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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】解析装置、解析方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20240110BHJP
【FI】
G06Q50/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021054397
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022151361
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江間 伸明
(72)【発明者】
【氏名】神戸 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】石 建信
(72)【発明者】
【氏名】安念 正人
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-168027(JP,A)
【文献】特開2019-003545(JP,A)
【文献】特開2003-203151(JP,A)
【文献】特開2018-097801(JP,A)
【文献】国際公開第2020/183667(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象プラントを稼働させるのに要するオペレータの作業のうち、少なくとも一部の対象作業を自動化した場合の前記対象プラントの作業コストの変化を算出する作業コスト算出部を備え、
前記作業コスト算出部は、前記対象作業を自動化しない場合の前記オペレータの第1作業量と、前記対象作業を自動化した場合の前記オペレータの第2作業量とに基づいて、前記作業コストの変化を算出する
解析装置。
【請求項2】
前記対象作業を自動化するための自動化コストを算出する自動化コスト算出部と、
前記作業コストと前記自動化コストを比較するコスト比較部と
を更に備える請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記対象作業を自動化した場合に、自動で実行されている前記対象作業に対する前記オペレータの監視負担の変化を算出する監視負担算出部を更に備える
請求項1または2に記載の解析装置。
【請求項4】
前記作業コスト算出部は、前記対象作業を自動化したことにより前記オペレータの監視負担が低減したことを条件として、前記オペレータに他の作業を実行させた場合の前記作業コストの変化を算出する
請求項3に記載の解析装置。
【請求項5】
前記対象プラントの稼働中において前記オペレータが行った作業の履歴を記憶する作業履歴記憶部を更に備え、
前記作業コスト算出部は、前記作業履歴記憶部が記憶した前記作業の履歴に基づいて、前記第1作業量を算出する
請求項1から4のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項6】
既存プラントの稼働中において前記オペレータが行った作業の履歴を記憶する作業履歴記憶部を更に備え、
前記作業コスト算出部は、前記作業履歴記憶部が記憶した前記作業の履歴に基づいて、前記第1作業量を算出する
請求項1から4のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項7】
前記作業履歴記憶部は、前記既存プラントにおいて作業を自動化した場合の、自動化前の作業の履歴と、自動化後の作業の履歴とを記憶し、
前記作業コスト算出部は、前記作業履歴記憶部が記憶した前記作業の履歴に基づいて、前記第1作業量および前記第2作業量を算出する
請求項6に記載の解析装置。
【請求項8】
前記作業コスト算出部は、複数の前記対象作業について、自動化した場合の前記作業コストの変化を算出し、
前記解析装置は、前記作業コスト算出部が算出した複数の前記作業コストの変化に基づいて、自動化すべき作業を抽出する作業抽出部を更に備える
請求項1から7のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項9】
前記対象プラントの複数の前記対象作業について、自動化した場合に生じるリスクを評価したリスク評価情報を記憶するリスク記憶部を更に備え、
前記作業抽出部は、前記リスク評価情報に更に基づいて、自動化すべき作業を抽出する
請求項8に記載の解析装置。
【請求項10】
前記リスク記憶部は、前記リスク評価情報として、既存プラントにおいて作業を自動化した事例に関する情報を記憶する
請求項9に記載の解析装置。
【請求項11】
作業の対象となる対象機器の動作をシミュレーションし、前記作業を行った場合の前記対象機器の実際の動作結果と、前記シミュレーションによる動作結果とに基づいて、当該作業の前記リスク評価情報を生成するリスク評価生成部を更に備える
請求項9または10に記載の解析装置。
【請求項12】
作業の対象となる対象機器について、前記対象機器に入力される中間製品と、前記対象機器が出力する処理製品との差異に基づいて、前記対象機器に対する前記作業の前記リスク評価情報を生成するリスク評価生成部を更に備える
請求項9または10に記載の解析装置。
【請求項13】
対象プラントを稼働させるのに要するオペレータの作業のうち、少なくとも一部の対象作業を自動化しない場合の前記オペレータの第1作業量と、前記対象作業を自動化した場合の前記オペレータの第2作業量とに基づいて、前記対象作業を自動化した場合の前記対象プラントの作業コストの変化をコンピュータが算出する作業コスト変化算出ステップを備える、
解析方法。
【請求項14】
前記コンピュータに、請求項13に記載の解析方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析装置、解析方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラント等における処理を、手動モードおよび自動モードから選択できる装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2019-96268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プラント等における処理を自動化した場合のコスト面のメリットを解析できることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、対象プラントを稼働させるのに要するオペレータの作業のうち、少なくとも一部の対象作業を自動化した場合の対象プラントの作業コストの変化を算出する作業コスト算出部を備える解析装置を提供する。
【0005】
本発明の第2の態様においては、対象プラントを稼働させるのに要するオペレータの作業のうち、少なくとも一部の対象作業を自動化した場合の対象プラントの作業コストの変化を算出する解析方法を提供する。
【0006】
本発明の第3の態様においては、コンピュータに、第2の態様に係る解析方法を実行させるためのプログラムを提供する。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】プラントの動作を解析する解析装置100の構成例を示す。
図2】作業コスト記憶部12が記憶する情報の一例を示す図である。
図3】自動化コスト記憶部22が記憶する情報の一例を示す図である。
図4】作業リストの一例を示す図である。
図5】解析装置100の他の構成例を示す図である。
図6】作業リスト生成部40の動作例を説明する図である。
図7】解析装置100の他の構成例を示す図である。
図8】解析装置100の他の構成例を示す図である。
図9】解析装置100の他の構成例を示す図である。
図10】作業履歴記憶部14が記憶する作業履歴の一例を示す図である。
図11】作業履歴記憶部14が記憶する作業履歴の他の例を示す図である。
図12】解析装置100の他の構成例を示す図である。
図13】作業履歴記憶部14が記憶する情報の他の例を示す図である。
図14】解析装置100の他の構成例を示す図である。
図15】解析装置100の他の構成例を示す図である。
図16】リスク記憶部52が記憶するリスク評価情報の一例を示す図である。
図17】解析対象プラントの解析方法の一例を示す図である。
図18】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されうるコンピュータ1200の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、プラントの動作を解析する解析装置100の構成例を示す。解析装置100は、既に存在するプラントの動作を解析してよく、将来建設するプラントの動作を解析してもよい。プラントは、例えば、水処理施設、生産施設、発電施設、および、貯蔵施設等の施設の少なくとも一部である。解析対象のプラントを、対象プラントと称する。対象プラントは、機器および配管等の設備を備える。本明細書では、特に明示的に区別していなければ、機器および配管等の設備を、単に機器と称する。
【0011】
本例の解析装置100は、所定のデータ処理を行うコンピュータである。コンピュータは、当該コンピュータを解析装置100の各部として機能させるためのプログラムを実行してよい。
【0012】
解析装置100は、対象プラントを稼働させるのに要するオペレータの作業を自動化した場合の、対象プラントの作業コストの変化を解析する。対象プラントを稼働させるのに要する作業は、当該作業を行うことで、対象プラントの挙動、または、信頼性に影響を与える全ての作業を含む。例えば当該作業には、対象プラントに含まれる機器のバルブ等を直接的に操作する作業、対象プラントに設けられた制御用のコンピュータにより間接的に対象プラントの機器を制御する作業、および、遠隔地からコンピュータ等により対象プラントの機器を制御する作業を含む。また、オペレータの作業は、対象プラントの機器の状態を監視する作業を含む。また、オペレータの作業は、他のオペレータへの通信のように、対象プラントの挙動には直接影響しないが、対象プラントを稼働させるのに付随して発生する作業を含む。対象プラントを稼働させるのに要する作業とは、対象プラントを建設する作業を含まない。
【0013】
作業コストとは、当該作業を行うのに要するコストである。作業コストは、金額であらわされてよく、他の単位であらわされてもよい。例えば作業コストは、当該作業に要する人数と作業時間の積(いわゆる工数)であらわされてもよい。作業コストは、当該作業に要する電力等の資源の量を含んでよい。作業コストは、複数の種類のコストの総和を金額に換算した値であってもよい。作業コストは、所定の単位期間毎に継続的に発生するコストを含んでよく、作業の開始時等の所定のタイミングで発生するコストを含んでよい。
【0014】
作業の自動化とは、オペレータが行っていた作業の一部または全部を、機械、ロボットまたはコンピュータ等により自動的に行うことを指す。自動化された作業は、機械またはコンピュータ等が全ての作業を行ってよく、オペレータと機械またはコンピュータ等とが協働して行ってもよい。自動化の前後において、各作業により生成される結果が同一となるように、各作業が自動化されてよい。
【0015】
解析装置100は、作業コスト算出部10を備える。解析装置100は、作業コスト記憶部12、自動化コスト算出部20、自動化コスト記憶部22およびコスト比較部30を備えてよい。
【0016】
作業コスト算出部10は、対象プラントを稼働させるのに要するオペレータの作業のうち、少なくとも一部の対象作業を自動化した場合の対象プラントの作業コストの変化を算出する。本例の作業コスト算出部10には、対象プラントを稼働させるのに要するオペレータの作業の全部または一部を示す作業リストと、いずれの作業を自動化するかを示す自動化箇所の情報が入力されてよい。作業リストおよび自動化箇所は、解析装置100の使用者により指定されてよい。
【0017】
作業コスト算出部10は、対象作業を自動化しない場合のオペレータの第1作業量と、対象作業を自動化した場合のオペレータの第2作業量とに基づいて、作業コストの変化を算出してよい。オペレータの作業量とは、例えば当該作業に要する人数と時間の積(工数)である。
【0018】
作業コスト記憶部12は、上述した作業コストを算出するための情報を記憶する。例えば作業コスト記憶部12は、複数の作業について、自動化しない場合の第1作業量と、自動化した場合の第2作業量とを記憶してよい。作業コスト算出部10は、作業コスト記憶部12が記憶した情報に基づいて、対象作業を自動化しない場合と、自動化した場合の作業コストの変化を算出してよい。これにより、対象作業を自動化した場合の作業コストの低減度合いを解析できる。
【0019】
自動化コスト算出部20は、対象作業を自動化するための自動化コストを算出する。自動化コストは、対象作業を自動化するために要する全ての費用を含んでよい。例えば自動化コストは、対象作業を自動化するのに用いる機械、コンピュータ、その他の装置の費用を含む。自動化コスト算出部20は、他のプラントから流用可能な装置を記憶したデータベースから、自動化に用いる装置を検索してよい。当該データベースは、解析装置100に設けられてよく、ネットワークを介して解析装置100と接続可能であってもよい。当該データベースには、それぞれの装置を自動化に用いる場合の費用が記憶されている。当該データベースは、他のプラントにおいて使用されずに余っている装置を記憶してよい。また、自動化コストは、自動化するのに要するエンジニア等の作業の費用を含んでよい。また、自動化コストは、所定の単位期間毎に継続的に発生するコストを含んでよく、自動化時等の所定のタイミングで発生するコストを含んでよい。自動化コスト算出部20には、自動化箇所を示す情報が入力されてよい。
【0020】
自動化コスト記憶部22は、上述した自動化コストを算出するための情報を記憶する。例えば自動化コスト記憶部22は、複数の作業について、自動化するのに要する装置、装置の費用、作業の費用を記憶してよい。自動化コスト算出部20は、自動化コスト記憶部22が記憶した情報に基づいて、対象作業の自動化コストを算出してよい。
【0021】
コスト比較部30は、作業コスト算出部10が算出した作業コストと、自動化コスト算出部20が算出した自動化コストとを比較する。コスト比較部30は、対象作業の自動化による作業コストの低減量と、自動化コストとを比較してよい。コスト比較部30は、自動化後に所定の期間プラントを稼働させた場合の、作業コストの低減量と、自動化コストとを比較してよい。当該期間は、解析装置100の使用者が指定してよく、予め設定された期間を用いてもよい。コスト比較部30は、当該期間を変化させた場合の、作業コストの低減量と自動化コストとの比較結果の推移を算出してもよい。コスト比較部30は、作業コストの低減量が、自動化コストより大きいか否かを判定してよい。コスト比較部30は、作業コストの低減量が、自動化コストよりどれだけ大きいかを算出してもよい。これにより、自動化によるコストメリットを解析できる。コスト比較部30は、比較結果を解析装置100の使用者に出力してよい。コスト比較部30は、比較結果を表示してよく、送信してもよい。
【0022】
解析装置100は、既に稼働中のプラントを対象プラントとしてよい。解析装置100は、設計段階のプラントを対象プラントとしてもよい。解析装置100は、コスト比較部30の比較結果に基づいて、各作業を自動化すべきか否かを判定してよい。
【0023】
図2は、作業コスト記憶部12が記憶する情報の一例を示す図である。作業コスト記憶部12は、プラントを稼働させるための作業毎に、自動化前の第1作業量、自動化の種類、自動化後の第2作業量を記憶してよい。自動化の種類とは、用いる装置、自動化の程度等の自動化の態様を指す。例えば、同一の作業の自動化であっても、異なる性能の装置を用いることで、自動化した作業の信頼性等が変化する。また、同一の作業の自動化であっても、自動化後にオペレータが行わなければならない作業量によって自動化の程度が異なる。例えば、複数の操作を含む作業において、自動化する操作の個数を変化させることで、自動化の種類は変化する。
【0024】
作業コスト記憶部12は、同一の作業に対して、複数の自動化種類を記憶してよい。作業コスト記憶部12は、自動化種類毎に、第2作業量を記憶してよい。自動化の方法が異なっていても、自動化前の第1作業量は同一なので、作業コスト記憶部12は、自動化種類が異なっていても、同一の作業については同一の第1作業量を記憶してよい。作業コスト記憶部12は、既存のプラントで行った自動化の実績に基づいて、それぞれの作業の第1作業量、第2作業量および自動化種類を記憶してよい。作業コスト記憶部12は、自動化種類および対象作業の内容に基づいてシミュレーション等を行って解析した第1作業量および第2作業量を記憶してもよい。
【0025】
図3は、自動化コスト記憶部22が記憶する情報の一例を示す図である。自動化コスト記憶部22は、それぞれの作業に対して、自動化種類毎に、自動化に用いる装置費用、自動化するための作業費用、または、自動化後の装置の運転費用の少なくとも一つを記憶する。自動化コスト記憶部22は、同一の作業に対して、複数の自動化種類を記憶してよい。
【0026】
解析装置100は、対象作業に対する複数の自動化種類について、作業コストの変化と、自動化コストとを比較してよい。解析装置100は、コストメリットの最も大きい自動化種類を抽出してよい。
【0027】
自動化コスト記憶部22は、既存のプラントで行った自動化の実績に基づいて、装置費用、作業費用、または、運転費用の少なくとも一つを記憶してよい。自動化コスト記憶部22は、自動化種類および対象作業の内容に基づいてシミュレーション等を行って解析した各費用を記憶してもよい。
【0028】
図4は、作業リストの一例を示す図である。作業リストは、複数の作業W1~Wnを含む。それぞれの作業は、作業の順序に応じて時系列に並んでいてよい。一部の作業は、他の作業と並行して行う作業であってもよい。解析装置100は、作業リストに含まれる1つ以上の対象作業Wkを自動化したときの、作業コストの変化等を解析する。
【0029】
作業リストに含まれる各作業は、各作業に変更を加えた場合に、他の作業に直接的な影響しないように、独立性を保って構成されている。各作業は、前段または更に前の作業の結果が入力され、当該入力に応じた処理を行うように構成される。各作業の処理は、他の作業における処理の方法には依存しない。つまり、他の作業における処理の方法(例えば、手動なのか、自動なのか、処理温度、処理時間等のパラメータの変更、または、複数ラインで並列に処理するのか、単一ラインで順次に処理するのか等)によらず、入力される結果に依存した処理を行う。
【0030】
仮に、例えば作業W1を自動化した場合に、他の作業W2~Wnの処理に影響を与えてしまうと、作業W1の作業コストだけでなく、他の作業W2~Wnの作業コストも変動し得る。この場合、作業全体の作業コストの変化を解析しなければ、精度よく作業コストの変動を解析できない。これに対して、本例のように各作業が独立性を保つように、各作業を構成することで、自動化する作業の作業コストだけを解析すれば、作業全体の作業コストの変化を精度よく解析できる。
【0031】
図5は、解析装置100の他の構成例を示す図である。本例の解析装置100は、図1に示した例に対して、作業リスト生成部40を更に備える。他の構成は、図1から図4において説明した解析装置100と同様である。
【0032】
作業リスト生成部40は、図4において説明した作業リストを生成する。作業リスト生成部40には、対象プラントを稼働させるためのオペレータの作業内容が入力される。作業内容は、オペレータに要求される各々の操作の内容が示されていてよい。作業リスト生成部40は、各操作の内容に基づいて、1つまたは複数の操作をまとめて、一つの作業とする。
【0033】
図6は、作業リスト生成部40の動作例を説明する図である。作業リストには、時系列に並んだ複数の操作Y1~Ymを含む作業内容が入力される。それぞれの操作Yは、例えばバルブの開度を調整する、装置の温度を上げる等の、プラントの機器に対する操作であってよい。作業内容は、解析装置100の使用者等から入力されてよい。操作Yは、プラントの制御装置の画面表示、または、センサ値を確認する等の、プラントの機器の状態を確認する操作を含んでもよい。
【0034】
作業リスト生成部40は、1つまたは複数の操作Yをまとめて、一つの作業Wとする。作業リスト生成部40は、それぞれの操作内容に基づいて、ある操作Yを自動化した場合に、影響を受ける他の操作を検出する。例えば、図6の操作Y2a、Y2bのように、並行して行う必要がある2つの操作は、一方の操作の遅延が、他方の操作を遅延させ得る。このような場合、作業リスト生成部40は、これらの操作を、互いに影響を与える操作として検出する。作業リスト生成部40は、互いに影響を与える操作が1つの作業に含まれるように、操作内容を作業リストに変換する。
【0035】
このような処理により、それぞれの操作Yを、独立性を保持した作業Wにまとめることができる。これにより、各作業を自動化した場合のコストを、より精度よく解析できる。
【0036】
図7は、解析装置100の他の構成例を示す図である。本例の解析装置100は、図1から図6において説明したいずれかの解析装置100の構成に加えて、作業独立性判定部42を備える。他の構成は、図1から図6において説明したいずれかの態様の解析装置100と同様である。図7では、図1に示した解析装置100の構成に、作業独立性判定部42を追加した構成を例示している。
【0037】
作業独立性判定部42には、作業リストが入力される。作業リストは、解析装置100の使用者等から入力されてよく、図6において説明した作業リスト生成部40から入力されてもよい。作業独立性判定部42は、作業リストに含まれるそれぞれの作業が、上述した独立性を有しているか否かを判定する。
【0038】
作業独立性判定部42は、変更対象の作業Wx内における一部の操作またはパラメータを変更した場合に、作業Wx以外の作業である判定対象の作業Wzの出力が変化するか否かを判定する。判定対象の作業Wzの出力が変化しない場合に、作業独立性判定部42は、作業Wzが、作業Wxに対して独立していると判定してよい。作業独立性判定部42は、それぞれの判定対象の作業Wzが、全ての変更対象の作業Wxに対して独立しているか否かを判定してよい。他の例では、作業独立性判定部42は、判定対象の作業Wzよりも前に実施される全ての作業Wxに対する、作業Wzの独立性を判定してよく、判定対象の作業Wzの直前に実施される作業Wxに対する、作業Wzの独立性を判定してもよい。
【0039】
変更対象の作業Wxの出力(作業の結果)が、判定対象の作業Wzで用いられる関係を有する場合、作業独立性判定部42は、変更対象の作業Wxの処理の方法だけを変更し、作業Wxの作業の結果は変更しないと仮定した場合に、作業Wzの出力が変化するか否かを判定してよい。作業Wzの出力が変化しない場合、作業独立性判定部42は、作業Wzが、作業Wxに対して独立していると判定してよい。
【0040】
作業独立性判定部42は、他の全ての作業に対して独立性を有する作業Wを自動化対象の作業として選択して、自動化コスト算出部20および作業コスト算出部10に通知してよい。他の例では、作業独立性判定部42は、それぞれの作業間の独立性を示す情報を、作業リストに付して出力してよい。自動化コスト算出部20は、他の全ての作業に対して独立性を有する作業Wを自動化対象の作業として選択してよい。
【0041】
図8は、解析装置100の他の構成例を示す図である。本例の解析装置100は、図5において説明した解析装置100の構成に加えて、作業独立性判定部42を備える。他の構成は、図5において説明したいずれかの態様の解析装置100と同様である。本例の作業独立性判定部42は、図7において説明した作業独立性判定部42と同様の機能を有してよい。
【0042】
本例の作業独立性判定部42は、作業リスト生成部40が生成した作業リストに含まれる各作業が独立性を有するかを判定する。作業独立性判定部42は、いずれかの作業が独立性を有していない場合、その旨を作業リスト生成部40に通知する。作業独立性判定部42は、どの作業Waが、どの作業Wbに対して独立性を有していないのかを、作業リスト生成部40に通知してよい。また、作業独立性判定部42は、作業Waのどの作業内容Yaが、作業Wbのどの作業内容Ybに対して独立性を有していないのかを、作業リスト生成部40に通知してもよい。
【0043】
作業リスト生成部40は、作成した作業リストに含まれるいずれかの作業が独立性を有していない場合、作業独立性判定部42からの通知に基づいて作業リストを再度作成する。例えば作業リスト生成部40は、独立性を有していないと判定された一組の作業Wa、Wbを、まとめて一つの作業としてよい。また、作業リスト生成部40は、独立性を有していないと判定された一組の作業内容Ya、Ybが一つの作業Wに含まれるように、一連の作業内容Yを各作業に割り当て直してもよい。作業リスト生成部40および作業独立性判定部42は、作業リストの各作業が独立性を保持するまで、作業リストの作成と、独立性の判定とを繰り返してよい。
【0044】
図9は、解析装置100の他の構成例を示す図である。本例の解析装置100は、図1から図8において説明したいずれかの解析装置100の構成に加えて、作業履歴記憶部14を備える。他の構成は、図1から図8において説明したいずれかの態様の解析装置100と同様である。図9では、図1に示した解析装置100の構成に、作業履歴記憶部14を追加した構成を例示している。
【0045】
作業履歴記憶部14は、対象プラントの稼働中において、オペレータが行った作業の履歴を記憶してよい。作業履歴記憶部14は、既存プラントの稼働中において、オペレータが行った作業の履歴を記憶してもよい。作業履歴記憶部14は、対象プラントまたは既存プラントにおいて、既に自動化されている自動作業の履歴も記憶してよい。本例の作業コスト算出部10は、作業履歴記憶部14が記憶した作業の履歴に基づいて、それぞれの作業の第1作業量または第2作業量の少なくとも一方を算出してよい。
【0046】
図10は、作業履歴記憶部14が記憶する作業履歴の一例を示す図である。本例の作業履歴記憶部14は、対象プラントにおける作業履歴を記憶する。作業履歴記憶部14は、それぞれの作業について、オペレータの識別情報、および、作業時間を記憶してよい。作業履歴記憶部14は、当該作業を行った人数を示す情報を記憶してよい。図10の例の作業履歴記憶部14は、複数人で当該作業を行った場合、各オペレータの識別情報を記憶する。また作業履歴記憶部14は、同一人で当該作業を繰り返し行った場合、平均の作業時間を記憶してよい。
【0047】
同一の作業を異なるオペレータが行った場合、作業履歴記憶部14は、オペレータ毎に当該作業の履歴を記憶してよい。作業コスト算出部10は、同一の作業に対する作業時間として、オペレータ毎の作業時間の平均値を用いてよい。
【0048】
図11は、作業履歴記憶部14が記憶する作業履歴の他の例を示す図である。本例の作業履歴記憶部14は、既存プラントにおいて作業を自動化した場合の、自動化前の作業の履歴と、自動化後の作業の履歴とを記憶する。本例の作業履歴記憶部14は、図10に示した作業履歴に加えて、自動化後の作業時間を記憶してよい。つまり本例の作業履歴記憶部14は、既存プラントにおいて、各作業を自動化する前の第1作業時間と、自動化した後の第2作業時間とを記憶する。これにより、既存プラントの実績から、自動化による作業時間の変化を精度よく検出できる。
【0049】
作業コスト算出部10は、対象プラントにおける対象作業と類似する作業を、作業履歴記憶部14から抽出してよい。作業コスト算出部10は、対象作業と、作業履歴記憶部14に記憶された作業との類似度を算出してよい。作業の類似度は、対象機器の種類、性能、構造、規模のいずれかの属性が類似するほど高く算出されてよい。作業の類似度は、作業の内容、作業に要する時間のいずれかの属性が類似するほど高く算出されてよい。作業の類似度は、当該作業により生成される結果物、当該作業により出力されるパラメータ値、または、当該作業において入力するパラメータ値のいずれかの属性が類似するほど高く算出されてよい。属性の類似度は、予め定められた演算式により算出してよい。それぞれの作業には、上記属性が予め設定されてよい。作業履歴記憶部14は、当該属性を記憶してよい。
【0050】
また、作業履歴記憶部14は、自動化種類毎に、作業履歴を記憶してよい。つまり、同一の作業に対して、異なる自動化種類の複数の作業履歴を記憶してよい。作業コスト算出部10は、対象作業に対して行おうとしている自動化種類と類似する作業履歴を抽出してよい。自動化種類の類似度は、自動化に用いる装置、自動化の範囲のいずれかの属性が類似するほど高く算出されてよい。
【0051】
図12は、解析装置100の他の構成例を示す図である。本例の解析装置100は、図1から図11において説明したいずれかの解析装置100の構成に加えて、作業履歴記憶部14と監視負担算出部16を備える。他の構成は、図1から図11において説明したいずれかの態様の解析装置100と同様である。図12では、図1に示した解析装置100の構成に、作業履歴記憶部14と監視負担算出部16を追加した構成を例示している。
【0052】
監視負担算出部16は、対象作業を自動化した場合に、自動で実行される対象作業に対するオペレータの監視負担の変化の推定値を算出する。オペレータの監視負担とは、オペレータが機器等の状態を監視し得る状態にいることを要求される拘束時間の長さである。拘束時間は、オペレータが機器を操作する時間と、機器に対して操作はしないが他の作業をせずに待機している時間とを含んでよい。例えば拘束時間は、機器に対して所定の操作を行った場合に、機器の動作が安定するまで待機する時間を含む。作業の自動化により、拘束時間は低減し得る。
【0053】
機器等の状態を監視することが要求されない場合、当該機器を制御するための制御装置に、その旨が表示されてよい。オペレータの監視負担は、所定の単位期間のうち、当該表示がされない期間の長さであってよい。監視負担算出部16は、既存プラントにおける実績値に基づいて、当該推定値を算出してよい。作業履歴記憶部14は、既存プラントにおけるオペレータの監視負担の変化の実績値を記憶してよい。
【0054】
作業コスト算出部10は、監視負担が低下したオペレータに対して、他の作業を実行させた場合の、作業コストを算出してよい。つまり作業コスト算出部10は、対象作業を自動化することで手の空いたオペレータに他の作業を割り当てることで、全体的な作業コストの低減量を算出してよい。作業コスト算出部10は、対象作業を自動化したことによりオペレータの監視負担が低減したことを条件として、オペレータに他の作業を実行させた場合の作業コストの変化を算出してよい。
【0055】
また、作業コスト算出部10は、オペレータに対して、並行して実行する複数の作業を割り当ててもよい。この場合、オペレータの人数を低減できるので、これらの作業の作業コストを更に低減できる。作業履歴記憶部14は、それぞれのオペレータについて、複数の作業を並行して実行した場合の評価を記憶してよい。当該評価は、複数の作業を並行して行った経験の有無、当該経験の長さ、複数の作業を並行して行った場合の作業の正確性、作業の効率等を含んでよい。作業コスト算出部10は、当該評価が一定以上のオペレータに、複数の作業を割り当ててよい。また、作業コスト算出部10は、オペレータに複数の作業を割り当てた場合の作業効率に基づいて、これらの作業の作業コストを補正してよい。例えばそれぞれのオペレータに対して、複数の作業を並行して実行した場合の作業効率の低下率が設定されており、作業コスト算出部10は、当該低下率に基づいて作業コストを補正してよい。作業効率の低下率は、それぞれのオペレータの過去の実績における、複数の作業を並行して実行した場合の作業コストと、それぞれの作業を単独で実行した場合の総作業コストとの比較結果から算出してよい。
【0056】
図13は、作業履歴記憶部14が記憶する情報の他の例を示す図である。本例の作業履歴記憶部14は、図11において説明した情報に加えて、各作業を自動化する前後における、オペレータの監視負担(拘束時間の長さ)の実績値を記憶する。当該実績値は、既存プラントにおいて測定した値であってよい。
【0057】
本例においても、監視負担算出部16は、対象プラントにおける対象作業と類似する作業を、作業履歴記憶部14から抽出してよい。監視負担算出部16は、対象作業と、作業履歴記憶部14に記憶された作業との類似度を算出してよい。
【0058】
監視負担算出部16は、対象プラントにおける対象作業を実行するオペレータと類似するオペレータの実績値を、作業履歴記憶部14から抽出してよい。オペレータの類似度は、例えばオペレータの当該作業の経験年数、当該作業に関する資格、オペレータに対する評価等の属性に基づいて算出してよい。作業履歴記憶部14は、それぞれのオペレータの属性を記憶してよい。
【0059】
作業コスト算出部10は、手の空いたオペレータに他のいずれの作業を割り当てるかを、当該オペレータの監視負担の低減量に基づいて決定してよい。作業コスト算出部10は、作業履歴記憶部14に記憶された第1作業量と、監視負担の低減量とを比較してよい。作業コスト算出部10は、それぞれの作業を、監視負担の低減分で行えるか否かを、当該比較結果から判定してよい。
【0060】
また、作業コスト算出部10は、それぞれの作業を行う場所に基づいて、手の空いたオペレータに他のいずれの作業を割り当てるかを決定してもよい。例えば作業コスト算出部10は、自動化する対象作業を行う場所からの距離が近い場所で行う作業を優先して、当該オペレータに割り当ててよい。作業コスト算出部10には、それぞれの作業を行う場所の情報が与えられてよい。
【0061】
また、作業コスト算出部10は、当該オペレータの属性に基づいて、他のいずれの作業を割り当てるかを決定してもよい。当該属性は、オペレータが経験したことのある作業、または、オペレータが実行可能な作業に関する情報を含んでよい。当該属性は、オペレータの遠隔作業に対する評価を含んでもよい。当該評価は、どのような作業を遠隔で行ったことがあるかの履歴を含んでよく、それぞれの遠隔作業に要した時間等の、遠隔作業の効率性に関する評価を含んでもよい。作業コスト算出部10は、オペレータの属性に基づいて、遠隔地のオペレータを、各作業に割り当ててもよい。例えば作業コスト算出部10は、当該作業に対する遠隔操作の効率性が所定値以上であることを条件として、遠隔地のオペレータを、各作業に割り当ててよい。
【0062】
また、作業コスト算出部10は、対象プラントの所在地と、各オペレータの所在地との時差に基づいて、各作業に割り当てるオペレータを抽出してもよい。例えば作業コスト算出部10は、当該作業を実施すべき時間が、各オペレータの所在地の現地時間において予め設定された作業推奨時間帯に含まれるオペレータを抽出してよい。また、作業コスト算出部10は、対象プラントの所在地の現地時間において当該作業を実施すべき時間が、予め設定された作業非推奨時間帯に含まれる場合に、上述したように遠隔地のオペレータを抽出してよい。例えば、対象プラントの所在地の現地時間において当該作業を実施すべき時間が深夜の時間帯である場合に、作業コスト算出部10は、当該作業を通常の就業時間内に実施できる遠隔地のオペレータを抽出する。これにより、当該作業を実施するコストを低減でき、また、作業の品質を向上できる。また、作業コスト算出部10は、時差が所定値以上のオペレータを抽出して、抽出したオペレータの中から、各作業に割り当てるオペレータを選択してよい。時差が所定値以上であれば、各オペレータの手が空いている可能性が高くなり、効率よくオペレータを抽出できる。
【0063】
図14は、解析装置100の他の構成例を示す図である。本例の解析装置100は、図1から図13において説明したいずれかの解析装置100の構成において、コスト比較部30に代えて作業抽出部50を備える。他の構成は、図1から図13において説明したいずれかの態様の解析装置100と同様である。図14では、図1に示した解析装置100の構成において、作業抽出部50を備えた構成を例示している。作業抽出部50は、コスト比較部30の機能を有していてもよい。
【0064】
本例の作業コスト算出部10は、作業リストに含まれる作業のうち、複数の作業のそれぞれについて、作業を自動化する前後の作業コストの変化を算出する。作業抽出部50は、それぞれの作業における自動化する前後の作業コストの変化と、自動化コストとに基づいて、自動化を推奨する作業を抽出する。作業抽出部50は、作業コストの低減量と、自動化コストとの差分が大きいものから順番に、自動化を推奨する作業をリスト化して出力してよい。作業抽出部50は、それぞれの作業と、当該作業を自動化したときの作業コストの低減量と、自動化コストとを対応付けて出力してよい。
【0065】
図15は、解析装置100の他の構成例を示す図である。本例の解析装置100は、図14において説明した解析装置100の構成に加えて、リスク記憶部52およびリスク評価生成部54を備える。他の構成は、図14において説明した解析装置100と同様である。
【0066】
リスク記憶部52は、対象プラントの複数の対象作業について、自動化した場合に生じるリスクを評価したリスク評価情報を記憶する。リスク記憶部52は、既存プラントにおける作業の自動化で生じた故障、品質劣化等のリスク事例に関する情報を記憶してよい。本明細書において「リスク」とは、不利益な事象が生じるような、いわゆるマイナスリスクを指す。リスク記憶部52は、作業を自動化したときのリスクを数値化したリスク評価値を記憶してもよい。リスク記憶部52は、自動化種類毎に、リスク評価情報を記憶してよい。作業抽出部50が、リスク記憶部52が記憶したリスク評価情報に基づいて、当該リスク評価値を算出してもよい。
【0067】
リスク評価値は、自動化を行ったときにリスク事例が発生する確率、リスク事例が発生した場合の機器の修復費用、機器の性能劣化の度合い、機器の停止期間、リスク事例が影響を与える機器の範囲、プラントの生成物の品質劣化、生成量低下等に基づいて算出してよい。リスク評価値は、リスク事例が発生する確率が高いほど高く、リスク事例が発生した場合の損失が大きいほど高くなる。
【0068】
また、当該作業におけるオペレータの操作頻度、または、操作量に基づいて、リスク評価値が算出されてもよい。オペレータの操作頻度、または、操作量が少ない作業は、自動化した場合のリスク評価値が小さくてよい。
【0069】
作業抽出部50は、リスク記憶部52が記憶したリスク評価情報に基づいて、自動化を推奨する作業を抽出する。例えば作業抽出部50は、自動化した場合のリスク評価値が一定の範囲に含まれる作業を抽出してよい。
【0070】
リスク記憶部52は、作業の対象となる対象機器の動作のシミュレーション結果から生成したリスク評価情報を記憶してもよい。リスク評価生成部54は、当該シミュレーションを行い、リスク評価情報を生成してよい。リスク評価生成部54は、作業を行った場合の対象機器の実際の動作結果と、シミュレーションによる動作結果とに基づいて、当該作業を自動化した場合のリスク評価情報を生成してよい。つまり、リスク評価生成部54は、対象機器の実際の動作と、推定される動作との比較結果を、リスク評価情報としてよい。実際の動作と、推定される動作との乖離が小さい場合には、自動化した場合であってもイレギュラーな動作が発生する可能性が低いので、自動化した場合のリスク評価値を低く見積もってよい。実際の動作結果は、解析対象のプラントにおける動作結果を用いてよく、既存プラントにおける類似の作業における動作結果を用いてもよい。
【0071】
また、リスク評価生成部54は、作業の対象となる対象機器について、対象機器に入力される中間製品と、対象機器が出力する処理製品との差異に基づいて、対象機器に対する作業のリスク評価情報を生成してよい。中間製品および処理製品は、液体、気体、固体のいずれの状態であってもよい。中間製品および処理製品との差異は、上述した状態の相違、特定の物質の濃度の相違、粘度等の特性の相違のいずれかを含んでよい。これらの相違は、予め定められたアルゴリズムに沿って数値化されてよい。当該作業の中間製品および処理製品の相違が小さい場合には、当該作業が最終製品に与える影響は比較的に小さいと考えられるので、当該作業を自動化した場合のリスク評価値を小さく見積もってよい。
【0072】
図16は、リスク記憶部52が記憶するリスク評価情報の一例を示す図である。リスク記憶部52は、それぞれの作業に対して、既存のプラントで行った自動化種類、発生したリスク事例、リスク事例により生じた費用、リスク事例が回復するのに要した期間、リスク事例が影響を与えた機器の範囲の少なくともいずれかを記憶する。リスク記憶部52は、それぞれの作業に対して、リスク事例が発生しなかった自動化の例も記憶してよい。リスク記憶部52は、上述したように、それぞれの自動化種類に対してリスク評価値を対応付けて記憶してよい。またリスク記憶部52は、シミュレーション結果から算出したリスク評価情報、または、対象機器の中間製品および処理製品の差異から生成したリスク評価情報を記憶してもよい。
【0073】
図17は、解析対象プラントの解析方法の一例を示す図である。解析方法における各処理は、図1から図16において説明した解析装置100の動作と同様である。
【0074】
まず、作業コスト算出部10が、所定の作業を自動化した前後の作業コストの変化を算出する(S1501)。また、自動化コスト算出部20が、当該作業を自動化するための自動化コストを算出する(S1502)。そして、コスト比較部30が、作業コストの変化と、自動化コストを比較する(S1503)。解析方法においては、図17に示す処理の他、図1から図16において説明した処理を行ってよい。
【0075】
図18は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されうるコンピュータ1200の構成例を示す。コンピュータ1200にインストールされたプログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられるオペレーション又は当該装置の1又は複数の「部」として機能させ、又は当該オペレーション又は当該1又は複数の「部」を実行させることができ、及び/又はコンピュータ1200に、本発明の実施形態に係るプロセス又は当該プロセスの段階を実行させることができる。このようなプログラムは、コンピュータ1200に、本明細書に記載のフローチャート及びブロック図のブロックのうちのいくつか又はすべてに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU1212によって実行されてよい。また、本発明の実施形態に係るプロセス又は当該プロセスの段階は、クラウド上で実行されてもよい。
【0076】
本実施形態によるコンピュータ1200は、CPU1212、RAM1214、グラフィックコントローラ1216、及びディスプレイデバイス1218を含み、これらはホストコントローラ1210によって相互に接続される。コンピュータ1200はまた、通信インターフェイス1222、ハードディスクドライブ1224、DVD-ROMドライブ1226、及びICカードドライブのような入出力ユニットを含み、これらは入出力コントローラ1220を介してホストコントローラ1210に接続される。コンピュータはまた、ROM1230及びキーボード1242のようなレガシの入出力ユニットを含み、これらは入出力チップ1240を介して入出力コントローラ1220に接続される。
【0077】
CPU1212は、ROM1230及びRAM1214内に格納されたプログラムに従い動作し、これにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ1216は、RAM1214内に提供されるフレームバッファ等又は当該グラフィックコントローラ1216自体の中に、CPU1212によって生成されるイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス1218上に表示させる。
【0078】
通信インターフェイス1222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ1224は、コンピュータ1200内のCPU1212によって使用されるプログラム及びデータを格納する。DVD-ROMドライブ1226は、プログラム又はデータをDVD-ROM1201から読み取り、ハードディスクドライブ1224にRAM1214を介してプログラム又はデータを提供する。ICカードドライブは、プログラム及びデータをICカードから読み取り、及び/又はプログラム及びデータをICカードに書き込む。
【0079】
ROM1230は、内部に、アクティブ化時にコンピュータ1200によって実行されるブートプログラム等、及び/又はコンピュータ1200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入出力チップ1240はまた、様々な入出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入出力コントローラ1220に接続してよい。
【0080】
プログラムが、DVD-ROM1201又はICカードのようなコンピュータ可読記憶媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読記憶媒体から読み取られ、コンピュータ可読記憶媒体の例でもあるハードディスクドライブ1224、RAM1214、又はROM1230にインストールされ、CPU1212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置又は方法が、コンピュータ1200の使用に従い情報のオペレーション又は処理を実現することによって構成されてよい。
【0081】
例えば、通信がコンピュータ1200及び外部デバイス間で実行される場合、CPU1212は、RAM1214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェイス1222に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェイス1222は、CPU1212の制御の下、RAM1214、ハードディスクドライブ1224、DVD-ROM1201、又はICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、又はネットワークから受信した受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ領域等に書き込む。
【0082】
また、CPU1212は、ハードディスクドライブ1224、DVD-ROMドライブ1226(DVD-ROM1201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイル又はデータベースの全部又は必要な部分がRAM1214に読み取られるようにし、RAM1214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックしてよい。
【0083】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような、様々なタイプの情報が、情報処理されるべく、記録媒体に格納されてよい。CPU1212は、RAM1214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプのオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1214に対しライトバックする。また、CPU1212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU1212は、当該複数のエントリの中から、第1の属性の属性値が指定されている条件に一致するエントリを検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、これにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0084】
以上の説明によるプログラム又はソフトウェアモジュールは、コンピュータ1200上又はコンピュータ1200近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバシステム内に提供されるハードディスク又はRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能であり、これにより、プログラムをコンピュータ1200にネットワークを介して提供する。
【0085】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0086】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
[項目1]
対象プラントを稼働させるのに要するオペレータの作業のうち、少なくとも一部の対象作業を自動化した場合の前記対象プラントの作業コストの変化を算出する作業コスト算出部を備える、解析装置。
[項目2]
前記対象作業を自動化するための自動化コストを算出する自動化コスト算出部と、
前記作業コストと前記自動化コストを比較するコスト比較部と、
を更に備える項目1に記載の解析装置。
[項目3]
前記作業コスト算出部は、前記対象作業を自動化しない場合の前記オペレータの第1作業量と、前記対象作業を自動化した場合の前記オペレータの第2作業量とに基づいて、前記作業コストの変化を算出する、項目1または2に記載の解析装置。
[項目4]
前記対象作業を自動化した場合に、自動で実行されている前記対象作業に対する前記オペレータの監視負担の変化を算出する監視負担算出部を更に備える、項目3に記載の解析装置。
[項目5]
前記作業コスト算出部は、前記対象作業を自動化したことにより前記オペレータの監視負担が低減したことを条件として、前記オペレータに他の作業を実行させた場合の前記作業コストの変化を算出する、項目4に記載の解析装置。
[項目6]
前記対象プラントの稼働中において前記オペレータが行った作業の履歴を記憶する作業履歴記憶部を更に備え、
前記作業コスト算出部は、前記作業履歴記憶部が記憶した前記作業の履歴に基づいて、前記第1作業量を算出する、
項目3から5のいずれか一項に記載の解析装置。
[項目7]
既存プラントの稼働中において前記オペレータが行った作業の履歴を記憶する作業履歴記憶部を更に備え、
前記作業コスト算出部は、前記作業履歴記憶部が記憶した前記作業の履歴に基づいて、前記第1作業量を算出する、
項目3から5のいずれか一項に記載の解析装置。
[項目8]
前記作業履歴記憶部は、前記既存プラントにおいて作業を自動化した場合の、自動化前の作業の履歴と、自動化後の作業の履歴とを記憶し、
前記作業コスト算出部は、前記作業履歴記憶部が記憶した前記作業の履歴に基づいて、前記第1作業量および前記第2作業量を算出する、
項目7に記載の解析装置。
[項目9]
前記作業コスト算出部は、複数の前記対象作業について、自動化した場合の前記作業コストの変化を算出し、
前記解析装置は、前記作業コスト算出部が算出した複数の前記作業コストの変化に基づいて、自動化すべき作業を抽出する作業抽出部を更に備える、
項目1から8のいずれか一項に記載の解析装置。
[項目10]
前記対象プラントの複数の前記対象作業について、自動化した場合に生じるリスクを評価したリスク評価情報を記憶するリスク記憶部を更に備え、
前記作業抽出部は、前記リスク評価情報に更に基づいて、自動化すべき作業を抽出する、
項目9に記載の解析装置。
[項目11]
前記リスク記憶部は、前記リスク評価情報として、既存プラントにおいて作業を自動化した事例に関する情報を記憶する、項目10に記載の解析装置。
[項目12]
作業の対象となる対象機器の動作をシミュレーションし、前記作業を行った場合の前記対象機器の実際の動作結果と、前記シミュレーションによる動作結果とに基づいて、当該作業の前記リスク評価情報を生成するリスク評価生成部を更に備える、項目10または11に記載の解析装置。
[項目13]
作業の対象となる対象機器について、前記対象機器に入力される中間製品と、前記対象機器が出力する処理製品との差異に基づいて、前記対象機器に対する前記作業の前記リスク評価情報を生成するリスク評価生成部を更に備える、項目10または11に記載の解析装置。
[項目14]
対象プラントを稼働させるのに要するオペレータの作業のうち、少なくとも一部の対象作業を自動化した場合の前記対象プラントの作業コストの変化を算出する、解析方法。
[項目15]
コンピュータに、項目14に記載の解析方法を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0087】
10 作業コスト算出部、12 作業コスト記憶部、14 作業履歴記憶部、16 監視負担算出部、20 自動化コスト算出部、22 自動化コスト記憶部、30 コスト比較部、40 作業リスト生成部、42 作業独立性判定部、50 作業抽出部、52 リスク記憶部、54 リスク評価生成部、100 解析装置、1200 コンピュータ、1201 DVD-ROM、1210 ホストコントローラ、1212 CPU、1214 RAM、1216 グラフィックコントローラ、1218 ディスプレイデバイス、1220 入出力コントローラ、1222 通信インターフェイス、1224 ハードディスクドライブ、1226 DVD-ROMドライブ、1230 ROM、1240 入出力チップ、1242 キーボード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18