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特許7416081発電機及び当該発電機を備える航空機用多軸式ガスタービンエンジン
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  • 特許-発電機及び当該発電機を備える航空機用多軸式ガスタービンエンジン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】発電機及び当該発電機を備える航空機用多軸式ガスタービンエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02C 6/00 20060101AFI20240110BHJP
   F01D 15/10 20060101ALI20240110BHJP
   H02K 7/18 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F02C6/00 B
F01D15/10 A
H02K7/18 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021550327
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2020023990
(87)【国際公開番号】W WO2021065100
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2019179771
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】関 直喜
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06378293(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0252769(US,A1)
【文献】特開2006-144788(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0327589(US,A1)
【文献】特開2008-151122(JP,A)
【文献】米国特許第05376827(US,A)
【文献】英国特許出願公告第1141001(GB,A)
【文献】米国特許第5867979(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0316486(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 15/10
F02C 6/00
F02C 7/00
H02K 7/18
H02K 21/14
H02P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機用多軸式ガスタービンエンジンに搭載される発電機であって、
前記ガスタービンエンジン内の低圧軸用軸受によって回転可能に支持される低圧軸の後端部に取り付けられる回転子と、
前記回転子の周りに設けられる固定子と、
を備え、
前記低圧軸及び前記回転子を支持する構造を持たない、
発電機。
【請求項2】
前記固定子は、前記低圧軸の撓みによる前記回転子の位置ずれを許容する距離だけ前記回転子から離れている、
請求項1に記載の発電機。
【請求項3】
前記回転子は、その回転中心に前記低圧軸が挿通された状態で、前記低圧軸に取り付けられる、
請求項1に記載の発電機。
【請求項4】
前記回転子は周方向に配列する複数の磁石を含み、
前記固定子は帯状電線からなる多層巻線を含む、
請求項1~3のうちの何れか一項に記載の発電機。
【請求項5】
前記回転子は、前記低圧軸の前記後端部に直結している、
請求項1~4のうちの何れか一項に記載の発電機。
【請求項6】
前記回転子を挟持する一対の締結部材を更に備え、
前記一対の締結部材のうちの第1の締結部材は、前記軸受と前記回転子の間で前記低圧軸に摺動可能に装着された環状部材であり、
前記一対の締結部材のうちの第2の締結部材は、前記第の締結部材向けて前記回転子を押すように前記低圧軸に螺合する、
請求項1~5のうちの何れか一項に記載の発電機。
【請求項7】
前記回転子は、前記低圧軸の前記後端部が挿通される挿通孔を有し、
前記挿通孔の内面の少なくとも一部には、前記低圧軸と前記回転子の間のぐらつきを規制する嵌合面を有する、
請求項1~6のうちの何れか一項に記載の発電機。
【請求項8】
請求項1~7のうちの何れか一項に記載の発電機を備える航空機用多軸式ガスタービンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電機及び当該発電機を備える航空機用多軸式ガスタービンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機用ガスタービンエンジンは、コンプレッサ及びタービン等の推進機構に加え、機体の電気系統に電力を供給するための発電機を搭載している。発電機は、ファンケースまたはコンプレッサケースの近傍に設けられたアクセサリ・ギアボックス(AGB: Accessory-drive Gearbox)に収容されている。発電機には数十~数百kW程度の出力が要求される。また、界磁巻線(電磁石)を回転子として備える同期発電機が多用されている。
【0003】
多軸式ガスタービンエンジンは、コンプレッサおよびタービンを複数段備えている。このエンジンにおいて、発電機は、高圧コンプレッサと高圧タービンを連結する高圧軸(高圧スプール)に、ギアボックス及びドライブシャフト等を介して接続されている。高圧軸の回転エネルギーの一部は、このギアボックス等を介して発電機に伝達され、これにより発電機は駆動される。
【0004】
近年では、航空機の電動化(MEA: More Electric Aircraft)等からの要請に伴い、機内の電力需要が増大している。そのため、これまで一般的であった高圧軸からの抽出力を利用する発電方式だけでなく、低圧コンプレッサと低圧タービンとを連結する低圧軸(低圧スプール)からの抽出力を利用する発電方式も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-153013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、電力需要は今後も益々増大することが予想され、発電機も数十~数百kW程度の出力をもつ必要がある。最大出力の増大に伴い、発電機は必然的に大型化する。回転子も大型になり、その重量も増加するため、回転子は軸受等によって支持する必要がある。従って、回転子は、軸受によって軸方向の移動が制限されることになる。
【0007】
低圧軸は、エンジン内で複数の軸受により支持されている。低圧軸の後端側は、ころ軸受等によって支持され、軸方向の伸縮が許容されている。従って、特許文献1のように、発電機を低圧軸に取り付ける場合には、この伸縮を許容するスプライン等の機構が必要になる。しかしながら、低圧軸は、その回転時のバランスを維持するように極めて精巧に設計されている。従って、発電機を低圧軸に接続する場合は、低圧軸の回転動作との干渉を極力回避する必要がある。
【0008】
本開示は、上述の事情を鑑みて成されたものであり、航空機用多軸式ガスタービンエンジンの低圧軸の動作に干渉することなく、当該低圧軸によって駆動される発電機及び当該発電機を備える航空機用多軸式ガスタービンエンジンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様は航空機用多軸式ガスタービンエンジンに搭載される発電機であって、前記ガスタービンエンジン内の低圧軸用軸受によって回転可能に支持される低圧軸の後端部に取り付けられる回転子と、前記回転子の周りに設けられる固定子と、を備え、前記低圧軸及び前記回転子を支持する構造を持たないことを要旨とする。
【0010】
前記固定子は、前記低圧軸の撓みによる前記回転子の位置ずれを許容する距離だけ前記回転子から離れていてもよい。前記回転子は、その回転中心に前記低圧軸が挿通された状態で、前記低圧軸に取り付けられていてもよい。前記回転子は周方向に配列する複数の磁石を含み、前記固定子は帯状電線からなる多層巻線を含んでもよい。前記回転子は、前記低圧軸の前記後端部が挿通される挿通孔を有してもよく、前記挿通孔の内面の少なくとも一部には、前記低圧軸と前記回転子の間のぐらつきを規制する嵌合面を有してもよい。
【0011】
本開示の第2の態様は、第1の態様に係る発電機を備える航空機用多軸式ガスタービンエンジンである。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、航空機用多軸式ガスタービンエンジンの低圧軸の動作に干渉することなく、当該低圧軸によって駆動される発電機及び当該発電機を備える航空機用多軸式ガスタービンエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の実施形態に係る発電機を搭載する航空機用ガスタービンエンジンの構成図である。
図2図2は、本開示の実施形態に係る航空機用ガスタービンエンジンのブロック図である。
図3図3は、本開示の実施形態に係る発電機とその周囲を示す拡大図である。
図4図4は、図3のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態に係る発電機について添付図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0015】
本実施形態に係る航空機用ガスタービンエンジンは、例えば、ターボファンエンジン、ターボジェットエンジン、ターボプロップエンジン、ターボシャフトエンジン、などが挙げられる。また、本実施形態に係るガスタービンエンジンは、コンプレッサおよびタービンを複数段備える多軸式のガスタービンエンジンである。以下の説明では航空機用多軸式ガスタービンエンジンとしてターボファンエンジンを例に挙げ、説明の便宜上、単にエンジンと称する。
【0016】
図1は本実施形態に係る発電機30を搭載するエンジン10の構成図である。図2はエンジン10のブロック図である。図1に示すように、エンジン10は二軸式のターボファンエンジンである。エンジン10は、ファン11と、低圧コンプレッサ12と、高圧コンプレッサ13と、燃焼室14と、高圧タービン15、低圧タービン16とを備える。
【0017】
低圧コンプレッサ12と低圧タービン16は、低圧軸(低圧スプール)17を介して連結され、高圧コンプレッサ13と高圧タービン15は、高圧軸(高圧スプール)18を介して連結されている。なお、本実施形態に係るエンジンは、中圧コンプレッサ(図示せず)と、中圧タービン(図示せず)と、これらを連結する中圧軸(中圧スプール、図示せず)を更に備える三軸式のものでもよい。何れの場合も、本実施形態に係る発電機30はテールコーン19内に設置され、低圧軸17によって駆動される。
【0018】
エンジン10の基本的な構成及び動作(即ち、気体の圧縮、燃焼、圧力エネルギーから運動(回転)エネルギーへの変換など)は、従来のものと同一である。即ち、ファン11は気体(作動流体)を吸入し、後方へ排出する。ファン11を通過した気体の一部は、コア流路20を介して低圧コンプレッサ12に流入する。低圧コンプレッサ12は、ファン11から流入した気体を圧縮し、高圧コンプレッサ13に排出する。高圧コンプレッサ13は、低圧コンプレッサ12によって圧縮された気体を更に圧縮し、燃焼室14に供給する。
【0019】
燃焼室14は、高圧コンプレッサ13によって圧縮された気体と燃料との混合ガスを燃焼し、高圧タービン15に排出する。燃焼ガスは、高圧タービン15を通過する間に膨張しつつ、高圧タービン15を回転させる。この回転エネルギーが高圧軸18を介して、高圧コンプレッサ13に伝達され、高圧コンプレッサ13が回転する。
【0020】
高圧タービン15を通過した燃焼ガスは、低圧タービン16を通過する間に更に膨張しつつ、低圧タービン16を回転させる。この回転エネルギーが低圧軸17を介して低圧コンプレッサ12及びファン11に伝達され、低圧コンプレッサ12及びファン11が回転する。低圧タービン16を通過した燃焼ガスは、ダクト21を経てエンジン10の外部に排出される。
【0021】
高圧軸18は、エンジン10内に設けられた軸受22、22によって回転可能に支持されている。図2に示すように、高圧軸18の前端にはインターナル・ギアボックス23が設置されている。インターナル・ギアボックス23は複数のギア(図示せず)によって構成され、高圧軸18の回転エネルギーの一部を抽出する。抽出された回転エネルギーは、ドライブシャフト24等を介して、アクセサリ・ギアボックス(以下AGB: Accessory Gear Box)25に伝達される。
【0022】
AGB25はファンケース27またはコンプレッサケース43の近傍に設置され、燃料ポンプ、スタータ等の補機(図示せず)を収容している。また、AGB25は発電機26も収容している。発電機26は、エンジン専用の発電機であるオルタネータと、その他全体の電力を賄うジェネレータとによって構成され、何れもドライブシャフト24を介して伝達された高圧軸18の回転エネルギーによって駆動される。
【0023】
低圧軸17は、エンジン10内に設けられた軸受28、29によって回転可能に支持されている。軸受28はエンジン10内の前方に設けられ、例えばファン11と低圧コンプレッサ12の間に位置する。軸受28は玉軸受(ボールベアリング)であり、低圧軸17の軸方向の移動を規制する。一方、軸受29はエンジン10内の後方に設けられ、低圧タービン16の後方に位置する。軸受29はころ軸受(ローラベアリング)であり、低圧軸17の軸方向の移動を許容する。つまり、低圧軸17は、熱膨張による伸長が許容された状態で、回転可能に支持されている。
【0024】
図1に示すように、テールコーン19には発電機30が収容されている。発電機30は低圧軸17に接続し、低圧軸17の回転エネルギーによって駆動され、機体及びエンジン10の少なくとも一方に電力を供給する。以下、この発電機30について説明する。
【0025】
図3は、発電機30とその周囲を示す拡大図である。図4は、図3のA-A断面図である。これらの図に示すように、発電機30は、回転子31と、固定子32とを備えている。本実施形態の発電機30は同期発電機であり、磁界の発生源(界磁)は回転子31である。
【0026】
回転子31は、その回転中心(即ち中心軸Z)に低圧軸17が挿通された状態で、低圧軸17の後端部17aに取り付けられている。換言すれば、回転子31は、上述の状態で、低圧軸17の後端部17aに取り付け可能に設けられている。低圧軸17の後端部17aの最後部は回転子31よりも後方に位置し、この最後部には例えば後述の締結部材38が取り付けられる。回転子31は、低圧軸17の後端部17aに直結しており、低圧軸17と共に同一の速度で一体的に回転する。
【0027】
発電機30は、軸受等のように、低圧軸17及び回転子31を支持する構造を持たない。換言すれば、発電機30は、回転子31と、固定子32との間隔を規定する機構を持たない。つまり、低圧軸17に取り付けられた回転子31の位置は、エンジン10内にある低圧軸17の軸受29によって維持されている。
【0028】
回転子31は、回転子コア(芯材)33と、複数の磁石34と、リテーニングスリーブ35とを備えている。回転子コア33は、強磁性の金属部材であり、中心軸Zに沿って延伸する筒状に形成されている。また、回転子コア33は、中心軸Zを中心とし、中心軸Zに沿って延伸する挿通孔36を有する。挿通孔36には、低圧軸17の後端部17aが挿通される。
【0029】
挿通孔36の内面36aは、少なくとも一部に、低圧軸17の後端部17aとの嵌合面36bを有する。嵌合面36bは、中心軸Zの全周に亘る環状に形成され、低圧軸17が挿通孔36に挿通されたときの低圧軸17と回転子31の間のぐらつき(即ち両者間の軸ずれ及び傾斜)を規制する。従って、嵌合面36bの直径(内径)は、当該嵌合面36bに対向する低圧軸17の後端部17aの直径(外径)に略等しく、その値は回転子31の装着時に摩擦が生じる程度の値に設定される。
【0030】
回転子31は、例えば、一対の締結部材37、38の挟持によって、低圧軸17に取り付けられる。締結部材37は摺動可能に低圧軸17に装着される環状部材である。締結部材37は、軸受29と回転子31の間に位置する。締結部材38は、低圧軸17の後方から低圧軸17に螺合される環状部材である。締結部材38は、螺合が進むに従って軸受29に接近する。この接近に伴い、締結部材37と回転子31は軸受29に向けて押される。締結部材38の更なる螺合により、締結部材37は、軸受29の内輪に当接する。この当接により、締結部材37と回転子31の移動が規制され、その結果、回転子31は締結部材37と締結部材38の間で挟持され、その位置が保持される。
【0031】
複数の磁石34は、回転子コア33の外周に設置される。複数の磁石34は、極性を交互に変えながら、周方向CDに配列している。各磁石34は、十分な磁力と高い機械的強度を有するものが好ましい。このような特性を有する磁石34は、例えば、ネオジム磁石またはサマリウムコバルト磁石のような永久磁石である。但し、磁石34はネオジム磁石またはサマリウムコバルト磁石に限られず、所望の磁力及び機械的強度等を満たすものであればよい。
【0032】
リテーニングスリーブ35は、非磁性金属の環状部材である。リテーニングスリーブ35は、その剛性によって、磁石34を外側から保持する。従って、リテーニングスリーブ35は、回転子コア33に対する磁石34の相対的な位置を維持する寸法(内径)を有する。
【0033】
固定子32は回転子31の周りに設けられる。固定子32は、低圧軸17の撓みによる回転子31の位置ずれを許容する距離Dだけ回転子31から離れている。換言すれば、固定子32と回転子31の互いの対向面は、径方向RDにおいて距離Dだけ離れている。この距離Dの値は主に低圧軸17の寸法及び材質を考慮して設定され、本実施形態では例えば4mm程度である。
【0034】
固定子32は、当該固定子32を収容するケーシング(ハウジング)39内に保持されている。ケーシング39は、固定子32に対して相対的に移動することの無いエンジン10の所定の部材に取り付けられている。
【0035】
固定子32は、固定子コア40と、多層巻線41とを備えている。固定子コア40は、複数の磁極40aと、複数の磁極40aを磁気的に結合するヨーク40bとを有する。複数の磁極40aは、中心軸Zを起点として放射状に(径方向RDに)延伸し、且つ、中心軸Zに沿って延伸する。また、各磁極40aは、周方向CDに一定の角度間隔をおいて配列している。ヨーク40bは、複数の磁極40aを囲む中空の筒状に形成され、各磁極40aを支持すると共にこれらを磁気的に結合する。
【0036】
多層巻線41は、互いに隣接する2つの磁極40a、40aの間の空間42に設置される。本実施形態の多層巻線41は径方向RDに積層した帯状電線からなる。帯状電線は例えば断面矩形の平角線である。帯状電線の積層は占積率を向上させる。なお、多層巻線41は固定子32内を流通する冷却油によって冷却されている。
【0037】
上述の通り、発電機30は回転子31を支持する構造を持たない。また、回転子31と低圧軸17の直結によって、低圧軸17と発電機30との間に、クラッチや定速駆動制御装置などの装置が介在しない。従って、発電機30は、低圧軸17の動作(即ち伸縮及び回転)に干渉することなく、低圧軸17によって駆動される。また、スプライン又はジョイントなどによる接続構造が不要なため、このような接続構造の寿命が十分確保できない問題を根本的に回避することができる。
【0038】
また、回転子31の支持は、通常設置されている、エンジン10内の低圧軸17の軸受29が担っている。換言すれば、軸受などの回転子31の支持構造が、新たに付加されることはない。また、上述の通り、定速駆動制御装置などの装置も介在しない。つまり、本実施形態は、低圧軸17に対して相対的に異なる速度で低圧軸17に接触する構造(装置)を付加しない。つまり、低圧軸17の回転に干渉する機械的な構造(装置)が存在しないため、エンジン10の信頼性(安全性)を確保しつつ、増大する電力需要に応えることができる。
【0039】
回転子31は、その回転中心に低圧軸17が挿通された状態で、低圧軸17に取り付けられている。従って、発電機30の設置によるエンジン10の全長の過大な増加を回避できる。例えば、テールコーン19の寸法(長さ)の過大な増加を抑制でき、テールコーン19の大幅な設計変更を回避できる。
【0040】
回転子31を支持する低圧軸17は、エンジン10の動作時(即ち低圧軸17の回転時)に撓み、この撓みに伴って回転子31の位置がずれる。つまり、この撓みによって、回転子31が固定子32に接触するおそれがある。しかしながら、回転子31と固定子32の間の距離Dは、この撓みに伴う回転子31の位置ずれを許容する値に設定されている。従って、エンジン10の動作時における回転子31と固定子32の互いの衝突と、この衝突による発電機30の破損を防止できる。
【0041】
距離Dは、低圧軸17の撓みを無視した場合に想定される回転子31と固定子32の間の距離よりも大きい。一方、本実施形態では、固定子32の多層巻線41に帯状電線を採用し、これを積層させることで占積率を高めている。つまり、占積率を向上させることにより、この距離の増加による磁気抵抗の増加と発電効率の低下を補償している。換言すれば、限られた空間の中で高い起磁力を確保し、大きなすき間があっても十分なトルクを発生させ、高い発電効率を得ることができる。
【0042】
なお、発電機30は、上述のようにAGB25内の発電機26と併用してもよく、発電機26を省略して単独で用いてもよい。発電機30と発電機26を併用する場合は、両者の大型化が抑制されるため、AGB25内の動力損失の拡大を抑制しつつ、増大する電力需要に応えることができる。発電機30を単独で用いる場合は、発電機26の省略によるエンジン10の総重量の軽減を図ることができる。
【0043】
なお、本開示は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
図1
図2
図3
図4