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特許7416080弾性波装置、フィルタ装置及びマルチプレクサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】弾性波装置、フィルタ装置及びマルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/145 20060101AFI20240110BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20240110BHJP
   H03H 9/64 20060101ALI20240110BHJP
   H03H 9/72 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H03H9/145 Z
H03H9/25 C
H03H9/64 Z
H03H9/72
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021548865
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2020035314
(87)【国際公開番号】W WO2021060153
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2019176873
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 康政
(72)【発明者】
【氏名】大門 克也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 努
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/177028(WO,A1)
【文献】特開2012-231437(JP,A)
【文献】特開2010-010832(JP,A)
【文献】特開2014-013959(JP,A)
【文献】国際公開第2014/196245(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00-9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信帯域及び受信帯域を有するデュプレクサまたはマルチプレクサに含まれる、1つの送信フィルタに用いられる弾性波装置であって、
圧電体層を有する圧電性基板と、
前記圧電性基板上に設けられている第1のIDT電極と、
前記圧電性基板上における、前記第1のIDT電極の弾性波伝搬方向両側に設けられている一対の反射器と、
前記圧電性基板上に、前記一対の反射器のうちの一方の反射器を挟み前記第1のIDT電極と対向するように設けられている第2のIDT電極と、
を備え、
前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極が、一対のバスバーと、複数の電極指と、をそれぞれ有し、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極においてそれぞれ、前記一対のバスバーのうちの一方のバスバーに前記複数の電極指のうちの一部の電極指が接続されており、他方のバスバーに前記複数の電極指のうちの残りの電極指が接続されており、
前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極が、前記複数の電極指が弾性波伝搬方向において重なり合っている交叉領域をそれぞれ有し、前記第1のIDT電極の前記交叉領域の少なくとも一部と前記第2のIDT電極の前記交叉領域の少なくとも一部とが、弾性波伝搬方向において重なり合っており、
前記第2のIDT電極の前記一対のバスバーのうちの一方のバスバーが、前記第1のIDT電極の前記一対のバスバーのうちの一方のバスバーに接続されており、前記第2のIDT電極の前記一対のバスバーのうちの他方のバスバーがグラウンド電位に接続され、
前記送信帯域の周波数をTx、前記受信帯域の周波数をRxとしたときに、妨害波信号が、2Tx-Rxで表される周波数を有する信号であり、
前記第2のIDT電極により構成されている部分の共振周波数が、前記妨害波信号の周波数帯域に含まれ
前記圧電性基板上に、前記一対の反射器のうちの他方の反射器を挟み前記第1のIDT電極と対向するように、前記第2のIDT電極とは他の第2のIDT電極が設けられている、弾性波装置。
【請求項2】
前記第2のIDT電極の前記複数の電極指が20対以下である、請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項3】
前記圧電性基板が高音速材料層を有し、
前記高音速材料層上に直接的または間接的に前記圧電体層が設けられており、
前記高音速材料層を伝搬するバルク波の音速が、前記圧電体層を伝搬する弾性波の音速よりも高い、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記圧電性基板が、前記高音速材料層と前記圧電体層との間に設けられている低音速膜を有し、
前記低音速膜を伝搬するバルク波の音速が、前記圧電体層を伝搬するバルク波の音速よりも低い、請求項に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記高音速材料層が高音速支持基板である、請求項またはに記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記圧電性基板が支持基板を有し、
前記高音速材料層が、前記支持基板上に設けられている高音速膜である、請求項またはに記載の弾性波装置。
【請求項7】
アンテナに接続される弾性波装置であって、
前記第1のIDT電極の前記一対のバスバーが第1のバスバー及び第2のバスバーであり、前記第1のバスバーが前記第2のバスバーよりも前記アンテナ側に位置し、
前記第2のIDT電極の前記一対のバスバーのうちの信号電位に接続されるバスバーが、前記第1のバスバーに接続されている、請求項1~のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項8】
アンテナに接続される弾性波装置であって、
前記第1のIDT電極の前記一対のバスバーが第1のバスバー及び第2のバスバーであり、前記第1のバスバーが前記第2のバスバーよりも前記アンテナ側に位置し、
前記第2のIDT電極の前記一対のバスバーのうちの信号電位に接続されるバスバーが、前記第2のバスバーに接続されている、請求項1~のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項9】
アンテナに接続されるフィルタ装置であって、
直列腕共振子と、
並列腕共振子と、
を備え、
前記直列腕共振子及び前記並列腕共振子のうちの少なくとも1つの共振子が、請求項1~のいずれか1項に記載の弾性波装置である、フィルタ装置。
【請求項10】
前記直列腕共振子及び前記並列腕共振子のうちの最もアンテナ側の共振子が、前記弾性波装置である、請求項に記載のフィルタ装置。
【請求項11】
アンテナに接続されるアンテナ端子と、
前記アンテナ端子に共通接続されている複数のフィルタ装置と、
を備え、
少なくとも1つの前記フィルタ装置が、請求項または10に記載のフィルタ装置である、マルチプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波装置、フィルタ装置及びマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性波装置は携帯電話機のフィルタなどに広く用いられている。下記の特許文献1には、弾性波共振子を含むフィルタを有するマルチプレクサの一例が記載されている。弾性波共振子においては、圧電性を有する基板上にIDT(Interdigital Transducer)電極が設けられている。上記基板上において、IDT電極の弾性波伝搬方向両側に一対の反射器が設けられている。複数のフィルタ装置は共通端子に共通接続されている。共通端子はアンテナに接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-106622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチプレクサにおけるフィルタに上記のような弾性波共振子を用いると、マルチプレクサが有する複数のフィルタ装置の通過帯域によっては、マルチプレクサの受信感度が劣化するおそれがあった。より具体的には、マルチプレクサが送信フィルタ及び受信フィルタを含み、送信フィルタから送信信号をアンテナに出力するときに、アンテナから他の信号が入力される場合もある。このとき、送信フィルタ及び受信フィルタの通信バンドが、例えばBand25の場合には、入力された上記信号が妨害波信号として作用するおそれがある。これにより、Band25の受信帯域内にIMD(Inter Modulation Distortion)が生じ、受信感度が劣化することがある。
【0005】
本発明の目的は、IMDを抑制することができ、受信感度の劣化を抑制することができる、弾性波装置、フィルタ装置及びマルチプレクサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る弾性波装置は、圧電体層を有する圧電性基板と、前記圧電性基板上に設けられている第1のIDT電極と、前記圧電性基板上における、前記第1のIDT電極の弾性波伝搬方向両側に設けられている一対の反射器と、前記圧電性基板上に、前記一対の反射器のうちの一方の反射器を挟み前記第1のIDT電極と対向するように設けられている第2のIDT電極とを備え、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極が、一対のバスバーと、複数の電極指と、をそれぞれ有し、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極においてそれぞれ、前記一対のバスバーのうちの一方のバスバーに前記複数の電極指のうちの一部の電極指が接続されており、他方のバスバーに前記複数の電極指のうちの残りの電極指が接続されており、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極が、前記複数の電極指が弾性波伝搬方向において重なり合っている交叉領域をそれぞれ有し、前記第1のIDT電極の前記交叉領域の少なくとも一部と前記第2のIDT電極の前記交叉領域の少なくとも一部とが、弾性波伝搬方向において重なり合っており、前記第2のIDT電極の前記一対のバスバーのうちの一方のバスバーが、前記第1のIDT電極の前記一対のバスバーのうちの一方のバスバーに接続されており、前記第2のIDT電極の前記一対のバスバーのうちの他方のバスバーがグラウンド電位に接続され、前記第2のIDT電極により構成されている部分の共振周波数が、妨害波信号の周波数帯域に含まれる。
【0007】
本発明に係るフィルタ装置は、アンテナに接続されるフィルタ装置であって、直列腕共振子と、並列腕共振子とを備え、前記直列腕共振子及び前記並列腕共振子のうちの少なくとも1つの共振子が、本発明に従い構成されている弾性波装置である。
【0008】
本発明に係るマルチプレクサは、アンテナに接続されるアンテナ端子と、前記アンテナ端子に共通接続されている複数のフィルタ装置とを備え、少なくとも1つの前記フィルタ装置が、本発明に従い構成されているフィルタ装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る弾性波装置、フィルタ装置及びマルチプレクサによれば、IMDを抑制することができ、受信感度の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置における電極構造を示す模式的平面図である。
図3図3は、第1の比較例の弾性波装置における電極構造を示す模式的平面図である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態及び第1の比較例の弾性波装置における、IMD3レベルを示す図である。
図5図5は、第2の比較例の弾性波装置における電極構造を示す模式的平面図である。
図6図6は、本発明の第1の実施形態、第1の比較例及び第2の比較例の弾性波装置における、IMD3レベルを示す図である。
図7図7は、本発明の第1の実施形態及び第1の比較例における、第2のIDT電極の電極指の対数とIMD3レベルとの関係を示す図である。
図8図8は、本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る弾性波装置の正面断面図である。
図9図9は、本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る弾性波装置の正面断面図である。
図10図10は、本発明の第1の実施形態の第3の変形例に係る弾性波装置の正面断面図である。
図11図11は、本発明の第1の実施形態の第4の変形例に係る弾性波装置の正面断面図である。
図12図12は、本発明の第2の実施形態に係る弾性波装置における電極構造を示す模式的平面図である。
図13図13は、本発明の第2の実施形態、第1の比較例及び第3の比較例の弾性波装置における、IMD3レベルを示す図である。
図14図14は、本発明の第3の実施形態に係る弾性波装置における電極構造を示す模式的平面図である。
図15図15は、本発明の第1の実施形態、第3の実施形態及び第1の比較例における、第2のIDT電極の電極指の対数とIMD3レベルとの関係を示す図である。
図16図16は、本発明の第4の実施形態に係るフィルタ装置の模式的回路図である。
図17図17は、本発明の第4の実施形態の変形例に係るフィルタ装置の模式的回路図である。
図18図18は、本発明の第5の実施形態に係るデュプレクサの模式図である。
図19図19は、本発明の第6の実施形態に係るマルチプレクサの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0012】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図である。
【0014】
弾性波装置1は圧電性基板2を有する。圧電性基板2上には、第1のIDT電極3が設けられている。圧電性基板2及び第1のIDT電極3は第1のIDT3Aを構成している。IDT電極に交流電圧を印加すると、弾性波が励振される。圧電性基板2上における、第1のIDT電極3の弾性波伝搬方向両側には、一対の反射器4A及び反射器4Bが設けられている。さらに、圧電性基板2上には、反射器4Aを挟み第1のIDT電極3と対向するように、第2のIDT電極5が設けられている。圧電性基板2及び第2のIDT電極5は第2のIDT5Aを構成している。このように、弾性波装置1は、第1のIDT電極3により構成されている部分である第1のIDT3Aと、第2のIDT電極5により構成されている部分である第2のIDT5Aとを有する。さらに、弾性波装置1は、反射器4A及び反射器4Bを有する。本実施形態の弾性波装置1は弾性波共振子である。
【0015】
図2は、第1の実施形態に係る弾性波装置における電極構造を示す模式的平面図である。
【0016】
第1のIDT電極3は、一対の第1のバスバー12及び第2のバスバー13を有する。第1のバスバー12と第2のバスバー13とは対向し合っている。第1のIDT電極3は、複数の第1の電極指14及び複数の第2の電極指15を有する。ここで、複数の第1の電極指14が、第1のIDT電極3が備える複数の電極指のうちの一部の電極指であり、複数の第2の電極指15が、第1のIDT電極3が備える複数の電極指のうちの残りの電極指である。複数の第1の電極指14の一方端は、それぞれ第1のバスバー12に接続されている。複数の第2の電極指15の一方端は、それぞれ第2のバスバー13に接続されている。複数の第1の電極指14と複数の第2の電極指15とは互いに間挿し合っている。第1のIDT電極3は第1の交叉領域Aを有する。第1の交叉領域Aは、第1の電極指14と第2の電極指15とが弾性波伝搬方向おいて重なり合っている領域である。
【0017】
第1のバスバー12及び第2のバスバー13のうちの少なくとも一方は信号電位に接続される。より具体的には、弾性波装置1が、例えば、ラダー型フィルタなどの直列腕共振子として用いられる場合には、第1のバスバー12及び第2のバスバー13はそれぞれ信号電位に接続される。弾性波装置1が、例えば、ラダー型フィルタなどの並列腕共振子として用いられる場合には、第1のバスバー12及び第2のバスバー13のうちの一方が信号電位に接続され、他方がグラウンド電位に接続される。
【0018】
本実施形態においては、弾性波装置1はアンテナに接続される。第1のバスバー12が第2のバスバー13よりもアンテナ側に位置する。本明細書において、他のバスバーあるいは他の素子よりもアンテナ側に位置するとは、電気的な接続において、他のバスバーあるいは他の素子よりもアンテナに近いことをいう。
【0019】
第1のIDT電極3はアンテナに、アンテナ端子11Aを介して接続される。より具体的には、第1のバスバー12がアンテナ端子11Aに接続されている。第1のバスバー12は、アンテナ端子11Aに直接的に接続されていてもよく、あるいは、他の素子などを介して間接的に接続されていてもよい。一方で、第2のバスバー13は、第1のバスバー12よりも、アンテナ端子11A以外の信号端子11B側に位置する。なお、信号端子11Bは信号電位に接続される。第2のバスバー13は、信号端子11Bに直接的に接続されていてもよく、あるいは、他の素子などを介して間接的に接続されていてもよい。
【0020】
他方、第2のIDT電極5は、一対の第3のバスバー16及び第4のバスバー17を有する。第3のバスバー16と第4のバスバー17とは対向し合っている。第2のIDT電極5は、複数の第3の電極指18及び複数の第4の電極指19を有する。ここで、複数の第3の電極指18が、第2のIDT電極5が備える複数の電極指のうちの一部の電極指であり、複数の第4の電極指19が、第2のIDT電極5が備える複数の電極指のうちの残りの電極指である。複数の第3の電極指18の一方端は、それぞれ第3のバスバー16に接続されている。複数の第4の電極指19の一方端は、それぞれ第4のバスバー17に接続されている。複数の第3の電極指18と複数の第4の電極指19とは互いに間挿し合っている。第2のIDT電極5は第2の交叉領域Bを有する。第2の交叉領域Bは、第3の電極指18と第4の電極指19とが弾性波伝搬方向おいて重なり合っている領域である。
【0021】
図2に示すように、第1のIDT電極3の第1の交叉領域Aと第2のIDT電極5の第2の交叉領域Bとは、弾性波伝搬方向において重なり合っている。より具体的には、弾性波伝搬方向に直交する方向を交叉幅方向としたときに、第1の交叉領域Aの交叉幅方向における中央部と、第2の交叉領域Bの交叉幅方向における中央部とが、弾性波伝搬方向において重なり合っている。なお、第1の交叉領域Aの少なくとも一部と第2の交叉領域Bの少なくとも一部とが、弾性波伝搬方向において重なり合っていればよい。
【0022】
第3のバスバー16は信号電位に接続される。第3のバスバー16は、第1のIDT電極3の第1のバスバー12に接続されている。より具体的には、第3のバスバー16は、ホット配線6Aにより第1のバスバー12に接続されている。第1のバスバー12及び第3のバスバー16は、ホット配線6Aを介して信号電位に接続される。
【0023】
第2のIDT電極5の第4のバスバー17はグラウンド電位に接続される。より具体的には、第4のバスバー17はグラウンド配線6Bを介してグラウンド電位に接続される。なお、第3のバスバー16及び第4のバスバー17のうちの一方が信号電位に接続され、他方がグラウンド電位に接続されるように配線が設けられていればよい。
【0024】
本実施形態においては、弾性波装置1における第1のIDT3Aの共振周波数は、Band25の送信帯域である1850~1915MHzの範囲内に位置する。弾性波装置1における第2のIDT5Aの共振周波数は、妨害波信号の周波数帯域に含まれる。より具体的には、Band25の妨害波周波数帯である1770~1835MHzの範囲内に位置する。本明細書において妨害波信号とは、送信帯域の周波数をTx、受信帯域の周波数をRxとしたときに、2Tx-Rxで表される周波数を有する信号のことを指す。
【0025】
なお、弾性波装置1における、第1のIDT3A及び第2のIDT5Aの各共振周波数は上記に限定されない。
【0026】
図1に戻り、圧電性基板2は、高音速材料層としての高音速支持基板7と、低音速膜8と、圧電体層9とがこの順序で積層された積層基板である。もっとも、圧電性基板2は、圧電体層9のみからなる圧電基板であってもよい。
【0027】
圧電体層9は、タンタル酸リチウム層である。なお、圧電体層9の材料は上記に限定されず、例えば、ニオブ酸リチウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、水晶、またはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などを用いることもできる。
【0028】
低音速膜8は相対的に低音速な膜である。より具体的には、低音速膜8を伝搬するバルク波の音速は、圧電体層9を伝搬するバルク波の音速よりも低い。低音速膜8は酸化ケイ素膜である。酸化ケイ素はSiOにより表すことができる。本実施形態では、低音速膜8はSiO膜である。なお、低音速膜8の材料は上記に限定されず、例えば、ガラス、酸窒化ケイ素、酸化タンタル、または、酸化ケイ素にフッ素、炭素やホウ素を加えた化合物を主成分とする材料を用いることもできる。
【0029】
高音速材料層は相対的に高音速な層である。より具体的には、高音速材料層を伝搬するバルク波の音速は、圧電体層9を伝搬する弾性波の音速よりも高い。高音速材料層としての高音速支持基板7はシリコン基板である。なお、高音速支持基板7の材料は上記に限定されず、例えば、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、サファイア、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶、アルミナ、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、マグネシア、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜またはダイヤモンドなど、上記材料を主成分とする媒質を用いることができる。
【0030】
圧電性基板2が高音速支持基板7、低音速膜8及び圧電体層9が積層された積層構造を有することにより、弾性波を圧電体層9側に効果的に閉じ込めることができる。
【0031】
図2に示すように、本実施形態の特徴は、弾性波装置1が以下の構成を有することにある。1)弾性波装置1が第2のIDT電極5を有し、第2のIDT電極5が、第1のIDT電極3と反射器4Aを挟み対向していること。2)第1の交叉領域Aの少なくとも一部と第2の交叉領域Bの少なくとも一部とが弾性波伝搬方向において重なり合っていること。3)第2のIDT電極5の第3のバスバー16と第1のIDT電極3の第1のバスバー12とが接続されており、第2のIDT電極5の第4のバスバー17がグラウンド電位に接続されること。それによって、第2のIDT電極5において妨害波周波数付近の波が励振され、妨害波信号の入力によるIMDの発生を抑制することができる。これにより、弾性波装置1がマルチプレクサなどにおけるフィルタ装置に用いられた場合において、該フィルタ装置と信号電位に共通接続される他のフィルタ装置の受信感度の劣化を抑制することができる。この詳細を、本実施形態と第1の比較例及び第2の比較例とを比較することにより、以下において説明する。
【0032】
第1の実施形態の構成を有する弾性波装置1及び図3に示す第1の比較例の弾性波装置101を用意した。第1の比較例は、第2のIDT電極5を有しない点において第1の実施形態と異なる。用意した弾性波装置1の設計パラメータは以下の通りである。なお、用意した弾性波装置101の設計パラメータは、第2のIDT電極5を有しない点以外においては、弾性波装置1の設計パラメータと同様である。
【0033】
第1のIDT電極3;電極指の対数…99対、波長…2.104μm、デューティ比…0.5
第2のIDT電極5;電極指の対数…10対、波長…2.104μm、デューティ比…0.5
反射器4A及び反射器4B;電極指の本数…21本、波長…2.104μm
【0034】
弾性波装置1における第1のIDT3A及び弾性波装置101においては、Band25の送信帯域内に共振周波数が位置する。これらのような弾性波共振子に、Band25の送信帯域の信号及び妨害波信号を同時に入力すると、Band25の受信帯域である1930~1995MHzの範囲内に3次IMDが生じる。弾性波装置1及び弾性波装置101に上記送信帯域の信号及び妨害波信号を同時に入力し、IMD3レベルを測定した。
【0035】
図4は、第1の実施形態及び第1の比較例の弾性波装置におけるIMD3レベルを示す図である。
【0036】
図4に示すように、第1の実施形態の構成を有する弾性波装置1においては、第1の比較例の弾性波装置101よりもIMD3レベルが低いことがわかる。さらに、第1の実施形態においては、1936MHz付近において特にIMD3レベルが低くなっている。1936MHz付近においては、第1の実施形態では第1の比較例よりもIMD3レベルを約24dB改善することができている。
【0037】
第1の比較例の弾性波装置101に送信帯域の信号と同時に妨害波信号が入力されると、第1のIDT電極3において、送信帯域の信号に基づく波以外に、妨害波周波数付近の波も励振されることとなる。これに起因してIMDが生じる。
【0038】
これに対して、第1の実施形態の弾性波装置1は、第1のIDT電極3に加えて第2のIDT電極5を有する。また、第2のIDT電極5の第4のバスバー17がグラウンド電位に接続されている。そのため、弾性波装置1に送信帯域の信号と同時に妨害波信号が入力されると、第1のIDT電極3だけではなく、第2のIDT電極5においても妨害波周波数付近の波が励振される。加えて、第2のIDT電極5は、反射器4Aを挟み第1のIDT電極3に対向するように配置されており、かつ第1の交叉領域Aと第2の交叉領域Bとが弾性波伝搬方向において重なっている。そのため、第1のIDT電極3と第2のIDT電極5のそれぞれで発生するIMD信号が干渉し合い、相殺される。それによって、IMDを抑制することができる。従って、弾性波装置1がマルチプレクサなどにおけるフィルタ装置に用いられた場合において、該フィルタ装置と信号電位に共通接続される他のフィルタ装置の受信感度の劣化を抑制することができる。
【0039】
図5に示す第2の比較例の弾性波装置111を用意した。なお、図5においては、各端子を省略している。第2の比較例は、第1のIDT電極3と第2のIDT電極5とが交叉幅方向において離れており、第1の交叉領域Aと第2の交叉領域Bとが弾性波伝搬方向において全く重なっていない点において、第1の実施形態と異なる。用意した弾性波装置111の設計パラメータは、上記の弾性波装置1の設計パラメータと同様である。
【0040】
図6は、第1の実施形態、第1の比較例及び第2の比較例の弾性波装置におけるIMD3レベルを示す図である。
【0041】
図6に示すように、第1の実施形態の構成を有する弾性波装置1においては、第2の比較例の弾性波装置111よりもIMD3レベルが低いことがわかる。よって、第1の実施形態においては、第1の交叉領域Aと第2の交叉領域Bとが弾性波伝搬方向において重なっていることにより、上記のようにIMDを抑制できることがわかる。
【0042】
ところで、フィルタ装置において、妨害波の入力を抑制するための別途の素子を用いる場合には、該素子によるインピーダンスに対する影響により、フィルタ装置の設計の自由度が損なわれるおそれがある。あるいは、挿入損失が大きくなるおそれもある。これに対して、フィルタ装置に弾性波装置1を用いた場合には、弾性波共振子としての弾性波装置1の構成によってIMDを抑制することができる。よって、妨害波の入力を抑制するための別途の素子を要しない。従って、設計の自由度を損なうことなく、挿入損失の増大を招かずして、IMDを抑制することができる。
【0043】
第1の実施形態の弾性波装置1において、第2のIDT電極5の電極指の対数を異ならせてIMD3レベルを測定した。電極指の対数は、5対、10対、20対とした。なお、第2のIDT電極5を有さず、電極指の対数が0対に相当する第1の比較例のIMD3レベルも併せて示す。
【0044】
図7は、第1の実施形態及び第1の比較例における、第2のIDT電極の電極指の対数とIMD3レベルとの関係を示す図である。
【0045】
図7に示すように、第1の実施形態において第2のIDT電極5の電極指の対数を変化させても、第1の比較例よりもIMDが抑制されていることがわかる。第1の実施形態においては、第2のIDT電極5の電極指の対数が10対以下の場合には、電極指の対数が多くなるほどIMDをより一層抑制できることがわかる。第2のIDT電極5の対数は5対以上、20対以下であることが好ましい。それによって、IMDをより一層抑制することができる。
【0046】
上述したように、第1の実施形態の圧電性基板2においては、高音速支持基板7上に、低音速膜8を介して間接的に圧電体層9が設けられている。もっとも、圧電性基板2の構成は上記に限定されない。以下において、圧電性基板の構成のみが第1の実施形態と異なる、第1の実施形態の第1~3の変形例を示す。第1~3の変形例においても、第1の実施形態と同様に、IMDを抑制することができる。加えて、弾性波のエネルギーを圧電体層9側に効果的に閉じ込めることができる。
【0047】
図8に示す第1の変形例においては、高音速材料層は高音速膜27である。圧電性基板22Aは、支持基板26と、高音速膜27と、低音速膜8と、圧電体層9とを有する。支持基板26上に高音速膜27が設けられている。高音速膜27上に低音速膜8が設けられている。低音速膜8上に圧電体層9が設けられている。圧電性基板22Aが高音速膜27を有する場合には、支持基板26には相対的に高音速な材料を用いることを要しない。
【0048】
支持基板26の材料としては、例えば、酸化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶などの圧電体、アルミナ、マグネシア、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライトなどの各種セラミック、サファイア、ダイヤモンド、ガラスなどの誘電体、シリコン、窒化ガリウムなどの半導体または樹脂などを用いることができる。
【0049】
高音速膜27の材料としては、例えば、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、シリコン、サファイア、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶、アルミナ、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、マグネシア、DLC膜またはダイヤモンドなど、上記材料を主成分とする媒質を用いることができる。
【0050】
図9に示す第2の変形例においては、圧電性基板22Bは、支持基板26と、高音速膜27と、圧電体層9とを有する。本変形例においては、高音速材料層としての高音速膜27上に直接的に圧電体層9が設けられている。
【0051】
図10に示す第3の変形例においては、圧電性基板22Cは、高音速支持基板7と、圧電体層9とを有する。本変形例においては、高音速材料層としての高音速支持基板7上に直接的に圧電体層9が設けられている。
【0052】
一方で、図11に示す第1の実施形態の第4の変形例においては、圧電性基板22Dは、圧電体層のみからなる圧電基板である。この場合においても、第1の実施形態と同様に、IMDを抑制することができる。
【0053】
図12は、第2の実施形態に係る弾性波装置における電極構造を示す模式的平面図である。
【0054】
本実施形態は、第2のIDT電極5の第4のバスバー17が第1のIDT電極3の第2のバスバー13に接続されている点及び第2のIDT電極5の第3のバスバー16がグラウンド電位に接続される点において、第1の実施形態と異なる。より具体的には、第2のIDT電極5の第4のバスバー17は、ホット配線6Aにより第1のIDT電極3の第2のバスバー13に接続されている。第3のバスバー16は、グラウンド配線6Bを介してグラウンド電位に接続される。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置31は第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0055】
第1のIDT電極3の第2のバスバー13は、第1のバスバー12よりも、アンテナ端子11A以外の信号端子11B側に位置する。本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、IMDを抑制することができる。この詳細を、本実施形態と第1の比較例及び第3の比較例とを比較することにより、以下において説明する。
【0056】
第1の比較例は、上記第1の実施形態と比較した比較例と同様に、第2のIDT電極を有しない。第3の比較例は、第1のIDT電極と第2のIDT電極とが交叉幅方向において離れており、第1の交叉領域と第2の交叉領域とが弾性波伝搬方向において重なっていない点において、第2の実施形態と異なる。
【0057】
第2の実施形態の構成を有する弾性波装置31並びに第1の比較例及び第3の比較例の弾性波装置を用意した。用意した第2の実施形態の構成を有する弾性波装置31及び第3の比較例の弾性波装置の設計パラメータは、以下の通りである。なお、用意した第1の比較例の弾性波装置101の設計パラメータは、第2のIDT電極5を有しない点以外においては、弾性波装置31の設計パラメータと同様である。
【0058】
第1のIDT電極3;電極指の対数…99対、波長…2.104μm、デューティ比…0.5
第2のIDT電極5;電極指の対数…10対、波長…2.104μm、デューティ比…0.5
反射器4A及び反射器4B;電極指の本数…21本、波長…2.104μm
【0059】
上記各弾性波装置にBand25の送信帯域の信号及び妨害波信号を同時に入力し、IMD3レベルを測定した。
【0060】
図13は、第2の実施形態、第1の比較例及び第3の比較例の弾性波装置におけるIMD3レベルを示す図である。
【0061】
図13に示すように、第2の実施形態の構成を有する弾性波装置31においては、第1の比較例101及び第3の比較例の弾性波装置よりもIMD3レベルが低いことがわかる。さらに、第2の実施形態においては、1942MHz付近において特にIMD3レベルが低くなっている。1942MHz付近においては、第2の実施形態では、第1の比較例よりもIMD3レベルを約22dB改善することができている。このように、第2の実施形態において、IMDを抑制できることがわかる。
【0062】
図14は、第3の実施形態に係る弾性波装置における電極構造を示す模式的平面図である。
【0063】
本実施形態は、第2のIDT電極5に加えて、第2のIDT電極5とは他の第2のIDT電極45を有する点において第1の実施形態と異なる。弾性波装置41は一対の第2のIDT電極5及び第2のIDT電極45を有する。上記の点以外においては、本実施形態の弾性波装置41は第1の実施形態の弾性波装置1と同様の構成を有する。
【0064】
第2のIDT電極45は、圧電性基板2上に設けられており、反射器4Bを挟み第1のIDT電極3と対向している。圧電性基板2及び第2のIDT電極45は第2のIDT45Aを構成している。
【0065】
第2のIDT電極45は第2のIDT電極5と同様に構成されている。より具体的には、第2のIDT電極45は、一対の第3のバスバー46及び第4のバスバー47並びに複数の第3の電極指48及び複数の第4の電極指49を有する。第2のIDT電極45は第2の交叉領域Cを有する。第2の交叉領域Cは、第3の電極指48と第4の電極指49とが弾性波伝搬方向おいて重なり合っている領域である。第2のIDT45Aの共振周波数は、第2のIDT5Aと同様に、妨害波周波数帯域内に位置する。なお、第2のIDT電極45の設計パラメータは、第2のIDT電極5の設計パラメータと必ずしも同じではなくともよい。
【0066】
第2のIDT電極5の第3のバスバー16及び第2のIDT電極45の第3のバスバー46の両方は、ホット配線6Aにより、第1のIDT電極3の第1のバスバー12に接続されている。他方、第2のIDT電極5の第4のバスバー17及び第2のIDT電極45の第4のバスバー47は、それぞれ、グラウンド配線6Bを介してグラウンド電位に接続される。第1のIDT電極3の第1の交叉領域A、第2のIDT電極5の第2の交叉領域B及び第2のIDT電極45の第2の交叉領域Cは、弾性波伝搬方向において重なり合っている。
【0067】
本実施形態においては、送信帯域の信号と同時に妨害波信号が弾性波装置41に入力されると、第1のIDT電極3だけではなく、一対の第2のIDT電極5及び第2のIDT電極45においても妨害波周波数付近の波が励振される。加えて、一対の反射器4A及び反射器4Bの両方を挟み、第1のIDT電極3とそれぞれ対向するように、一対の第2のIDT電極5及び第2のIDT電極45が設けられている。さらに、第1の交叉領域Aと、第2の交叉領域B及び第2の交叉領域Cとが弾性波伝搬方向において重なっている。そのため、第1のIDT電極3と、一対の第2のIDT電極5及び第2のIDT電極45のそれぞれで発生するIMD信号が干渉し合い、相殺される。それによって、第1の実施形態と同様に、IMDを抑制することができる。従って、弾性波装置41がマルチプレクサなどにおけるフィルタ装置に用いられた場合において、該フィルタ装置と信号電位に共通接続される他のフィルタ装置の受信感度の劣化を抑制することができる。
【0068】
第3の実施形態の弾性波装置41において、一対の第2のIDT電極5及び第2のIDT電極45の電極指の対数を異ならせてIMD3レベルを測定した。電極指の対数は、2対、5対、10対とした。上記第1の実施形態及び第1の比較例の結果も併せて示す。
【0069】
図15は、第1の実施形態、第3の実施形態及び第1の比較例における、第2のIDT電極の電極指の対数とIMD3レベルとの関係を示す図である。
【0070】
図15に示すように、第3の実施形態において一対の第2のIDT電極5及び第2のIDT電極45の電極指の対数を変化させても、第1の比較例よりもIMDが抑制されていることがわかる。第3の実施形態においては、一対の第2のIDT電極5及び第2のIDT電極45の電極指の対数が10対以下の場合には、電極指の対数が多くなるほどIMDをより一層抑制できることがわかる。
【0071】
図16は、本発明の第4の実施形態に係るフィルタ装置の模式的回路図である。図16においては、第2のIDT電極5は矩形に2本の対角線を加えた略図により示す。第1のIDT電極3、反射器4A及び反射器4Bは共振子の記号により示す。なお、本実施形態においては、弾性波共振子としての弾性波装置1は、第1のIDT電極3、第2のIDT電極5、反射器4A及び反射器4Bを含む。
【0072】
フィルタ装置52は、複数の直列腕共振子及び複数の並列腕共振子を有するラダー型フィルタであり、帯域通過型フィルタである。フィルタ装置52は第1の信号端51A及び第2の信号端51Bを有する。本実施形態においては、第1の信号端51Aは、アンテナに接続されるアンテナ端である。第1の信号端51A及び第2の信号端51Bは、電極パッドとして構成されていてもよく、配線として構成されていてもよい。本実施形態においては、第1の信号端51A及び第2の信号端51Bは電極パッドとして構成されている。
【0073】
第1の信号端51Aと第2の信号端51Bとの間に、直列腕共振子S51、直列腕共振子S52、直列腕共振子S53、直列腕共振子S54及び弾性波装置1が互いに直列に接続されている。本実施形態では、弾性波装置1は直列腕共振子である。
【0074】
直列腕共振子S51と直列腕共振子S52との間の接続点とグラウンド電位との間には、並列腕共振子P51が接続されている。直列腕共振子S52と直列腕共振子S53との間の接続点とグラウンド電位との間には、並列腕共振子P52が接続されている。直列腕共振子S53と直列腕共振子S54との間の接続点とグラウンド電位との間には、並列腕共振子P53が接続されている。直列腕共振子S54と弾性波装置1との間の接続点とグラウンド電位との間には、並列腕共振子P54が接続されている。
【0075】
本実施形態では、各直列腕共振子及び各並列腕共振子は弾性波共振子である。フィルタ装置52において、複数の直列腕共振子及び複数の並列腕共振子のうちの最も第1の信号端51A側に配置された弾性波共振子は弾性波装置1である。図2に示す第1のIDT電極3及び第2のIDT電極5は、ホット配線6Aにより、電極パッドとして構成された第1の信号端51Aに接続されている。もっとも、ホット配線6Aは第1の信号端51Aと一体として構成されていてもよい。なお、フィルタ装置52の回路構成は上記に限定されず、本発明に係る弾性波装置を有していればよい。例えば、弾性波装置1が、ラダー型フィルタにおける並列腕共振子として用いられていてもよい。
【0076】
フィルタ装置52は、第1の実施形態の弾性波装置1を有するため、IMDを抑制することができる。それによって、フィルタ装置52がマルチプレクサなどに用いられた場合において、フィルタ装置52と第1の信号端51A側の信号電位に共通接続される他のフィルタ装置の受信感度の劣化を抑制することができる。
【0077】
弾性波装置1は、最も第1の信号端51A側の共振子であることが好ましい。それによって、信号電位に共通接続される他のフィルタ装置の受信感度の劣化を効果的に抑制することができる。なお、弾性波装置1は、必ずしも最も第1の信号端51A側の共振子ではなくともよい。
【0078】
図17は、第4の実施形態の変形例に係るフィルタ装置の模式的回路図である。
【0079】
本変形例は、最も第1の信号端51A側の共振子として第2の実施形態の弾性波装置31が用いられている点において、第4の実施形態と異なる。本変形例においては、図12に示す第1のIDT電極3及び第2のIDT電極5は、ホット配線6Aにより、直列腕共振子S54に接続されている。なお、第2のIDT電極5は、並列腕共振子P54を構成しているIDT電極にも接続されている。より具体的には、並列腕共振子P54を構成しているIDT電極の一対のバスバーのうちの一方のバスバーに、ホット配線により、第2のIDT電極5の第4のバスバー17が接続されている。第1のIDT電極3及び第2のIDT電極5は、直列腕共振子S54、直列腕共振子S53、直列腕共振子S52及び直列腕共振子S51を介して第2の信号端51B側の信号電位に間接的に接続される。本変形例においても、第4の実施形態と同様に、IMDを抑制することができる。
【0080】
第4の実施形態及びその変形例においては、第1の実施形態及び第2の実施形態の弾性波装置を用いた例を示した。もっとも、第3の実施形態などの本発明に係る別の形態の弾性波装置を用いた場合においても、第4の実施形態と同様に、IMDを抑制することができる。上記においては、本発明に係る弾性波装置が直列腕共振子として用られている例を示したが、本発明に係る弾性波装置は並列腕共振子として用いられてもよい。
【0081】
図18は、第5の実施形態に係るデュプレクサの模式図である。
【0082】
デュプレクサ60は、第1のフィルタ装置62A及び第2のフィルタ装置62Bを有する。第1のフィルタ装置62Aは送信フィルタであり、かつ第4の実施形態のフィルタ装置である。第2のフィルタ装置62Bは受信フィルタである。もっとも、デュプレクサ60においては、少なくとも送信フィルタが本発明に係るフィルタ装置であればよい。
【0083】
デュプレクサ60は信号端子61Aを有する。信号端子61Aはアンテナに接続されるアンテナ端子である。信号端子61Aは、電極パッドとして構成されていてもよく、配線として構成されていてもよい。
【0084】
第1のフィルタ装置62A及び第2のフィルタ装置62Bは、信号端子61Aに共通接続されている。デュプレクサ60の通信バンドはBand25である。第1のフィルタ装置62Aの通過帯域は1850~1915MHzである。第2のフィルタ装置62Bの通過帯域は1930~1995MHzである。もっとも、デュプレクサ60の通信バンドは上記に限定されない。
【0085】
デュプレクサ60では、第1のフィルタ装置62Aにおいて、IMDを抑制することができる。それによって、第1のフィルタ装置62Aと信号端子61Aに共通接続された第2のフィルタ装置62Bの受信感度の劣化を抑制することができる。
【0086】
図19は、第6の実施形態に係るマルチプレクサの模式図である。
【0087】
マルチプレクサ70は、第1のフィルタ装置72A、第2のフィルタ装置72B、第3のフィルタ装置72C及び第4のフィルタ装置72Dを有する。第1のフィルタ装置72A及び第3のフィルタ装置72Cは第4の実施形態のフィルタ装置である。もっとも、マルチプレクサ70は、本発明に係るフィルタ装置を少なくとも1つ有していればよい。例えば、第1のフィルタ装置72A、第2のフィルタ装置72B、第3のフィルタ装置72C及び第4のフィルタ装置72Dが本発明に係るフィルタ装置であってもよい。
【0088】
マルチプレクサ70は、第1のフィルタ装置72A、第2のフィルタ装置72B、第3のフィルタ装置72C及び第4のフィルタ装置72D以外の複数のフィルタ装置も有する。マルチプレクサ70が有するフィルタ装置の個数は特に限定されない。
【0089】
マルチプレクサ70は信号端子61Aを有する。信号端子61Aはアンテナに接続されるアンテナ端子である。第1のフィルタ装置72A、第2のフィルタ装置72B、第3のフィルタ装置72C、第4のフィルタ装置72D及び他の複数のフィルタ装置は、信号端子61Aに共通接続されている。
【0090】
本実施形態においては、マルチプレクサ70の通信バンドは、Band25及びBand66を含む。第1のフィルタ装置72AはBand25の送信フィルタである。第2のフィルタ装置72BはBand25の受信フィルタである。第3のフィルタ装置72CはBand66の送信フィルタである。第4のフィルタ装置72DはBand66の受信フィルタである。第1のフィルタ装置72Aの通過帯域は1850~1915MHzである。第2のフィルタ装置72Bの通過帯域は1930~1995MHzである。第3のフィルタ装置72Cの通過帯域は1710~1780MHzである。第4のフィルタ装置72Dの通過帯域は2110~2200MHzである。もっとも、マルチプレクサ70の通信バンドは上記に限定されない。
【0091】
上記のように、マルチプレクサ70における送信フィルタである第1のフィルタ装置72A及び第3のフィルタ装置72Cは、第4の実施形態のフィルタ装置である。なお、本発明に係るフィルタ装置は送信フィルタであってもよく、受信フィルタであってもよい。マルチプレクサ70は、少なくとも1つの受信フィルタを有していればよい。
【0092】
従来においては、Band25及びBand66の送信帯域における信号を送信するときに、アンテナから妨害波信号を受信すると、3次IMDが生じ、Band25及びBand66の受信帯域において受信感度が劣化することがあった。
【0093】
これに対して、マルチプレクサ70では、第1のフィルタ装置72A及び第3のフィルタ装置72Cにおいて、第4の実施形態と同様に、IMDを抑制することができる。それによって、第2のフィルタ装置72B及び第4のフィルタ装置72Dの受信感度の劣化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0094】
1…弾性波装置
2…圧電性基板
3…第1のIDT電極
3A…第1のIDT
4A,4B…反射器
5…第2のIDT電極
5A…第2のIDT
6A…ホット配線
6B…グラウンド配線
7…高音速支持基板
8…低音速膜
9…圧電体層
11A…アンテナ端子
11B…信号端子
12,13…第1,第2のバスバー
14,15…第1,第2の電極指
16,17…第3,第4のバスバー
18,19…第3,第4の電極指
22A~22D…圧電性基板
26…支持基板
27…高音速膜
31,41…弾性波装置
45…第2のIDT電極
45A…第2のIDT
46,47…第3,第4のバスバー
48,49…第3,第4の電極指
51A,51B…第1,第2の信号端
52…フィルタ装置
60…デュプレクサ
61A…信号端子
62A,62B…第1,第2のフィルタ装置
70…マルチプレクサ
72A~72D…第1~第4のフィルタ装置
101,111…弾性波装置
A…第1の交叉領域
B,C…第2の交叉領域
P51~P54…並列腕共振子
S51~S54…直列腕共振子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19