでいる。向かい合った側となる夫々の一端側には、奥行方向における手前側の面に補助固定接点43がろう付けされている。背き合った側となる夫々の他端側には、密閉容器15の外側に補助端子部が形成され、一方は補助回路の一次側に接続され、他方は補助回路の二次側に接続される。一対の補助固定接触子41は、インサート成形によって小筒部27の側壁を突き抜けた状態で一体化されている。インサート成形の手法については、前述した主固定接触子31と同様である。
【0017】
補助可動接触子42は、導電性を有する金属であり、縦方向に延び、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成されており、一対の補助固定接触子41よりも奥行方向の手前側に配置されている。すなわち、奥行方向から見て、主可動接触子41及び補助可動接触子42は、互いの長尺方向が同一である。補助可動接触子42の両端側は、二股に分かれた双接点になっており、奥行方向における奥側の面に補助可動接点44がろう付けされている。補助可動接触子42は、奥行方向の奥側に後退しているときに、補助可動接点44の夫々を補助固定接点43に対して接触させ、奥行方向の手前側に前進しているときに、補助可動接点44の夫々を補助固定接点43に対して離間させる。補助接点部22は、補助固定接点43、及び補助可動接点44によって形成される。
【0018】
主可動接触子32及び補助可動接触子42は、接点支え51によって支持されている。接点支え51は、電気絶縁性を有する樹脂であり、縦方向から見て、略凸字状に形成されており、一対の主固定接触子31の間に配置されている。接点支え51は、主固定接触子31よりも奥行方向の奥側で、主接触ばね52を介して主可動接触子32を弾性支持している。主接触ばね52は、主可動接触子32を奥行方向の手前側に付勢することで主接点部21の接触圧力を一定に保つ。接点支え51は、補助固定接触子41よりも奥行方向の手前側で、補助接触ばね53を介して補助可動接触子42を弾性支持している。補助接触ばね53は、補助可動接触子42を奥行方向の奥側に付勢することで補助接点部22の接触圧力を一定に保つ。接点支え51は、隔壁部材54によって保持されている(
図3参照)。隔壁部材54は、電気絶縁性を有する樹脂であり、容器部24における奥行方向の手前側に収容されている。
【0019】
図5は、密閉容器の断面図である(1極)。
ここでは、縦方向の中心を通り、幅方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
電磁石部23は、容器部24における奥行方向の奥側に収容されており、主接点部21の開閉、及び補助接点部22の開閉を切り替える。電磁石部23は、スプール61と、プランジャ62と、上アーマチュア63と、下アーマチュア64と、ヨーク65と、復帰ばね66と、を備える。
スプール61は、電気絶縁性を有する樹脂であり、奥行方向に延びる円筒状の巻き軸71にコイル72が巻かれている。
【0020】
プランジャ62は、奥行方向に延びる円柱状の可動鉄心であり、巻き軸71に挿通されている。プランジャ62は、奥行方向の手前側が板ばねを介して接点支え51に連結されている。
上アーマチュア63は、縦方向及び幅方向に沿った平板状の継鉄であり、プランジャ62における奥行方向の手前側に固定されている。
下アーマチュア64は、縦方向及び幅方向に沿った平板状の継鉄であり、プランジャ62における奥行方向の奥側に固定されている。
【0021】
一対のヨーク65は、板状の継鉄であり、スプール61における幅方向の一方側と他方側に一つずつ固定されている。ヨーク65は、側片部73と、上片部74と、下片部75と、を備えており、縦方向から見て、幅方向の内側に開いた略コ字状に形成されている。
側片部73は、縦方向及び奥行方向に沿った板状に形成され、スプール61における幅方向の外側を覆っている。
上片部74は、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成され、側片部73における奥行方向の手前側から幅方向の内側に向かって突出している。
【0022】
下片部75は、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成され、側片部73における奥行方向の奥側から幅方向の内側に向かって突出している。
上片部74と下片部75との離隔距離は、上アーマチュア63と下アーマチュア64との離隔距離と同一である。上片部74は、上アーマチュア63よりも奥行方向の手前側にあり、下片部75は、下アーマチュア64よりも奥行方向の手前側にある。
復帰ばね66は、下アーマチュア64と下片部75との間に挟まれた状態で、プランジャ62に挿通されており、スプール61に対してプランジャ62を奥行方向の奥側に付勢している。
【0023】
図6は、コイル接触子の断面図である。
ここでは、コイル接触子81を通り、縦方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
一対のコイル接触子81は、導電性を有する金属であり、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成されており、幅方向に沿って間隔をあけて並列に並んでいる(
図7参照)。一方のコイル接触子81は、縦方向の内側が密閉容器15の内側に配置され、縦方向の外側が密閉容器15の外側で制御回路の正極側に接続される。他方のコイル接触子81は、縦方向の内側が密閉容器15の内側に配置され、縦方向の外側が密閉容器15の外側で制御回路の負極側に接続される。一対のコイル接触子81は、インサート成形によって容器部24の側壁を突き抜けた状態で一体化されている。インサート成形の手法については、前述した主固定接触子31と同様である。
【0024】
容器部24の内周面には、縦方向の両端側に、段差状のスプール受部82が一つずつ形成されている。各スプール受部82には、奥行方向における手前側の面に、奥行方向の奥側に向かって凹となる深型凹部83が二つずつ形成されている。一対の深型凹部83は、幅方向に沿って間隔をあけて並列に並んでおり、縦方向の一方側では、深型凹部83によってコイル接触子81における縦方向の内側が露出している。縦方向の一方側で露出したコイル接触子81の表面と、縦方向の他方側に形成された深型凹部83の底面とは、奥行方向の位置が同一である。
【0025】
スプール61には、奥行方向の手前側で、且つ縦方向の両側に、縦方向の外側に向かって突出したアーム片84が一つずつ形成されている(
図3参照)。アーム片84は、縦方向及び縦方向に沿った略板状に形成されており、片持ち梁となる。縦方向の一方側では、アーム片84に一対の中継接触子85がインサート成形されている(
図7参照)。一対の中継接触子85は、導電性を有する金属であり、縦方向及び幅方向に沿った板状に形成されている。中継接触子85は、密閉容器15を突き抜ける部品ではないため、インサート成形の手法については、前述した主固定接触子31のように特殊な金属表面処理技術は不要である。
【0026】
各アーム片84には、奥行方向の奥側の面に、奥行方向の手前側に向かって凹となる浅型凹部86が二つずつ形成されている。一対の浅型凹部86は、幅方向に沿って間隔をあけて並列に並んでおり、縦方向の一方側では、浅型凹部86によって中継接触子85における縦方向の外側が露出している。縦方向の一方側で露出した中継接触子85の表面と、縦方向の他方側に形成された浅型凹部86の底面とは、奥行方向の位置が同一である。中継接触子85には、縦方向における内側の端部から幅方向の外側に向かって突出した突出部87が形成されている(
図7参照)。突出部87は、アーム片84における幅方向の側面から突出し、奥行方向の奥側に傾斜している。一方の突出部87には、コイル72における巻線の一端がはんだ付けされ、他方の突出部87には、コイル72における巻線の他端がはんだ付けされる。
【0027】
深型凹部83及び浅型凹部86には、支持ばね88(ばね部材)が一つずつ収容されている。支持ばね88は、圧縮方向に負荷をかけていないときの自由高さが、深型凹部83の深さに浅型凹部86の深さを加えた寸法よりも大きい。密閉容器15に全ての部品を収容すると、支持ばね88に対して圧縮方向の負荷がかかるが、このときもアーム片84がスプール受部82から浮いた状態を維持するように設定されている(
図4参照)。したがって、スプール61は、一対のアーム片84が、片側に二つずつ設けられた支持ばね88に懸架されている。容器部24に蓋部25を固定すると、支持ばね88の反発力により、スプール61が隔壁部材54を介して一対の主固定接触子31に押圧されることで、ガタつきが抑制される。
【0028】
図7は、コイル接触子、支持ばね、及び中継接触子を示す図である。
ここでは、コイル接触子81、中継接触子85、及び支持ばね88だけを抜き出し、容器部24、アーム片84、及びスプール受部82等を省略した状態を示す。支持ばね88は、導電性を有する金属である。縦方向の一方側においては、コイル接触子81と中継接触子85との間に支持ばね88が圧縮された状態で挟まれており、支持ばね88がコイル接触子81及び中継接触子85の双方に接触している。これにより、コイル接触子81とコイル72とが電気的に接続される。したがって、縦方向の一方側においては、支持ばね88がスプール61の支持とコイル接触子81の電気接続とを兼ねている。
【0029】
上記より、コイル72に通電がない非励磁の状態では、プランジャ62が復帰ばね66の反発力によって奥行方向の奥側へと後退しており、これに伴って接点支え51も奥行方向の奥側へと後退する。これにより、主接点部21が開くと共に、補助接点部22が閉じる。このとき、上片部74に対して上アーマチュア63が離間し、下片部75に対して下アーマチュア64が離間している。
この状態から、コイル72に通電され励磁されると、上片部74に上アーマチュア63が吸着されると共に、下片部75に下アーマチュア64が吸着される。したがって、プランジャ62が復帰ばね66の反発力に逆らって奥行方向の手前側へと前進し、これに伴って接点支え51も奥行方向の手前側へと前進する。これにより、主接点部21が閉じると共に、補助接点部22が開く。
【0030】
図8は、補助接点部の断面図である。
ここでは、幅方向の中心を通り、縦方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
小筒部27には、小筒部27における縦方向の外側に位置する補助固定接触子41の裏面側、つまり奥行方向の奥側に、端子受部91が形成されている。端子受部91は、小筒部27の側壁から縦方向の外側に出っ張った部分であり、ナット部材92がインサート成形によって一体化されている。ナット部材92は、導電性を有する金属であり、円柱状に形成され、奥行方向の手前側には、奥行方向に沿って端子ねじ93が嵌り合う有底のねじ穴94が形成されている。インサート成形の手法については、前述した主固定接触子31と同様である。
【0031】
図9は、ナット部材を示す図である。
図中の(a)は、ナット部材92と補助固定接触子41との嵌め合いを示し、図中の(b)は、ナット部材92と端子ねじ93との嵌め合いを示す。補助固定接触子41には、小筒部27の外側となる他端側に、端子ねじ93における雄ねじ部95の外径よりも大きな丸穴96(挿通穴)が形成されており、ナット部材92には、奥行方向の手前側に、丸穴96に嵌り合う小径部97が形成されている。小径部97における奥行方向の高さは、補助固定接触子41の板厚と同一である。端子ねじ93には、線押さえの正方形角座及びばね座金が付いている。
【0032】
《作用》
次に第一実施形態の主要な作用について説明する。
主接点部及び補助接点部を収容する密閉容器は、これまでセラミックで蓋をした金属製であったが、小型軽量化や設計自由度に限界があった。そこで本実施形態では、主接点部21、補助接点部22、及び電磁石部23を、樹脂製の密閉容器15に密閉し、加圧された遮断用ガスを封入した。このように、樹脂製の密閉容器15を用いたことで、小型軽量化を図ると共に、設計自由度を向上させることができる。また、主接点部21及び補助接点部22を密閉容器15の内部に配置し、そこに遮断性能を高める遮断用ガスを封入することで、消弧スペースの大型化を抑制することができる。
密閉容器15は、粘土結晶の積層膜によってガスバリアコーティングされている。これにより、水素や窒素等のガス分子の透過が抑制され、加圧された遮断用ガスの漏洩を防ぐことができる。
【0033】
主接点部21は、一対の主固定接触子31と、主可動接触子32と、を備える。主固定接触子31は、一端に主固定接点33を有し、他端が主回路に接続される主端子部となる。主可動接触子32は、主固定接点33に対して接離する一対の主可動接点34を有し、接点支え51によって支持されている。補助接点部22は、一対の補助固定接触子41と、補助可動接触子42と、を備える。一対の補助固定接触子41は、一端に補助固定接点43を有し、他端側が補助回路に接続される補助端子部となる。補助可動接触子42は、補助固定接点43に対して接離する一対の補助可動接点44を有し、接点支え51によって支持されている。電磁石部23は、接点支え51を介して主接点部21の開閉、及び補助接点部22の開閉を切り替える。これにより、主接点部21の開閉、及び補助接点部22の開閉を容易に切り替えることができる。
【0034】
支持ばね88は、密閉容器15に対して電磁石部23を主接点部21側へと押圧している。具体的には、容器部24に蓋部25を固定すると、支持ばね88の反発力により、スプール61が隔壁部材54を介して一対の主固定接触子31に押圧される。これにより、密閉容器15の内側で電磁石部23、及び隔壁部材54にガタつきが生じることを抑制できる。支持ばね88は、縦方向の一方側に二つ、他方側に二つで、計四つあり、反発力がスプール61における縦方向の両側に均等に作用するように配置されている。これにより、重心の偏りが抑制されて安定性が向上する。また、密閉容器15を組み立てるときの作業性も向上する。
【0035】
コイル接触子81は、一端側が密閉容器15の内側に配置され、他端側が密閉容器15の外側で制御回路に接続される。中継接触子85は、電磁石部23のスプール61に固定されており、電磁石部23のコイル72が接続される。支持ばね88は、金属製であり、密閉容器15の内側でコイル接触子81と中継接触子85との間に配置されている。これにより、振動を受けるような環境下でも、支持ばね88の伸縮によってコイル接触子81と中継接触子85との良好な接触状態を保つことができ、製品の信頼性が向上する。
コイル接触子81は、化学エッチングによる表面処理が施されており、インサート成形によって密閉容器15に一体化されている。これにより、金属と樹脂が界面レベルで接合され、ラビリンス効果による複雑な接合となり、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防ぐことができる。
【0036】
一対の主固定接触子31は、平板状であり、主接点部21が開閉する方向と直交する面に沿って延在している。具体的には、密閉容器15の内側で一端側同士が間隔をあけて並び、夫々の一端側に主固定接点33が形成されており、夫々の他端側が密閉容器15の外側で主回路に接続される。また、主可動接触子32は、両端側に主可動接点34が形成されており、主可動接点34の夫々を主固定接点33に対して接触及び離間させる。主接点部21は、主固定接点33、及び主可動接点34によって形成される。一対の主固定接触子31は、化学エッチングによる表面処理が施されており、インサート成形によって密閉容器15に一体化されている。これにより、金属と樹脂が界面レベルで接合され、ラビリンス効果による複雑な接合となり、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防ぐことができる。
【0037】
一対の補助固定接触子41は、密閉容器15の内側で一端側同士が間隔をあけて並び、夫々の一端側に補助固定接点43が形成されており、夫々の他端側が密閉容器15の外側で補助回路に接続される。補助可動接触子42は、両端側に補助可動接点44が形成されており、補助可動接点44の夫々を補助固定接点43に対して接触及び離間させる。補助接点部22は、補助固定接点43、及び補助可動接点44によって形成される。一対の補助固定接触子41は、化学エッチングによる表面処理が施されており、インサート成形によって密閉容器15に一体化されている。これにより、金属と樹脂が界面レベルで接合され、ラビリンス効果による複雑な接合となり、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防ぐことができる。
【0038】
一対の補助固定接触子41は、平板状であり、密閉容器15の外側に位置する他端側には、端子ねじ93における雄ねじ部95の外径よりも大きな丸穴96が形成されている。密閉容器15には、密閉容器15の外側に位置する補助固定接触子41の裏面側に端子受部91が形成されており、端子受部91には、端子ねじ93と嵌り合う有底のねじ穴94が形成された金属製のナット部材92が設けられている。ナット部材92は、化学エッチングによる表面処理が施されており、インサート成形によって端子受部91に一体化されている。これにより、金属と樹脂が界面レベルで接合され、ラビリンス効果による複雑な接合となり、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防ぐことができる。
【0039】
ナット部材92を省略し、補助固定接触子41の丸穴96に雌ねじ部を形成し、そこに端子ねじ93を嵌め合わせる構成にする場合、端子受部91には端子ねじ93の雄ねじ部95が入り込むねじ穴を形成することになる。このねじ穴は、端子ねじ93の雄ねじ部95よりも大経である。密閉容器15には、全ての外周面をガスバリアコーティングする必要があるため、端子受部91に形成したねじ穴の内周面にもガスバリアコーティングを行なうことになる。しかしながら、ねじ穴の開放端には補助固定接触子41があるため、ねじ穴の内周面に対して、スプレー方式によってガスバリアコーティングを行なうことは難しい。そこで上記のように、金属製のナット部材92をインサート成形することで、水素や窒素等のガス分子の漏洩を防いでいる。
【0040】
《変形例》
第一実施形態では、補助接点部22を常閉型のb接点としているが、これに限定されるものではなく、常開型のa接点にしてもよい。
第一実施形態では、密閉容器15の外周面だけにガスバリアコーティングを行なっているが、これに限定されるものではなく、密閉容器15の内周面にもガスバリアコーティングを行なってもよい。
第一実施形態では、支持ばね88がスプール61の支持とコイル接触子81の電気接続とを兼ねているが、これに限定されるものではない。すなわち、スプール61を支持するばね部材と、コイル接触子81を電気接続するばね部材とを設け、役割を分離させてもよい。
【0041】
《第二実施形態》
《構成》
第二実施形態は、二つの主接点部21を備える2極型にした密閉型電磁接触器11である。すなわち、極数、つまり主接点部21の数を増加させたことを除けば、前述した第一実施形態と同様の構成であり、共通する部分については同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
図10は、密閉型電磁接触器の外観図である(2極)。
主端子カバー13は、二つの樹脂ナット16によって固定されており、一次側では第一極の主端子に固定され、二次側では第二極の主端子に固定されている。
【0042】
図11は、密閉容器の外観図である(2極)。
以下の説明では、第一極と第二極を区別する場合、第一極に関連した符号には「a」を付し、第二極に関連した符号には「b」を付す。第一極における一対の主固定接触子31aは、幅方向の一方側に設けられ、第二極における一対の主固定接触子31bは、幅方向の他方側に設けられている。
図12は、密閉容器の分解図である(2極)。
隔壁部材111は、電気絶縁性を有する樹脂であり、接点支え51を保持した状態で、容器部24における奥行方向の手前側に収容される。隔壁部材111には、縦方向の両側に、第一極と第二極との間、つまり主接点部21同士の間を仕切る極間バリア112(隔壁部材)が形成されている。
【0043】
図13は、組み付け後の隔壁部材、接点支え、及び電磁石部を示す図である。
図14は、密閉容器の断面図である(2極)。
ここでは、幅方向の中心を通り、縦方向及び奥行方向に沿った断面を示す。
極間バリア112は、電気絶縁性を有する樹脂であり、縦方向及び奥行方向に沿った板状に形成されており、幅方向の中心に設けられている。密閉容器15の内側は、極間バリア112によって第一極側と第二極側とに区画されることで、主接点部21における各極間の電気絶縁性が高められている。
【0044】
《作用》
次に第二実施形態の主要な作用について説明する。
第二実施形態では、密閉型電磁接触器11を2極型にし、隔壁部材111に各極間を仕切る樹脂製の極間バリア112を設けた。これにより、主接点部21における各極間の電気絶縁性を高めることができる。主接点部を収容する密閉容器は、これまでセラミックで蓋をした金属製であったため、密閉容器の内側で各極間の電気絶縁性を確保することが困難であった。これに対して、樹脂製の密閉容器15を用いたことで、極数が複数になるとしても、極間バリア112を容易に設けることができるので、主接点部21における各極間の電気絶縁性を確保することができる。このように、樹脂製の密閉容器15を用いたことで、設計自由度が向上し、極数の増加要請にも容易に応じることができる。
【0045】
《変形例》
第二実施形態では、隔壁部材111に極間バリア112を一体化しているが、これに限定されるものではなく、極間バリア112を別部材として設けたり、蓋部25に一体化させたりしてもよい。
第二実施形態では、密閉型電磁接触器11を2極型にしたが、これに限定されるものではなく、3極型や4極型にも適応することができ、何れにしても各極間に極間バリア112を設ける必要がある。
【0046】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0047】
11...密閉型電磁接触器、12...ケース、13...主端子カバー、14...補助端子カバー、15...密閉容器、16...樹脂ナット、21...主接点部、22...補助接点部、23...電磁石部、24...容器部、25...蓋部、26...キャップ部、27...小筒部、31...主固定接触子、31a...主固定接触子、31b...主固定接触子、32...主可動接触子、33...主固定接点、34...主可動接点、41...補助固定接触子、42...補助可動接触子、43...補助固定接点、44...補助可動接点、51...接点支え、52...主接触ばね、53...補助接触ばね、54...隔壁部材、61...スプール、62...プランジャ、63...上アーマチュア、64...下アーマチュア、65...ヨーク、66...復帰ばね、71...巻き軸、72...コイル、73...側片部、74...上片部、75...下片部、81...コイル接触子、82...スプール受部、83...深型凹部、84...アーム片、85...中継接触子、86...浅型凹部、87...突出部、支持ばね...88、91...端子受部、92...ナット部材、93...端子ねじ、94...ねじ穴、95...雄ねじ部、96...丸穴、97...小径部、111...隔壁部材、112...極間バリア