(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】自動倉庫のベタ基礎の施工方法、自動倉庫の施工方法、および自動倉庫
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20240110BHJP
E02D 27/01 20060101ALI20240110BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
E02D27/00 Z
E02D27/01 Z
B65G1/00 501Z
(21)【出願番号】P 2021063717
(22)【出願日】2021-04-02
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古屋 春仁
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-181883(JP,A)
【文献】特開2014-073896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00
E02D 27/01
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動倉庫を支える鉄筋コンクリートのベタ基礎を施工する自動倉庫のベタ基礎の施工方法であって、
複数の鉄筋を略水平なメッシュ状に配置する工程と、
略水平な表面を有し前記複数の鉄筋よりも上に位置し
た固定プレートと、当該固定プレートから下方に延びたアンカー部と、を有した固定部材を、配置する工程と、
前記複数の鉄筋が埋まるとともに、少なくとも前記表面が露出した状態で前記固定プレートが部分的に埋まった状態に、コンクリートを打設する工程と、
前記固定プレート
および前記アンカー部から外れた位置
で、前記コンクリートの上面から部分的に突出した状態
で、前記コンクリートに直接、前記自動倉庫の脚部と固定するための後施工アンカーを施工する工程と、
を備えた、自動倉庫のベタ基礎の施工方法。
【請求項2】
前記アンカー部は、前記複数の鉄筋の下まで延びた、請求項1に記載の自動倉庫のベタ基礎の施工方法。
【請求項3】
前記後施工アンカーは、前記複数の鉄筋よりも上に位置した、請求項1または2に記載の自動倉庫のベタ基礎の施工方法。
【請求項4】
複数の鉄筋を略水平なメッシュ状に配置する工程と、
略水平な表面を有し前記複数の鉄筋よりも上に位置し
た固定プレートと、前記固定プレートから下方に延びたアンカー部と、を有した固定部材を、配置する工程と、
前記複数の鉄筋が埋まるとともに、少なくとも前記表面が露出した状態で前記固定プレートが部分的に埋まった状態に、コンクリートを打設する工程と、
前記固定プレート
および前記アンカー部から外れた位置
で、前記コンクリートの上面から部分的に突出した状態
で、前記コンクリートに直接、後施工アンカーを施工する工程と、
前記後施工アンカーと
自動倉庫の脚部とを固定する工程と、
前記後施工アンカーと前記脚部とを固定した後に、前記固定プレートと前記脚部とを溶接する工程と、
を備えた、自動倉庫の施工方法。
【請求項5】
略水平な上面を有し、コンクリート内に略水平なメッシュ状の複数の鉄筋が埋設された鉄筋コンクリートと、
前記上面から露出した略水平な表面を有するとともに前記鉄筋コンクリートに部分的に埋められた固定プレートと、前記鉄筋コンクリート内で当該固定プレートから下方に延びたアンカー部と、を有した固定部材と、
前記固定プレート
および前記アンカー部から外れた位置に配置され、前記上面から上方に突出した突出部を有し、前記鉄筋コンクリートに
直接施工された後施工アンカーと、
複数の脚部を有した鉄骨を含んで構成され、それぞれ物品を収容可能な複数の物品収納部を有した、骨組構造と、
前記物品収納部への物品の搬入および前記物品収納部からの物品の搬出を行う搬送機構と、
を備え、
前記脚部は、それぞれ、前記固定プレート上に位置されたフランジを有し、
当該フランジには、前記突出部が貫通する開口が設けられ、
前記フランジが、前記突出部に取り付けられた固定具と前記上面との間に挟まれて固定されるとともに、前記固定プレートと溶接された、自動倉庫。
【請求項6】
前記固定プレートは、平面視で前記脚部から張り出した第一張出部位を有し、
前記脚部と前記第一張出部位とが溶接された、請求項5に記載の自動倉庫。
【請求項7】
前記固定プレートは、前記第一張出部位として、平面視で前記フランジを略水平な第一方向に挟む二つの第一張出部位と、平面視で前記フランジを前記第一方向と交差しかつ略水平な第二方向に挟む二つの第一張出部位と、を有した、請求項6に記載の自動倉庫。
【請求項8】
前記第一張出部位は、前記複数の脚部間で延びた延部を有し、
前記延部と前記脚部とが溶接された、請求項6または7に記載の自動倉庫。
【請求項9】
前記鉄筋と前記固定プレートとの間に介在し、前記固定プレートを支持する支持部材を備えた、請求項5~8のうちいずれか一つに記載の自動倉庫。
【請求項10】
前記固定プレートは、前記複数の脚部間で延びた延部を有し、
前記支持部材は、前記鉄筋と前記延部との間に介在した、請求項9に記載の自動倉庫。
【請求項11】
前記フランジは、平面視で前記固定プレートから張り出した第二張出部位を有し、
前記開口は、前記第二張出部位に設けられた、請求項5~10のうちいずれか一つに記載の自動倉庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動倉庫のベタ基礎の施工方法、自動倉庫の施工方法、および自動倉庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリートのベタ基礎にアンカーボルトを埋設し、当該アンカーボルト上に自動倉庫を組み立てる自動倉庫の施工方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような自動倉庫の施工方法において、アンカーボルトとして後施工アンカーを用いる場合、当該後施工アンカーによって鉄筋コンクリート内の鉄筋を損傷したり、切断したりするような事態は、極力避けるべきである。
【0005】
また、自動倉庫は、ベタ基礎上に、より強固にあるいはより確実に設置されるのが好ましい。
【0006】
そこで、本発明は、例えば、より改善された新規な自動倉庫のベタ基礎の施工方法、自動倉庫の施工方法、および自動倉庫を得ることを、目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自動倉庫のベタ基礎の施工方法は、例えば、自動倉庫を支える鉄筋コンクリートのベタ基礎を施工する自動倉庫のベタ基礎の施工方法であって、複数の鉄筋を略水平なメッシュ状に配置する工程と、略水平な表面を有し前記複数の鉄筋よりも上に位置し自動倉庫の脚部と固定される固定プレートと、前記固定プレートから下方に延びたアンカー部と、を有した固定部材を、配置する工程と、前記複数の鉄筋が埋まるとともに、少なくとも前記表面が露出した状態で前記固定プレートが部分的に埋まった状態に、コンクリートを打設する工程と、前記固定プレートから外れた位置に、前記コンクリートの上面から部分的に突出した状態に当該固定プレートに固定される前記脚部と固定される後施工アンカーを施工する工程と、を備える。
【0008】
本発明の自動倉庫の施工方法は、例えば、複数の鉄筋を略水平なメッシュ状に配置する工程と、略水平な表面を有し前記複数の鉄筋よりも上に位置し自動倉庫の脚部と固定される固定プレートと、前記固定プレートから下方に延びたアンカー部と、を有した固定部材を、配置する工程と、前記複数の鉄筋が埋まるとともに、少なくとも前記表面が露出した状態で前記固定プレートが部分的に埋まった状態に、コンクリートを打設する工程と、前記固定プレートから外れた位置に、前記コンクリートの上面から部分的に突出した状態に当該固定プレートに固定される前記脚部と固定される後施工アンカーを施工する工程と、前記後施工アンカーと前記脚部とを固定する工程と、前記後施工アンカーと前記脚部とを固定した後に、前記固定プレートと前記脚部とを溶接する工程と、を備える。
【0009】
また、本発明の自動倉庫は、例えば、略水平な上面を有し、コンクリート内に略水平なメッシュ状の複数の鉄筋が埋設された鉄筋コンクリートと、前記上面から露出した略水平な表面を有するとともに前記鉄筋コンクリートに部分的に埋められた固定プレートと、前記鉄筋コンクリート内で当該固定プレートから下方に延びたアンカー部と、を有した固定部材と、前記固定プレートから外れた位置に配置され、前記上面から上方に突出した突出部を有し、前記鉄筋コンクリートに施工された後施工アンカーと、複数の脚部を有した鉄骨を含んで構成され、それぞれ物品を収容可能な複数の物品収納部を有した、骨組構造と、前記物品収納部への物品の搬入および前記物品収納部からの物品の搬出を行う搬送機構と、を備え、前記脚部は、それぞれ、前記固定プレート上に位置されたフランジを有し、当該フランジには、前記突出部が貫通する開口が設けられ、前記フランジが、前記突出部に取り付けられた固定具と前記上面との間に挟まれて固定されるとともに、前記固定プレートと溶接される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態のベタ基礎上に施工された自動倉庫の一部の例示的かつ模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態のベタ基礎上に施工された自動倉庫の下部の例示的かつ模式的な正面図である。
【
図3】
図3は、実施形態のベタ基礎上に施工された自動倉庫の下部の例示的かつ模式的な側面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のベタ基礎内の鉄筋、支持部材、後施工アンカー、固定部材、および脚部を示す例示的かつ模式的な側面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態のベタ基礎内の鉄筋、後施工アンカー、固定部材、および脚部を示す、
図4と直交した方向に見た例示的かつ模式的な側面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態のベタ基礎内の鉄筋、支持部材、固定部材、および脚部の一部を示す例示的かつ模式的な平面図である。
【
図7】
図7は、実施形態のベタ基礎の施工方法を含む自動倉庫の施工方法の手順を示す例示的なフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2実施形態のベタ基礎内の鉄筋、支持部材、固定部材、および脚部の一部を示す例示的かつ模式的な平面図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態のベタ基礎内の鉄筋、支持部材、固定部材、および脚部の一部を示す例示的かつ模式的な平面図である。
【
図10】
図10は、第4実施形態のベタ基礎内の支持部材、固定部材、および脚部の一部を示す平面図である。
【
図11】
図11は、第5実施形態のベタ基礎内の支持部材、固定部材、および脚部の一部を示す例示的かつ模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な複数の実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成から得られる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、下記の構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0012】
また、以下に示される複数の実施形態は、同様の構成を備えている。当該複数の実施形態によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成については、共通あるいは同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0013】
なお、本明細書において、序数は、方向や、部材、部品、部位等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。
【0014】
また、各図中には、基礎および自動倉庫における各方向が矢印で示されている。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに、互いに直交している。Z方向は、鉛直方向に略沿っており、矢印Zは、鉛直上方を指している。Z方向は、上下方向とも称されうる。また、X方向およびY方向は、水平方向に略沿っている。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、自動倉庫200の一部の平面図、
図2は、自動倉庫200の下部の正面図、また、
図3は、自動倉庫200の下部の側面図である。
【0016】
図1~3に示されるように、自動倉庫200は、X方向に間隔をあけて配置された二つの棚210を備えている。棚210は、形材や管材等を組み合わせた骨組構造を有しており、Y方向およびZ方向にマトリクス状に配置された複数の物品収納部211を有している。物品Aは、物品収納部211のそれぞれにおいて、不図示の棚部材によって支持される。棚210は、骨組構造の一例である。なお、X方向は、棚210の幅方向とも称され、Y方向は、棚210の長手方向とも称され、Z方向は、棚210の高さ方向とも称されうる。
【0017】
搬送路220は、二つの棚210の間において、X方向に略一定の幅でY方向およびZ方向に延びた空間である。
【0018】
また、自動倉庫200は、物品Aを搬送可能な搬送機構230を備えている。搬送機構230は、例えば、移動体231を有したスタッカクレーンである。移動体231は、搬送路220において、物品Aを保持して水平方向(本実施形態では、一例としてY方向)および垂直方向(Z方向)に移動可能に構成されるとともに、搬入位置(不図示)、搬出位置(不図示)、および収納位置(物品収納部211)との間で、物品Aを受渡可能に構成される。ただし、搬送機構230は、例えば、水平方向のみに移動する移動台車が上下方向に複数段設けられた移動台車システムのような、スタッカクレーンとは異なる構成を有してもよい。
【0019】
図2,3に示されるように、棚210は、脚部213を有している。棚210を構成するフレームは、上下方向に延びる柱212を有しており、脚部213は、当該柱212の下部である。
【0020】
また、脚部213の下端には、フランジ213aが設けられている。フランジ213aは、柱212の中心軸の径方向外方に張り出しており、略水平方向に延びた板状の形状を有している。
【0021】
フランジ213aは、ベタ基礎100に部分的に埋設された固定部材106に溶接によって固定されるとともに、当該ベタ基礎100に部分的に埋設された後施工アンカー105にも固定されている。後施工アンカー105は、ベタ基礎100のコンクリートの上面100aから上方に突出したスタッドボルト105aを有しており、フランジ213aは、スタッドボルト105aに締め付けられたナット107と、上面100aとの間に挟まれた状態で、固定されている。このような構成によれば、脚部213は、固定部材106および後施工アンカー105を介して、ベタ基礎100に、より強固に固定されうる。なお、スタッドボルト105aは、突出部とも称されうる。
【0022】
図4は、ベタ基礎100内の鉄筋11,12、支持部材104、後施工アンカー105、固定部材106、および脚部213を示す側面図であって、X方向の反対方向に見た図である。また、
図5は、ベタ基礎100内の鉄筋11,12、後施工アンカー105、固定部材106、および脚部213を示す側面図であって、Y方向に見た図である。なお、
図4,5では、コンクリートの図示を省略し、
図5では、さらに支持部材104の図示を省略している。
【0023】
自動倉庫200を支えるベタ基礎100は、鉄筋コンクリートを含んでいる。コンクリート内には、略水平なメッシュ状の複数の鉄筋11,12が埋設されている。
図4,5は、ベタ基礎100の略水平な上面100aの近傍を示している。すなわち、
図4,5に示されている鉄筋11,12は、上面100aから比較的近い位置、一例としては、上面100aから50[mm]程度下方となる位置に、配置されている。なお、図示しないが、ベタ基礎100内には、例えば、ベタ基礎100が施工される底面の近くなど、他の高さにも、略水平なメッシュ状の鉄筋が配置されている。
【0024】
鉄筋11は、X方向に略沿って水平に延びており、Y方向に所定間隔で配置されている。また、鉄筋12は、Y方向に略沿って水平に延びており、X方向に所定間隔で配置されている。なお、本明細書において、鉄筋11,12のような部材を「配置する」とは、当該を一時的に置くことを意味するのではなく、部材を、所定の位置に、すなわち位置決めされた状態に、設置することを指す。
【0025】
固定部材106は、ベタ基礎100のコンクリートに、部分的に露出した状態で埋設される。固定部材106は、固定プレート106aと、アンカー部106bと、を有している。
【0026】
固定プレート106aは、固定部材106のうち、自動倉庫200の脚部213のフランジ213aと固定される部位であって、略水平に延びた板状の形状を有している。すなわち、固定プレート106aは、Z方向と交差するとともに直交し、X方向およびY方向に略沿って延びている。また、
図4,5に示されるように、固定プレート106aは、複数の鉄筋11,12よりも上に位置されている。
【0027】
固定プレート106aは、Z方向の端面としての表面106a1が、略水平となり、かつ打設されたコンクリートの上面100aから露出するように、設けられる。表面106a1は、コンクリートの上面100aと略面一となるか、あるいは当該上面100aよりも僅かに上方に位置している。
【0028】
図6は、ベタ基礎100内の鉄筋11,12、支持部材104、固定部材106、および脚部213のフランジ213aを示す平面図である。なお、
図6では、コンクリート、後施工アンカー105、および脚部213の高さ調整ボルト213bおよびナット213cの図示を、省略している。
【0029】
図6に示されるように、固定プレート106aは、平面視では四角形状の形状を有している。また、固定プレート106aは、X方向に延びた辺とY方向に延びた辺とを有するとともに、Y方向に長い長方形状の形状を有している。
【0030】
図4,5に示されるように、アンカー部106bは、細長い棒状の形状を有し、固定プレート106aの略中央部から、Z方向の反対方向、すなわち下方に延びている。アンカー部106bは、例えば、固定プレート106aに溶接されることにより、当該固定プレート106aと一体化されている。アンカー部106bは、鉄筋11,12のメッシュの間を貫通しており、その下端106b1は、当該鉄筋11,12よりも下方に位置している。このような構成により、アンカー部106bの長さをより長くすることができ、ひいては、固定部材106の引抜耐力をより大きくすることができる。なお、アンカー部106bは、固定部材106を所要の位置決め精度で配置できる状態であれば、鉄筋11,12と接してもよい。
【0031】
図4,6に示されるように、固定プレート106a、すなわち固定部材106は、支持部材104を介して鉄筋11,12に支持されるとともに固定されている。具体的に、固定部材106は、二つの支持部材104によって支持されている。支持部材104は、それぞれ、X方向に延びており、Y方向に延びるとともにX方向に互いに離間した複数の鉄筋12に、掛け渡された状態で支持されている。そして、固定プレート106aは、Y方向に互いに離間した同じ高さの二つの支持部材104に、掛け渡された状態で両端支持されている。ただし、支持部材104および当該支持部材104による固定部材106の支持構造は、これには限定されず、支持部材104の延びる方向や数、支持部材104による固定プレート106aの支持位置等は、種々に変更することができる。また、支持部材104は、例えば、チャンネル材であるが、これには限定されず、H型材や、角パイプ等であってもよい。
【0032】
脚部213は、フランジ213aと、高さ調整ボルト213bと、ナット213cと、を有している。
【0033】
フランジ213aは、上述したように、略水平方向に延びた板状の形状を有している。また、
図4,5に示されるように、フランジ213aは、固定プレート106a上に載置されている。また、フランジ213aの底面213a1は、平面であり、固定プレート106aの表面106a1と接している。
【0034】
図6に示されるように、フランジ213aは、平面視では四角形状の形状を有している。また、フランジ213aは、X方向に延びた辺とY方向に延びた辺とを有した略正方形状の形状を有している。
【0035】
図4,6に示されるように、固定プレート106aは、フランジ213aの下で、当該フランジ213aに対してY方向およびY方向の反対方向に張り出している。固定プレート106aのうち、平面視においてフランジ213aから張り出している部位は、張出部位106a2である。張出部位106a2は、第一張出部位の一例である。
【0036】
また、
図5,6に示されるように、フランジ213aは、固定プレート106aの上で、当該固定プレート106aに対してX方向およびX方向の反対方向に張り出している。フランジ213aのうち、平面視において固定プレート106aから張り出している部位は、張出部位213a3である。張出部位213a3は、第二張出部位の一例である。
【0037】
図4,6に示されるように、フランジ213aのY方向およびY方向の反対方向の端縁は、それぞれ、固定プレート106aの張出部位106a2と、溶接部108を介して接合されている。脚部213のフランジ213aがベタ基礎100に埋設された固定部材106の固定プレート106aに溶接されることにより、当該フランジ213aすなわち棚210が、ベタ基礎100に固定される。
【0038】
溶接部108は、例えば、アーク溶接やTIG溶接等によって形成された、X方向に延びた溶接ビードである。また、溶接部108は、フランジ213aの端縁の側面と張出部位106a2の上面(表面106a1)との間の隅部に設けられている。すなわち、溶接部108は、隅肉溶接によって形成されている。固定プレート106aに張出部位106a2が設けられていることにより、このような隅肉溶接が可能となっている。なお、溶接部108は、フランジ213aおよび固定プレート106aの端縁がZ方向に並んだ部位に対する突き合わせ溶接によって形成されてもよい。ただし、突き合わせ溶接よりも、隅肉溶接の方が、溶接をより容易に実行しやすくなるとともに、溶接によるコンクリートの上面100aへの影響を低減しやすくなる。
【0039】
ここで、
図6に示されるように、張出部位106a2および溶接部108は、Y方向においてフランジ213aを挟むように設けられている。このような構成により、脚部213の倒れる方向によって溶接部108の接合強度に差が生じるのを抑制することができる。
【0040】
また、
図5に示されるように、後施工アンカー105は、固定プレート106aからX方向およびX方向の反対方向に外れた位置に配置されている。後施工アンカー105は、コンクリートの打設後に、固定プレート106aの周辺部分に、施工される。上述したように、後施工アンカー105のうち、コンクリートの上面100aよりも上方に突出した部位は、スタッドボルト105aである。
【0041】
図6に示されるように、フランジ213aの張出部位213a3には、開口213a2が設けられている。開口213a2は、一例としては、フランジ213aをZ方向に貫通する貫通孔であるが、切欠であってもよい。
【0042】
そして、
図5に示されるように、スタッドボルト105aは、開口213a2を貫通して、フランジ213aに対してコンクリートの上面100aとは反対側、すなわちフランジ213aの上側に、突出する。スタッドボルト105aのフランジ213aよりも上側の部位には、ナット107が締め付けられる。スタッドボルト105aに締め付けられたナット107と上面100aとの間にフランジ213aが挟まれることにより、脚部213のフランジ213a、すなわち棚210が、ベタ基礎100に固定される。ナット107は、固定具の一例であり、締結具とも称されうる。
【0043】
後施工アンカー105は、固定プレート106aを含むベタ基礎100が施工された後、当該固定プレート106aの周辺の所定位置に、施工される。そして、当該周辺の上面100a上にスタッドボルト105aが突出している状態で、脚部213のフランジ213aが、当該スタッドボルト105aが開口213a2を貫通するように、固定プレート106a上に載せられる。開口213a2の内径は、スタッドボルト105aと開口213a2との位置ずれを吸収できるよう、スタッドボルト105aの外径に対して所定のクリアランスを有する大きさに、設定されている。
【0044】
ここで、
図4,5に示されるように、後施工アンカー105の下端105bは、鉄筋11,12によりも上に位置している。すなわち、後施工アンカー105としては、鉄筋11,12が施工されている深さには到達しない比較的短いアンカーが採用されている。一例として、後施工アンカー105は、金属拡張アンカーのような金属系アンカーである。このような構成により、後施工アンカー105の施工において鉄筋11,12が損傷するのを回避することができる。
【0045】
また、
図4,5に示されるように、フランジ213aの中央部上には、ナット213cが固定されており、当該ナット213cに、Z方向に延びた高さ調整ボルト213bが噛み合っている。ナット213cは、例えば、フランジ213aに溶接されることにより、当該フランジ213aと一体化される。また、高さ調整ボルト213bは、柱212の下部に内蔵されたナット(不図示)にも噛み合っている。このような構成において、高さ調整ボルト213bを回すことにより、脚部213のZ方向の高さ、言い換えると脚部213の長さを調整することができる。
【0046】
[ベタ基礎および自動倉庫の施工方法]
図7は、第1実施形態のベタ基礎の施工方法を含む自動倉庫の施工方法の手順を示すフローチャートである。
図7に示されるように、本実施形態の自動倉庫の施工方法は、目印の設定(S10)、鉄筋の配置(S20)、固定部材の配置(S30)、コンクリートの打設(S40)、後施工アンカーの施工(S50)、脚部と後施工アンカーとの結合(S60)、脚部と固定プレートとの溶接(S70)、および自動倉庫の組立(S80)を含む。これら工程のうち、S10~S50により、自動倉庫を支える鉄筋コンクリートのベタ基礎が施工される。すなわち、自動倉庫のベタ基礎の施工方法は、S10~S50を含む。
【0047】
[目印の設定(S10)]
S10において、目印は、例えば、X方向およびY方向に張られた水糸(不図示)である。水糸は、例えば、コンクリートを流し込む型枠や、鉄筋、杭のような突出物間で掛け渡されてもよいし、下の層の鉄筋に取り付けられた桟木等を利用して張られてもよい。一例としては、X方向に沿った水糸とY方向に沿った水糸とが交差した位置に基づいて、S30において配置される固定プレート106aの中心位置が設定されるとともに、S50において施工される後施工アンカー105の施工位置が設定される。
【0048】
[鉄筋の配置(S20)]
S20において、鉄筋11,12は、所定の高さ位置で、略水平なメッシュ状に配置される。
【0049】
[固定部材の配置(S30)]
S30において、固定部材106は、鉄筋11,12に対して、支持部材104を介して支持されるとともに固定される。S30において、固定部材106は、目印に基づいて、所定の位置および姿勢となるよう、設置される。
【0050】
[コンクリートの打設(S40)および後施工アンカーの施工(S50)]
S30の後、鉄筋11,12、支持部材104、および固定部材106が配置された状態で、型枠によって作られたコンクリートの収容部(不図示)内に、コンクリートが打設され、鉄筋コンクリートが形成される(S40)。固定プレート106aの表面106a1は、S40で打設されたコンクリートの上面100aから露出する。そして、鉄筋コンクリートが固化した後、当該鉄筋コンクリートの上面100a上の所定位置に、後施工アンカー105が施工される(S50)。S50において、後施工アンカー105は、スタッドボルト105aが上面100aから上方に突出した状態に、施工される。
【0051】
[脚部と後施工アンカーとの結合(S60)]
S50の後、後施工アンカー105のスタッドボルト105aがフランジ213aの開口213a2を貫通する状態で、脚部213が固定プレート106a上に載置される。そして、スタッドボルト105aにナット107が締め付けられ、フランジ213aが当該ナット107と上面100aとの間に挟まれることにより、脚部213と後施工アンカー105とが結合される(S60)。
【0052】
[脚部と固定プレートとの溶接(S70)]
S60の後、フランジ213aすなわち脚部213と固定プレート106aとが溶接される(S70)。S60をS70の前に行うことにより、S70の溶接において、フランジ213aと固定プレート106aとがずれるのを抑制するという効果が得られる。
【0053】
[自動倉庫の組立(S80)]
S70の後、当該S70以降の残りの組立工程が実行されることにより、自動倉庫200が完成する(S80)。
【0054】
以上、説明したように、本実施形態では、棚210の脚部213のフランジ213aは、固定プレート106a上に位置し、当該固定プレート106aと溶接部108を介して結合されるとともに、後施工アンカー105と結合される。
【0055】
このような構成によれば、フランジ213aを固定部材106および後施工アンカー105の双方に結合することができるため、フランジ213aを固定部材106および後施工アンカー105のうちいずれか一方のみに結合する場合に比べて、脚部213ひいては棚210(骨組構造)を、ベタ基礎100に、より強固にあるいはより確実に設置することができる。
【0056】
また、本実施形態では、固定部材106のアンカー部106bは、メッシュ状の鉄筋11,12を貫通して当該鉄筋11,12の下まで延びている。このような構成によれば、固定部材106の引抜耐力をより大きくすることができる。また、アンカー部106bはコンクリートの打設前に配置するため、鉄筋11,12を損傷することなくアンカー部106bを配置することができる。
【0057】
また、本実施形態では、後施工アンカー105の下端105bは、鉄筋11,12よりも上に位置している。このような構成によれば、鉄筋11,12を損傷することなく、後施工アンカー105を施工することができる。
【0058】
また、本実施形態では、フランジ213aを後施工アンカー105に結合した後に、当該フランジ213aと固定プレート106a、すなわち固定部材106とを溶接部108によって溶接する。このような施工方法によれば、溶接の際にフランジ213aと固定プレート106aとがずれるのを抑制することができ、溶接をより容易にあるいはより確実に行いやすくなる。
【0059】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態の自動倉庫200Aにおける
図6と同等の図である。本実施形態では、脚部213Aのフランジ213aに、第1実施形態よりも多くの開口213a2が設けられている。開口213a2のそれぞれを、スタッドボルト105a(後施工アンカー105)が貫通する。開口213a2は、フランジ213aのうち固定プレート106aと上下に重ならない範囲、すなわち張出部位213a3において、第1実施形態よりも多くの位置に設けられている。本実施形態でも、後施工アンカー105は、鉄筋11,12とZ方向に、すなわち上下方向にずれているため、鉄筋11,12と干渉することはない。このため、開口213a2は、平面視で鉄筋11,12と重なっていてもよい。本実施形態によれば、フランジ213aをより多くの後施工アンカー105と結合することができるため、脚部213ひいては棚210(骨組構造)を、ベタ基礎100に、より強固にあるいはより確実に設置することができる。
【0060】
[第3実施形態]
図9は、第3実施形態の自動倉庫200Bにおける
図6と同等の図である。本実施形態では、固定部材106Bの固定プレート106aは、X方向およびY方向に延びた十字状かつ板状の形状を有しており、平面視でフランジ213aからY方向およびY方向の反対方向に張り出す張出部位106a2を有するとともに、平面視でフランジ213aからX方向およびX方向の反対方向に張り出す張出部位106a2を有している。平面視で、フランジ213aからY方向およびY方向の反対方向に張り出す張出部位106a2は、Y方向においてフランジ213aを挟んでおり、X方向およびX方向の反対方向に張り出す張出部位106a2は、X方向においてフランジ213aを挟んでいる。そして、張出部位106a2のそれぞれとフランジ213aの互いに異なる端縁とが、合計4箇所の溶接部108を介して接合されている。本実施形態によれば、フランジ213aと固定プレート106aとを、より多くの溶接部108で接合することができるため、脚部213ひいては棚210(骨組構造)を、ベタ基礎100に、より一層強固にあるいはより一層確実に設置することができる。
【0061】
また、Y方向およびY方向の反対方向に張り出す張出部位106a2に設けられる溶接部108の溶接ビードはX方向に延び、X方向およびX方向の反対方向に張り出す張出部位106a2に設けられる溶接部108の溶接ビードはY方向に延びている。したがって、柱212がX方向に倒れる場合における複数の溶接部108の接合強度と、柱212がY方向に倒れる場合における複数の溶接部108の接合強度とに、差が生じるのを、抑制することができる。すなわち、本実施形態によれば、柱212の倒れる方向によって複数の溶接部108の接合強度に差が生じるのを、さらに抑制することができる。
【0062】
[第4実施形態]
図10は、第4実施形態の自動倉庫200Cの、支持部材104、固定部材106C、および複数の脚部213のフランジ213aを示す平面図である。
図10から明らかとなるように、本実施形態では、固定部材106Cの固定プレート106aは、複数の脚部213において共用されている。ただし、アンカー部106bは、各脚部213のフランジ213aと重なる部位の中央部に、それぞれ設けられている。
【0063】
固定プレート106aは、平面視でフランジ213aからX方向またはX方向の反対方向に張り出した張出部位106a2の他、平面視でフランジ213aからY方向またはY方向の反対方向に張り出した張出部位106a2として、複数の脚部213間で延びた延部106a3を有している。また、延部106a3は、フランジ213aの端縁と重なる位置において、当該フランジ213aと溶接部108を介して接合されている。本実施形態によれば、固定部材106が、脚部213のそれぞれに対応して設けられる場合に比べて、固定部材106の位置決めや姿勢調整の回数を減らすことができ、その分、ベタ基礎100ひいては自動倉庫200Cの施工に要する手間やコストを低減できる場合がある。なお、本実施形態では、固定部材106が三つの脚部213で共用されているが、固定部材106を共用する脚部213の数は3には限定されず、2であってもよいし、4以上であってもよい。
【0064】
また、本実施形態では、延部106a3は、平面視で棚210の水平方向に延びるフレーム(
図1参照)と重なるように延びており、
図10の例では、棚210の長手方向、すなわちY方向に並ぶ複数の脚部213間で、当該Y方向に延びている。仮に、延部106a3が、平面視で水平方向に延びるフレームから外れて延びた場合には、搬送路220側へはみ出し、搬送機構230を固定するアンカー(不図示)等と干渉してしまう虞がある。この点、本実施形態では、延部106a3は、棚210の長手方向に延びるとともに、棚210の水平方向に延びるフレームと平面視で重なるように設けられているため、延部106a3と搬送機構230を固定するアンカー等とが干渉することにより固定部材106Cおよび搬送機構230のうち少なくとも一方を配置し難くなるのを、回避することができる。
【0065】
また、本実施形態では、複数の支持部材104、例えば、二つの支持部材104によって、複数の脚部213で共用された固定プレート106aすなわち固定部材106Cが、支持されている。したがって、本実施形態によれば、例えば、支持部材104が脚部213のそれぞれに対応して設けられる場合に比べて、支持部材104の数を減らすことができ、その分、ベタ基礎100ひいては自動倉庫200Cの施工に要する手間やコストを低減できる場合がある。なお、本実施形態では、支持部材104は、Y方向またはY方向の反対方向の端部に位置し、平面視でフランジ213aに対して延部106a3とは反対側に張り出した張出部位106a2を支持している。
【0066】
[第5実施形態]
図11は、第5実施形態の自動倉庫200Dの、支持部材104、固定部材106D、および複数の脚部213のフランジ213aを示す平面図である。
図11を
図10と比較して参照すれば明らかとなるように、本実施形態では、支持部材104による固定プレート106aの支持位置が、第4実施形態と相違している。すなわち、本実施形態では、支持部材104は、張出部位106a2としての延部106a3を支持している。本実施形態によれば、延部106a3がより撓み難くなり、固定プレート106aの水平姿勢を維持しやすくなる。
【0067】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0068】
例えば、固定プレートおよびフランジの形状や、溶接部の数、溶接部の位置、溶接部の延びる方向、支持部材による支持位置等は、適宜に変更することができる。また、支持部材は、後施工アンカーおよびアンカー部と干渉しない状態であれば、平面視でフランジと重なる位置に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0069】
11,12…鉄筋
100…ベタ基礎
100a…上面
104…支持部材
105…後施工アンカー
105a…スタッドボルト
105b…下端
106,106B~106D…固定部材
106a…固定プレート
106a1…表面
106a2…張出部位(第一張出部位)
106a3…延部
106b…アンカー部
106b1…下端
107…ナット
108…溶接部
200,200A~200D…自動倉庫
210…棚(骨組構造)
211…物品収納部
212…柱
213,213A…脚部
213a…フランジ
213a1…底面
213a2…開口
213a3…張出部位(第二張出部位)
213b…高さ調整ボルト
213c…ナット
220…搬送路
230…搬送機構
231…移動体
A…物品
X…方向(第一方向)
Y…方向(第二方向、第三方向)
Z…方向