(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】走行制御装置、走行制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/14 20060101AFI20240110BHJP
B60W 30/18 20120101ALI20240110BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240110BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240110BHJP
F16H 59/70 20060101ALI20240110BHJP
F16H 61/68 20060101ALI20240110BHJP
F16H 59/36 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B60W30/14
B60W30/18
G08G1/16 D
G08G1/09 F
F16H59/70
F16H61/68
F16H59/36
(21)【出願番号】P 2022135071
(22)【出願日】2022-08-26
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】滝波 茂
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-084917(JP,A)
【文献】特開2020-041481(JP,A)
【文献】特開2016-200931(JP,A)
【文献】特開2011-241927(JP,A)
【文献】特開昭60-256661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
F16H 59/70
F16H 61/68
F16H 59/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行中の車線が合流する合流先の車線を走行する複数の他の車両の速度の統計量を取得する取得部と、
取得した前記統計量に基づいて目標速度を定め、当該目標速度に対応するパワーバンドを有する目標ギヤ段を特定する特定部と、
前記自車両が走行する速度を前記目標速度まで上昇させる加速制御部と、
前記加速制御部が前記速度を上昇させている間、前記自車両の速度がその時点の前記自車両のギヤ段に対応するパワーバンドから外れないように、前記目標ギヤ段まで前記自車両のギヤ段を段階的に変速
し、前記加速制御部が前記速度を上昇させている間であって前記自車両の速度がその時点での前記ギヤ段に対応するパワーバンドから外れている場合、前記自車両の速度がギヤ段に対応するパワーバンドから外れない低速側の前記ギヤ段に変速する変速制御部と、
を備える走行制御装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記複数の他の車両が走行する速度の平均値、最頻値及び中央値のうち、最も大きな値を前記目標速度として定める、
請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記変速制御部は、前記加速制御部が前記自車両の速度を前記目標速度まで上昇させた後に、単位容量の燃料で走行可能な走行距離が前記目標ギヤ段において前記単位容量の燃料で走行可能な走行距離よりも長いギヤ段に前記自車両のギヤ段を変速する、
請求項1又は2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記合流先の車線において測定された前記複数の他の車両が走行する速度の統計量を外部装置から無線通信により取得する、
請求項1又は2に記載の走行制御装置。
【請求項5】
前記特定部は、前記複数の他の車両が走行する速度の統計量を前記取得部が取得できない場合に、前記合流先の車線を走行可能な法定最高速度を前記目標速度として定める、
請求項1又は2に記載の走行制御装置。
【請求項6】
前記複数の他の車両が走行する速度を測定する測定部をさらに備え、
前記取得部は、前記測定部が測定した前記複数の他の車両の速度の前記統計量を取得する、
請求項1又は2に記載の走行制御装置。
【請求項7】
コンピュータが実行する、
自車両が走行中の車線が合流する合流先の車線を走行する複数の他の車両の速度の統計量を取得するステップと、
取得した統計量に基づいて目標速度を定め、当該目標速度に対応するパワーバンドを有する目標ギヤ段を特定するステップと、
前記自車両が走行する速度を前記目標速度まで上昇させるステップと、
前記自車両の前記速度を上昇させている間、前記自車両の速度がその時点の前記自車両のギヤ段に対応するパワーバンドから外れないように、前記目標ギヤ段まで前記自車両のギヤ段を段階的に変速するステップと、
を備え
、
前記速度を上昇させるステップでは、前記自車両の速度がその時点での前記ギヤ段に対応するパワーバンドから外れている場合、前記自車両の速度がギヤ段に対応するパワーバンドから外れない低速側の前記ギヤ段に変速する、
走行制御方法。
【請求項8】
コンピュータに、
自車両が走行中の車線が合流する合流先の車線を走行する複数の他の車両の速度の統計量を取得するステップと、
取得した統計量に基づいて目標速度を定め、当該目標速度に対応するパワーバンドを有する目標ギヤ段を特定するステップと、
前記自車両が走行する速度を前記目標速度まで上昇させるステップと、
前記自車両の前記速度を上昇させている間、前記自車両の速度がその時点の前記自車両のギヤ段に対応するパワーバンドから外れないように、前記目標ギヤ段まで前記自車両のギヤ段を段階的に変速するステップと、
を実行させるためのプログラム
であって、
前記速度を上昇させるステップでは、前記自車両の速度がその時点での前記ギヤ段に対応するパワーバンドから外れている場合、前記自車両の速度がギヤ段に対応するパワーバンドから外れない低速側の前記ギヤ段に変速する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の変速動作を制御する走行制御装置、走行制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
他の車線に合流する車線を自車両が走行中である場合に、合流先の車線を走行中の他の車両と同じ速度で合流することを目的として、自車両がこの速度まで加速しやすくなるようにギヤ段を下げる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された方法では、ギヤ段を下げることにより自車両が加速し易くなる。自車両の速度と、合流先の車線を走行中の他の車両の速度との差が大きい場合には、自車両の速度を大幅に上昇させる必要がある。この場合に、特許文献1に記載された方法では、自車両をスムーズに加速させることができないという問題があった。
【0005】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、自車両の速度と、合流先の車線を走行中の他の車両の速度との差が大きい場合であっても、車両をスムーズに加速させることができる走行制御装置、走行制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の走行制御装置は、自車両が走行中の車線が合流する合流先の車線を走行する複数の他の車両の速度の統計量を取得する取得部と、取得した前記統計量に基づいて目標速度を定め、当該目標速度に対応するパワーバンドを有する目標ギヤ段を特定する特定部と、前記自車両が走行する速度を前記目標速度まで上昇させる加速制御部と、前記加速制御部が前記速度を上昇させている間、前記自車両の速度がその時点の前記自車両のギヤ段に対応するパワーバンドから外れないように、前記目標ギヤ段まで前記自車両のギヤ段を段階的に変速する変速制御部と、を備える。
【0007】
前記特定部は、前記複数の他の車両が走行する速度の平均値、最頻値及び中央値のうち、最も大きな値を前記目標速度として定めてもよい。前記変速制御部は、前記加速制御部が前記自車両の速度を前記目標速度まで上昇させた後に、単位容量の燃料で走行可能な走行距離が前記目標ギヤ段において前記単位容量の燃料で走行可能な走行距離よりも長いギヤ段に前記自車両のギヤ段を変速してもよい。
【0008】
前記取得部は、前記合流先の車線において測定された前記複数の他の車両が走行する速度の統計量を外部装置から無線通信により取得してもよい。前記特定部は、前記複数の他の車両が走行する速度の統計量を前記取得部が取得できない場合に、前記合流先の車線を走行可能な法定最高速度を前記目標速度として定めてもよい。前記走行制御装置は、前記複数の他の車両が走行する速度を測定する測定部をさらに備え、前記取得部は、前記測定部が測定した前記複数の他の車両の速度の前記統計量を取得してもよい。
【0009】
本発明の第2の態様の走行制御方法は、コンピュータが実行する、自車両が走行中の車線が合流する合流先の車線を走行する複数の他の車両の速度の統計量を取得するステップと、取得した統計量に基づいて目標速度を定め、当該目標速度に対応するパワーバンドを有する目標ギヤ段を特定するステップと、前記自車両が走行する速度を前記目標速度まで上昇させるステップと、前記自車両の前記速度を上昇させている間、前記自車両の速度がその時点の前記自車両のギヤ段に対応するパワーバンドから外れないように、前記目標ギヤ段まで前記自車両のギヤ段を段階的に変速するステップと、を備える。
【0010】
本発明の第3の態様のプログラムは、コンピュータに、自車両が走行中の車線が合流する合流先の車線を走行する複数の他の車両の速度の統計量を取得するステップと、取得した統計量に基づいて目標速度を定め、当該目標速度に対応するパワーバンドを有する目標ギヤ段を特定するステップと、前記自車両が走行する速度を前記目標速度まで上昇させるステップと、前記自車両の前記速度を上昇させている間、前記自車両の速度がその時点の前記自車両のギヤ段に対応するパワーバンドから外れないように、前記目標ギヤ段まで前記自車両のギヤ段を段階的に変速するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両をスムーズに加速させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態の走行制御システムSの概要を説明するための図である。
【
図4】走行制御装置による変速の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[走行制御システムの概要]
図1は、本実施形態の走行制御システムSの概要を説明するための図である。走行制御システムSは、自車両100及び外部装置200を備える。自車両100は、自動運転により走行する。自車両100は、他の車線に合流する車線を走行中である。自車両100は、走行制御装置1が搭載されている。
【0014】
走行制御装置1は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)である。走行制御装置1は、自車両100の変速動作を制御する。走行制御装置1は、自車両100の速度を制御する。走行制御装置1は、路車間通信により外部装置200と通信する。
【0015】
外部装置200は、例えば、コンピュータである。外部装置200は、自車両100と路車間通信により通信するための通信装置300と接続されている。
【0016】
通信装置300は、自車両100が走行中の車線付近又はこの車線が合流する合流先の車線付近に設けられている。通信装置300は、自車両100との間で通信のための電波を送受信することにより、自車両100と路車間通信により通信する。通信装置300は、合流先の車線を走行する複数の他の車両400及び500と路車間通信により通信してもよい。
【0017】
外部装置200は、自車両が走行中の車線が合流する合流先の車線を走行する複数の他の車両400及び500の速度を一定時間ごとに測定する。一定時間は、例えば数秒である。
図1中には、外部装置200は、合流先の車線を走行する2台の車両400及び500の速度を測定する例を示すが、外部装置200は、合流先の車線を走行する3台以上の車両の速度を測定してもよい。
【0018】
例えば、外部装置200は、合流先の車線に面した位置に設けられたカメラで車両400及び車両500を所定期間ごとに撮影する。外部装置200は、所定期間ごとに撮影された複数の撮影画像の差分を特定し、この所定期間において車両400及び車両500が移動した距離を測定することにより、車両400及び500の速度を測定する。外部装置200は、合流先の車線を走行する車両400及び500の速度をレーダ波により測定してもよい。
【0019】
また、外部装置200は、車両400及び車両500の速度を一定時間ごとに測定する例に限定されない。外部装置200は、通信装置300を介して、車両400及び車両500の速度を示す情報を車両400及び車両500から路車間通信により一定時間ごとに受信してもよい。外部装置200は、測定した複数の他の車両400及び500の速度の統計量を算出する。統計量は、例えば、平均値であるが、最頻値又は中央値であってもよい。統計量は、平均値、最頻値及び中央値のうち、最も大きな値であってもよい。
【0020】
以下、走行制御装置1による自車両100の合流時の変速動作の流れを説明する。まず、走行制御装置1は、合流先の車線を走行する複数の他の車両400及び500の速度の統計量を外部装置200から通信装置300を介して取得する(
図1中の(1))。走行制御装置1は、取得した統計量に基づいて目標速度を定める(
図1中の(2))。目標速度は、合流先の車線において自車両100が複数の他の車両400及び500と合流して走行するのに適した速度である。
【0021】
走行制御装置1は、定めた目標速度に対応するパワーバンドを有する目標ギヤ段を特定する(
図1中の(3))。走行制御装置1は、自車両100の速度が目標速度に到達するまで、自車両100を加速する。走行制御装置1は、自車両100を加速している間、自車両100の加速中に自車両100の速度がその時点の自車両100のギヤ段のパワーバンドから外れないように、特定した目標ギヤ段まで自車両100のギヤ段を段階的に変速する(
図1中の(4))。
【0022】
このようにして、走行制御装置1は、目標速度まで自車両100を加速する間、自車両100の速度がその時点の自車両100のギヤ段のパワーバンドから外れないように自車両100を段階的に変速させる。このため、走行制御装置1は、合流先の車線を走行中の他の車両400及び500の速度の統計量と自車両100の速度との差が大きい場合においても、目標速度まで自車両100を加速する途中で自車両100の速度がギヤ段のパワーバンドから外れないようにすることができる。したがって、走行制御装置1は、自車両100をスムーズに加速させ、合流時に合流先の車線において他の車両400及び500と自車両100との速度差を比較的短い時間で解消することができる。
【0023】
[自車両100の構成]
図2は、自車両100の構成を示す。自車両100は、走行制御装置1、通信部2、燃料噴射機構3及び変速機4を備える。走行制御装置1は、記憶部10及び制御部11を備える。制御部11は、取得部111、特定部112、加速制御部113及び変速制御部114を備える。
【0024】
通信部2は、通信装置300と路車間通信により通信するための通信モジュールである。燃料噴射機構3は、エンジン(不図示)のシリンダ内への燃料噴射量を調整する。例えば、燃料噴射機構3は、自車両100の加速を加速制御部113が指示した場合に、シリンダ内への燃料噴射量を増加させることにより、自車両100を加速させる。変速機4は、自車両100が走行するギヤ段を変速制御部114が指示したギヤ段に変速する。
【0025】
記憶部10は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等により構成される。記憶部10は、制御部11を機能させるための各種プログラムや各種データを記憶する。記憶部10には、複数のギヤ段のそれぞれと、パワーバンドに含まれる自車両100の速度の範囲とを関連付けた変速データが記憶されている。パワーバンドは、エンジンが最も効率よく駆動力を発揮することが可能な回転域である。変速データは、例えば、1つ上のギヤ段へ変速した場合に自車両100の速度が変速後のギヤ段に対応するパワーバンドから外れないか否かを変速制御部114が判定するために用いられる。
【0026】
記憶部10には、他の車線と合流する複数の車線の位置を示す地図情報が記憶されている。記憶部10には、複数の車線の位置のそれぞれと、自車両100が走行可能な法定最高速度とを関連付けた制限速度情報が記憶されている。
【0027】
制御部11は、例えば、例えば、ECUに含まれているプロセッサである。制御部11は、記憶部10に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部111、特定部112、加速制御部113及び変速制御部114として機能する。
【0028】
取得部111は、通信部2及び通信装置300を介して外部装置200と無線通信する。取得部111は、自車両100が他の車線と合流する車線を走行中である場合に、自車両100が走行中の車線が合流する合流先の車線を走行する複数の他の車両の速度の統計量を外部装置200から通信装置300を介して取得する。統計量は、例えば、平均値であるが、最頻値又は中央値であってもよい。統計量は、平均値、最頻値及び中央値のうち、最も大きな値であってもよい。
【0029】
まず、取得部111は、他の車線と合流する複数の車線の位置を示す地図情報を記憶部10から読み出す。取得部111は、読み出した地図情報と、自車両100の現在位置を示すGPS(Global Positioning System)情報等の位置情報とを参照して、自車両100が他の車線と合流する車線を走行中であるか否かを判定する。取得部111は、自車両100が他の車線と合流する車線を走行中であると判定した場合に、合流先の車線を走行する複数の他の車両の速度の統計量を取得する。例えば、取得部111は、統計量を示す情報を外部装置200から通信装置300を介して取得する。
【0030】
取得部111は、統計量を外部装置200から取得する例に限定されない。例えば、取得部111は、自車両100に搭載されたカメラ又はレーダ等により測定部(不図示)が測定した複数の他の車両400及び500の速度の統計量を取得してもよい。取得部111は、自車両100が他の車線と合流する車線を走行中ではないと判定した場合に、合流先の車線を走行する複数の他の車両の速度の統計量を取得しない。
【0031】
取得部111は、統計量を取得することができない場合に、合流先の車線を走行可能な法定最高速度を取得する。例えば、取得部111は、合流先の車線を走行可能な法定最高速度を外部装置200から通信装置300を介して取得する。また、取得部111は複数の車線の位置のそれぞれと、自車両100が走行可能な法定最高速度とを関連付けた制限速度情報を参照して、法定最高速度を取得してもよい。取得部111は、この制限速度情報において合流先の車線に関連付けられた法定最高速度を取得してもよい。取得部111は、取得した統計量又は法定最高速度を示す情報を特定部112へ出力する。
【0032】
特定部112は、取得部111が取得した統計量に基づいて目標速度を定める。例えば、特定部112は、取得部111が取得した統計量を目標速度として定める。特定部112は、複数の他の車両400及び500が走行する速度の統計量を取得部111が取得することができない場合に、合流先の車線を走行可能な法定最高速度を目標速度として定める。
【0033】
特定部112は、定めた目標速度に対応するパワーバンドを有する目標ギヤ段を特定する。例えば、特定部112は、目標速度に戻づいて所定の速度域を設定する。速度域は、例えば、目標速度に所定値を加算した値を上限値とし、目標速度から所定値を減算した値を下限値とする速度の範囲である。所定値は、例えば、時速十数キロメートルであるが、より大きな値であってもよい。所定値は、例えば、合流先の車線を走行可能な最低速度、自車両100の速度リミッタの値、又は、自車両100のギヤレシオに基づいて、走行制御装置1の製造者等により定められる。
【0034】
特定部112は、設定した速度域が目標ギヤ段のパワーバンドに含まれるように目標ギヤ段を特定する。より詳しくは、特定部112は、複数のギヤ段のそれぞれと、パワーバンドに含まれる自車両100の速度の範囲とを関連付けた変速データを参照して、目標ギヤ段を定める。特定部112は、記憶部10に記憶されている変速データの複数の速度の範囲のうち、設定した速度域を含む速度の範囲を特定する。特定部112は、変速データを参照して、特定した速度の範囲に関連付けられたギヤ段を目標ギヤ段として特定する。特定部112は、定めた目標速度を示す情報を加速制御部113へ出力する。特定部112は、特定した目標ギヤ段を示す情報を変速制御部114へ出力する。
【0035】
加速制御部113は、自車両100が他の車線と合流する車線を走行中である場合に、走行中の自車両100の速度を上昇させる。例えば、加速制御部113は、エンジンのシリンダ内への燃料噴射量を増加させることを燃料噴射機構3に指示することにより自車両100の速度を上昇させる。加速制御部113は、自車両100が走行する速度を目標速度まで上昇させる。
【0036】
[目標ギヤ段への変速]
変速制御部114は、自車両100が走行するギヤ段を別のギヤ段に変速機4により変速させる。変速制御部114は、加速制御部113が速度を上昇させている間、自車両100の速度がその時点の自車両100のギヤ段に対応するパワーバンドから外れないように、目標ギヤ段まで自車両100のギヤ段を段階的に変速する。
【0037】
図3は、変速制御部114による自車両100の変速の例を示す。
図3の縦軸は、自車両100のエンジン回転数を示す。
図3の横軸は、自車両100が走行する速度を示す。
図3の複数の直線は、自車両100の複数のギヤ段に対応しており、自車両100の速度と、エンジン回転数との関係をギヤ段ごとに示す。
図3中の横方向に延びる破線は、パワーバンドを示す。パワーバンドとは、上述のとおり、エンジンが最も効率よく駆動力を発揮することが可能な回転域である。
【0038】
自車両100が走行する速度の変化を
図3中に太線で示す。
図3に示すように、変速制御部114が自車両100のギヤ段を1つ上のギヤ段に変速すると、自車両100のエンジン回転数は減少する。変速制御部114がギヤ段を変速した後、加速制御部113が自車両100を加速させることによりエンジン回転数は再度増加する。
【0039】
図3中に示すそれぞれのギヤ段では、自車両100の速度と、エンジン回転数との関係は比例する。このため、変速制御部114は、加速制御部113が自車両100を目標速度まで加速している間、自車両100の速度に対応するエンジン回転数がその時点のギヤ段のパワーバンドから外れないようにギヤ段を段階的に変速する。
【0040】
自車両100の速度がその時点でのギヤ段に対応するパワーバンドから外れている場合、加速制御部113は、自車両100をスムーズに加速することができない。変速制御部114は、自車両100の速度がその時点でのギヤ段に対応するパワーバンドから外れている場合、自車両100の速度がギヤ段に対応するパワーバンドから外れない低速側のギヤ段に変速する。
【0041】
変速制御部114は、ギヤ段を1つずつ低速側のギヤ段に変速するとすれば、自車両100をスムーズに加速するまでに時間を要するため、合流時に合流先の車線において他の車両400及び500との速度差を解消しにくくなる。このため、変速制御部114は、自車両100の速度がギヤ段に対応するパワーバンドから外れない低速側のギヤ段に直ちに変速する。このようにして、変速制御部114は、自車両100がスムーズに加速することができるようにすることができる。
【0042】
変速制御部114は、加速制御部113が自車両100の速度を目標速度まで上昇させた後に、自車両100のギヤ段を目標ギヤ段から別のギヤ段に変速する。例えば、別のギヤ段は、単位容量の燃料で走行可能な走行距離が目標ギヤ段において単位容量の燃料で走行可能な走行距離よりも長いギヤ段である。
【0043】
[走行制御装置による合流時の変速の処理手順]
図4は、走行制御装置1による変速の処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は、自車両100が他の車線と合流する車線を走行中である場合に開始される。まず、取得部111は、合流先の車線を走行する複数の他の車両の速度の統計量を外部装置200から通信装置300を介して取得する(S101)。特定部112は、複数の他の車両の速度の統計量を取得部111が取得したか否かを判定する(S102)。特定部112は、複数の他の車両の速度の統計量を取得部111が取得したと判定した場合に(S102のYES)、取得部111が取得した統計量を目標速度に定める(S103)。特定部112は、定めた目標速度を含む速度域が目標ギヤ段のパワーバンドに含まれるように目標ギヤ段を特定する(S104)。
【0044】
加速制御部113は、自車両の速度が目標速度に到達するまで、自車両100を加速させる(S105)。変速制御部114は、自車両100の速度がその時点の自車両100のギヤ段に対応するパワーバンドから外れないように1つ上のギヤ段に変速することが可能か否かを判定する(S106)。変速制御部114は、自車両100の速度がその時点のギヤ段のパワーバンドから外れないように1つ上のギヤ段に変速することが可能であると判定した場合に(S106のYES)、1つ上のギヤ段に変速する(S107)。変速制御部114は、目標ギヤ段まで変速したか否かを判定する(S108)。変速制御部114は、目標ギヤ段まで変速したと判定した場合に(S108のYES)、処理を終了する。
【0045】
特定部112は、S102の判定において複数の他の車両の速度の統計量を取得部111が取得していないと判定した場合に(S102のNO)、合流先の車線を走行可能な法定最高速度を目標速度として定め(S109)、S104の処理に移る。変速制御部114は、S106の判定において自車両100の速度がその時点のギヤ段のパワーバンドから外れないように1つ上のギヤ段に変速することが可能ではないと判定した場合に(S106のNO)、S105の処理に戻る。変速制御部114は、S108の判定において目標ギヤ段まで変速していない場合に(S108のNO)、S105の処理に戻る。
【0046】
[本開示の走行制御装置1による効果]
変速制御部114は、加速制御部113が目標速度まで自車両を加速する間、自車両100の速度がその時点の自車両100のギヤ段のパワーバンドから外れないように自車両100を段階的に変速させる。このため、変速制御部114は、合流先の車線を走行中の他の車両400及び500の速度と自車両100の速度との差が大きい場合においても目標速度まで加速する途中で自車両100の速度がギヤ段のパワーバンドから外れないようにすることができる。したがって、変速制御部114は、自車両100をスムーズに加速させ、合流時に合流先の車線において他の車両400及び500と自車両100との速度差を比較的短い時間で解消することができる。
【0047】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0048】
1 走行制御装置
2 通信部
3 燃料噴射機構
4 変速機
10 記憶部
11 制御部
100 自車両
111 取得部
112 特定部
113 加速制御部
114 変速制御部
200 外部装置
300 通信装置
400 車両
500 車両
S 走行制御システム
【要約】
【課題】車両をスムーズに加速させる。
【解決手段】自車両100が走行中の車線が合流する合流先の車線を走行する複数の他の車両の速度の統計量を取得する取得部111と、取得した統計量に基づいて目標速度を定め、当該目標速度に対応するパワーバンドを有する目標ギヤ段を特定する特定部112と、自車両100が走行する速度を目標速度まで上昇させる加速制御部113と、加速制御部113が速度を上昇させている間、自車両100の速度がその時点の自車両100のギヤ段に対応するパワーバンドから外れないように、目標ギヤ段まで自車両のギヤ段を段階的に変速する変速制御部114と、を備える。
【選択図】
図2