IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横河電機株式会社の特許一覧

特許7416025栽培支援システム、栽培支援方法、及びプログラム
<>
  • 特許-栽培支援システム、栽培支援方法、及びプログラム 図1
  • 特許-栽培支援システム、栽培支援方法、及びプログラム 図2
  • 特許-栽培支援システム、栽培支援方法、及びプログラム 図3
  • 特許-栽培支援システム、栽培支援方法、及びプログラム 図4
  • 特許-栽培支援システム、栽培支援方法、及びプログラム 図5
  • 特許-栽培支援システム、栽培支援方法、及びプログラム 図6
  • 特許-栽培支援システム、栽培支援方法、及びプログラム 図7
  • 特許-栽培支援システム、栽培支援方法、及びプログラム 図8
  • 特許-栽培支援システム、栽培支援方法、及びプログラム 図9
  • 特許-栽培支援システム、栽培支援方法、及びプログラム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】栽培支援システム、栽培支援方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20240110BHJP
   G06Q 50/02 20240101ALI20240110BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20240110BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G06Q50/02
G06Q10/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021124987
(22)【出願日】2021-07-30
(65)【公開番号】P2023019915
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】初谷 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 史恭
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/145081(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/241005(WO,A1)
【文献】特開2009-106261(JP,A)
【文献】国際公開第2020/008777(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第113095555(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
G06Q 50/02
G06Q 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を栽培した栽培条件を取得する栽培条件取得部と、
前記植物の栽培における障害の発生状況を取得する障害取得部と、
前記栽培条件及び前記障害の発生状況を用いて、栽培条件及び障害の一方から他方を予測するモデルを生成するモデル生成部と、
前記モデルを用いて、前記植物の栽培において、最も障害の発生を抑えることのできる栽培条件の組み合わせ、または、予め定められた閾値以下にまで前記障害の発生を抑えることができる栽培条件の複数の組み合わせを推定する推定部とを備える
栽培支援システム。
【請求項2】
植物を栽培した栽培条件を取得する栽培条件取得部と、
前記植物の栽培における障害の発生状況を取得する障害取得部と、
前記栽培条件及び前記障害の発生状況の少なくとも1つのデータについて、日中成分と夜間成分を分離したデータを特徴量として抽出する抽出部と、
前記栽培条件及び前記障害の発生状況を用いて、前記特徴量に基づいて、栽培条件及び障害の一方から他方を予測するモデルを生成するモデル生成部と、
前記モデルを用いて、前記植物の栽培における障害の発生を抑える栽培条件を推定する推定部とを備える
栽培支援システム。
【請求項3】
前記栽培条件及び前記障害の発生状況の少なくとも1つのデータに前処理を行う前処理部を備え、
前記モデル生成部は、前記前処理されたデータを用いて、前記栽培条件及び障害の一方から他方を予測するモデルを生成する
請求項1または2に記載の栽培支援システム。
【請求項4】
前記前処理部は、前記栽培条件のデータと前記障害の発生状況のデータを時間軸で対応付けること、前記栽培条件及び前記障害の発生状況の少なくとも1つのデータを補完すること、前記栽培条件及び前記障害の発生状況の少なくとも1つのデータの外れ値を処理すること、及び前記栽培条件及び前記障害の発生状況の少なくとも1つのデータの丸め処理を行うことの少なくとも1つを含む前記前処理を行う
請求項に記載の栽培支援システム。
【請求項5】
前記栽培条件及び前記障害の発生状況の少なくとも1つのデータの特徴量を抽出する抽出部を備え、
前記モデル生成部は、前記特徴量に基づいて前記モデルを生成する
請求項に記載の栽培支援システム。
【請求項6】
前記抽出部は、前記栽培条件及び前記障害の発生状況の少なくとも1つのデータについて、積算値、微分値、及び日中成分と夜間成分を分離したデータの少なくとも1つを前記特徴量として抽出する
請求項に記載の栽培支援システム。
【請求項7】
前記モデル生成部は、ベイジアンネットワークモデル構造のモデルを生成する
請求項1からのいずれか一項に記載の栽培支援システム。
【請求項8】
前記モデル生成部は、前記栽培条件及び前記障害の発生状況の少なくとも1つのデータをクラスタリングして、前記ベイジアンネットワークモデル構造のモデルを生成する
請求項に記載の栽培支援システム。
【請求項9】
前記モデル生成部は、前記栽培条件及び前記障害の発生状況の少なくとも1つのデータのノードを有する前記ベイジアンネットワークモデル構造のモデルを生成する
請求項又はに記載の栽培支援システム。
【請求項10】
前記栽培条件取得部は、前記植物を栽培した環境条件及び前記栽培した植物の状態を示す植物データを、前記栽培条件として取得する
請求項1からのいずれか一項に記載の栽培支援システム。
【請求項11】
前記推定した栽培条件を示すデータを表示装置に出力する出力部を備える
請求項1から10のいずれか一項に記載の栽培支援システム。
【請求項12】
植物を栽培する栽培条件及び前記植物の栽培における障害の一方から他方を予測するモデルを用いて、前記植物の栽培において、最も障害の発生を抑えることのできる栽培条件の組み合わせ、または、予め定められた閾値以下にまで前記障害の発生を抑えることができる栽培条件の複数の組み合わせを推定する推定部と、
前記推定した栽培条件を示すデータを出力する出力部と
を備える栽培支援システム。
【請求項13】
前記栽培条件を取得する栽培条件取得部と、
前記障害の発生状況を取得する障害取得部と、
前記栽培条件及び前記障害の発生状況を用いて、前記モデルを更新するモデル更新部とを備える
請求項12に記載の栽培支援システム。
【請求項14】
植物を栽培した栽培条件を取得する段階と、
前記植物の栽培における障害の発生状況を取得する段階と、
前記栽培条件及び前記障害の発生状況を用いて、栽培条件及び障害の一方から他方を予測するモデルを生成する段階と、
前記モデルを用いて、前記植物の栽培において、最も障害の発生を抑えることのできる栽培条件の組み合わせ、または、予め定められた閾値以下にまで前記障害の発生を抑えることができる栽培条件の複数の組み合わせを推定する段階とを備える
栽培支援方法。
【請求項15】
コンピュータを、
植物を栽培した栽培条件を取得する栽培条件取得部と、
前記植物の栽培における障害の発生状況を取得する障害取得部と、
前記栽培条件及び前記障害の発生状況を用いて、栽培条件及び障害の一方から他方を予測するモデルを生成するモデル生成部と、
前記モデルを用いて、前記植物の栽培において、最も障害の発生を抑えることのできる栽培条件の組み合わせ、または、予め定められた閾値以下にまで前記障害の発生を抑えることができる栽培条件の複数の組み合わせを推定する推定部と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培支援システム、栽培支援方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「植物、特に野菜へのホウ素供給に有用な組成物を提供する」ことが記載され、特許文献2には、「Caイオンに対する安定度定数が2~12であり、且つMITI(通商産業省)法による生分解能が28日間におけるTOC(全有機炭素)で10~99.9%であることを特徴とする農園芸用植物成長助剤」が記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2016-8162号公報
[特許文献2] 特開平11-029415号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、栽培支援システムを提供する。栽培支援システムは、植物を栽培した栽培条件を取得する栽培条件取得部を備えてよい。栽培支援システムは、植物の栽培における障害の発生状況を取得する障害取得部を備えてよい。栽培支援システムは、栽培条件及び障害の発生状況を用いて、栽培条件及び障害の一方から他方を予測するモデルを生成するモデル生成部を備えてよい。栽培支援システムは、モデルを用いて、植物の栽培における障害の発生を抑える栽培条件を推定する推定部を備えてよい。
【0004】
栽培支援システムは、栽培条件及び障害の発生状況の少なくとも1つのデータに前処理を行う前処理部を備えてよい。モデル生成部は、前処理されたデータを用いて、栽培条件及び障害の一方から他方を予測するモデルを生成してよい。
【0005】
前処理部は、栽培条件のデータと障害の発生状況のデータを時間軸で対応付けること、栽培条件及び障害の発生状況の少なくとも1つのデータを補完すること、栽培条件及び障害の発生状況の少なくとも1つのデータの外れ値を処理すること、及び栽培条件及び障害の発生状況の少なくとも1つのデータの丸め処理を行うことの少なくとも1つを含む前処理を行ってよい。
【0006】
栽培支援システムは、栽培条件及び障害の発生状況の少なくとも1つのデータの特徴量を抽出する抽出部を備えてよい。モデル生成部は、特徴量に基づいてモデルを生成してよい。
【0007】
抽出部は、栽培条件及び障害の発生状況の少なくとも1つのデータについて、積算値、微分値、及び日中成分と夜間成分を分離したデータの少なくとも1つを特徴量として抽出してよい。
【0008】
モデル生成部は、ベイジアンネットワークモデル構造のモデルを生成してよい。
【0009】
モデル生成部は、栽培条件及び障害の発生状況の少なくとも1つのデータをクラスタリングして、ベイジアンネットワークモデル構造のモデルを生成してよい。
【0010】
モデル生成部は、栽培条件及び障害の発生状況の少なくとも1つのデータのノードを有するベイジアンネットワークモデル構造のモデルを生成してよい。
【0011】
栽培条件取得部は、植物を栽培した環境条件及び栽培した植物の状態を示す植物データを、栽培条件として取得してよい。
【0012】
栽培支援システムは、推定した栽培条件を示すデータを表示装置に出力する出力部を備えてよい。
【0013】
本発明の第2の態様においては、栽培支援システムを提供する。栽培支援システムは、植物を栽培する栽培条件及び植物の栽培における障害の一方から他方を予測するモデルを用いて、植物の栽培における障害の発生を抑える栽培条件を推定する推定部を備えてよい。栽培支援システムは、推定した栽培条件を示すデータを出力する出力部を備えてよい。
【0014】
栽培支援システムは、栽培条件を取得する栽培条件取得部を備えてよい。栽培支援システムは、障害の発生状況を取得する障害取得部を備えてよい。栽培支援システムは、栽培条件及び障害の発生状況を用いて、モデルを更新するモデル更新部を備えてよい。
【0015】
本発明の第3の態様においては、栽培支援方法を提供する。栽培支援方法は、植物を栽培した栽培条件を取得する段階を備えてよい。栽培支援方法は、植物の栽培における障害の発生状況を取得する段階を備えてよい。栽培支援方法は、栽培条件及び障害の発生状況を用いて、栽培条件及び障害の一方から他方を予測するモデルを生成する段階を備えてよい。栽培支援方法は、モデルを用いて、植物の栽培における障害の発生を抑える栽培条件を推定する段階を備えてよい。
【0016】
本発明の第4の態様においては、プログラムを提供する。プログラムは、コンピュータを、植物を栽培した栽培条件を取得する栽培条件取得部として機能させてよい。プログラムは、コンピュータを、植物の栽培における障害の発生状況を取得する障害取得部として機能させてよい。プログラムは、コンピュータを、栽培条件及び障害の発生状況を用いて、栽培条件及び障害の一方から他方を予測するモデルを生成するモデル生成部として機能させてよい。プログラムは、コンピュータを、モデルを用いて、植物の栽培における障害の発生を抑える栽培条件を推定する推定部として機能させてよい。
【0017】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る栽培支援システム10の構成を示す。
図2】栽培支援システム10の動作の一例を示すフローである。
図3】本実施形態の栽培支援システム10のモデル生成部236におけるクラスタリング後のデータを示す表である。
図4】抽出部234において処理される温度データを示す。
図5】本実施形態の栽培支援システム10のモデル生成部236が生成するベイジアンネットワークモデル構造のモデルの一例を示す。
図6】本実施形態の栽培支援システム10の表示装置300に表示させる表示画面の一例を示す。
図7】本実施形態の栽培支援システム10の表示装置300に表示させる環境条件の表示画面の例を示す。
図8】本実施形態の栽培支援システム10の表示装置300に表示させる植物データ224の表示画面の例を示す。
図9】本実施形態に係る栽培支援システム10の他の例の構成を示す。
図10】本発明の複数の態様が全体的又は部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、本実施形態に係る栽培支援システム10の構成を示す。栽培支援システム10は、植物の栽培における障害の発生を抑える栽培条件を推定することができる。栽培支援システム10は、例えば、新品種の植物について適切な栽培条件を推定し、栽培を行う顧客等に提示することができる。栽培支援システム10は、複数のセンサ100と、複数の端末110と、支援装置200と、表示装置300とを備える。
【0021】
複数のセンサ100は、支援装置200に有線又は無線で接続され、植物の栽培の栽培条件及び障害の発生状況の少なくとも一方を検出して、センサデータを支援装置200に供給する。複数のセンサ100は、栽培している植物の周囲環境内(例えば、栽培用のハウス又は培地等)又は栽培している植物(例えば、葉又は茎等)に設置されてよい。複数のセンサ100は、それぞれ、植物を栽培した環境条件を示す環境条件データ222及び栽培した植物の状態を示す植物データ224の少なくとも一方を検出してよい。複数のセンサ100は、障害の発生を自動で検出して、検出した障害を示す障害データ226を支援装置に供給してもよい。
【0022】
ここで、環境条件は、栽培した植物の周囲環境の温度、湿度、水分量、日射量、培地温度、培地の電気伝導度(EC)、培地の水素イオン指数(pH)、2酸化炭素濃度、栽培に用いた薬剤の種類、及び薬剤の量の少なくとも1つを含んでよい。また、植物データ224は、栽培した植物の樹液流、葉面温度、茎径の少なくとも1つを含んでよい。なお、環境条件及び植物データ224は、栽培条件に含まれ、以下、栽培条件は、環境条件及び植物データ224の少なくとも一方を示す。また、植物の栽培における障害は、尻腐果、裂果等の生理障害、病気による障害、及び害虫による障害の少なくとも1つを含んでよい。障害データ226は、障害の種類、頻度、及び範囲の少なくとも1つを含んでよい。
【0023】
複数の端末110は、支援装置200に有線又は無線で接続され、栽培を行う栽培者等が有するPC(パーソナルコンピュータ)、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ワークステーション、サーバコンピュータ、又は汎用コンピュータ等のコンピュータであってよく、複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムであってもよい。端末110は、栽培者から植物の栽培の栽培条件及び障害の発生状況の少なくとも一方についての入力を受けて、支援装置200に当該入力されたデータを送信してよい。端末110は、栽培者から障害データ226の入力を受けてよい。端末110は、栽培者から栽培において設定した栽培条件を示すデータを受けてよい。
【0024】
支援装置200は、表示装置300に接続される。支援装置200は、試験栽培等により得られた栽培条件及び障害の発生状況を示すデータを用いて学習して、モデルを生成する。さらに支援装置200は、当該モデルを用いて植物の種類毎に適切な栽培条件を推定して表示装置300に出力する。
【0025】
支援装置200は、PC(パーソナルコンピュータ)、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ワークステーション、サーバコンピュータ、又は汎用コンピュータ等のコンピュータであってよく、複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムであってもよい。このようなコンピュータシステムもまた広義のコンピュータである。また、支援装置200は、コンピュータ内で1又は複数の実行可能な仮想コンピュータ環境によって実装されてもよい。これに代えて、支援装置200は、栽培支援用に設計された専用コンピュータであってもよく、専用回路によって実現された専用ハードウェアであってもよい。コンピュータを用いる場合、支援装置200は、コンピュータによりプログラムを実行することによって実現される。
【0026】
支援装置200は、取得部210と、記憶部220と、学習部230と、推定部240と、出力部250とを備える。取得部210は、複数のセンサ100及び端末110に接続され、学習のためのデータを取得する。取得部210は、環境条件取得部212と、植物データ取得部214と、障害取得部216とを有する。なお、環境条件取得部212及び植物データ取得部214は、本願の栽培条件取得部の一例である。
【0027】
環境条件取得部212は、記憶部220に接続され、植物を栽培した環境条件を示す環境条件データ222を取得し、記憶部220に供給する。環境条件取得部212は、環境条件データ222を複数のセンサ100及び端末110から取得してよい。環境条件取得部212は、支援装置200のユーザから入力された環境条件データ222を取得してもよい。
【0028】
植物データ取得部214は、記憶部220に接続され、栽培した植物の状態を示す植物データ224を取得し、記憶部220に供給する。植物データ取得部214は、植物データ224を複数のセンサ100及び端末110から取得してよい。植物データ取得部214は、支援装置200のユーザから入力された植物データ224を取得してもよい。
【0029】
障害取得部216は、記憶部220に接続され、植物の栽培における障害の発生状況を示す障害データ226を取得し、記憶部220に供給する。障害取得部216は、障害データ226を複数のセンサ100及び端末110から取得してよい。障害取得部216は、は、支援装置200のユーザから入力された障害データ226を取得してもよい。
【0030】
記憶部220は、学習部230に接続され、取得部210が取得した環境条件データ222、植物データ224、及び障害データ226を格納する。そして、記憶部220は、環境条件データ222、植物データ224、及び障害データ226を、学習のためのデータとして学習部230に供給する。
【0031】
学習部230は、推定部240に接続され、記憶部220から供給された学習のためのデータを用いて、栽培条件及び障害の一方から他方を予測するモデルを生成及び更新する。学習部230は、前処理部232と、抽出部234と、モデル生成部236と、モデル更新部239とを有する。
【0032】
前処理部232は、抽出部234に接続され、記憶部220から供給される栽培条件及び障害の発生状況の少なくとも1つのデータに前処理を行い、前処理したデータを抽出部234に供給する。前処理部232は、データについて、学習のための前処理を行ってよい。
【0033】
抽出部234は、モデル生成部236及びモデル更新部239に接続され、栽培条件及び障害の発生状況の少なくとも1つのデータの特徴量を抽出する。抽出部234は、前処理部232において前処理されたデータの特徴量を抽出して、抽出した特徴量をモデル生成部236及びモデル更新部239に供給してよい。
【0034】
モデル生成部236は、栽培条件及び障害の発生状況を用いて、栽培条件及び障害の一方から他方を予測するモデル238を生成して、学習部230に格納する。モデル生成部236は、記憶部220に格納されたデータ、前処理されたデータ、及び抽出された特徴量の少なくとも1つを用いてモデル238を生成してよい。
【0035】
モデル更新部239は、栽培条件及び障害の発生状況を用いて、モデル238を更新する。モデル更新部239は、憶部220に格納されたデータ、前処理されたデータ、及び抽出された特徴量の少なくとも1つを用いてモデルを更新してよい。モデル更新部239は、モデル生成部236がモデル238を生成した後に取得部210が取得したデータを用いて、当該モデル238を更新してよい。モデル更新部239は、モデル238で推定した栽培条件により実行された植物栽培のデータを用いて、当該モデル238を更新してよい。
【0036】
推定部240は、出力部250及び表示装置300に接続され、学習部230に格納されたモデル238を用いて、植物の栽培における障害の発生を抑える栽培条件を推定して、出力部250に供給する。推定部240は、モデル238を用いて、最も障害の発生を抑えることができる栽培条件の組み合わせを推定してよい。また、推定部240は、表示装置300又は支援装置200のユーザからの推定条件の入力に応じて、栽培条件を推定してよい。推定部240は、栽培条件の複数の組み合わせを推定してよい。
【0037】
出力部250は、表示装置300に接続され、推定部240が推定した栽培条件を示すデータを表示装置300に出力する。
【0038】
表示装置300は、コンピュータ、又はタッチパネルディスプレイ等のディスプレイであってよい。表示装置300は、出力部250から受信したデータに応じて栽培条件を表示画面に表示してよい。表示装置300は、ユーザから推定条件の入力を受けて、当該推定条件を示すデータを支援装置200の推定部240に送信してよい。なお、表示装置300は、支援装置200の一部であってもよい。
【0039】
図2は、栽培支援システム10の動作の一例を示すフローである。S11において、取得部210は、植物の栽培における栽培条件及び障害の発生状況を取得する。環境条件取得部212は、複数のセンサ100及び端末110からリアルタイムで又は定期的に環境条件データ222を取得してよい。環境条件取得部212は、取得した環境条件データ222を、植物の種類及び取得日時の少なくとも1つに対応付けて記憶部220に格納してよい。植物データ取得部214は、複数のセンサ100及び端末110からリアルタイムで又は定期的に植物データ224を取得してよい。植物データ取得部214は、取得した植物データ224を、植物の種類及び取得日時の少なくとも1つに対応付けて記憶部220に格納してよい。障害取得部216は、栽培者が目視等で植物をラベル付けしたデータを端末110を介して取得してよい。
【0040】
さらに障害取得部216は、センサ100によって画像診断等で検出された障害の発生状況を取得してよい。障害取得部216は、画像から障害の発生状況を出力するモデルを、予め栽培者等がラベル付けした学習データを用いて学習することにより生成してよい。障害取得部216は、当該障害検出のためのモデルを用いて画像診断を行ってよい。障害取得部216は、取得した障害データ226を記憶部220に格納する。
【0041】
S12において、前処理部232は、環境条件データ222、植物データ224、及び障害データ226に前処理を行う。前処理部232は、栽培条件のデータと障害の発生状況のデータを時間軸で対応付けること、栽培条件及び障害の発生状況の少なくとも1つのデータを補完すること、栽培条件及び障害の発生状況の少なくとも1つのデータの外れ値を処理すること、及び栽培条件及び障害の発生状況の少なくとも1つのデータの丸め処理を行うことの少なくとも1つを含む前処理を行ってよい。
【0042】
前処理部232は、環境条件データ222、植物データ224、及び障害データ226をデータ取得時間に応じて対応付けてよい。前処理部232は、一例として、データ取得時間に応じて、同じ取得日毎に、又は異なる取得日もしくは同じ取得日の同じ時間間隔毎に、環境条件データ222、植物データ224、及び障害データ226を対応付けてよい。
【0043】
前処理部232は、データが存在しない期間について、線形補間又はスプライン補完等の補完アルゴリズムを用いてデータを補完してよい。前処理部232は、データのうち、データの平均値との差が、ユーザにより予め定められた閾値を超える場合に、当該データを外れ値として削除又は時間軸で前後のデータと同じ値に変更してよい。前処理部232は、データの小数点以下切り捨て等により丸め処理を行ってよい。前処理部232は、データに対して、クラスタリングのための離散化を行ってよい。
【0044】
S13において、抽出部234は、環境条件データ222、植物データ224、及び障害データ226の特徴量を抽出する。抽出部234は、環境条件データ222、植物データ224、及び障害データ226の少なくとも1つのデータについて、積算値、微分値、及び日中成分と夜間成分を分離したデータの少なくとも1つを特徴量として抽出してよい。抽出部234は、予め定められた期間毎のデータの積算値を特徴量として算出してよい。抽出部234は、一例として、3時間毎に、障害の発生数、温度、又は湿度等の積算値を特徴量として抽出してよい。このように、積算値を算出することで、遅れてくる影響を知ることができる。抽出部234は、複数の取得時間におけるデータの微分値を算出して、微分値を特徴量として抽出してよい。抽出部234は、時間軸で推移するデータを、日中成分と夜間成分の合成波とみなして、日中成分と夜間成分との一方を補完(例えばスプライン補完)又は周波数分解手法(例えばフーリエ変換等)により分離してよい。そして、抽出部234は、分離した日中成分と夜間成分の一方とセンサデータの間の差分を、日中成分と夜間成分の他方として分離してよい。
【0045】
S14において、モデル生成部236は、前処理されたデータ及び特徴量を用いて機械学習を行うことによってモデルを生成する。モデル生成部236は、栽培条件及び障害の発生状況の少なくとも1つのデータをクラスタリングしてよい。モデル生成部236は、時系列及び特徴量等の類似度の少なくとも1つに基づき、データをクラスタリングしてよい。モデル生成部236は、一例として、異なる取得日の同じ時間帯におけるデータ同士を同じクラスタにしてよい。また、モデル生成部236は、ベクトル化したデータの類似度が閾値より高い(例えば、距離が閾値より小さい)データ同士を同じクラスタにしてよい。モデル生成部236は、一例として、抽出した特徴量同士の差が閾値以下である対応するデータ同士を同じクラスタにしてよい。
【0046】
モデル生成部236は、ベイジアンネットワークモデル構造のモデル238を生成してよい。モデル生成部236は、クラスタリング後に、栽培条件及び障害の発生状況の少なくとも1つのデータのノードを有するベイジアンネットワークモデル構造のモデルを生成してよい。モデル生成部236は、生成したモデル238を学習部230に格納する。また、モデル生成部236は、ベイジアンネットワークモデル構造以外の機械学習モデルを生成してもよい。
【0047】
S14において、学習部230に既にモデル238が格納されている場合には、モデル更新部239は、前処理されたデータ及び特徴量を用いてモデル238を更新する。モデル更新部239は、モデル生成部236と同様に機械学習を行い、ベイジアンネットワークモデル構造のモデルを更新してよい。
【0048】
S15において、推定部240は、モデル238を用いて、障害の発生を抑える栽培条件を推定する。推定部240は、最も障害の発生を抑えることができる栽培条件の組み合わせを推定してよく、又は閾値以下にまで障害の発生を抑えることができる栽培条件の複数の組み合わせを推定してよい。推定部240は、ユーザから少なくとも1つの栽培条件が入力されると、当該入力された栽培条件を含む栽培条件の組み合わせを推定してよい。推定部240は、ユーザから少なくとも1つの栽培条件の組み合わせが入力されると、モデル238を用いて、当該栽培条件の組み合わせが障害の発生を抑える程度を推定してよい。推定部240は、推定した結果を出力部250に供給する。
【0049】
S16において、出力部250は、表示装置300に推定結果を示すデータを出力して、表示装置300に推定結果を表示させてよい。栽培者が表示された栽培条件に応じて栽培を行い、栽培結果が良好(図2においてY)である場合は、フローは終了する。また、栽培者が表示された栽培条件に応じて栽培を行い、栽培結果が不良(図2においてN)である場合は、フローはS11に戻り、当該不良であった栽培結果と栽培条件を取得部210が取得して、モデル更新部239は取得したデータで学習を再開する。また、栽培者が表示された栽培条件での栽培を実行しないと決定した場合(図2においてN)には、栽培結果を不良として(例えば障害数が多数であるとして)、当該栽培条件を取得部210に取得させる。これにより、更新されたモデル238は、異なる栽培条件を出力することができる。
【0050】
以上のような本実施形態の栽培支援システム10は、新品種の植物等に適した栽培条件を、最小限の試験栽培で推定することができ、新品種の開発期間短縮に資する。植物の生理障害は、環境のバランスが崩れると発生することから、生理障害が発生しない環境条件を解明できれば、薬剤を使用せずに、生理障害の発生を抑制できる。また、生理障害が発生してから薬剤を散布するのではなく、生理障害が発生しない環境条件を保つことで、栽培ロスを削減できる。従って、本実施形態の栽培支援システム10は、特に薬剤を用いずに生理障害を抑制する栽培条件を推定することに好適である。
【0051】
図3は、本実施形態の栽培支援システム10のモデル生成部236におけるクラスタリング後のデータを示す表である。表において、環境条件の「温度_昼」は栽培環境の日中温度を、「温度_夜」は栽培環境の夜間温度を、「湿度_昼」は栽培環境の日中湿度を示す。表において、植物データ224の「樹液流_昼」は栽培した植物の日中の樹液流を、「樹液流_夜」は栽培した植物の夜間の樹液流を、「葉面温度_昼」は栽培した植物の日中の葉面温度を示す。以下同様である。
【0052】
図3における障害発生度合いは、障害データ226であり、前処理部232において障害の発生数を正規化されたものであってよい。表に示すように、環境条件データ222、植物データ224、及び障害データ226は、日付及び夜間/日中に応じて対応付けられ、1からN(N>1)までのクラスタに属する。図3において日付2021/01/01と2021/01/02のデータはクラスタ3に属し、日付2021/01/03と2021/01/04のデータはクラスタ1に属する。
【0053】
図4は、抽出部234において処理される温度データを示す。図4のグラフにおいて、縦軸は前処理部232において正規化された温度を示し、横軸は、時間を示す。本実施形態における環境条件取得部212は、センサ100から温度データを取得してよい。温度データは、図4のように時間軸で変化し、波のような形状となる。抽出部234は、当該温度データの波を、夜間成分と日中成分との合成波として処理する。抽出部234は、複数日間における夜間の予め定められた時間帯(例えば23時~2時)の温度データを用いて、当該温度データの間(すなわち、2時~23時)を補完(例えばスプライン補完等)して、図4に示すような夜間成分を分離してよい。
【0054】
また、抽出部234は、時間軸における温度データの波をフーリエ変換等により周波数分解して、予め定められた周波数帯(例えば、夜間成分は低周波数帯で日中成分は高周波数帯等)のデータを逆フーリエ変換等により時間軸のデータに変換してよい。抽出部234は、算出された日中成分と夜間成分との一方のデータと温度データとの差分を日中成分と夜間成分との他方のデータとして算出してよい。なお、抽出部234は、環境条件データ222、植物データ224、及び障害データ226(例えば、日射量又は樹液量等のデータ)について同様に処理することができる。
【0055】
図5は、本実施形態の栽培支援システム10のモデル生成部236が生成するベイジアンネットワークモデル構造のモデルの一例を示す。モデル生成部236は、環境条件のノードの層、植物データ224のノードの層、及び障害のノードの層を含む3以上のノードの層からなるモデルを生成してよい。環境条件より植物データ224の方が尻腐等の生理障害の発生に対して影響がより大きい。従って、モデル生成部236は、図5のように、1層目に複数の環境条件、2層目に複数のクラスタ、3層目に複数の植物データ224、4層目に障害をノードとしたモデルを生成することができる。図5のモデルにおいて、太線の矢印は細線の矢印よりもノード移行の確率が高いものであることを示す。
【0056】
図5においてモデル238は、最も尻腐れが生じにくい環境条件の範囲の組み合わせを1層目に示してよい。モデル238は、1層目の複数の環境条件のノードのそれぞれが各クラスタのノードに属する確率(割合)を矢印で示してよい。モデル238は、各クラスタのノードに属する複数の環境条件で生じる植物データ224の範囲の確率をクラスタのノードと植物データ224のノードの間の矢印で示してよい。モデル238は、植物データ224の各範囲から障害が生じる確率を植物データ224のノードと障害のノードとの間の矢印で示してよい。モデル238は、環境条件の範囲のノードと尻腐れのノードとの間の合計確率を、示された環境条件における尻腐れの発生確率として算出してよい。モデル238は、当該合計確率を、複数の環境条件の範囲のノードと尻腐れのノードとの間で、最も低いもしくは高い発生確率となるような矢印の組み合わせ、又は全ての矢印の組み合わせで確率を乗算して算出してよい。
【0057】
なお、環境条件の各範囲及び植物データ224の各範囲は、取得部210、前処理部232、又はモデル生成部236が、支援装置200に格納されたテーブルに予め規定された複数の範囲にデータを振り分けたものであってよい。例えば昼間の測定温度21℃は、20-22℃,22-24℃,24-26℃・・・等の複数の温度範囲のうちの20-22℃の範囲に振り分けられる。
【0058】
図5のようなモデル構成にすることで、モデル238の利用時には、ユーザは支援装置200に環境条件データ222を入力することで、当該入力された環境条件データ222が属する範囲の環境条件で尻腐れが発生する確率を推定することができる。従って、支援装置200は、環境条件データ222のみ取得・保存すれば、植物データ224を実際には計測せずに、障害の発生確率を推定することができる。栽培支援システム10は、表示装置300に図5のようなモデルを表示させてもよい。
【0059】
図6は、本実施形態の栽培支援システム10の表示装置300に表示させる表示画面の一例を示す。図6の表示画面において、縦軸は環境条件を示し、横軸は障害の発生度合い(黒は障害の発生を抑制する度合い、白は障害の発生を促進する度合い)を示す。一例として、ユーザが支援装置200に図6の縦軸の環境条件の組み合わせを入力すると又は支援装置200の取得部210が測定値を取得すると自動で、支援装置200は、モデル238を用いて図6のように各環境条件の障害発生度合いを推定して、表示装置300に表示させてよい。他の例として、ユーザが障害の種類を入力すると、当該障害の抑制効果が高い順に環境条件及び植物データを表示してよい。
【0060】
図7は、本実施形態の栽培支援システム10の表示装置300に表示させる環境条件の表示画面の例を示す。図7において、温度のグラフは、縦軸が温度、横軸が時間を示し、設定値が栽培環境の設定温度を細線で示し、測定値がセンサ100で測定された実際の温度を太線で示し、18時-6時の夜間の推奨値(14-16℃)を灰色の範囲で示す。COのグラフは、縦軸がCO濃度、横軸が時間を示し、COdoseが栽培環境内への2酸化炭素の添加量を細線で示し、測定値がセンサ100で測定された栽培環境内の実際のCO濃度を太線で示し、18時-6時の夜間の推奨値(500-600ppm)を灰色の範囲で示す。湿度のグラフは、縦軸が湿度、横軸が時間を示し、Vent posが栽培環境の設定湿度を細線で示し、測定値がセンサ100で測定された栽培環境の実際の湿度を太線で示し、18時-6時の夜間の推奨値(60-70%)を灰色の範囲で示す。日射量のグラフは、縦軸が日射量、横軸が時間を示し、遮光カーテンが栽培環境の遮光の度合いを細線で示し、測定値がセンサ100で測定された栽培環境の実際の日射量を太線で示し、18時-6時の夜間の推奨値(0)を灰色で示す。
【0061】
ユーザが、特定の植物の栽培における尻腐れ発生予測の指示を支援装置200に入力すると、支援装置200は、モデル238を用いて、当該植物の尻腐れを抑制する環境条件(推奨値)を推定する。モデル238は、複数の温度範囲、複数の湿度範囲、複数の2酸化炭素濃度範囲、及び複数の日射量範囲のそれぞれにおいて、最も尻腐れの発生確率が低い範囲の組み合わせを出力してよい。さらに支援装置200は、当該植物の栽培の測定値を取得し、取得した測定値と推定した環境条件を比較して、これらの一致度に応じて尻腐れ発生予測を行ってよい。そして支援装置200は、図7に示すように、測定値と、推奨値と、当該植物の栽培における尻腐れ発生予測(図7においては一致度が閾値より低い場合に尻腐れが発生する可能性が高いとして「危険!」)とを表示装置300に表示させてよい。
【0062】
図8は、本実施形態の栽培支援システム10の表示装置300に表示させる植物データ224の表示画面の例を示す。図8の表示画面はタブで図7の表示画面と切り替え可能であってよく、図7の表示のための処理と図8の表示のための処理は同時に行われてよい。
【0063】
図8において、樹液流及び葉面温度の時間推移のグラフを示し、各グラフは、一日のセンサ100の測定値と推奨値の範囲を示す。樹液流のグラフは、縦軸が樹液流量、横軸が時間を示し、推定値がデータに基づく樹液流量を示し、18時-6時の夜間の推奨値(4-4.5ml/h)を灰色の範囲で示す。葉面温度のグラフは、縦軸が葉面温度、横軸が時間を示し、推定値がデータに基づく葉面温度を示し、18時-6時の夜間の推奨値(11-13℃)を灰色の範囲で示す。
【0064】
ユーザが、特定の植物の栽培における尻腐れ発生予測の指示を支援装置200に入力すると又は支援装置200の取得部210が測定値を取得すると自動で、支援装置200は、モデル238を用いて、当該植物の尻腐れを抑制する植物データ224(推奨値)を推定する。支援装置200は、モデル238を用いて、例えば、図7の環境条件の推奨値で最も尻腐れを抑制できる植物データ224を推奨値として推定してよい。支援装置200は、モデル238を用いて、環境条件の測定値から最も高い確率で生じる植物データを推定して、図8における推定値としてもよい。そして支援装置200は、図8に示すように、測定値と、推奨値と、当該植物の栽培における尻腐れ発生予測(図8においては一致度が閾値より低い場合に尻腐れが発生する可能性が高いとして「危険!」)とを表示装置300に表示させてよい。なお、図7及び図8における表示画面は、図5のようなモデル生成した際に同時に推定された各ノードの環境条件及び植物データを表示してよい。
【0065】
図9は、本実施形態に係る栽培支援システム10の他の例の構成を示す。他の例における栽培支援システム10は、図1の栽培支援システム10と同様の構成を備え、同様の動作を行うものであってよく、ただし、モデル生成部236を備えない。他の例の栽培支援システム10は、外部の装置で予め学習されたモデル238を格納してよい。他の例の栽培支援システム10の推定部240は、当該モデル238を用いて図1の支援装置200の推定部240と同様に推定処理を行ってよい。他の例の栽培支援システム10は、その他の構成及び動作については、図1の栽培支援システム10と同様であってよく、詳細な説明を省略する。
【0066】
なお、図1及び図9の栽培支援システム10は、センサ100及び端末110を備えていなくてもよく、支援装置200は、外部の記憶装置等から学習のためのデータを取得してよい。また、栽培支援システム10は、植物の栽培の環境条件を制御する制御装置を備えてよい。この場合、制御装置は、支援装置200が推定した栽培条件に従って制御を実行し、支援装置200は、当該実行された栽培のデータを取得し、さらに学習を行ってよい。
【0067】
また、本発明の様々な実施形態は、フローチャート及びブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階又は(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階及びセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、及び/又はコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタル及び/又はアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)及び/又はディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、及び他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0068】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャート又はブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0069】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、又はSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語又は同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコード又はオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0070】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサ又はプログラマブル回路に対し、ローカルに又はローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャート又はブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0071】
図10は、本発明の複数の態様が全体的又は部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作又は当該装置の1又は複数のセクションとして機能させることができ、又は当該操作又は当該1又は複数のセクションを実行させることができ、及び/又はコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセス又は当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャート及びブロック図のブロックのうちのいくつか又はすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0072】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、及びディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インタフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、及びICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230及びキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0073】
CPU2212は、ROM2230及びRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等又はそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0074】
通信インタフェース2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラム及びデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラム又はデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラム又はデータを提供する。ICカードドライブは、プログラム及びデータをICカードから読み取り、及び/又はプログラム及びデータをICカードに書き込む。
【0075】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、及び/又はコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0076】
プログラムが、DVD-ROM2201又はICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、又はROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置又は方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作又は処理を実現することによって構成されてよい。
【0077】
例えば、通信がコンピュータ2200及び外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、又はICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、又はネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0078】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイル又はデータベースの全部又は必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0079】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0080】
上で説明したプログラム又はソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上又はコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスク又はRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0081】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0082】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0083】
10 栽培支援システム
100 センサ
110 端末
200 支援装置
210 取得部
212 環境条件取得部
214 植物データ取得部
216 障害取得部
220 記憶部
222 環境条件データ
224 植物データ
226 障害データ
230 学習部
232 前処理部
234 抽出部
236 モデル生成部
238 モデル
239 モデル更新部
240 推定部
250 出力部
300 表示装置
2200 コンピュータ
2201 DVD-ROM
2210 ホストコントローラ
2212 CPU
2214 RAM
2216 グラフィックコントローラ
2218 ディスプレイデバイス
2220 入/出力コントローラ
2222 通信インタフェース
2224 ハードディスクドライブ
2226 DVD-ROMドライブ
2230 ROM
2240 入/出力チップ
2242 キーボード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10