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特許7416097樹脂シート積層体および保護フィルムセット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】樹脂シート積層体および保護フィルムセット
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240110BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240110BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B7/023
G02C7/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022002654
(22)【出願日】2022-01-11
(65)【公開番号】P2022153257
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2021055667
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】大矢 裕
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌弘
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-175672(JP,A)
【文献】特開2020-026103(JP,A)
【文献】特開平09-176586(JP,A)
【文献】特開2012-212120(JP,A)
【文献】特開2010-069760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 53/04
C09J 7/29
C09J 7/38
C09J 123/00
G02B 5/22
G02B 5/30
G02C 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する透光性樹脂シートと、該透光性樹脂シートの両面に、それぞれ、剥離可能に積層された保護フィルムとを有し、
一方の前記保護フィルムは、遮光性材料を含有し、遮光性を備え、
他方の前記保護フィルムと前記透光性樹脂シートとのうちの少なくとも片方が前記遮光性材料とは異なる色に着色されていることを特徴とする樹脂シート積層体。
【請求項2】
前記遮光性材料は、白色の遮光性材料であり、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、亜鉛華、鉛白、硫化亜鉛、アンチモン白およびリトポンのうちの少なくとも1種である請求項に記載の樹脂シート積層体。
【請求項3】
一方の前記保護フィルムは、その全光線透過率が80%以下である請求項1または2に記載の樹脂シート積層体。
【請求項4】
他方の前記保護フィルムが前記遮光性材料とは異なる色に着色されている請求項1ないしのいずれか1項に記載の樹脂シート積層体。
【請求項5】
前記透光性樹脂シートは、前記保護フィルムを剥離させた状態で、アイウエアが備える透光性カバー部材として使用される請求項1ないしのいずれか1項に記載の樹脂シート積層体。
【請求項6】
透光性を有する透光性樹脂シートの両面に、それぞれ、剥離可能に積層される一対の保護フィルムを備える保護フィルムセットであって、
一方の面に積層される前記保護フィルムは、遮光性材料を含有し、遮光性を備え、
他方の面に積層される前記保護フィルムは、透光性を有し、前記遮光性材料とは異なる色に着色されていない前記透光性樹脂シートに積層するときには、前記遮光性材料とは異なる色に着色されているものが選択されることを特徴とする保護フィルムセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シート積層体および保護フィルムセットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、視野のコントラストを高めたり、防眩等の目的で、偏光機能を有する透光性樹脂シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。この透光性樹脂シートは、眼鏡およびサングラスや、サンバイザー等のアイウエアに貼着して用いられる。
【0003】
この透光性樹脂シートとして、偏光子で構成された偏光層と、この偏光層を被覆して設けられた樹脂層とを備え、前記樹脂層が、主としてポリカーボネート樹脂で構成され、偏光層の遅相軸が偏光層の吸収軸とほぼ同一の方向に配置されているものを用いることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、かかる構成の透光性樹脂シートは、アイウエアが備えるレンズの一方の面に対して、貼着した状態で用いられる。
【0005】
したがって、この透光性樹脂シートは、アイウエアの装着者に視認される景色の視認品位を保つために、縦横方向および上下(表裏)方向の双方において、誤ることなく、レンズに対して貼着されることが求められる。そのため、透光性樹脂シートは、レンズの形状に裁断される前には、一般的に、縦横方向が判別可能なように、長尺シートとして構成されている。そして、上下方向が判別可能なように、例えば、特許文献3では、透光性樹脂シート(長尺シート)の上面(表面)および下面(裏面)に、互いに反射率が異なる剥離可能な保護フィルムが積層されている。
【0006】
しかしながら、この場合、上面および下面に積層された保護フィルムに光を反射させて、上下方向を判別する必要があり、上下方向の判別にひと手間を有することから、上面および下面において視認される色調の違いにより、上下方向の判別を容易に実施することができる、さらに使い勝手に優れた保護フィルムの開発が求められているのが実情であった。
【0007】
なお、このような問題は、上述した、サングラスおよび眼鏡等のアイウエアが有するレンズに設けられた透光性樹脂シートに積層される保護フィルムばかりでなく、ヘッドアップディスプレイ装置が備える出射窓(透光性樹脂シート)や、スマートフォン、PC用ディスプレイ、カーナビゲーションシステムおよびセンターインフォメーションディスプレイ等が備える表示部(透光性樹脂シート)に積層される保護フィルムについても同様に生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO2014/115705
【文献】特開2017-116882号公報
【文献】特開2020-26103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、透光性樹脂シートの上面と下面との両面に、それぞれ、保護フィルムを積層した状態で、透光性樹脂シートの上下方向を上面と下面との色調の違いに基づいて判別可能な樹脂シート積層体、および、かかる樹脂シート積層体を作製することができる保護フィルムセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記(1)~()に記載の本発明により達成される。
(1) 透光性を有する透光性樹脂シートと、該透光性樹脂シートの両面に、それぞれ、剥離可能に積層された保護フィルムとを有し、
一方の前記保護フィルムは、遮光性材料を含有し、遮光性を備え、
他方の前記保護フィルムと前記透光性樹脂シートとのうちの少なくとも片方が前記遮光性材料とは異なる色に着色されていることを特徴とする樹脂シート積層体。
【0012】
) 前記遮光性材料は、白色の遮光性材料であり、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、亜鉛華、鉛白、硫化亜鉛、アンチモン白およびリトポンのうちの少なくとも1種である上記()に記載の樹脂シート積層体。
【0013】
) 一方の前記保護フィルムは、その全光線透過率が80%以下である上記(1)または(2)に記載の樹脂シート積層体。
【0014】
) 他方の前記保護フィルムが前記遮光性材料とは異なる色に着色されている上記(1)ないし()のいずれかに記載の樹脂シート積層体。
【0015】
) 前記透光性樹脂シートは、前記保護フィルムを剥離させた状態で、アイウエアが備える透光性カバー部材として使用される上記(1)ないし()のいずれかに記載の樹脂シート積層体。
【0016】
) 透光性を有する透光性樹脂シートの両面に、それぞれ、剥離可能に積層される一対の保護フィルムを備える保護フィルムセットであって、
一方の面に積層される前記保護フィルムは、遮光性材料を含有し、遮光性を備え、
他方の面に積層される前記保護フィルムは、透光性を有し、前記遮光性材料とは異なる色に着色されていない前記透光性樹脂シートに積層するときには、前記遮光性材料とは異なる色に着色されているものが選択されることを特徴とする保護フィルムセット。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、透光性樹脂シートの上面と下面との両面に、それぞれ、保護フィルムが積層された樹脂シート積層体において、一方の保護フィルムが遮光性を備え、かつ、他方の保護フィルムと透光性樹脂シートとのうちの少なくとも片方が着色されている。したがって、樹脂シート積層体における上面と下面との色調の異なりに基づいて、透光性樹脂シートの上面と下面との両面に、それぞれ、保護フィルムを積層した状態で、樹脂シート積層体における上面と下面とを、判別することができることから、結果的に、透光性樹脂シートの上下方向を判別し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の樹脂シート積層体が備える透光性樹脂シートを、レンズに貼着して備える眼鏡の斜視図である。
図2図1に示す眼鏡が備える、透光性樹脂シートが貼着されたレンズの実施形態を示す部分拡大縦断面図である。
図3図2中の透光性樹脂シートの拡大断面図である。
図4図3に示す透光性樹脂シートに保護フィルムが積層された樹脂シート積層体を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の樹脂シート積層体および保護フィルムセットを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、本明細書中における主材料とは、各フィルム(各層)において、50重量%以上含まれている構成材料のことを指し、例えば、「背面層は、その主材料として熱可塑性樹脂を含有している。」とは、背面層の総重量を100重量%とした場合、背面層に含まれる熱可塑性樹脂が50重量%以上を、背面層において占めていることを指す。
【0020】
まず、本発明の樹脂シート積層体および保護フィルムセットを説明するのに先立って、本発明の樹脂シート積層体が備える透光性樹脂シートを、透光性カバー部材としてレンズに貼着して備える眼鏡(アイウエア)について説明する。
【0021】
<眼鏡>
図1は、本発明の樹脂シート積層体が備える透光性樹脂シートを、レンズに貼着して備える眼鏡の斜視図である。図2は、図1に示す眼鏡が備える、透光性樹脂シートが貼着されたレンズの実施形態を示す部分拡大縦断面図である。図3は、図2中の透光性樹脂シートの拡大断面図、図4は、図3に示す透光性樹脂シートに保護フィルムが積層された樹脂シート積層体を示す拡大断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1において、眼鏡を装着者の頭部に装着した際に、レンズの装着者の目側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面と言う。また、図2図4中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。また、図3図4中では、理解を容易にするため、カバー部材を平坦な状態で図示するとともに、厚さ方向を誇張して模式的に図示している。
【0022】
眼鏡100は、図1に示すように、フレーム20と、レンズ30と、透光性樹脂シート10とを備えている。
【0023】
なお、本明細書中において、「レンズ」とは、集光機能を有するものと、集光機能を有していないものとの双方を含むこととする。
【0024】
フレーム20は、装着者の頭部に装着され、レンズ30を装着者の目の前方近傍に配置させるためのものである。
【0025】
このフレーム20は、リム部25と、ブリッジ部26と、テンプル部23と、ノーズパッド部24とを有している。
【0026】
リム部25は、リング状をなし、右目および左目にそれぞれ対応して1つずつ設けられており、内側にレンズ30が装着される。これにより、装着者は、レンズ30を介して、外部の情報を視認することができる。
【0027】
また、ブリッジ部26は、棒状をなし、装着者の頭部に装着された際に、装着者の鼻の上部の前方に位置して、一対のリム部25を連結する。
【0028】
テンプル部23は、つる状をなし、各リム部25のブリッジ部26が連結されている位置の反対側における縁部に連結されている。このテンプル部23は、装着者の頭部に装着する際に、装着者の耳に掛けられる。
【0029】
ノーズパッド部24は、眼鏡100を装着者の頭部に装着する際に、各リム部25における装着者の鼻に対応する縁部に設けられ、装着者の鼻に当接し、このとき装着者の鼻の当接部に対応した形状をなしている。これにより、装着状態を安定的に維持することができる。
【0030】
フレーム20を構成する各部の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種金属材料や、各種樹脂材料等を用いることができる。なお、フレーム20の形状は、装着者の頭部に装着することができるものであれば、図示のものに限定されない。
【0031】
レンズ30は、各リム部25に、それぞれ装着されている。このレンズ30は、光透過性を有し、外側に向って湾曲した板状をなす部材である。
【0032】
レンズ30の構成材料としては、光透過性を有していれば、特に限定されないが、例えば、各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のような各種硬化性樹脂等の各種樹脂材料や、各種ガラス材料および各種結晶材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
また、ガラス材料としては、例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
また、結晶材料としては、例えば、サファイア、水晶等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
レンズ30の厚さは、特に限定されず、例えば、0.5mm以上5.0mm以下であるのが好ましく、1.0mm以上3.0mm以下であるのがより好ましい。これにより、比較的高い強度と、軽量化との両立を図ることができる。
【0037】
本実施形態では、図2に示すように、このレンズ30の外側の面、すなわち、湾曲凸面上に透光性樹脂シート10が、かかる形状に対応して湾曲形状をなして、湾曲凸面を被覆する透光性カバー部材として、貼着されている。なお、レンズ30は、実際には、湾曲した板状をなす部材であるが、図2では、平坦な板状をなす部材として記載している。
【0038】
なお、透光性樹脂シート10が貼着されたレンズ30は、眼鏡100に限らず、その形状等を適宜変更することで、サングラスやサンバイザーのような各種アイウエアが備えるレンズに貼着される透光性カバー部材に適用することができる。
【0039】
この透光性樹脂シート10は、図3に示すように、第1の樹脂層2と、第2の樹脂層3Aおよび第2の樹脂層3Bと、接合層4Aおよび接合層4Bと、ハードコート層5Aおよびハードコート層5Bとを備える積層板で構成される。以下、各層について説明する。
【0040】
第1の樹脂層2は、透光性樹脂シート10の厚さ方向の中央に位置する中間層であり、その厚さtが透光性樹脂シート10の面方向に一定の部分である。
【0041】
この第1の樹脂層2は、主としてポリビニルアルコール(PVA)樹脂で構成されている。
【0042】
第1の樹脂層2は、本実施形態では、ポリビニルアルコール樹脂に、ヨウ素や二色性染料等に代表される二色性色素で染色し、ホウ素化合物等で架橋したものとなっている。なお、この場合、第1の樹脂層2におけるポリビニルアルコール樹脂の含有量は、1%以上8%以下であるのが好ましく、2%以上5%以下であるのがより好ましい。
【0043】
また、第1の樹脂層2は、前記構成材料からなるシート材(フィルム)を加工したものとなっている。すなわち、当該シート材は、透光性樹脂シート10での第1の樹脂層2の厚さtよりも厚いシート材であり、そのシート材を厚さtとなるまで一方向に向かって延伸した延伸状態とすることにより、第1の樹脂層2が得られる。これにより、第1の樹脂層2は、その層中において、ポリビニルアルコール樹脂(高分子)が延伸した一方向に沿って配列することに起因して、偏光子として機能する偏光層となる。
【0044】
厚さtとしては、特に限定されず、例えば、0.01mm以上0.03mm以下であるのが好ましい。厚さtが0.01mm未満であると、第1の樹脂層2が偏光子としての機能が十分に発揮されないおそれがあり、また、厚さtが0.03mmを超えても、それ以上の偏光子としての機能の向上は望めない。
【0045】
第1の樹脂層2の屈折率としては、特に限定されず、例えば、1.52以上1.67以下であるのが好ましく、1.54以上1.60以下であるのがより好ましい。
【0046】
図3に示すように、第1の樹脂層2の上面21側には、第2の樹脂層3Aが配置され、下面22側には、第2の樹脂層3Bが配置されている。第2の樹脂層3Aと第2の樹脂層3Bとは、配置箇所が異なり、また第2の樹脂層3Aが金属酸化物で構成される粒子31を含むこと以外は、同じ構成であるため、以下、第2の樹脂層3Aについて代表的に説明する。
【0047】
第2の樹脂層3Aは、主としてポリカーボネート樹脂で構成されている。このポリカーボネート樹脂としては、その重量平均分子量が19000以上40000以下であるのが好ましく、19500以上35000以下であるのがより好ましい。これにより、第2の樹脂層3Aは、例えば、十分な耐衝撃性を有するものとなる。
【0048】
また、第2の樹脂層3Aは、金属酸化物の粒子31を含有するポリカーボネート樹脂のシート材を加工したものである。すなわち、当該シート材は、透光性樹脂シート10での第2の樹脂層3Aの厚さt3Aよりも厚いシート材であり、そのシート材を厚さt3Aとなるまで一方向に向かって延伸した延伸状態とすることにより、第2の樹脂層3Aが得られる。これにより、第2の樹脂層3Aは、その層中において、ポリカーボネート樹脂(高分子)が延伸した一方向に沿って配列する。これにより、第2の樹脂層3Aは、リタデーション(複屈折率×厚さ)および厚さ方向位相差(Rth)を有するものとなる。なお、例えば、リタデーションとしては、2400nm以上6000nm以下となるのが好ましく、3000nm以上5600nm以下となるのがより好ましい。
【0049】
第2の樹脂層3Aの厚さt3A(第2の樹脂層3Bの厚さt3Bについても同様)は、好ましくは0.2mm以上0.35mm以下であり、より好ましくは0.23mm以上0.30mm以下である。厚さt3Aが前記下限値未満であると、第2の樹脂層3Aが前記リタデーションを有するものとなるのが望めないおそれがあり、また、厚さt3Aが前記上限値を超えても、それ以上の機能の向上を望めないおそれがある。また、厚さt3Aと厚さt3Bとは、異なっていてもよいが、同じであるのが好ましい。厚さt3Aと厚さt3Bとが同じである場合、高温下にさらされた際、反りの発生が少ないと言う利点がある。
【0050】
このような構成の第2の樹脂層3Aと、第2の樹脂層3Aから粒子31を省略した構成の第2の樹脂層3Bとは、それぞれ、その遅相軸が第1の樹脂層2の吸収軸と同じ方向となるように配置されている。すなわち、第2の樹脂層3A(第2の樹脂層3B)中において、ポリカーボネート樹脂(高分子)が一方向に沿って配列する方向と、第1の樹脂層2中において、ポリビニルアルコール樹脂が一方向に沿って配列する方向とが同一となるように、第2の樹脂層3A(第2の樹脂層3B)は、第1の樹脂層2に対して配置されている。
【0051】
なお、「遅相軸」とは、第2の樹脂層3Aや第2の樹脂層3Bを透過する光の進む速度が遅い(位相が遅れる)方位のことであり、これと反対に、光の進む速度が速い(位相が進む)方位をその位相子の「進相軸」と言う。なお、遅相軸と吸収軸とのズレは、±5度以内までなら許容される。
【0052】
そして、透光性樹脂シート10を眼鏡100に用いた使用状態では、図3に示すように、眼鏡100の外部から照射される外光、すなわち、太陽光(自然光)OLは、透光性樹脂シート10を透過する際に、所定の偏光方向の光が透光性樹脂シート10で吸収され、残りの光OL’が装着者の眼にまで到達することとなる。これにより、太陽光OLの装着者の眼内への侵入が抑制され、よって、装着者により視認される景色の視認性の向上を図ることができるとともに、装着者の眼へのダメージの低減を図ることができる。このように透光性樹脂シート10は、眼鏡100において、偏光板としての機能を発揮する。
【0053】
また、前述したように、第1の樹脂層2の両面側にそれぞれ第2の樹脂層3Aおよび第2の樹脂層3Bが設けられている。この構成は、第1の樹脂層2の片面側に第2の樹脂層3Aまたは第2の樹脂層3Bが設けられている場合に比べて、太陽光OLを吸収する効果が増大するのに寄与する。
【0054】
第2の樹脂層3Aおよび第2の樹脂層3Bの屈折率としては、特に限定されず、例えば、1.58以上1.60以下であるのが好ましく、1.585以上1.595以下であるのがより好ましい。
【0055】
なお、第2の樹脂層3Aおよび第2の樹脂層3Bには、各種の添加剤が添加されていてもよい。この添加剤としては、特に限定されないが、例えば、顔料、染料のような着色剤、可塑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
また、図3に示すように、第2の樹脂層3Aには、金属酸化物で構成される粒子31が分散して含有されている。かかる構成の粒子31は、太陽光OLに含まれる赤外線を吸収することができるIR(Infrared Rays)カット材として機能する。これにより、例えば、炎天下において赤外線が装着者の眼内に侵入するのを抑制し得ることから、赤外線による装着者の眼へのダメージを、的確に抑制または防止することができる。
【0057】
なお、粒子31(第2の樹脂層3A)による赤外線の吸収を必要としない場合には、第2の樹脂層3Bは、粒子31の添加が省略されたものであってもよい。
【0058】
また、本実施形態では、第1の樹脂層2と第2の樹脂層3Aとは、接合層4Aを介して接合され、第1の樹脂層2と第2の樹脂層3Bとは、接合層4Bを介して接合されている。
【0059】
接合層4Aおよび接合層4Bは、それぞれ、ウレタン接着剤、エポキシ接着剤、アクリル接着剤、アクリル粘着剤等の各種接着剤または粘着剤である。これにより、各層同士の接合を確実に行なうことができ、透光性樹脂シート10は長期間の使用に耐え得るものとなる。
【0060】
接合層4Aの厚さt4A、接合層4Bの厚さt4Bとしては、特に限定されず、例えば、0.005mm以上0.02mm以下であるのが好ましく、0.006mm以上0.015mm以下であるのがより好ましい。厚さt4A、厚さt4Bが前記下限値未満であると、接着力の低下を招くことがあり、また、厚さt4A、厚さt4Bが前記上限値を超えても、それ以上の接着力の向上を望めない。また、厚さt4Aと厚さt4Bとは、異なっていてもよいが、同じであるのが好ましい。
【0061】
接合層4Aや接合層4Bの屈折率としては、特に限定されず、例えば、1.46以上1.55以下であるのが好ましく、1.461以上1.545以下であるのがより好ましい。
【0062】
さらに、第2の樹脂層3A上には、ハードコート層5Aが設けられている。これにより、比較的傷がつき易い第2の樹脂層3Aを保護することができる。なお、ハードコート層5Aは、紫外線硬化性樹脂で構成され、当該ハードコート層5Aとなるワニス状の材料を第2の樹脂層3A上に塗布して、この塗布されたものに紫外線を照射することにより硬化したものである。
【0063】
同様に、第2の樹脂層3B上にも、ハードコート層5Bが設けられている。これにより、比較的傷がつき易い第2の樹脂層3Bを保護することができる。ハードコート層5Bも、紫外線硬化性樹脂で構成され、当該ハードコート層5Bとなるワニス状の材料を第2の樹脂層3B上に塗布して、この塗布されたものに紫外線を照射することにより硬化したものである。なお、透光性樹脂シート10では、ハードコート層5Bを省略することもできる。
【0064】
ハードコート層5Aおよびハードコート層5Bを構成する紫外線硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系化合物を主成分とする紫外線硬化性樹脂、ウレタンアクリレートオリゴマーまたはポリエステルウレタンアクリレートオリゴマーを主成分とする紫外線硬化性樹脂、エポキシ系樹脂、ビニルフェノール系樹脂の群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする紫外線硬化性樹脂等が挙げられる。そして、これらの中でもアクリル系化合物を主成分とする紫外線硬化性樹脂が好ましい。これにより、各樹脂層との密着性を向上することができる。
【0065】
ハードコート層5Aの厚さt5A、ハードコート層5Bの厚さt5Bとしては、特に限定されず、例えば、0.002mm以上0.020mm以下であるのが好ましく、0.003mm以上0.015mm以下であるのがより好ましい。また、厚さt5Aと厚さt5Bとは、異なっていてもよいが、同じであるのが好ましい。
【0066】
ハードコート層5Aやハードコート層5Bの屈折率としては、特に限定されず、例えば、1.40以上1.60以下であるのが好ましく、1.450以上1.595以下であるのがより好ましい。
【0067】
以上のような構成の透光性樹脂シート10は、その総厚tが例えば0.4mm以上1.0mm以下であるのが好ましく、0.4mm以上0.8mm以下であるのがより好ましい。これにより、透光性樹脂シート10をできる限り薄いものとすることができるとともに、眼鏡100の通常の使用に耐え得る程度の剛性を有するものとすることができる。
【0068】
また、透光性樹脂シート10は、その平面視で長方形をなすものであり、縦が50mm以上200mm以下であるのが好ましく、60mm以上190mm以下であるのがより好ましく、横が100mm以上400mm以下であるのが好ましく、130mm以上380mm以下であるのがより好ましい。
【0069】
なお、以上のような各層が積層された積層板で構成される透光性樹脂シート10は、第1の樹脂層2および第2の樹脂層3A、3Bのうちの少なくとも一方が、着色剤等を含むことにより、装着者等が視認し得る程度に着色することができる。すなわち、透光性樹脂シート10は、この透光性樹脂シート10を備える眼鏡100の用途に応じて、着色されているもの、もしくは、着色されていないものが選択される。
【0070】
さて、かかる構成の透光性樹脂シート10では、前述の通り、第1の樹脂層2および第2の樹脂層3A、3Bは、それぞれ、一方向に向かって延伸した延伸状態とすることにより形成されたものである。そのため、ポリビニルアルコール樹脂およびポリカーボネート樹脂(高分子)が、それぞれ、これらの層中において、延伸した一方向(延伸方向)に沿って配列している。そして、このように各層中において、高分子が延伸方向に沿って配列することに起因して形成された、第1の樹脂層2の吸収軸と、第2の樹脂層3A、3Bの遅相軸とが、同じ方向となるように配置されている。そのため、透光性樹脂シート10は、縦横方向において誤ることなく、眼鏡100が備えるレンズ30に対して貼着されることが求められる。
【0071】
さらに、例えば、第2の樹脂層3A、3Bでは、層中におけるポリカーボネート樹脂は、厚さ方向に対しても配向性を備えた状態で、延伸方向に沿って配列しており、この厚さ方向に対する配向の度合いに応じて、厚さ方向位相差(Rth)が設定される。また、本実施形態では、第2の樹脂層3Aは、粒子31を含有し、第2の樹脂層3Bは、粒子31を含有しない構成となっている。これらのことから、透光性樹脂シート10は、眼鏡100の視認品位を一定に保つために、上下(表裏)方向においても、誤ることなく、レンズ30に対して貼着されることが求められる。なお、第2の樹脂層3Aを、粒子31を含有しない構成とした場合においても、厚さ方向位相差(Rth)に起因する、眼鏡100の視認品位を一定に保つ観点から、上下方向における誤った貼着を防止することが求められる。
【0072】
したがって、透光性樹脂シート10は、眼鏡100が備えるレンズ30の形状に対応して裁断される前、すなわち、透光性樹脂シート10の保管・輸送時には、縦横方向が判別可能なように、長尺状をなす長尺シートとして構成され、さらに、上下(表裏)方向が判別可能なように、透光性樹脂シート10(長尺シート)の上面51(表面)および下面52(裏面)に、それぞれ、剥離することが可能な保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bが積層されている(図4参照)。すなわち、透光性樹脂シート10(透光性樹脂シート)は、その裁断前には、保護フィルム150A、150Bが形成(積層)された樹脂シート積層体200とした状態で、保管および/または輸送され、さらに裁断した後に、樹脂シート積層体200から保護フィルム150A、150Bが剥離され、透光性樹脂シート10の状態とされる。
【0073】
ここで、透光性樹脂シート10の上面51(表面)および下面52(裏面)に、それぞれ、保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bを積層して、透光性樹脂シート10の上下方向を判別するための手法として、例えば、保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bを、互いに反射率が異なるものとする手法が考えられる。しかしながら、かかる手法では、上面および下面のそれぞれに積層された保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bに光を反射させて、上下方向を判別する必要があり、上下方向の判別にひと手間を要していた。
【0074】
さらに、上下方向を判別するための手法として、保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bに、それぞれ、上(裏)および下(表)のような互いに異なるマーキングを施す手法が考えられる。しかしながら、かかる手法では、透光性樹脂シート10(樹脂シート積層体200)を裁断する大きさに応じて、マーキングする位置を変更する必要性が生じ、時間と手間を要する。また、上面51および下面52にそれぞれ保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bを積層した後に、保護フィルム150A、150Bにマーキングを施す場合には、マーキング時の跡が上面51および下面52に転写されると言う問題が生じるおそれがある。
【0075】
これに対して、本発明では、上下方向を判別するための他の手法として、保護フィルム150A(一方の保護フィルム)として遮光性を備え、保護フィルム150B(他方の保護フィルム)と透光性樹脂シート10(透光性樹脂シート)とのうちの少なくとも片方が着色されているものを有する樹脂シート積層体200とする手法が用いられている。
【0076】
すなわち、樹脂シート積層体200を、透光性樹脂シート10と、この透光性樹脂シート10の両面(上面51、下面52)に、それぞれ、剥離可能に積層された保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bを備えるものとし、両面の保護フィルム150A、150Bのうち、保護フィルム150A(一方の保護フィルム)を、遮光性を有しており、保護フィルム150B(他方の保護フィルム)を、透光性を有し、着色されていない透光性樹脂シート10に積層するときには、着色されているもの(本発明の保護フィルムセット)とする手法が用いられている。なお、透光性樹脂シート10が着色されているときは、保護フィルム150Bは、着色されていても、いなくてもいずれであってもよい。
【0077】
かかる手法とすることにより、樹脂シート積層体200において、保護フィルム150A側から見たとき、保護フィルム150Aの遮光性により反射された反射光を視認することができる。また、保護フィルム150B側から見たとき、保護フィルム150A側から透過してきた透過光を、透光性樹脂シート10および保護フィルム150Bのうちの少なくとも片方を着色した色で視認することができる。すなわち、樹脂シート積層体200を、保護フィルム150A側から見たときと、保護フィルム150B側から見たときとにおいて、異なる色調で視認することができる。よって、この色調の違いに基づいて、樹脂シート積層体200における、保護フィルム150A側と保護フィルム150B側とを確実に区別し得る。したがって、保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bに光を反射させて上下の判別を実施する場合と比較して、樹脂シート積層体200(透光性樹脂シート10)の上下の判別をより容易に行うことができる。また、かかる手法によれば、保護フィルム150A、150Bに対してマーキングを施す必要もないことから、マーキングを形成するための時間と手間を要することもないし、マーキング時の跡が上面51および下面52に転写されることもない。
【0078】
このような保護フィルム150A、150Bのうち、保護フィルム150A(一方の保護フィルム)は、前述の通り、遮光性を備えている。
【0079】
これにより、樹脂シート積層体200の保護フィルム150A側では、保護フィルム150B側から保護フィルム150A側に透過する透過光を遮蔽しつつ、保護フィルム150Aの遮光性により、反射光を反射させることができる。そのため、樹脂シート積層体200を、保護フィルム150A側から見たとき、保護フィルム150B側から保護フィルム150A側に透過する透過光が混ざり合うのを的確に抑制または防止して、保護フィルム150Aの遮光性により反射された反射光を視認することができる。
【0080】
この保護フィルム150Aの遮光性は、保護フィルム150Aが遮光性材料を含有することで付与されていることが好ましい。このように、保護フィルム150Aに遮光性材料を含有させることで、遮光性を備える保護フィルム150Aとしての、前述した機能を確実に発揮させることができる。
【0081】
また、保護フィルム150Aは、その全光線透過率が80%以下であるのが好ましく、70%以下であるのがより好ましい。保護フィルム150Aが、このような遮光性を示すことで、保護フィルム150Aとしての、前述した機能をより確実に発揮させることができる。また、樹脂シート積層体200の検品の際に、樹脂シート積層体200における欠点の有無を確認すると言う観点からは、保護フィルム150Aの全光線透過率は、20%以上であるのが好ましく、35%以上であるのがより好ましい。これにより、保護フィルム150Aを透過させて、樹脂シート積層体200の表面性状を確認することができる。そのため、樹脂シート積層体200における欠点の有無を、保護フィルム150Aを介して、確実に確認することができる。
【0082】
また、保護フィルム150Aは、遮光性材料として、白色の遮光性材料を含有していることが好ましい。白色の遮光性材料は、可視光反射率の高い材料である。そのため、保護フィルム150A側から入射した光を、高い反射率で反射させ得ることから、この光が反射した反射光を、保護フィルム150A側で視認させることができる。よって、保護フィルム150B側の透過光が、たとえ、保護フィルム150Aを透過したとしても、この透過光が保護フィルム150A側で視認されるのを的確に抑制または防止することができる。すなわち、保護フィルム150A側において、白色の反射光を視認することができる。
【0083】
白色の遮光性材料としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化カルシウム、亜鉛華、鉛白、硫化亜鉛、アンチモン白、リトポン(硫酸バリウムと硫化亜鉛の混合物)、炭酸カルシウム、タルク、マイカのような白色顔料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、亜鉛華、鉛白、硫化亜鉛、アンチモン白およびリトポンであることが好ましく、酸化チタンであることがより好ましい。これらのものは、可視光反射率がより高く、特に、酸化チタンは、遮光性および耐薬品性にも優れることから、白色の遮光性材料として好ましく選択される。
【0084】
酸化チタンは、特に限定されないが、アナタース型、ブルッカイト型、ルチル型の3種類の結晶形のうち、ルチル型であることが好ましい。ルチル型の酸化チタンは、耐候性にも優れることから、白色の遮光性材料としてより好ましく用いることができる。
【0085】
遮光性材料は、粒子状をなしており、その平均粒子径は、例えば、好ましくは0.1μm以上0.4μm以下、より好ましくは0.2μm以上0.3μm以下に設定される。遮光性材料の平均粒子径を前記範囲内に設定することで、保護フィルム150Aの全光線透過率を、比較的容易に前記範囲内に設定することができる。
【0086】
また、遮光性材料は、その含有量が、保護フィルム150Aを構成する樹脂組成物において、好ましくは0.05重量%以上30重量%以下、より好ましくは0.10重量%以上10重量%以下に設定される。これにより、保護フィルム150Aの全光線透過率を、比較的容易に前記範囲内に設定することができる。
【0087】
さらに、遮光性材料の含有量は、保護フィルム150Aの平均厚さをも考慮して、遮光性材料の含有量と、保護フィルム150Aの平均厚さとの積{(遮光性材料の含有量)×(保護フィルム150Aの平均厚さ)}[重量%・μm]は、6.0以上40.0以下であることが好ましく、15.0以上30.0以下であることがより好ましい。これにより、保護フィルム150Aの全光線透過率を、より容易に前記範囲内に設定することができる。
【0088】
保護フィルム150A、150Bのうち、保護フィルム150B(他方の保護フィルム)は、前述の通り、透光性を有し、着色されていない透光性樹脂シート10に積層されているときには、着色されている。なお、透光性樹脂シート10が着色されているときは、保護フィルム150Bは、着色されていても、いなくてもいずれであってもよいが、以下では、保護フィルム150Bが着色されている場合について説明する。
【0089】
これにより、樹脂シート積層体200の保護フィルム150B側では、保護フィルム150Bまたは透光性樹脂シート10を反射した反射光を、着色された着色光として視認することができる。
【0090】
この保護フィルム150Bは、保護フィルム150Aに含まれる遮光性材料とは異なる色に着色されている。これにより、保護フィルム150A側から視認される色調と、保護フィルム150B側から視認される色調とを、異なるものとし得るため、この色調の違いに基づいて、樹脂シート積層体200における、保護フィルム150A側と保護フィルム150B側とを確実に区別することができる。
【0091】
保護フィルム150Bは、顔料、染料のような着色剤を、単独または混合して含み、これにより、着色されていることが好ましい。これにより、保護フィルム150Bを、所望の色に着色し得ることから、保護フィルム150B側から視認される色調を、保護フィルム150A側から視認される色調に対して、異なるものとすることができる。
【0092】
顔料としては、特に限定されないが、例えば、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系顔料、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、縮合アゾイエロー、ペンゾイミダゾロンイエロー、ジニトロアニリンオレンジ、ペンズイミダゾロンオレンジ、トルイジンレッド、パーマネントカーミン、パーマネントレッド、ナフトールレッド、縮合アゾレッド、ベンズイミダゾロンカーミン、ベンズイミダゾロンブラウン等のアゾ系顔料、アントラピリミジンイエロー、アントラキノニルレッド等のアントラキノン系顔料、銅アゾメチンイエロー等のアゾメチン系顔料、キノフタロンイエロー等のキノフタロン系顔料、イソインドリンイエロー等のイソインドリン系顔料、ニッケルジオキシムイエロー等のニトロソ系顔料、ペリノンオレンジ等のペリノン系顔料、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンマルーン、キナクリドンスカーレット、キナクリドンレッド等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンマルーン等のペリレン系顔料、ジケトピロロピロールレッド等のピロロピロール系顔料、ジオキサジンバイオレット等のジオキサジン系顔料のような有機顔料、カーボンブラック、ランプブラック、ファーネスブラック、アイボリーブラック、黒鉛、フラーレン等の炭素系顔料、黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸塩系顔料、カドミウムイエロー、カドミウムリトポンイエロー、カドミウムオレンジ、カドミウムリトポンオレンジ、銀朱、カドミウムレッド、カドミウムリトポンレッド、硫化等の硫化物系顔料、オーカー、チタンイエロー、チタンバリウムニッケルイエロー、べんがら、鉛丹、アンバー、褐色酸化鉄、亜鉛鉄クロムブラウン、酸化クロム、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトアルミニウムクロムブルー、鉄黒、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅クロムブラック、銅クロムマンガンブラック等の酸化物系顔料、ビリジアン等の水酸化物系顔料、紺青等のフェロシアン化物系顔料、群青等のケイ酸塩系顔料、コバルトバイオレット、ミネラルバイオレット等のリン酸塩系顔料、その他(例えば硫化カドミウム、セレン化カドミウム等)のような無機顔料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0093】
染料としては、特に限定されないが、例えば、金属錯体色素、シアン系色素、キサンテン系色素、メロシアニン系色素、フタロシアニン系色素、アゾ系色素、ハイビスカス色素、ブラックベリー色素、ラズベリー色素、ザクロ果汁色素、クロロフィル色素、テトラアゾポルフィリン化合物等のポルフィリン系化合物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0094】
着色剤は、粒子状をなしており、その平均粒子径は、例えば、好ましくは0.05μm以上0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以上0.15μm以下に設定される。着色剤の平均粒子径を前記範囲内に設定することで、保護フィルム150Bに透光性を付与しつつ、保護フィルム150Bを確実に着色することができる。
【0095】
また、着色剤は、その含有量が、保護フィルム150Bを構成する樹脂組成物において、好ましくは0.01重量%以上3重量%、より好ましくは0.1重量%以上1重量%以下に設定される。これにより、保護フィルム150Bに透光性を付与しつつ、保護フィルム150Bを確実に着色することができる。
【0096】
以上のような保護フィルム150Aと、保護フィルム150Bとは、それぞれ、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂のうちの少なくとも1種を主材料とする単層体または積層体で構成され、保護フィルム150Aは、この主材料をバインダー樹脂とし、さらに、遮光性材料を含む樹脂組成物の固化物で構成することで遮光性が付与されており、また、保護フィルム150Bは、この主材料をバインダー樹脂とし、さらに、着色剤を含む樹脂組成物の固化物で構成することで着色されている。
【0097】
なお、本明細書において、(メタ)アクリル系樹脂とは、(メタ)アクリル酸およびその誘導体の重合体、あるいは(メタ)アクリル酸およびその誘導体と他の単量体との共重合体を意味する。ここで、(メタ)アクリル酸等と表記するときは、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
【0098】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸-2-エチルヘキシル等のポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル等のポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリアクリルアミド、アクリル酸ブチル-アクリル酸エチル-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル-α-メチルスチレン共重合体、アクリル酸ブチル-アクリル酸エチル-アクリロニトリル-2-ヒドロキシエチルメタクリレート-メタクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル-アクリル酸エチル-アクリロニトリル-2-ヒドロキシエチルメタクリレート-アクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル-アクリロニトリル-2-ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、アクリル酸ブチル-アクリロニトリル-アクリル酸共重合体、アクリル酸エチル-アクリロニトリル-N,Nジメチルアクリルアミド共重合体等が挙げられる。
【0099】
また、オレフィン系樹脂としては、α-オレフィンの単独重合体またはα-オレフィンと他の共重合可能な単量体との共重合体等が挙げられ、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン、1,2-ポリブタジエン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0100】
なお、前記共重合体は、ブロック共重合体およびランダム共重合体のうちのいずれであってもよい。
【0101】
また、保護フィルム150A、150Bは、その平均厚さが20μm以上100μm以下であることが好ましく、30μm以上80μm以下であることがより好ましい。これにより、前述した保護フィルム150A、150Bとしての機能を確実に発揮させることができる。
【0102】
なお、保護フィルム150A、150Bを構成する樹脂組成物には、それぞれ、必要に応じて、無機充填材、有機充填材、カップリング剤、レベリング剤等の添加物を含んでもよい。
【0103】
また、保護フィルム150A、150Bは、それぞれ、透光性樹脂シート10に貼付する側の面に最外層として粘着層を備え、さらに、透光性樹脂シート10に貼付するのと反対側の面に最外層として保護層(背面層)を備えるものであってもよいし、また、これら最外層の内側に中間層を備えるものであってもよい。
【0104】
前記添加物が、前記粘着層、保護層(背面層)、中間層の各層のうち1つの層もしくは2つ以上の層に含まれる場合、含有量は10重量%以下とすることもでき、8重量%以下とすることもでき、また0.001重量%以上とすることもでき、0.1重量%以上とすることもできる。
【0105】
特に、保護層(背面層)を備えるものとする場合、この保護層としては、含有量が好ましくは0.5重量%以上10重量%以下、より好ましくは1重量%以上9重量%以下に設定された、アンチブロッキング剤を含有するものが好ましく設けられる。これにより、保護層を背面層として設けることにより得られる機能をより顕著に発揮させることができる。
【0106】
また、アンチブロッキング剤としては、例えば、無機粒子および有機粒子等を用いることができ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、無機粒子としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、ゼオライト、スメクタイト、雲母、バーミキュライトおよびタルク等の粒子が挙げられ、有機粒子としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シリコーン系樹脂およびフッ素系樹脂等の粒子が挙げられる。
【0107】
さらに、本実施形態では、保護フィルム150Aを、透光性樹脂シート10の第2の樹脂層3A側、保護フィルム150Bを、透光性樹脂シート10の第2の樹脂層3B側に、それぞれ貼付する場合について説明したが、この場合に限定されず、保護フィルム150Aは、透光性樹脂シート10の第2の樹脂層3B側、保護フィルム150Bは、透光性樹脂シート10の第2の樹脂層3A側に、それぞれ貼付されていてもよい。
【0108】
さらに、保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bを貼付する透光性樹脂シート10としては、本実施形態で例示した構成のものに限定されず、上下(表裏)方向における識別性が求められるものであれば如何なる構成のものであってもよく、例えば、偏光子としての第1の樹脂層2の上面および下面に、それぞれ、延伸された樹脂層および未延伸の樹脂層が積層された構成をなすものであってもよい。
【0109】
以上、本発明の樹脂シート積層体および保護フィルムセットについて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、保護フィルムを単層体または多層体(積層体)のいずれで構成する場合であっても、構成する各層は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
【0110】
さらに、前記実施形態では、本発明の保護フィルムセットが透光性樹脂シートに積層された樹脂シート積層体(本発明の樹脂シート積層体)における前記透光性樹脂シートを、眼鏡が備えるレンズに貼着して使用する場合について説明したが、前記透光性樹脂シートは、このような場合に限らず、例えば、ヘッドアップディスプレイ装置が備える出射窓や、スマートフォン、PC用ディスプレイ、カーナビゲーションシステムおよびセンターインフォメーションディスプレイ等が備える表示部等として用いることもできる。
【実施例
【0111】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0112】
1.原材料の準備
まず、各実施例および各比較例の保護フィルムの作製に使用した原料は以下の通りである。
【0113】
<バインダー樹脂:ポリオレフィン>
融点が158℃のブロックポリプロピレン(プロピレン-エチレンブロック共重合体)(b-PP、日本ポリプロ社製、「ノバテックEC9GD」、MFR=0.5g/10min)
【0114】
<白色の遮光性材料>
ポリプロピレンに酸化チタンが配合(分散)された白マスターバッチ(DIC社製、「PEONY L-11165MFT」)
【0115】
<青色の着色剤(染料)>
合成樹脂用着色剤(住化ケムテックス社製、「Sumiplast Blue SR」)
【0116】
<アンチブロッキング剤>
アンチブロッキング剤(住化カラー社製、「キノプラス FPP-AB05A」)
【0117】
2.保護フィルムの製造
(実施例1)
[1A]まず、粘着層を形成するにあたり、ポリオレフィン系樹脂として融点が121℃のLLDPEと、エラストマーとしてSEBSとを、SEBSの含有量が10重量%となるように混練することで粘着層形成材料(樹脂組成物)を調製した。
【0118】
[2A]次に、遮蔽層を形成するにあたり、ブロックポリプロピレンと、白マスターバッチとを、白マスターバッチの含有量が2.30重量%となるように混練することで遮蔽層形成材料(樹脂組成物)を調製した。
【0119】
[3A]次に、調製した粘着層形成材料と、調製した遮蔽層形成材料と、背面層を形成するための融点が150℃以上のポリオレフィン系樹脂として、融点が167℃のh-PPとを、それぞれ、3つの押し出し機に収納した。
【0120】
[4A]次に、3つの押し出し機から、これらを溶融状態としたものを押し出すことで、共押し出しTダイから、これらが層状に積層された溶融状態の積層体を得た後、この積層体を冷却することで、背面層、遮蔽層および粘着層の平均厚さが、それぞれ10μm、30μmおよび10μmとなっている保護フィルム150Aを得た。
【0121】
[5A]また、保護フィルム150Bを形成するにあたり、ブロックポリプロピレンを混練することで保護フィルム150B形成材料(樹脂組成物)を用意した。
【0122】
[6A]次に、調製した保護フィルム150B形成材料を、1つの押し出し機に収納した。
【0123】
[7A]次に、1つの押し出し機から、保護フィルム150B形成材料を溶融状態としたものを押し出すことで、Tダイから、層状とされた保護フィルム150B形成材料とした後、このものを冷却することで、未着色の保護フィルム150Bを得た。
【0124】
以上の各工程を経ることにより、保護フィルム150A、150Bを備える実施例1の保護フィルムセットを得た。
【0125】
なお、ヘーズメーター(日本電色工業社製、「NDH4000」)を用いて、JIS K 7361に準拠して、測定された保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bの全光線透過率は、それぞれ、22%および90%であった。
【0126】
また、保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bの平均厚さは、それぞれ、50μmであった。
【0127】
(実施例2~実施例8、実施例12~実施例13、比較例1)
前記工程[2A]において、保護フィルム150A形成材料を調製する際に、白マスターバッチの含有量、アンチブロッキング剤の有無を、表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、保護フィルム150A、150Bを備える実施例2~実施例8、実施例12、比較例1の保護フィルムセットを得た。
【0128】
(実施例9)
[1B]まず、粘着層を形成するにあたり、ポリオレフィン系樹脂として融点が121℃のLLDPEと、エラストマーとしてSEBSとを、SEBSの含有量が10重量%となるように混練することで粘着層形成材料(樹脂組成物)を調製した。
【0129】
[2B]次に、遮蔽層を形成するにあたり、ブロックポリプロピレンと、白マスターバッチとを、白マスターバッチの含有量が1.60重量%となるように混練することで遮蔽層形成材料(樹脂組成物)を調製した。
【0130】
[3B]次に、調製した粘着層形成材料と、調製した遮蔽層形成材料と、背面層を形成するための融点が150℃以上のポリオレフィン系樹脂として、融点が167℃のh-PPとを、それぞれ、3つの押し出し機に収納した。
【0131】
[4B]次に、3つの押し出し機から、これらを溶融状態としたものを押し出すことで、共押し出しTダイから、これらが層状に積層された溶融状態の積層体を得た後、この積層体を冷却することで、背面層、遮蔽層および粘着層の平均厚さが、それぞれ10μm、30μmおよび10μmとなっている保護フィルムAを得た。
【0132】
[5B]また、保護フィルム150Bを形成するにあたり、ブロックポリプロピレンと、青色の着色剤(Sumiplast Blue SR)とを、着色剤の含有量が0.50重量%となるように混練することで保護フィルム150B形成材料(樹脂組成物)を調製した。
【0133】
[6B]次に、調製した保護フィルム150B形成材料を、1つの押し出し機に収納した。
【0134】
[7B]次に、1つの押し出し機から、保護フィルム150B形成材料を溶融状態としたものを押し出すことで、Tダイから、層状とされた保護フィルム150B形成材料とした後、このものを冷却することで、着色された保護フィルム150Bを得た。
【0135】
以上の各工程を経ることにより、保護フィルム150A、150Bを備える実施例9の保護フィルムセットを得た。
【0136】
なお、ヘーズメーター(日本電色工業社製、「NDH4000」)を用いて、JIS K 7361に準拠して、測定された保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bの全光線透過率は、それぞれ、28%および90%であった。
【0137】
また、保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bの平均厚さは、それぞれ、50μmであった。
【0138】
(実施例10~実施例11)
前記工程[2B]において、保護フィルム150A形成材料を調製する際に、白マスターバッチの含有量を、表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例9と同様にして、保護フィルム150A、150Bを備える実施例10~実施例11の保護フィルムセットを得た。
【0139】
(比較例2)
前記工程[2B]において、保護フィルム150A形成材料を調製する際に、白マスターバッチ酸化チタンの含有量を、表1に示すように変更し、前記工程[5B]において、保護フィルム150B形成材料を調製する際に、青色の着色剤の含有量を、表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例9と同様にして、保護フィルム150A、150Bを備える比較例2の保護フィルムセットを得た。
【0140】
(比較例1)
保護フィルム150A、150Bに代えて、2枚の保護フィルム150Bを用意したこと以外は、前記実施例1と同様にして、比較例1の保護フィルムセットを得た。
【0141】
(比較例3)
[1C]まず、粘着層を形成するにあたり、ポリオレフィン系樹脂として融点が121℃のLLDPEと、エラストマーとしてSEBSとを、SEBSの含有量が10重量wt%となるように混練することで粘着層形成材料(樹脂組成物)を調製した。
【0142】
[2C]次に、遮蔽層を形成するにあたり、ブロックポリプロピレンと、白マスターバッチとを、白マスターバッチの含有量が1.10重量%となるように混練することで遮蔽層形成材料(樹脂組成物)を調製した。
【0143】
[3C]次に、調製した粘着層形成材料と、調製した遮蔽層形成材料と、背面層を形成するための融点が150℃以上のポリオレフィン系樹脂として、融点が167℃のh-PPとを、それぞれ、3つの押し出し機に収納した。
【0144】
[4C]次に、3つの押し出し機から、これらを溶融状態としたものを押し出すことで、共押し出しTダイから、これらが層状に積層された溶融状態の積層体を得た後、この積層体を冷却することで、背面層、遮蔽層および粘着層の平均厚さが、それぞれ10μm、30μmおよび10μmとなっている保護フィルムAを得た。
【0145】
[5C]また、保護フィルム150Bを形成するにあたり、ブロックポリプロピレンと、白マスターバッチとを、白マスターバッチの含有量が1.10重量%となるように混練することで保護フィルム150B形成材料(樹脂組成物)を調製した。
【0146】
[6C]次に、調製した保護フィルム150B形成材料を、1つの押し出し機に収納した。
【0147】
[7C]次に、1つの押し出し機から、保護フィルム150B形成材料を溶融状態としたものを押し出すことで、Tダイから、層状とされた保護フィルム150B形成材料とした後、このものを冷却することで、遮光性を備える保護フィルム150Bを得た。
【0148】
以上の各工程を経ることにより、保護フィルム150A、150Bを備える比較例3の保護フィルムセットを得た。
【0149】
なお、ヘーズメーター(日本電色工業社製、「NDH4000」)を用いて、JIS K 7361に準拠して、測定された保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bの全光線透過率は、それぞれ、58%であった。
【0150】
また、保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bの平均厚さは、それぞれ、50μmであった。
【0151】
3.樹脂シート積層体の製造
(実施例1~8、実施例12、比較例3)
まず、透光性樹脂シートとして、以下の構成をなすものを用意した。
【0152】
すなわち、ポリカーボネートと、青色の着色剤(Sumiplast Blue SR)とを、青色の着色剤の含有量が0.10重量%となるように混練することで調製されたシート形成材料を、押し出し機に収納し、その後、押し出し機から、シート形成材料を溶融状態としたものを押し出すことで、Tダイから、層状とされたシート形成材料を得た。そして、このものを冷却することで、透光性樹脂シートとした後、縦50mm×横50mmの大きさに裁断することで、縦50mm×横50mm×厚さ300μmの透光性樹脂シートを得た。
【0153】
次に、得られた透光性樹脂シートの表面(上面)および裏面(下面)に、それぞれ、実施例1~8、実施例12、比較例3の保護フィルムセットが備える保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bを貼付(積層)することで、樹脂シート積層体を得た。
【0154】
なお、透光性樹脂シートの表面には、円形をなす直径5mmの黒色のマーキング1つ形成しておいた。
【0155】
(実施例9~11、比較例1、2)
まず、透光性樹脂シートとして、以下の構成をなすものを用意した。
【0156】
すなわち、ポリカーボネート100重量%のシート形成材料を、押し出し機に収納し、その後、押し出し機から、シート形成材料を溶融状態としたものを押し出すことで、Tダイから、層状とされたシート形成材料を得た。そして、このものを冷却することで、透光性樹脂シートとした後、縦50mm×横50mmの大きさに裁断することで、縦50mm×横50mm×厚さ300μmの透光性樹脂シートを得た。
【0157】
次に、得られた透光性樹脂シートの表面(上面)および裏面(下面)に、それぞれ、実施例9~11、比較例1、2の保護フィルムセットが備える保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bを貼付(積層)することで、樹脂シート積層体を得た。
【0158】
なお、透光性樹脂シートの表面には、円形をなす直径5mmの黒色のマーキング1つ形成しておいた。
【0159】
4.評価
各実施例および各比較例の樹脂シート積層体を、以下の方法で評価した。
【0160】
<1>透光性樹脂シートの表裏の識別性
各実施例および各比較例の保護フィルムセットを用いて得られた樹脂シート積層体について、それぞれ、樹脂シート積層体から保護フィルムを剥離させることなく、照度600Lxの環境下で樹脂シート積層体の表裏の判定を行った。そして、表裏の色調の違いに基づいて、表裏を容易に判定できたものを◎、表裏の判定が可能であったものを○、表裏の判定が可能であったが、その判定に時間を要したものを△、表裏の判定が困難だったものを×として評価を行った。
【0161】
<2>透光性樹脂シートにおけるマーキングの視認性
各実施例および各比較例の保護フィルムセットを用いて得られた樹脂シート積層体について、それぞれ、樹脂シート積層体から保護フィルムを剥離させることなく、照度600Lxの環境下で、樹脂シート積層体の表面側から、透光性樹脂シートの表面に施されたマーキングの視認性の判定を行った。そして、樹脂シート積層体の表面側から、マーキングを容易に視認できたものを◎、マーキングの視認が可能であったものを○、マーキングの視認が若干ではあるが可能であったものを△、マーキングの視認が困難だったものを×として評価を行った。
【0162】
以上のようにして得られた各実施例および各比較例の樹脂シート積層体における評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0163】
【表1】
【0164】
表1に示したように、各実施例における樹脂シート積層体では、表面に貼付された保護フィルムが遮光性を備え、かつ、裏面に貼付された保護フィルムまたは透光性樹脂シートのいずれかが着色されていることに起因して、樹脂シート積層体の表裏の判定を行うことができた。
【0165】
これに対して、各比較例における樹脂シート積層体では、表面に貼付された保護フィルムが遮光性を備えることと、裏面に貼付された保護フィルムまたは透光性樹脂シートのいずれかが着色されていることとのうちの一方を満足しておらず、その結果、樹脂シート積層体の表裏を判定することができなかった。
【符号の説明】
【0166】
2 第1の樹脂層
3A、3B 第2の樹脂層
31 粒子
4A、4B 接合層
5A、5B ハードコート層
51 上面
52 下面
10 透光性樹脂シート
20 フレーム
21 上面
22 下面
23 テンプル部
24 ノーズパッド部
25 リム部
26 ブリッジ部
30 レンズ
100 眼鏡
150A 保護フィルム
150B 保護フィルム
200 樹脂シート積層体
OL 太陽光(自然光)
OL’ 光
、t3A、t3B、t4A、t4B、t5A、t5B 厚さ
図1
図2
図3
図4