(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】可動範囲表示システムおよび可動範囲表示システムを備えるクレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 23/90 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B66C23/90 M
(21)【出願番号】P 2021526919
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2020024142
(87)【国際公開番号】W WO2020256106
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2019114949
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 洋幸
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-151979(JP,A)
【文献】特開平07-089697(JP,A)
【文献】特開2018-095374(JP,A)
【文献】特開2018-095449(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0167149(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06;19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場の三次元情報を取得する第1取得部と、
走行体にブームが設けられたクレーンの作動条件と、前記クレーンにより搬送される荷物の重量とを取得する第2取得部と、
前記作業現場における前記走行体の配置位置と配置方向とを取得する第3取得部と、
前記作業現場の三次元情報と、前記作動条件と、前記荷物の重量とに基づいて、前記走行体の配置位置と配置方向における前記クレーンの可動範囲を算出する算出部と、
前記作業現場を示す画像と、前記クレーンを示す画像と、前記可動範囲とを重畳表示する表示部と、
を備え
、
前記算出部は、前記ブームに前記荷物を吊り下げた状態で前記ブームの先端が前記作業現場内で到達可能な第1範囲から、前記ブームが前記作業現場内の地物と干渉する可能性がある第2範囲を除外することで前記クレーンの前記可動範囲を算出する
可動範囲表示システム。
【請求項2】
前記算出部は、前記クレーンのGNSS受信機の信号に基づく前記走行体の現在の配置位置と配置方向における前記可動範囲を算出する、
請求項1に記載の可動範囲表示システム。
【請求項3】
前記算出部は、入力された任意の配置位置と任意の配置方向における前記可動範囲を算出する、
請求項1に記載の可動範囲表示システム。
【請求項4】
前記算出部は、前記クレーンのGNSS受信機の信号に基づく前記走行体の現在の配置位置から前記任意の配置位置までの移動方向および移動距離と、前記信号に基づく前記走行体の現在の配置方向から前記任意の配置方向までの移動角度とを算出する、
請求項3に記載の可動範囲表示システム。
【請求項5】
前記第2取得部は、前記クレーンの現在の状態を前記作動条件として取得する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の可動範囲表示システム。
【請求項6】
前記可動範囲表示システムは、携帯端末に組み込まれ、
前記表示部は、前記作業現場を示す画像に前記携帯端末の位置を表示する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の可動範囲表示システム。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の可動範囲表示システムを備えるクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動範囲表示システムおよび可動範囲表示システムを備えるクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動式クレーンは、自走可能な下部走行体に上部旋回台が設けられ、この旋回台に伸縮するブームが起伏自在に設けられている。移動式クレーンは、作業現場において、荷物を吊り上げて目的地点まで搬送可能な位置まで移動して搬送作業を実施することができる。このような移動式クレーンは、ブーム長さ、ブームの起伏角度、下部走行体に対する上部旋回体の旋回位置によって搬送できる荷物の重量が異なる。つまり、移動式クレーンは、搬送する荷物の重量に応じてそれぞれ定格作業半径が定まる。そこで、搬送する荷重の重量に応じた定格作業半径を旋回位置毎に表示する移動式クレーンの可動範囲表示装置が知られている。例えば、特許文献1の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の移動式クレーンの可動範囲表示装置は、ブーム長検出手段、ブーム角検出手段、旋回位置検出手段、負荷検出手段に接続されている。移動式クレーンの可動範囲表示装置は、これらの検出手段が検出した情報を基に制御部で実荷重と旋回角毎の限界作業半径を演算し、算出した実荷重における旋回角度毎の限界作業半径を極座標上に表示する。さらに、移動式クレーンの可動範囲表示装置は、実作業半径値を上記極座標上の実旋回角対応位置に重畳して表示するように構成されている。上記構成による移動式クレーンの可動範囲表示装置は、搬送する荷物の重量に応じたブームの可動範囲およびブームの現在位置を図示するため、ブームの起伏伸縮、旋回などの操作を可動範囲内で容易に行うことができる。
【0004】
このように構成される移動式クレーンの可動範囲表示装置は、移動式クレーンが転倒することなく荷物を搬送することができる範囲を図示している。しかし、実際の作業現場では、移動式クレーンの可動範囲内に構造物(地物)等が存在している場合がある。つまり、移動式クレーンは、荷物の吊り上げ位置と吊り下げ位置が可動範囲内であっても、構造物等が存在する場合、構造物等との干渉によって搬送できない範囲が生じる。しかし、特許文献1に記載の移動式クレーンの可動範囲表示装置は、可動範囲表示装置を利用するユーザーは、可動範囲に周辺の構造物等の状況が反映されないため、現在の移動式クレーンの配置位置で構造物等に干渉することなく荷物を目的地点まで搬送できるか判断することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、作業現場内の地物等に干渉することなく荷物を目的地点まで搬送できるかをユーザーが判断可能な可動範囲表示システム可動範囲表示システムを備えるクレーンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、本発明は、作業現場の三次元情報を取得する第1取得部と、走行体にブームが設けられたクレーンの作動条件と、前記クレーンにより搬送される荷物の重量とを取得する第2取得部と、前記作業現場における前記走行体の配置位置と配置方向とを取得する第3取得部と、前記作業現場の三次元情報と、前記作動条件と、前記荷物の重量とに基づいて、前記走行体の配置位置と配置方向における前記クレーンの可動範囲を算出する算出部と、前記作業現場を示す画像と、前記移動式クレーンを示す画像と、前記可動範囲とを重畳表示する表示部とを備える可動範囲表示システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
本発明においては、作業現場内の地物等に干渉することなく荷物を目的地点まで搬送できるかをユーザーが判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】可動範囲表示システムの制御構成を示すブロック図。
【
図4】
図4は可動範囲の表示態様を示す。
図4Aは可動範囲の上面視画像を示し、
図4Bは可動範囲をブームの軸方向に沿った断面視画像を示す。
【
図5】
図5は地物を考慮した可動範囲を算出するための条件を示す。
図5Aはクレーンの上面視画像の干渉範囲を示し、
図5Bは断面視画像の干渉範囲を示す。
【
図6】
図6は可動範囲を回転させた場合の表示態様を示す。
図6Aは旋回台が任意の方向に回転した状態での可動範囲を示し、
図6Bは旋回台の回転に応じて可動範囲を回転させた状態を示す。
【
図7】
図7は地物に対するクレーンの位置による可動範囲の違いを示す。
図7Aはクレーンが地物に近接している状態の可動範囲を示し、
図7Bはクレーンが地物から離間している状態の可動範囲を示す。
【
図8】可動範囲表示システムにおける可動範囲表示制御の態様を表すフローチャートを示す。
【
図9】可動範囲と遠隔操作端末の位置とを含んだ表示態様を示す。
【
図10】
図10はブーム先端の距離センサのデータに基づく可動範囲の表示態様を示す。
図10Aは可動範囲の上面視画像を示し、
図10Bは可動範囲をブームの軸方向に沿った断面視画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、
図1と
図2とを用いて、本発明における移動式クレーンの一実施形態であるクレーン1について説明する。なお、本実施形態においては、ラフテレーンクレーンについて説明を行うが、オールテレーンクレーン、トラッククレーン、積載型トラッククレーン等であればよい。
【0013】
図1に示すように、クレーン1は、不特定の場所に移動可能な移動式クレーン1である。クレーン1は、走行体である車両2、作業装置であるクレーン装置6、制御装置31およびクレーン装置6を遠隔操作可能な遠隔操作端末37(
図2参照)を有する。また、クレーン1は、可動範囲表示システム32(
図2参照)を具備する。
【0014】
車両2は、クレーン装置6を搬送する移動体である。車両2は、複数の車輪3を有し、エンジン4を動力源として走行する。車両2には、アウトリガ5が設けられている。車両2は、アウトリガ5を車両2の幅方向に延伸させるとともにジャッキシリンダを接地させることにより、クレーン1の作業可能範囲を広げることができる。アウトリガ5には、アウトリガ5の張り出し量を検出するアウトリガ5用センサが各アウトリガ5に設けられている。
【0015】
クレーン装置6は、荷物Wをワイヤロープによって吊り上げる装置である。クレーン装置6は、旋回台7、旋回用油圧モータ8、ブーム9、メインフックブロック10、サブフックブロック11、起伏用油圧シリンダ12、メインウインチ13、メイン用油圧モータ13a、メインワイヤロープ14、サブウインチ15、サブ用油圧モータ15a、サブワイヤロープ16およびキャビン17等を具備する。
【0016】
旋回台7は、クレーン装置6を旋回する装置である。旋回台7は、円環状の軸受の中心を回転中心として回転自在に構成されている。旋回台7には、アクチュエータである旋回用油圧モータ8が設けられている。旋回台7は、旋回用油圧モータ8によって一方向と他方向とに旋回可能に構成されている。
【0017】
旋回用油圧モータ8は、電磁比例切換弁である旋回用バルブ23(
図2参照)によって回転操作される。旋回用バルブ23は、旋回用油圧モータ8に供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。旋回台7には、旋回台7の基準位置からの旋回した角度である旋回角度αを検出する旋回用センサ27(
図2参照)が設けられている。
【0018】
ブーム9は、荷物Wを吊り上げ可能な状態にワイヤロープを支持する梁部材である。ブーム9は、ベースブーム部材の基端が旋回台7の略中央に揺動可能に設けられている。ブーム9は、各ブーム部材をアクチュエータである図示しない伸縮用油圧シリンダで移動させることで軸方向に伸縮自在に構成されている。また、ブーム9には、ジブ9aが設けられている。ブーム9には、ブーム9の長さを検出する伸縮用センサ28や荷物Wの重量を検出する重量センサ等が設けられている。
【0019】
吊り荷カメラ9b(
図2参照)は、荷物Wおよび荷物W周辺の地物Cを撮影する撮影装置である。吊り荷カメラ9bは、ブーム9の先端部に設けられている。吊り荷カメラ9bは、荷物Wの鉛直上方から荷物Wおよびクレーン1周辺の地物Cや地形を撮影可能に構成されている。
【0020】
メインフックブロック10とサブフックブロック11とは、荷物Wを吊る部材である。メインフックブロック10には、メインワイヤロープ14が巻き掛けられる複数のフックシーブと、荷物Wを吊るメインフック10aとが設けられている。サブフックブロック11には、荷物Wを吊るサブフック11aが設けられている。
【0021】
起伏用油圧シリンダ12は、ブーム9を起立および倒伏させ、ブーム9の姿勢を保持するアクチュエータである。起伏用油圧シリンダ12は、電磁比例切換弁である起伏用バルブ25(
図2参照)によって伸縮操作される。ブーム9には、ブーム9の起伏角度βを検出する起伏用センサ29(
図2参照)が設けられている。
【0022】
メインウインチ13とサブウインチ15とは、メインワイヤロープ14とサブワイヤロープ16との繰り入れ(巻き上げ)および繰り出し(巻き下げ)を行う。メインウインチ13は、メインワイヤロープ14が巻きつけられるメインドラムがアクチュエータであるメイン用油圧モータ13aによって回転され、サブウインチ15は、サブワイヤロープ16が巻きつけられるサブドラムがアクチュエータであるサブ用油圧モータ15aによって回転されるように構成されている。
【0023】
メイン用油圧モータ13aは、電磁比例切換弁であるメイン用バルブ26m(
図2参照)によって回転操作される。メインウインチ13は、メイン用バルブ26mによってメイン用油圧モータ13aを制御し、任意の繰り入れおよび繰り出し速度に操作可能に構成されている。同様に、サブウインチ15は、電磁比例切換弁であるサブ用バルブ26s(
図2参照)によってサブ用油圧モータ15aを制御し、任意の繰り入れおよび繰り出し速度に操作可能に構成されている。
【0024】
キャビン17は、旋回台7に搭載されている。キャビン17は、図示しない操縦席が設けられている。操縦席には、車両2を走行操作するための操作具やクレーン装置6を操作するための旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21m、サブドラム操作具21s等が設けられている。
【0025】
図2に示すように、通信装置22は、広域情報通信網等を介して遠隔操作端末37からの制御信号を受信し、広域情報通信網等を介してクレーン装置6からの制御情報等を送信する装置である。通信装置22は、キャビン17に設けられている。通信装置22は、遠隔操作端末37からの制御信号等を受信するとクレーン1の制御装置31に転送するように構成されている。
【0026】
GNSS受信機30(
図2参照)は、全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System)を構成する受信機であって、衛星から測距電波を受信し、受信機の位置座標である緯度、経度、標高を算出する装置である。クレーン1は、GNSS受信機30によって、ブーム9の先端の位置座標とキャビン17の位置座標を取得することができる。
【0027】
制御装置31は、各操作弁を介してクレーン1のアクチュエータを制御する装置である。制御装置31は、キャビン17内に設けられている。制御装置31は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置31は、各アクチュエータや切換え弁、センサ等の動作を制御するために種々のプログラムやデータが格納されている。
【0028】
制御装置31は、吊り荷カメラ9b、旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21mおよびサブドラム操作具21sに接続され、吊り荷カメラ9bの映像を取得し、旋回操作具18、起伏操作具19、メインドラム操作具21mおよびサブドラム操作具21sのそれぞれの操作量を取得することができる。
【0029】
制御装置31は、通信装置22に接続され、遠隔操作端末37からの制御信号を取得し、クレーン装置6からの制御情報や吊り荷カメラ9bからの映像等を送信することができる。
【0030】
制御装置31は、旋回用バルブ23、伸縮用バルブ24、起伏用バルブ25、メイン用バルブ26mおよびサブ用バルブ26sに接続され、旋回用バルブ23、起伏用バルブ25、メイン用バルブ26mおよびサブ用バルブ26sに制御信号を伝達することができる。
【0031】
制御装置31は、旋回用センサ27、伸縮用センサ28および起伏用センサ29に接続され、旋回台7の旋回角度α、ブーム長さ、起伏角度β等の姿勢情報および荷物Wの重量を取得することができる。
【0032】
制御装置31は、GNSS受信機30に接続され、ブーム9の先端の位置座標とキャビン17の位置座標を高精度で取得することができる。また、制御装置31は、取得したブーム9の先端の位置座標とキャビン17の位置座標とから、車両2の進行方向である配置方向を高精度で算出することができる。
【0033】
制御装置31は、旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21mおよびサブドラム操作具21sの操作量に基づいて各操作具に対応した制御信号を生成することができる。
【0034】
可動範囲表示システム32は、作業現場の任意の位置におけるクレーン1の可動範囲Aを算出および表示するシステムである。可動範囲表示システム32は、クレーン1のキャビン17内に設けられている。
【0035】
可動範囲表示システム32は、制御装置31に接続され、制御装置31から各アウトリガ5の張り出し長さ、旋回台7の旋回角度α、ブーム9の起伏角度βおよびブーム長さ、荷物Wの重量を制御装置31から取得することができる。
【0036】
このように構成されるクレーン1は、車両2を走行させることで任意の位置にクレーン装置6を移動させることができる。また、クレーン1は、起伏操作具19の操作によって起伏用油圧シリンダ12でブーム9を任意の起伏角度βに起立させて、伸縮操作具20の操作によってブーム9を任意のブーム長さに延伸させたりすることでクレーン装置6の揚程や作業半径を拡大することができる。また、クレーン1は、サブドラム操作具21s等によって荷物Wを吊り上げて、旋回操作具18の操作によって旋回台7を旋回させることで荷物Wを搬送することができる。
【0037】
次に、
図3および
図4を用いて、可動範囲表示システム32について具体的に説明する。可動範囲表示システム32は、作業現場における任意の配置位置および配置方向において、任意の動作条件でのクレーン1の可動範囲Aを算出し、二次元画像または三次元画像で可動範囲Aを表示するシステムである。クレーン1の可動範囲Aとは、所定のブーム長さに延伸されたブーム9に所定の重量の荷物Wを吊り下げた状態で、ブーム9の先端が到達可能な範囲をいう。
【0038】
図3に示すように、可動範囲表示システム32は、システム側通信装置33と、入力装置34と、表示装置35と、システム制御装置36とを備える。なお、システム制御装置36は、本発明の「第1取得部」、「第2取得部」、「第3取得部」、「算出部」および「表示部」として機能する。
【0039】
システム側通信装置33は、クレーン1の制御装置31や図示しない外部のサーバー等との間で情報を送受信する装置である。システム側通信装置33は、キャビン17に設けられている。システム側通信装置33は、クレーン1の制御装置31からクレーン1における車両2の現在位置と配置方向、およびクレーン1の現在の動作条件を取得するように構成されている。また、システム側通信装置33は、クレーン1が配置されている作業現場の三次元情報を外部のサーバー等から取得するように構成されている。クレーン1の動作条件とは、荷物Wの可動範囲Aに影響を及ぼす条件であって、本実施形態においてクレーン1の機種、アウトリガ5の張り出し量、ブーム9のブーム長さ、ジブの使用状態、カウンタウェイトの重さを言う。
【0040】
入力装置34は、操縦者がクレーン1の作動条件を入力する装置である。入力装置34は、キャビン17に設けられている。また、入力装置34は、表示装置35に表示され、画面上から入力されるように構成されている。入力装置34は、搬送する荷物Wの重量、クレーン1における車両2の配置位置と配置方向、クレーン1の動作条件等について任意の値を入力するように構成されている。
【0041】
表示装置35は、クレーン1の可動範囲Aや入力装置34を表示させる装置である。表示装置35は、キャビン17の内部に配置されている。表示装置35は、画面から入力可能なタッチパネルで構成されている。表示装置35は、作業現場の二次元画像および三次元画像、クレーン1、クレーン1の可動範囲A、クレーン1の動作条件等を表示するように構成されている。
【0042】
システム制御装置36は、作業現場の三次元情報、荷物Wの重量、クレーン1における車両2の配置位置と配置方向およびクレーン1の作動条件等からクレーン1の可動範囲Aを算出する制御装置である。システム制御装置36は、キャビン17内に設けられている。システム制御装置36は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。システム制御装置36は、システム側通信装置33、入力装置34からの情報を取得し、クレーン1の可動範囲Aを算出し、表示装置35に表示するために種々のプログラムやデータが格納されている。
【0043】
システム制御装置36は、システム側通信装置33に接続され、システム側通信装置33を介して作業現場の三次元情報を取得することができる。また、システム制御装置36は、システム側通信装置33を介してクレーン1における車両2の現在位置と配置方向とを取得することができる。また、システム制御装置36は、システム側通信装置33を介してクレーン1の動作条件を取得することができる。
【0044】
システム制御装置36は、入力装置34に接続され、入力装置34を介して作業現場の三次元情報を取得することができる。また、システム制御装置36は、入力装置34を介して荷物Wの重量、クレーン1の機種、操縦者が任意に定めたクレーン1における車両2の配置位置と配置方向およびクレーン1の作動条件を取得することができる。
【0045】
システム制御装置36は、取得したクレーン1における車両2の現在の配置位置および配置方向と、操縦者が任意に定めた車両2の配置位置および配置方向との差分を算出することができる。つまり、システム制御装置36は、車両2の現在位置から任意に定めた配置位置までの移動距離と移動方向、および車両2の現在の配置方向から任意に定めた配置方向までの移動角度を算出することができる。
【0046】
システム制御装置36は、表示装置35に接続され、表示装置35に作業現場の二次元画像または三次元画像を表示させることができる。また、システム表示装置35は、表示装置35にクレーン1の画像M1、およびクレーン1の可動範囲Aを表示することができる。本実施形態において、表示装置35には、二次元画像が表示されるものとする。
【0047】
図4に示すように、システム制御装置36は、クレーン1の現在の動作条件に基づいたブーム長さ、旋回角度α、起伏角度βを表現した画像を表示することができる。システム制御装置36は、二次元画像を表示する場合、クレーン1の上方からの表示である上面視画像におけるクレーン1の画像M1および可動範囲A(
図4Aの薄墨部分参照)と、任意の旋回角度αのブーム9に沿った断面視である側面視画像におけるクレーン1の画像M1および可動範囲A(
図4Bの薄墨部分参照)とを切り替えて表示することができる。
【0048】
システム制御装置36は、システム側通信装置33、入力装置34を介して取得した荷物Wの重量、クレーン1の機種、クレーン1の作動条件、作業現場の三次元情報と作業現場におけるクレーン1の車両2の配置位置と配置方向から、作業現場の三次元情報に基づいて、ブーム9が地物C等と干渉する可能性がある範囲を除外した領域を可動範囲Aとして算出し、表示装置35に表示させることができる。
【0049】
このように構成される可動範囲表示システム32は、作業現場の三次元情報を取得しているので、クレーン1を実際に作業現場に配置する前に、作業現場内の任意の位置に任意の方向で配置した際に荷物Wを搬送することができる範囲が表示される。また、可動範囲表示システム32は、操縦者が可動範囲Aを表示させた任意の配置位置と配置方向までの移動量や移動方向が表示される。
【0050】
次に、
図5から
図7を用いて可動範囲表示システム32の制御について説明する。可動範囲表示システム32は、現在の配置位置と配置方向におけるクレーン1の可動範囲Aを表示するチェックモードと、任意の配置位置と配置方向でのクレーン1の可動範囲Aを表示するプランモードを有する。
【0051】
可動範囲表示システム32のシステム制御装置36は、クレーン1が起動されると、チェックモードを開始する。システム制御装置36は、システム側通信装置33を介して作業現場の三次元情報とクレーン1における車両2の現在の配置位置と配置方向を単位時間毎に取得する。さらに、システム制御装置36は、システム側通信装置33を介してクレーン1の作動条件を単位時間毎に取得する。また、システム制御装置36は、システム側通信装置33を介して荷物Wの重量を単位時間毎に取得する。
【0052】
図5に示すように、システム制御装置36は、作業現場の三次元情報に基づいて、ブーム9が作業現場の地物Cに干渉する旋回角度α1から旋回角度α2を算出する(
図5A参照)。次に、システム制御装置36は、旋回角度α1から旋回角度α2までの間において、ブーム9が地物Cと干渉する最小の起伏角度β1を単位旋回角度毎に算出する。さらに、システム制御装置36は、旋回角度α1から旋回角度α2までの間であって起伏角度β1以上におけるブーム9の先端が到達可能な範囲を単位起伏角度毎に算出する(
図5B参照)。システム制御装置36は、ブーム9が地物Cと干渉する旋回角度α1から旋回角度α2までの間におけるブーム9の先端が到達可能な範囲を考慮した可動範囲A(薄墨部分参照)を表示装置35に表示する。
【0053】
システム制御装置36は、取得した情報に基づいて算出した車両2の現在位置と配置方向での可動範囲Aを単位時間毎に表示装置35に表示する。システム制御装置36は、クレーン1が移動した場合、車両2の新たな配置位置と配置方向での可動範囲Aを表示する。つまり、可動範囲表示システム32は、チェックモードにおいて、クレーン1の移動に伴って現在の配置位置と配置方向における可動範囲Aを現在の作動条件において算出し、逐次表示する。
【0054】
図6に示すように、システム制御装置36は、プランモードが選択された場合、任意の配置位置と配置方向における任意の作動条件での可動範囲Aを算出する。システム制御装置36は、表示装置35に入力装置34を構成する入力画面を表示させる。システム制御装置36は、入力装置34からクレーン1の任意の作動条件と車両2の任意の配置位置および配置方向とを取得し、任意の配置位置および配置方向における可動範囲Aを任意の作動条件において算出する。さらに、システム制御装置36は、車両2の現在位置から任意の配置位置までの移動距離と移動方向、および、車両2の現在の配置方向から任意の配置方向までの移動角度を矢印Arと文字情報で算出し、表示装置35に表示する。
【0055】
チェックモードおよびプランモードにおいて、システム制御装置36は、クレーン1の旋回台7が基準位置から一の方向に旋回角度αだけ旋回している場合(
図6A参照)、表示装置35に表示している作業現場の二次元画像の上面図または三次元画像と可動範囲Aを他の方向に旋回角度αだけ回転させて表示することができる(
図6B参照)。このように構成することで、旋回台7とともに旋回するキャビン17を基準として作業現場と可動範囲A(薄墨部分参照)とが表示されるので、操縦者が作業現場における位置関係を把握し易い。
【0056】
図7に示すように、クレーン1の可動範囲A(薄墨部分参照)は、地物Cとの位置関係によって変動する。例えば、地物Cに近接して配置されたクレーン1におけるブーム9が地物Cと干渉する最小の起伏角度β11(
図7A参照)は、地物Cから離間して配置されたクレーン1におけるブーム9が地物Cと干渉する最小の起伏角度β12(
図7B参照)よりも大きくなる。従って、
図7Aに示す地物Cに近接して配置されたクレーン1の可動範囲A1は、
図7Bに示す地物Cから離間して配置されたクレーン1の可動範囲A2よりも小さくなる。
【0057】
以下に、
図8を用いて、可動範囲表示システム32による可動範囲表示制御について具体的に説明する。なお、本実施形態において、作業現場の三次元情報はすでに取得しているものとする。
【0058】
図8に示すように、可動範囲表示制御のステップS110において、システム制御装置36は、クレーン1が起動されるとチェックモードを開始し、クレーン1における車両2の現在の配置位置と配置方向とを取得し、ステップをステップS120に移行させる。
【0059】
ステップS120において、システム制御装置36は、システム側通信装置33または入力装置34を介してクレーン1の機種とクレーン1の作動条件を取得し、ステップをステップS130に移行させる。
【0060】
ステップS130において、システム制御装置36は、取得した情報から現在の配置位置と配置方向における可動範囲Aを算出し、ステップをステップS140に移行させる。
【0061】
ステップS140において、システム制御装置36は、算出した可動範囲Aを表示装置35に表示させて、ステップをステップS150に移行させる。
【0062】
ステップS150において、システム制御装置36は、プランモードが選択されたか否かを判定する。その結果、プランモードが選択された場合、システム制御装置36はステップをステップS160に移行させる。一方、プランモードが選択されていない場合、すなわち、チェックモードが維持されている場合、システム制御装置36はステップをステップS110に移行させる。
【0063】
ステップS160において、システム制御装置36は、プランモードを開始し、クレーン1における車両2の任意の配置位置と配置方向とを取得し、ステップをステップS170に移行させる。
【0064】
ステップS170において、システム制御装置36は、入力装置34を介して任意に選択されたクレーン1の機種とクレーン1の作動条件を取得し、ステップをステップS180に移行させる。
【0065】
ステップS180において、システム制御装置36は、取得した情報から任意の配置位置と配置方向における可動範囲Aを算出し、ステップをステップS190に移行させる。
【0066】
ステップS190において、システム制御装置36は、現在の配置位置から任意の配置位置までの移動距離と移動方向、および現在の配置方向から任意の配置方向までの移動角度を算出し、ステップをステップS200に移行させる。
【0067】
ステップS200において、システム制御装置36は、算出した可動範囲Aと任意の配置位置までの移動距離、移動方向等を表示装置35に表示させて、ステップをステップS110に移行させる。
【0068】
このように構成される可動範囲表示システム32は、チェックモードの場合、クレーン1における車両2の現在の配置位置と配置方向に基づいた可動範囲Aを単位時間毎に逐次表示する。可動範囲表示システム32は、作業現場における移動式クレーン1の正確な位置を基準とする地物Cの位置および形状が特定されるので、地物Cの位置および形状を考慮した可動範囲Aが高精度に算出される。
【0069】
また、可動範囲表示システム32は、プランモードの場合、クレーン1における車両2の任意の配置位置と配置方向に基づいた可動範囲Aを表示する。さらに、可動範囲表示システム32は、任意の配置位置と配置方向までの移動距離、移動方向、車両2の移動角度を表示する。可動範囲表示システム32は、作業現場において荷物Wを搬送するために特定した移動式クレーン1の配置位置と配置方向に移動式クレーン1が配置されたかどうか確認し易い。これにより、可動範囲表示システム32を利用するユーザーは、作業現場内の地物C等に干渉することなく荷物Wを目的地点まで搬送可能な移動式クレーン1の配置位置および配置方向を検討することができる。
【0070】
なお、本実施形態において、可動範囲表示システム32は、クレーン1のキャビン17の内部に設けられているが、キャビン17の外部に持ち運び可能な携帯端末に設けられてもよい。例えば、携帯端末である遠隔操作端末37には、クレーン1を操作する各種操作具に加えて、システム側通信装置33と、入力装置34と、表示装置35と、システム制御装置36とが設けられている(
図3参照)。また、遠隔操作端末37は、端末側GNSS受信機38を具備する。システム制御装置36は、システム側通信装置33を介して端末側GNSS受信機38から遠隔操作端末37の現在の位置を取得することができる。なお、本実施形態において、遠隔操作端末37には、端末側GNSS受信機38にかえて位置検出可能な近距離無線通信機を設けてもよい。
【0071】
図9に示すように、システム制御装置36は、チェックモードとプランモードにおいて、遠隔操作端末37の現在の位置を取得すると、表示装置35に表示されている作業現場の三次元画像または二次元画像に遠隔操作端末37を示す画像M2を表示させる。このように構成することで、可動範囲表示システム32は、作業現場におけるクレーン1、地物Cおよび操縦者の位置関係が明確になる。これにより、可動範囲表示システム32を利用するユーザーは、作業現場内の地物C等に干渉することなく荷物Wを目的地点まで搬送可能な移動式クレーン1の配置位置および配置方向を検討することができる。
【0072】
なお、本実施形態において、可動範囲表示システム32のシステム制御装置36は、作業現場の三次元情報を外部のサーバー等から取得しているが、
図10に示すように、ブーム9の先端に対象物までの距離を検出する距離センサやレーザースキャナ等を設けて作業現場の三次元情報を収集する構成でもよい。システム制御装置36は、距離センサの計測値に基づいて可動範囲A(薄墨部分参照)を算出し、可動範囲A表示装置35に表示するとともに、測定結果を画像M3として可動範囲Aに重畳表示させる。
【0073】
上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【0074】
2019年6月20日出願の特願2019-114949の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、全て本願に援用される。
【符号の説明】
【0075】
1 クレーン
6 クレーン装置
9 ブーム
30 GNSS受信機
31 制御装置
32 可動範囲表示システム
33 システム側通信装置
34 入力装置
35 表示装置
36 システム制御装置
A 可動範囲