(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】情報処理装置、アラーム予測方法およびアラーム予測プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
G05B23/02 302Z
G05B23/02 R
G05B23/02 T
G05B23/02 301Y
(21)【出願番号】P 2021090281
(22)【出願日】2021-05-28
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏 良輔
(72)【発明者】
【氏名】尾又 俊彰
(72)【発明者】
【氏名】江間 伸明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 善貴
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-009301(JP,A)
【文献】特開2012-226731(JP,A)
【文献】特開2013-145548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業員が実プラントへ行う操作に関して仮想的に生成された複数の操作パターンそれぞれを前記実プラントに対して実行した場合に発生する各アラームを、異なる条件下において生成された各モデルを用いて予測する予測部と、
前記複数の操作パターンそれぞれについて、予測結果の信頼度を決定する決定部と、
前記予測結果の信頼度に基づき、前記各アラームの表示制御を実行する表示制御部と、
を有
し、
前記複数の操作パターンそれぞれには、各操作パターンを実行するときの前記実プラントの負荷を示す負荷情報が設定され、
前記予測部は、
前記複数の操作パターンそれぞれについて予測を行う際に、異なる負荷情報を用いて生成された各モデルを用いた内挿補間または外挿補間により、前記複数の操作パターンそれぞれの負荷情報に対応する予測を実行し、
前記決定部は、
前記内挿補間または外挿補間の補間状況により、前記予測結果の信頼度を決定する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記決定部は、
前記各モデルの生成条件と、前記各アラームの予測時の条件とが異なるほど、前記予測結果の信頼度を低く決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記複数の操作パターンそれぞれには、各操作パターンを実行するときの前記実プラントの負荷を示す負荷情報が設定され、
前記予測部は、
前記複数の操作パターンそれぞれについて予測を行う際に、異なる負荷情報を用いて生成された各モデルのうち、前記複数の操作パターンそれぞれに設定される負荷情報に対応するモデルを用いて予測し、
前記決定部は、
前記複数の操作パターンそれぞれに対する予測時に利用されたモデルに基づき、前記予測結果の信頼度を決定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、
前記複数の操作パターンそれぞれについて、予測されたアラームを発生順の時系列で表示する表示画面を生成し、
前記表示画面上に表示される複数のアラームのうち、前記予測結果の信頼度が閾値未満であるアラームの表示を抑制する、
ことを特徴とする請求項1から
3のいずれか一つに記載の情報処理装置。
【請求項5】
コンピュータが、
作業員が実プラントへ行う操作に関して仮想的に生成された複数の操作パターンそれぞれを前記実プラントに対して実行した場合に発生する各アラームを、異なる条件下において生成された各モデルを用いて予測し、
前記複数の操作パターンそれぞれについて、予測結果の信頼度を決定し、
前記予測結果の信頼度に基づき、前記各アラームの表示制御を実行する、
処理を実行し、
前記複数の操作パターンそれぞれには、各操作パターンを実行するときの前記実プラントの負荷を示す負荷情報が設定され、
前記複数の操作パターンそれぞれについて予測を行う際に、異なる負荷情報を用いて生成された各モデルを用いた内挿補間または外挿補間により、前記複数の操作パターンそれぞれの負荷情報に対応する予測を実行し、
前記内挿補間または外挿補間の補間状況により、前記予測結果の信頼度を決定する、
処理を実行することを特徴とするアラーム予測方法。
【請求項6】
コンピュータに、
作業員が実プラントへ行う操作に関して仮想的に生成された複数の操作パターンそれぞれを前記実プラントに対して実行した場合に発生する各アラームを、異なる条件下において生成された各モデルを用いて予測し、
前記複数の操作パターンそれぞれについて、予測結果の信頼度を決定し、
前記予測結果の信頼度に基づき、前記各アラームの表示制御を実行する、
処理を実行させ、
前記複数の操作パターンそれぞれには、各操作パターンを実行するときの前記実プラントの負荷を示す負荷情報が設定され、
前記複数の操作パターンそれぞれについて予測を行う際に、異なる負荷情報を用いて生成された各モデルを用いた内挿補間または外挿補間により、前記複数の操作パターンそれぞれの負荷情報に対応する予測を実行し、
前記内挿補間または外挿補間の補間状況により、前記予測結果の信頼度を決定する、
処理を実行させることを特徴とするアラーム予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、アラーム予測方法およびアラーム予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
石油、石油化学、化学、ガスなどを用いた各種プラントでは、作業員等(もしくはオペレータ等)により、プラントの安全操業が実行されている。例えば、作業員等が、プラントに設置される温度センサや流量計等の各種センサで得られる温度、圧力等のプラントの実測値に基づいてプラントの動作の傾向を把握し、作業員が、プラントに設置されるバルブやヒータ等の制御機器を操作することにより、プラントの運転が行われている。なお、本願における操作には、現場における手動操作等も含む。
【0003】
近年では、実際のプラント(以降では実プラントと記載する場合がある)から、センサ値、実測値、制御値などのプラントデータをリアルタイムに取得して、模擬的または仮想的なプラントを稼働させて、実プラントの稼働状況に追従する仮想プラント(以降ではミラープラントと記載する場合がある)を用い、作業員等(もしくはオペレータ等)の運転支援や教育に利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-9301号公報
【文献】特開2011-8756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ミラープラントでは、プラントの現場における手動操作等を含む実プラントのプラントデータを用いたシミュレーション等により、実プラントの稼働状態を予測することが行われる。しかしながら、作業員は、予測結果を踏まえて、経験や主観により作業員の操作内容を決定することもあり、より効率的な運用やより安全な運用の選択を見誤る可能性もある。
【0006】
本発明は、アラームの予測精度の向上を図り、プラントの安全操業を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面にかかる情報処理装置は、作業員が実プラントへ行う操作に関して仮想的に生成された複数の操作パターンそれぞれを前記実プラントに対して実行した場合に発生する各アラームを、異なる条件下において生成された各モデルを用いて予測する予測部と、前記複数の操作パターンそれぞれについて、予測結果の信頼度を決定する決定部と、前記予測結果の信頼度に基づき、前記各アラームの表示制御を実行する表示制御部と、を有することを特徴とする。
【0008】
一側面にかかる予測方法は、コンピュータが、作業員が実プラントへ行う操作に関して仮想的に生成された複数の操作パターンそれぞれを前記実プラントに対して実行した場合に発生する各アラームを、異なる条件下において生成された各モデルを用いて予測し、前記複数の操作パターンそれぞれについて、予測結果の信頼度を決定し、前記予測結果の信頼度に基づき、前記各アラームの表示制御を実行する、処理を実行することを特徴とする。
【0009】
一側面にかかる予測プログラムは、コンピュータに、作業員が実プラントへ行う操作に関して仮想的に生成された複数の操作パターンそれぞれを前記実プラントに対して実行した場合に発生する各アラームを、異なる条件下において生成された各モデルを用いて予測し、前記複数の操作パターンそれぞれについて、予測結果の信頼度を決定し、前記予測結果の信頼度に基づき、前記各アラームの表示制御を実行する、処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
一実施形態によれば、アラームの予測精度の向上を図り、プラントの安全操業を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1にかかるシステムの全体構成例を説明する図である。
【
図2】実施形態1にかかる情報処理装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】系統DBに記憶される情報の例を示す図である。
【
図4】関連性DBに記憶される情報の例を示す図である。
【
図5】シミュレーションによる実プラントの状態のトレンドグラフを示す図である。
【
図6】仮想的な複数の操作パターンの生成例を説明する図である。
【
図7】複数操作パターンの操作等と予測アラームの表示例を説明する図である。
【
図8】トレンド表示処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】操作パターンの表示処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】実施形態2にかかる操作パターンの表示例を説明する図である。
【
図11】実施形態3にかかるアラームの強調例1を説明する図である。
【
図12】実施形態3にかかるアラームの強調例2を説明する図である。
【
図13】実施形態4にかかるアラームの表示抑制例を説明する図である。
【
図14】実施形態5にかかるトレンド表示との連携例を説明する図である。
【
図15】再シミュレーションによる予測アラームの抑制例を説明する図である。
【
図16】再シミュレーションによる関連アラームの抑制例を説明する図である。
【
図17】再シミュレーションによるアラームの抑制処理の流れを示すフローチャートである。
【
図18】シミュレーションの信頼度を説明する図である。
【
図19】信頼度に基づくアラームの表示抑制を説明する図である。
【
図20】信頼度に基づくアラームの表示制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本願の開示する情報処理装置、アラーム予測方法およびアラーム予測プログラムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略し、各実施形態は、矛盾のない範囲内で適宜組み合わせることができる。
【0013】
[実施形態1]
[全体構成]
図1は、実施形態1にかかるシステムの全体構成例を説明する図である。
図1に示すように、このシステムは、実プラント1とミラープラント100を有し、実プラント1の状態をリアルタイムに追従して仮想上のプラントを構築し、実プラント1の安全操業を実現するシステムである。すなわち、実プラント1は、実世界で、実機器を用いて構築されたプラントであり、ミラープラント100は、仮想空間(サイバー空間)でソフトウェア的に構築された実プラント1に追従する仮想プラントである。なお、実プラント1とミラープラント100とは、有線や無線を問わず、ネットワークを介して接続されている。
【0014】
実プラント1は、石油、石油化学、化学、ガスなどを用いた各種プラントの一例であり、生成物を得るためのさまざまな施設を備える工場等を含む。生成物の例は、LNG(液化天然ガス)、樹脂(プラスチック、ナイロン等)、化学製品等である。施設の例は、工場施設、機械施設、生産施設、発電施設、貯蔵施設、石油、天然ガス等を採掘する井戸元における施設等である。
【0015】
実プラント1内は分散制御システム(Distributed Control Systems:DCS)などを用いて構築される。例えば、図示は省略したが、実プラント1内の制御システムが、実プラント1で利用されるプロセスデータを用いて、制御を行う対象の設備に設置されたフィールド機器などの制御機器や、制御を行う対象の設備に対応する操作機器などに対して各種制御を実行する。
【0016】
なお、フィールド機器とは、設置されている設備の動作状態(例えば、圧力、温度、流量など)を測定する測定機能や、入力された制御信号に応じて設置されている設備の動作を制御する機能(例えば、アクチュエータなど)を備えた操作機器などの現場機器である。センサであるフィールド機器は、設置されている設備の動作状態をプロセスデータとし制御システム内のコントローラに逐次出力し、同コントローラで演算された制御信号に従い、アクチュエータであるフィールド機器はプロセスの動作を制御する。
【0017】
ここで、プロセスデータには、測定値(Process Variable:PV)、設定値(Setting Variable:SV)、操作量(Manipulated Variable:MV)などが含まれる。また、プロセスデータには、出力する測定値の種類(例えば、圧力、温度、流量など)の情報も含まれている。また、プロセスデータには、自フィールド機器を識別するために付与されているタグ名などの情報が紐付けられている。なお、プロセスデータとして出力する測定値は、センサであるフィールド機器が測定した測定値のみではなく、測定値から計算された計算値を含んでいてもよく、アクチュエータであるフィールド機器への操作量値などでもよい。測定値からの計算値の計算は、フィールド機器において行ってよいし、フィールド機器に接続された図示しない外部機器によって行ってもよい。
【0018】
ミラープラント100は、ミラーモデル200と同定モデル300と解析モデル400とを含み、実プラント1の状態をリアルタイムに追従する仮想上のプラントである。ミラープラント100には、実プラント1に設置される各機器以外にも、例えば高温や高所のように実プラント1上で設置できない場所に仮想的に(ソフトウェア的に)機器を設置したり、コストの関係で設置しなかった機器などを仮想的に設置したりすることができ、実プラント1をより正確かつ安定的に操業するために有効なサービスを提供できる。ここでは、情報処理装置10が各モデルを実行する例で説明するが、これに限定されるものではなく、別々の装置で各モデルを実行してもよい。
【0019】
ミラーモデル200は、実プラント1と同期して並行に動作し、実プラント1からデータを取得しながらシミュレーションすることにより、実プラント1の挙動を模擬し、同時に実プラント1内で計測されていない状態量を推定し、実プラント1内部を可視化する。一例を挙げると、ミラーモデル200は、実プラント1のプロセスデータを取得し、リアルタイムシミュレーションを実行する物理モデルなどである。すなわち、ミラーモデル200は、実プラント1の状態の可視化を実現する。例えば、ミラーモデル200は、実プラント1から取得したプロセスデータを取り込んで、実プラント1の挙動を追従し、その結果を監視端末500に出力する。この結果、ミラーモデル200は、実プラント1にはない機器なども考慮して、作業員のある操作を実行した後の実プラント1の挙動を予測し、監視者に提供することができる。
【0020】
同定モデル300は、ミラーモデル200を実プラント1の実測データに合わせこむために、実プラント1から取得するデータに基づいて定期的に機器の性能パラメータの推定を行う。一例を挙げると、同定モデル300は、ミラーモデル200と実プラント1の誤差を調整する物理モデルなどである。すなわち、同定モデル300は、一定時間ごと、もしくは、ミラーモデル200と実プラント1との誤差が大きくなった場合に、必要に応じて、ミラーモデル200のパラメータ等を調整する。例えば、同定モデル300は、ミラーモデル200から性能等を示す各種パラメータや変数の値を取得し、これらを更新して、更新後のパラメータや変数の値をミラーモデル200に出力する。この結果、ミラーモデル200のパラメータや変数の値が更新される。なお、パラメータや変数の値としては、設計データや運転データなどが含まれる。
【0021】
解析モデル400は、ミラーモデル200が模擬する実プラント1の挙動に基づいて、実プラント1の将来の動作状態の予測などを行う。例えば、解析モデル400は、定常状態予測、過渡状態予測、及び予防診断(異常診断)等を行う。一例を挙げると、解析モデル400は、実プラント1の状態を解析するシミュレーションを実行する物理モデルなどである。すなわち、解析モデル400は、実プラント1の将来予測を実行する。例えば、解析モデル400は、ミラーモデル200から取得したパラメータや変数を初期値として高速計算を行うことにより、現時点から数分~数時間先の実プラント1の挙動を予測し、トレンドグラフとして表示することができる。
【0022】
このようなシステムにおいて、情報処理装置10は、作業員が実プラント1へ行う操作に関して仮想的に生成された複数の操作パターンそれぞれについて、プラントデータを用いたシミュレーションにより、複数の操作パターンそれぞれを実行した場合の各実プラント1の状態遷移を予測する。そして、情報処理装置10は、複数の操作パターンそれぞれと、シミュレーションにより得られた各実プラント1の状態遷移とを対応付けて出力する。この結果、情報処理装置10は、より効率的な運用やより安全な運用の選択を作業員に提示することができ、プラントを安全で効率的に運用することができる。
【0023】
また、情報処理装置10は、実プラント1の操業に関するプラントデータを用いたシミュレーションにより、発生が予測される、実プラント1が予め規定された状態の範囲外にあることを示す各アラーム(予測アラーム)に関する情報を取得する。そして、情報処理装置10は、各アラームに関する情報に基づく各アラームの関係性に基づき、ミラープラント100を監視する監視端末500への各アラームの表示制御を実行する。この結果、情報処理装置10は、実プラント1に追従したミラープラント100でアラーム発生を予測することにより、実プラント1の異常検出や原因の究明に時間を短縮することができる。
【0024】
[機能構成]
図2は、実施形態1にかかる情報処理装置10の機能構成を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、情報処理装置10は、通信部11、記憶部12、処理部20を有する。
【0025】
通信部11は、他の装置との間の通信を制御する処理部であり、例えば通信インタフェースなどにより実現される。例えば、通信部11は、実プラントの間の通信を制御し、プラントデータなどをリアルタイムに取得する。また、通信部11は、監視端末500に各種情報を送信し、監視端末500に各種情報を表示出力する。
【0026】
記憶部12は、各種データや処理部20が実行するプログラムなどを記憶する処理部であり、例えばメモリやハードディスクなどにより実現される。この記憶部12は、系統DB13と関連性DB14を記憶する。
【0027】
系統DB13は、実プラント1内に設置される機器や設備の系統構造を記憶するデータベースである。例えば、系統DB13は、機器の設置位置、生成物の経路やプラントデータの経路等に基づく上流下流の関係にある機器の一覧を記憶する。なお、実プラント1内に設置される機器等に限らず、ミラープラント100内に仮想的に設置されている機器等を含めることもできる。
【0028】
図3は、系統DB13に記憶される情報の例を示す図である。
図3に示すように、系統DB13は、系統1、系統2、系統3、・・・、系統Nを記憶する。ここで、各系統は、数字が大きいほど、下流に位置することを示す。
図3の例では、設備Aが最上流に位置し、その下流に設備Bが位置し、その下流に設備Cが位置することを示す。また、
図3の例では、最上流に機器Xが位置し、その下流に機器Yと機器Qが位置し、機器Yの下流に機器Zが位置することを示す。
【0029】
なお、系統DB13に記憶される情報は、管理者等により予め生成することもでき、実プラント1やミラープラント100の設計書を解析することで、自動で生成することもできる。
【0030】
関連性DB14は、プロセスデータ(タグ)の関連性を記憶するデータベースである。
図4は、関連性DB14に記憶される情報の例を示す図である。
図4に示すように、関連性DB14は、「操作対象」と「関連タグ」を対応付けて記憶する。ここで記憶される「操作対象」は、作業員により操作される機器などを示し、例えば設備の温度、流量計の設定、バルブの開閉などが該当する。「関連タグ」は、操作対象により影響を受ける機器などを示し、具体例としては「操作対象」と同様なものやソフトウェアセンサ等も含む。
図4の例では、「操作タグ」への操作に伴い、「関連タグ1」、「関連タグ2」、「関連タグ3」が影響を受けることを示している。
【0031】
処理部20は、情報処理装置10全体を司る処理部であり、例えばプロセッサなどにより実現される。この処理部20は、ミラー処理部30、同定処理部40、予測処理部50、表示処理部60を有する。なお、ミラー処理部30、同定処理部40、予測処理部50、表示処理部60は、プロセッサが有する電子回路やプロセッサが実行するプロセスなどにより実現される。
【0032】
ミラー処理部30は、実プラント1の状態の可視化を実行する処理部である。具体的には、ミラー処理部30は、実プラント1からリアルタイムにプロセスデータを取得し、物理モデルを用いたリアルタイムシミュレーションにより、実プラント1の状態を追従して可視化する。すなわち、ミラー処理部30は、上述したミラーモデル200を用いる。
【0033】
同定処理部40は、ミラー処理部30によるシミュレーションと実プラント1の誤差を調整する処理部である。具体的には、同定処理部40は、ミラー処理部30によるシミュレーションで使用される各種パラメータや変数の値を更新する。すなわち、同定処理部40は、上述した同定モデル300を生成する。
【0034】
予測処理部50は、第1予測部51と第2予測部52を有し、実プラント1の状態を解析するシミュレーションを実行して、実プラント1の将来の状態を予測する処理部であり、上記解析モデル400を用いる。
【0035】
第1予測部51は、現時点から数分~数時間先の実プラント1の挙動を予測し、トレンドグラフを生成する処理部である。具体的には、第1予測部51は、定期的、作業員等(もしくはオペレータ等)により指示された場合、または、実プラント1で操作が発生した場合などの任意のタイミングで、挙動予測のシミュレーションを実行する。なお、本実施形態では、作業員等(もしくはオペレータ等)を単に「作業員等」と記載する。
【0036】
例えば、第1予測部51は、時刻Tに作業員が実プラント1上で「設備Aの温度を50度に設定」の操作を実行した場合、「設備Aの温度=50度」の操作情報を入力としたシミュレーションにより、時刻T以降の実プラント1の状態をシミュレーションする。ここでシミュレーションされる実プラント1の状態としては、実プラント1の生成物の量、設備Aによる影響を受けるある機器の圧力や温度などを含む実プラント1の状態量などが該当する。
【0037】
図5は、シミュレーションによる実プラント1の状態のトレンドグラフを示す図である。
図5に示すように、第1予測部51は、横軸を時刻、縦軸を実プラント1の状態とするトレンドグラフを生成する。
図5に示すトレンドグラフ上のTR110は、実プラント1の実測値であり、TR112は、現在時刻以降の予測データである。
【0038】
第2予測部52は、作業員が実プラント1へ行う操作に関して仮想的に生成された複数の操作パターンそれぞれについて、プラントデータを用いたシミュレーションにより、複数の操作パターンそれぞれを実行した場合の各実プラント1の状態遷移を予測する処理部である。
【0039】
具体的には、第2予測部52は、新たな操作が行われた場合、作業員等に指示された場合、または、実プラント1が定常ではない不安定な挙動を起こした場合などの任意のタイミングで、ある時点から複数の操作パターンを実行したときの実プラント1の状態変化を、予め生成した物理モデルや実プラント1に同定したモデルなどを用いたシミュレーションにより予測する。このとき、第2予測部52は、各操作パターンで発生するアラームやアラーム(予測アラーム)の数をさらに予測することもできる。
【0040】
ここで、第2予測部52の処理をより詳細に説明する。まず、第2予測部52は、仮想的な複数の操作パターンを生成する。具体的には、第2予測部52は、操作マニュアルや過去の操作履歴などから、あるタグ(操作タグ)に対して、現在時刻の実プラント1の操業状況から任意の所定時間後までの作業員が取り得る仮想的な操作パターンを生成する。
図6は、仮想的な複数の操作パターンの生成例を説明する図である。例えば、
図6に示すように、第2予測部52は、パターン1からパターン5までの仮想的な操作パターンを生成する。
【0041】
ここで、パターン1は、現在時刻から「12:00に操作A」のみを行うパターンである。パターン2は、現在時刻から「12:00に操作B」を行い、「12:30に操作A」を行うパターンである。パターン3は、現在時刻から「12:00に操作C」のみを行うパターンである。パターン4は、現在時刻から「12:00に操作B」を行い、「12:30にも操作B」を行うパターンである。パターン5は、現在時刻から「12:00に操作B」を行い、「12:30に操作C」を行うパターンである。
【0042】
次に、第2予測部52は、
図6に示した各操作パターンを用いてシミュレーションを実行し、実プラント1の状態の時系列の変化を予測する。このとき、第2予測部52は、各操作パターンで発生するアラームの発生数や発生時間も予測し、実プラント1の予測状態とアラームとを対応付けて監視端末500に表示出力する。
【0043】
図7は、複数操作パターンの操作等(のアクション)と(シミュレーション結果による)予測アラームの表示例を説明する図である。
図7では、複数の操作パターンそれぞれについて、任意の操作タグ(例えば温度やバルブの開閉度合いなど)への操作を時系列に示す画面例を示している。
図7の横軸には時刻が設定され、2次元空間に限らず、予測対象の状態を細かく分類することで次元を増やすこともできる。
【0044】
図7に示すように、第2予測部52は、パターン1について予測した時系列変化を「BL111」、パターン2について予測した時系列変化を「BL112」、パターン3について予測した時系列変化を「BL113」、パターン4について予測した時系列変化を「BL114」、パターン5について予測した時系列変化を「BL115」として表示する。
【0045】
そして、第2予測部52は、パターン1「BL111」については、「12:00」の操作Aを実施した後、「12:15」付近にアラームが発生することを予測して表示し、アラームの発生合計数が「1」であることもあわせて表示する。同様に、第2予測部52は、パターン2「BL112」については、「12:00」に操作Bを行い、続いて「12:30」に操作Aを行った後、「12:30」から「13:30」までの間にアラームが3回発生することを予測して、その発生時間に表示し、アラームの発生合計数が「3」であることもあわせて表示する。
【0046】
また、第2予測部52は、パターン3「BL113」については、「12:00」に操作Cを行った後、「13:00」付近にアラームが発生することを予測して表示し、アラームの発生合計数が「1」であることもあわせて表示する。同様に、第2予測部52は、パターン4「BL114」については、「12:00」に操作Bを行い、「12:30」にも操作Bを行った後、アラームが表示しないことを予測して、アラームの発生合計数が「0」であることもあわせて表示する。第2予測部52は、パターン5「BL115」については、「12:00」に操作Bを行い、「12:30」に操作Cを行った後、「12:45」付近にアラームが発生することを予測して表示し、アラームの発生合計数が「1」であることもあわせて表示する。
【0047】
このように、第2予測部52は、作業員が取り得る複数の操作パターンについて、温度などの操作タグで発生するアラームの発生時刻や発生数を作業員に提示することができる。この結果、作業員は、アラームの数が少ない最善の操作パターンを選択することができ、実プラント1の安全操業に役立てることができる。
【0048】
図2に戻り、表示処理部60は、取得部61と監視制御部62を有し、ミラー処理部30や予測処理部50により生成された画面を表示する際に、各種制御を実行する処理部である。
【0049】
取得部61は、ミラー処理部30や予測処理部50により生成された画面を取得する処理部である。例えば、取得部61は、データ形式に限定されず、ミラー処理部30がシミュレーションにより生成したトレンド情報を取得してもよい。同様に、取得部61は、予測処理部50から、各操作パターンや、シミュレーションにより生成されたアラームの発生時刻や発生数などを取得することもできる。なお、取得部61は、取得したこれらの情報を監視制御部62に出力する。
【0050】
監視制御部62は、取得部61により取得された各種情報を整形して監視端末500に表示出力する処理部である。例えば、監視制御部62は、特定のアラームを強調表示したり、特定のアラームの表示を抑制したり、表示の切り替えを実行したり、対応が完了したアラームの表示を終了したりする。なお、詳細については、後述の実施形態で説明する。
【0051】
[トレンド表示処理の流れ]
図8は、トレンド表示処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示すように、第1予測部51が最新のプラントデータを取得すると(S101:Yes)、同定モデル300が機器の性能パラメータの推定を行ってミラーモデル200の同定処理を行い(S102)、第1予測部51が、シミュレーションにより、現在時刻以降の実プラント1の状態を予測する(S103)。
【0052】
そして、第1予測部51は、予測結果を表示するトレンドグラフを生成して監視端末500に
図5のような形式で表示出力する(S104)。なお、表示先は、実プラント1の監視端末、作業員のスマートフォンや携帯端末などのように、任意に設定することができる。
【0053】
[操作パターンの表示処理の流れ]
図9は、操作パターンの表示処理の流れを示すフローチャートである。
図9に示すように、第2予測部52は、処理開始が指示されると(S201:Yes)、作業員等の指示や操作マニュアルなどを用いてシミュレーション対象の操作タグを決定し(S202)、決定した操作タグに対して、複数の操作パターンを取得する(S203)。
【0054】
例えば、第2予測部52は、操作手順に基づき、次に対象となる機器を操作タグとして決定することができる。なお、複数の操作パターンは、仮想的に生成されたものでよく、作業者が入力したものでもよい。
【0055】
そして、第2予測部52は、生成した複数の操作パターンから1つの操作パターンを選択し(S204)、選択された操作パターンを用いたシミュレーションを実行する(S205)。
【0056】
その後、第2予測部52は、シミュレーションにより現在時刻から所定時間後までの実プラントの状態(対象となる操作タグの時系列変化)と出力アラームを予測する(S206)。さらに、第2予測部52は、出力アラームの数を計数する(S207)。
【0057】
ここで、第2予測部52は、全操作パターンについて予測が完了したか否かを判定し(S208)、未予測の操作パターンがある場合(S208:No)、次の操作パターンについてS204以降を実行する。
【0058】
一方、第2予測部52は、全操作パターンの予測が完了した場合(S208:Yes)、それぞれの操作パターンについて、操作パターンと実プラント1の状態とアラームとの対応付けを実行し(S209)、その対応付けを
図7のような形式で表示出力する(S210)。
【0059】
[効果]
上述したように、情報処理装置10は、各操作パターンについて実プラント1の状態を予測して出力することができ、作業員は、アラームが少ない操作パターンを選択することができる。この結果、情報処理装置10は、作業員がより効率的な運用やより安全な運用の選択の見誤る可能性を低減し、プラントを安全で効率的に運用することができる。また、情報処理装置10は、単なるシミュレータとは異なり、実プラント1に同定されたモデルでシミュレーションを行うことにより、より精度が高い結果を得られることができる。
【0060】
また、情報処理装置10は、各操作パターンで発生するアラームの発生時刻や発生数を出力することができるので、より安全なプラント運用の供することができる。また、情報処理装置10は、各操作パターンによる実プラント1の状態遷移、アラームの発生時刻や発生数をグラフ化して出力することができるので、作業員等が客観的に判断する情報を提示することができ、作業員等による選択ミスなどの可能性を低減することができる。
【0061】
[実施形態2]
ところで、実施形態1では、ある1つの操作タグに対して予測を行う例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、情報処理装置10は、操作タグと関連する関連タグについても同時に予測することができる。
【0062】
具体的には、情報処理装置10は、複数の操作パターンそれぞれを実行したと場合に、実プラント1において作業員による複数の対象のうちの第1の対象(操作タグ)に対するアラームの発生と第1の対象の操作による影響を受ける少なくとも1つの第2の対象(関連タグ)に対するアラームの発生とを、シミュレーションにより同時に予測する。
【0063】
上記例で説明すると、情報処理装置10は、S203において操作タグが選択されると、
図4に示した関連性DB14を参照し、操作タグと対応付けられる関連タグ「関連タグ1、関連タグ2、関連タグ3」を特定する。そして、情報処理装置10は、操作タグに対して複数の操作パターンそれぞれのシミュレーションを実行するとともに、各関連タグに対して複数の操作パターンそれぞれのシミュレーションを実行する。
【0064】
このようにして、情報処理装置10は、複数の操作パターンそれぞれを実行したときの操作タグの変化およびアラームの発生を予測し、複数の操作パターンそれぞれを実行したときの各関連タグの変化およびアラームの発生を予測する。そして、情報処理装置10は、それらの予測結果を監視端末500に表示出力することができる。
【0065】
図10は、実施形態2にかかる操作パターンの表示例を説明する図である。
図10に示すように、情報処理装置10の第2予測部52は、操作タグと各関連タグについて、パターン1について予測した時系列変化を「BL111」、パターン2について予測した時系列変化を「BL112」、パターン3について予測した時系列変化を「BL113」、パターン4について予測した時系列変化を「BL114」、パターン5について予測した時系列変化を「BL115」として表示する。
図10における関連タグ1~3上の丸印や四角印など(操作A~C)は、あくまで操作タグに実施された操作のタイミングを示す印であり、当該の関連タグ1~3に対する操作ではない。一方、関連タグ1~3上に表示されたダイヤ印(アラーム)は、当該の関連タグで発生するアラームを示す。
【0066】
例えば、パターン1「BL111」について、第2予測部52は、「12:00」の操作Aを行った後、操作タグでは「12:15」付近にアラームが発生することを予測して表示し、関連タグ1では「12:35」付近にアラームが発生することを予測して表示し、関連タグ2では「13:00」付近にアラームが発生することを予測して表示し、関連タグ3では「13:20」付近にアラームが発生することを予測して表示する。また、第2予測部52は、操作タグについてアラーム数:1と合計アラーム数:(4)を表示し、関連タグ1についてアラーム数:1、関連タグ2についてアラーム数:1、関連タグ3についてアラーム数:1を表示する。
【0067】
同様に、パターン2「BL112」について、第2予測部52は、「12:00」に操作Bを行い、続いて「12:30」に操作Aを行った後、操作タグでは「12:45」、「13:00」、「13:20」の各付近にアラームが発生することを予測して表示し、関連タグ1では「13:00」と「13:20」の各付近にアラームが発生することを予測して表示し、関連タグ2では「13:10」と「13:25」の各付近にアラームが発生することを予測して表示し、関連タグ3では「13:25」付近にアラームが発生することを予測して表示する。また、第2予測部52は、操作タグについてアラーム数:3と合計アラーム数:(8)を表示し、関連タグ1についてアラーム数:2、関連タグ2についてアラーム数:2、関連タグ3についてアラーム数:1を表示する。
【0068】
同様に、パターン3「BL113」について、第2予測部52は、「12:00」に操作Cを行った後、操作タグでは「13:15」付近にアラームが発生することを予測して表示し、関連タグ1では「13:15」付近にアラームが発生することを予測して表示し、関連タグ2では「13:20」付近にアラームが発生することを予測して表示し、関連タグ3ではアラームが発生しないことを予測する。また、第2予測部52は、操作タグについてアラーム数:1と合計アラーム数:(3)を表示し、関連タグ1についてアラーム数:1、関連タグ2についてアラーム数:1、関連タグ3についてアラーム数:0を表示する。
【0069】
同様に、パターン4「BL114」について、第2予測部52は、「12:00」に操作Bを行い、「12:30」にも操作Bを行った後、操作タグと関連タグ1ではアラームが発生しないことを予測し、関連タグ2では「13:10」付近にアラームが発生することを予測して表示し、関連タグ3では「13:20」付近でアラームが発生することを予測して表示する。また、第2予測部52は、操作タグについてアラーム数:(0)と合計アラーム数:2を表示し、関連タグ1についてアラーム数:0、関連タグ2についてアラーム数:1、関連タグ3についてアラーム数:1を表示する。
【0070】
同様に、パターン5「BL115」について、第2予測部52は、「12:00」に操作Bを行い、「12:30」に操作Cを行った後、操作タグでは「12:50」付近でアラームが発生すると予測して表示し、各関連タグではアラームが発生しないことを予測する。また、第2予測部52は、操作タグについてアラーム数:1と合計アラーム数:(1)を表示し、関連タグ1についてアラーム数:0、関連タグ2についてアラーム数:0、関連タグ3についてアラーム数:0を表示する。
【0071】
また、第2予測部52は、各予測画面を1つのディスプレイ上に表示することもでき、Web画面や専用画面のタブなどにより切り替え可能に表示することもでき、スワイプ操作などの公知の切り替え操作で切り替え可能に表示することもできる。もちろん、第2予測部52は、手動による表示切替に限らず、スライドショーなどのように自動で切り替えることもできる。
【0072】
上述したように、情報処理装置10は、第1の対象(操作タグ)の予測結果だけではなく、関連タグについても同時に予測して同時に出力することができる。この結果、情報処理装置10は、作業員等への情報過多を抑制しつつ、安全操業に寄与する必要な情報を絞り込んで提示することができる。また、情報処理装置10は、作業員に対して、操作タグに対して表示される合計アラーム数だけ見ていても(関連タグ表示を見なくても)、どの操作パターンを選択すべきかの判断材料を出力することができる。また、情報処理装置10は、最も合計アラーム数が少なくなる操作パターンを強調表示することもできる。
【0073】
[実施形態3]
ところで、予測アラームが多発した場合、情報過多になり、作業員等による視認確認の負担が増大することも予想される。その場合であっても、情報処理装置10は、特定のアラームを強調表示することで、作業員等への情報過多を抑制することができる。なお、本実施形態では、1つの操作パターンについて発生するアラームを同種アラームとして扱う。
【0074】
具体的には、情報処理装置10は、シミュレーションにより発生が予測される、実プラント1が予め規定された状態の範囲外にあることを示す各アラームに関して、各アラームの関係性に基づき、ミラープラント100を監視する監視端末500への各アラームの表示制御を実行する。例えば、情報処理装置10の表示処理部60は、各アラームを予想出力順に時系列で表示するとともに、各アラームのうち関連する複数の同種アラームについては、最初に出力される同種アラームを強調表示する。
【0075】
図11は、実施形態3にかかるアラームの強調例1を説明する図である。
図11に示す表示例は、
図7で説明した表示例と同じであることから、詳細な説明は省略する。このような画面が第2予測部52により表示されると、表示処理部60は、同種アラームについては先頭のみを強調表示する。
図11の例では、表示処理部60は、パターン2(BL112)について、「12:30」から「13:30」までの間に3つの同種アラーム(アラームR1、R2、R3)が表示されることから、このうちの先頭であるアラームR1について強調表示する。
【0076】
また、このような強調表示は、関連タグについても同様に処理することができる。
図12は、実施形態3にかかるアラームの強調例2を説明する図である。
図12に示す表示例は、
図10で説明した表示例と同じであることから、詳細な説明は省略する。このような画面が第2予測部52により表示されると、表示処理部60は、各タグ間において同種アラームについては先頭のみを強調表示する。
図12の例では、表示処理部60は、操作タグにおける各パターンの先頭アラームを強調表示し、操作タグにおけるその他のアラームおよび各関連タグのアラームについては強調表示しない。
【0077】
このように、情報処理装置10は、上述した強調表示の制御を行うことで、情報過多を低減し、作業員等による視認の向上を図ることができる。
【0078】
ところで、実施形態3では、予測アラームが多発した場合、先頭のアラームを強調表示する例を説明したが、これに限定されるものではない。
【0079】
例えば、表示処理部60は、複数の同種アラームのうち、最初に出力される同種アラーム以外の同種アラーム、または、最初に出力される同種アラームから所定時間経過後の同種アラームについては表示を抑制する。
【0080】
図11の例では、表示処理部60は、アラームR1、アラームR2、アラームR3のうち、アラームR2とR3については、表示を抑制する。また、
図12の例では、表示処理部60は、各タグにおいて、各操作パターンで最初に出力されるアラームを表示し、それ以外のアラームについては表示を抑制する。
【0081】
また、表示処理部60は、先頭アラームから所定時間内(例えば20分間)後のアラームについては表示を抑制したり、一度すべてを表示した後、所定時間経過後に先頭アラーム以外のアラームの表示を抑制したりすることもできる。さらに、表示処理部60は、上流の機器(例えば操作タグ)についてアラームを表示し、下流の機器(例えば関連タグ)についてはアラームを抑制することもできる。なお、ここで、表示の抑制としては、全く表示しないことに限らず、色を変えたり、色を半透明したりなどが含まれる。
【0082】
[実施形態4]
ところで、予測したアラームに関して、その時刻になると、作業員等によりアラームを回避するための何かしらの対応が、実プラント1もしくはミラープラント100で行われることが一般的である。その場合に、予測とはいえ、アラームを表示し続けることは、作業員の視認負担が大きいことに変わりはない。そこで、実施形態4では、回避対応が行われた予測アラーム以降のアラームについては表示を抑制することで、作業員等による視認負担の軽減を図る例を説明する。
【0083】
具体的には、情報処理装置10は、複数の同種アラームを表示した後、作業員等により対応が行われた時刻以降の同種アラームについては非表示に変更する。
図13は、実施形態4にかかるアラームの表示抑制例を説明する図である。
図13には、
図7で説明した画面が表示されているとする。このような状態において、表示処理部60は、時刻が「12:35」になって、パターン2「BL112」のアラームR1に対応する回避操作が実プラント1で行われたことを検出すると、その後のアラームR2、R3については非表示とする。なお、情報処理装置10は、BL112で予定していなかった操作が行われた場合もしくは追加された場合、その時点で再度のシミュレーションおよび表示を実行する。
【0084】
このようにすることで、情報処理装置10は、実プラント1への操作とアラーム表示とを連動することができ、未対応のアラームと対応済のアラームとを区別して表示することができるので、作業員等による視認の向上を図ることができる。例えば、情報処理装置10は、プロセスに対し予定していなかった操作によるアラーム対応を行った場合は、再度のシミュレーションを実行することができる。また、情報処理装置10は、重要度の低いアラーム等を単に非表示とする際に、関連アラームもあわせて非表示とすることもできる。また、所定数のアラームが消えた場合に次の予測を行うなど、次の予測を行うタイミング等にも役立てることができる。ここで、非表示とは、表示されているもの他の表示形式に変更することに限らず、表示を終了することも含む。
【0085】
[実施形態5]
上述した情報処理装置10は、トレンド表示と操作パターンの予測表示とを比較可能に表示することもできる。ここでは、操作タグを例にして説明すると、関連タグについても同様に処理することができる。
【0086】
図14は、実施形態5にかかるトレンド表示との連携例を説明する図である。
図14に示すように、第2予測部52は、操作タグに対して、仮想的な複数の操作パターン(BL111~BL115)でシミュレーションを実行し、操作タグの遷移およびアラームの発生を予測して、その予測結果を含む画面を監視端末500に表示する。そして、第2予測部52は、複数の操作パターンに関する情報として、各操作パターンに含まれる操作の内容やアラームの発生時刻などを第1予測部51に出力する。
【0087】
第1予測部51は、複数の操作パターン(BL111~BL115)それぞれについて、各操作パターンに含まれる操作内容等を用いて、実プラント1全体の稼働状況を行うシミュレーションを実行して、予想トレンドを生成する。そして、第1予測部51は、
図14の右図に示すように、予測済みである「12:00」に以降に、各操作パターンでの予想データをトレンドグラフ上に表示させる。
【0088】
このようにすることで、情報処理装置10は、各操作パターンが実プラント1全体にどのように影響を及ぼすかを関連付けて作業員等に提示することができる。したがって、作業員等は、実プラント1をより安全に稼働させるための操作パターンを選択することができ、実プラント1の安全操業が実現できる。
【0089】
[実施形態6]
ところで、アラームの表示制御方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な基準により表示抑制等を実行することができる。そこで、実施形態6では、アラームの表示抑制に関する別手法について説明する。
【0090】
例えば、情報処理装置10は、上述した複数の操作パターンに対するシミュレーションにより発生すると予測されたアラーム(予測アラーム)について、当該アラームが発生するタグのパラメータを意図的に変化させて、影響を受けるタグ(予測アラーム)を見出し、当該アラームの表示を抑制することができる。
【0091】
具体的には、情報処理装置10は、ミラーモデル200を用いたシミュレーションにより、予測プロセスの値(以下では、単に予測プロセス値と記載する)が閾値を超えることで発生すると予測されたアラームを特定し、アラームを含むシミュレーション結果画面を表示する。そして、情報処理装置10は、アラームに対応する予測プロセス値を閾値未満に強制的に設定した上で再シミュレーションを行い、再シミュレーションの結果、発生しなくなったアラームを特定し、シミュレーション結果画面から当該アラームの表示を抑制する。なお、本実施形態では、第1のアラームの一例として、操作タグの各アラームを用い、第2のアラームの一例として、関連タグのアラームを用いて説明するがこれに限定するものではなく、第1のアラームも第2のアラームも共に操作タグに関するアラームでもよく、共に関連タグに関するアラームでもよく、第1のアラームが関連タグのアラームで第2のアラームが操作タグのアラームであってもよい。
【0092】
図15は、再シミュレーションによる予測アラームの抑制例を説明する図である。
図15には、
図10で説明した操作タグに関する複数の操作パターンについてのアラームの発生予測を示している。
図15に示すように、ミラーモデル200を用いたシミュレーションにより、操作パターンBL112では、アラーム(イ)とアラーム(ロ)とアラーム(ハ)との発生が予測されたことが示されている。
【0093】
このような状態において、予測処理部50は、任意に特定の第1のアラームに対応するアラーム(イ)を選択し、シミュレーション結果から、アラーム(イ)に対応する予測プロセスを取得する。ここで、予測プロセスには、例えば温度、湿度、配管の流量など、実プラント1のプロセスの値やセンサ値などが該当する。
【0094】
続いて、予測処理部50は、アラーム(イ)に対応する予測プロセス値を閾値未満に設定した上で、ミラーモデル200を用いた再シミュレーションを実行して、その結果を出力する。例えば、予測処理部50は、アラーム(イ)に関して温度が50度で閾値(例えば40度)以上と予測されたことから出力されている場合、温度を30度に設定して再シミュレーションを実行する。
【0095】
表示処理部60は、再シミュレーションにより、アラーム(ハ)が表示されなくなったことを特定する。すなわち、表示処理部60は、アラーム(ハ)がアラーム(イ)に依存しており、アラーム(イ)の対応を行うことで、アラーム(ハ)への対応を行うことになると判定する。
【0096】
この結果、表示処理部60は、操作パターンBL112についてアラーム(イ)とアラーム(ロ)とアラーム(ハ)とが表示されている画面から、アラーム(ハ)の表示を抑制する。なお、表示処理部60は、予測プロセスの設定を元に戻して、再シミュレーションを実行して表示抑制を実行してもよく、はじめのシミュレーションの表示結果の表示を変更してもよい。
【0097】
ここで、
図15では操作タグについて説明したが、関連タグのアラームについても同様に処理することができる。
図16は、再シミュレーションによる関連アラームの抑制例を説明する図である。
図16には、
図10で説明した操作タグに関する複数の操作パターンについての操作タグのアラームおよび関連タグのアラームの発生予測を示している。アラームの発生は、符号が異なるものの
図10と同様とする。
【0098】
このような状態において、予測処理部50が、
図15に示した再シミュレーションを実行したとする。その際に、表示処理部60は、関連タグ1のアラーム(ホ)と関連タグ2のアラーム(リ)とが表示されなくなったことを検出する。すなわち、表示処理部60は、アラーム(ホ)およびアラーム(リ)がアラーム(イ)に依存しており、アラーム(イ)の対応を行うことで、アラーム(ホ)およびアラーム(リ)への対応を行うことになると判定する。
【0099】
つまり、表示処理部60は、アラーム(ホ)およびアラーム(リ)をアラーム(イ)の関連アラームと判定する。この結果、
図16に示すように、表示処理部60は、最初にシミュレーションしたアラームの表示画面から、アラーム(ホ)およびアラーム(リ)の表示も抑制する。
【0100】
なお、アラーム(イ)について強制変更後の再シミュレーンにおいても、操作タグおよび関連タグのいずれのアラームも消去されない場合には、別のアラームを選択して同様の処理を行うことができる。もっとも、再シミュレーン対象は任意に選択できるので、あるアラームに対する再シミュレーションにおいて関連アラームが消去された場合であっても、別のアラームについて
図15や
図16の処理を実行することもできる。
【0101】
また、予測プロセス値を強制的に変更する例を説明したが、これに限定されるものではなく、予測プロセス値の算出に利用する物理モデルや数式などのパラメータ等を変更することで、予測プロセス値が閾値以下になるように設定することもできる。また、設定の強制変更の対象は、予測プロセス値に限らず、ミラーモデル200内で利用されるソフトウェアのセンサ値などであってもよい。
【0102】
図17は、再シミュレーションによるアラームの抑制処理の流れを示すフローチャートである。
図17に示すように、予測処理部50は、関連アラームを調査するアラームを選択し(S001)、選択したアラームの予測プロセス値等を強制的に閾値範囲内で設定し直し(S002)、設定し直した状態でシミュレーションを実行する(S003)。
【0103】
そして、表示処理部60は、選択したアラーム以外で、消えたアラームを関連アラームと判定する(S004)。その後、予測処理部50が、選択したアラームの予測プロセス値を元に戻してシミュレーションを実行し(S005)、表示処理部60は、シミュレーション結果表示において、関連アラームと判定したアラーム表示を抑制する(S006)。
【0104】
上述したように、情報処理装置10は、複数の操作パターンに対してシミュレーションを実行して、発生が予測されるアラームを表示するとともに、関連性が高いアラームを特定することができる。また、情報処理装置10は、どのアラームに対応すれば、どのアラームが消去されるのかを作業員等に提示でき、作業員等が最適な操作パターンを選択する有用な情報を提供することができる。
【0105】
[実施形態7]
ところで、ミラーモデル200では、実プラント1の負荷状況に応じたモデル(例えば近似式など)を用いて、シミュレーションを実行する。しかし、想定されるすべての負荷に対応したモデルを生成することは現実的ではないことから、数個のモデルを予め用意しておき、予測対象の負荷に応じてモデルを補間しつつ、シミュレーションを行うことが考えられる。すなわち、補間状況により、シミュレーションの結果の信頼度が異なることも考えられる。
【0106】
また、モデル化対象となる要素の性質によって、厳密に数式化できるものもあれば、実際の動作に合わせた近似式で対応する例もある。つまり、要素によってモデルの精度は異なる。したがって、シミュレーション条件やモデルの精度により、シミュレーションの信頼度は変化する。
【0107】
そこで、情報処理装置10は、操作パターンに対してシミュレーションを行ってアラーム等を表示するときに、予測結果の信頼度を作業員等に提示したり、表示するアラームをフィルタリングしたりすることで、作業員等への情報過多を抑制する。なお、本実施形態では、補間状況(補間割合や負荷など)と信頼度との関係をテーブル等で予め定義しておくものとする。
【0108】
次に、
図10で示した各操作パターンを例にして信頼度について説明する。
図18は、シミュレーションの信頼度を説明する図である。
図18に示すように、情報処理装置10は、実プラント1の負荷が50%を想定し調整したモデルと、実プラント1の負荷が80%を想定し調整したモデルと、を予め生成して保持する。ここで、負荷とは、例えば実プラント1で実行されるプロセスの負荷、生産物の量や質、配管の流量などである。
【0109】
このような状態において、予測処理部50は、
図10と同様、操作パターンBL111、BL112、BL113、BL114、BL115を取得する。ただし、操作パターンBL111は、負荷50%を想定した操作内容であり、操作パターンBL112は、負荷60%を想定した操作内容であり、操作パターンBL113は、負荷20%を想定した操作内容であり、操作パターンBL114は、負荷75%を想定した操作内容であり、操作パターンBL115は、負荷90%を想定した操作内容である。
【0110】
この場合、予測処理部50は、操作パターンBL111については、負荷50%を想定した操作内容であるため、負荷50%のモデルを用いたシミュレーションにより、アラームの発生を予測する。したがって、予測処理部50は、操作パターンBL111の信頼度を100とする。
【0111】
同様に、予測処理部50は、操作パターンBL112については、負荷60%を想定した操作内容であるため、負荷50%時と負荷80%時のモデルを内挿補間したモデルを用いたシミュレーションにより、アラームの発生を予測する。したがって、予測処理部50は、操作パターンBL112の信頼度を90とする。
【0112】
同様に、予測処理部50は、操作パターンBL113については、負荷20%を想定した操作内容であるため、負荷50%時と負荷80%時のモデルを外挿補間したモデルを用いたシミュレーションにより、アラームの発生を予測する。したがって、予測処理部50は、操作パターンBL113の信頼度を80とする。
【0113】
また、予測処理部50は、操作パターンBL114については、負荷75%を想定した操作内容であるため、負荷50%時と負荷80%時のモデルを内挿補間したモデルを用いたシミュレーションにより、アラームの発生を予測する。したがって、予測処理部50は、操作パターンBL114の信頼度を95とする。
【0114】
また、予測処理部50は、操作パターンBL115については、負荷90%を想定した操作内容であるため、負荷50%時と負荷80%時のモデルを外挿補間したモデルを用いたシミュレーションにより、アラームの発生を予測する。したがって、予測処理部50は、操作パターンBL115の信頼度を85とする。
【0115】
そして、表示処理部60は、各モデルを用いたシミュレーションにより予測されたアラームのうち、信頼度が閾値(例えば90)未満のアラームの表示を抑制する。
図19は、信頼度に基づくアラームの表示抑制を説明する図である。
図19に示すように、表示処理部60は、操作タグ、関連タグ1、関連タグ2、関連タグ3の各アラームのうち、信頼度が閾値未満である操作パターンBL113と操作パターンBL115の各アラームの表示を抑制する。
【0116】
なお、各アラームのリスク分析などに基づく重要度も加味して、各アラームの表示制御を実行することもできる。例えば、表示処理部60は、万が一発生すると重大な事象につながるアラームについては、シミュレーションの信頼度が低くても表示する。別例としては、表示処理部60は、目標プロセス値(もしくはアラーム閾値)と予測結果の乖離の大きさを加味して、アラーム表示するか否かを決定する。例えば、表示処理部60は、シミュレーションの信頼度が高い場合は、閾値近辺のアラーム表示を抑制し、信頼度が低い場合は、閾値近辺のアラームも表示する。
【0117】
図20は、信頼度に基づくアラームの表示制御処理の流れを示すフローチャートである。
図20に示すように、情報処理装置10は、作業員等の指示操作等により、アラームの検出閾値を設定する(S1)。
【0118】
続いて、情報処理装置10は、ミラープラント100にて、アラームの発生の予測およびその信頼度を算出する(S2)。そして、情報処理装置10は、リスクマネジメントによる重要度設定、もしくは、アラームの発生個所の目標値と予測値との乖離を算出する(S3)。
【0119】
その後、情報処理装置10は、信頼度(および、重要度もしくは目標値と予測値の乖離)から、アラーム表示閾値を算出する(S4)。例えば、情報処理装置10は、信頼度100で設定された閾値に、信頼度100から該当信頼度αへの減少率や上記乖離を示す割合などを乗算して算出することもでき、任意に設定することもできる。
【0120】
そして、情報処理装置10は、発生が予測されたアラームのうち、アラーム表示閾値以上のアラームのみを表示し(S5)、表示されたアラームの合計数から操作パターンを推奨する(S6)。例えば、情報処理装置10は、最も操作数が少ない操作パターンを推奨する。
【0121】
なお、シミュレーションの信頼度ではなく、事象(アラーム)の発生確率を用いて、予測されたアラームの表示抑制を判断してもよい。例えば、情報処理装置10は、天候等に影響を受けるプロセスであれば、1時間後の降水確率等を加味して、アラームの発生確率を算出する。
【0122】
より詳細には、情報処理装置10は、粉塵など天候の影響を受けるプロセスに関するアラームについては、予測対象期間である1時間後の降水確率が50%以上の場合は、上記モデルの信頼度に関わらず表示することもできる。また、情報処理装置10は、上記モデルの信頼度を所定値(例えば10)加算することもでき、逆に、雨等により冷却される温度に関連するプロセスの場合、上記モデルの信頼度を所定値(例えば10)減算することもできる。
【0123】
また、情報処理装置10は、機械学習モデルなどを採用する場合、各アラームの発生確率も取得することができるので、上記信頼度や発生確率により、アラームの色や濃淡を変更することもできる。
【0124】
[実施形態8]
さて、これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0125】
[数値等]
上記実施形態で用いた画面表示例、時刻、各タグの例、系統数、関連タグ数、アラーム数などは、あくまで一例であり、任意に変更することができる。また、各シミュレーションは、予め生成した物理モデルを採用することができる。さらに、各シミュレーションは、例えば温度などの操作内容などの入力(説明変数)と、例えばタグの値などの出力(目的変数)とが対応付けられた訓練データを用いて生成された機械学習モデルなどを採用することができる。
【0126】
また、実施形態6や7で説明した処理は、操作タグや関連タグを例にして説明したが、これに限定されるものではなく、プラントで操作対象となる各操作や各設定項目などを対象とすることができる。また、実施形態6や7で説明した処理におけるアラームの予測対象は、必ずしも関係性が既知である操作タグと関連タグに限定する必要はなく、関係性が未知である操作タグ間、関連タグ間、操作タグと関連タグ間などを対象とすることができる。
【0127】
また、実施形態6では、予測プロセスの値を変更して再シミュレーションを実行する例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば予測に利用されるシミュレーションモデルや機械学習モデルのパラメータ等を変更して再シミュレーションを実行することもできる。もっとも、予測されるアラームの数は、複数である必要はなく、1個の場合も0個の場合もあり得る。
【0128】
また、実施形態7では、負荷が異なるモデルを利用した例を説明したが、これに限定されるものではなく、予測条件と異なる条件下で生成されたモデルを用いることができる。例えば、プラントの負荷に限らず、気温、湿度、天候などの環境条件、作業員のスキルレベルなどの操業条件ごとに生成された各モデルを用いることもできる。このような場合であっても、情報処理装置10は、実施形態7と同様、各モデルの生成条件と各アラームの予測時の条件とが異なるほど、予測結果の信頼度を低く決定する。例えば、情報処理装置10は、内挿補間または外挿補間に限らず、乖離度などを用いることもできる。例を挙げると、情報処理装置10は、気温30度の予測条件下で、気温40度の条件下で生成されたモデルを用いて予測した場合は、予測結果の信頼度を「100×30/40=75」と算出することもできる。
【0129】
[操作パターン]
例えば、第2予測部52が仮想的に生成する操作パターンは、ある操作タグに対する操作パターンでもよく、複数の操作タグを含む実プラント1全体またはミラープラント100全体に関する操作パターンでもよい。
【0130】
[同種アラーム]
上記実施形態では、1つの操作パターンについて発生するアラームを同種アラームとして扱う例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第2予測部52によるシミュレーションが、発生要因までを予測または特定できる物理モデルなどである場合は、発生要因により同種アラームをグループ化することもできる。
【0131】
例えば、
図11の例において、アラームR1とアラームR3との発生要因が同じで、アラームR2の発生要因が異なる場合、表示処理部60は、アラームR3については表示を抑制するが、アラームR2については表示を抑制しない。なお、発生要因による判断とは、例えばアラームR1とアラームR3が温度70度以上で発生するアラームであり、アラームR2は、流量10L/min以下で発生するアラームなどの場合が該当する。このような処理は、各実施形態に適用することができる。例えば、表示処理部60は、操作タグと関連タグとの間でも、発生要因が同じアラームに基づく表示制御を実行できる。
【0132】
[システム]
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0133】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0134】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0135】
[ハードウェア]
次に、情報処理装置10のハードウェア構成例を説明する。
図21は、ハードウェア構成例を説明する図である。
図21に示すように、情報処理装置10は、通信装置10a、HDD(Hard Disk Drive)10b、メモリ10c、プロセッサ10dを有する。また、
図21に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0136】
通信装置10aは、ネットワークインタフェースカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD10bは、
図2に示した機能を動作させるプログラムやDBを記憶する。
【0137】
プロセッサ10dは、
図2に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD10b等から読み出してメモリ10cに展開することで、
図2等で説明した各機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、このプロセスは、情報処理装置10が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ10dは、ミラー処理部30、同定処理部40、予測処理部50、表示処理部60等と同様の機能を有するプログラムをHDD10b等から読み出す。そして、プロセッサ10dは、ミラー処理部30、同定処理部40、予測処理部50、表示処理部60等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0138】
このように、情報処理装置10は、プログラムを読み出して実行することで各種処理方法を実行する情報処理装置として動作する。また、情報処理装置10は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施形態と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施形態でいうプログラムは、情報処理装置10によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0139】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【符号の説明】
【0140】
10 情報処理装置
11 通信部
12 記憶部
13 系統DB
14 関連性DB
20 処理部
30 ミラー処理部
40 同定処理部
50 予測処理部
51 第1予測部
52 第2予測部
60 表示処理部
61 取得部
62 監視制御部