(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】高圧ポンプ
(51)【国際特許分類】
F02M 59/36 20060101AFI20240110BHJP
F02M 51/00 20060101ALI20240110BHJP
F02M 59/46 20060101ALI20240110BHJP
F04B 53/10 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F02M59/36 F
F02M51/00 F
F02M59/46 Y
F04B53/10 D
(21)【出願番号】P 2021036089
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2020113263
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 貴之
(72)【発明者】
【氏名】古賀 達郎
(72)【発明者】
【氏名】澤田 康弘
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-144973(JP,A)
【文献】国際公開第2000/047888(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/097991(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 59/00~59/48
F02M 51/00
F04B 53/10
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料が加圧される加圧室(200)を形成する加圧室形成部(23)と、
前記加圧室に吸入される燃料が流れる吸入通路(216)を形成する吸入通路形成部(21)と、
前記吸入通路に設けられ、一方の面と他方の面とを連通する連通路(32)を有するシート部材(31)と、
前記シート部材の前記加圧室側に設けられ、前記シート部材から離間し開弁または前記シート部材に当接し閉弁することで前記連通路における燃料の流れを許容または規制可能な弁部材(40)と、
前記シート部材の前記加圧室とは反対側に設けられた筒部材(51)と、
前記筒部材の内側において軸方向に往復移動可能に設けられ、一端が前記弁部材と協働するニードル(53)と、
前記ニードルの他端に設けられた可動コア(55)と、
前記ニードルの軸方向において前記可動コアに対向するように設けられた固定コア(57)と、
コネクタ部(65)、前記コネクタ部に設けられたターミナル(651)、前記ターミナルに接続する筒状のコイル(60)、前記ターミナルおよび前記コイルを覆う樹脂部(61、652)を含むコイルサブアッセンブリ(650)、
前記コイルへの通電により、前記コイルの軸方向において前記コイルに対し前記加圧室側に磁気回路を形成可能な第1ヨーク(641)、ならびに、
前記コイルへの通電により、前記コイルの軸方向において前記コイルに対し前記加圧室とは反対側に磁気回路を形成可能な第2ヨーク(645)を有するコイルアッセンブリ(502)と、
前記コイルアッセンブリの前記加圧室とは反対側において、前記コイルアッセンブリと前記固定コアとを接続する第1接続部(661)と、
前記コイルアッセンブリの前記加圧室側において、前記コイルアッセンブリと前記筒部材とを接続する第2接続部(671、672、673
、676)と、
を備え
、
前記第2接続部は、弾性部材により環状または筒状に形成され、
前記第2接続部は、前記樹脂部と前記筒部材との間で、前記筒部材の径方向に弾性変形可能に設けられている高圧ポンプ。
【請求項2】
前記第2接続部は、前記樹脂部の前記筒部材側の端部と前記筒部材の前記樹脂部側の端部との間に設けられている請求項1に記載の高圧ポンプ。
【請求項3】
前記樹脂部(61)は、前記加圧室側に環状に突出する突出部(615)を有し、
前記筒部材は、第2筒部(512)、および、前記第2筒部に接続し前記第2筒部の外径より外径が小さい第3筒部(513)を有し、
前記第2接続部は、前記突出部と前記第3筒部との間に設けられている請求項2に記載の高圧ポンプ。
【請求項4】
前記筒部材および前記第1ヨークは、前記筒部材の径方向において隣接する前記筒部材の一部と前記第1ヨークの一部とにより磁気通路部(505)を形成し、
前記第2接続部は、前記磁気通路部に対し前記コイル側に設けられている請求項1
~3のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
【請求項5】
前記第1ヨークは、前記コイルの軸方向において前記コイルサブアッセンブリと対向する対向部(643)を有し、
前記第2接続部は、前記対向部に対し前記コイル側に設けられている請求項
4に記載の高圧ポンプ。
【請求項6】
燃料が加圧される加圧室(200)を形成する加圧室形成部(23)と、
前記加圧室に吸入される燃料が流れる吸入通路(216)を形成する吸入通路形成部(21)と、
前記吸入通路に設けられ、一方の面と他方の面とを連通する連通路(32)を有するシート部材(31)と、
前記シート部材の前記加圧室側に設けられ、前記シート部材から離間し開弁または前記シート部材に当接し閉弁することで前記連通路における燃料の流れを許容または規制可能な弁部材(40)と、
前記シート部材の前記加圧室とは反対側に設けられた筒部材(51)と、
前記筒部材の内側において軸方向に往復移動可能に設けられ、一端が前記弁部材と協働するニードル(53)と、
前記ニードルの他端に設けられた可動コア(55)と、
前記ニードルの軸方向において前記可動コアに対向するように設けられた固定コア(57)と、
コネクタ部(65)、前記コネクタ部に設けられたターミナル(651)、前記ターミナルに接続する筒状のコイル(60)、前記ターミナルおよび前記コイルを覆う樹脂部(61、652)を含むコイルサブアッセンブリ(650)、
前記コイルへの通電により、前記コイルの軸方向において前記コイルに対し前記加圧室側に磁気回路を形成可能な第1ヨーク(641)、ならびに、
前記コイルへの通電により、前記コイルの軸方向において前記コイルに対し前記加圧室とは反対側に磁気回路を形成可能な第2ヨーク(645)を有するコイルアッセンブリ(502)と、
前記コイルアッセンブリの前記加圧室とは反対側において、前記コイルアッセンブリと前記固定コアとを接続する第1接続部(661)と、
前記コイルアッセンブリの前記加圧室側において、前記コイルアッセンブリと前記筒部材とを接続する第2接続部(671、672、673
、676)と、
を備え
、
前記第2接続部は、弾性部材により環状に形成され、
前記第2接続部は、前記第1ヨークと前記筒部材との間で、前記筒部材の軸方向に弾性変形可能に設けられている高圧ポンプ。
【請求項7】
前記第1ヨークは、環状に形成され、
前記筒部材は、環状の段差面(517)を有し、
前記第2接続部は、前記第1ヨークの内縁部と前記段差面との間に設けられている請求項6に記載の高圧ポンプ。
【請求項8】
前記第1ヨークと前記樹脂部とを接続する第3接続部(691、692、693、694)をさらに備える請求項1~
7のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
【請求項9】
前記第3接続部は、弾性部材により形成されている請求項
8に記載の高圧ポンプ。
【請求項10】
前記筒部材および前記固定コアと前記コイルアッセンブリとを接続する追加接続部(695)をさらに備える請求項1~
9のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
【請求項11】
前記追加接続部は、弾性部材により形成されている請求項
10に記載の高圧ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料を加圧し内燃機関に供給する高圧ポンプが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の高圧ポンプは、加圧室に吸入される燃料を調整する吸入弁を開閉するため、コイルを含むコイルアッセンブリを備えている。ここで、コイルアッセンブリは、筒部材を介して高圧ポンプのハウジングに接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の高圧ポンプでは、コイルアッセンブリの加圧室とは反対側において、コイルアッセンブリのヨークと固定コアとは、溶接により固定されている。一方、コイルアッセンブリの加圧室側において、コイルアッセンブリのヨークの内周壁と筒部材の外周壁との間の周方向の少なくとも一部には隙間が形成されている。つまり、コイルアッセンブリは、筒部材に対し、隙間嵌めにより設けられている。
【0006】
また、特許文献1の高圧ポンプでは、コイルアッセンブリは、コイルへの通電用にターミナルを含んでいる。この高圧ポンプが内燃機関に取り付けられた場合、内燃機関の振動および高圧ポンプ作動時の振動により、隙間嵌めされているコイルアッセンブリの加圧室側の部分が特に振動するおそれがある。
【0007】
コイルアッセンブリが振動すると、ターミナルが振動および摩耗し、導通不良を招くおそれがある。その結果、吸入弁部の作動不良を招き、高圧ポンプの吐出不良を招くおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、吐出不良を抑制可能な高圧ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る高圧ポンプは、加圧室形成部(23)と吸入通路形成部(21)とシート部材(31)と弁部材(40)と筒部材(51)とニードル(53)と可動コア(55)と固定コア(57)とコイルアッセンブリ(502)と第1接続部(661)と第2接続部(671、672、673、676)とを備えている。
【0010】
加圧室形成部は、燃料が加圧される加圧室(200)を形成する。吸入通路形成部は、加圧室に吸入される燃料が流れる吸入通路(216)を形成する。シート部材は、吸入通路に設けられ、一方の面と他方の面とを連通する連通路(32)を有する。
【0011】
弁部材は、シート部材の加圧室側に設けられ、シート部材から離間し開弁またはシート部材に当接し閉弁することで連通路における燃料の流れを許容または規制可能である。筒部材は、シート部材の加圧室とは反対側に設けられている。
【0012】
ニードルは、筒部材の内側において軸方向に往復移動可能に設けられ、一端が弁部材と協働する。可動コアは、ニードルの他端に設けられている。固定コアは、ニードルの軸方向において可動コアに対向するように設けられている。
【0013】
コイルアッセンブリは、コイルサブアッセンブリ(650)、第1ヨーク(641)および第2ヨーク(645)を有する。コイルサブアッセンブリは、コネクタ部(65)、コネクタ部に設けられたターミナル(651)、ターミナルに接続する筒状のコイル(60)、ターミナルおよびコイルを覆う樹脂部(61、652)を含む。
【0014】
第1ヨークは、コイルへの通電により、コイルの軸方向においてコイルに対し加圧室側に磁気回路を形成可能である。第2ヨークは、コイルへの通電により、コイルの軸方向においてコイルに対し加圧室とは反対側に磁気回路を形成可能である。
【0015】
第1接続部は、コイルアッセンブリの加圧室とは反対側において、コイルアッセンブリと固定コアとを接続する。第2接続部は、コイルアッセンブリの加圧室側において、コイルアッセンブリと筒部材とを接続する。
【0016】
本発明では、コイルアッセンブリは、加圧室とは反対側が第1接続部を介して固定コアに支持され、加圧室側が第2接続部を介して筒部材に支持されている。つまり、コイルアッセンブリは、軸方向の両端が他の部位により支持されている。
【0017】
そのため、高圧ポンプが内燃機関に取り付けられた場合において、内燃機関の振動および高圧ポンプ作動時の振動によるコイルアッセンブリの振動を抑制できる。これにより、ターミナルの振動および摩耗を抑制し、導通不良を抑制できる。その結果、吸入弁部の作動不良を抑制し、高圧ポンプの吐出不良を抑制できる。
本発明では、第2接続部は、弾性部材により環状または筒状に形成されている。第2接続部は、樹脂部と筒部材との間で、筒部材の径方向に弾性変形可能に設けられている。
本発明の他の態様では、第2接続部は、弾性部材により環状に形成されている。第2接続部は、第1ヨークと筒部材との間で、筒部材の軸方向に弾性変形可能に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態による高圧ポンプを示す断面図。
【
図2】第1実施形態による高圧ポンプのコイルアッセンブリを示す断面図。
【
図3】第1実施形態による高圧ポンプのソレノイドアッセンブリを示す断面図。
【
図4】第1実施形態による高圧ポンプの電磁駆動部の一部を示す断面図。
【
図5】第1実施形態による高圧ポンプの第2接続部およびその近傍を示す断面図。
【
図6】第2実施形態による高圧ポンプの第2接続部の一部およびその近傍を示す断面図。
【
図7】第3実施形態による高圧ポンプの第2接続部およびその近傍を示す断面図。
【
図8】第4実施形態による高圧ポンプの第2接続部およびその近傍を示す断面図。
【
図9】第5実施形態による高圧ポンプの第2接続部およびその近傍を示す断面図。
【
図10】第6実施形態による高圧ポンプの第2接続部およびその近傍を示す断面図。
【
図11】第7実施形態による高圧ポンプの電磁駆動部の一部を示す断面図。
【
図12】第8実施形態による高圧ポンプの電磁駆動部の一部を示す断面図。
【
図13】第9実施形態による高圧ポンプの電磁駆動部の一部を示す断面図。
【
図14】第10実施形態による高圧ポンプの電磁駆動部の一部を示す断面図。
【
図15】第11実施形態による高圧ポンプの電磁駆動部の一部を示す断面図。
【
図16】第12実施形態による高圧ポンプの電磁駆動部の一部を示す断面図。
【
図17】第13実施形態による高圧ポンプの一部を示す断面図。
【
図19】第14実施形態による高圧ポンプの一部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、複数の実施形態による高圧ポンプを図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0020】
(第1実施形態)
第1実施形態による高圧ポンプを
図1に示す。
【0021】
本実施形態の高圧ポンプ10は、図示しない車両の内燃機関(以下、「エンジン」という)1に燃料を供給する燃料噴射弁を有する燃料供給システムに適用される。高圧ポンプ10は、例えばエンジン1のエンジンヘッド2に取り付けられる。
【0022】
車両に搭載された燃料タンクには、燃料としてのガソリン等が貯留される。燃料ポンプは、燃料タンク内の燃料を汲み上げ吐出する。供給燃料配管は、燃料ポンプと高圧ポンプ10とを接続する。これにより、燃料ポンプで汲み上げられ吐出された燃料は、供給燃料配管を経由して高圧ポンプ10に流入する。
【0023】
エンジン1には高圧ポンプ10とともに燃料レールが設けられる。エンジン1は、例えば4気筒のガソリンエンジンである。燃料レールは、エンジン1のエンジンヘッド2に設けられる。燃料噴射弁は、噴孔がエンジン1の燃焼室内に露出するよう設けられる。燃料噴射弁は、エンジン1の気筒数に合わせて例えば4つ設けられる。燃料レールには、4つの燃料噴射弁が接続される。
【0024】
高圧ポンプ10と燃料レールとは、高圧燃料配管8により接続される。供給燃料配管から高圧ポンプ10に流入した燃料は、高圧ポンプ10で加圧され、高圧燃料配管8を経由して燃料レールに供給される。これにより、燃料レール内の燃料は比較的高圧に保たれる。燃料噴射弁は、図示しない制御装置としてのECUからの指令により開閉弁し、燃料レール内の燃料をエンジン1の燃焼室内に噴射する。このように、燃料噴射弁は、所謂直噴式(DI)の燃料噴射弁である。
【0025】
供給燃料配管の高圧ポンプ10に対し燃料タンク側には、センサが設けられる。センサは、供給燃料配管内の燃料の圧力、すなわち、燃圧、および、燃料の温度、すなわち、燃温を検出し、対応する信号をECUに送信可能である。ECUは、センサにより検出した供給燃料配管内の燃圧および燃温に基づき、燃料ポンプから吐出する燃料の目標圧力を決定し、目標圧力の燃料が燃料ポンプから吐出されるよう、燃料ポンプのモータの作動を制御する。
【0026】
図1に示すように、高圧ポンプ10は、上ハウジング21、下ハウジング22、シリンダ23、ホルダ支持部24、カバー26、プランジャ11、吸入弁部300、電磁駆動部500、吐出通路部700等を備えている。
【0027】
上ハウジング21、下ハウジング22、シリンダ23、ホルダ支持部24は、例えばステンレス等の金属により形成されている。ここで、上ハウジング21および下ハウジング22は、「ハウジング」に対応している。
【0028】
上ハウジング21は、例えば、略八角柱状に形成されている。上ハウジング21は、八角筒状のハウジング外周壁を有している。
【0029】
上ハウジング21は、穴部211、吸入穴部212、吐出穴部214を有している。穴部211は、上ハウジング21の中央を上ハウジング21の軸に沿って円筒状に貫くよう形成されている。
【0030】
吸入穴部212は、上ハウジング21のハウジング外周壁から穴部211に向かって延びて穴部211に接続するよう形成されている。上ハウジング21の吸入穴部212の内側には、吸入通路216が形成されている。ここで、上ハウジング21は、「吸入通路形成部」に対応している。
【0031】
吐出穴部214は、上ハウジング21のハウジング外周壁の吸入穴部212とは反対側から穴部211に向かって延びて穴部211に接続するよう形成されている。吐出穴部214の内側には、吐出通路217が形成されている。ここで、上ハウジング21の吐出穴部214は、「吐出通路形成部」に対応している。
【0032】
下ハウジング22は、略円板状に形成されている。下ハウジング22は、穴部221を有している。
【0033】
穴部221は、下ハウジング22の中央を板厚方向に略円筒状に貫くよう形成されている。
【0034】
下ハウジング22は、上ハウジング21の下方に形成された凹部に嵌合するよう上ハウジング21と一体に設けられている。
【0035】
高圧ポンプ10がエンジン1に取り付けられるとき、下ハウジング22は、図示しないボルトによりエンジン1のエンジンヘッド2に固定される。
【0036】
シリンダ23は、シリンダ穴部231を有している。シリンダ穴部231は、円柱状の部材の一方の端面から他方の端面側へ延びるよう略円筒状に形成されている。すなわち、シリンダ23は、筒部、および、筒部の一端を塞ぐ底部を有する有底筒状に形成されている。
【0037】
シリンダ23の外径は、上ハウジング21の穴部211の内径よりやや大きい。シリンダ23は、下ハウジング22の穴部221を通り、上ハウジング21の穴部211に底部側の外周壁が嵌合するよう上ハウジング21および下ハウジング22と一体に設けられている。シリンダ23は、吸入穴232、吐出穴233を有している。吸入穴232は、シリンダ穴部231の底部側の端部と上ハウジング21の吸入穴部212とを接続するよう形成されている。吐出穴233は、シリンダ穴部231の底部側の端部と上ハウジング21の吐出穴部214とを接続するよう形成されている。
【0038】
ホルダ支持部24は、略円筒状に形成されている。ホルダ支持部24は、下ハウジング22の下方に形成された凹部に一端が嵌合するよう下ハウジング22と一体に設けられている。高圧ポンプ10がエンジン1に取り付けられるとき、ホルダ支持部24は、エンジンヘッド2に形成された取付穴部3に挿入される(
図1参照)。
【0039】
プランジャ11は、例えばステンレス等の金属により略円柱状に形成されている。プランジャ11は、大径部111、小径部112を有している。小径部112は、外径が大径部111の外径より小さい。プランジャ11は、大径部111側がシリンダ23のシリンダ穴部231に挿入されるようにして設けられている。シリンダ穴部231の底壁および内周壁とプランジャ11の大径部111側の端部との間に加圧室200が形成されている。すなわち、シリンダ23は、加圧室200を形成している。ここで、シリンダ23は、「加圧室形成部」に対応している。加圧室200は、吸入穴232および吐出穴233に接続している。
【0040】
プランジャ11の外径は、シリンダ23の内径、すなわち、シリンダ穴部231の内径よりやや小さく形成されている。そのため、プランジャ11は、大径部111の外周壁がシリンダ穴部231の内周壁と摺動しつつ、シリンダ穴部231内を軸方向に往復移動可能である。プランジャ11がシリンダ穴部231内を往復移動するとき、加圧室200の容積が増減する。このように、プランジャ11は、一端が加圧室200に位置するようシリンダ穴部231の内側において軸方向に往復移動可能に設けられている。
【0041】
本実施形態では、ホルダ支持部24の内側にシールホルダ14が設けられている。シールホルダ14は、例えばステンレス等の金属により筒状に形成されている。シールホルダ14は、外壁がホルダ支持部24の内壁に嵌合するよう設けられている。
【0042】
シールホルダ14と、プランジャ11の大径部111と小径部112との間の段差面との間には、プランジャ11の往復移動時に容積が変化する可変容積室201が形成されている。
【0043】
ここで、下ハウジング22とシリンダ23の外周壁とホルダ支持部24の内周壁とシールホルダ14との間に環状の空間である環状空間202が形成されている。環状空間202は、下ハウジング22を板厚方向に貫く図示しない穴部に接続している。また、環状空間202は、可変容積室201に接続している。
【0044】
プランジャ11の小径部112の大径部111とは反対側の端部には、略円板状のスプリングシート12が設けられている。シールホルダ14とスプリングシート12との間には、スプリング13が設けられている。スプリング13は、例えばコイルスプリングであり、一端がスプリングシート12に当接し、他端がスペーサを介してシールホルダ14に当接するよう設けられている。スプリング13は、スプリングシート12を経由してプランジャ11を加圧室200とは反対側に付勢している。高圧ポンプ10は、エンジン1のエンジンヘッド2に取り付けられるとき、プランジャ11の小径部112の大径部111とは反対側の端部にリフタ5が取り付けられる。
【0045】
高圧ポンプ10がエンジン1に取り付けられたとき、リフタ5は、エンジン1の駆動軸に連動して回転するカム軸のカム4に当接する。これにより、エンジン1が回転しているとき、カム4の回転により、プランジャ11が軸方向に往復移動する。このとき、加圧室200および可変容積室201の容積は、それぞれ周期的に変化する。
【0046】
カバー26は、例えばステンレス等の金属により形成されている。カバー26は、カバー筒部261、カバー底部262等を有している。カバー筒部261は、略八角筒状に形成されている。カバー筒部261は、八角筒状のカバー外周壁を有している。
【0047】
カバー底部262は、カバー筒部261の一端を塞ぐようカバー筒部261と一体に形成されている。すなわち、カバー26は、有底筒状に形成されている。なお、本実施形態では、カバー26は、例えば板状の部材をプレス加工することにより形成されている。そのため、カバー26は、肉厚が比較的小さい。なお、カバー26は、高圧室を形成しないため、肉厚を小さくできる。
【0048】
カバー26は、カバー穴部266、カバー穴部267を有している。カバー穴部266、カバー穴部267は、それぞれ、カバー筒部261の内周壁と外周壁すなわちカバー外周壁とを接続するよう略円筒状に形成されている。カバー穴部266とカバー穴部267とは、カバー筒部261の軸を挟んで対向するよう略同軸に形成されている。
【0049】
カバー26は、内側に上ハウジング21を収容し、カバー筒部261のカバー底部262とは反対側の端部が、下ハウジング22の上ハウジング21側の面に当接するよう設けられている。カバー26は、上ハウジング21、下ハウジング22、シリンダ23との間に燃料室260を形成している。ここで、カバー筒部261の端部と下ハウジング22とは、例えば溶接により周方向の全域に亘り接合されている。これにより、カバー筒部261と下ハウジング22との間は、液密に保たれている。また、カバー26は、カバー穴部266と上ハウジング21の吸入穴部212とが対応し、カバー穴部267と上ハウジング21の吐出穴部214とが対応するよう設けられている。
【0050】
このように、カバー26は、シリンダ23、上ハウジング21および下ハウジング22の少なくとも一部を覆い、シリンダ23、上ハウジング21および下ハウジング22との間に燃料室260を形成している。
【0051】
カバー26には、図示しない供給通路部が設けられている。供給通路部は、筒状に形成され、内側の空間が、燃料室260に連通するよう設けられている。供給通路部には、供給燃料配管が接続される。これにより、燃料ポンプから吐出される燃料は、供給燃料配管、供給通路部を経由して燃料室260に流入する。
【0052】
吸入弁部300は、上ハウジング21の吸入穴部212の内側、すなわち、吸入通路216に設けられている。吸入弁部300は、シート部材31、ストッパ35、弁部材40、スプリング39等を有している。
【0053】
シート部材31は、例えばステンレス等の金属により略円板状に形成されている。シート部材31は、吸入穴部212の内側の吸入通路216に設けられている。ここで、シート部材31の外周壁は、吸入穴部212の内周壁に圧入されている。
【0054】
シート部材31は、連通路32、弁座310を有している。連通路32は、シート部材31の中央においてシート部材31の一方の面と他方の面とを連通するよう略円筒状に形成されている。
【0055】
弁座310は、シート部材31の加圧室200側の面において、連通路32の周囲に環状に形成されている。
【0056】
ストッパ35は、例えばステンレス等の金属により形成されている。ストッパ35は、吸入通路216においてシート部材31に対し加圧室200側に設けられている。
【0057】
シート部材31の連通路32には吸入通路216の一部が形成されている。そのため、燃料室260の燃料は、連通路32に形成された吸入通路216、および、吸入穴232を経由して加圧室200に流入可能である。
【0058】
弁部材40は、シート部材31の加圧室200側に設けられている。弁部材40は、シート部材31とストッパ35との間において、シート部材31の軸方向に往復移動可能に設けられている。
【0059】
弁部材40は、シート部材31側の面がシート部材31の加圧室200側の面、すなわち、弁座310に当接可能であり、ストッパ35側の面がストッパ35のシート部材31側の面に当接可能である。
【0060】
弁部材40は、シート部材31側の面がシート部材31の加圧室200側の面、すなわち、弁座310から離間すると開弁し連通路32における燃料の流れを許容し、シート部材31側の面が弁座310に当接すると閉弁し連通路32における燃料の流れを規制可能である。
【0061】
弁部材40が開弁すると、連通路32における燃料の流れが許容され、燃料室260側の燃料は、連通路32、吸入穴232を経由して加圧室200側に流れることができる。また、加圧室200側の燃料は、吸入穴232、連通路32を経由して燃料室260側に流れることができる。このとき、燃料は、弁部材40の周囲を流れる。
【0062】
弁部材40が閉弁すると、連通路32における燃料の流れが規制され、燃料室260側の燃料は、連通路32、吸入穴232を経由して加圧室200側に流れることが規制される。また、加圧室200側の燃料は、吸入穴232、連通路32を経由して燃料室260側に流れることが規制される。
【0063】
スプリング39は、例えばコイルスプリングであり、ストッパ35と弁部材40との間に設けられている。スプリング39は、一端がストッパ35のシート部材31側の面に当接し、他端が弁部材40の加圧室200側の面に当接している。スプリング39は、弁部材40をシート部材31側に付勢している。
【0064】
電磁駆動部500は、上ハウジング21の吸入穴部212からカバー26のカバー穴部266を経由してカバー外周壁の径方向外側へ突出するよう設けられている。
【0065】
電磁駆動部500は、「ソレノイドアッセンブリ」としての第1電磁駆動部501(
図3参照)と「コイルアッセンブリ」としての第2電磁駆動部502(
図2参照)とから構成されている。
【0066】
図3に示すように、「ソレノイドアッセンブリ」としての第1電磁駆動部501は、筒部材51、ガイド部材52、ニードル53、付勢部材としてのスプリング54、可動コア55、磁気絞り部56、固定コア57等を有している。
【0067】
筒部材51は、第1筒部511、第2筒部512、第3筒部513を有している。第1筒部511、第2筒部512、第3筒部513は、例えば磁性材料により形成されている。第1筒部511は、略円筒状に形成されている。
【0068】
第2筒部512は、筒状に形成されている。第2筒部512は、端部が第1筒部511の端部に接続するよう第1筒部511と略同軸かつ一体に形成されている。第2筒部512の最大外径は、第1筒部511の第2筒部512側の端部の外径より小さい。
【0069】
第3筒部513は、略円筒状に形成されている。第3筒部513は、端部が第2筒部512の第1筒部511とは反対側の端部に接続するよう第2筒部512と略同軸かつ一体に形成されている。第3筒部513の外径は、第2筒部512の最大外径より小さい。
【0070】
第1筒部511の第2筒部512とは反対側の端部の外周壁には、ねじ山が形成されている。上ハウジング21の吸入穴部212の加圧室200とは反対側の端部の内周壁には、第1筒部511のねじ山に対応するねじ溝が形成されている。
【0071】
筒部材51は、第1筒部511のねじ山が上ハウジング21のねじ溝にねじ結合するよう設けられている。ここで、筒部材51の第1筒部511の加圧室200側の端面は、シート部材31およびストッパ35を加圧室200側へ付勢している。そのため、シート部材31とストッパ35とは互いに当接しており、軸方向の移動が規制されている。
【0072】
筒部材51は、第1筒部511がカバー26のカバー穴部266の内側に位置している。そのため、第1筒部511の加圧室200側の端部がカバー筒部261の内側に位置し、第1筒部511の加圧室200とは反対側の端部、第2筒部512、第3筒部513がカバー筒部261の外側に位置している。なお、筒部材51は、軸がシリンダ23の軸Ax1に直交するよう設けられている。
【0073】
筒部材51の加圧室200側の部位の内径は、加圧室200とは反対側の部位の内径より大きい。筒部材51の内側には、加圧室200側を向く略円環状の段差面514が形成されている。段差面514は、肉厚確保のため、筒部材51の軸方向において第1筒部511と第2筒部512との接続部に対しやや加圧室200側に位置している。
【0074】
第1筒部511には、内周壁と外周壁とを連通する穴部515が形成されている。穴部515は、第1筒部511の周方向に等間隔で複数形成されている。穴部515は、第1筒部511の軸方向においてカバー穴部266と燃料室260とを跨ぐようにして形成されている。そのため、燃料室260の燃料は、穴部515を経由して第1筒部511の内側に流入し、吸入通路216を経由して加圧室200側へ流れることができる。
【0075】
カバー26の外側において筒部材51の第1筒部511の径方向外側には、溶接リング519が設けられている。溶接リング519は、例えば金属により略円筒状に形成されている。溶接リング519は、加圧室200側の端部が径方向外側に拡がるよう形成され、カバー外周壁のカバー穴部266の周囲に当接している。溶接リング519は、加圧室200側の端部が周方向の全範囲に亘りカバー外周壁に溶接され、加圧室200とは反対側の部位が周方向の全範囲に亘り第1筒部511の外周壁に溶接されている。より具体的には、溶接リング519の加圧室200側の端部において、溶接リング519とカバー26とが溶接により溶融し冷え固まることによって形成された溶接部591が、周方向の全範囲に亘り溶接リング519とカバー26とを接続している。また、溶接リング519の部位において、溶接リング519と筒部材51とが溶接により溶融し冷え固まることによって形成された溶接部592が、周方向の全範囲に亘り溶接リング519と筒部材51とを接続している。これにより、燃料室260の燃料がカバー穴部266と第1筒部511の外周壁との間の隙間を経由してカバー26の外部に漏れることが抑制されている。なお、高圧作用時の荷重は、筒部材51のねじで受けるため、溶接リング519には応力が作用しない。
【0076】
ガイド部材52は、第1筒部511の内側に設けられている。ガイド部材52は、例えば金属等により略円柱状に形成されている。ガイド部材52は、外周壁が第1筒部511の内周壁に嵌合し、一方の端面の外縁部が筒部材51の段差面514に当接するよう第1筒部511の内側に固定されている。
【0077】
ガイド部材52は、軸穴521、連通穴522を有している。軸穴521は、ガイド部材52の中央を軸方向に貫くよう形成されている。
【0078】
連通穴522は、軸穴521の径方向外側において加圧室200側の面と加圧室200とは反対側の面とを連通するよう形成されている。連通穴522は、第1筒部511の内側の空間のうちガイド部材52に対し加圧室200側の空間とガイド部材52に対し加圧室200とは反対側の空間とを連通している。
【0079】
ニードル53は、筒部材51の内側に設けられている。ニードル53は、例えば金属により形成されている。ニードル53は、ニードル本体531、係止部532を有している。ニードル本体531は、略円柱状に形成されている。係止部532は、ニードル本体531の外周壁から径方向外側へ略円環状に延びるようニードル本体531と一体に形成されている。
【0080】
ニードル53は、ニードル本体531がガイド部材52の軸穴521に挿通され、係止部532がガイド部材52に対し加圧室200側に位置するよう設けられている。ニードル本体531の加圧室200側の端部は、シート部材31の連通路32の内側に位置し、弁部材40の加圧室200とは反対側の面に当接可能である。ニードル本体531の加圧室200とは反対側の端部は、第3筒部513の第2筒部512とは反対側の端面に対し加圧室200とは反対側に位置している。
【0081】
ニードル本体531の軸穴521に対応する部位の外径は、軸穴521の内径よりやや小さい。係止部532の外径は、軸穴521の外径より大きい。ニードル53は、筒部材51の内側において軸方向に往復移動可能である。ニードル本体531の外周壁は、軸穴521と摺動可能である。そのため、ガイド部材52は、ニードル53の軸方向の移動を案内可能である。
【0082】
スプリング54は、例えばコイルスプリングであり、ニードル本体531の径方向外側に設けられている。スプリング54は、一端がガイド部材52の加圧室200側の面に当接し、他端が係止部532の加圧室200とは反対側の面に当接している。すなわち、係止部532は、スプリング54の他端を係止している。スプリング54は、ニードル53を加圧室200側に付勢している。また、スプリング54の付勢力は、スプリング39の付勢力より大きい。そのため、スプリング54は、ニードル53を経由して弁部材40を加圧室200側に付勢し、弁部材40の加圧室200側の面をストッパ35に押し付けている。このとき、弁部材40は、シート部材31の弁座310から離間し開弁している。
【0083】
可動コア55は、例えば磁性材料により略円柱状に形成されている。可動コア55は、軸穴553、連通穴554を有している。軸穴553は、可動コア55の中央を軸方向に貫くよう形成されている。
【0084】
可動コア55は、軸穴553の内周壁がニードル本体531の加圧室200とは反対側の端部の外周壁と嵌合するようニードル53と一体に設けられている。ここで、可動コア55は、ニードル53に圧入され、ニードル53に対し相対移動不能である。
【0085】
連通穴554は、軸穴553の径方向外側において加圧室200とは反対側の端面551と加圧室200側の端面552とを連通するよう形成されている。この連通穴554により、可動コア55の往復移動時の流体抵抗を低減させ、高応答による移動を可能としている。また、連通穴554により、可動コア55と固定コア57との間の空間に燃料を供給することができ、圧力の急激な変化を抑制することで、キャビテーションエロージョンの発生を抑制できる。
【0086】
また、本実施形態では、一体に設けられたニードル53および可動コア55の重心は、開弁から閉弁まで常に、ニードル53の軸上、かつ、ガイド部材52の内側に位置している。そのため、一体に設けられたニードル53および可動コア55の軸方向の移動を安定させることができる。
【0087】
磁気絞り部56は、例えば非磁性部材により略円筒状に形成されている。磁気絞り部56の内径および外径は、第3筒部513の内径および外径と略同じである。磁気絞り部56は、第3筒部513と略同軸となるよう筒部材51に対し加圧室200とは反対側に設けられている。磁気絞り部56と第3筒部513とは、例えば溶接により接合されている。より具体的には、磁気絞り部56と筒部材51とが溶接により溶融し冷え固まることによって形成された溶接部581が、磁気絞り部56と筒部材51とを接続している。ここで、可動コア55の加圧室200とは反対側の端面551は、磁気絞り部56の内側に位置している。
【0088】
固定コア57は、例えば磁性材料により形成されている。固定コア57は、固定コア小径部573、固定コア大径部574を有している。固定コア小径部573は、略円柱状に形成されている。固定コア小径部573の外径は、磁気絞り部56の内径よりやや大きい。固定コア小径部573は、磁気絞り部56に圧入されている。
【0089】
固定コア大径部574は、略円柱状に形成され、固定コア小径部573と同軸となるよう軸方向の端部が固定コア小径部573の端部に接続され、固定コア小径部573と一体に形成されている。固定コア大径部574の外径は、固定コア小径部573の外径より大きく、磁気絞り部56の外径と略同じである。
【0090】
固定コア57は、固定コア小径部573が磁気絞り部56の筒部材51とは反対側の端部の内側に位置するよう筒部材51の加圧室200とは反対側に設けられている。固定コア57と磁気絞り部56とは、例えば溶接により接合されている。より具体的には、固定コア57と磁気絞り部56とが溶接により溶融し冷え固まることによって形成された溶接部582が、固定コア57と磁気絞り部56とを接続している。ここで、固定コア小径部573と固定コア大径部574との間の環状の段差面は、磁気絞り部56の筒部材51とは反対側の端面に当接している。また、固定コア57の加圧室200側の端面571は、磁気絞り部56の筒部材51とは反対側の端面に対し加圧室200側に位置している。また、固定コア57は、磁気絞り部56と略同軸となるよう設けられている。スプリング54がニードル53を加圧室200側に付勢し弁部材40が弁座310から離間した状態では、固定コア57の加圧室200側の端面571と可動コア55の加圧室200とは反対側の端面551との間に隙間が形成される。
【0091】
このように、固定コア57は、ニードル53の軸方向において可動コア55に対向するよう設けられている。
【0092】
本実施形態では、筒部材51、ガイド部材52、スプリング54、ニードル53、可動コア55、磁気絞り部56、固定コア57は、予め一体に組み付けられて第1電磁駆動部501を構成するようサブアッセンブリ化されている(
図3参照)。
【0093】
図2に示すように、「コイルアッセンブリ」としての第2電磁駆動部502は、コイルサブアッセンブリ650、「第1ヨーク」としてのヨーク641、「第2ヨーク」としてのヨーク645、Oリング681等を有している。
【0094】
コイルサブアッセンブリ650は、コネクタ部65、コネクタ部65に設けられたターミナル651、ターミナル651に接続する筒状のコイル60、ターミナル651およびコイル60を覆う「樹脂部」としてのスプール61および基部652を含む。
【0095】
具体的には、コネクタ部65は、樹脂により筒状に形成されている。ターミナル651は、導電性の金属により形成され、一端がコネクタ部65の内側に位置するよう設けられている。
【0096】
コイル60は、巻線を巻き回すことにより筒状に形成され、ターミナル651の他端に接続している。スプール61は、ターミナル651の他端側、ならびに、コイル60の軸方向の両端および径方向内側を覆うよう樹脂により形成されている。なお、コイル60は、スプール61の筒状の部位に巻線を巻き回すことにより筒状に形成されている。
【0097】
基部652は、コイル60の径方向外側、ならびに、スプール61の軸方向の両端を覆うよう樹脂によりコネクタ部65と一体に形成されている。
【0098】
このように、「樹脂部」としてのスプール61および基部652は、ターミナル651の一部およびコイル60を覆っている。
【0099】
ヨーク641は、磁性材料により板状に形成されている。ヨーク641は、ヨーク穴部642を有している。ヨーク穴部642は、ヨーク641を板厚方向に貫くよう略円筒状に形成されている。
【0100】
ヨーク641は、一方の面がコイル60の軸方向における基部652の端面に当接するようコイルサブアッセンブリ650と一体に設けられている。ここで、ヨーク641は、スプール61の内側の円柱状の空間とヨーク穴部642とが同軸となるよう設けられている。
【0101】
ヨーク645は、磁性材料により形成されている。ヨーク645は、ヨーク底部646、ヨーク筒部647、ヨーク切欠き部648を有している。ヨーク底部646は、板状に形成されている。ヨーク筒部647は、ヨーク底部646の外縁部から筒状に延びるようヨーク底部646と一体に形成されている。ヨーク切欠き部648は、ヨーク筒部647の周方向の一部を切り欠くようにして形成されている。
【0102】
ヨーク645は、ヨーク641との間にコイルサブアッセンブリ650を挟みつつ、ヨーク筒部647のヨーク底部646とは反対側の端部がヨーク641の一方の面の外縁部に当接した状態で、ヨーク641およびコイルサブアッセンブリ650と一体に設けられている。ヨーク筒部647の端部とヨーク641とは、例えば溶接により接合されている。より具体的には、ヨーク筒部647とヨーク641とが溶接により溶融し冷え固まることによって形成された溶接部649が、ヨーク筒部647とヨーク641とを接続している。
【0103】
ここで、コネクタ部65は、ヨーク切欠き部648に対しヨーク645の径方向外側に位置している。ヨーク底部646のヨーク641側の面は、基部652のヨーク641とは反対側の面に当接している。
【0104】
Oリング681は、例えばゴム等の弾性部材、すなわち、弾性率が所定値以下の樹脂材料により環状に形成されている。Oリング681は、コイル60と概ね同軸となるようスプール61とヨーク底部646との間に設けられている。Oリング681は、スプール61とヨーク底部646とに挟まれ、軸方向に圧縮されている。これにより、スプール61とヨーク底部646との間が液密に保たれ、第2電磁駆動部502の外部からヨーク切欠き部648を経由してスプール61の内側の空間へ水等が侵入するのを抑制できる。
【0105】
電磁駆動部500は、
図3に示す「ソレノイドアッセンブリ」としての第1電磁駆動部501と、
図2に示す「コイルアッセンブリ」としての第2電磁駆動部502とを組み付けることにより構成されている。
【0106】
図4に示すように、電磁駆動部500は、「第1接続部」としての溶接部661および「第2接続部」としてのOリング671を有している。
【0107】
「第1接続部」としての溶接部661は、「コイルアッセンブリ」としての第2電磁駆動部502の加圧室200とは反対側において、第2電磁駆動部502と固定コア57とを接続する。
【0108】
より具体的には、第1電磁駆動部501は、固定コア57の加圧室200とは反対側の端面572がヨーク底部646の加圧室200側の面に当接するよう設けられている。固定コア57の端面572とヨーク底部646とは、溶接により接合されている。
【0109】
さらに詳細には、ヨーク底部646と固定コア57とが溶接により溶融し冷え固まることによって形成された溶接部661が、ヨーク底部646と固定コア57とを接続している。これにより、ヨーク645と固定コア57とは、相対移動不能である。なお、溶接部661は、固定コア57の端面572において、連続する環状、または、断続する環状に形成されている。このように、溶接部661は、第2電磁駆動部502の加圧室200とは反対側において、第2電磁駆動部502のヨーク底部646と固定コア57とを接続している(
図4参照)。
【0110】
「第2接続部」としてのOリング671は、「コイルアッセンブリ」としての第2電磁駆動部502の加圧室200側において、第2電磁駆動部502と筒部材51とを接続する。
【0111】
より具体的には、Oリング671は、筒部材51の第3筒部513と、スプール61の突出部615および基部652との間の略円筒状の空間に設けられている(
図5参照)。
【0112】
<5>Oリング671は、例えばゴム等の弾性部材、すなわち、弾性率が所定値以下の樹脂材料により環状に形成されている。Oリング671は、筒部材51の第3筒部513の外周壁と、スプール61の突出部615および基部652の内周壁とに挟まれ、径方向に圧縮されている。これにより、筒部材51の第3筒部513の外周壁と、スプール61の突出部615および基部652の内周壁との間が液密に保たれている。このように、Oリング671は、第2電磁駆動部502の加圧室200側において、第2電磁駆動部502の「樹脂部」としてのスプール61および基部652と筒部材51とを接続している(
図4参照)。
【0113】
本実施形態では、筒部材51の第2筒部512の外径は、ヨーク641のヨーク穴部642の内径より小さい。そのため、筒部材51は、ヨーク穴部642に圧入されておらず、筒部材51の周方向の少なくとも一部において第2筒部512とヨーク穴部642との間に隙間が形成されている。
【0114】
また、本実施形態では、筒部材51の第1筒部511と第2筒部512との間の環状の段差面517とヨーク641の加圧室200側の面とは離間している(
図5参照)。そのため、筒部材51の軸方向においてヨーク641と筒部材51の段差面517との間には、環状の隙間が形成されている。
【0115】
また、磁気絞り部56および固定コア大径部574の外周壁とスプール61の内周壁との間には、略円筒状の隙間が形成されている。
【0116】
上記構成により、「コイルアッセンブリ」としての第2電磁駆動部502の加圧室200側は、筒部材51の径方向において、弾性部材からなるOリング671を介して筒部材51に支持されている。これにより、エンジン1の振動および高圧ポンプ10作動時の振動が、筒部材51を経由して第2電磁駆動部502に伝達するのを効果的に抑制できる。
【0117】
コネクタ部65には、ハーネス6が接続される。これにより、ターミナル651とハーネス6のメス端子とが電気的に接続し、ハーネス6およびターミナル651を経由してコイル60に電力が供給される。
【0118】
ターミナル651とハーネス6のメス端子とが接続した状態で、「コイルアッセンブリ」としての第2電磁駆動部502が振動すると、ターミナル651とハーネス6のメス端子とが摺動し摩耗するおそれがある。
【0119】
図4に示すように、コイル60へ通電すると、磁気絞り部56を避けるようにして、固定コア57、ヨーク底部646、ヨーク筒部647、ヨーク641、第2筒部512、可動コア55を通る磁気回路Mc1が形成される。これにより、固定コア57と可動コア55との間に吸引力が生じ、可動コア55は、スプリング54の付勢力に抗してニードル53とともに固定コア57側へ移動する。その結果、弁部材40は、スプリング39の付勢力によりシート部材31側へ移動し、閉弁する。
【0120】
このように、ニードル53は、一端が弁部材40と協働する。
【0121】
上述のように、「第1ヨーク」としてのヨーク641は、コイル60への通電により、コイル60の軸方向においてコイル60に対し加圧室200側に磁気回路Mc1を形成可能である。また、「第2ヨーク」としてのヨーク645は、コイル60への通電により、コイル60の軸方向においてコイル60に対し加圧室200とは反対側に磁気回路Mc1を形成可能である。
【0122】
<2>
図5に示すように、筒部材51および「第1ヨーク」としてのヨーク641は、筒部材51の径方向において隣接する筒部材51の第2筒部512の一部とヨーク641の一部とにより、磁気回路Mc1が通過する磁気通路部505を形成している。「第2接続部」としてのOリング671は、磁気通路部505に対しコイル60側に設けられている。
【0123】
これにより、電磁駆動部500の外部から筒部材51の第2筒部512とヨーク641のヨーク穴部642との間を経由してスプール61の内側へ水等が侵入するのを抑制できる。
【0124】
<3>
図5に示すように、「第1ヨーク」としてのヨーク641は、コイル60の軸方向においてコイルサブアッセンブリ650の基部652と対向する対向部643を有している。「第2接続部」としてのOリング671は、対向部643に対しコイル60側に設けられている。より詳細には、Oリング671は、対向部643を通りコイル60の軸に直交する仮想平面に対しコイル60側に設けられている。
【0125】
これにより、電磁駆動部500の外部からヨーク切欠き部648およびコイルサブアッセンブリ650の基部652と対向部643との間を経由してスプール61の内側へ水等が侵入するのを抑制できる。
【0126】
次に、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付け方法について説明する。
【0127】
図3に示すように、まず、サブアッセンブリ化された第1電磁駆動部501の筒部材51の第3筒部513の径方向外側にOリング671を設ける。
【0128】
続いて、Oリング671を設けた第1電磁駆動部501の固定コア57を、サブアッセンブリ化された第2電磁駆動部502のヨーク穴部642およびスプール61の内側へ挿入する。
【0129】
続いて、固定コア57の端面572とヨーク底部646とを当接させ、固定コア57とヨーク底部646とを溶接し溶接部661を形成する(
図4参照)。これにより、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付けが完了する。
【0130】
コイル60に通電されていないとき、弁部材40は開弁しており、燃料室260は、加圧室200に連通した状態である。このとき、プランジャ11が加圧室200とは反対側に移動すると、加圧室200の容積が増大し、燃料室260内の燃料は、穴部515を経由して第1筒部511の内側へ流れ、燃料が吸入穴232を経由して加圧室200に吸入される。さらに、弁部材40が開弁した状態で、プランジャ11が加圧室200側に移動すると、加圧室200の容積が減少し、加圧室200内の燃料は、吸入穴232を経由して弁部材40側に流れる。
【0131】
プランジャ11が加圧室200側に移動しているとき、コイル60に通電されると、弁部材40が閉弁し、燃料室260と加圧室200との間の燃料の流れが遮断される。弁部材40が閉弁した状態で、プランジャ11が加圧室200側にさらに移動すると、加圧室200の容積がさらに減少し、加圧室200内の燃料が加圧される。
【0132】
このように、プランジャ11が加圧室200側に移動している任意のタイミングで、電磁駆動部500により弁部材40を閉弁することにより、加圧室200で加圧する燃料の量が調整される。本実施形態では、吸入弁部300と電磁駆動部500とは、ノーマリーオープンタイプの弁装置を構成している。
【0133】
図1に示すように、吐出通路部700は、上ハウジング21の吐出穴部214からカバー26のカバー穴部267を経由してカバー外周壁の径方向外側へ突出するよう設けられている。
【0134】
吐出通路部700は、吐出ジョイント70、吐出弁75、リリーフ弁91等を有している。
【0135】
吐出ジョイント70は、例えばステンレス等の金属により略円筒状に形成されている。吐出ジョイント70の一方の端部から他方の端部側へ所定距離離れた部位の外周壁には、ねじ山が形成されている。上ハウジング21の吐出穴部214の内周壁には、吐出ジョイント70の前記ねじ山に対応するねじ溝が形成されている。吐出ジョイント70は、前記ねじ山が上ハウジング21の前記ねじ溝にねじ結合するよう設けられている。
【0136】
吐出ジョイント70は、カバー26のカバー穴部267の内側に設けられている。吐出ジョイント70は、加圧室200側の端部がカバー筒部261の内側において吐出穴部214の内側、すなわち、吐出通路217に位置し、加圧室200とは反対側の端部がカバー筒部261の外側に位置している。
【0137】
吐出ジョイント70は、内側に吐出通路705を形成している。吐出通路705には、加圧室200から吐出された燃料が流れる。ここで、吐出ジョイント70は、「吐出通路形成部」に対応している。
【0138】
カバー26の外側において吐出ジョイント70の径方向外側には、溶接リング709が設けられている。溶接リング709は、例えば金属により略円筒状に形成されている。溶接リング709は、加圧室200側の端部が径方向外側に拡がるよう形成され、カバー外周壁のカバー穴部267の周囲に当接している。溶接リング709は、加圧室200側の端部が周方向の全範囲に亘りカバー外周壁に溶接され、加圧室200とは反対側の部位が周方向の全範囲に亘り吐出ジョイント70の外周壁に溶接されている。これにより、燃料室260の燃料がカバー穴部267と吐出ジョイント70の外周壁との間の隙間を経由してカバー26の外部に漏れることが抑制されている。
【0139】
吐出ジョイント70の加圧室200とは反対側の端部には、高圧燃料配管8が接続される。これにより、供給燃料配管から高圧ポンプ10の供給通路部を経由して燃料室260に流入した燃料は、加圧室200で加圧され、吐出ジョイント70の内側の吐出通路705を経由して高圧燃料配管8に吐出される。高圧燃料配管8に吐出された高圧の燃料は、高圧燃料配管8を経由して燃料レールに供給される。
【0140】
吐出弁75およびリリーフ弁91は、吐出ジョイント70の内側の吐出通路705に設けられている。
【0141】
吐出弁75は、吐出通路705の吐出弁75に対し加圧室200側の燃料と高圧燃料配管8側の燃料との差圧が所定値以上になると開弁し、吐出通路705における燃料の流れを許容する。一方、吐出弁75は、吐出通路705の吐出弁75に対し加圧室200側の燃料と高圧燃料配管8側の燃料との差圧が所定値より小さくなると閉弁し、吐出通路705における燃料の流れを規制する。
【0142】
リリーフ弁91は、吐出通路705のリリーフ弁91に対し高圧燃料配管8側の燃料と加圧室200側の燃料との差圧が所定値以上になると開弁し、吐出通路705における燃料の流れを許容する。一方、リリーフ弁91は、吐出通路705のリリーフ弁91に対し高圧燃料配管8側の燃料と加圧室200側の燃料との差圧が所定値より小さくなると閉弁し、吐出通路705における燃料の流れを規制する。
【0143】
吐出通路705のリリーフ弁91に対し高圧燃料配管8側の燃料の圧力が異常な値にまで上昇すると、リリーフ弁91は、開弁する。そのため、吐出通路705のリリーフ弁91に対し高圧燃料配管8側の燃料は、加圧室200側に戻される。このようなリリーフ弁91の作動により、高圧燃料配管8側の燃料の圧力が異常な値になるのを抑制することができる。
【0144】
本実施形態では、高圧ポンプ10は、パルセーションダンパ15をさらに備えている。パルセーションダンパ15は、例えば円形皿状の金属薄板を2枚合わせ、外縁部を溶接により接合することによって形成されている。パルセーションダンパ15の内側には、窒素またはアルゴン等、所定圧の気体が封入されている。パルセーションダンパ15は、燃料室260のカバー底部262と上ハウジング21との間に設けられている。
【0145】
次に、高圧ポンプ10のエンジン1への取り付けについて説明する。
【0146】
本実施形態では、高圧ポンプ10は、ホルダ支持部24がエンジンヘッド2の取付穴部3に挿入されるようにしてエンジン1に取り付けられる(
図1参照)。高圧ポンプ10は、下ハウジング22がボルトによりエンジンヘッド2に固定されることにより、エンジン1に固定される。ここで、高圧ポンプ10は、シリンダ23の軸Ax1が鉛直方向に沿うような姿勢でエンジン1に取り付けられる。
【0147】
次に、本実施形態の高圧ポンプ10の作動について説明する。
【0148】
「吸入工程」
電磁駆動部500のコイル60への電力の供給が停止されているとき、弁部材40は、スプリング54およびニードル53により加圧室200側へ付勢されている。よって、弁部材40は、弁座310から離間、すなわち、開弁している。この状態で、プランジャ11が加圧室200とは反対側に移動すると、加圧室200の容積が増大し、弁座310に対し加圧室200とは反対側すなわち燃料室260側の燃料は、連通路32を経由して加圧室200側に吸入される。
【0149】
「調量工程」
弁部材40が開弁した状態で、プランジャ11が加圧室200側に移動すると、加圧室200の容積が減少し、弁座310に対し加圧室200側の燃料は、弁座310に対し燃料室260側に戻される。調量工程の途中、コイル60に電力を供給すると、可動コア55がニードル53とともに固定コア57側に吸引され、弁部材40がスプリング39に付勢され弁座310に当接し閉弁する。プランジャ11が加圧室200側に移動するとき、弁部材40を閉弁することにより、加圧室200側から燃料室260側に戻される燃料の量が調整される。その結果、加圧室200で加圧される燃料の量が決定される。弁部材40が閉弁することにより、燃料を加圧室200から燃料室260側に戻す調量工程は終了する。
【0150】
なお、燃料噴射弁が燃料を噴射しないとき、すなわち燃料カット時には、コイル60に通電せず、高圧ポンプ10からの燃料の吐出は0である。このとき、弁部材40は開弁した状態のため、加圧室200の燃料は、プランジャ11の往復移動に伴い、加圧室200と燃料室260側との間を行き来する。
【0151】
「加圧工程」
弁部材40が閉弁した状態でプランジャ11が加圧室200側にさらに移動すると、加圧室200の容積が減少し、加圧室200内の燃料は、圧縮され加圧される。加圧室200内の燃料の圧力が吐出弁75の開弁圧以上になると、吐出弁75が開弁し、燃料が加圧室200から高圧燃料配管8側、すなわち、燃料レール側に吐出される。
【0152】
コイル60への電力の供給が停止され、プランジャ11が加圧室200とは反対側に移動すると、弁部材40は再び開弁する。これにより、燃料を加圧する加圧工程が終了し、燃料室260側から加圧室200側に燃料が吸入される吸入工程が再開する。
【0153】
上記の「吸入工程」、「調量工程」、「加圧工程」を繰り返すことにより、高圧ポンプ10は、加圧室200に吸入した燃料室260内の燃料を加圧、吐出し、燃料レールに供給する。高圧ポンプ10から燃料レールへの燃料の供給量は、電磁駆動部500のコイル60への電力の供給タイミング等を制御することにより調節される。
【0154】
なお、上述の「吸入工程」、「調量工程」等、弁部材40が開弁しているときにプランジャ11が往復移動すると、燃料室260内の燃料に、加圧室200の容積の増減に起因する圧力脈動が生じることがある。燃料室260に設けられたパルセーションダンパ15は、燃料室260内の燃圧の変化に応じて弾性変形することで、燃料室260内の燃料の圧力脈動を低減可能である。
【0155】
また、プランジャ11が往復移動しているとき、可変容積室201の容積の増減に起因する圧力脈動が生じることがある。この場合も、パルセーションダンパ15は、燃料室260内の燃圧の変化に応じて弾性変形することで、燃料室260内の燃料の圧力脈動を低減可能である。
【0156】
なお、プランジャ11が下降するときには、プランジャ11の下降速度に追随して可変容積室201の容積が減少し、燃料室260側に燃料が押し出される。その結果、プランジャ11が下降するときに燃料室260の燃料が加圧室200に容易に導入される。また、プランジャ11が上昇するときには、上述した可変容積室201の容積が増大するので、調量時、加圧室200から戻された燃料が可変容積室201に容易に排出される。上記の働きのため、燃料室260の脈動が低減される。
【0157】
また、プランジャ11が往復移動すると可変容積室201の容積が増減するため、燃料室260と環状空間202、可変容積室201との間で燃料が行き来する。これにより、プランジャ11とシリンダ23との摺動による熱、および、加圧室200での燃料の加圧による熱で高温になったシリンダ23およびプランジャ11を、低温の燃料により冷却することができる。これにより、プランジャ11およびシリンダ23の焼き付きを抑制することができる。
【0158】
また、加圧室200で高圧となった燃料の一部は、プランジャ11とシリンダ23とのクリアランスを経由して可変容積室201に流入する。これにより、プランジャ11とシリンダ23との間に油膜が形成され、プランジャ11およびシリンダ23の焼き付きを効果的に抑制することができる。なお、加圧室200から可変容積室201に流入した燃料は、環状空間202を経由して燃料室260に戻る。
【0159】
本実施形態では、高圧ポンプ10は、エンジン1に取り付けられて使用される。そのため、エンジン1の振動および高圧ポンプ10作動時の振動により高圧ポンプ10の下ハウジング22、上ハウジング21等が振動し、上ハウジング21に接続する第1電磁駆動部501の筒部材51も振動する。その結果、筒部材51を介して上ハウジング21に接続する第2電磁駆動部502に振動が伝達し、コイルサブアッセンブリ650のターミナル651が振動するおそれがある。
【0160】
しかしながら、本実施形態では、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付け時、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との間に「第2接続部」としてのOリング671を挟み、組み付け後に隙間ができないよう密着させる。また、組み付け後においては、「第1接続部」としての溶接部661により第2電磁駆動部502のヨーク645と固定コア57とを接続するとともに、「第2接続部」としてのOリング671により第2電磁駆動部502のコイルサブアッセンブリ650と筒部材51とを接続している。そのため、エンジン1の振動および高圧ポンプ10作動時の振動によるターミナル651の振動を抑制できる。これにより、ターミナル651の摩耗を抑制し、導通不良を抑制できる。
【0161】
また、本実施形態では、第2電磁駆動部502の外部に露出するヨーク641およびヨーク645は、耐食性が比較的高い材料により形成されている。また、Oリング681、「第1接続部」としての溶接部661、および、「第2接続部」としてのOリング671により、外部から固定コア57側へ水等が侵入するのを抑制している。したがって、ヨーク641、ヨーク645および固定コア57の耐食性を向上できる。
【0162】
また、本実施形態では、「第2接続部」としてのOリング671は、コイルサブアッセンブリ650と筒部材51との間に形成された環状の空間に設けられている。そのため、磁気経路としてのヨーク641、ヨーク645に関する変更が不要となり、吸引力への影響を抑制できる。
【0163】
また、本実施形態では、コイルサブアッセンブリ650と筒部材51との間の環状の空間を、「第2接続部」としてのOリング671で埋めることで、電磁駆動部500内部への水等の侵入を抑制し、固定コア57等の耐食性を向上できる。
【0164】
以上説明したように、<1>本実施形態では、「第1接続部」としての溶接部661は、「コイルアッセンブリ」としての第2電磁駆動部502の加圧室200とは反対側において、第2電磁駆動部502と固定コア57とを接続する。「第2接続部」としてのOリング671は、第2電磁駆動部502の加圧室200側において、第2電磁駆動部502と筒部材51とを接続する。
【0165】
本実施形態では、第2電磁駆動部502は、加圧室200とは反対側が溶接部661を介して固定コア57に支持され、加圧室200側がOリング671を介して筒部材51に支持されている。つまり、第2電磁駆動部502は、軸方向の両端が他の部位(溶接部661、Oリング671)により支持されている。
【0166】
そのため、高圧ポンプ10がエンジン1に取り付けられた場合において、エンジン1の振動および高圧ポンプ10作動時の振動による第2電磁駆動部502の振動を抑制できる。これにより、ターミナル651の振動および摩耗を抑制し、導通不良を抑制できる。その結果、吸入弁部300の作動不良を抑制し、高圧ポンプ10の吐出不良を抑制できる。
【0167】
また、<2>本実施形態では、筒部材51および「第1ヨーク」としてのヨーク641は、筒部材51の径方向において隣接する筒部材51の第2筒部512の一部とヨーク641の一部とにより磁気通路部505を形成している。「第2接続部」としてのOリング671は、磁気通路部505に対しコイル60側に設けられている。
【0168】
これにより、磁気回路の断面積を確保しつつ、第2電磁駆動部502の振動を効果的に抑制できる。また、電磁駆動部500の外部から筒部材51の第2筒部512とヨーク641のヨーク穴部642との間を経由してスプール61の内側へ水等が侵入するのを抑制できる。その結果、固定コア57の腐食を抑制できる。
【0169】
また、<3>本実施形態では、「第1ヨーク」としてのヨーク641は、コイル60の軸方向においてコイルサブアッセンブリ650の基部652と対向する対向部643を有している。「第2接続部」としてのOリング671は、対向部643に対しコイル60側に設けられている
【0170】
これにより、電磁駆動部500の外部からヨーク切欠き部648およびコイルサブアッセンブリ650の基部652と対向部643との間を経由してスプール61の内側へ水等が侵入するのを抑制できる。その結果、固定コア57の腐食を効果的に抑制できる。
【0171】
また、<5>本実施形態では、「第2接続部」としてのOリング671は、弾性部材により環状に形成されている。
【0172】
そのため、エンジン1の振動および高圧ポンプ10作動時の振動による第2電磁駆動部502の振動をより効果的に抑制できる。また、Oリング671により、第2電磁駆動部502と筒部材51との間を液密に保ち、内部の固定コア57等の腐食を抑制できる。さらに、Oリング671により、電磁駆動部500の作動音を低減できる。
【0173】
(第2実施形態)
第2実施形態による高圧ポンプの一部を
図6に示す。第2実施形態は、第2接続部等の構成が第1実施形態と異なる。
【0174】
本実施形態では、筒部材51の第3筒部513の第2筒部512側の外周壁は、第2筒部512側から磁気絞り部56側へ向かうに従い筒部材51の軸に近付くようテーパ状に形成されている。
【0175】
スプール61の突出部615の内周壁は、加圧室200側から加圧室200とは反対側へ向かうに従いスプール61の軸に近付くようテーパ状に形成されている。
【0176】
本実施形態は、「第2接続部」としてコーティング部672を備えている。コーティング部672は、例えば接着剤等の弾性部材、すなわち、弾性率が所定値以下の樹脂材料からなり、筒部材51の第3筒部513、磁気絞り部56、固定コア57の固定コア大径部574の外周壁を周方向の全範囲に亘り覆うよう筒状に形成されている。
【0177】
コーティング部672の外周壁は、スプール61および基部652の内周壁に接している。これにより、コーティング部672は、「コイルアッセンブリ」としての第2電磁駆動部502のスプール61および基部652と筒部材51、磁気絞り部56および固定コア57とを接続している。よって、コーティング部672は、「コイルアッセンブリ」としての第2電磁駆動部502の加圧室200側において、スプール61および基部652と筒部材51とを接続している。
【0178】
次に、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付け方法について説明する。
【0179】
まず、サブアッセンブリ化された第1電磁駆動部501の筒部材51の第3筒部513、磁気絞り部56、固定コア57の固定コア大径部574の外周壁を周方向の全範囲に亘り覆うようコーティング部672を設ける。なお、この時点では、コーティング部672は硬化していない。
【0180】
続いて、コーティング部672を設けた第1電磁駆動部501の固定コア57を、サブアッセンブリ化された第2電磁駆動部502のヨーク穴部642およびスプール61の内側へ挿入する。なお、この時点でも、コーティング部672は硬化しておらず、コーティング部672は、スプール61および基部652の内周壁に密着する。
【0181】
続いて、固定コア57の端面572とヨーク底部646とを当接させ、固定コア57とヨーク底部646とを溶接し溶接部661を形成する。これにより、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付けが完了する。
【0182】
なお、第1電磁駆動部501の固定コア57を第2電磁駆動部502に挿入して所定時間経過すると、湿気によりコーティング部672が硬化する。本実施形態では、コーティング部672は、硬化した後も弾性を有する材料により形成されている。
【0183】
本実施形態では、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付け時、第1電磁駆動部501の筒部材51、磁気絞り部56および固定コア57の外周壁に、樹脂からなるコーティング部672によりコーティングを施し、組み付け後に第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との間に隙間ができないよう密着させる。また、組み付け後においては、「第1接続部」としての溶接部661により第2電磁駆動部502のヨーク645と固定コア57とを接続するとともに、「第2接続部」としてのコーティング部672により第2電磁駆動部502のコイルサブアッセンブリ650と筒部材51、磁気絞り部56および固定コア57とを接続している。そのため、エンジン1の振動および高圧ポンプ10作動時の振動によるターミナル651の振動を抑制できる。これにより、ターミナル651の摩耗を抑制し、導通不良を抑制できる。
【0184】
また、本実施形態では、「第2接続部」としてのコーティング部672は、コイルサブアッセンブリ650と筒部材51、磁気絞り部56および固定コア57との間に形成された筒状の空間に設けられている。そのため、磁気経路としてのヨーク641、ヨーク645に関する変更が不要となり、吸引力への影響を抑制できる。
【0185】
また、本実施形態では、コイルサブアッセンブリ650と筒部材51、磁気絞り部56および固定コア57との間の筒状の空間を、「第2接続部」としてのコーティング部672で埋めることで、電磁駆動部500内部への水等の侵入を抑制し、固定コア57等の耐食性を向上できる。
【0186】
また、本実施形態では、「第2接続部」としてのコーティング部672が筒状に形成されているため、コーティング部672と第2電磁駆動部502のコイルサブアッセンブリ650および第1電磁駆動部501の筒部材51等との接触面積を容易に大きくできる。そのため、エンジン1の振動および高圧ポンプ10作動時の振動によるターミナル651の振動をより効果的に抑制できる。
【0187】
以上説明したように、<1>本実施形態では、「第2接続部」としてのコーティング部672は、第2電磁駆動部502の加圧室200側において、第2電磁駆動部502と筒部材51とを接続する。
【0188】
そのため、第1実施形態と同様、ターミナル651の振動および摩耗を抑制し、導通不良を抑制できる。その結果、吸入弁部300の作動不良を抑制し、高圧ポンプ10の吐出不良を抑制できる。
【0189】
また、<2>本実施形態では、「第2接続部」としてのコーティング部672の一部は、磁気通路部505に対しコイル60側に設けられている。
【0190】
また、<3>本実施形態では、「第2接続部」としてのコーティング部672の一部は、対向部643に対しコイル60側に設けられている。
【0191】
そのため、第1実施形態と同様、磁気回路の断面積を確保しつつ、第2電磁駆動部502の振動を効果的に抑制できる。また、電磁駆動部500の外部からスプール61の内側へ水等が侵入するのを抑制できる。その結果、固定コア57の腐食を効果的に抑制できる。
【0192】
また、<5>本実施形態では、「第2接続部」としてのコーティング部672は、弾性部材により筒状、すなわち、環状に形成されている。
【0193】
そのため、第1実施形態と同様、エンジン1の振動および高圧ポンプ10作動時の振動による第2電磁駆動部502の振動をより効果的に抑制できる。また、コーティング部672により、第2電磁駆動部502と筒部材51との間を液密に保ち、内部の固定コア57等の腐食を抑制できる。さらに、コーティング部672により、電磁駆動部500の作動音を低減できる。
【0194】
(第3実施形態)
第3実施形態による高圧ポンプの一部を
図7に示す。第3実施形態は、第2接続部等の構成が第2実施形態と異なる。
【0195】
本実施形態は、「第2接続部」として板ゴム673を備えている。
【0196】
<5>板ゴム673は、例えばゴム等の弾性部材、すなわち、弾性率が所定値以下の樹脂材料により環状の板状に形成されている。
【0197】
<1>板ゴム673は、第2電磁駆動部502の加圧室200側において、第2電磁駆動部502と筒部材51とを接続する。
【0198】
<4>板ゴム673は、筒部材51の軸方向においてヨーク641と筒部材51との間に設けられている。
【0199】
より具体的には、板ゴム673の内径は、筒部材51の第2筒部512の外径と略同じである。板ゴム673は、筒部材51の第2筒部512の径方向外側において、段差面517とヨーク641の加圧室200側の面との間に設けられている。
【0200】
板ゴム673は、段差面517とヨーク641の加圧室200側の面とに挟まれ、軸方向に圧縮されている。これにより、筒部材51の段差面517とヨーク641との間が液密に保たれ、電磁駆動部500の外部から段差面517とヨーク641との間を経由して電磁駆動部500の内側の空間へ水等が侵入するのを抑制できる。
【0201】
次に、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付け方法について説明する。
【0202】
まず、サブアッセンブリ化された第1電磁駆動部501の筒部材51の第2筒部512の径方向外側に板ゴム673を設ける。
【0203】
続いて、板ゴム673を設けた第1電磁駆動部501の固定コア57を、サブアッセンブリ化された第2電磁駆動部502のヨーク穴部642およびスプール61の内側へ挿入する。
【0204】
続いて、固定コア57の端面572とヨーク底部646とを当接させ、固定コア57とヨーク底部646とを溶接し溶接部661を形成する。これにより、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付けが完了する。
【0205】
なお、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付け後、板ゴム673は、軸方向に圧縮されている。
【0206】
本実施形態では、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付け時、第1電磁駆動部501の筒部材51の段差面517と第2電磁駆動部502のヨーク641との間に「第2接続部」としての板ゴム673を挟み、筒部材51の軸方向において隙間ができないよう密着させる。また、組み付け後においては、「第1接続部」としての溶接部661により第2電磁駆動部502のヨーク645と固定コア57とを接続するとともに、「第2接続部」としての板ゴム673により第2電磁駆動部502のヨーク641と筒部材51とを接続している。そのため、エンジン1の振動および高圧ポンプ10作動時の振動によるターミナル651の振動を抑制できる。これにより、ターミナル651の摩耗を抑制し、導通不良を抑制できる。
【0207】
また、本実施形態では、「第2接続部」としての板ゴム673は、ヨーク641と筒部材51の段差面517との間に形成された環状の隙間に設けられている。そのため、磁気経路としてのヨーク641、ヨーク645に関する変更が不要となり、吸引力への影響を抑制できる。
【0208】
また、本実施形態では、ヨーク641と筒部材51の段差面517との間の環状の隙間を、「第2接続部」としての板ゴム673で埋めることで、電磁駆動部500内部への水等の侵入を抑制し、固定コア57等の耐食性を向上できる。
【0209】
また、本実施形態では、「第2接続部」としての板ゴム673は、外部から視認可能な位置に設けられている。そのため、欠品および工程抜けの発生を抑制できる。
【0210】
以上説明したように、<1>本実施形態では、「第2接続部」としての板ゴム673は、第2電磁駆動部502の加圧室200側において、第2電磁駆動部502と筒部材51とを接続する。
【0211】
そのため、第2実施形態と同様、ターミナル651の振動および摩耗を抑制し、導通不良を抑制できる。その結果、吸入弁部300の作動不良を抑制し、高圧ポンプ10の吐出不良を抑制できる。
【0212】
また、<4>本実施形態では、「第2接続部」としての板ゴム673は、筒部材51の軸方向において、「第1ヨーク」としてのヨーク641と筒部材51との間に設けられている。
【0213】
これにより、磁気回路の断面積を確保しつつ、第2電磁駆動部502の振動を効果的に抑制できる。また、電磁駆動部500の外部から電磁駆動部500の内側へ水等が侵入するのを抑制できる。その結果、固定コア57等の腐食を抑制できる。
【0214】
また、<5>本実施形態では、「第2接続部」としての板ゴム673は、弾性部材により環状に形成されている。
【0215】
そのため、第2実施形態と同様、エンジン1の振動および高圧ポンプ10作動時の振動による第2電磁駆動部502の振動をより効果的に抑制できる。また、板ゴム673により、第2電磁駆動部502と筒部材51との間を液密に保ち、内部の固定コア57等の腐食を抑制できる。さらに、板ゴム673により、電磁駆動部500の作動音を低減できる。
【0216】
(第4実施形態)
第4実施形態による高圧ポンプの一部を
図8に示す。第4実施形態は、第2接続部等の構成が第3実施形態と異なる。
【0217】
本実施形態は、「第2接続部」として当接面674を備えている。
【0218】
<4>当接面674は、筒部材51の軸方向においてヨーク641と筒部材51との間に設けられている。
【0219】
より具体的には、当接面674は、筒部材51の軸方向におけるヨーク641と筒部材51の段差面517との当接面であって環状に形成されている。
【0220】
より詳細には、当接面674は、筒部材51の軸方向における、ヨーク641の加圧室200側の面と筒部材51の段差面517との当接面であって、環状の平面状に形成されている。
【0221】
当接面674は、ヨーク641の加圧室200側の面と筒部材51の段差面517とを接続している。
【0222】
つまり、<1>当接面674は、第2電磁駆動部502の加圧室200側において、第2電磁駆動部502と筒部材51とを接続する。
【0223】
当接面674には、筒部材51の軸方向に沿う所定の大きさの軸力が作用している。これにより、筒部材51の段差面517とヨーク641との間が液密に保たれ、電磁駆動部500の外部から段差面517とヨーク641との間を経由して電磁駆動部500の内側の空間へ水等が侵入するのを抑制できる。
【0224】
次に、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付け方法について説明する。
【0225】
まず、サブアッセンブリ化された第1電磁駆動部501の固定コア57を、サブアッセンブリ化された第2電磁駆動部502のヨーク穴部642およびスプール61の内側へ挿入する。
【0226】
続いて、筒部材51の段差面517とヨーク641の加圧室200側の面とを当接させ、第1電磁駆動部501を第2電磁駆動部502へさらに押し込む。
【0227】
続いて、固定コア57の端面572とヨーク底部646とを当接させ、固定コア57とヨーク底部646とを溶接し溶接部661を形成する。これにより、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付けが完了する。
【0228】
なお、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付け後、当接面674には、筒部材51の軸方向に沿う所定の大きさの軸力が作用している。
【0229】
本実施形態では、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付け時、第1電磁駆動部501の筒部材51の段差面517と第2電磁駆動部502のヨーク641とを当接させ、筒部材51の軸方向において隙間ができないよう密着させ、環状の当接面674を形成する。また、組み付け後においては、「第1接続部」としての溶接部661により第2電磁駆動部502のヨーク645と固定コア57とを接続するとともに、「第2接続部」としての当接面674により第2電磁駆動部502のヨーク641と筒部材51とを接続している。そのため、エンジン1の振動および高圧ポンプ10作動時の振動によるターミナル651の振動を抑制できる。これにより、ターミナル651の摩耗を抑制し、導通不良を抑制できる。
【0230】
また、本実施形態では、ヨーク641と筒部材51の段差面517との間の環状の隙間を、「第2接続部」としての当接面674で埋める、すなわち、前記隙間を無くすことで、電磁駆動部500内部への水等の侵入を抑制し、固定コア57等の耐食性を向上できる。
【0231】
また、本実施形態では、第1~3実施形態のように「第2接続部」として別途の部品を必要とせず、部品点数を低減できる。
【0232】
以上説明したように、<1>本実施形態では、「第2接続部」としての当接面674は、第2電磁駆動部502の加圧室200側において、第2電磁駆動部502と筒部材51とを接続する。
【0233】
そのため、第3実施形態と同様、ターミナル651の振動および摩耗を抑制し、導通不良を抑制できる。その結果、吸入弁部300の作動不良を抑制し、高圧ポンプ10の吐出不良を抑制できる。
【0234】
また、<4>本実施形態では、「第2接続部」としての当接面674は、筒部材51の軸方向において、「第1ヨーク」としてのヨーク641と筒部材51との間に設けられている。
【0235】
これにより、磁気回路の断面積を確保しつつ、第2電磁駆動部502の振動を効果的に抑制できる。また、電磁駆動部500の外部から電磁駆動部500の内側へ水等が侵入するのを抑制できる。その結果、固定コア57等の腐食を抑制できる。
【0236】
なお、本実施形態では、「第2接続部」としての当接面674は、筒部材51の軸方向における「第1ヨーク」としてのヨーク641と筒部材51との当接面であって環状に形成されている。
【0237】
そのため、第2電磁駆動部502の振動をより効果的に抑制できる。また、電磁駆動部500の外部から電磁駆動部500の内側へ水等が侵入するのをより効果的に抑制できる。
【0238】
(第5実施形態)
第5実施形態による高圧ポンプの一部を
図9に示す。第5実施形態は、第2接続部等の構成が第3実施形態と異なる。
【0239】
本実施形態では、筒部材51の第2筒部512の外径は、ヨーク641のヨーク穴部642の内径より大きい。筒部材51の第2筒部512は、ヨーク穴部642に圧入されている。
【0240】
本実施形態は、「第2接続部」として当接面675を備えている。
【0241】
<6>当接面675は、筒部材51の径方向におけるヨーク641と筒部材51との当接面であって環状に形成されている。
【0242】
より具体的には、当接面675は、筒部材51の径方向における、ヨーク641のヨーク穴部642の内周壁と筒部材51の第2筒部512の外周壁との当接面であって、筒状に形成されている。
【0243】
当接面675は、ヨーク641のヨーク穴部642の内周壁と筒部材51の第2筒部512の外周壁とを接続している。
【0244】
つまり、<1>当接面675は、第2電磁駆動部502の加圧室200側において、第2電磁駆動部502と筒部材51とを接続する。
【0245】
当接面675には、筒部材51の径方向に沿う所定の大きさの力が作用している。これにより、筒部材51の第2筒部512の外周壁とヨーク641のヨーク穴部642の内周壁との間が液密に保たれ、電磁駆動部500の外部から筒部材51とヨーク641との間を経由して電磁駆動部500の内側の空間へ水等が侵入するのを抑制できる。
【0246】
次に、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付け方法について説明する。
【0247】
まず、サブアッセンブリ化された第1電磁駆動部501の固定コア57を、サブアッセンブリ化された第2電磁駆動部502のヨーク穴部642およびスプール61の内側へ挿入する。
【0248】
続いて、筒部材51の第2筒部512の外周壁とヨーク641のヨーク穴部642の内周壁とを圧入により当接および摺動させ、第1電磁駆動部501を第2電磁駆動部502へ押し込む。
【0249】
続いて、固定コア57の端面572とヨーク底部646とを当接させ、固定コア57とヨーク底部646とを溶接し溶接部661を形成する。これにより、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付けが完了する。
【0250】
なお、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付け後、当接面675には、筒部材51の径方向に沿う所定の大きさの力が作用している。
【0251】
本実施形態では、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付け時、第1電磁駆動部501の筒部材51の第2筒部512を第2電磁駆動部502のヨーク641のヨーク穴部642に圧入し、筒部材51の径方向において第2筒部512の外周壁とヨーク穴部642の内周壁との間に隙間ができないよう密着させ、筒状の当接面675を形成する。また、組み付け後においては、「第1接続部」としての溶接部661により第2電磁駆動部502のヨーク645と固定コア57とを接続するとともに、「第2接続部」としての当接面675により第2電磁駆動部502のヨーク641と筒部材51とを接続している。そのため、エンジン1の振動および高圧ポンプ10作動時の振動によるターミナル651の振動を抑制できる。これにより、ターミナル651の摩耗を抑制し、導通不良を抑制できる。
【0252】
また、本実施形態では、「第2接続部」としての当接面675は、ヨーク641のヨーク穴部642の内周壁と筒部材51の第2筒部512の外周壁との間に形成されている。そのため、磁気経路としてのヨーク641、ヨーク645に関する変更が不要となり、吸引力への影響を抑制できる。
【0253】
また、本実施形態では、ヨーク641のヨーク穴部642と筒部材51の第2筒部512との間の筒状の隙間を、「第2接続部」としての当接面675で埋める、すなわち、前記隙間を無くすことで、電磁駆動部500内部への水等の侵入を抑制し、固定コア57等の耐食性を向上できる。
【0254】
以上説明したように、<1>本実施形態では、「第2接続部」としての当接面675は、第2電磁駆動部502の加圧室200側において、第2電磁駆動部502と筒部材51とを接続する。
【0255】
そのため、第3実施形態と同様、ターミナル651の振動および摩耗を抑制し、導通不良を抑制できる。その結果、吸入弁部300の作動不良を抑制し、高圧ポンプ10の吐出不良を抑制できる。
【0256】
また、<6>本実施形態では、「第2接続部」としての当接面675は、筒部材51の径方向におけるヨーク641と筒部材51との当接面であって環状に形成されている。
【0257】
これにより、磁気回路の断面積を確保しつつ、第2電磁駆動部502の振動を効果的に抑制できる。また、電磁駆動部500の外部から電磁駆動部500の内側へ水等が侵入するのを抑制できる。その結果、固定コア57等の腐食を抑制できる。
【0258】
(第6実施形態)
第6実施形態による高圧ポンプの一部を
図10に示す。第6実施形態は、第2接続部等の構成が第3実施形態と異なる。
【0259】
本実施形態は、「第2接続部」として封止部676を備えている。
【0260】
<5>封止部676は、例えば樹脂等の弾性部材、すなわち、弾性率が所定値以下の樹脂材料により環状に形成されている。
【0261】
<1>封止部676は、第2電磁駆動部502の加圧室200側において、第2電磁駆動部502と筒部材51とを接続する。
【0262】
<4>封止部676は、筒部材51の軸方向においてヨーク641と筒部材51との間に設けられている。
【0263】
より具体的には、封止部676は、筒部材51の第2筒部512の径方向外側において、段差面517とヨーク641の加圧室200側の面との間に設けられている。
【0264】
封止部676は、筒部材51の径方向外側において、段差面517とヨーク641の加圧室200側の面との間の環状の隙間を封止するよう設けられている。これにより、筒部材51の段差面517とヨーク641との間が液密に保たれ、電磁駆動部500の外部から段差面517とヨーク641との間を経由して電磁駆動部500の内側の空間へ水等が侵入するのを抑制できる。
【0265】
次に、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付け方法について説明する。
【0266】
まず、サブアッセンブリ化された第1電磁駆動部501の固定コア57を、サブアッセンブリ化された第2電磁駆動部502のヨーク穴部642およびスプール61の内側へ挿入する。
【0267】
続いて、固定コア57の端面572とヨーク底部646とを当接させ、固定コア57とヨーク底部646とを溶接し溶接部661を形成する。
【0268】
続いて、段差面517とヨーク641の加圧室200側の面との間の環状の隙間を封止部676により封止する。具体的には、溶融した樹脂材料を上記隙間に充填し、冷え固まらせて封止部676を形成する。これにより、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付けが完了する。
【0269】
なお、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付け後、封止部676は、弾性を有している。
【0270】
本実施形態では、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502との組み付け時、第1電磁駆動部501の筒部材51の段差面517と第2電磁駆動部502のヨーク641との間に「第2接続部」としての封止部676を設け、筒部材51の軸方向において隙間ができないよう密着させる。また、組み付け後においては、「第1接続部」としての溶接部661により第2電磁駆動部502のヨーク645と固定コア57とを接続するとともに、「第2接続部」としての封止部676により第2電磁駆動部502のヨーク641と筒部材51とを接続している。そのため、エンジン1の振動および高圧ポンプ10作動時の振動によるターミナル651の振動を抑制できる。これにより、ターミナル651の摩耗を抑制し、導通不良を抑制できる。
【0271】
また、本実施形態では、「第2接続部」としての封止部676は、ヨーク641と筒部材51の段差面517との間に形成された環状の隙間に設けられている。そのため、磁気経路としてのヨーク641、ヨーク645に関する変更が不要となり、吸引力への影響を抑制できる。
【0272】
また、本実施形態では、ヨーク641と筒部材51の段差面517との間の環状の隙間を、「第2接続部」としての封止部676で埋めることで、電磁駆動部500内部への水等の侵入を抑制し、固定コア57等の耐食性を向上できる。
【0273】
また、本実施形態では、「第2接続部」としての封止部676は、外部から視認可能な位置に設けられている。そのため、欠品および工程抜けの発生を抑制できる。
【0274】
以上説明したように、<1>本実施形態では、「第2接続部」としての封止部676は、第2電磁駆動部502の加圧室200側において、第2電磁駆動部502と筒部材51とを接続する。
【0275】
そのため、第3実施形態と同様、ターミナル651の振動および摩耗を抑制し、導通不良を抑制できる。その結果、吸入弁部300の作動不良を抑制し、高圧ポンプ10の吐出不良を抑制できる。
【0276】
また、<4>本実施形態では、「第2接続部」としての封止部676は、筒部材51の軸方向において、「第1ヨーク」としてのヨーク641と筒部材51との間に設けられている。
【0277】
これにより、磁気回路の断面積を確保しつつ、第2電磁駆動部502の振動を効果的に抑制できる。また、電磁駆動部500の外部から電磁駆動部500の内側へ水等が侵入するのを抑制できる。その結果、固定コア57等の腐食を抑制できる。
【0278】
また、<5>本実施形態では、「第2接続部」としての封止部676は、弾性部材により環状に形成されている。
【0279】
そのため、第3実施形態と同様、エンジン1の振動および高圧ポンプ10作動時の振動による第2電磁駆動部502の振動をより効果的に抑制できる。また、封止部676により、第2電磁駆動部502と筒部材51との間を液密に保ち、内部の固定コア57等の腐食を抑制できる。さらに、封止部676により、電磁駆動部500の作動音を低減できる。
【0280】
(第7実施形態)
第7実施形態による高圧ポンプの一部を
図11に示す。第7実施形態は、「第3接続部」をさらに備える点等で第1実施形態と異なる。
【0281】
<7>本実施形態は、「第3接続部」としてのOリング691をさらに備えている。Oリング691は、「第1ヨーク」としてのヨーク641と「樹脂部」としての基部652とを接続する。
【0282】
より具体的には、Oリング691は、ヨーク641に形成されたシール溝部640に設けられている。シール溝部640は、ヨーク641の基部652側の面から環状に凹むようにして形成されている。
【0283】
<8>Oリング691は、例えばゴム等の弾性部材、すなわち、弾性率が所定値以下の樹脂材料により環状に形成されている。Oリング691は、シール溝部640の底面と基部652のヨーク641側の面とに挟まれ、軸方向に圧縮されている。これにより、ヨーク641のシール溝部640と基部652のヨーク641側の面との間が液密に保たれている。
【0284】
以上説明したように、<7>本実施形態では、「第3接続部」としてのOリング691をさらに備えている。Oリング691は、「第1ヨーク」としてのヨーク641と「樹脂部」としての基部652とを接続する。また、<8>本実施形態では、Oリング691は、弾性部材により形成されている。
【0285】
本実施形態では、エンジン1の振動により高圧ポンプ10の上ハウジング21が振動し、上ハウジング21に固定されている電磁駆動部500も振動する。本実施形態では、コイルサブアッセンブリ650の基部652とヨーク641との当接部に形成したシール溝部640に「第3接続部」としてのOリング691を追加で設け、両者に密着させている。そのため、「コイルアッセンブリ」としての第2電磁駆動部502に伝わる振動を低減できる。これにより、ターミナル651の振動および摩耗を抑制し、導通不良を抑制できる。したがって、吸入弁部300の作動不良を抑制し、高圧ポンプ10の吐出不良をより一層抑制できる。
【0286】
また、コイルサブアッセンブリ650の基部652とヨーク641との当接部に隙間が形成されていた場合、外部から第2電磁駆動部502内部の固定コア57等への水の侵入経路となり得る。本実施形態では、コイルサブアッセンブリ650の基部652とヨーク641との当接部を「第3接続部」としてのOリング691で埋めることにより、水の侵入を抑制し、固定コア57等の耐食性をより一層向上できる。
【0287】
(第8実施形態)
第8実施形態による高圧ポンプの一部を
図12に示す。第8実施形態は、「第3接続部」の配置等が第7実施形態と異なる。
【0288】
本実施形態では、ヨーク641にシール溝部640は形成されていない。基部652にはシール溝部653が形成されている。シール溝部653は、基部652のヨーク641側の面から環状に凹むようにして形成されている。「第3接続部」としてのOリング691は、シール溝部653に設けられている。
【0289】
Oリング691は、シール溝部653の底面とヨーク641の基部652側の面とに挟まれ、軸方向に圧縮されている。これにより、基部652のシール溝部653とヨーク641の基部652側の面との間が液密に保たれている。
【0290】
本実施形態では、第7実施形態と同様、「第3接続部」としてのOリング691により、ターミナル651の振動および摩耗を抑制し、導通不良を抑制できる。また、コイルサブアッセンブリ650の基部652とヨーク641との当接部を「第3接続部」としてのOリング691で埋めることにより、水の侵入を抑制できる。
【0291】
また、本実施形態では、第7実施形態と比べ、ヨーク641にシール溝部640を形成する等の磁性材に関する変更がないため、可動コア55の吸引力への影響を抑制できる。
【0292】
(第9実施形態)
第9実施形態による高圧ポンプの一部を
図13に示す。第9実施形態は、「第3接続部」の構成等が第7実施形態と異なる。
【0293】
本実施形態では、ヨーク641にシール溝部640は形成されていない。「第3接続部」は接着剤692である。接着剤692は、例えば弾性率が所定値以下の樹脂材料により環状の板状に形成されている。本実施形態では、第2電磁駆動部502の組み付け時、ヨーク641をヨーク645のヨーク筒部647に当接させる前、基部652のヨーク底部646とは反対側の面に接着剤692を塗布する。続いて、ヨーク641をヨーク筒部647に当接させる。この時点では、接着剤692は硬化しておらず、接着剤692は、基部652のヨーク641側の面とヨーク641の基部652側の面とに密着する。
【0294】
続いて、ヨーク641とヨーク筒部647とを溶接し溶接部649を形成する。これにより、第2電磁駆動部502の組み付け、すなわち、サブアッセンブリ化が完了する。その後、所定時間経過すると、湿気により接着剤692が硬化する。本実施形態では、接着剤692は、硬化した後も弾性を有する材料により形成されている。
【0295】
本実施形態では、第7実施形態と同様、「第3接続部」としての接着剤692により、ターミナル651の振動および摩耗を抑制し、導通不良を抑制できる。また、コイルサブアッセンブリ650の基部652とヨーク641との当接部を「第3接続部」としての接着剤692で埋めることにより、水の侵入を抑制できる。
【0296】
また、本実施形態では、第8実施形態と同様、第7実施形態と比べ、ヨーク641にシール溝部640を形成する等の磁性材に関する変更がないため、可動コア55の吸引力への影響を抑制できる。
【0297】
(第10実施形態)
第10実施形態による高圧ポンプの一部を
図14に示す。第10実施形態は、「第3接続部」の構成等が第7実施形態と異なる。
【0298】
本実施形態では、ヨーク641にシール溝部640は形成されていない。「第3接続部」はゴムプレート693である。ゴムプレート693は、例えばゴム等の弾性部材、すなわち、弾性率が所定値以下の樹脂材料により環状の板状に形成されている。本実施形態では、第2電磁駆動部502の組み付け時、ヨーク641をヨーク645のヨーク筒部647に当接させる前、基部652のヨーク底部646とは反対側の面にゴムプレート693を設ける。続いて、ヨーク641をヨーク筒部647に当接させる。これにより、ゴムプレート693は、基部652のヨーク641側の面とヨーク641の基部652側の面とに密着する。
【0299】
続いて、ヨーク641とヨーク筒部647とを溶接し溶接部649を形成する。これにより、第2電磁駆動部502の組み付け、すなわち、サブアッセンブリ化が完了する。
【0300】
本実施形態では、第7実施形態と同様、「第3接続部」としてのゴムプレート693により、ターミナル651の振動および摩耗を抑制し、導通不良を抑制できる。また、コイルサブアッセンブリ650の基部652とヨーク641との当接部を「第3接続部」としてのゴムプレート693で埋めることにより、水の侵入を抑制できる。
【0301】
また、本実施形態では、第9実施形態と同様、第7実施形態と比べ、ヨーク641にシール溝部640を形成する等の磁性材に関する変更がないため、可動コア55の吸引力への影響を抑制できる。
【0302】
(第11実施形態)
第11実施形態による高圧ポンプの一部を
図15に示す。第11実施形態は、「第3接続部」の構成等が第7実施形態と異なる。
【0303】
本実施形態では、ヨーク641にシール溝部640は形成されていない。「第3接続部」はガスケット694である。ガスケット694は、例えば比較的柔らかい金属等の弾性部材、すなわち、弾性率が所定値以下の金属材料により環状の板状に形成されている。本実施形態では、第2電磁駆動部502の組み付け時、ヨーク641をヨーク645のヨーク筒部647に当接させる前、基部652のヨーク底部646とは反対側の面にガスケット694を設ける。続いて、ヨーク641をヨーク筒部647に当接させる。これにより、ガスケット694は、基部652のヨーク641側の面とヨーク641の基部652側の面とに密着する。
【0304】
続いて、ヨーク641とヨーク筒部647とを溶接し溶接部649を形成する。これにより、第2電磁駆動部502の組み付け、すなわち、サブアッセンブリ化が完了する。
【0305】
本実施形態では、第7実施形態と同様、「第3接続部」としてのガスケット694により、ターミナル651の振動および摩耗を抑制し、導通不良を抑制できる。また、コイルサブアッセンブリ650の基部652とヨーク641との当接部を「第3接続部」としてのガスケット694で埋めることにより、水の侵入を抑制できる。
【0306】
また、本実施形態では、第9実施形態と同様、第7実施形態と比べ、ヨーク641にシール溝部640を形成する等の磁性材に関する変更がないため、可動コア55の吸引力への影響を抑制できる。
【0307】
(第12実施形態)
第12実施形態による高圧ポンプの一部を
図16に示す。第12実施形態は、「追加接続部」をさらに備える点等で第1実施形態と異なる。
【0308】
<9>本実施形態は、「追加接続部」としての充填材695をさらに備えている。充填材695は、筒部材51および固定コア57と「コイルアッセンブリ」としての第2電磁駆動部502とを接続する。
【0309】
より具体的には、充填材695は、筒部材51の第2筒部512、第3筒部513、磁気絞り部56および固定コア57と、ヨーク641のヨーク穴部642、基部652、Oリング671、スプール61、Oリング681およびヨーク底部646との間に充填されるようにして設けられている。
【0310】
<10>充填材695は、例えば高分子シリコーンを主成分とするシリコーン樹脂またはシリコーンゴム等の弾性部材、すなわち、弾性率が所定値以下の樹脂材料により形成されている。充填材695は、上述のように筒部材51の第2筒部512、第3筒部513、磁気絞り部56および固定コア57と、ヨーク641のヨーク穴部642、基部652、Oリング671、スプール61、Oリング681およびヨーク底部646との間に充填されることで、各部材に密着している。これにより、筒部材51および固定コア57と「コイルアッセンブリ」としての第2電磁駆動部502との間が液密に保たれている。
【0311】
本実施形態では、ヨーク645に注入口644が形成されている。注入口644は、ヨーク底部646を板厚方向に貫くよう形成されている。注入口644は、固定コア57の加圧室200とは反対側の端面572の外縁部に対応する位置に形成されている。
【0312】
本実施形態では、固定コア57とヨーク底部646とを溶接し溶接部661を形成することで、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502とを組み付けた後、注入口644から液状の充填材695を注入し、筒部材51の第2筒部512、第3筒部513、磁気絞り部56および固定コア57と、ヨーク641のヨーク穴部642、基部652、Oリング671、スプール61、Oリング681およびヨーク底部646との間に充填する。充填材695の充填後、所定時間経過すると、充填材695が硬化する。本実施形態では、充填材695は、硬化した後も弾性を有する材料により形成されている。
【0313】
以上説明したように、<9>本実施形態では、「追加接続部」としての充填材695をさらに備えている。充填材695は、筒部材51および固定コア57と「コイルアッセンブリ」としての第2電磁駆動部502とを接続する。また、<10>本実施形態では、充填材695は、弾性部材により形成されている。
【0314】
本実施形態では、エンジン1の振動により高圧ポンプ10の上ハウジング21が振動し、上ハウジング21に固定されている電磁駆動部500も振動する。本実施形態では、ヨーク645に形成した注入口644から充填材695を注入し、固定コア57および筒部材51の一部を充填材695で被覆し、第1電磁駆動部501と第2電磁駆動部502とに密着させている。そのため、「コイルアッセンブリ」としての第2電磁駆動部502に伝わる振動を低減できる。これにより、ターミナル651の振動および摩耗を抑制し、導通不良を抑制できる。したがって、吸入弁部300の作動不良を抑制し、高圧ポンプ10の吐出不良をより一層抑制できる。
【0315】
また、溶接部661におけるヨーク底部646と固定コア57との間、または、筒部材51とヨーク穴部642との間に隙間が形成されていた場合、外部から第2電磁駆動部502内部の固定コア57等への水の侵入経路となり得る。本実施形態では、筒部材51の第2筒部512、第3筒部513、磁気絞り部56および固定コア57と、ヨーク641のヨーク穴部642、基部652、Oリング671、スプール61、Oリング681およびヨーク底部646との間を充填材695で埋めることにより、水の侵入を抑制し、固定コア57等の耐食性をより一層向上できる。
【0316】
(第13実施形態)
第13実施形態による高圧ポンプの一部を
図17に示す。第13実施形態は、供給通路部の構成等が第1実施形態と異なる。
【0317】
本実施形態は、供給通路部80を備えている。供給通路部80は、通路部本体81、供給孔82、ねじ部83、ねじ部84を有している。通路部本体81は、例えばステンレス等の金属により肉厚が比較的大きい筒状に形成されている。供給孔82は、通路部本体81の内側と外側とを連通するよう円形に形成されている。供給孔82は、通路部本体81の周方向に等間隔で4つ形成されている。ねじ部83は、通路部本体81の一端の外周壁にねじ山として形成されている。ねじ部84は、通路部本体81の他端の外周壁にねじ山として形成されている。
【0318】
カバー26には、カバー穴部265が形成されている。カバー穴部265は、カバー筒部261の外側と内側とを連通するよう円形に形成されている。上ハウジング21には、ハウジング穴部218が形成されている。ハウジング穴部218は、上ハウジング21の外周壁から円形に凹むようカバー穴部265に対応する位置に形成されている。ハウジング穴部218には、ハウジング側ねじ部219が形成されている。ハウジング側ねじ部219は、ハウジング穴部218の内周壁にねじ溝として形成されている。
【0319】
供給通路部80は、通路部本体81がカバー穴部265を挿通し、ねじ部84がハウジング側ねじ部219にねじ結合するよう上ハウジング21に設けられている。
【0320】
カバー26の外側において通路部本体81の径方向外側には、溶接リング819が設けられている。溶接リング819は、例えば金属により略円筒状に形成されている。溶接リング819は、カバー26側の端部が径方向外側に拡がるよう形成され、カバー外周壁のカバー穴部265の周囲に当接している。溶接リング819は、カバー26側の端部が周方向の全範囲に亘りカバー外周壁に溶接され、カバー26とは反対側の部位が周方向の全範囲に亘り通路部本体81の外周壁に溶接されている。より具体的には、溶接リング819のカバー26側の端部において、溶接リング819とカバー26とが溶接により溶融し冷え固まることによって形成された溶接部891が、周方向の全範囲に亘り溶接リング819とカバー26とを接続している。また、溶接リング819のカバー26とは反対側の端部において、溶接リング819と通路部本体81とが溶接により溶融し冷え固まることによって形成された溶接部892が、周方向の全範囲に亘り溶接リング819と通路部本体81とを接続している。これにより、燃料室260の燃料がカバー穴部265と通路部本体81の外周壁との間の隙間を経由してカバー26の外部に漏れることが抑制されている。
【0321】
供給通路部80には、図示しない供給燃料配管が接続される。供給燃料配管は、例えば鋼管であり、燃料ポンプとは反対側の端部の内周壁にねじ溝が形成されている。供給燃料配管は、端部のねじ溝が通路部本体81のねじ部83にねじ結合される。ここで、通路部本体81のねじ部84をハウジング側ねじ部219にねじ結合するときの締付トルクは、供給燃料配管をねじ部83にねじ結合するときの締付トルクよりも大きく設定されている。
【0322】
次に、比較形態の高圧ポンプについて説明する。
【0323】
図18に示すように、比較形態は、供給通路部29を備えている。供給通路部29は、通路部本体291、環状突部292を有している。通路部本体291は、例えばステンレス等の金属により肉厚が比較的小さい筒状に形成されている。ここで、通路部本体291の肉厚は、本実施形態の通路部本体81の肉厚より小さい。
【0324】
環状突部292は、通路部本体291の端部の外周壁から環状に突出するよう形成されている。供給通路部29は、通路部本体291の端部がカバー穴部265に挿入され、環状突部292がカバー筒部261の外周壁に溶接されることでカバー26に設けられている。
【0325】
供給通路部29には、図示しない供給燃料配管が接続される。供給燃料配管は、例えば樹脂製の比較的柔らかい管である。
【0326】
上記比較形態は、特開2012-215164号公報に開示された高圧ポンプと同様の構成である。比較形態では、配管脈動、配管外力、エンジン1の振動や部品作動時の振動等により供給通路部29とカバー26との溶接部に応力がかかると、溶接部が損傷するおそれがある。溶接部が損傷すると、燃料室260の燃料が外部に漏れるおそれがある。
【0327】
本実施形態の目的は、部材の溶接部の損傷を抑制し、燃料の漏れを抑制可能な高圧ポンプを提供することにある。
【0328】
本実施形態では、供給通路部80を上ハウジング21にねじ結合するとともに、供給通路部80とカバー26とを溶接している。そのため、配管脈動、配管外力、エンジン1の振動や部品作動時の振動等が発生しても、溶接部891、溶接部892にかかる応力を低減できる。これにより、燃料室260の燃料が溶接部891、溶接部892を経由して外部に漏れるのを抑制できる。
【0329】
また、供給通路部80にねじ部83を設けることにより、ねじ部を有する鋼管からなる供給燃料配管との接続を可能にし、燃料漏れのリスクを低減できる。
【0330】
また、供給燃料配管側から供給通路部80に流入した燃料は、オリフィス状の供給孔82を経由して広い空間である燃料室260に流入する。そのため、供給孔82が絞りとなり、供給燃料配管側の低圧脈動を減衰させることができる。
【0331】
また、通路部本体81のねじ部84をハウジング側ねじ部219にねじ結合するときの締付トルクは、供給燃料配管をねじ部83にねじ結合するときの締付トルクよりも大きく設定されている。これにより、供給燃料配管をねじ部83にねじ結合するときの溶接部891、溶接部892への応力を緩和できる。
【0332】
(第14実施形態)
第14実施形態による高圧ポンプの一部を
図19に示す。第14実施形態は、供給通路部の構成等が第13実施形態と異なる。
【0333】
本実施形態では、供給通路部80はねじ部84を有していない。また、上ハウジング21は、ハウジング側ねじ部219を有していない。供給通路部80は、通路部本体81がカバー穴部265を挿通し、通路部本体291の端部がハウジング穴部218に圧入されるようにして上ハウジング21に設けられている。
【0334】
本実施形態は、上述した点以外の構成は、第13実施形態と同様である。
【0335】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、「第1ヨーク」としてのヨーク641が、コイル60の軸方向においてコイル60に対し加圧室200側に設けられた例を示した。これに対し、他の実施形態では、ヨーク641は、コイル60の軸方向においてコイル60に対し加圧室200側に磁気回路を形成可能であれば、コイル60に対し加圧室200側に設けられていなくても良い。
【0336】
また、上述の第1~3、6実施形態では、「第2接続部」が弾性部材により環状に形成されている例を示した。これに対し、他の実施形態では、「第2接続部」は、弾性率が所定値より大きな材料により形成されていてもよい。また、「第2接続部」は、環状に限らず、周方向の一部が途切れた形状に形成されていてもよい。
【0337】
また、上述の実施形態では、吸入弁部と電磁駆動部とが、ノーマリーオープンタイプの弁装置を構成する例を示した。これに対し、他の実施形態では、吸入弁部と電磁駆動部とは、ノーマリークローズタイプの弁装置を構成してもよい。
【0338】
また、他の実施形態では、カバー26を備えていなくてもよい。この場合、例えば、供給通路部の内側と吸入通路216とが連通するよう、供給通路部を上ハウジング21に設ければよい。
【0339】
また、他の実施形態では、シリンダ23、上ハウジング21、下ハウジング22のうち少なくとも2つを一体に形成してもよい。また、他の実施形態では、上ハウジング21、シート部材31、ストッパ35のうち少なくとも2つを一体に形成してもよい。
【0340】
また、他の実施形態では、構成上の阻害要因が無い限り、上述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。例えば、第7実施形態と第12実施形態とを組み合わせるといった具合である。
【0341】
また、上述の実施形態では、「第3接続部」、「追加接続部」が弾性部材により形成されている例を示した。これに対し、他の実施形態では、「第3接続部」、「追加接続部」は、弾性率が所定値より大きな材料により形成されていてもよい。
【0342】
また、他の実施形態では、高圧ポンプを、ディーゼルエンジン等、ガソリンエンジン以外の内燃機関に適用してもよい。また、高圧ポンプを、車両のエンジン以外の装置等へ向けて燃料を吐出する燃料ポンプとして用いてもよい。
【0343】
このように、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0344】
10 高圧ポンプ、200 加圧室、23 シリンダ(加圧室形成部)、216 吸入通路、21 上ハウジング(吸入通路形成部)、32 連通路、31 シート部材、40 弁部材、51 筒部材、53 ニードル、55 可動コア、57 固定コア、65 コネクタ部、651 ターミナル、60 コイル、61 スプール(樹脂部)、652 基部(樹脂部)、650 コイルサブアッセンブリ、641 ヨーク(第1ヨーク)、645 ヨーク(第2ヨーク)、502 第2電磁駆動部(コイルアッセンブリ)、661 溶接部(第1接続部)、671 Oリング(第2接続部)、672 コーティング部(第2接続部)、673 板ゴム(第2接続部)、674 当接面(第2接続部)、675 当接面(第2接続部)