(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】トイレットロール
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A47K10/16 A
(21)【出願番号】P 2022196439
(22)【出願日】2022-12-08
(62)【分割の表示】P 2020118216の分割
【原出願日】2016-08-09
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】服部 真悟
(72)【発明者】
【氏名】永谷 宏幸
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-189728(JP,A)
【文献】特開2014-233363(JP,A)
【文献】特開2009-034278(JP,A)
【文献】特開平07-268800(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043378(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
D21H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1プライのトイレットペーパーを巻き取ってロール状としたトイレットロールであって、
前記トイレットロールの巻長が95m以上150m以下であり、
前記トイレットロールの巻径が110mm以上120mm以下であり、
前記トイレットペーパーの1プライ当たりの坪量が14.0g/m
2以上16g/m
2以下であり、
前記トイレットペーパーはエンボス加工が施されたものであり、
前記トイレットペーパーの表面及び裏面のハンドフィール値の平均が65.0以上であ
り、
前記トイレットペーパーに50gf/cm
2
の圧力をかけた際の厚みが75μm以上110μm以下である、トイレットロール。
【請求項2】
前記トイレットペーパーは、前記エンボス加工により形成されたエンボスパターンを有し、
前記エンボスパターンでは、エンボス深さが0.85mm以下である請求項1に記載のトイレットロール。
【請求項3】
1プライのトイレットペーパーにエンボス加工を施す工程と、
エンボス加工を施したトイレットペーパーをロール状に巻き取る工程とを含むトイレットロールの製造方法であって、
前記エンボス加工を施す工程は、1プライのトイレットペーパーにエンボスロールでエンボスを形成する工程であり、
前記エンボス加工を施す工程では、前記エンボスロールを8kgf/cm以上20kgf/cm以下の圧力で型押しし、
前記トイレットロールの巻長が95m以上150m以下であり、
前記トイレットロールの巻径が110mm以上120mm以下であり、
前記トイレットペーパーの1プライ当たりの坪量が14.0g/m
2以上16g/m
2以下であり、
前記トイレットペーパーの表面及び裏面のハンドフィール値の平均が65.0以上であ
り、
前記トイレットペーパーに50gf/cm
2
の圧力をかけた際の厚みが75μm以上110μm以下である、トイレットロールの製造方法
【請求項4】
前記エンボスロールは凸構造を有し、前記凸構造の高さは0.85mm以下である請求項
3に記載のトイレットロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレットロールに関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパー製品は、トイレットペーパーウェブを1枚又は2枚以上に重ねたトイレットペーパーを所定の大きさに切断して製造される。一般的には長尺のトイレットペーパーがロール状に巻回されてなるトイレットロール(ロール状トイレットペーパー)が多用されている。1枚のトイレットペーパーウェブからなるトイレットペーパーは1プライのトイレットペーパーと称され、2枚重ねのトイレットペーパーウェブからなるトイレットペーパーは2プライのトイレットペーパーと称されている。
【0003】
トイレットペーパーは、例えば、12ロールや16ロールといった単位で包装されたものが広く流通している。しかし、これらの包装体は嵩張るため、持ち運べる量は限られている。また、公共施設等においてはトイレットロールの保管スペースも不足しがちである。このため、トイレットロールを構成するトイレットペーパーの紙厚を調整したり、ロール状に巻き取る際の巻き締め力を強くすることで巻長を長くしたロール製品の利用も進んでいる(例えば、特許文献1及び2)。
【0004】
特許文献1には、1枚の衛生薄葉紙をロール状に巻き取った衛生薄葉紙ロールであって、衛生薄葉紙の1枚当りの坪量が16.5~21.5g/m2、かつ紙厚が0.6~1.1mm/10枚以下であり、衛生薄葉紙ロールの巻長が120~185m、巻直径が100~132mmである衛生薄葉紙ロールが開示されている。ここでは、坪量を下げずに、風合いや使用感を向上させることが検討されている。
また、特許文献2には、フィルムからなる包装袋にロール製品を複数個収納してなるロール製品パッケージが開示されている。特許文献2には、ロール製品が1プライの場合、坪量が16.5~21.5g/m2であることが好ましいと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-233363号公報
【文献】特開2015-101388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の巻長を長くしたトイレットロールにおいては、巻長を長くするために、トイレットペーパーをきつく巻き締めるため、トイレットペーパーの強度を高める必要があった。しかしながら、巻き締めに耐え得るトイレットペーパーにおいては、強度が高められている一方で、それ自体の柔らかさや肌触りが悪化する傾向にあった。
【0007】
また、1プライのトイレットロールにおいては、巻長を長くするために、巻き取り工程で得られる巻取が固くなり、所定の幅に断裁する際に、コア芯(紙管)が潰れる場合があった。コア芯(紙管)が潰れたトイレットロールは、外観が悪化するだけでなく、使用時にトイレットペーパーをスムーズに引き出すことができないという問題も引き起こす。
【0008】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、良好な肌触りを有するトイレットペーパーから構成されたトイレットロールを提供することを目的として検討を進めた。また、本発明者らは、コア芯潰れのないトイレットロールを提供することも目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、1プライのトイレットロールにおいて、トイレットロールを構成するトイレットペーパーの坪量を所定の範囲とし、かつトイレットペーパーにエンボスを形成することで、巻長の長いトイレットロールを構成するトイレットペーパーにおいてもその肌触りを高め得ることを見出した。さらに、本発明者らは、このようなトイレットロールにおいては、コア芯潰れの発生がないことを発見し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0010】
[1] 1プライのトイレットペーパーを巻き取ってロール状としたトイレットロールであって、トイレットロールの巻長が95m以上150m以下であり、巻径が110mm以上120mm以下であり、トイレットペーパーの1プライ当たりの坪量が10g/m2以上16g/m2以下であり、トイレットペーパーにはエンボス加工が施されたものであるトイレットロール。
[2] トイレットペーパーの表面及び裏面のハンドフィール値の平均が65.0以上である[1]に記載のトイレットロール。
[3] トイレットペーパーに50gf/cm2の圧力をかけた際の厚みが75μm以上110μm以下である[1]又は[2]に記載のトイレットロール。
[4] トイレットペーパーに0.5gf/cm2の圧力をかけた際の厚みが180μm以上300μm以下である[1]~[3]のいずれかに記載のトイレットロール。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、巻長の長い1プライのトイレットロールを、肌触りが良好なトイレットペーパーで構成することができる。また、本発明によれば、コア芯潰れのないトイレットロールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明のトイレットロールの構成を説明する概略図である。
【
図2】
図2は、本発明のトイレットロールの構成を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0014】
(トイレットロール)
本発明は、1プライのトイレットペーパーを巻き取ってロール状としたトイレットロールに関する。ここで、本発明のトイレットロールの巻長は95m以上150m以下であり、巻径は110mm以上120mm以下である。また、本発明のトイレットロールを構成するトイレットペーパーの1プライ当たりの坪量は10g/m2以上16g/m2以下である。そして、本発明のトイレットロールを構成する1プライのトイレットペーパーにはエンボス加工が施されている。
【0015】
本発明のトイレットロールは上記構成を有するものであるため、巻長の長いトイレットロールであるにも関わらず、肌触りが良好なトイレットペーパーで構成されている。また、トイレットペーパーには、エンボス加工が施されているため、トイレットペーパー自体の嵩高さや厚み感が損なわれることがない。このため、1プライ品であり、かつ巻長の長いトイレットロールであるにも関わらず、トイレットペーパーの使用感が低下することがない。さらに本発明においては、巻長の長いトイレットロールを構成する際の所定の幅に断裁する時にコア芯が潰れることが抑制されている。
【0016】
図1は、本発明のトイレットペーパーの構成を説明する概略図である。
図1では、2プライのトイレットペーパー20から構成されるトイレットロール100を図示している。トイレットロール100においては、トイレットペーパー20のうち、巻外側に配される面を表面(a)といい、巻内側に配される面を裏面(b)という。
【0017】
本発明のトイレットロールの巻長(巻き長さ)は95m以上150m以下である。このような巻長を有するトイレットロールは、いわゆる長巻トイレットロールと呼ばれることもある。また、2倍巻トイレットロールもしくは3倍巻トイレットロールと称されることもある。
【0018】
本発明のトイレットロールの巻径(外径)は、110mm以上120mm以下であることが好ましい。ここで、トイレットロールの巻径は、
図2においてRで表される長さである。トイレットロールの巻径を上記範囲内とすることにより、あらゆるトイレットロールホルダーにトイレットロールを設置することができ、使用場面が制限されることはない。
【0019】
本発明のトイレットロールを構成するトイレットペーパーの1プライ当たりの坪量は、10g/m2以上16g/m2以下である。トイレットペーパーの1プライ当たりの坪量は、10g/m2以上であればよく、11g/m2以上であることが好ましく、12g/m2以上であることがより好ましい。また、トイレットペーパーの1プライ当たりの坪量は、16g/m2以下であればよく、15.5g/m2以下であることが好ましい。
本発明においては、トイレットペーパーの坪量を上記範囲内とすることにより、所望の巻径を有するトイレットロールを製造しやすくなる。通常、巻長の長いトイレットロールを製造する際には、ロール状に巻き取る際の巻き締め力を強くすることによって巻径をコントロールしている。しかし、本発明においては、ロール状に巻き取る際の巻き締め力を従来法における強さまで強くしなくても所望の巻径を有するトイレットロールを製造することができる。また、巻取の固さを抑えることで所定の幅に断裁する際にコア芯(紙管)潰れの発生をより効果的に抑制することができる。
【0020】
本発明のトイレットロールを構成する1プライのトイレットペーパーにはエンボス加工が施されている。本発明においては、1プライのトイレットペーパーの幅方向に略均一にエンボスが形成される。ここで、幅方向に略均一にエンボスが形成された場合、長さ方向の任意点から±0.5cm(長さ1cm)の長さを有する領域において、幅方向に略均一密度のエンボスが観測される。また、本発明においては、エンボスは長さ方向にも略均一にエンボスが形成されることが好ましい。すなわち、1プライのトイレットペーパーの全領域にわたって、略均一にエンボスが形成される。
図1に示されたトイレットロールにおいて、巻きとかれたトイレットペーパーに施されているエンボスの様子は黒点で図示されている。
図1のトイレットペーパーのエンボス加工の様子からもわかるように、本発明においては、トイレットペーパーの全領域にわたって、略均一にエンボスが形成されている。
【0021】
ここで、トイレットペーパーを幅方向に3分割した際に、隣り合う領域のエンボス密度の差は、それぞれ10%以下であることが好ましい。具体的には、長さ方向の任意点から±0.5cm(長さ1cm)の長さを有する領域をサンプルとして切り出し、このサンプルを幅方向に3分割する。この場合、端縁から順に第1領域、第2領域、第3領域とに分割される。本発明においては、第1領域と第2領域のエンボス密度の差が10%以下であることが好ましく、第2領域と第3領域のエンボス密度の差も10%以下であることが好ましい。なお、第1領域と第3領域のエンボス密度の差も10%以下であることが好ましい。
【0022】
トイレットペーパーのエンボスパターンでは、1個のエンボス直径は0.5mm以上2mm以下が好ましく、0.7mm以上1.3mm以下がより好ましい。またエンボス密度は10個/cm2以上30個/cm2以下が好ましく、15個/cm2以上25個/cm2以下がより好ましい。
【0023】
エンボス加工は、エンボスの付与されたエンボスロールを幅方向の全域に当てて、加圧することで行う。エンボスロールの押し込み量は、トイレットペーパーの厚みが後述する条件を満たすように調整することが好ましい。
【0024】
本発明のトイレットロールを構成する1プライのトイレットペーパーに50gf/cm2の圧力をかけた際の厚み(Tm)は75μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましい。また、厚み(Tm)は110μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。厚み(Tm)を上記範囲内とすることにより、トイレットペーパーの厚み感をしっかりと感じとることができ、肌触りや使用感に優れたトイレットペーパーを得ることができる。
【0025】
また、本発明のトイレットロールを構成する1プライのトイレットペーパーに0.5gf/cm2の圧力をかけた際の厚み(T0)は180μm以上であることが好ましく、190μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましく、210μm以上であることが特に好ましい。また、厚み(T0)は300μm以下であることが好ましく、280μm以下であることがより好ましく、260μm以下であることがさらに好ましく、240μm以下であることが特に好ましい。厚み(T0)を上記範囲内とすることによっても、トイレットペーパーの肌触りを高めることができる。
【0026】
ここで、上述した厚み(T0)及び厚み(Tm)の値はKES FB3-AUTO-A自動化圧縮試験機(カトーテック株式会社製)を用いて測定することができる。具体的には、KES FB3-AUTO-A自動化圧縮試験機の2cm2の加圧板と受圧板間に10cm×20cmの大きさにカットしたサンプルを設置し、50秒/mmの速さで加圧板を下降させ、その際に変化する圧力とその時のサンプルの厚みを測定する。T0は圧力が0.5gf/cm2におけるサンプルの厚み(mm)であり、Tmは圧力が50gf/cm2におけるサンプルの厚み(mm)である。T0及びTmの値はエンボスの凹面(エンボスロールを押し当てた面)を加圧板側として10回の測定を行い、得られた測定データからHampel identifierの方法で異常値を除外し、平均値として算出した値である。なお、上記サンプルの測定はISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で行う。
【0027】
本発明のトイレットロールは、コア芯(紙管)にトイレットペーパーを巻いてなるものである。コア芯径は30mm以上40mm以下であることが好ましい。トイレットロールのコア芯径はコア芯(紙管)の直径であり、
図2においてSで表されている長さである。
【0028】
本発明のトイレットロールの巻き密度は、巻長が95mの場合は、0.95m/cm2以上であることが好ましく、1.03m/cm2以上であることがより好ましい。また、1.15m/cm2以下であることが好ましく、1.12m/cm2以下であることがより好ましい。
トイレットロールの巻き密度は、巻長が120mの場合は、1.15m/cm2以上であることが好ましく、1.31m/cm2以上であることがより好ましい。また、1.45m/cm2以下であることが好ましく、1.41m/cm2以下であることがより好ましい。
トイレットロールの巻き密度は、巻長が150mの場合は、1.45m/cm2以上であることが好ましく、1.63m/cm2以上であることがより好ましい。また、1.85m/cm2以下であることが好ましく、1.77m/cm2以下であることがより好ましい。
なお、上記巻き密度は、コア芯径を39mmとした場合の値である。
【0029】
トイレットロールの巻き密度は、2プライのトイレットロールの巻長の長さを紙管の断面積を除いたロールの断面積(
図2におけるP(ドット状模様部分))で除すことにより算出した値である。すなわち、巻き密度は下記の式で算出することができる。
巻き密度(m/cm
2)=巻長/トイレットロール断面積
【0030】
本発明のトイレットペーパーの表面及び裏面のハンドフィール値の平均は65.0以上であることが好ましく、66.0以上であることがより好ましい。なお、HF値の上限は特に限定されるものではないが、一般的に95.0以下であることが好ましい。
【0031】
ここで、ハンドフィール値(HF値)は、ティシューソフトネスアナライザー(Emtec Electronic GmbH社製)を用いて、以下の測定方法によって測定することができる。
まず、ティシューソフトネスアナライザーのサンプル台に、直径112.8mmの円形にカットしたサンプルを設置する。このサンプルに対し、ブレード付きローターを100mNの押し込み圧力をかけて上方から押し込む。その後、ブレード付きローターを回転数が2.0回転/秒となるように回転させ、その時の振動周波数を測定する。
また、直径112.8mmの円形にカットした別のサンプルに対し、ブレード付きローターを100mNと、60mNの圧力で押し込んだ際の上下方向の変形変位量を算出する。HF値は、振動周波数と変形変位量から算出される値であり、計算のアルゴリズムはTP IIを用いることができる。
HF値を算出する際は、表裏面について測定をそれぞれ10回ずつ行い、得られた測定データからHampel identifierの方法で異常値を除外する。そして、各表面のHF値の平均値から、トイレットペーパーのHF値の平均値を算出する。
なお、上記サンプルの測定はISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で行う。また、測定の際には、付属の説明書に従い標準サンプル(emetec ref.2X(nn.n))で校正し、アルゴリズムをTP IIに設定する。計算ソフトウェアとしてはemetec measurement system ver.3.22を使用する。
【0032】
トイレットペーパーの長さ方向の引張強度は、1.00N/15mm以上であることが好ましく、1.30N/15mm以上であることがより好ましい。また、トイレットペーパーの長さ方向の引張強度は、3.00N/15mm以下であることが好ましく、2.60N/15mm以下であることがより好ましい。
トイレットペーパーの幅方向の引張強度は0.30N/15mm以上であることが好ましく、0.40N/15mm以上であることがより好ましい。また、トイレットペーパーの幅方向の引張強度は2.00N/15mm以下であることが好ましく、1.50N/15mm以下であることがより好ましく、1.20N/15mm以下であることがさらに好ましい。
【0033】
トイレットペーパーの引張強度の測定は、横型引張試験機(熊谷理器社製)を用いて行うことができる。この場合、幅が15mmのサンプルを用い、引張速度50mm/分、スパン長100mmの条件で測定を行う。本願明細書における引張強度は1プライのトイレットペーパーの引張強度であり、6サンプルの平均値である。なお、引張強度の測定は、ISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で行う。
【0034】
(繊維原料)
トイレットペーパーは、繊維原料を含むスラリーを抄紙することによって得られる。繊維原料としては、パルプを用いることが好ましい。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹パルプ(広葉樹クラフトパルプ(LKP))、針葉樹パルプ(針葉樹クラフトパルプ(NKP))、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。パルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0035】
繊維原料としては、針葉樹パルプ及び広葉樹パルプから選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、針葉樹パルプを用いることが好ましい。中でも、本発明においては、針葉樹パルプと広葉樹パルプを併用することが好ましく、針葉樹クラフトパルプ(NKP)と広葉樹クラフトパルプ(LKP)を併用することがより好ましい。
【0036】
繊維原料として針葉樹パルプが用いられる場合は、針葉樹パルプの含有量は、トイレットペーパーに含まれるパルプ成分の全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。また、針葉樹パルプの含有量は、トイレットペーパーに含まれるパルプ成分の全質量に対して、80質量%以下であることが好ましい。針葉樹パルプの含有量を上記範囲内とすることにより、トイレットペーパーの坪量やHF値等を所望の範囲内とすることが容易になる。
【0037】
繊維原料としては、針葉樹パルプと広葉樹パルプを併用することが好ましい。すなわち、トイレットペーパーには、針葉樹パルプの他に広葉樹パルプがさらに含まれることが好ましい。広葉樹パルプの含有量は、トイレットペーパーに含まれるパルプ成分の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、広葉樹パルプの含有量は、トイレットペーパーに含まれるパルプ成分の全質量に対して、70質量%以下であることが好ましい。広葉樹パルプの含有量を上記範囲内とすることにより、トイレットペーパーの坪量やHF値等を所望の範囲内とすることが容易になる。
【0038】
トイレットペーパー中に含有される繊維成分(パルプ成分)のカナディアン・フリーネス・スタンダード(C.F.S)で表されるフリーネスは400ml以上であることが好ましく、450ml以上であることがより好ましく、500ml以上であることがさらに好ましい。また、フリーネスは700ml以下であることが好ましい。繊維成分のフリーネスを上記範囲内とすることにより、トイレットペーパーの坪量やHF値等を所望の範囲内とすることが容易になり、手触り感に優れたトイレットペーパーが得られる。なお、繊維成分のフリーネスは後述するように、叩解条件を制御することにより調整することができる。
【0039】
(任意成分)
トイレットペーパーには、繊維原料の他に任意成分が含まれていてもよい。任意成分としては、例えば、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、柔軟剤等を挙げることができる。乾燥紙力剤としては、例えば、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド(PAM)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を挙げることができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミドエピクロロヒドリン、尿素、メラミン、熱架橋性ポリアクリルアミド等を挙げることができる。柔軟剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等を挙げることができる。上記の任意成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
トイレットペーパーに乾燥紙力剤が含まれている場合は、乾燥紙力剤の含有量は、トイレットペーパーに含まれる繊維成分の100質量部に対して、0.01質量部以上0.50質量部以下であることが好ましい。
トイレットペーパーに湿潤紙力剤が含まれている場合は、湿潤紙力剤の含有量は、トイレットペーパーに含まれる繊維成分の100質量部に対して、0.001質量部以上0.10質量部以下であることが好ましい。
また、トイレットペーパーに柔軟剤が含まれている場合は、柔軟剤の含有量は、トイレットペーパーに含まれる繊維成分の100質量部に対して、0.01質量部以上0.50質量部以下であることが好ましい。
本発明においては、上記のような任意成分の添加量を適宜調整することによって、坪量を下げた場合であっても、トイレットペーパーの強度を維持している。
【0041】
(トイレットロールの製造方法)
本発明のトイレットロールの製造方法は、1プライのトイレットペーパーウェブを得る工程と、トイレットペーパーにエンボス加工を施す工程と、エンボス加工を施したトイレットペーパーをロール状に巻き取る工程と、を含む。
なお、トイレットロールの製造方法の全工程中において、上記のエンボス加工を施す工程は1回のみ設けられる。
【0042】
1プライのトイレットペーパーウェブを得る工程は、繊維原料を含むスラリーを得る工程を含む。スラリーを得る工程においては、繊維原料を叩解する工程を含むことが好ましい。叩解工程においては、例えば、ダブルディスクリファイナー等を用いて叩解処理を施すことができる。この時、針葉樹パルプと広葉樹パルプをそれぞれ単独で叩解してもよいし、混合させた後に叩解してもよい。
【0043】
1プライのトイレットペーパーウェブを得る工程は、繊維原料を含むスラリーを抄紙する工程を含む。抄紙する工程で用いられる抄紙機としては、例えば、サクションブレストフォーマー(円網タイプ、長網タイプ)、ツインワイヤーフォーマー、円網フォーマー(Cラップ、Sラップ)、クレセントフォーマー等の抄紙機を挙げることができる。
【0044】
抄紙する工程では、網状のワイヤー上に繊維原料を含むスラリーが供給されてパルプの薄層が形成される。その後、プレスパートに向かって移送されながら、パルプの薄層の水分が網の下へ抜かれることでパルプの薄層は脱水される。このような工程を脱水工程と呼ぶこともある。一般に、ワイヤーは、金属またはプラスチック製の網を環にしたものである。
【0045】
抄紙する工程では、例えば、針葉樹パルプと広葉樹パルプを混合したパルプスラリーを抄紙して均一な1つの層として湿紙を形成する方法、もしくは、針葉樹パルプ層と広葉樹パルプ層を抄き合わせて1枚の湿紙を形成する方法があるが、いずれの手法を採用してもよい。
【0046】
脱水工程の後、湿紙はワイヤーからフェルトへと移動する。フェルトを介してプレスロールで圧力を加えることにより、湿紙はさらに機械的に搾水される。これを、プレス工程あるいは搾水工程と呼ぶこともある。
【0047】
抄紙する工程は、搾水工程の後に、さらに乾燥工程を含むことが好ましい。乾燥工程は、例えば、湿紙に向かって熱風を吹き付ける工程、もしくは、ドライヤシリンダーを外周面に圧着させる工程であることが好ましい。
【0048】
エンボス加工を施す工程では、1プライのトイレットペーパーウェブにエンボス加工が施される。エンボス加工は、エンボスパターンを構成する凸構造が設置されたエンボスロールとラバーロールとの間に1プライのトイレットペーパーウェブを通し、エンボスパターンを型押しすることによって行われる。エンボスロールのエンボス高さや、押し込み量、押し込み圧を変更することによって、所望のエンボス高さを有するエンボスを形成することができる。
ここで、エンボス加工に用いるエンボスロールには凸構造高さ0.75mm以上0.85mm以下の凸構造が設置されていることが好ましい。また、エンボスロールには凸構造密度(エンボス密度)が10個/cm2以上30個/cm2以下の略均一な凸構造が設置されていることが好ましい。そして、エンボス加工では、上記のエンボスロールを8kgf/cm以上20kgf/cm以下の圧力で型押しすることが好ましい。
【0049】
上記エンボス工程の後には、さらに巻き取り工程が設けられる。この巻き取り工程においては、所定の製品長を満たすように、所定の長さ分の巻き取りを行う。そして、得られた巻取ロールを所定の幅に断裁する。
巻き取り工程では、例えばマンドレルシャフトを有するワインダーを用いて、以下のように行うことができる。(1)まず巻芯となる紙管をマンドレルシャフトに挿入し、固定する。(2)紙管に接着剤を付着させ、紙管にトイレットペーパーの始端部を接着固定する。(3)マンドレルシャフトを回転させることにより、トイレットペーパーを製品長さ分だけ紙管に巻き取る。
【0050】
また、巻き取り工程では、巻き取る際に外側から複数の駆動ロール(例えば、アッパーロール、ロウアーロール、ライダーロール等)でロールを支持しながら巻き取ることもでき、本発明においては、このような方法(サーフェイス方式)を用いることも好ましい。サーフェイス方式で巻き取りを行うことにより、駆動ロールの押し付け圧を調整することができ、トイレットロールの巻径をコントロールしやすくなる。また、生産速度を高めることもできる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0052】
(実施例1)
針葉樹クラフトパルプ(NKP)23質量部、広葉樹クラフトパルプ(LKP)77質量部となるように混合したパルプスラリーを、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解電力200Kwで叩解した。上記パルプスラリーに柔軟剤(星光PMC株式会社製)0.02質量部、湿潤紙力剤(星光PMC株式会社製)0.05質量部を添加して、抄紙用パルプスラリーを調製した。
調製した抄紙用パルプスラリーを、ツインワイヤーヤンキーマシンにより抄紙し、トイレットペーパーウェブ巻取を得た。なお、トイレットペーパーの坪量(1プライ)が表1に記載の通りとなるように抄紙条件を調整した。
得られた原紙巻取を加工機にかけ、巻き解いた後、エンボス加工を施した。その後、コア芯径39mmのコア芯に、サーフェイス方式で上記トイレットペーパーを巻き取った。サーフェイス方式の巻き取り工程では、表1の巻径になるようにライダーロールの押し付け圧を調整し、表1の長さになるように再度巻き取った。得られた巻取を所定の幅に断裁することで1プライのトイレットロールを得た。
【0053】
(実施例2)
坪量が表1に記載の通りとなるように、針葉樹クラフトパルプ(NKP)15質量部、広葉樹クラフトパルプ(LKP)85質量部となるように混合したパルプスラリーを叩解電力150Kwで叩解した以外は、実施例1と同様にして1プライのトイレットロールを得た。
【0054】
(実施例3)
坪量が表1に記載の通りとなるように、針葉樹クラフトパルプ(NKP)20質量部、広葉樹クラフトパルプ(LKP)75質量部となるように混合したパルプスラリーを叩解電力150Kwで叩解した以外は実施例1と同様にして1プライのトイレットロールを得た。
【0055】
(比較例1)
坪量が表1に記載の通りとなるように、針葉樹クラフトパルプ(NKP)23質量部、広葉樹クラフトパルプ(LKP)77質量部となるように混合したパルプスラリーを叩解電力250Kwで叩解し、柔軟剤の添加量を0.05質量部に変更した以外は実施例1と同様にして1プライのトイレットロールを得た。
(比較例2及び3)
比較例2及び3は、市販されている既知の製品である。
【0056】
(評価)
(坪量)
実施例及び比較例で得たトイレットペーパーの坪量はJIS P 8124に準拠して測定した。
【0057】
(引張強度)
実施例及び比較例で得たトイレットペーパーの引張強度は、サンプル幅15mm、引張速度50mm/分、スパン長100mmの条件で、横型引張試験機(熊谷理器社製)を用いて測定した。なお、引張強度は、1プライのトイレットペーパーの縦方向と横方向の両方向の強度を測定した。各々の方向について6サンプルの平均値を算出してそれぞれの引張強度とした。また、引張強度の測定は、ISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で行った。
【0058】
(HF値の測定)
実施例及び比較例で得られたトイレットペーパーのHF値は、ティシューソフトネスアナライザー(Emtec Electronic GmbH社製)を用いて測定した。サンプル台に、直径112.8mmの円形にカットしたサンプルを設置し、このサンプルに対し、ブレード付きローターを100mNの押し込み圧力をかけて上方から押し込んだ。その後、ブレード付きローターを回転数が2.0回転/秒となるように回転させ、その時の振動周波数を測定した。また、直径112.8mmの円形にカットした別のサンプルに対し、ブレード付きローターを100mNと、60mNの圧力で押し込んだ際の上下方向の変形変位量を算出した。HF値は、振動周波数と変形変位量から、算出される値であり、計算のアルゴリズムはTPIIを用いた。なお、上記の測定は、各サンプルの表面(外面)と裏面(内面)についてそれぞれ10回ずつ行い、得られた測定データからHampel identifierの方法で異常値を除外し、表面及び裏面について各々平均値を算出した。さらにこのようにして算出した2つの面のHF値の平均値を算出し、それをHF値として評価に用いた。
なお、上記サンプルの測定はISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で行った。また、測定の際には、付属の説明書に従い標準サンプル(emetec ref.2X(nn.n))で校正し、アルゴリズムをTP IIに設定した。計算ソフトウェアにはemetec measurement system ver.3.22を使用した。
【0059】
(圧縮性)
実施例及び比較例で得たトイレットペーパーの圧縮性について、KES FB3-AUTO-A自動化圧縮試験機(カトーテック株式会社製)を用いて測定した。2cm2の加圧板と受圧板間に10cm×10cmにカットしたサンプルを設置し、50秒/mmの速さで加圧板を下降させ、その際に時々刻々と変化する圧力とその時のサンプルの厚みを測定することで、下記の項目を算出した。
T0:圧力0.5gf/cm2下におけるサンプルの厚み
Tm:圧力50gf/cm2下におけるサンプルの厚み
上記の項目の値は、各サンプルについて10回の測定を行い、得られた測定データからHampel identifierの方法で異常値を除外し、平均値として算出した値である。なお、上記サンプルの測定はISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で行った。
【0060】
(加工適性)
エンボス加工工程の後には、巻き取り工程が設けられる。巻き取り工程においては、所定長さ分の巻き取りを行い、その後、得られた巻取を所定の幅に断裁する。この断裁後の断面の状態を50ロール分観察し、トイレットロールのコア芯(紙管)の状態について3段階で評価を行った。表1に示した記号は下記の意味を示す。
<コア芯潰れ>
○:コア芯の潰れが発生せず正常
△:コア芯の潰れが1個以上10個未満において発生
×:コア芯の潰れが10個以上で発生
【0061】
(官能評価)
実施例及び比較例で得たトイレットペーパーについて、水準を隠した状態で官能評価を実施した。50人に製品を触ってもらい、製品の肌触りについて3段階で評価を行った。表1に示した記号は下記の意味を示す。
<肌触り>
○:優れている
△:やや劣る
×:劣る
【0062】
【0063】
表1からわかるように実施例で得られたトイレットペーパーは、肌触りが良く、かつ加工適性にも優れていた。一方、比較例1では、トイレットロールの製造工程においてコア芯が潰れるという不具合が発生した。また、比較例2及び3で得られたトイレットペーパーは、肌触りに劣っていた。
【符号の説明】
【0064】
20 トイレットペーパー
100 トイレットロール
a 表面
b 裏面
P トイレットロールロールの断面積
R トイレットロールロールの巻径
S 紙管径