(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】鍵盤楽器
(51)【国際特許分類】
G10B 3/12 20060101AFI20240110BHJP
G10H 1/34 20060101ALI20240110BHJP
G10C 3/12 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G10B3/12 100
G10H1/34
G10C3/12 150
(21)【出願番号】P 2022204429
(22)【出願日】2022-12-21
(62)【分割の表示】P 2018117717の分割
【原出願日】2018-06-21
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(74)【代理人】
【識別番号】100171882
【氏名又は名称】北庄 麗絵子
(72)【発明者】
【氏名】谷口 弘和
(72)【発明者】
【氏名】赤石 明人
(72)【発明者】
【氏名】星野 暁久
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-110491(JP,U)
【文献】実開平01-085795(JP,U)
【文献】特開2001-265347(JP,A)
【文献】実開平05-073683(JP,U)
【文献】特開2013-125235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00-7/12
G10B 1/00-3/24
G10C 1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸孔が設けられている部位及び軸のいずれか一方を有し、前記いずれか一方が一端側に設けられている鍵と、
前記部位及び前記軸のいずれか他方を有
している鍵盤シャーシと、
を備え、
前記軸孔が円形状であり、前記軸が丸棒の外周面における前記鍵の長手方向の両側にそれぞれ切欠き部が設けられている形状であることによって、前記軸孔の内面と前記軸との間隙は、前記鍵の上下方向の第1間隙より前記鍵の長手方向の第2間隙の方が大きいことを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項2】
請求項1に記載の鍵盤楽器において、
前記鍵と、前記鍵盤シャーシと、のいずれか一方に有する前記軸の中心から少なくとも上方向及び下方向のいずれか一方の沿線上に、前記軸の厚みよりも薄い厚みの押えリブが設けられていることを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の鍵盤楽器において、
前記鍵は、前記一端側に弾性変形するコの字形状部を含み、
前記鍵盤シャーシは、前記鍵の前記一端側の前記コの字形状部を支持する一対の鍵支持片を有し、
前記軸孔は、前記コの字形状部の両側にそれぞれ設けられており、
前記軸は、前記鍵盤シャーシにおける前記一対の鍵支持片の対向面にそれぞれ設けられていることを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項4】
請求項3に記載の鍵盤楽器において、
前記鍵は、前記コの字形状部の上側に、前記弾性変形を規制する変形規制部、を有することを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項5】
請求項4に記載の鍵盤楽器において、
前記鍵に含まれる前記変形規制部の一端は、前記鍵盤シャーシに含まれる前記一対の鍵支持片の対向面に位置していることを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれかに記載の鍵盤楽器において、
前記鍵盤シャーシにおける前記一対の鍵支持片それぞれの上端は、前記鍵の前記一端側における前記鍵の揺動範囲の上端よりも高い位置にあることを特徴とする鍵盤楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノなどの鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鍵盤楽器においては、特許文献1に記載されているように、鍵が配列される鍵盤シャーシの後部上に、鍵の後部に設けられた一対の取付片を挟んで保持する一対の鍵支持片が設けられ、これら一対の鍵支持片に設けられた軸孔に一対の取付片に設けられた軸部が挿入されることにより、鍵が鍵盤シャーシ上に回転可能に取り付けられる構造のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような鍵盤楽器では、鍵盤シャーシの一対の鍵支持片に設けられた軸孔と、鍵の一対の取付片に設けられて軸孔に回転可能に挿入される軸部との両方が、ほぼ同じ大きさの円形状に形成されていると、一対の鍵支持片の軸孔に一対の取付片の軸部が嵌合して支持されるため、鍵の配列方向への動きが規制されてしまう。このため、鍵の前端部に片寄りが発生すると、鍵の前端部間の隙間が不揃いになり、鍵間の隙間を調整することが難しいという問題がある。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、鍵間の隙間を調整しても良好に押鍵することができる鍵盤楽器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明における鍵盤楽器は、軸孔が設けられている部位及び軸のいずれか一方を有し、前記いずれか一方が一端側に設けられている鍵と、前記部位及び前記軸のいずれか他方を有している鍵盤シャーシと、を備え、前記軸孔が円形状であり、前記軸が丸棒の外周面における前記鍵の長手方向の両側にそれぞれ切欠き部が設けられている形状であることによって、前記軸孔の内面と前記軸との間隙は、前記鍵の上下方向の第1間隙より前記鍵の長手方向の第2間隙の方が大きいことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、鍵間の隙間を調整しても良好に押鍵することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明を適用した鍵盤楽器の一実施形態を示した断面図である。
【
図2】
図1に示された鍵盤楽器の鍵盤シャーシに鍵を取り付ける状態を分解して示した断面図である。
【
図3】
図1に示された鍵盤楽器の鍵盤シャーシに1本の鍵を取り付けた状態を示した要部の平面図である。
【
図4】
図1に示された鍵盤楽器における鍵の取付部と鍵盤シャーシの鍵保持部とを示し、(a)はその要部を分解して示した斜視図、(b)は軸孔と軸部との対応関係を示した要部の拡大図である。
【
図5】
図2に示された鍵盤シャーシの鍵保持部を示した要部の背面図である。
【
図6】
図2に示された鍵盤楽器の鍵の白鍵を示し、(a)はその側面図、(b)はその平面図、(c)はその正面図である。
【
図7】
図3に示された鍵の取付部における一対の取付片を鍵盤シャーシの鍵保持部における一対の鍵支持片間に配置させて、軸部を軸孔内に挿入させた状態を示した要部の拡大平面図である。
【
図8】
図7に示された鍵の前端部を鍵の配列方向に変位させた状態を示した要部の拡大平面図である。
【
図9】
図1に示された鍵盤楽器における白鍵のうち、CEGBの白鍵を示し、(a)はその平面図、(b)は、その側面図である。
【
図10】
図1に示された鍵盤楽器における白鍵のうち、DFAの白鍵を示し、(a)はその平面図、(b)は、その側面図である。
【
図11】
図1に示された鍵盤楽器における黒鍵を示し、(a)はその平面図、(b)は、その側面図である。
【
図12】
図4(b)に示された軸孔と軸部との対応関係の第1変形例を示した要部の拡大図である。
【
図13】
図4(b)に示された軸孔と軸部との対応関係の第2変形例を示した要部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図11を参照して、この発明を適用した鍵盤楽器の一実施形態について説明する。
この鍵盤楽器は、
図1および
図2に示すように、ABS樹脂などの合成樹脂製の鍵盤シャーシ1と、この鍵盤シャーシ1上に配列されて上下方向にそれぞれ回転可能に取り付けられた複数の鍵2と、これら複数の鍵2の押鍵操作に応じてそれぞれオン動作するスイッチ部3と、を備えている。この場合、複数の鍵2は、白鍵2aと黒鍵2bとを有している。
【0010】
鍵盤シャーシ1は、楽器ケース(図示せず)内に配置されるものである。この鍵盤シャーシ1の前端部(
図1では左端部)には、
図1および
図2に示すように、前脚部5が底部から上方に突出して設けられている。この前脚部5の上部には、白鍵2aの横振れを防ぐための白鍵ガイド部6が各白鍵2aにそれぞれ対応して設けられている。
【0011】
また、この鍵盤シャーシ1の前後方向(
図1では左右方向)におけるほぼ中間部には、
図1および
図2に示すように、基板載置部7が前脚部5とほぼ同じ高さで設けられている。この基板載置部7上には、スイッチ部3が複数の基板支持部8によって取り付けられている。この場合、基板載置部7の前端部(
図1では左端部)には、黒鍵2bの横振れを防ぐための黒鍵ガイド部9が各黒鍵2bにそれぞれ対応して設けられている。
【0012】
また、この鍵盤シャーシ1の後部、つまり基板載置部7の後部側には、
図1および
図2に示すように、鍵載置部10が基板載置部7よりも一段高く設けられている。この鍵載置部10の上面には、
図1~
図5に示すように、鍵2を回転可能に支持する複数の鍵支持部11が上方に突出して設けられている。さらに、この鍵盤シャーシ1における鍵載置部10の後端部には、鍵盤シャーシ1の後端部を支持する後脚部12が鍵盤シャーシ1の上部から底部に向けて垂下されている。
【0013】
一方、鍵2は、
図1~
図4、
図6に示すように、その後端部(
図1では右端部)に取付部13が設けられ、この取付部13が鍵盤シャーシ1の鍵載置部10上に設けられた鍵支持部11に上下方向に回転可能に支持される構造になっている。この場合、鍵2は、白鍵2aと黒鍵2bとを有している。白鍵2aは、前後方向の長さが黒鍵2bの前後方向の長さよりも長く形成されている。黒鍵2bは、その高さが白鍵2aの高さよりも高く形成されている。これら以外は白鍵2aも黒鍵2bもほぼ同じ構造になっている。
【0014】
また、この鍵2の前後方向(
図1では左右方向)におけるほぼ中間部には、
図1および
図2に示すように、鍵盤シャーシ1の基板載置部7上に取り付けられたスイッチ部3を押圧するためのスイッチ押圧部14が下側に突出して設けられている。このスイッチ部3は、スイッチ基板15上にドーム状の膨出部16aが配列されたゴムシート16が配置された構造になっている。
【0015】
この場合、スイッチ基板15は、
図1に示すように、鍵2の配列方向に長い帯板状に形成されている。このスイッチ基板15は、その前後方向の両端部が複数の基板支持部8によって基板載置部7上に支持されている。ゴムシート16は、スイッチ基板15と同様、鍵2の配列方向に長い帯板状に形成されて、スイッチ基板15上に配置されている。ドーム状の膨出部16aは、ゴムシート16を膨出したものであり、鍵2のスイッチ押圧部14に対応してゴムシート16に配列されている。
【0016】
また、このスイッチ部3は、
図1に示すように、ゴムシート16の膨出部16aがスイッチ押圧部14によって押圧された際に、膨出部16aが弾性変形して、その内部の可動接点がスイッチ基板15の固定接点に接触することにより、オン信号を出力するようになっている。この場合、スイッチ基板15には、スイッチ部3のオン信号に基づいて楽音情報を生成し、この生成した楽音情報に基づいてスピーカから楽音を放音させるための発音部(いずれも図示せず)が設けられている。
【0017】
ところで、鍵盤シャーシ1の後部に設けられた複数の鍵支持部11それぞれは、
図1~
図5に示すように、鍵2の配列方向に互いに対向する一対の鍵支持片17を備えている。これら一対の鍵支持片17は、複数の鍵2それぞれに対応した状態で、鍵盤シャーシ1の鍵載置部10上に鍵2の配列方向に沿ってそれぞれ起立して設けられている。
【0018】
また、鍵2の後部に設けられた取付部13は、
図1~
図4、
図6に示すように、鍵2の配列方向に互いに対向する一対の取付片18を備えている。これら一対の取付片18は、互いに接近または離反する方向に撓み変形し、鍵盤シャーシ1の一対の鍵支持片17間に弾力的に挟まれて保持されるようになっている。
【0019】
この場合、一対の取付片18における各下部には、
図1、
図2、および
図4に示すように、軸孔20が同一軸上に対応して設けられている。また、一対の鍵支持片17の対向面における各下部には、一対の取付片18の軸孔20に回転可能に挿入する軸部21が同一軸上に対応して設けられている。
【0020】
これら軸孔20と軸部21とは、
図4(a)および
図4(b)に示すように、軸孔20に軸部21が挿入された際に、軸孔20の内周面と軸部21の外周面との間に第1、第2間隙S1、S2が設けられている。この場合、第1間隙S1は、鍵2が押鍵されていない状態で、鍵2の上下方向における軸孔20の内周面と軸部21の外周面との間の僅かな間隔である。
【0021】
すなわち、この第1間隙S1は、
図4(a)および
図4(b)に示すように、軸孔20に軸部21が回転可能に嵌合する一般的な嵌合公差の範囲内の僅かな隙間である。第2間隙S2は、鍵2が押鍵されていない状態で、鍵2の前後方向(長手方向)における軸孔20の内周面と軸部21の外周面との間の間隔である。この第2間隙S2は、軸孔20に軸部21が回転可能に嵌合する一般的な嵌合公差よりも十分に大きい隙間であり、第1間隙S1よりも大きく設定されている。
【0022】
この場合、一対の取付片18の各軸孔20は、
図4(b)に示すように、その形状が真円に形成されており、一対の鍵支持片17の各軸部21は、その外形が上下方向に長い楕円に形成されている。すなわち、楕円形状の軸部21は、上下方向の長さが軸孔20の内径よりも僅かに短い、つまり一般的な嵌合公差の範囲内の隙間だけ軸孔20の内径よりも短い長さであることにより、第1間隙S1を形成している。
【0023】
また、この楕円形状の軸部21は、
図4(b)に示すように、鍵2の長手方向である前後方向の長さが軸孔20の内径よりも十分に短い長さ、つまり一般的な嵌合公差よりも十分に長い隙間を有する長さであることにより、第2間隙S2を形成している。このため、第2間隙S2は、第1間隙S1よりも大きい。
【0024】
これにより、鍵2は、
図7および
図8に示すように、一対の取付片18が鍵盤シャーシ1の一対の鍵支持片17間に挟まれた状態で、一対の取付片18の軸孔20に一対の鍵支持片17の軸部21が回転可能に挿入されて保持された際に、軸孔20の内周面と軸部21の外周面との間に設けられた第1、第2間隙S1、S2によって、鍵2の前端部を鍵2の配列方向(左右方向に)に変位させて、隣接する鍵2の前端部間の隙間が調整可能な構造になっている。
【0025】
すなわち、この鍵2は、
図7に示すように、一対の取付片18の軸孔20に一対の鍵支持片17の軸部21が回転可能に挿入されて保持された状態で、
図8に実線で示すように、一対の取付片のうち、鍵2の配列方向における左側の取付片18を第2間隙S2の範囲内で鍵2の後方にずらし、鍵2の配列方向における右側の取付片18を第2間隙S2の範囲内で鍵2の前方にずらすと、鍵2の前端部が鍵2の配列方向における左側に変位して、隣接する鍵2の前端部間の隙間が調整されるようになっている。
【0026】
この場合、鍵2は、
図7に示すように、一対の取付片18の軸孔20に一対の鍵支持片17の軸部21が回転可能に挿入されて保持された状態で、一対の取付片のうち、鍵2の配列方向における左側の取付片18を第2間隙S2の範囲内で鍵2の前方にずらし、鍵2の配列方向における右側の取付片18を第2間隙S2の範囲内で鍵2の後方にずらすと、鍵2の前端部が鍵2の配列方向における右側に変位して、隣接する鍵2の前端部間の隙間が調整されるようになっている。
【0027】
一方、鍵盤シャーシ1の一対の鍵支持片17における対向面の各軸部21の上側には、
図2および
図4(a)に示すように、鍵2の一対の取付片18を挟むように押える押えリブ22がそれぞれ上下方向に沿って設けられている。この押えリブ22は、一対の鍵支持片17の対向面から突出する長さ(厚み)が、一対の鍵支持片17の対向面から突出する軸部21の突出長さ、つまり軸部21の軸方向の長さよりも短い長さ(厚み)で、軸部21の中心を通る直線に沿って設けられている。
【0028】
これにより、鍵2は、
図1、
図2、および
図4(b)に示すように、一対の取付片18が鍵盤シャーシ1の一対の鍵支持片17間に配置された状態で、一対の鍵支持片17の対向面における各押えリブ22よりも突出する各軸部21が一対の取付片18の各軸孔20に回転可能に挿入されて、一対の取付片18が各押えリブ22によって挟まれるように保持される構造になっている。
【0029】
すなわち、この押えリブ22は、
図4(a)に示すように、鍵2の一対の取付片18の外面に押し当てられる押当面22aが鍵盤シャーシ1の鍵載置部10の水平面である上面に対して垂直な状態、つまり抜き勾配のない状態で設けられている。これにより、押えリブ22は、押当面22aが一対の取付片18の外面に押し当てられた際に、押当面22aの全面に一対の取付片18の外面が均一に押し当てられて、鍵2の捩じれを防ぐようになっている。
【0030】
また、この押えリブ22は、
図2および
図4(a)に示すように、鍵2の前後方向の長さが軸部21の前後方向の長さよりも短い長さで設けられている。これにより、押えリブ22は、鍵2の一対の取付片18を挟むように押えていても、押えリブ22を支点として鍵2の前端部がその配列方向(左右方向)に揺動するようになっている。
【0031】
一方、鍵2の取付部13には、
図3、
図6~
図8に示すように、一対の取付片18の互いに接近または離反する方向への撓み変形を規制する変形規制部23が設けられている。この変形規制部23は、鍵2に対する一対の取付片18の付け根部における上端部間に設けられている。
【0032】
これにより、変形規制部23は、
図7および
図8に示すように、一対の取付片18を鍵盤シャーシ1の一対の鍵支持片17間に挟む際、または一対の取付片18を一対の鍵支持片17間から取り外す際に、一対の軸部21が互いに接近する方向への撓み変形を最小限に抑えるようになっている。
【0033】
すなわち、この変形規制部23は、
図7および
図8に示すように、後端部が一対の鍵支持片17の間に食い込んだ位置、つまり一対の鍵支持片17の前部側に対応する位置に設けられている。これにより、変形規制部23は、一対の軸部21が互いに接近する方向に撓み変形する変形力を大きくする構造になっている。
【0034】
この場合、変形規制部23は、
図7および
図8に示すように、その前後方向の長さが、一対の取付片18の各肉厚つまり鍵2の配列方向における取付片18の長さ(幅)に応じて最適な長さに設定されていることが望ましい。すなわち、この変形規制部23は、一対の取付片18の各肉厚が厚い場合に、変形規制部23の前後方向の長さが短く、一対の取付片18の各肉厚が薄い場合に、変形規制部23の前後方向の長さが長く設定されていることが望ましい。
【0035】
また、鍵盤シャーシ1の一対の鍵支持片17は、
図1~
図5に示すように、一対の取付片18が一対の鍵支持片17に取り付けられた際に、一対の鍵支持片17の各上部が一対の取付片18の上端部よりも上方に突出している。すなわち、一対の鍵支持片17は、その上端部の高さが一対の取付片18の上方への回転範囲よりも上方に高く突出すようになっている。このため、一対の鍵支持片17は、その上部に基板などの部品(図示せず)を配置しても、鍵2の上下方向への回転を妨げないようになっている。
【0036】
次に、このような鍵盤楽器の作用について説明する。
この鍵盤楽器を組み立てる場合には、予め、複数の鍵2を製作する。これら複数の鍵2は、
図9~
図11に示すように、第1白鍵ブロック25、第2白鍵ブロック26、および黒鍵ブロック27を備え、これらを個別に製作して、組み合わせる構造になっている。
【0037】
すなわち、第1白鍵ブロック25は、
図9(a)および
図9(b)に示すように、CEGBの各白鍵2aが第1連結ランナ部25aによって連結された状態で一度に成形されている。この場合、第1連結ランナ部25aは、CEGBの各白鍵2aの後方に位置した状態で白鍵2aの配列方向に沿って帯状に形成されている。この第1連結ランナ部25aには、CEGBの各白鍵2aにおける一対の取付片18の各後端部に連結される複数の第1ゲート部25bが設けられている。
【0038】
これにより、第1白鍵ブロック25は、第1成形用金型(図示せず)で成形する際に、第1連結ランナ部25aに樹脂が注入され、この第1連結ランナ部25aに注入された樹脂が複数の第1ゲート部25bからCEGBの各白鍵2aに注入される。このため、第1白鍵ブロック25は、
図9(a)および
図9(b)に示すように、CEGBの各白鍵2aが第1連結ランナ部25aおよび複数の第1ゲート部25bによって連結された状態で一度に成形されている。
【0039】
第2白鍵ブロック26は、
図10(a)および
図10(b)に示すように、DFAの各白鍵2aが第2連結ランナ部26aによって連結された状態で一度に成形されている。この場合、第2連結ランナ部26aは、DFAの各白鍵2aの後方に位置した状態で白鍵2aの配列方向に沿って帯状に形成されている。この第2連結ランナ部26aには、DFAの各白鍵2aにおける一対の取付片18の各後端部に連結される複数の第2ゲート部26bが設けられている。
【0040】
これにより、第2白鍵ブロック26は、第2成形用金型(図示せず)で成形する際に、第2連結ランナ部26aに樹脂が注入され、この第2連結ランナ部26aに注入された樹脂が複数の第2ゲート部26bからDFAの各白鍵2aに注入される。このため、第2白鍵ブロック26は、
図10(a)および
図10(b)に示すように、DFAの各白鍵2aが第2連結ランナ部26aおよび複数の第2ゲート部26bによって連結された状態で一度に成形されている。
【0041】
黒鍵ブロック27は、
図11(a)および
図11(b)に示すように、複数の各黒鍵2bが第3連結ランナ部27aによって連結された状態で一度に成形されている。この場合、第3連結ランナ部27aは、複数の各黒鍵2bの後方に位置した状態で黒鍵2bの配列方向に沿って帯状に形成されている。この第3連結ランナ部27aには、複数の黒鍵2bにおける一対の取付片18の各後端部に連結される複数の第3ゲート部27bが設けられている。
【0042】
これにより、黒鍵ブロック27は、第3成形用金型(図示せず)で成形する際に、第3連結ランナ部27aに樹脂が注入され、この第3連結ランナ部27aに注入された樹脂が複数の第3ゲート部27bから複数の黒鍵2bに注入される。このため、黒鍵ブロック27は、
図11(a)および
図11(b)に示すように、複数の黒鍵2bが第3連結ランナ部27aおよび複数の第3ゲート部27bによって連結された状態で一度に成形されている。
【0043】
このようにして形成された第1白鍵ブロック25の各白鍵2a、第2白鍵ブロック26の各白鍵2a、および第3黒鍵ブロック27の各黒鍵2bを鍵盤シャーシ1に組み付ける場合には、まず、第1連結ランナ部25a、第2連結ランナ部26a、および第3連結ランナ部27aを重ね合わせて、第1白鍵ブロック25のCEGBの各白鍵2a、第2白鍵ブロック26のDFAの各白鍵2a、および黒鍵ブロック27の各黒鍵2bをこれらの各間に配置させて、複数の鍵2として配列させる。
【0044】
すなわち、第1白鍵ブロック25の第1連結ランナ部25aの下に第2白鍵ブロック26の第2連結ランナ部26aを重ね合わせて、第1白鍵ブロック25のCEGBの各白鍵2aと第2白鍵ブロック26のDFAの各白鍵2aとをこれらの各間に配置させる。そして、第2白鍵ブロック26の第2連結ランナ部26aの下に黒鍵ブロック27の第3連結ランナ部27aを重ね合わせて、第1白鍵ブロック25のCEGBの各白鍵2aと第2白鍵ブロック26のDFAの各白鍵2aとの何れかの間に黒鍵ブロック27の複数の黒鍵2bを配置させる。
【0045】
これにより、CEGBの各白鍵2a、DFAの各白鍵2a、および複数の黒鍵2bが音階順に配列され、鍵2が1オクターブ分配列される。この状態で、複数の鍵2を鍵盤シャーシ1に組み付ける。この場合には、予め、鍵盤シャーシ1のスイッチ載置部7上にスイッチ部3を組み付ける。このときには、まず、スイッチ部3のドーム状の膨出部16aが配列されたゴムシート16をスイッチ基板15上に配置し、このゴムシート16が配置されたスイッチ基板15を複数の基板支持部8によってスイッチ載置部7上に支持する。
【0046】
この状態で、複数の鍵2を鍵盤シャーシ1に組み付ける。このときには、複数の白鍵2aの各前側部に鍵盤シャーシ1の各白鍵ガイド部6を挿入させると共に、複数の黒鍵2bの各前側部に鍵盤シャーシ1の各黒鍵ガイド部9を挿入させて、複数の鍵2の各スイッチ押圧部14をスイッチ部3の各膨出部16aにそれぞれ対応させる。この状態で、各鍵2の後部にそれぞれ設けられた一対の取付片18を鍵盤シャーシ1の後部に設けられた一対の鍵支持片17の各間にそれぞれ上方から挿入させる。
【0047】
このときには、一対の鍵支持片17の対向面に設けられた各押えリブ22の押当面22aに鍵2の一対の取付片18における両側の各外面が押し当てられるので、変形規制部23の変形規制力に抗して一対の取付片18が互いに接近する方向に撓み変形して一対の鍵支持片17の間に挿入する。そして、一対の鍵支持片17の各下部に設けられた各軸部21を一対の取付片18の各下部に設けられた各軸孔20に挿入させる。
【0048】
この場合には、一対の鍵支持片17の対向面から突出する押えリブ22の長さ(厚み)が、一対の鍵支持片17の対向面から突出する軸部21の突出長さよりも短い(薄い)ので、一対の鍵支持片17の対向面における各押えリブ22よりも各軸部21が突出している。このため、この突出した各軸部21が一対の取付片18の各軸孔20に挿入される際に、各軸部21によって一対の取付片18が更に互いに接近する方向に撓み変形して各軸部21が一対の取付片18の各軸孔20に挿入する。
【0049】
すなわち、各軸部21が各軸孔20に挿入する際には、互いに接近する方向に撓み変形した一対の取付片18が互いに離れる方向に弾性復帰することにより、各軸部21が各軸孔20に確実に挿入する。このように各軸部21が各軸孔20に挿入された際には、一対の取付片18の各外面が一対の鍵支持片17の対向面に設けられた各押えリブ22間に弾力的に挟まれた状態で、一対の取付片18が変形規制部23によって撓み変形が規制されることにより、確実にかつ良好に保持される。
【0050】
この場合、各押えリブ22は、一対の取付片18の各外面に押し当てられる各押当面22aが、鍵盤シャーシ1の鍵載置部10の水平面である上面に対して垂直な状態、つまり抜き勾配のない状態で設けられていることにより、一対の取付片18の各外面が互いに対向する各押えリブ22の押当面22aの全体に均一に押し当てられる。
【0051】
このため、一対の取付片18は、一対の鍵支持片17の各軸部21を中心として鍵2が捩じれないように、各外面が各押えリブ22によって確実にかつ良好に押えられる。これにより、鍵2の一対の取付片18は、鍵盤シャーシ1の一対の鍵支持片17間に弾力的に挟まれた状態で、鍵2が一対の鍵支持片17の各軸部21を中心に上下方向に回転可能な状態で保持される。
【0052】
すなわち、取付片18及び各押えリブ22は、鍵2が上下方向(鍵2が押離鍵操作に応じて動く方向)及び、左右方向(鍵間の隙間調整操作に応じて動く方向)に動くように、鍵2を支持するとともに、鍵2が上下左右方向以外の方向(便宜上、本明細書においては、「捩じれ方向」という)に動きにくいように、鍵2のこの捩じれ方向への動きを規制している。
【0053】
鍵盤シャーシ1側の各軸部21が鍵2側の各軸孔20に挿入された状態で、第1白鍵ブロック25の第1ゲート部25b、第2白鍵ブロック26の第2ゲート部26b、および黒鍵ブロック27の第3ゲート部27bを各鍵2の一対の取付片18の各後端部において切断して、第1~第3連結ランナ部25a~27aおよび第1~第3ゲート部25b~27bを各鍵2から切り離す。これにより、複数の鍵2が鍵盤シャーシ1に一度に組み付けられる。
【0054】
この場合には、複数の鍵2の一対の取付片18の各後端部に位置する第1~第3ゲート部25b~27bに予め切込部(図示せず)をそれぞれ設け、複数の鍵2の一対の取付片18を鍵盤シャーシ1の後部に設けられた一対の鍵支持片17の各間にそれぞれ上方から挿入させる際に、第1~第3ゲート部25b~27bを切込部によって自動的に切り離すようにしても良い。
【0055】
すなわち、複数の鍵2の一対の取付片18を鍵盤シャーシ1の後部に設けられた一対の鍵支持片17の各間にそれぞれ上方から挿入させて、一対の取付片18の軸孔20に一対の鍵支持片17の軸部21を挿入させる際に、一対の取付片18が互いに接近する方向に撓み変形することにより、切込部によって第1~第3ゲート部25b~32bを一対の取付片18の各後端部から自動的に切り離すことができる。
【0056】
このようにして、複数の鍵2が鍵盤シャーシ1に組み付けられた際に、鍵2の前端部に片寄りが発生して、鍵2の前端部間の隙間が不揃いになった場合には、鍵2の前端部間の隙間を調整する。すなわち、一対の取付片18の軸孔20が真円に形成され、一対の鍵支持片17の軸部21が上下方向に長い楕円に形成されて、軸孔20の内周面と軸部21の外周面との間に第1、第2間隙S1、S2が設けられていることにより、これら第1、第2間隙S1、S2によって鍵2の前端部を鍵2の配列方向(左右方向)に変位させて、鍵2の前端部間の隙間を調整する。
【0057】
すなわち、
図7に示すように、一対の取付片18の各軸孔20に一対の鍵支持片17の各軸部21が回転可能に挿入されて鍵2が保持された状態で、
図8に実線で示すように、一対の取付片のうち、鍵2の配列方向における左側の取付片18を第2間隙S2の範囲内で鍵2の後方にずらし、鍵2の配列方向における右側の取付片18を第2間隙S2の範囲内で鍵2の前方にずらすと、鍵2の前端部が鍵2の配列方向における左側に変位して、隣接する鍵2の前端部間の隙間が調整されて均一に揃えられる。
【0058】
また、
図7に示すように、一対の取付片18の各軸孔20に一対の鍵支持片17の各軸部21が回転可能に挿入されて鍵2が保持された状態で、一対の取付片のうち、鍵2の配列方向における左側の取付片18を第2間隙S2の範囲内で鍵2の前側にずらし、鍵2の配列方向における右側の取付片18を第2間隙S2の範囲内で鍵2の後方にずらすと、鍵2の前端部が鍵2の配列方向における右側に変位して、隣接する鍵2の前端部間の隙間が調整されて均一に揃えられる。
【0059】
このとき、押えリブ22は、鍵2の前後方向の長さが軸部21の前後方向の長さよりも短いことにより、各押えリブ22が鍵2の一対の取付片18を挟むように押えていても、押えリブ22を支点として鍵2がその配列方向(左右方向)に揺動し易くなるので、これによっても鍵2の前端部を鍵2の配列方向(左右方向)に変位させて、鍵2の前端部間の隙間を調整し易くすることができる。
【0060】
このようにして、鍵2の前端部間の隙間が調整されて均一に揃えられた際には、鍵2の後端部に位置する一対の取付片18の上方に基板などの部品(図示せず)を配置して装置全体のコンパクト化が図れる。このときには、鍵盤シャーシ1の一対の鍵支持片17における各上端部の高さが一対の取付片18の上端部よりも上方に突出していることにより、一対の鍵支持片17の上部に基板などの部品を配置して装置全体のコンパクト化を図っても、鍵2の上下方向への回転を妨げることなく、基板などの部品が良好に配置される。
【0061】
このように組み立てられた鍵盤楽器を使用して演奏する際には、複数の鍵2のスイッチ押圧部14がスイッチ部3のドーム状の膨出部16aの弾力によって押し上げられている。この状態で、押し上げられた鍵2の前部側を上方から押すと、一対の鍵支持片17に設けられた各軸部21が一対の取付片18に設けられた各軸孔20に配置されていることにより、各軸部21を中心に鍵2が下側に向けて回転する。
【0062】
すると、鍵2のスイッチ押圧部14が膨出部16aを弾性変形させて、その内部の可動接点をスイッチ基板15の固定接点に接触させる。これにより、スイッチ部3がオン信号を出力し、このスイッチ部3からのオン信号に基づいて発音部が楽音情報を生成し、この生成した楽音情報に基づいてスピーカ(いずれも図示せず)から楽音が放音される。
【0063】
このように、この鍵盤楽器によれば、取付部13に軸孔20が設けられた鍵2と、この鍵2の軸孔20内に配置される軸部21が鍵支持部11に設けられた鍵盤シャーシ1と、を備え、軸孔20の内周面と軸部21の外周面との間に第1、第2間隙S1、S2が設けられ、鍵2が押鍵されていない状態において、鍵2の上下方向の第1間隙S1より鍵2の長手方向の第2間隙S2の方が大きいことにより、これら第1、第2間隙S1、S2によって鍵2の前端部を鍵2の配列方向に変位させて、鍵2間の隙間を均一に揃えることができる。
【0064】
すなわち、この鍵盤楽器では、鍵2の取付部13の軸孔20内に鍵盤シャーシ1の鍵支持部11の軸部21が配置されて支持された際に、軸孔20の内周面と軸部21の外周面との間に第1、第2間隙S1、S2が設けられていることにより、これら第1、第2間隙S1、S2によって鍵2の前端部を鍵2の配列方向に変位させることができるので、鍵2の前端部間の隙間を容易にかつ良好に調整して均一に揃えることができる。
【0065】
また、この鍵盤楽器では、鍵2の取付部13が一対の取付片18を備え、鍵盤シャーシ1の鍵支持部11が一対の鍵支持片17を備え、一対の取付片18に軸孔20が設けられ、一対の鍵支持部11に軸部21が設けられ、一対の取付片18が一対の鍵支持片17間に配置されていることにより、一対の鍵支持片17によって一対の取付片18を弾力的に挟むことができ、この状態で一対の鍵支持片17の軸部21を一対の取付片18の軸孔20内に配置させて、鍵2を鍵盤シャーシ1上に回転可能に確実かつ良好に取り付けることができる。
【0066】
この場合、軸孔20は、一対の取付片18に同一軸上に対応して設けられ、その形状が真円であり、軸部21は、一対の鍵支持片17に同一軸上に対応して設けられ、その外形が上下方向に長い楕円であることにより、一対の取付片18の各軸孔20内に一対の鍵支持片17の各軸部21が配置されて、鍵2が押鍵されていない状態において、鍵2の長手方向である前後方向の第2間隙S2を鍵2の上下方向の第1間隙S1よりも大きくすることができる。
【0067】
すなわち、第1間隙S1は、軸孔20に軸部21が回転可能に嵌合する一般的な嵌合公差の範囲内の僅かな隙間であり、第2間隙S2は、鍵2が押鍵されていない状態で、鍵2前後方向(長手方向)における軸孔20の内周面と軸部21の外周面との間の間隔で、軸孔20に軸部21が回転可能に嵌合する一般的な嵌合公差よりも十分に大きい隙間であり、第1間隙S1よりも大きく設定されていることにより、第1、第2間隙S1、S2によって鍵2の前端部を鍵2の配列方向に確実に変位させて、鍵2の前端部間の隙間を容易にかつ良好に調整して均一に揃えることができる。
【0068】
このため、この鍵盤楽器では、一対の取付片18の各軸孔20内に一対の鍵支持片17の各軸部21が配置されて鍵2が支持された状態で、一対の取付片のうち、鍵2の配列方向における左側(
図8では上辺部側)の取付片18を第2間隙S2の範囲内で鍵2の後側にずらし、鍵2の配列方向における右側(
図8では下辺部側)の取付片18を第2間隙S2の範囲内で鍵2の前方にずらすと、鍵2の前端部を鍵2の配列方向における右側(
図8では上辺部側)に変位させることができるので、隣接する鍵2の前端部間の隙間を容易にかつ良好に調整して均一に揃えることができる。
【0069】
この場合、この鍵盤楽器では、一対の取付片18の各軸孔20内に一対の鍵支持片17の各軸部21が配置されて鍵2が支持された状態で、一対の取付片のうち、鍵2の配列方向における左側(
図7では上辺部側)の取付片18を第2間隙S2の範囲内で鍵2の前側にずらし、鍵2の配列方向における右側(
図7では下辺部側)の取付片18を第2間隙S2の範囲内で鍵2の後方にずらすと、鍵2の前端部を鍵2の配列方向における右側(
図7では下辺部側)に変位させることができるので、隣接する鍵2の前端部間の隙間を容易にかつ良好に調整して均一に揃えることができる。
【0070】
また、この鍵盤楽器では、鍵盤シャーシ1の一対の鍵支持片17の各軸部21から上方の沿線上に軸部21の軸方向の長さ(厚み)よりも短い(薄い)長さ(厚み)の押えリブ22が設けられていることにより、一対の取付片18が一対の鍵支持片17間に配置された際に、押えリブ22によって一対の取付片18を確実にかつ良好に挟み付けることができる。
【0071】
すなわち、押えリブ22は、一対の鍵支持片17の対向面から突出する厚みが、一対の鍵支持片17の対向面から突出する軸部21の突出長さ、つまり軸部21の軸方向の長さよりも薄いので、軸部21を一対の取付片18の軸孔20に挿入させる際に、押えリブ22よりも突出した軸部21によって一対の取付片18を更に互いに接近する方向に撓み変形させた後、この撓み変形した一対の取付片18を互いに離れる方向に弾性復帰させて軸部21を軸孔20に相対的に挿入させることができる。
【0072】
この場合、押えリブ22は、一対の取付片18の外面に押し当てられる押当面22aが鍵盤シャーシ1の水平面である上面に対して垂直な状態、つまり抜き勾配のない状態で設けられていることにより、一対の取付片18の各外面を互いに対向する押えリブ22の押当面22aの全体に均一に押し当てることができる。
【0073】
このため、この鍵盤楽器では、一対の取付片18の各外面を押えリブ22によって確実にかつ良好に押えることができる。これにより、鍵2が軸部21を中心に捩じれないように、一対の取付片18を一対の鍵支持片17間に弾力的に挟んで、鍵2を確実にかつ良好に保持することができる。
【0074】
また、押えリブ22は、鍵2の前後方向の長さが軸部21の前後方向の長さよりも短いことにより、押えリブ22が鍵2の一対の取付片18を挟むように押えていても、押えリブ22を支点として鍵2をその配列方向(左右方向)に揺動し易くすることができるので、これによっても鍵2の前端部を鍵2の配列方向に変位させ易くして、鍵2の前端部間の隙間を調整し易くすることができる。
【0075】
また、この鍵盤楽器では、取付部13が、一対の取付片18の変形を規制する変形規制部23を有していることにより、一対の取付片18を鍵盤シャーシ1の一対の鍵支持片17間に挟む際、または一対の取付片18を一対の鍵支持片17間から取り外す際に、変形規制部23によって一対の軸部21の互いに接近する方向の撓み変形を必要最小限に抑えることができる。このため、鍵盤シャーシ1の一対の鍵支持片17間に一対の取付片18を確実にかつ良好に挟み付けて保持することができる。
【0076】
鍵2の一端側は、一対の取付片18の上面に、変形規制部23を設けている。すなわち、鍵2の一端側の上面は、変形規制部23と、一対の取付片18と、により、コの字形状になっている。この鍵2の一端側を弾性変形させることにより、鍵2の一端側を一対の鍵支持片17の間にはめ込んでいる。
【0077】
変形規制部23は、後端部が一対の鍵支持片17の間に食い込んだ位置、つまり一対の鍵支持片17の前部側に対応する位置に設けられている。変形規制部23が、押離鍵操作時に鍵2の一端側が変形することを規制していることにより、押離鍵操作時に鍵2は左右方向及び「ねじれ方向」にぐらつかずに、鍵2は上下方向に変位するので、演奏者は良好に演奏できる。
【0078】
すなわち、変形規制部23は、その前後方向の長さが、一対の取付片18の各肉厚つまり鍵2の配列方向における取付片18の長さ(幅)に応じて最適な長さに設定されていることにより、一対の軸部21が互いに接近する方向に撓み変形する変形力を最適化することができる。このため、鍵盤シャーシ1の一対の鍵支持片17間に一対の取付片18を最適な状態で良好に挟み付けて保持することができる。
【0079】
さらに、この鍵盤楽器では、一対の鍵支持片17の上端部が一対の取付片18の上端部よりも上方に突出していることにより、鍵2の後端部に位置する一対の取付片18の上方に基板などの部品を配置することができる。すなわち、一対の鍵支持片17の各上端部は、鍵2の一対の取付片18における鍵2の回転範囲の上端部よりも高い位置にあるので、一対の鍵支持片17の上部に基板などの部品を配置しても、鍵2の上下方向への回転を妨げることなく、基板などの部品を良好に配置することができ、これにより装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0080】
なお、上述した実施形態では、軸孔20の形状が真円で、軸部21の外形が上下方向に長い楕円である場合について述べたが、この発明はこれに限らず、例えば
図12に示す第1変形例のように、軸部30が丸棒の外周面における鍵2の長手方向(前後部方向)の両側に切欠き部30aを設けた構造であっても良い。この場合にも、軸孔20内に軸部30を配置した際に、鍵2が押鍵されていない状態において、鍵2の上下方向の第1間隙S1よりも鍵2の長手方向の第2間隙S2の方が大きい。このような構造でも、上述した実施形態と同様の作用効果がある。
【0081】
また、上述した実施形態では、軸孔20の形状が真円で、軸部21の外形が上下方向に長い楕円である場合について述べたが、この発明はこれに限らず、例えば
図13に示す第2変形例のように、軸部31を円形に形成し、軸孔32を軸部31の外径よりも鍵2の長手方向に長い長孔に形成した構造であっても良い。この場合にも、軸孔32内に軸部31を配置した際に、鍵2が押鍵されていない状態において、鍵2の上下方向の第1間隙S1よりも鍵2の長手方向の第2間隙S2の方が大きい。このような構造でも、上述した実施形態と同様の作用効果がある。
【0082】
また、上述した実施形態では、鍵2の一対の取付片18に軸孔20を設け、鍵盤シャーシ1の一対の鍵支持片17に軸部21を設けた場合について述べたが、この発明はこれに限らず、例えば鍵2の一対の取付片18に軸部21を設け、鍵盤シャーシ1の一対の鍵支持片17に軸孔20を設けた構造であっても良い。
【0083】
また、上述した実施形態では、一対の鍵支持片17の対向面に押えリブ22を設けた場合について述べたが、この発明はこれに限らず、鍵2の一対の取付片18に押えリブ22を設けても良い。
【0084】
また、押えリブ22は、軸部21から上方の沿線上に設けられている必要はなく、軸部21から下方の沿線上に設けられていても良く、また上下の両方に設けられていても良い。
いずれの場合も、押えリブ22は、軸部21の中心から上下方向に延びるように設けられていればよい。
【0085】
さらに、上述した実施形態では、鍵2の一対の取付片18を鍵盤シャーシ1の一対の鍵支持片17の間に挟んで保持する構造について述べたが、この発明はこれに限らず、例えば鍵盤シャーシ1の一対の鍵支持片17を鍵2の一対の取付片18の間に挟んで保持する構造であっても良い。
【0086】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0087】
(付記)
請求項1に記載の発明は、軸孔が設けられている部位及び軸のいずれか一方を有し、前記いずれか一方が一端側に設けられている鍵と、前記部位及び前記軸のいずれか他方を有し、前記軸孔内に前記軸が配置されていることにより、前記鍵を支持している鍵盤シャーシと、を備え、前記部位における前記軸孔に対応する内面と、前記軸と、の間隙は、前記鍵が押鍵されていない状態において、前記鍵の上下方向の第1間隙より前記鍵の長手方向の第2間隙の方が大きいことを特徴とする鍵盤楽器である。
【0088】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器において、前記鍵と、前記鍵盤シャーシと、のいずれか一方に有する前記軸の中心から少なくとも上方向及び下方向のいずれか一方の沿線上に、前記軸の厚みよりも薄い厚みの押えリブが設けられていることを特徴とする鍵盤楽器である。
【0089】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の鍵盤楽器において、前記鍵は、前記一端側に弾性変形するコの字形状部を含み、前記鍵盤シャーシは、前記鍵の前記一端側の前記コの字形状部を支持する一対の鍵支持片を有し、前記軸孔は、前記コの字形状部の両側にそれぞれ設けられており、前記軸は、前記鍵盤シャーシにおける前記一対の鍵支持片の対向面にそれぞれ設けられていることを特徴とする鍵盤楽器である。
【0090】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の鍵盤楽器において、前記鍵は、前記コの字形状部の上側に、前記弾性変形を規制する変形規制部、を有することを特徴とする鍵盤楽器である。
【0091】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の鍵盤楽器において、前記鍵に含まれる前記変形規制部の一端は、前記鍵盤シャーシに含まれる前記一対の鍵支持片の対向面に位置していることを特徴とする鍵盤楽器である。
【0092】
請求項6に記載の発明は、請求項1~請求項4のいずれかに記載の鍵盤楽器において、前記軸孔は、円形状であり、前記軸は、上下方向に長い楕円形状であることを特徴とする鍵盤楽器である。
【0093】
請求項7に記載の発明は、請求項1~請求項4のいずれかに記載の鍵盤楽器において、前記鍵盤シャーシにおける前記一対の鍵支持片それぞれの上端は、前記鍵の前記一端側における前記鍵の揺動範囲の上端よりも高い位置にあることを特徴とする鍵盤楽器である。
【符号の説明】
【0094】
1 鍵盤シャーシ
2 鍵
2a 白鍵
2b 黒鍵
3 スイッチ部
6 白鍵ガイド部
9 黒鍵ガイド部
11 鍵支持部
13 取付部
17 鍵支持片
18 取付片
20、32 軸孔
21、30、31 軸部
22 押えリブ
22a 押当面
23 変形規制部
30a 切欠き部
S1 第1間隙
S2 第2間隙