(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 50/035 20120101AFI20240110BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20240110BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20240110BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240110BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B60W50/035
B60W50/14
B60W40/02
B60W60/00
G08G1/16 C
G08G1/16 E
(21)【出願番号】P 2021047522
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】久米 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】小島 一輝
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/139748(WO,A1)
【文献】特開2003-123186(JP,A)
【文献】特開2020-001618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された照度センサが検出する外部照度が前照灯を自動点灯させるための所定の点灯閾値未満となったことに基づいて前記前照灯を自動点灯させる灯火制御装置(15)と接続されて使用される、前記車両の周辺に存在する物体を検出する周辺監視センサ(11、12)の出力信号に基づいて前記車両を自律的に走行させる制御である自動運転を実施可能に構成された車両制御装置であって、
直近所定時間以内における前記周辺監視センサの出力信号の履歴、及び、外部装置より無線通信で取得する前記車両がこれから通過予定の道路区間についての動的地図データの少なくとも何れか一方に基づいて、前記周辺監視センサの検出能力が、現時点から所定の予測時間以内に、前記自動運転を継続するために必要な性能品質である要求レベルを充足しなくなるか否かを判断する検出能力予測部(G5)と、
前記自動運転を実行中、前記予測時間以内に前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると前記検出能力予測部が判定したことに基づいて、所定の臨時制御を開始する臨時対応部(G62)と、を備え、
前記臨時対応部は、前記自動運転を実行中、前記予測時間以内に前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると前記検出能力予測部が判定したことに基づき、前記臨時制御として、前記照度センサから提供される前記外部照度が前記点灯閾値以上であっても前記前照灯を点灯させる車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記検出能力予測部が、前記予測時間以内に前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると判定した場合に、その原因である低下要因を特定する要因特定部(G52)を備え、
前記臨時対応部は、前記自動運転を実行中、前記予測時間以内に前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると前記検出能力予測部が判定したことに基づき、前記要因特定部が特定した前記低下要因に応じた前記臨時制御を開始する車両制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両制御装置であって、
前記臨時対応部は、前記低下要因が霧又は砂塵である場合には、前記臨時制御として、霧又は砂塵の発生が通知されているエリアに前記車両が進入する前からフォグランプを点灯させる車両制御装置。
【請求項4】
前記車両に搭載された照度センサが検出する外部照度が前照灯を自動点灯させるための所定の点灯閾値未満である場合に、前記前照灯としてのロービーム又はハイビームを自動点灯させる灯火制御装置と接続されて使用される、請求項1から3の何れか1項に記載の車両制御装置であって、
車室内に設置されたカメラの画像を解析することによって定まる運転席に着座しているユーザの視線方向を示す情報を取得し、
夜間において前記自動運転を実行中、前記ロービームであっても前記検出能力が前記要求レベルを充足し、且つ、前記ユーザの視線方向が前記車両の前方に向いていない場合には、対向車の有無に関わらず、前記灯火制御装置に対して前記ハイビームではなく前記ロービームを点灯させるための指示信号を出力する車両制御装置。
【請求項5】
ロービーム及びハイビームを含む前照灯の点灯状態を制御する灯火制御装置と接続されて使用される、請求項1から4の何れか1項に記載の車両制御装置であって、
前記前照灯は、光の照射距離が前記ロービームよりも長く、且つ、前記ハイビームよりも短いセミハイビームを照射可能に構成されており、
前記臨時対応部は、前記自動運転を実行中、前記予測時間以内に前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると前記検出能力予測部が判定したことに基づき、前記臨時制御として、前記セミハイビームを照射させるための指示信号を前記灯火制御装置に出力するように構成されている車両制御装置。
【請求項6】
ロービーム及びハイビームを含む前照灯の点灯状態を制御する灯火制御装置と接続されて使用される、車両の周辺に存在する物体を検出する周辺監視センサ(11、12)の出力信号に基づいて前記車両を自律的に走行させる制御である自動運転を実施可能に構成された車両制御装置であって、
前記前照灯は、光の照射距離が前記ロービームよりも長く、且つ、前記ハイビームよりも短いセミハイビームを照射可能に構成されており、
直近所定時間以内における前記周辺監視センサの出力信号の履歴、及び、外部装置より無線通信で取得する前記車両がこれから通過予定の道路区間についての動的地図データの少なくとも何れか一方に基づいて、前記周辺監視センサの検出能力が、現時点から所定の予測時間以内に、前記自動運転を継続するために必要な性能品質である要求レベルを充足しなくなるか否かを判断する検出能力予測部(G5)と、
前記自動運転を実行中、前記予測時間以内に前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると前記検出能力予測部が判定したことに基づいて、所定の臨時制御を開始する臨時対応部(G62)と、を備え、
前記臨時対応部は、前記自動運転を実行中、前記予測時間以内に前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると前記検出能力予測部が判定したことに基づき、前記臨時制御として、前記セミハイビームを照射させるための指示信号を前記灯火制御装置に出力するように構成されている車両制御装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の車両制御装置であって、
前記自動運転のためのサブシステムとして、所定の車間距離をおいて自車両を先行車に追従するように走行させる先行車追従制御を実施する先行車追従制御部(G61)を備え、
前記臨時対応部は、前記自動運転を実行中、前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると判定されている場合には、前記臨時制御として、前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると判定されていない場合よりも、前記先行車追従制御における前記車間距離の設定値を、手動設定又は走行速度の設定値に応じて自動的に設定される本来値よりも小さくする車両制御装置。
【請求項8】
車両の周辺に存在する物体を検出する周辺監視センサ(11、12)の出力信号に基づいて前記車両を自律的に走行させる制御である自動運転を実施可能に構成された車両制御装置であって、
直近所定時間以内における前記周辺監視センサの出力信号の履歴、及び、外部装置より無線通信で取得する前記車両がこれから通過予定の道路区間についての動的地図データの少なくとも何れか一方に基づいて、前記周辺監視センサの検出能力が、現時点から所定の予測時間以内に、前記自動運転を継続するために必要な性能品質である要求レベルを充足しなくなるか否かを判断する検出能力予測部(G5)と、
前記自動運転を実行中、前記予測時間以内に前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると前記検出能力予測部が判定したことに基づいて、所定の臨時制御を開始する臨時対応部(G62)と、
前記自動運転のためのサブシステムとして、所定の車間距離をおいて自車両を先行車に追従するように走行させる先行車追従制御を実施する先行車追従制御部(G61)と、を備え、
前記臨時対応部は、前記自動運転を実行中、前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると判定されている場合には、前記臨時制御として、前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると判定されていない場合よりも、前記先行車追従制御における前記車間距離の設定値を、手動設定又は走行速度の設定値に応じて自動的に設定される本来値よりも小さくする車両制御装置。
【請求項9】
車両の周辺に存在する物体を検出する周辺監視センサ(11、12)の出力信号に基づいて前記車両を自律的に走行させる制御である自動運転を実施可能に構成された車両制御装置であって、
直近所定時間以内における前記周辺監視センサの出力信号の履歴、及び、外部装置より無線通信で取得する前記車両がこれから通過予定の道路区間についての動的地図データの少なくとも何れか一方に基づいて、前記周辺監視センサの検出能力が、現時点から所定の予測時間以内に、前記自動運転を継続するために必要な性能品質である要求レベルを充足しなくなるか否かを判断する検出能力予測部(G5)と、
前記自動運転を実行中、前記予測時間以内に前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると前記検出能力予測部が判定したことに基づいて、所定の臨時制御を開始する臨時対応部(G62)と、
前記自動運転のためのサブシステムとして、所定の車間距離をおいて自車両を先行車に追従するように走行させる先行車追従制御を実施する先行車追従制御部(G61)と、を備え、
前記臨時対応部は、
前記自動運転を実行中、前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると判定され且つ走行環境が渋滞区間である場合には、前記臨時制御として、前記車間距離の設定値を、手動設定又は走行速度の設定値に応じて自動的に設定される本来値よりも所定量小さくする一方、
前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると判定され且つ走行環境が渋滞区間ではない場合には、前記臨時制御として、前記車間距離の設定値を前記本来値よりも所定量大きくする車両制御装置。
【請求項10】
請求項7から
9の何れか1項に記載の車両制御装置であって、
前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると判定されたことに基づいて前記車間距離の設定値を前記本来値から変更した場合には、前記検出能力が前記要求レベルを充足するようになったことに基づいて前記車間距離の設定値を前記本来値に戻すように構成されている車両制御装置。
【請求項11】
請求項1から1
0の何れか1項に記載の車両制御装置であって、
前記臨時対応部は、前記自動運転を実行中、前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると判定された場合には、前記臨時制御として、隣接車線を走行している他車両と並走する制御、又は、走行レーンとして道路端に隣接するレーンを優先的に採用する制御を実施する車両制御装置。
【請求項12】
請求項1から1
1の何れか1項に記載の車両制御装置であって、
前記臨時対応部は、前記自動運転を実行中、前記予測時間以内に前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると前記検出能力予測部が判定したことに基づき、前記臨時制御として、運転席に着座しているユーザに対して運転交代を促す報知又は運転交代の準備を開始することを促す報知を実施する車両制御装置。
【請求項13】
請求項1
2に記載の車両制御装置であって、
前記臨時対応部は、前記自動運転を実行中、前記検出能力予測部によって前記予測時間以内に前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると判定されたことに基づき、前記臨時対応部が前記臨時制御を実施した後に、前記ユーザに対して運転交代を促す報知を実施する車両制御装置。
【請求項14】
車両に搭載された照度センサが検出する外部照度が前照灯を自動点灯させるための所定の点灯閾値未満となったことに基づいて前記前照灯を自動点灯させる灯火制御装置(15)と、前記車両の周辺に存在する物体を検出する周辺監視センサ(11、12)と、を備え、前記周辺監視センサの出力信号に基づいて自動運転を実施可能に構成された前記車両に適用される、少なくとも1つのプロセッサによって実施される車両制御方法であって、
直近所定時間以内における前記周辺監視センサの出力信号の履歴、及び、外部装置より無線通信で取得する前記車両がこれから通過予定の道路区間についての動的地図データの少なくとも何れか一方に基づいて、前記周辺監視センサの検出能力が、現時点から所定の予測時間以内に、前記自動運転を継続するために必要な性能品質である要求レベルを充足しなくなるか否かを判断すること(S104)と、
前記自動運転を実行中、前記予測時間以内に前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると判定されたことに基づいて、所定の臨時制御を開始すること(S107)と、を含み、
前記臨時制御は、前記照度センサから提供される前記外部照度が前記点灯閾値以上であっても前記前照灯を点灯させることを含む、車両制御方法。
【請求項15】
ロービーム、ハイビーム、及び、光の照射距離が前記ロービームよりも長く、且つ、前記ハイビームよりも短いセミハイビームを照射可能に構成された前照灯の点灯状態を制御する灯火制御装置と、車両の周辺に存在する物体を検出する周辺監視センサ(11、12)と、を備え、前記周辺監視センサの出力信号に基づいて自動運転を実施可能に構成された前記車両に適用される、少なくとも1つのプロセッサによって実施される車両制御方法であって、
直近所定時間以内における前記周辺監視センサの出力信号の履歴、及び、外部装置より無線通信で取得する前記車両がこれから通過予定の道路区間についての動的地図データの少なくとも何れか一方に基づいて、前記周辺監視センサの検出能力が、現時点から所定の予測時間以内に、前記自動運転を継続するために必要な性能品質である要求レベルを充足しなくなるか否かを判断すること(S104)と、
前記自動運転を実行中、前記予測時間以内に前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると判定されたことに基づいて、所定の臨時制御を開始すること(S107)と、を含み、
前記臨時制御は、前記セミハイビームを照射させるための指示信号を前記灯火制御装置に出力することを含む車両制御方法。
【請求項16】
車両の周辺に存在する物体を検出する周辺監視センサ(11、12)の出力信号に基づく自動運転を実施可能に構成された前記車両に適用される、少なくとも1つのプロセッサによって実施される車両制御方法であって、
直近所定時間以内における前記周辺監視センサの出力信号の履歴、及び、外部装置より無線通信で取得する前記車両がこれから通過予定の道路区間についての動的地図データの少なくとも何れか一方に基づいて、前記周辺監視センサの検出能力が、現時点から所定の予測時間以内に、前記自動運転を継続するために必要な性能品質である要求レベルを充足しなくなるか否かを判断すること(S104)と、
所定の車間距離をおいて前記車両を先行車に追従するように走行させる先行車追従制御を実施することと、
前記自動運転を実行中、前記予測時間以内に前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると判定されたことに基づいて、所定の臨時制御を開始すること(S107)と、を含み、
前記臨時制御は、前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると判定されていない場合よりも、前記先行車追従制御における前記車間距離の設定値を、手動設定又は走行速度の設定値に応じて自動的に設定される本来値よりも小さくすることを含む、車両制御方法。
【請求項17】
車両の周辺に存在する物体を検出する周辺監視センサ(11、12)の出力信号に基づく自動運転を実施可能に構成された前記車両に適用される、少なくとも1つのプロセッサによって実施される車両制御方法であって、
直近所定時間以内における前記周辺監視センサの出力信号の履歴、及び、外部装置より無線通信で取得する前記車両がこれから通過予定の道路区間についての動的地図データの少なくとも何れか一方に基づいて、前記周辺監視センサの検出能力が、現時点から所定の予測時間以内に、前記自動運転を継続するために必要な性能品質である要求レベルを充足しなくなるか否かを判断すること(S104)と、
所定の車間距離をおいて前記車両を先行車に追従するように走行させる先行車追従制御を実施することと、
前記自動運転を実行中、前記予測時間以内に前記検出能力が前記要求レベルを充足しなくなると判定されたことに基づいて、所定の臨時制御を開始すること(S107)と、を含み、
走行環境が渋滞区間である場合の前記臨時制御は、前記車間距離の設定値を、手動設定又は走行速度の設定値に応じて自動的に設定される本来値よりも所定量小さくすることであり、
走行環境が渋滞区間ではない場合の前記臨時制御は、前記車間距離の設定値を前記本来値よりも所定量大きくすることである車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動運転を行うための車両制御装置、車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、渋滞が発生しており、且つ渋滞の発生している区間の長さが所定値以上である場合に、自動運転を開始させる車両制御装置が開示されている。特許文献2には、複数の車両からの報告に基づき、カメラなどの周辺監視センサの検出能力が低下するエリアを特定し、当該エリアの情報を配信する技術が開示されている。特許文献2には、自車両の現在位置が検出能力低下エリア内であることに基づいて自動運転を終了する構成についても言及されている。
【0003】
なお、先行技術文献の記載内容は、本開示における技術的要素の説明として、参照により援用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018‐27726号公報
【文献】特許第6424761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
運転操作の自動化レベルとしては、例えば米国自動車技術会(SAE International)が定義しているように、複数のレベルが存在し得る。本開示における自動運転とは、すべての運転タスクをシステムが行い、ユーザが車両周辺(主として前方)を監視する必要がないレベルであって、いわゆるレベル3以上を指す。なお、自動化のレベル2以下は、ユーザに車両周辺を監視する義務が発生するレベルに対応する。ここでのシステムとは、自動運転機能を提供する車両制御装置を主体とする車載システムを指す。また、ここでのユーザは、運転席に着座している乗員を指す。自動運転が行われている状態である自動運転を実行中には、ユーザは車両前方を見る必要はなく、例えばスマートフォンの操作など、セカンドタスクとして予め定められた行為の実行が許容されうる。
【0006】
ところで、自動運転はカメラなどの周辺監視センサのセンシング情報に基づいて外界を認識し、制御計画を作成する。そのため、例えば濃霧や黄砂などによって周辺監視センサの検出性能が、自動運転を継続するための所定の要求レベルを下回った場合には、自動運転が中断されうる。また、線のかすれや水たまりなどによってレーンを規定する車線区画線の認識率が低下した場合にも、自車両の走行位置の推定精度が低下するため自動運転が中断されうる。
【0007】
自動運転が頻繁に中断されると、セカンドタスクとしてユーザが行いたいことが度々中断されることとなり、利便性が低下する。
【0008】
本開示は、上記の着眼点に基づいて成されたものであり、その目的の1つは、自動運転が中断される恐れを低減可能な車両制御装置、車両制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここに開示される第1の車両制御装置は、車両に搭載された照度センサが検出する外部照度が前照灯を自動点灯させるための所定の点灯閾値未満となったことに基づいて前照灯を自動点灯させる灯火制御装置(15)と接続されて使用される、車両の周辺に存在する物体を検出する周辺監視センサ(11、12)の出力信号に基づいて車両を自律的に走行させる制御である自動運転を実施可能に構成された車両制御装置であって、直近所定時間以内における周辺監視センサの出力信号の履歴、及び、外部装置より無線通信で取得する車両がこれから通過予定の道路区間についての動的地図データの少なくとも何れか一方に基づいて、周辺監視センサの検出能力が、現時点から所定の予測時間以内に、自動運転を継続するために必要な性能品質である要求レベルを充足しなくなるか否かを判断する検出能力予測部(G5)と、自動運転を実行中、予測時間以内に検出能力が要求レベルを充足しなくなると検出能力予測部が判定したことに基づいて、所定の臨時制御を開始する臨時対応部(G62)と、を備え、臨時対応部は、自動運転を実行中、予測時間以内に検出能力が要求レベルを充足しなくなると検出能力予測部が判定したことに基づき、臨時制御として、照度センサから提供される外部照度が点灯閾値以上であっても前照灯を点灯させる。
本開示に含まれる第2の車両制御装置は、ロービーム及びハイビームを含む前照灯の点灯状態を制御する灯火制御装置と接続されて使用される、車両の周辺に存在する物体を検出する周辺監視センサ(11、12)の出力信号に基づいて車両を自律的に走行させる制御である自動運転を実施可能に構成された車両制御装置であって、前照灯は、光の照射距離がロービームよりも長く、且つ、ハイビームよりも短いセミハイビームを照射可能に構成されており、直近所定時間以内における周辺監視センサの出力信号の履歴、及び、外部装置より無線通信で取得する車両がこれから通過予定の道路区間についての動的地図データの少なくとも何れか一方に基づいて、周辺監視センサの検出能力が、現時点から所定の予測時間以内に、自動運転を継続するために必要な性能品質である要求レベルを充足しなくなるか否かを判断する検出能力予測部(G5)と、自動運転を実行中、予測時間以内に検出能力が要求レベルを充足しなくなると検出能力予測部が判定したことに基づいて、所定の臨時制御を開始する臨時対応部(G62)と、を備え、臨時対応部は、自動運転を実行中、予測時間以内に検出能力が要求レベルを充足しなくなると検出能力予測部が判定したことに基づき、臨時制御として、セミハイビームを照射させるための指示信号を灯火制御装置に出力するように構成されている。
本開示に含まれる第3の車両制御装置は、車両の周辺に存在する物体を検出する周辺監視センサ(11、12)の出力信号に基づいて車両を自律的に走行させる制御である自動運転を実施可能に構成された車両制御装置であって、直近所定時間以内における周辺監視センサの出力信号の履歴、及び、外部装置より無線通信で取得する車両がこれから通過予定の道路区間についての動的地図データの少なくとも何れか一方に基づいて、周辺監視センサの検出能力が、現時点から所定の予測時間以内に、自動運転を継続するために必要な性能品質である要求レベルを充足しなくなるか否かを判断する検出能力予測部(G5)と、自動運転を実行中、予測時間以内に検出能力が要求レベルを充足しなくなると検出能力予測部が判定したことに基づいて、所定の臨時制御を開始する臨時対応部(G62)と、自動運転のためのサブシステムとして、所定の車間距離をおいて自車両を先行車に追従するように走行させる先行車追従制御を実施する先行車追従制御部(G61)と、を備え、臨時対応部は、自動運転を実行中、検出能力が要求レベルを充足しなくなると判定されている場合には、臨時制御として、検出能力が要求レベルを充足しなくなると判定されていない場合よりも、先行車追従制御における車間距離の設定値を、手動設定又は走行速度の設定値に応じて自動的に設定される本来値よりも小さくする。
本開示に含まれる第4の車両制御装置は、車両の周辺に存在する物体を検出する周辺監視センサ(11、12)の出力信号に基づいて車両を自律的に走行させる制御である自動運転を実施可能に構成された車両制御装置であって、直近所定時間以内における周辺監視センサの出力信号の履歴、及び、外部装置より無線通信で取得する車両がこれから通過予定の道路区間についての動的地図データの少なくとも何れか一方に基づいて、周辺監視センサの検出能力が、現時点から所定の予測時間以内に、自動運転を継続するために必要な性能品質である要求レベルを充足しなくなるか否かを判断する検出能力予測部(G5)と、自動運転を実行中、予測時間以内に検出能力が要求レベルを充足しなくなると検出能力予測部が判定したことに基づいて、所定の臨時制御を開始する臨時対応部(G62)と、自動運転のためのサブシステムとして、所定の車間距離をおいて自車両を先行車に追従するように走行させる先行車追従制御を実施する先行車追従制御部(G61)と、を備え、臨時対応部は、自動運転を実行中、検出能力が要求レベルを充足しなくなると判定され且つ走行環境が渋滞区間である場合には、臨時制御として、車間距離の設定値を、手動設定又は走行速度の設定値に応じて自動的に設定される本来値よりも所定量小さくする一方、検出能力が要求レベルを充足しなくなると判定され且つ走行環境が渋滞区間ではない場合には、臨時制御として、車間距離の設定値を本来値よりも所定量大きくする。
【0010】
また、ここに開示される第1の車両制御方法は、車両に搭載された照度センサが検出する外部照度が前照灯を自動点灯させるための所定の点灯閾値未満となったことに基づいて前照灯を自動点灯させる灯火制御装置(15)と、車両の周辺に存在する物体を検出する周辺監視センサ(11、12)と、を備え、周辺監視センサの出力信号に基づいて自動運転を実施可能に構成された車両に適用される、少なくとも1つのプロセッサによって実施される車両制御方法であって、直近所定時間以内における周辺監視センサの出力信号の履歴、及び、外部装置より無線通信で取得する車両がこれから通過予定の道路区間についての動的地図データの少なくとも何れか一方に基づいて、周辺監視センサの検出能力が、現時点から所定の予測時間以内に、自動運転を継続するために必要な性能品質である要求レベルを充足しなくなるか否かを判断すること(S104)と、自動運転を実行中、予測時間以内に検出能力が要求レベルを充足しなくなると判定されたことに基づいて、所定の臨時制御を開始すること(S107)と、を含み、臨時制御は、照度センサから提供される外部照度が点灯閾値以上であっても前照灯を点灯させることを含む。
本開示に含まれる第2の車両制御方法は、ロービーム、ハイビーム、及び、光の照射距離がロービームよりも長く、且つ、ハイビームよりも短いセミハイビームを照射可能に構成された前照灯の点灯状態を制御する灯火制御装置と、車両の周辺に存在する物体を検出する周辺監視センサ(11、12)と、を備え、周辺監視センサの出力信号に基づいて自動運転を実施可能に構成された車両に適用される、少なくとも1つのプロセッサによって実施される車両制御方法であって、直近所定時間以内における周辺監視センサの出力信号の履歴、及び、外部装置より無線通信で取得する車両がこれから通過予定の道路区間についての動的地図データの少なくとも何れか一方に基づいて、周辺監視センサの検出能力が、現時点から所定の予測時間以内に、自動運転を継続するために必要な性能品質である要求レベルを充足しなくなるか否かを判断すること(S104)と、自動運転を実行中、予測時間以内に検出能力が要求レベルを充足しなくなると判定されたことに基づいて、所定の臨時制御を開始すること(S107)と、を含み、臨時制御は、セミハイビームを照射させるための指示信号を灯火制御装置に出力することを含む。
本開示に含まれる第3の車両制御方法は、車両の周辺に存在する物体を検出する周辺監視センサ(11、12)の出力信号に基づく自動運転を実施可能に構成された車両に適用される、少なくとも1つのプロセッサによって実施される車両制御方法であって、直近所定時間以内における周辺監視センサの出力信号の履歴、及び、外部装置より無線通信で取得する車両がこれから通過予定の道路区間についての動的地図データの少なくとも何れか一方に基づいて、周辺監視センサの検出能力が、現時点から所定の予測時間以内に、自動運転を継続するために必要な性能品質である要求レベルを充足しなくなるか否かを判断すること(S104)と、所定の車間距離をおいて車両を先行車に追従するように走行させる先行車追従制御を実施することと、自動運転を実行中、予測時間以内に検出能力が要求レベルを充足しなくなると判定されたことに基づいて、所定の臨時制御を開始すること(S107)と、を含み、臨時制御は、検出能力が要求レベルを充足しなくなると判定されていない場合よりも、先行車追従制御における車間距離の設定値を、手動設定又は走行速度の設定値に応じて自動的に設定される本来値よりも小さくすることを含む。
本開示に含まれる第4の車両制御方法は、車両の周辺に存在する物体を検出する周辺監視センサ(11、12)の出力信号に基づく自動運転を実施可能に構成された車両に適用される、少なくとも1つのプロセッサによって実施される車両制御方法であって、直近所定時間以内における周辺監視センサの出力信号の履歴、及び、外部装置より無線通信で取得する車両がこれから通過予定の道路区間についての動的地図データの少なくとも何れか一方に基づいて、周辺監視センサの検出能力が、現時点から所定の予測時間以内に、自動運転を継続するために必要な性能品質である要求レベルを充足しなくなるか否かを判断すること(S104)と、所定の車間距離をおいて車両を先行車に追従するように走行させる先行車追従制御を実施することと、自動運転を実行中、予測時間以内に検出能力が要求レベルを充足しなくなると判定されたことに基づいて、所定の臨時制御を開始すること(S107)と、を含み、走行環境が渋滞区間である場合の臨時制御は、車間距離の設定値を、手動設定又は走行速度の設定値に応じて自動的に設定される本来値よりも所定量小さくすることであり、走行環境が渋滞区間ではない場合の臨時制御は、車間距離の設定値を本来値よりも所定量大きくすることである。
【0011】
上記装置/方法によれば、周辺監視センサの検出能力が自動運転を継続するための要求レベルを下回る見込みがある場合には、事前に臨時制御が開始される。これにより、周辺監視センサの検出能力が実際に要求レベルを下回ることを回避したり、検出能力が要求レベル未満となるまでの残余時間を伸ばしたりする効果が期待できる。その結果、自動運転が中断される恐れを低減できる。
【0012】
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】自動運転システム1の全体構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】前方カメラ11の構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】情報提示装置18の一例を示すブロック図である。
【
図4】自動運転ECU30の機能ブロック図である。
【
図5】自動運転ECU30の作動を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照しながら、本開示の実施形態の一例を説明する。本開示は、以下の車両制御装置が適用される地域の法規及び慣習に適合するように適宜変更して実施可能である。
【0015】
<前置き>
図1は、本開示に係る自動運転システム1の概略的な構成の一例を示す図である。自動運転システム1は、道路上を走行可能な車両に搭載可能である。自動運転システム1が適用される車両としては、四輪自動車のほか、二輪自動車、三輪自動車等であってもよい。自動運転システム1が適用される車両は、個人によって所有されるオーナーカーであってもよいし、シェアカーや、レンタカー、運送サービスカーであってもよい。運送サービスカーには、タクシーや路線バス、乗り合いバスなどが含まれる。シェアカーは、カーシェアリングサービスに供される車両であり、レンタカーは車両貸し出しサービスに供される車両である。以降では自動運転システム1が搭載されている車両を自車両とも記載する。
【0016】
ここでは一例として自車両は電気自動車とするがこれに限らない。自車両は、エンジン車であってもよいし、ハイブリッド車であってもよい。電気自動車は、モータのみを駆動源として備える車両を指す。ガソリン車は、駆動源としてエンジンのみを備える車両であって、ガソリンや軽油などの燃料によって走行する車両に相当する。ハイブリッド車は動力源としてエンジンとモータを備える車両を指す。その他、自車両は燃料電池車(FCV:Fuel Cell Vehicle)であってもよい。
【0017】
ここでは一例として自動運転システム1が左側通行の地域で使用される場合を想定して各装置の作動を説明する。それに伴い、進行方向を同一とするレーンの中で左端のレーンを第1レーンと称する。右側通行の地域で使用される場合には上記の左右を逆にすることにより本開示の構成を実施可能である。例えば右側通行の地域においては第1レーンとは進行方向を同一とするレーンの中で右端のレーンを指す。以下で述べる自動運転システム1は、使用される地域の交通法規や慣習に適合するように変更して実施可能である。
【0018】
本開示におけるユーザとは、自動運転中においては自動運転システムから運転操作の権限を受け取るべき人物を指す。ユーザとは、主として運転席に着座している人物、つまり運転席乗員を指す。ユーザとの記載はドライバと置き換えることができる。自車両は、車両外部に存在するオペレータによって遠隔操作される遠隔操作車両であってもよい。ここでのオペレータとは、所定のセンタなど、車両の外部から遠隔操作によって車両を制御する権限を有する人物を指す。オペレータもまた、ユーザの概念に含めることができる。後述するHCU20による種々の情報の提示対象はオペレータであってもよい。
【0019】
自動運転システム1は、自車両を自律的に走行させる、いわゆる自動運転機能を提供する。運転操作の自動化の度合い(以下、自動化レベル)としては、例えば米国自動車技術会(SAE International)が定義しているように、複数のレベルが存在し得る。自動化レベルは、例えばSAEの定義では、以下のようにレベル0~5の6段階に区分される。
【0020】
レベル0は、システムが介入せずに運転席乗員としてのユーザが全ての運転タスクを実施するレベルである。運転タスクには、例えば操舵及び加減速が含まれる。また、運転タスクには、例えば車両前方など、車両の周辺を監視することも含まれる。レベル0は、いわゆる完全手動運転レベルに相当する。レベル1は、操舵と加減速との何れかをシステムがサポートするレベルである。レベル2は、操舵操作と加減速操作のうちの複数をシステムがサポートするレベルを指す。レベル1~2は、いわゆる運転支援レベルに相当する。
【0021】
レベル3は、運行設計領域(ODD:Operational Design Domain)内においてシステムが全ての運転タスクを実行する一方、緊急時にはシステムからユーザに操作権限が移譲されるレベルを指す。ODDは、例えば走行位置が高速道路内であること等の、自動運転を実行可能な条件を規定するものである。レベル3では、システムから運転交代の要求があった場合に、ユーザが迅速に対応可能であることが求められる。なお、車両に乗車しているユーザの代わりに、車両外部に存在するオペレータが運転操作を引き継いでもよい。レベル3は、いわゆる条件付き自動運転に相当する。
【0022】
レベル4は、対応不可能な所定の道路、極限環境等の特定状況下を除き、システムが全ての運転タスクを実施するレベルである。レベル4は、ODD内にてシステムが全ての運転タスクを実施するレベルに相当する。レベル4は、いわゆる高度自動運転に相当する。レベル5は、あらゆる環境下でシステムが全ての運転タスクを実施可能なレベルである。レベル5は、いわゆる完全自動運転に相当する。レベル3~5が自動運転に相当する。レベル3~5は、車両の走行に係る制御のすべてを自動で実行する、自律走行レベルと呼ぶこともできる。本開示の「自動運転」が指すレベルは、ユーザが前方を監視する必要がないレベルであって、レベル3以上を指す。以降では、自動運転システム1は自動化レベル3以上の自動運転を実施可能に構成されている場合を例に挙げて説明を行う。
【0023】
<自動運転システム1の全体構成について>
自動運転システム1は一例として
図1に示す種々の構成を備える。すなわち、自動運転システム1は、前方カメラ11、ミリ波レーダ12、車両状態センサ13、ロケータ14、ボディECU15、灯火装置151、V2X車載器16、及びDSM17を備える。また、自動運転システム1は、情報提示装置18、入力装置19、HCU20、及び自動運転ECU30を備える。情報提示装置18、入力装置19、及びHCU20を含む構成はHMIシステム2として構成されている。HMIシステム2は、ユーザ操作を受け付ける入力インターフェース機能と、ユーザへ向けて情報を提示する出力インターフェース機能とを提供するシステムである。なお、部材名称中のECUは、Electronic Control Unitの略であり、電子制御装置を意味する。DSMは、ドライバステータスモニタ(Driver Status Monitor)の略である。HMIは、Human Machine Interfaceの略である。HCUは、HMI Control Unitの略である。V2XはVehicle to X(everything/something)の略で、車を様々なものをつなぐ通信技術を指す。
【0024】
前方カメラ11は、車両前方を所定の画角で撮像するカメラである。前方カメラ11は、例えばフロントガラスの車室内側の上端部や、フロントグリル、ルーフトップ等に配置されている。前方カメラ11は、
図2に示すように、画像フレームを生成するカメラ本体部111と、画像フレームに対して認識処理を施す事により、所定の検出対象物を検出するECU(以降、カメラECU112)と、を備える。カメラ本体部111は少なくともイメージセンサとレンズとを含む構成である。カメラ本体部111は、所定のフレームレート(例えば60fps)で撮像画像データを生成及び出力する。カメラECU112は、CPUや、GPUなどを含む画像処理チップを主体として構成されており、機能ブロックとして識別器113を含む。識別器113は、カメラ本体部111で生成された画像の特徴量ベクトルに基づき、物体の種別を識別する構成である。識別器113には、例えばディープラーニングを適用したCNN(Convolutional Neural Network)やDNN(Deep Neural Network)などを利用可能である。
【0025】
前方カメラ11の検出対象物には、例えば、歩行者や、他車両などの移動体が含まれる。他車両には自転車や原動機付き自転車、オートバイも含まれる。また、前方カメラ11は、所定の地物も検出可能に構成されている。前方カメラ11が検出対象とする地物には、道路端や、路面標示、道路沿いに設置される構造物が含まれる。路面標示とは、交通制御、交通規制のための路面に描かれたペイントを指す。例えば、レーンの境界を示す車線区画線や、横断歩道、停止線、導流帯、安全地帯、規制矢印などが路面標示に含まれる。車線区画線は、レーンマークあるいはレーンマーカーとも称される。車線区画線には、チャッターバーやボッツドッツなどの道路鋲によって実現されるものも含まれる。以降における区画線とは、レーンの境界線をさす。区画線には、車道外側線や、中央線(いわゆるセンターライン)なども含まれる。
【0026】
道路沿いに設置される構造物とは、例えば、ガードレール、縁石、樹木、電柱、道路標識、信号機などである。カメラECU112を構成する画像プロセッサは、色、輝度、色や輝度に関するコントラスト等を含む画像情報に基づいて、撮像画像から背景と検出対象物とを分離して抽出する。なお、前方カメラ11はローカライズ処理においてランドマークとして使用されうる地物を検出可能に構成されていることが好ましい。
【0027】
本実施形態のカメラECU112は、より好ましい態様として、画像認識結果の信頼度を示すデータも出力する。認識結果の信頼度は、例えば、降雨量や、逆光の有無、外界の明るさなどをもとに算出される。なお、認識結果の信頼度は、その他、特徴量の一致度合いを示すスコアであってもよい。信頼度は、例えば、識別器113による識別結果として出力される、認識結果の確からしさを示す確率値であってもよい。当該確率値は前述の特徴量の一致度合いに相当しうる。
【0028】
ミリ波レーダ12は、車両前方に向けてミリ波又は準ミリ波といった探査波を送信するとともに、当該送信波が物体で反射されて返ってきた反射波の受信データを解析することにより、自車両に対する物体の相対位置や相対速度を検出するデバイスである。ミリ波レーダ12は、例えば、フロントグリルや、フロントバンパに設置されている。ミリ波レーダ12には、検出物体の大きさや移動速度、受信強度に基づいて、検出物の種別を識別するレーダECUが内蔵されている。レーダECUは、検出結果として、検出物の種別や、相対位置(方向と距離)、受信強度を示すデータを自動運転ECU30等に出力する。ミリ波レーダ12の検出対象物には、他車両や、歩行者などの他、マンホール(鉄板)やランドマークとしての立体構造物が含まれていてもよい。
【0029】
観測データに基づく物体認識処理は、自動運転ECU30など、センサ外のECUが実行しても良い。その場合、前方カメラ11やミリ波レーダは、観測データを検出結果データとして自動運転ECU30に出力する。前方カメラ11にとっての観測データとは、画像フレームを指す。ミリ波レーダの観測データとは、検出方向及び距離毎の受信強度及び相対速度を示すデータ、または、検出物の相対位置及び受信強度を示すデータを指す。
【0030】
前方カメラ11及びミリ波レーダ12は、自車の周辺を監視する周辺監視センサに相当する。周辺監視センサとしては、前方カメラ11及びミリ波レーダ12の他、LiDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)、ソナー等を採用することができる。また、自動運転システム1は、周辺監視センサとして前方を主たる検出範囲とするセンサの他に、車両後方や、側方などを検出範囲とするセンサを備えていても良い。例えばリアカメラやサイドカメラ、後方ミリ波レーダなどを備えうる。
【0031】
車両状態センサ13は、自車両の状態に関する情報を検出するセンサ群である。車両状態センサ13には、車速センサ、操舵角センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ等が含まれる。車速センサは、自車の車速を検出する。操舵角センサは、操舵角を検出する。加速度センサは、自車の前後加速度、横加速度等の加速度を検出する。ヨーレートセンサは、自車の角速度を検出する。車両状態センサ13は、検出対象とする物理状態量の現在の値(つまり検出結果)を示すデータを車両内ネットワークIvNに出力する。
【0032】
なお、車両状態センサ13として自動運転システム1が使用するセンサの種類は適宜設計されればよく、上述した全てのセンサを備えている必要はない。また、自動運転システム1は車両状態センサ13として照度センサや、レインセンサ、ワイパー速度センサなども含めることができる。照度センサは、車両外部の明るさを検出するセンサである。レインセンサは、降雨を検出するセンサである。ワイパー速度センサは、ワイパーの動作速度を検出するセンサである。ワイパーの動作速度には、動作間隔が含まれる。
【0033】
ロケータ14は、複数の情報を組み合わせる複合測位により、自車両の高精度な位置情報等を生成する装置である。車両位置は、例えば緯度、経度、及び高度の3次元座標で表される。ロケータ14が算出した車両位置情報は車両内ネットワークIvNに出力され、自動運転ECU30等で利用される。ロケータ14は、例えば、GNSS受信機を用いて構成されている。GNSS受信機は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する測位衛星から送信される航法信号(以降、測位信号)を受信することで、当該GNSS受信機の現在位置を逐次検出するデバイスである。例えばGNSS受信機は4機以上の測位衛星からの測位信号を受信できている場合には、100ミリ秒ごとに測位結果を出力する。GNSSとしては、GPS、GLONASS、Galileo、IRNSS、QZSS、Beidou等を採用可能である。ロケータ14は、GNSS受信機の測位結果と、慣性センサの出力とを組み合わせることにより、自車両の位置を逐次算出しても良い。
【0034】
なお、ロケータ14は、ローカライズ処理(いわゆるLocalization)を実施可能に構成されていても良い。ローカライズ処理は、前方カメラ11で撮像された画像に基づいて特定されたランドマークの座標と、地図データに登録されているランドマークの座標とを照合することによって自車両の詳細位置を特定する処理を指す。ランドマークとは、例えば、方面看板などの案内標識や、信号機、ポール、一時停止線などである。ローカライズ処理は、LiDARが出力する3次元の検出点群データと、3次元地図データとの照合により実施されても良い。
【0035】
種々の地物についての情報を含む地図データは、図示しない不揮発性の記憶装置に保存されていてもよいし、外部サーバから随時ダウンロードして所定の揮発性メモリに保存されていてもよい。ロケータ14が備える一部又は全部の機能は、自動運転ECU30が備えていてもよいし、HCU20が備えていても良い。機能配置は適宜変更可能である。
【0036】
ボディECU15は、車両に搭載されたボディ系の車載機器を統合的に制御するECUである。ここでのボディ系の車載機器とは、例えば、灯火装置151や、ウインドウモータ、ドアロックアクチュエータ、シートモータ、サイドミラーモータ、ワイパーモータなどを指す。ボディECU15は、ユーザによるライトスイッチの操作や、照度センサの検出値、時刻情報、又は自動運転ECU30からの指示信号に基づき、灯火装置151の動作を制御する。例えばボディECU15は、照度センサから提供される外部照度が前照灯を自動点灯させるための閾値である自動点灯閾値未満であることに基づいて前照灯を点灯させる。外部照度とは車室外の明るさを指す。ボディECU15が灯火制御装置に相当する。なお、ボディECU15と灯火装置151との間に、灯火制御装置としてのECUが別途設けられていても良い。
【0037】
灯火装置151は、左右のフロントコーナーに配されている前照灯やフォグランプ、通知灯などの光源の点灯状態を制御する。前照灯はヘッドライトとも称される。ここでの前照灯には、光の照射範囲が異なるロービームとハイビームとが含まれる。ハイビームは、略水平に光を照射することにより、ロービームよりも遠くを照らす。例えばハイビームは、前方100mを照らすように構成されている。ハイビームは、走行用前照灯とも呼ばれる。ロービームは、ハイビームよりも下向きに光を照射する。ロービームはハイビームの照射範囲よりも車両に近い範囲を照らす。例えばロービームは前方40mまでを照らすように構成されている。ロービームは、すれ違い用前照灯とも呼ばれる。フォグランプは霧などの悪天候時に自車の視認性を高めるために設置されている灯火設備である。フォグランプは、前部霧灯とも呼ばれる。通知灯とは、例えば、クリアランスランプ(以降、CLL:Clearance Lamp)や、ウインカー、昼間走行灯(以降、DRL:Daytime Running Light)、ハザードランプなどを指す。
【0038】
灯火装置151は、例えば4灯式のヘッドライトとして構成されている。すなわち、ハイビーム用の光源とロービーム用の光源を有する。光源としては、発光ダイオード(以降、LED:Light Emission Diode)や、有機発光トランジスタなど多様な素子を採用可能である。複数の光源素子を用いて光源が形成されうる。ロービーム用の光源の一部又は全部はハイビーム用の光源として兼用されていても良い。
【0039】
灯火装置151は、ハイビームの光量は、ロービームの光量よりも大きく設定されている。例えば、ハイビーム用のLEDは、ハイビーム用のLEDよりも多く設定されている。また、灯火装置151はハイビーム用の複数のLEDの点灯状態を個別に制御することで、照射範囲を動的に変更可能に構成されていても良い。便宜上、ハイビーム用の複数のLEDを個別に制御することでハイビームの照射範囲をシーンに応じて動的に変更する技術をアダプティブハイビーム制御と称する。なお、光源がLEDである場合、灯火装置151は、当該LEDに流れる電流をPWM(Pulse Width Modulation)制御することで、発光量を調整可能である。このような調光方式はPWM調光とも称される。ハイビームとロービームの光量の違いはPWM制御におけるデューティー比を調整することで実現されてもよい。もちろん、前照灯の光源はハロゲンランプなどであっても良い。
【0040】
灯火装置151は、ハイビームとしての光の照射方向を上下方向の所定角度範囲内で動的に変更可能に構成されていてもよい。例えば灯火装置151は、前方100m先までを照らすように水平方向又は水平方向よりも所定量(例えば3度)下向きに光を照射する基本状態と、当該基本状態よりも所定の角度、下向きに光を照射する下向き状態とを切替可能に構成されていてもよい。下向き状態は、例えば基本状態よりも1度~5度程度下向きにハイビーム相当の光を照射するモードとすることができる。照射方向の動的調整は、モータ等を用いて車体に対する光源の角度を変更することで実現されうる。下向き状態は、アダプティブハイビーム制御の応用によって実現されても良い。
【0041】
便宜上、基本状態、換言すれば通常時よりも下向きに照射するハイビームをセミハイビームと称する。セミハイビームは、ロービームよりも照射範囲(照射距離)を増大させるとともに明るさも高めたビームに相当する。セミハイビームは、例えば前方60~70mまでをロービームよりも明るく照らすビームとすることができる。セミハイビームは、1つの側面においてロービームの強化版に相当するため、ミドルビーム又はエンハンスドロービームと呼ぶこともできる。なお、本実施形態の灯火装置151は一例としてハイビーム用の光源を用いてセミハイビームを照射可能に構成されているものとするがこれに限らない。ハイビーム用の光源とは別にセミハイビーム用の光源が設けられていても良い。また、ハイビーム用のLEDの一部を用いてセミハイビームが実現されても良い。
【0042】
V2X車載器16は、自車両が他の装置と無線通信を実施するための装置である。V2X車載器16は、通信モジュールとして広域通信部と狭域通信部を備える。広域通信部は、所定の広域無線通信規格に準拠した無線通信を実施するための通信モジュールである。ここでの広域無線通信規格としては例えばLTE(Long Term Evolution)や4G、5Gなど多様なものを採用可能である。自車両は、V2X車載器16の搭載により、インターネットに接続可能なコネクテッドカーとなる。例えば自動運転ECU30は、V2X車載器16との協働により、地図サーバから最新の高精度地図データをダウンロード可能となる。なお、広域通信部は、無線基地局を介した通信のほか、広域無線通信規格に準拠した方式によって、他の装置との直接的に、換言すれば基地局を介さずに、無線通信を実施可能に構成されていても良い。つまり、広域通信部はセルラーV2Xを実施可能に構成されていても良い。
【0043】
V2X車載器16が備える狭域通信部は、通信距離が数百m以内に限定される通信規格(以降、狭域通信規格)によって、自車両周辺に存在する他の移動体や路側機と直接的に無線通信を実施するための通信モジュールである。路側機とは道路沿いに設置されている通信設備を指す。狭域通信規格としては、IEEE1709にて開示されているWAVE(Wireless Access in Vehicular Environment)規格や、DSRC(Dedicated Short Range Communications)規格など、任意のものを採用可能である。
【0044】
V2X車載器16は、例えば自動運転ECU30による制御のもと、自動運転ECU30が評価した周辺監視センサごとの検出能力の実際の(実効的な)レベルを示す情報を検出能力報告として他車両に送信する。検出能力は検出性能、あるいは検出精度と言い換えることができる。検出能力報告は、検出能力を評価した時点での位置情報および時刻情報を含む。また、検出能力報告は、送信元を特定するための送信元情報を含む。V2X車載器16は他車両から送信された検出能力報告を随時受信しうる。
【0045】
検出能力報告の送受信の態様は、ブロードキャストであっても良いし、ジオキャストであってもよい。ブロードキャストは、不特定多数(全宛先)に対してデータを送信する方式を指す。ジオキャストは、位置情報で宛先を指定する、フラッディング方式の通信態様である。ジオキャストでは、ジオキャストエリアとして指定される範囲に存在する車両が、当該データを受信する。ジオキャストによれば、情報の配信対象とするエリアに存在する車両の識別情報を特定せずに送信可能となる。
【0046】
その他、V2X車載器16は、例えば自動運転ECU30による制御のもと、検出能力報告相当の通信パケットを、動的地図を生成する外部サーバである地図サーバに送信しても良い。
【0047】
DSM17は、ユーザの顔画像に基づいてユーザの状態を逐次検出するセンサである。具体的には、DSM17は、近赤外カメラを用いてユーザの顔部を撮影し、その撮像画像に対して画像認識処理を施すことで、ユーザの顔の向きや視線方向、瞼の開き度合い等を逐次検出する。DSM17は、運転席に着座している乗員の顔を撮影可能なように、例えば運転席のヘッドレスト部に近赤外カメラを向けた姿勢にて、ステアリングコラムカバーの上面や、インストゥルメントパネルの上面、ルームミラー等に配置されている。DSM17は、撮影画像から特定したユーザの顔の向きや、視線方向、瞼の開き度合い等を示す情報を乗員状態データとして車両内ネットワークIvNへ逐次出力する。なお、DSM17は車室内カメラの一例に相当する。
【0048】
情報提示装置18は、ユーザに自動運転システム1の作動状態等を提示するためのデバイス群である。情報提示装置18には、例えば
図3に示すように、HUD18A、メータディスプレイ18B、及び音響装置18Cが含まれる。HUDは、ヘッドアップディスプレイ(Head-Up Display)の略である。
【0049】
HUD18Aは、HCU20から入力される制御信号及び映像データに基づき、フロントガラスの所定領域に画像光を投影することにより、ユーザによって知覚されうる虚像を映し出す装置である。HUD18Aは、プロジェクタ、スクリーン、及び凹面鏡を用いて構成されている。なお、ウインドシールド(フロントガラス)がスクリーンとして機能しうる。
【0050】
メータディスプレイ18Bはインストゥルメントパネルにおいて運転席の正面に位置する領域に配置されたディスプレイである。メータディスプレイ18Bは、多様な色を表示が可能なものであり、液晶ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ、プラズマディスプレイ等を用いて実現できる。HUD18A、メータディスプレイ18Bが表示装置に相当する。音響装置18Cは、HCU20から入力される制御信号に基づいて、少なくとも1つのスピーカから音を出力する装置である。本開示における「音」との表現には、音声や音楽も含まれる。
【0051】
なお、自動運転システム1は情報提示装置18として上述したすべてのデバイスを備えている必要はない。また、情報提示装置18として、インストゥルメントパネルの車幅方向中央部に設けられたセンターディスプレイを備えていても良い。以降におけるメータディスプレイ18Bは、センターディスプレイに置き換えて実施可能である。
【0052】
入力装置19は、自動運転システム1に対するユーザの指示操作を受け付けるための装置である。入力装置19としては、ステアリングホイールのスポーク部に設けられたステアリングスイッチ、ステアリングコラム部に設けられた操作レバー、センターディスプレイに積層されたタッチパネルなどを採用可能である。上述した複数種類のデバイスを入力装置19として備えていても良い。ユーザの操作は、ユーザの行為又は指示入力と読み替える事ができる。入力装置19は、当該装置に対してユーザが行った操作に対応する電気信号をユーザ操作信号として車両内ネットワークIvNに出力する。ユーザ操作信号は、ユーザの操作内容を示す情報を含む。
【0053】
本実施形態のHMIシステム2は、例えば入力装置19として、モード切替スイッチ19Aを備える。モード切替スイッチ19Aは例えばステアリングスイッチの1つとしてスポーク部に配置されている。モード切替スイッチ19Aは、ユーザが運転モードを切り替えるためのスイッチである。モード切替スイッチ19Aには、自動運転モードの開始を指示又は許可するためのAD(Autonomous Driving)許可スイッチと、自動運転モードを解除(換言すれば終了)させるためのAD解除スイッチとが含まれる。AD許可スイッチとAD解除スイッチとは別々に設けられていても良いし、同一のスイッチであっても良い。ここでは一例としてAD許可スイッチとAD解除スイッチは同一のスイッチで実現されているものとする。すなわち、同一のスイッチが、自動運転モードではない場合にはAD許可スイッチとして機能し、自動運転モードにおいてはAD解除スイッチとして機能するように構成されている。このようなモード切替スイッチ19Aは、自動運転ECU30が提供する自動運転機能を作動させたり停止させたりするためのスイッチに相当する。
【0054】
なお、運転モードの切替指示は音声入力によって実施可能に構成されていても良い。マイク及びマイクが集音した音声信号に対して音声認識処理を行うプロセッサを含む音声入力装置も入力装置19の概念に含めることができる。なお、音声認識処理自体は外部サーバが実施するように構成されていても良い。
【0055】
HCU20は、ユーザへの情報提示を統合的に制御する構成である。HCU20は、自動運転ECU30から入力される制御信号や、入力装置19から入力されるユーザ操作信号に基づき、HUD18Aの表示を制御する。例えばHCU20は、自動運転ECU30から提供される情報に基づき、自動運転機能の動作状態を示す画像や、運転交代を要求する画像などをHUD18A及びメータディスプレイ18Bに表示する。また、HCU20は音響装置18Cから通知音や所定の音声メッセージを出力させる。
【0056】
このようなHCU20は、処理部21、RAM22、ストレージ23、通信インターフェース24、及びこれらを接続するバス等を備えたコンピュータを主体として構成されている。処理部21は、RAM22と結合された演算処理のためのハードウェアである。処理部21は、CPU(Central Processing Unit)等の演算コア、換言すればプロセッサを少なくとも一つ含む構成である。処理部21は、RAM22へのアクセスにより、後述する各機能部の機能を実現するための種々の処理を実行する。ストレージ23は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体を含む構成である。ストレージ23には、処理部21によって実行されるプログラムである情報提示制御プログラムが格納されている。通信インターフェース24は、車両内ネットワークIvNを介して他の装置と通信するための回路である。通信インターフェース24は、アナログ回路素子やICなどを用いて実現されればよい。
【0057】
自動運転ECU30は、前方カメラ11やミリ波レーダ12の検出結果などをもとに走行アクチュエータを制御することにより、運転操作の一部又は全部をユーザの代わりに実行するECU(Electronic Control Unit)である。自動運転ECU30は自動運行装置とも称される。走行アクチュエータには例えば制動装置としてのブレーキアクチュエータや、電子スロットル、操舵アクチュエータなどが含まれる。操舵アクチュエータには、EPS(Electric Power Steering)モータが含まれる。なお、自動運転ECU30と走行アクチュエータとの間には、操舵制御を行う操舵ECUや、加減速制御を行うパワーユニット制御ECU、及びブレーキECU等、他のECUが介在していてもよい。
【0058】
自動運転ECU30は、自動化レベルが異なる複数の運転モードを備える。ここでは一例として自動運転ECU30は、完全手動モード、運転支援モード、及び自動運転モードを切替可能に構成されている。各運転モードは、ユーザが担当する運転タスクの範囲、換言すればシステムが介入する運転タスクの範囲が異なる。ここでのシステムとは、自動運転システム1、実態的には自動運転ECU30を指す。
【0059】
完全手動モードは、ユーザがすべての運転タスクを実行する運転モードである。完全手動モードは自動化レベル0に相当する。故に、完全手動モードは、レベル0モードと呼ぶこともできる。
【0060】
運転支援モードは、システムが加減速の制御を実行又は支援するとともに、操舵操作についてもシステムが支援する運転モードである。第2支援モードの操舵操作の実行主体はユーザである。第2支援モードは、例えば、ACC(Adaptive Cruise Control)機能とLTA(Lane Tracing Assist)機能の少なくとも何れか一方が動作している運転モードに相当する。ACCは、目標車速で自車両を定速走行させるか、又は先行車との車間距離を維持しつつ自車両を追従走行させる機能である。ACCが先行車追従制御に相当する。ACCにおける走行速度に係る制御上の目標値は、予め設定された速度範囲内でユーザによって設定される。ACCにおける先行車との車間距離の目標値もまた、予め規定された範囲内でユーザによって設定されうる。LTAは、車線情報に基づいて車両の車線内走行を維持する機能である。第2支援モードは自動化レベル2.0に相当する。第2支援モードは、レベル2モードと呼ぶこともできる。
【0061】
完全手動モード及び運転支援モードは、ユーザのハンズオン及びアイズオンが必要な運転モードに相当する。ハンズオンはユーザがハンドルを把持することを指し、ハンズオフはユーザがハンドルから手を離すことを指す。アイズオンはユーザが車両前方などの周囲の交通状況を監視することを指す。アイズオフは、ユーザが周辺状況の監視しないこと、すなわち、車両前方から目を離すことを指す。
【0062】
完全手動モード及び運転支援モードは、運転タスクのうちの少なくともの一部はユーザが担当する。換言すれば、ユーザが少なくとも一部の運転タスクに関与している運転モードである。そのため本開示では、完全手動モード及び運転支援モードを乗員関与モードと呼ぶ。乗員関与モードは、自動運転モードの対義語としての手動運転モードと呼ぶこともできる。本開示における手動運転には、システムによる運転支援が実行されている状態も含めることができる。
【0063】
自動運転モードは、システムがすべての運転タスクを実行する運転モードである。ここでは一例として自動運転モードは、自動化レベル3に相当する運転モードとする。なお、自動運転モードは、レベル4やレベル5の自動運転を実施するものであっても良い。自動運転モードは、アイズオフ可能な運転モード、換言すればユーザがセカンドタスクを実施可能な運転モードに相当する。
【0064】
セカンドタスクは、ユーザの実施が許容される運転以外の行為であって、予め規定された行為である。セカンドタスクは、セカンダリアクティビティ又はアザーアクティビティ等と呼ばれうる。例えば動画等のコンテンツの視聴、スマートフォン等の操作、電子書籍の閲覧、および片手での食事等の行為が、セカンドタスクとして想定される。レベル3相当の自動運転モードにおいては、ユーザは自動運転システムからの運転操作の引き継ぎ要求に対して直ちに対応可能である必要がある。そのため、レベル3相当の自動運転モードでは、セカンドタスクとして、例えば睡眠や両手をすぐに解放できない作業、運転席からの離脱を伴う行為などは禁止されうる。なお、セカンドタスクとして実行可能な行為および禁止行為は車両が使用される地域の法規に基づいて設定可能である。
【0065】
自動運転モードにおいては、自動運転ECU30は、ユーザによって設定された目的地まで、道路に沿って自車両が走行するように、車両の操舵、加速、減速(換言すれば制動)等を自動で実施する。なお、動作モードの切り替えは、ユーザ操作の他、システム限界や、ODDの退出等に起因して自動的に実行される。
【0066】
ODDとしては、例えば、(a)走行路が高速道路又は中央分離帯とガードレール等が整った片側2車線以上の自動車専用道路であること、(b)渋滞状況であること、等が挙げられる。走行路は、自車両が走行している道路を指す。なお、ここでの渋滞状況は、例えば、自車両の前後の所定距離に他車両が存在し、かつ、走行速度が60km/h以下となっている状態とすることができる。その他、ODDとしては、(c)降雨量が所定の閾値以下であること、(d)前方カメラ11を含む周辺監視センサが正常に動作していることなどが挙げられる。さらに、(e)自車両の所定距離以内に落下物や路上駐車車両が存在しないこと、(f)周辺監視センサの検知範囲に交通信号及び歩行者が存在しないこと、などもODDに含めることができる。自動運転可能/不可と判定する条件、換言すればODDを定義する詳細条件は、適宜変更可能である。
【0067】
ここでは一例として、渋滞状況である場合と、特定の道路区間を走行している場合のそれぞれの場合に自動運転可能であると判定するものとする。便宜上、渋滞状況である場合の自動運転を渋滞時自動運転と称するとともに、特定の道路区間を奏している場合の自動運転をエリア限定自動運転と称する。なお、前述の通り、ODDの設定内容によっては、特定の道路区間を走行中であって、かつ、渋滞中のみ自動運転が可能となる自動運転ECU30のモデルも存在しうる。
【0068】
なお、自動運転システム1は上記の全ての運転モードを備えている必要はない。例えば自動運転システム1が備える運転モードの組み合わせは、完全手動モードと自動運転モードのみであってもよい。また、運転支援モードは、LTC(Lane Trace Control)機能が動作することで、アイズオンは必要なものの、ハンズオフが可能な高度支援モードを含んでいても良い。LTCは、自車走行レーンに沿って自車走行レーン内で自車両を走行させる機能であって、自車走行レーンに沿った予定走行ラインを生成し、EPS等を制御する。LTCとLTAの違いは、操舵の主体がユーザかシステムかである。つまりLTAでは操舵の主体はユーザであるのに対し、LTCはシステムが操舵を実行する点で相違する。ただし、広義においてはLTCもLTAに含まれうる。高度支援モードは、いわゆる自動化レベル2.1~2.9に相当する。高度支援モードは、ハンズオフレベル2モードと呼ぶこともできる。
【0069】
上記の自動運転ECU30は、処理部31、RAM32、ストレージ33、通信インターフェース34、及びこれらを接続するバス等を備えたコンピュータを主体として構成されている。ストレージ33には、処理部31によって実行されるプログラムである車両制御プログラムが格納されている。処理部31が車両制御プログラムを実行することは、車両制御プログラムに対応する車両制御方法が実行されることに相当する。車両制御プログラムには、上述したACCや、LTA、LTCなどに対応するアプリケーションソフトウェアが含まれる。なお、運転支援にかかる処理を実行するプロセッサは、自動運転にかかる処理を実行するプロセッサとは別に設けられていても良い。
【0070】
<自動運転ECU30の構成について>
自動運転ECU30は自動運転プログラムを実行することによって実現される、
図4に示す機能部を備える。すなわち自動運転ECU30は、センサ情報取得部G1、地図取得部G2、他車報告取得部G3、環境認識部G4、能力評価部G5、計画部G6、制御指示部G7、情報提示処理部G8、及び報告処理部G9を有する。
【0071】
センサ情報取得部G1は、運転支援又は自動運転を実施するための多様な情報を取得する構成である。例えばセンサ情報取得部G1は、前方カメラ11を含む種々の周辺監視センサから検出結果(つまり、センシング情報)を取得する。センシング情報には、自車両周辺に存在する他の移動体や、地物、障害物などの位置や、移動速度、種別などが含まれる。また、センサ情報取得部G1は、車両状態センサ13から、自車両の走行速度や加速度、ヨーレート、外部照度などを取得する。さらに、センサ情報取得部G1は、ロケータ14から自車位置情報を取得する。その他、センサ情報取得部G1はDSM17からユーザの視線方向を取得する。
【0072】
地図取得部G2は、自車両の現在位置に対応する動的地図データを取得する。動的地図データの取得元は車両外部に存在する地図サーバであってもよいし、路側機であっても良いし、周辺車両であってもよい。地図サーバや路側機、他車両などが外部装置に相当する。現在位置に対応する地図データとは、自車両が例えば所定時間以内に通過予定の道路区間について地図データである。現在位置に対応する地図データは、現在位置から所定距離以内となるエリアの地図データや、現在位置が属するメッシュの地図データとすることもできる。
【0073】
ここでの動的地図データは、例えば、霧の有無や濃さ、降雨量、降雪量、砂嵐(風塵)の有無など局所的な気象情報などを指す。また動的地図には、積雪など、砂塵局所的な気象状態に伴う地点ごとの路面状態を含めることができる。路面状態には、雪や砂等が道路に覆いかぶさっているか否かも含まれる。また、地図取得部G2は、動的地図データとして地平線に対する太陽の角度(高度)、道路延伸方向に対して太陽が存在する方向や、地点ごとの明るさなどを取得しても良い。
【0074】
その他、地図取得部G2は、動的地図データとして、例えば通行規制がなされている区間や、渋滞区間、路上落下物の位置などを取得する。渋滞区間情報には渋滞区間の先頭位置と末尾位置を含みうる。地図取得部G2は、動的地図データとして、複数の車両の走行軌跡を統合してなる、車線毎の平均軌跡などを外部サーバから取得しても良い。車線毎の平均軌跡は、自動運転時における目標軌道の設定などに使用されうる。動的地図は、車両の走行制御の参考となる動的、準動的、及び準静的な交通情報を示す。
【0075】
さらに、地図取得部G2は、現在位置から所定距離以内についての道路の接続関係や道路構造を示す静的地図データを取得してもよい。静的地図データの取得元は、外部サーバであってもよいし、車両に搭載された地図データベースであってもよい。静的地図データは、ナビゲーション用の地図データであるナビ地図データであってもよいし、自動運転に利用可能な高精度地図データであってもよい。ナビ地図データは、数m~5m程度の誤差を含む地図データであり、高精度地図データは、測位誤差が10cm以下など、ナビ地図データよりも高精度な地図データに相当する。高精度地図データは、例えば道路の3次元形状情報や、区画線および道路端の位置情報、信号機などのランドマークの位置情報を含む。
【0076】
他車報告取得部G3は、他車両から送信されてきた検出能力報告をV2X車載器16より取得する。これにより、自動運転ECU30は、自車両の前方を走行する車両(つまり先行車)における周辺監視センサの検出能力の現状を取得することができる。先行車からの検出能力報告は、自車両の周辺監視センサの検出能力の推移を予測するための材料となりうる。
【0077】
センサ情報取得部G1、地図取得部G2、及び他車報告取得部G3が逐次取得する種々の情報は、例えばRAM32等のメモリに保存され、環境認識部G4などによって利用される。なお、各種情報は、種別ごとに区分されてメモリに保存されうる。また、各種情報は、例えば最新のデータが先頭となるようにソートされて保存されうる。取得から一定時間が経過したデータは破棄されうる。
【0078】
環境認識部G4は、センサ情報取得部G1が取得した自車位置情報や周辺物体情報、及び地図データに基づいて、自車両の走行環境を認識する。例えば環境認識部G4は、前方カメラ11とミリ波レーダ12など、複数の周辺監視センサの検出結果を、所定の重みで統合するセンサフュージョン処理により、自車両の走行環境を認識する。
【0079】
走行環境には、車両周辺に存在する物体の位置や、種別、移動速度などのほか、道路の曲率や、車線数、エゴレーン番号、天候、路面状態、渋滞区間に該当するか否かなどが含まれる。エゴレーン番号は、左又は右の道路端から何番目のレーンを走行しているかを示す。エゴレーン番号の特定は、ロケータ14にて実施されてもよい。天候や路面状態は、前方カメラ11の認識結果と、地図取得部G2が取得した天候情報とを組み合わせることにより特定可能である。道路構造に関しては前方カメラ11の認識結果の他、静的地図データを用いて特定されても良い。環境認識部G4による走行環境の認識結果は、能力評価部G5および計画部G6に提供される。
【0080】
能力評価部G5は、前方カメラ11などの周辺監視センサの物体検出能力を評価及び予測する構成である。能力評価部G5が検出能力予測部に相当する。能力評価部G5はより細かい機能として予測部G51、要因特定部G52、及び現状評価部G53を備える。
【0081】
予測部G51は、現時点から所定の予測時間後における周辺監視センサの検出能力を予測する構成である。予測時間は例えば20秒や、30秒、1分など、5分以下の値とすることができる。要因特定部G52は、予測部G51が周辺監視センサの検出能力が予測時間以内に所定の要求レベル以下となるか否かを判定した場合に、その要因を特定する構成である。ここでの要求レベルとは、自動運転を継続するために必要な性能品質に相当する。現状評価部G53は、現時点における周辺監視センサの検出能力を判定する。現状評価部G53は、例えば周辺監視センサが通常通りの機能を発揮しているか、何らかの事情で一時的に能力が低下しているかを判定する構成である。
【0082】
例えば予測部G51は、地図取得部G2が取得した動的地図データに基づき、周辺監視センサの検出能力が予測時間以内に所定の要求レベル以下となるか否かを判定する。周辺監視センサとは前述の通り、前方カメラ11やミリ波レーダ12、LiDARなどを指す。予測部G51は、周辺監視センサの検出能力が、現時点から予測時間以内に、自動走行を継続するために必要な性能品質である要求レベルを充足しなくなるか否かを判断する構成に相当する。要求レベルは、周辺監視センサごとに具体的に設定されうる。能力評価部G5による検出能力の評価は、周辺監視センサごとに行われうる。
【0083】
予測部G51は、例えば所定時間以内に自車両が通過予定の道路区間についての天候情報や、路面状態などに基づいて、前方カメラ11の検出能力が要求レベルを下回るか否かを予測する。前方カメラ11の検出能力が要求レベルを下回った状態とは、所定の寸法を有する物体、又は規定の物体を検出可能な距離である認識可能距離が、所定の基準値未満となる状態に相当する。認識可能距離に対する基準値は、例えば50mや、100m、150mなどとすることができる。認識可能距離に対する基準値は、対象物が大きいほど、大きい値に設定されうる。また、認識可能距離に対する基準値は、対象物の種類に応じて異なりうる。
【0084】
より具体的には予測部G51は、天候情報に基づき自車両前方に濃霧エリアが存在するか否かを判定する。そして、自車両前方に濃霧エリアが存在する場合に前方カメラ11の検出能力が要求レベルを下回ると判定する。この場合、要因特定部G52は、検出能力低下の原因である低下要因は霧と判定する。
【0085】
ここでの自車両前方は、予測時間以内に自車両が通過する範囲を指す。濃霧エリアとは、概念的には視程が100m未満となる濃度の霧を指す。複数の車両がフォグランプが点灯した状態で通過した地点などが濃霧エリアとなりうる。濃霧エリアの設定は、複数の車両の挙動に基づき地図サーバなどで実施されうる。なお、予測部G51は、自車両よりも前方を走行する複数の車両から車々間通信により、フォグランプを点灯させたことを取得した場合に自車両前方に濃霧エリアが存在すると判定しても良い。
【0086】
また予測部G51は、予測時間以内に西日条件が充足される場合に、前方カメラ11の検出能力が要求レベルを下回ると判定する。この場合、要因特定部G52は、低下要因は西日と判定する。ここでの西日とは、地平線に対する角度が、例えば25度以下となっている太陽から光を指す。西日条件は予め設定されている。例えば西日条件は、時間帯、進行方位角、太陽の高度の少なくとも何れかの項目を用いて規定する事ができる。例えば、(ア)現在時刻が午後3時から20時までの時間帯に属すること、(イ)進行方向が日没方向から30度以内であること、などを西日条件とすることができる。太陽の位置などの情報は動的地図として外部サーバから取得しても良いし、車々間通信で他車両から取得しても良い。また、時刻情報と季節情報に基づき、処理部31が内部演算しても良い。
【0087】
なお、西日条件が充足されたからと言って必ずしも前方カメラ11の検出能力が要求レベルを下回るとは限らない。前方カメラ11のダイナミックレンジの幅など、カメラの性能によっては、西日条件が充足されても要求レベルを充足する場合がある。要求レベルは前方カメラ11のモデルやソフトウェアバージョンに応じて動的に変更されうる。
【0088】
さらに、予測部G51は、天候情報に基づき、自車両前方に豪雨エリアが存在するか否かを判定する。そして、自車両前方に豪雨エリアが存在する場合に前方カメラ11の検出能力が要求レベルを下回ると判定する。この場合、要因特定部G52は、低下要因は豪雨と判定する。
【0089】
ここでの豪雨とは、概念的には、1時間あたりの降雨量が所定の閾値(例えば50mm)を超える勢いで降る雨とすることができる。豪雨には、ある地点における降雨時間が1時間未満(例えば数10分程度の)となる局所的豪雨も含まれる。実体的には、複数の車両がワイパーブレードを所定の速度で動作させている区間が豪雨エリアとなりうる。豪雨エリアの設定は、雨雲レーダの情報や、複数の車両の挙動情報に基づき、地図サーバなどで実施されうる。なお、予測部G51は、自車両よりも前方を走行する複数の車両から車々間通信により、ワイパーブレードを所定の閾値以上の速度で駆動させていることを取得した場合に自車両前方に豪雨エリアが存在すると判定しても良い。
【0090】
また、予測部G51は、自車両前方に区画線不明瞭エリアが存在するか否かを判定しても良い。そして、自車両前方に区画線不明瞭エリアが存在する場合に前方カメラ11の検出能力が要求レベルを下回ると判定する。ここでの区画線不明瞭エリアとは、かすれ等の劣化により、区画線が薄くなっているエリアを指す。区画線不明瞭エリアには、区画線が完全に消えている区間を含めることができる。また、区画線不明瞭エリアには、路面が雪で覆われている積雪エリアや、道路が砂で覆われている覆砂エリアも含めることができる。なお、覆砂エリアは、区画線が付与された舗装道路において、砂嵐などによって一時的に区画線が砂で覆われているエリアを指す。
【0091】
区画線不明瞭エリアは、画像認識による区画線検出が困難なエリアを指す。区画線不明瞭エリアの設定は、地図サーバなどで実施され、車両に配信されうる。なお、予測部G51は、自車両よりも前方を走行する複数の車両から車々間通信により、区画線の認識率が低下していることを示す報告を取得したことに基づいて自車両前方に区画線不明瞭エリアが存在することを検知しても良い。要因特定部G52は、動的地図データや前方カメラ11の画像を解析することにより、低下要因はかすれ(劣化)、雪、又は砂塵と判定することができる。ただし、車線区画線が不明瞭となる理由としては種々考えられるため、要因特定部G52は、低下要因は不明と判定してもよい。
【0092】
現状評価部G53は、前方カメラ11がランドマークを実際に認識できる距離範囲(以降、実効認識距離)を算出する。実効認識距離は、設計上の認識限界距離とは異なり、霧や降雨、西日等の外的要因で変動するパラメータである。仮に設計上の認識限界距離が200mほどある構成においても、降雨量によっては50m未満まで縮退しうる。現状評価部G53は、例えば所定時間以内において、前方カメラ11がランドマークを最も遠くから検出できた距離(以降、最遠認識距離)の平均値に基づいて実効認識距離を算出する。例えば、直近所定時間以内に観測された4つのランドマークの最遠認識距離が50m、60m、30m、40mである場合、実効認識距離は45mと算出されうる。或るランドマークについての最遠認識距離は、当該ランドマークの最初に検出できた時点での検出距離に相当する。
【0093】
なお、ランドマークの実効認識距離は、先行車によるオクルージョンなど、天候等以外の要因によっても低下しうる。故に、所定距離に以内に先行車が存在する場合には、実効認識距離の算出は省略されても良い。また、自車両前方が直線路ではない場合、つまりカーブ路である場合にも実効認識距離は低下しうる。故に、前方道路がカーブである場合には、実効認識距離の算出は省略されても良い。なお、カーブ路は曲率が所定の閾値以上の道路とする。
【0094】
また、現状評価部G53は、ランドマークの代わり/並列的に、区画線に対する実効認識距離を算出してもよい。車線区画線の実効認識距離は、路面をどれくらい遠くまで認識できているかを示す情報に相当する。実効認識距離の算出に用いる区画線は自車両が走行している車線であるエゴレーンの左/右側或いは両側の区画線とすることが好ましい。隣接車線の外側区画線は、他車両に遮られる可能性が有るためである。区画線の実効認識距離は、例えば直近所定時間以内における認識距離の平均値とすることができる。このような区画線の実効認識距離は例えば認識距離の移動平均値に相当する。区画線の実効認識距離として移動平均値を用いる構成によれば、他車両が区画線を遮ることによって生じる、瞬間的な認識距離の変動を抑制することができる。
【0095】
なお、現状評価部G53は、エゴレーンの右側区画線に対する実効認識距離と、左側区画線に対する実効認識距離を別々に算出してもよい。その場合、右側区画線の実効認識距離と左側区画線の実効認識距離のうちの大きい方を区画線の実効認識距離として採用可能である。そのような構成によれば、仮に左側又は右側の区画線の何れか一方が、カーブや先行車等によって見えない状況においても、前方カメラ11がどこまで遠くまで区画線を認識可能な状態であるかを精度良く評価可能となる。もちろん、右側区画線の実効認識距離と左側区画線の実効認識距離のうちの平均値を区画線の実効認識距離として採用してもよい。
【0096】
予測部G51は、前方カメラ11の区画線またはランドマークに対する実効認識距離や認識率の履歴に基づいて、検出能力の推移傾向を特定し、予測時間以内に要求レベルを下回るか否かを判断してもよい。例えば、ランドマークに対する実効認識距離を逐次算出する構成においては、予測部G51は、ランドマークに対する実効認識距離の時系列データに基づき、ランドマークの実効認識距離が減少傾向にあるか否かを判定する。ランドマークの実効認識距離が減少傾向にある場合、予測部G51は、その減少速度を算出する。そして、現在の値と減少速度とに基づき、現時点から予測時間以内に実効認識距離が要求レベルに対応する所定の基準値を下回るか否かを判定する。ランドマークの実効認識距離に対する基準値は例えば50mや100mなどとすることができる。
【0097】
区画線に対する実効認識距離を逐次算出する構成においては、予測部G51は、区画線に対する実効認識距離の時系列データに基づき、区画線の実効認識距離が減少傾向にあるか否かを判定する。区画線の実効認識距離が減少傾向にある場合、予測部G51は、その減少速度を算出する。そして、現在の値と減少速度とに基づき、現時点から予測時間以内に区画線に対する実効認識距離が要求レベル相当の基準値を下回るか否かを判定する。区画線の実効認識距離に対する基準値は例えば50mや100mなどとすることができる。
【0098】
その他、能力評価部G5は前方カメラ11から検出物ごとの認識結果の確からしさを示す確率値を取得しうる。予測部G51は、例えば100mなど、所定距離前方に位置する物体に対する識別結果の確率値の時系列データに基づき、当該確率値が減少傾向にあるか否かを判定してもよい。また、確率値が減少傾向にある場合、予測部G51は、その減少速度を算出する。そして、現在の確率値と減少速度とに基づき、現時点から予測時間以内に、所定距離前方での認識率が所定の基準値を下回るか否かを判定してもよい。
【0099】
さらに、現状評価部G53は、前方カメラ11での認識結果と、地図データあるいはLiDARなどのその他の周辺監視センサでの認識結果とを比較して、所定距離前方に位置する物体に対する前方カメラ11での認識結果の正当率(正解率)を算出しても良い。予測部G51は、当該認識結果の正当率が減少傾向にあって、且つ、予測時間以内に当該正答率が要求レベルに対応する所定の基準値を下回るか否かを判定してもよい。
【0100】
以上で述べたように能力評価部G5は、動的地図データや、先行車両からの報告、実際の前方カメラ11での認識結果の履歴などの少なくとも何れかに基づいて、予測時間以内に前方カメラ11の検出能力が要求レベルを下回るか否かを判定する。以上では前方カメラ11の検出能力が要求レベルを下回ると予測する方法の具体例について述べたが、ミリ波レーダやLiDARなどについてもセンサの特性に応じた指標を用いて、検出能力が要求レベルを下回る見込みがあるか否かを判定することができる。
【0101】
計画部G6は、運転支援又は自動運転として実行する制御内容を計画する構成である。例えば計画部G6は自動運転モード時、環境認識部G4による走行環境の認識結果に基づき、自律的に走行させるための走行計画、換言すれば制御計画を生成する。制御計画には、時刻ごとの走行位置や目標速度、操舵角などが含まれる。すなわち、走行計画には、算出した経路における速度調整のための加減速のスケジュール情報や、操舵量のスケジュール情報を含みうる。
【0102】
例えば計画部G6は、中長期の走行計画として、経路探索処理を行い、自車位置から目的地へ向かわせるための推奨経路を生成する。また、計画部G6は、中長期の走行計画に沿った走行を行うための短期の制御計画として、車線変更の走行計画、レーン中心を走行する走行計画、先行車に追従する走行計画、及び障害物回避の走行計画等が生成する。例えば計画部G6は、短期の制御計画として、例えば、認識しているエゴレーンの中央を走行する経路を走行計画として生成したり、認識している先行車の挙動又は走行軌跡に沿う経路を走行計画として生成したりする。
【0103】
計画部G6は、自車の走行路が片側複数車線の道路に該当する場合には、追い越しのための車線変更を行うプラン候補を生成しうる。計画部G6は、周辺監視センサ又は動的地図データに基づき自車両前方に障害物が存在することが認識されている場合には、障害物の側方を通過する走行計画を生成してもよい。計画部G6は、機械学習又は人工知能技術等によって最適と判定される走行計画を生成するように構成されていてもよい。なお、最適な走行計画とは安全性が担保される範囲においてユーザの指示に沿った制御計画に相当する。計画部G6が作成した制御計画は制御指示部G7に入力される。
【0104】
自動運転ECU30は、自動運転機能を提供するためのサブ機能として、ACC、LTA、及びLTCのそれぞれに対応する処理を実行する。ACC、LTA、及びLTCのそれぞれに対応する機能部は、自動運転を実施するためのサブシステムと解することができる。計画部G6は各アプリケーションに対応する計画を作成する。
【0105】
図4に示すACC部G61は、先行車に追従した走行を実現するための計画を生成する機能モジュールである。ACC部G61が先行車追従制御部に相当する。例えばACC部G61は、ユーザに指定された/走行環境に応じて自動的に定まる目標車間距離を維持するように走行速度の制御計画を随時作成及び更新する。なお、走行速度は、ユーザに指定された/走行環境に応じて自動的に定まる目標値を基準とする所定の範囲内で先行車に追従するように調整される。
【0106】
さらに、計画部G6は、臨時対応部G62を備える。臨時対応部G62が、能力評価部G5にて周辺監視センサの検出能力が要求レベルを下回ると判定された場合にのみ実行される、所定の臨時制御を行う計画を作成する。臨時制御についての詳細は別途後述する。
【0107】
制御指示部G7は、計画部G6で策定された制御計画に基づく制御指令を生成し、走行アクチュエータへ向けて逐次出力する。また、制御指示部G7は、計画部G6の計画や外部環境に基づき、方向指示器やヘッドライト、ハザードランプ等の点灯/消灯なども、走行計画や外部環境に応じて制御する。
【0108】
情報提示処理部G8は、計画部G6で策定された制御計画に基づき、情報提示装置18を介してユーザへの通知/提案を行う。例えば情報提示処理部G8は、自動運転システム1の動作状態を示す画像をHUD18Aに表示する。自動運転システム1の動作状態には、前方カメラ11を含む周辺監視センサが正常に動作しているか、運転モード、走行速度、車線変更までの残り時間等を含む。また、情報提示処理部G8は、高速道路の退出などに伴う運転交代までの残り時間が所定時間以内となった場合には、ハンドオーバーの予告なども実施しうる。さらに、情報提示処理部G8は、計画部G6の計画のもと、臨時制御を開始した場合には、臨時制御を行っていることを示す画像をHUD18Aに表示する。
【0109】
報告処理部G9は、能力評価部G5が評価結果に基づき、検出能力報告に相当するデータセットを生成して、他車両や地図サーバに送信する。例えば検出能力報告は、現状評価部G53が算出した周辺監視センサの検出能力の実測値(実効値)を示すデータセットとすることができる。
【0110】
<自動運転ECU30の作動について>
次に自動運転ECU30が実施する、周辺監視センサの検出能力の低下に係る一連の処理である検出能力低下応答処理について
図5に示すフローチャートを用いて説明する。
図5に示すフローチャートは、例えば1秒ごとや10秒ごと、1分ごとなど、所定の周期で開始されれば良い。ここでは一例として検出能力低下応答処理は、ステップS101~S108を備える。なお、検出能力低下応答処理を構成する処理ステップの数や順番は適宜変更可能である。ここでは一例として周辺監視センサのうち、前方カメラ11を処理の対象とするパターンを例にとって説明するが、ミリ波レーダ12など他のセンサについても同様に実施できる。
【0111】
まずステップS101では現在の運転モードである現行モードの設定データをRAM22等から読み出してステップS102に移る。ステップS102ではセンサ情報取得部G1や地図取得部G2、他車報告取得部G3などが以降の処理で使用する種々の情報を取得してステップS103に移る。例えば前方カメラ11での検出結果や、動的地図データ、他車両からの報告などを取得する。また、現状評価部G53による実行認識距離の算出などといった自動運転ECU30での内部演算処理もステップS102で行われうる。
【0112】
ステップS103では現行モードが自動運転モードであるか否かを判定する。現行モードが自動運転モードである場合にはステップS103を肯定判定してステップS104に移る。一方、現行モードが自動運転モードではない場合にはステップS103を否定判定して本フローを終了する。
【0113】
ステップS104では予測部G51が上述した種々の方法の1つ又は複数を用いて現時点から予測時間以内に前方カメラ11の物体検出能力が要求レベルを下回るか否かを判定する。予測部G51が現時点から予測時間以内に前方カメラ11の検出能力が要求レベルを下回ると判定した場合には、ステップS105が肯定判定されてステップS106に移る。一方、予測部G51が予測時間以内に検出能力が要求レベルを下回ると判定していない場合にはステップS105が否定判定されて本フローを終了する。
【0114】
ステップS106では要因特定部G52が、検出能力が要求レベルを下回ると予測部G51が判定した理由(ロジック)に基づき、検出能力の低下要因を特定してステップS107に移る。低下要因が不明な類型に該当する場合、要因特定部G52は、低下要因は不明と判断することができる。ステップS106など、低下要因を特定する構成は任意の要素であって省略されても良い。
【0115】
ステップS107では臨時対応部G62が所定の臨時制御を実行する計画を作成する。なお、自動運転ECU30は臨時対応部G62を含む計画部G6が作成した計画に基づき制御を行う。故に、臨時対応部G62は臨時制御を実行する構成と解する事ができる。
【0116】
臨時制御としては(A)ライト制御、(B)車間距離の設定値変更、(C)並走運転の開始、及び(D)横方向における走行位置の調整、の一部又は全部を採用可能である。(A)ライト制御は、前照灯又はフォグランプを点灯させる制御である。当該臨時制御としてのライト制御は、照度センサから提供される照度が自動点灯閾値以上であっても実施される。例えば臨時対応部G62は、照度センサが検出する外部照度が自動点灯閾値以上であっても、臨時制御として、前照灯又はフォグランプを点灯させる。点灯させる灯火装置151は、前照灯であってもよいし、フォグランプであっても良い。例えば前照灯が点灯していない場合には、臨時制御として前照灯を点灯させる。その際の点灯モードはロービーム、ハイビーム、セミハイビームの何れであっても良く、予め設定された/環境に応じたモードで点灯させることができる。また、前照灯を点灯済みの場合にはフォグランプを追加的に点灯させる。もちろん、前照灯を点灯していなくとも、予め設定されたルールに基づき、臨時制御としてフォグランプを点灯させてもよい。
【0117】
さらに、臨時対応部G62は、要因特定部G52が特定している低下要因に応じて点灯させる灯火装置151を切り替えてもよい。例えば臨時対応部G62は要因特定部G52によって物体検出能力の低下要因が霧であると判定されている場合には、臨時制御として、フォグランプを点灯させる。これにより、実際に濃霧エリアに進入する前から、換言すれば物体検出能力が要求レベルを下回る前からフォグランプを点灯させることができる。その結果、霧による前方カメラ11での物体検出能力の低下度合いを抑制し、自動運転モードが中断される恐れを低減できる。また、原因が不明である場合にはライト制御として、セミハイビームを照射させてもよい。これにより、自車両近傍の路面が通常のロービームよりも明るく照射されるため、検出能力が低下することを抑制でき、自動運転モードの継続性を高めることができる。
【0118】
(B)車間距離の設定値の変更は、例えば車間距離の目標値を、ユーザが手動設定した、又は、目標速度に応じてシステムが自動設定する本来値よりも所定量長くする制御である。車間距離の目標値の変更はACC部G61との協働により実現される。本来値に対する目標値の増大幅は、例えば25mや50mなどとすることができる。目標値の増大幅は走行速度の目標値が高い程大きくなるように、例えば車間時間の概念で決定されても良い。車間距離の目標値を長くすることで、先行車両の事故等の緊急時にも退避制御までの時間を確保することができる。その結果、安全性を高めることができる。本来値は基本値又は通常値と呼ぶこともできる。
【0119】
なお、(B)車間距離の設定値の変更は、例えば車間距離の目標値を、ユーザが指定した、又は、目標速度に応じてシステムが自動設定する本来値よりも所定量短くする制御であってもよい。目標値の短縮幅は、例えば25mや50mなどとすることができる。目標値の短縮幅は、走行速度の目標値が大きい程小さくなるように動的に決定されても良い。車間距離の目標値を短くすることで、先行車を認識しやすくなる。換言すれば先行車を見失いにくくなる。よって、追従走行状態を維持しやすくできる。なお、(B)車間距離の設定値変更は、先行車を捕捉できていることを条件に実行されても良い。
【0120】
(C)並走運転の開始は、例えば隣接車線を走行する他車両と並走するように速度調整を行う制御を開始することを指す。並走運転によれば、他車両を基準として道路の幅方向における走行位置が決まりやすく、エゴレーンを維持しやすくなる。換言すれば、レーンからはみ出して走行する恐れを低減できる。並走対象とする他車両は、自車両右側の車両とすることが好ましい。左側通行の地域においては相対的に右側のレーンは追い越し用レーンである可能性が高く、左側の車両と並走すると、交通の流れを妨げることに繋がりかねないためである。なお、自動運転ECU30は、並走制御の対象とする他車両が方向指示器を作動させたことを画像認識又は車々間通信で検知した場合には、並走制御を解除するものとする。
【0121】
なお、他車両と並走している状態には、真横を走行している状態に限らず、真横よりも5m~20m程度後方を走行する態様も含まれる。完全に真横だと、他車両の乗員に不快感を与えうる。また、完全に真横となる位置近傍は、サイドミラーの死角となりやすく、他車両のユーザによる視認性が良好とは言えない。そのような事情から、並走運転としては、他車両の真横よりも所定量後方となる位置を走行することが好ましい。
【0122】
(D)横方向における走行位置の調整は、道路幅方向における走行位置を調整することであって、具体的には第1レーンを走行するように、車線変更を行うことを指す。第1レーンを走行している場合には、道路端が周辺監視センサの検出範囲に含まれうる。道路端は、段差や、ガードレール、側壁などによって規定されうる。道路端は、車線区画線と異なり立体的な構造を有するため、ミリ波レーダなど多様なセンサで検出されやすい。よって、区画線が認識しづらい状況下でも、相対的に道路端の位置は認識しやすい。道路端の位置が認識できると、道路の形状や、道路幅方向における自車両の走行位置を特定しやすくなる。その結果、自車両がレーンからはみ出して走行する恐れを低減できる。ひいては自動運転を中断する恐れを低減できる。
【0123】
なお、臨時対応部G62は(A)~(D)として全ての制御を実施する必要はなく、一部のみを選択的に計画及び実施することができる。例えば(C)並走運転の開始又は(D)横方向における走行位置の調整は、先行車が存在せずに先行車追従走行を実施できない場合にのみ適用されても良い。先行車が存在する場合には(C)よりも(B)を優先的に実施することが好ましい。複数の臨時制御例のうち、何れを行うかは、走行環境や低下要因に応じて選択的に実施されうる。
【0124】
自動運転ECU30はステップS107の次の処理としてステップS108を実行する。ステップS108では情報提示処理部G8が、臨時制御を開始したことを画像表示等にてユーザに通知する。すなわち、臨時制御を開始したことをユーザに事後報告する。なお、臨時制御の実行報告は省略されても良い。ユーザはセカンドタスクを実施中であり、過度な情報提示はユーザに煩わしさを与える恐れがあるためである。同様の観点から、臨時制御を開始したことの通知処理は、画像表示にとどめ、音声メッセージや通知音は出力しなくとも良い。臨時制御を開始したことを通知するための画像である、臨時制御報告画像は、実行している臨時制御の概要を示す情報を含んでいることが好ましい。臨時制御を実行中、HCU20は自動運転ECU30からの指示に基づき、その旨を示すアイコン画像をHUD18A等に表示しても良い。
【0125】
なお、ここでは一例として複数の周辺監視センサのうちの1つでも、検出能力が要求レベルを下回るものがあった場合に臨時制御を開始するものとするが、これに限らない。複数の周辺監視センサのうち、特定の周辺監視センサの検出能力が要求レベルを下回った場合にのみ、臨時制御を実行するように構成されていても良い。
【0126】
また、臨時制御の内容は、検出能力が低下したセンサに応じて変更されても良い。例えば、前方カメラ11の検出能力が低下した場合と、ミリ波レーダ12の検出能力が低下した場合とで実行する臨時制御を異ならせても良い。具体的には前方カメラ11の検出能力が低下した場合には、ACCにおける走行速度の目標値を変更せずに、車間距離の設定値等を変更する。一方、ミリ波レーダ12の検出能力が低下した場合には走行速度の目標値を所定量低減する。ミリ波レーダ12が正常に動作している限りは先行車両との距離や相対速度を精度良く検出できる一方、ミリ波レーダが不調となるときめ細やかな速度調整が実施しにくくなる。速度を所定量抑制する構成によれば、先行車両等の予期せぬ事象に対応するための時間的猶予を増大させることができ、安全性を高めることができる。
【0127】
その他、(B)車間距離の設定変更の具体的な内容は、走行環境が渋滞区間であるか否かに応じて変更されても良い。走行環境が渋滞区間である場合には、(B)として車間距離の設定値を所定量短くする制御を実施する。一方、走行環境が渋滞区間ではない場合には、(B)として車間距離の設定値を所定量長くする制御を実施する。渋滞中は車間距離の設定値を小さめにすることにより、先行車の動きを精度良く検出可能となる。また、渋滞中ではない場合、すなわち一定値以上の速度で走行中は車間距離を本来の設定値よりも長めにすることにより、先行車の急ブレーキ等に対しより安全に応答しやすくなる。なお、臨時対応部G62は、検出能力の低下に伴って車間距離を本来値から変更している場合において、検出能力が要求レベル以上まで回復した場合には車間距離の設定を本来値に復元するものとする。
【0128】
<上記構成の効果>
以上の構成では、周辺監視センサの検出能力が自動運転を継続するための要求レベルを下回る見込みがある場合には、事前に安全性/物体認識性を高めるための臨時制御を開始する。当該構成によれば、周辺監視センサの検出能力が実際に要求レベルを下回ることを回避したり、検出能力が要求レベル未満となるまでの残余時間を伸ばしたりする効果が期待できる。その結果、自動運転モードを頻繁に中断すること、ひいてはユーザの利便性を損なう恐れを低減できる。
【0129】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。例えば下記の種々の補足や変形例などは、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。なお、以上で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については上記説明を適用することができる。
【0130】
臨時制御の内容は上述した例に限定されない。例えば臨時対応部G62は、臨時制御として、(E)自動走行時の目標速度の設定値をユーザ/システムが設定した本来の値よりも所定量下げる制御(換言すれば設定変更)を実施しても良い。
【0131】
また、臨時対応部G62は、臨時制御として、(F)ハンドオーバーリクエストを実施しても良い。ハンドオーバーリクエストは、HMIシステム2と連動して、運転席乗員またはオペレータに対して運転操作の引き継ぎ要求を実施することに相当する。ハンドオーバーリクエストは、運転交代を要求する報知処理に相当する。
【0132】
また、臨時対応部G62は、臨時制御として、(G)運転交代の準備を開始することを要求するスタンバイリクエストを実施しても良い。スタンバイリクエストは、運転交代の準備、具体的には前方等の監視を始めることを要求する処理に相当する。スタンバイリクエストは、ハンドオーバーリクエストよりも緊急性が低い要求と解することができる。スタンバイリクエストを行う態様によれば、ユーザはセカンドタスクが一区切りしたタイミングで運転交代の準備を行うことができる。急にハンドオーバーリクエストを行う場合よりも、セカンドタスクが中途半端な状態で運転操作を再開することを低減できるため、ユーザの利便性を損なう恐れを低減できる。
【0133】
なお、自動運転モードである場合にはユーザがディスプレイへの表示に気が付かない可能性が蓋然的に高い。そのため、ハンドオーバーリクエストでは、運転交代を要求するメッセージ画像をHUD18A等に表示するだけでなく、同様の内容の音声メッセージを出力することが好ましい。一方、スタンバイリクエストは、所定の通知音とともに運転躯体の準備を開始することを要求するメッセージ画像をHUD18A等に表示する処理としてもよい。スタンバイリクエストは相対的に緊急性が低いため、音声メッセージの出力は省略されても良い。
【0134】
自動運転ECU30は、複数の臨時制御を並列的に順番に実施しても良い。例えば前述の(A)~(E)の何れか1つ又は複数を実施した後に、(G)及び(F)を順番に実施しても良い。運転交代を促す前に、臨時制御としての(A)~(E)の何れかを実施することで、自動運転モードを継続可能な時間を延長することができる。これにより、セカンドタスクが中断されるおそれを低減できる。また、ユーザに対して運転交代までの猶予を与えることが可能となるため、利便性を向上させることができる。
【0135】
また、自動運転ECU30は、以上で例示した複数の臨時制御のうちの何れか1つだけを実施するように構成されていても良い。例えば自動運転ECU30は自動運転モード時、検出能力が要求レベルを下回ると予想された場合、(A)~(E)の何れも実施せずに、(F)又は(G)を実施するように構成されていても良い。
【0136】
また、臨時対応部G62は、自動運転モード時、外部照度が自動点灯閾値未満である状況において、ユーザの視線が前方に向いていない場合には、ライト制御に関し、次の制御を実施しても良い。すなわち、前照灯をロービームモードにしても周辺監視センサの検出能力が要求レベルを充足する場合には、対向車または先行車が前方に車両が存在していなかったとしてもハイビームではなくロービームを照射する。ユーザが周辺監視をしておらず、周辺監視センサの検出精度も良好である場合には、ハイビームを照射する必要性が薄く、電力の無駄となりうる。また、ハイビームは周辺の歩行者等に眩しさを与えうる。上記の構成によれば、節電効果や周辺交通との協調性を高めるといった効果が期待できる。なお、ユーザの視線が前方に向いているか否かはDSM17の出力信号から特定可能である。また、前照灯をロービームモードにしても周辺監視センサの検出能力が要求レベルを充足するか否かは、例えばいったん数秒程度ロービームに設定した状態で検出能力を評価することで判定されれば良い。
【0137】
以上では能力評価部G5が現時点から予測時間後には所定の周辺監視センサの検出能力が要求レベルを逸脱すると判定した時点で、臨時制御を開始する態様を開示したが、これに限らない。周辺監視センサの検出能力が要求レベルを逸脱すると判定してから臨時制御を開始するまでの間には時間差が設けられていても良い。臨時制御は、検出能力が要求レベルを逸脱すると予測されている時刻である逸脱予定時刻よりも前に開始されれば良い。例えば予測時間は1分とする一方、臨時制御の開始は、逸脱予定時刻の15秒前から開始されていても良い。実際に臨時制御を開始するタイミングは、臨時制御の内容に応じて変更されても良い。例えば車間距離の設定値の変更や、走行速度の抑制、前照灯の点灯は、予測時間後に検出能力が要求レベルを逸脱すると判定された時点から開始する一方、フォグランプの点灯は逸脱予定の1分前から開始してもよい。地域によっては、濃霧エリア等の悪環境下ではないシーンでのフォグランプの点灯は交通ルールとして許可されてないことがありうる。濃霧エリアから1分以内となる範囲は概ね悪環境であり、交通ルールに適した振る舞いとなることが期待できる。
【0138】
<付言>
自動運転ECU30などの本開示に記載の装置、システム、並びにそれらの手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路を用いて実現されてもよい。さらに、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。例えば自動運転ECU30が備える機能の一部又は全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、1つ又は複数のICなどを用いて実現する態様が含まれる。自動運転ECU30は、CPUの代わりに、MPUやGPU、DFP(Data Flow Processor)を用いて実現されていてもよい。自動運転ECU30は、CPUや、MPU、GPUなど、複数種類の演算処理装置を組み合わせて実現されていてもよい。自動運転ECU30は、システムオンチップ(SoC:System-on-Chip)として実現されていても良い。自動運転ECU30は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を用いて実現されていても良い。各種プログラムは、非遷移的実体的記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に格納されていればよい。プログラムの保存媒体としては、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、SD(Secure Digital)カード等、多様な記憶媒体を採用可能である。
【0139】
上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能は、複数の構成要素によって実現されてもよいし、1つの構成要素が有する1つの機能が、複数の構成要素によって実現されてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現されてもよいし、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現されてもよい。加えて、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。コンピュータを自動運転ECU30として機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体等の形態も本開示の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0140】
1 自動運転システム、11 前方カメラ(周辺監視センサ)、12 ミリ波レーダ(周辺監視センサ)、15 ボディECU(灯火制御装置)、151 灯火装置、16 V2X車載器、17 DSM、18 情報提示装置、19 入力装置、20 HCU、30 自動運転ECU(車両制御装置)、31 処理部、G1 センサ情報取得部、G2 地図取得部、G3 他車報告取得部、G4 環境認識部、G5 能力評価部(検出能力予測部)、G6 計画部、G7 制御指示部、G8 情報提示処理部、G9 報告処理部、G51 予測部、G52 要因特定部、G53 現状評価部、G61 ACC部(先行車追従制御部)、G62 臨時対応部