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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240110BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240110BHJP
   G02B 30/29 20200101ALI20240110BHJP
   H04N 13/305 20180101ALI20240110BHJP
   H04N 13/346 20180101ALI20240110BHJP
   H04N 13/363 20180101ALI20240110BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
G02B30/29
H04N13/305
H04N13/346
H04N13/363
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021520709
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2020018798
(87)【国際公開番号】W WO2020235375
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2019094598
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】笠原 毅
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/142610(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/118672(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108919495(CN,A)
【文献】国際公開第2017/094248(WO,A1)
【文献】特開2018-146882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
G02B 30/00 - 30/60
H04N 13/30 - 13/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックライトと、液晶パネルと、からなり、複数の画素が交互に並んで光を出射する平面表示パネル、及び、縦方向の所定方向に延びている略半円筒形状の複数のシリンドリカルレンズを横に互いに平行に並べてなるレンチキュラレンズ、からなる3Dディスプレイと、
この3Dディスプレイから出射される光を制御する制御部と、を有し、
前記3Dディスプレイから出射された光を表示部に投射し、視認者に虚像を認識させる表示装置であって、
側面視の状態で、前記液晶パネルに対して前記レンチキュラレンズは平行に配置され、前記液晶パネル及び前記レンチキュラレンズは、前記バックライトから出射される光の光軸に対して前記シリンドリカルレンズの延び方向に傾斜して配置され、前記レンチキュラレンズの出射側面の形状が、前記レンチキュラレンズの前記横である所定の横軸を含み前記光軸に沿った断面で円弧形状であり、且つ前記レンチキュラレンズの前記横軸を含み前記レンチキュラレンズに対して垂直な断面で楕円の短軸半径が最も突出した楕円形状であることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記3Dディスプレイは、ライトフィールドディスプレイであることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示部に光を投射し情報を提供することができる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の車両には、ウィンドシールド等の表示部に光を投射することにより、運転者(視認者)に必要な情報を提供する表示装置(ヘッドアップディスプレイ装置)が搭載されている。このような、表示装置の従来技術として特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に示される表示装置は、光を出射する投射器と、この投射器から出射された光が通過するスクリーンと、これらの投射器及びスクリーンを収納しているケースと、を備えている。
【0004】
投射器は、DMD(Digital Mirror Device)等の光学素子を備えるプロジェクタである。スクリーンは、投射器から出射される光の結像位置に配置されている、透過型のスクリーンである。スクリーンの光が通過する面は、投射器の光を出射する面に対して、傾いて設けられている。即ち、スクリーンは、投射器から出射される光の光軸に対して、傾いて設けられている。
【0005】
スクリーンの光が通過する面が、投射器の光を出射する面に対して傾いて設けられていることにより、奥行きのある虚像を運転者に認識させることができる。
【0006】
特許文献1の表示装置は、投射器、スクリーン、折り返しミラー、凹面鏡、カバーガラス、外装、制御部とからなる。投射器は、映像をスクリーンに投射し、このスクリーンで反射された映像は、凹面鏡で拡大された後、ウィンドシールドへ出射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-212338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
表示装置は、視認者に情報等を認識させるための装置であるから、より明確に視認者に虚像を認識させることが望まれる。
【0009】
本発明は、視認者に虚像をより明確に認識させることができる表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明では、バックライトと、液晶パネルと、からなり、複数の画素が交互に並んで光を出射する平面表示パネル、及び、縦方向の所定方向に延びている略半円筒形状の複数のシリンドリカルレンズを横に互いに平行に並べてなるレンチキュラレンズ、からなる3Dディスプレイと、
この3Dディスプレイから出射される光を制御する制御部と、を有し、
前記3Dディスプレイから出射された光を表示部に投射し、視認者に虚像を認識させる表示装置であって、
側面視の状態で、前記液晶パネルに対して前記レンチキュラレンズは平行に配置され、前記液晶パネル及び前記レンチキュラレンズは、前記バックライトから出射される光の光軸に対して前記シリンドリカルレンズの延び方向に傾斜して配置され、前記レンチキュラレンズの出射側面の形状が、前記レンチキュラレンズの前記横である所定の横軸を含み前記光軸に沿った断面で円弧形状であり、且つ前記レンチキュラレンズの前記横軸を含み前記レンチキュラレンズに対して垂直な断面で楕円の短軸半径が最も突出した楕円形状であることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明では、好ましくは、3Dディスプレイは、ライトフィールドディスプレイである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、レンチキュラレンズは、平面表示パネルから出射される光の光軸に対してシリンドリカルレンズの延び方向に傾斜して配置されている。表示装置の外部から表示部内に入射した外光は、レンチキュラレンズによって反射される。レンチキュラレンズが光軸に対して傾斜して配置されていることにより、外光は、平面表示パネルから出射される光とは異なる方向に向かって反射される。これにより、外光が平面表示パネルから出射される光に干渉することを抑制でき、視認者に虚像をより明確に認識させることができる。
【0013】
さらに、レンチキュラレンズの出射側面の形状が、レンチキュラレンズの平面視で楕円形状であり、且つ光軸に沿った断面で円弧形状である。ここで、一般的なレンチキュラレンズの光の出射側の断面形状は、平面視で円弧形状である。このため、レンチキュラレンズを光軸に対して傾けて配置することにより、光軸に沿った断面は、円弧の半径よりも大きい長軸半径の楕円形状となる。この点、本発明では、レンチキュラレンズが傾けて配置されることを前提に、レンチキュラレンズの形状を光軸に沿った断面が円弧形状となるよう、平面視において楕円形状とした。レンチキュラレンズの出射側面の形状が、光軸に沿った断面で円弧形状であるので、レンズ収差が小さくなり、立体像の鮮明度を向上させることができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、3Dディスプレイは、ライトフィールドディスプレイであるので、ウィンドシールド(表示部)の直下に配置することができ、従来技術のような斜めに傾けて配置されたスクリーンが不要となり、光軸に沿った奥行を短くすることが可能となり、表示装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例による表示装置の模式図である。
図2】実施例に係る3Dディスプレイの斜視図である。
図3図2に示されたレンチキュラレンズの平面図である。
図4図2に示されたレンチキュラレンズの光軸に沿った断面形状を示す図である。
図5】実施例の3Dディスプレイの側面図と、比較例の3Dディスプレイの側面図である。
図6】比較例によるレンチキュラレンズについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。尚、説明中、左右とは、車内の乗員(視認者)を基準として左右をいい、前後とは車両の進行方向を基準として前後をいう。また、図中Leは左、Riは右、Frは前、Rrは後、Upは上、Dnは下、を示している。
【実施例
【0017】
本発明の基本構成について説明する。図1に示すように、表示装置の一例として、ヘッドアップディスプレイが示されている。表示装置10は、例えば、車両Veに搭載され、車体の前部にあるウィンドシールドWS(表示部WS)に光を投射する。ウィンドシールドWSに光が投射されることにより、運転者Mn(視認者Mn)は、ウィンドシールドWSの前方に虚像Vが投影されているように認識する。
【0018】
表示装置10により投影される虚像Vは、上部が車両Veの前方側に傾いている。この上部が傾いた虚像Vに車速やナビゲーション情報等の情報を含ませることにより、運転者Mnは走行時に必要な情報を得ることができる。
【0019】
表示装置10は、ケース20と、このケース20に収納され光を出射する3Dディスプレイ30(ライトフィールドディスプレイ30)と、この3Dディスプレイ30から出射された光を反射する平面鏡40と、この平面鏡40が反射した光をウィンドシールドWSに向かって反射する凹面鏡50と、この凹面鏡50の上方に配置されたカバーガラス60と、3Dディスプレイ30が出射する光を制御する制御部12と、を有している。
【0020】
ケース20が車両Veに取り付けられることで、3Dディスプレイ30がウィンドシールドWSの直下に配置されている。ケース20は、遮光性を有する合成樹脂によって形成されている。このため、ケース20は、外部から3Dディスプレイ30に入射した光が、車室内に反射することを防ぐ遮光部である、ということができる。更には、ケース20の内壁20aを遮光部ということもできる。
【0021】
図1及び図2に示すように、3Dディスプレイ30は、複数の画素31が交互に並んで光を出射する平面表示パネル32と、所定方向に延びている半円筒形状のシリンドリカルレンズ33が複数並んだレンチキュラレンズ34を、を有している。
【0022】
平面表示パネル32は、例えばバックライト32aと、液晶パネル32bとからなることで、シリンドリカルレンズ33に向かって光を出射する画素31を複数有している。尚、平面表示パネル32が出射する光は、各画素31が出射する光の束である。
【0023】
各画素31は、赤・緑・青の副画素により構成されている。副画素が発光することにより、各シリンドリカルレンズ33に向かって光が出射される。尚、各副画素の発光を組み合わせることで、画素31から出射される光の明度、色相、彩度を異ならせることができる。
【0024】
レンチキュラレンズ34は、例えば透明なポリカーボネートの平板状のベース板部33aと、このベース板部33aに所定方向に延びて複数配列され画素31から出射された光が通過するシリンドリカルレンズ33と、を有している。シリンドリカルレンズ33が延びている所定方向は、視認者Mnの視点の縦方向である。このように縦方向に延びている複数のシリンドリカルレンズ33は、それぞれ横に周期的に並んで配置されている。
【0025】
また、レンチキュラレンズ34は、ベース板部33a上に、横断面に関して集光する縦長のシリンドリカルレンズ33が横(左右)に並ぶように切削加工したものである。これにより、シリンドリカルレンズ33はいわゆるかまぼこ形状(D字状)であり、縦長のかまぼこ形状のシリンドリカルレンズ33が横に並んで配置されたものがレンチキュラレンズ34となる。
【0026】
このような形状とすることで、レンチキュラレンズ34は、各画素31から出射された光を所定方向に屈折させる。レンチキュラレンズ34は、ケース20の外部からレンチキュラレンズ34に入射した外光を遮光部としての内壁20aに向かって反射するよう、内壁20a側に傾けられている。レンチキュラレンズ34は、例えば、フューズドシリカ、光学ガラス、プラスチック等からなる。
【0027】
ベース板部33aは、平面表示パネル32の光を出射する面に対して平行に設けられている。シリンドリカルレンズ33の出射側の断面形状は、例えば、凸形状、球面形状及び非球面形状等からなる。各シリンドリカルレンズ33は、各画素31に対応して設けられ、各画素31から出射された光を屈折させる。
【0028】
ここで、3Dディスプレイ30が出射する光とは、各画素31(平面表示パネル32)から出射された光であってレンチキュラレンズ34を通過した光のことをいう。つまり、各画素31から出射された光がレンチキュラレンズ34を通過することによって、3Dディスプレイ30から光が出射される、ということができる。
【0029】
また、レンチキュラレンズ34の所定の横軸X(水平方向に延びる軸)を含み、且つ3Dディスプレイ30から出射された光の光軸Fを含む断面はS1である。レンチキュラレンズ34の所定の横軸X(水平方向に延びる軸)を含み、且つレンチキュラレンズ34に対して垂直な断面はS2である。光軸Fを含む断面S1に対して垂直な断面S2は傾斜角αとなるように傾斜している。つまり、レンチキュラレンズ34は、平面表示パネル32から出射される光の光軸Fに対してシリンドリカルレンズ33の延び方向に傾斜角αとなるように傾斜して配置されている。
【0030】
また、光軸Fに対し、平面表示パネル32及びレンチキュラレンズ34は同じ所定の角度(傾斜角)αで傾斜している。レンチキュラレンズ34は、平面表示パネル32を光軸Fに沿って平行移動した位置にあり、且つ平面表示パネル32から出射された光が全て通過する大きさに設定されている。平面表示パネル32及びレンチキュラレンズ34は正面視で矩形状であり、光軸Fに沿って、レンチキュラレンズ34の矩形状の四隅は、平面表示パネル32の矩形状の四隅に一致している。
【0031】
レンチキュラレンズ34を光軸Fに対して傾斜角αだけ傾斜して配置することにより、外光Gが入射した場合に、3Dディスプレイ30の表面で反射した光が視点に戻らないようにすることができる。なお、便宜上、模式的に示した図面での傾斜角αは大きくしたが、実際の傾斜角αは、外光Gが入射した場合に3Dディスプレイ30の表面で反射した光が視点に戻らないようにする程度の小さな角度である。
【0032】
平面鏡40は、平面部分を有するように成形した樹脂、例えばポリカーボネートに、金属、例えばアルミを蒸着したミラーであり、光を単純反射するものである。
【0033】
凹面鏡50は、凹面を有するように成形した樹脂、例えばポリカーボネートに、金属、例えばアルミを蒸着したミラーであり、平行光を集光するように反射するものである。
【0034】
カバーガラス60は、透明な樹脂、例えばポリカーボネートのフィルムである。ケース20は,前述の全ての部分を収容する筐体である。
【0035】
制御部12は、マイクロプロセッサとそれを動作させる為の各種電子部品、基板、ケースからなり、外部から車両情報やユーザーの入力を処理し、それに基づいて映像を適切に表示するように3Dディスプレイ30を制御する。具体的には、制御部12は、レンチキュラレンズ34を通過した光がウィンドシールドWSに投射されるように、3Dディスプレイ30が出射する光の方向を制御する。つまり、制御部12は、レンチキュラレンズ34を通過した光が所定方向に向かうよう各画素31が出射する光を制御する。
【0036】
運転者Mnは、3Dディスプレイ30から出射された光がウィンドシールドWSに投射されることにより、角度がθだけ前方に傾いた虚像Vが投影されているよう認識する。このような虚像Vは、視点ごとに異なる映像が投影される。つまり、奥行きのある虚像Vを運転者Mnに視認させるためには、3Dディスプレイ30が、視点ごとに適切な視差が付いた映像を投影する必要がある。
【0037】
制御部12は、3Dディスプレイ30がレンチキュラレンズ34の一端から他端に亘って連続して結像位置の異なる光を出射し、上部が前方に傾いた虚像Vが視認されるよう、各画素31が出射する光を制御する。更に、制御部12は、各画素31から出射される光を制御して、レンチキュラレンズ34から出射される光の結像位置を自由に変化させることもできる。これにより、虚像Vの傾き角度を自由に変えることができる。制御部12が各画素31から出射される光を制御することで、運転者Mnの視認する任意の虚像Vが投影される。
【0038】
次に実施例に示すレンチキュラレンズ34の断面形状について説明する。
【0039】
図3に示すように、レンチキュラレンズ34のうち、光が出射する面である出射側面は、当該レンチキュラレンズ34の平面視において楕円形状を呈する。レンチキュラレンズ34の最も突出した位置は、楕円の短軸半径の位置である。
【0040】
図4に示すように、レンチキュラレンズ34の断面形状は、当該レンチキュラレンズ34の光軸Fを含む断面S1での断面形状である。レンチキュラレンズ34の出射側の断面形状は、光軸Fに沿った断面S1で円弧形状である。
【0041】
次に実施例に示す3Dディスプレイ30の側面視の状態と、比較例に示す3Dディスプレイ100の側面視の状態とについて説明する。
【0042】
図5(a)は実施例の3Dディスプレイ30の側面図であり、バックライト32aから出射されている光の光軸Fに対して、液晶パネル32b及びレンチキュラレンズ34が傾斜して配置されている。液晶パネル32bに対してレンチキュラレンズ34は平行に配置されている。液晶パネル32bの中心を通る垂直線Tは、レンチキュラレンズ34の中心を通っていない。液晶パネル32bの上端部を通る光軸Fと平行な線F1は、レンチキュラレンズ34の上端部を通過している。液晶パネル32bの下端部を通る光軸Fと平行な線F2は、レンチキュラレンズ34の下端部を通過している。このため、液晶パネル32bを通過した光は全てレンチキュラレンズ34を通過する。
【0043】
図5(b)は比較例の3Dディスプレイ100の側面図であり、バックライト101から出射されている光の光軸Fに対して、液晶パネル102及びレンチキュラレンズ103が傾斜して配置されている。液晶パネル102に対してレンチキュラレンズ103は平行に配置されている。バックライト101と液晶パネル102とから平面表示パネル104が構成されている。液晶パネル102の中心を通る垂直線Tは、レンチキュラレンズ103の中心を通っている。液晶パネル102の上端部を通る光軸Fと平行な線F1は、レンチキュラレンズ103の上端部を通過していない。液晶パネル102の下端部を通る光軸Fと平行な線F2は、レンチキュラレンズ103の下端部を通過していない。このため、液晶パネル102を通過した光の一部がレンチキュラレンズ34を通過し、液晶パネル102の上部と、レンチキュラレンズ103の下部とが無駄になる。
【0044】
次に比較例のレンチキュラレンズ103の断面形状について説明する。
【0045】
図6(a)には、平面視における比較例のレンチキュラレンズ103が示されている。レンチキュラレンズ103の出射面側の形状は、平面視において円弧形状である。
【0046】
図6(b)に示すように、比較例のレンチキュラレンズ103の断面形状は、当該レンチキュラレンズ103の光軸Fを含む断面S1での断面形状である。レンチキュラレンズ103の出射面側の断面形状(シリンドリカルレンズ103bの断面形状)は、光軸Fに沿った断面S1では円弧の半径よりも大きい長軸半径の楕円形状となる。このため、比較例のレンチキュラレンズ103は、レンチキュラレンズの出射側面の形状が光軸に沿った断面で円弧形状であるので、レンズ収差が大きくなり、立体像の鮮明度が低下する。
【0047】
次に本発明の作用を説明する。
【0048】
図1に示すように、3Dディスプレイ30が生成する立体像Lは、平面鏡40によって凹面鏡50へ反射され、凹面鏡50によってカバーガラス60へ拡大・反射され、カバーガラス60を透過してウィンドシールドWSによって視認者Mnへ拡大・反射され、視認者Mnの視点において虚像Vとして観察される。
【0049】
図4に示すように、レンチキュラレンズ34の光軸Fに沿った断面S1では、光の出射側のレンチキュラレンズ34の断面形状が円弧形状であるので、レンズ収差が小さくなり、立体像の鮮明度が向上する。
【0050】
図2及び図5(a)に示すように、光軸に沿った平面表示パネル32(液晶パネル32b)の四隅とレンチキュラレンズ34の四隅とは一致する。このため、平面表示パネル32から出射された光は無駄になることなくレンチキュラレンズ34を通過する。すなわち、画素31の利用効率が向上する。さらに、レンチキュラレンズ34も光が通過しない無駄になる部分がない。結果、平面表示パネル32及びレンチキュラレンズ34が効率よく使用される。
【0051】
次に、本発明の効果を説明する。
【0052】
図1及び図2を参照する。レンチキュラレンズ34は、平面表示パネル32から出射される光の光軸Fに対してシリンドリカルレンズ33の延び方向に傾斜して配置されている。表示装置10の外部から表示部内に入射した外光Gは、レンチキュラレンズ34によって反射される。レンチキュラレンズ34が光軸Fに対して傾斜して配置されていることにより、外光Gは、平面表示パネル32から出射される光(光軸Fに沿っている光)とは異なる方向に向かって反射される。これにより、外光Gが平面表示パネル32から出射される光に干渉することを抑制でき、視認者に虚像Vをより明確に認識させることができる。
【0053】
図3図4及び図6を参照する。さらに、レンチキュラレンズ34の出射側面の形状が、レンチキュラレンズ34の平面視で楕円形状(図3)であり、且つ光軸Fに沿った断面で円弧形状(図4)である。ここで、一般的なレンチキュラレンズ103の光の出射側の断面形状は、平面視で円弧形状である(図6(a))。このため、レンチキュラレンズを光軸に対して傾けて配置することにより、光軸に沿った断面は、円弧の半径よりも大きい長軸半径の楕円形状となる(図6(b))。この点、本発明では、レンチキュラレンズ34が傾けて配置されることを前提に、レンチキュラレンズ34の形状を光軸Fに沿った断面が円弧形状となるよう、平面視において楕円形状とした。レンチキュラレンズ34の出射側面の形状が、光軸Fに沿った断面で円弧形状であるので、レンズ収差が小さくなり、立体像の鮮明度を向上させることができる。
【0054】
さらに、3Dディスプレイ30は、ライトフィールドディスプレイであるので、ウィンドシールドWSの直下に配置することができ、従来技術のような斜めに傾けて配置されたスクリーンが不要となり、光軸に沿った奥行を短くすることが可能となり、表示装置10の小型化を図ることができる。
【0055】
さらに、平面表示パネル32の発光画素の位置を制御することにより斜め面の映像を調整できる為、取り付けの公差が緩和され、製造コストを下げることができる。
【0056】
尚、本発明によるヘッドアップディスプレイの画像データ処理方法は、四輪車の他、二輪車又は三輪車に適用されても良い。更には、車両以外の乗り物や建機等にも適用が可能である。
【0057】
更に、実施例において、表示部はウィンドシールドとして説明されている。しかしながら、本発明による表示装置は、いわゆるコンバイナからなる表示部に光を投射することもできる。
【0058】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の表示装置は、車両に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0060】
10…表示装置(ヘッドアップディスプレイ)、12…制御部、30…3Dディスプレイ(ライトフィールドディスプレイ)、32…平面表示パネル、33…シリンドリカルレンズ、34…レンチキュラレンズ、Mn…視認者(運転者)、Ve…車両、V…虚像(像)、WS…表示部(ウィンドシールド)、F…光軸、α…傾斜角、S1…光軸に沿った断面、S2…平面視での断面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6