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  • 特許-熱伝導度検出器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】熱伝導度検出器
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/18 20060101AFI20240110BHJP
   G01N 30/66 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01N25/18 K
G01N30/66
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022516795
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017701
(87)【国際公開番号】W WO2021214978
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中間 勇二
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-080413(JP,A)
【文献】特開2003-270231(JP,A)
【文献】特開2013-019892(JP,A)
【文献】特開平09-243532(JP,A)
【文献】特開2020-041990(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0144238(US,A1)
【文献】国際公開第2001/027589(WO,A1)
【文献】特開2005-083788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00~25/72
G01N 30/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスとの間で熱交換を行なうためのフィラメントが配置された空間である測定セルが内部に設けられ、前記測定セルにガスを流入させるためのセル入口、及び、前記測定セルからガスを流出させるためのセル出口を備えているセルブロックと、
前記セルブロックの前記セル出口に通じる出口流路と、
内部に緩衝空間を有するとともに、ガスを前記緩衝空間へ流入させるための流入口及び前記緩衝空間からガスを排出するための排出口を有し、前記流入口が前記出口流路と流体接続されている緩衝ブロックと、
前記排出口の流体抵抗を大きくするための流体抵抗部の外周面を保持し、前記排出口から排出されるガスに前記流体抵抗部を通過させるように前記緩衝ブロックに取り付けられ、前記流体抵抗部と一体的に前記緩衝ブロックから取り外すことができるように設けられている排出部材と、を備えた熱伝導度検出器。
【請求項2】
前記流体抵抗部は抵抗管である、請求項1に記載の熱伝導度検出器。
【請求項3】
前記抵抗管の外径は1mm以下である、請求項2に記載の熱伝導度検出器。
【請求項4】
前記排出部材は、前記抵抗管の前記外周面を保持する保持部材、及び、前記保持部材を保持した状態で前記緩衝ブロックに着脱可能に固定される固定部材を備えている、請求項2に記載の熱伝導度検出器。
【請求項5】
前記保持部材は弾力性を有する樹脂材料により構成されている、請求項4に記載の熱伝導度検出器。
【請求項6】
前記流体抵抗部はフィルタである、請求項1に記載の熱伝導度検出器。
【請求項7】
前記排出部材の温度低下を防止する保温部をさらに備えている、請求項1に記載の熱伝導度検出器。
【請求項8】
前記保温部は、前記排出部材に接する熱伝導性ブロック及び前記熱伝導性ブロックを加熱するためのヒータを備えている、請求項7に記載の熱伝導度検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクロマトグラフにおいて成分検出に用いられる検出器の1つである熱伝導度検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフの検出器の1つとして熱伝導度検出器が知られている。熱伝導度検出器は、ガスが流れる測定セル内にフィラメントが配置されており、フィラメントとガスとの間で行われる熱交換量を検出することによってガス中の成分を定量するものである。フィラメントとガスとの熱交換量は測定セルを流れるガスの流量によって変動するため、測定セルを流れるガスの流量が変動すると測定データのベースラインも変動し、分析結果に悪影響を与える。
【0003】
上記理由から、測定セルを流れるガスの流量を一定に維持することが重要である。測定セルを流れるガスの流量が変動する要因として大気圧の変動が挙げられる。測定セルの出口は大気開放されているため、大気圧が変動すると測定セルの入口と出口との間の圧力差が変動し、それによって測定セルを流れるガスの流量が変動する。そのため、測定セルの下流に緩衝空間を設け、さらに緩衝空間の出口に一定の流体抵抗をもたせることで、大気圧変動が測定セルの出口に伝わりにくくして測定セルの出口における圧力変動を抑制し、測定データのベースラインを安定させることが提案されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-080413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測定セルの下流に緩衝空間を設ける場合、緩衝空間の容積が大きく、かつ、緩衝空間の出口の流体抵抗が大きいほど、測定セルの出口における圧力変動の抑制効果が高くなってベースラインが安定する。一方で、測定セルの下流に大容量の緩衝空間を設けると検出器が大型化してしまう。緩衝空間の容量を小さくしながらベースラインを安定させるためには、緩衝空間の出口の流路内径を小さくするなどして流体抵抗を大きくする必要がある。しかし、緩衝空間の出口の流体抵抗を大きくすると、その部分でサンプルが詰まりやすくなるという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、ベースラインの安定化と検出器の小型化の両立を実現することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る熱伝導度検出器は、ガスとの間で熱交換を行なうためのフィラメントが配置された空間である測定セルが内部に設けられ、前記測定セルにガスを流入させるためのセル入口、及び、前記測定セルからガスを流出させるためのセル出口を備えているセルブロックと、前記セルブロックの前記セル出口に通じる出口流路と、内部に緩衝空間を有するとともに、ガスを前記緩衝空間へ流入させるための流入口及び前記緩衝空間からガスを排出するための排出口を有し、前記流入口が前記出口流路と流体接続されている緩衝ブロックと、前記排出口の流体抵抗を大きくするための流体抵抗部を保持し、前記排出口から排出されるガスに前記流体抵抗部を通過させるように前記緩衝ブロックに取り付けられ、前記流体抵抗部とともに前記緩衝ブロックから取り外すことができるように設けられている排出部材と、を備えている。
【0008】
本発明の主題は、緩衝空間の出口(排出口)の流体抵抗を大きくするための流体抵抗部で詰まりが発生したときに流体抵抗部を容易に交換できるようにすることである。ここで、流体抵抗部を実現するものとして抵抗管、フィルタなどが挙げられる。流体抵抗部を抵抗管によって実現する場合は、緩衝空間の小容積化に応じて外径1mm以下といった微細な抵抗管を緩衝ブロックに取り付ける必要があるが、そのような微細な抵抗管は一般的な配管と同様の接続方法で緩衝空間の排出口に取り付けることは不可能である。本発明では、緩衝ブロックに対して着脱可能に取り付けられる排出部材に流体抵抗部を保持させ、緩衝ブロックに対する排出部材の着脱によって流体抵抗部を緩衝ブロックに対して着脱できるようにした。
【発明の効果】
【0009】
上記のとおり、本発明に係る熱伝導度検出器では、緩衝ブロックに対して着脱可能に取り付けられる排出部材に流体抵抗部を保持させ、緩衝ブロックに対する排出部材の着脱によって流体抵抗部を緩衝ブロックに対して着脱できるようにしたので、流体抵抗部で詰まりが発生したときに流体抵抗部を容易に交換でき、ベースラインの安定化と検出器の小型化の両立を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】熱伝導度検出器の一実施例を示す断面図である。
図2】同実施例の排出部材の構造を示す断面図である。
図3】熱伝導度検出器の他の実施例を概略的に示す断面図である。
図4】熱伝導度検出器のさらに他の実施例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る熱伝導度検出器の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1に示されているように、熱伝導度検出器1は、セルブロック2、出口配管4、緩衝ブロック6及び排出部材8を備えている。
【0013】
セルブロック2は、フィラメント12が配置された測定セル10を内部に備え、かつ、測定セル10にガスを流入させるためのセル入口11及び測定セル10からガスを流出させるためのセル出口13を備えている。セルブロック2のセル出口11には出口流路をなす出口配管4の一端が流体接続されている。フィラメント12は測定セル10内を流れるガスとの間で熱交換を行なうためのものである。熱伝導度検出器1は、測定セル10を流れるガスとフィラメント12との間の熱交換量に応じた信号を読み取ることによって、ガス中に含まれる成分の定量を行なう。
【0014】
緩衝ブロック6は、内部に緩衝空間14を備えている。さらに緩衝ブロック6は、緩衝空間14へガスを流入させるための流入口15及び緩衝空間14からガスを排出するための排出口16を備えている。緩衝ブロック6の流入口15には出口配管4の他端が流体接続されている。流入口15からのガスの流入方向に垂直な緩衝空間14の断面積は、出口配管4の内側の流路(すなわち、出口流路)の流路方向に垂直な断面積よりも大きい。排出部材8は緩衝ブロック6に対して着脱可能に取り付けられている。
【0015】
なお、図1では、セルブロック2の内部に1つの測定セル10のみが図示されているが、サンプルガス用の測定セルとリファレンスガス用の測定セルの2つの測定セル10がセルブロック2の内部に設けられていてもよい。セルブロック2内に2つの測定セル10が設けられている場合、それらの測定セル10は共通の緩衝空間14に流体接続されていてもよいし、2つの緩衝空間14が緩衝ブロック6内に設けられ、2つの測定セル10のそれぞれが別々の緩衝空間14に流体接続されていてもよい。
【0016】
図2に示されているように、排出部材8は、抵抗管20、保持部材22、固定部材24及びシールリング26を備えている。抵抗管20は、例えば外径が1mm以下、内径が0.5mm以下の微細な直線形状の管であり、排出口16の流体抵抗を大きくするための流体抵抗部をなしている。保持部材22は、弾力性を有する樹脂材料(例えばシリコンゴム)で構成され、抵抗管20を貫通させることによって抵抗管20の外周面を保持する。固定部材24は、保持部材22を嵌め込んで保持するための凹部を有し、その凹部で保持部材22を保持した状態で緩衝ブロック6の排出口16が設けられている部分に着脱可能に取り付けられる金属製の部材である。
【0017】
緩衝ブロック6の外面における排出口16が設けられている部分に円筒形状の突起18が設けられ、その突起18の外周面にネジが設けられている。排出部材8の固定部材24の内周面には、緩衝ブロック6の突起18の外周面のネジと螺合するネジが設けられており、固定部材24を回転させることで、緩衝ブロック6に対する排出部材8の着脱を行なうことができるようになっている。
【0018】
排出部材8は、抵抗管20が緩衝空間14と大気との間を流体連通させるように緩衝ブロック6に取り付けられる。緩衝ブロック6の突起18の先端と排出部材8の保持部材22との間にシールリング26が挟み込まれている。シールリング26は、突起18の先端部において樹脂製の保持部材22を変形させてシール性を高め、それによって抵抗管20以外の経路からガスが排出されることを防止するためのものである。
【0019】
上記構造により、排出口16から排出されるガスに対する流体抵抗が大きくなり、緩衝空間14の容量を小さくして緩衝ブロック6の小型化を図ることができる。抵抗管20は微細であるため、抵抗管20内においてサンプルの詰まりが発生し得るが、抵抗管20を一体的に保持する排出部材8が固定部材24の回転によって容易に着脱可能であるため、抵抗管20の交換が容易である。
【0020】
なお、排出口16の流体抵抗を大きくするための流体抵抗部として、抵抗管20に代えてフィルタ(金属結晶体フィルタ、セラミックフィルタなど)を用いることもできる。その場合、フィルタは、保持部材22に保持されていてもよいし、排出部材8の固定部材24にロウ付けされていてもよい。
【0021】
また、緩衝ブロック6に対する排出部材8の着脱構造はネジの螺合を利用したものに限定されるものではなく、排出部材8を緩衝ブロック6に対して着脱できるものであれば何でもよい。また、排出部材8は必ずしも緩衝ブロック6に対して直接的に着脱される必要はなく、配管を介して緩衝ブロック6に着脱されるように構成されてもよい。
【0022】
また、図3及び図4に示されているように、抵抗管20などの流体抵抗部で詰まりが発生することを防止するために、排出部材8の温度が低下することを防止する保温部を設けてもよい。図3の例では、金属製の出口配管4及び緩衝ブロック6を介して排出部材8に伝わる熱が逃げないように、排出部材8の周囲を囲う断熱部材30によって保温部を構成している。図4の例では、排出部材8に接触する金属製の熱伝導性ブロック32と熱伝導性ブロック32を加熱するヒータ34によって保温部を構成している。
【0023】
以上において説明した実施例は、本発明に係る熱伝導度検出器の実施形態を例示したにすぎない。本発明に係る熱伝導度検出器の実施形態は以下のとおりである。
【0024】
本発明に係る熱伝導度検出器の実施形態では、ガスとの間で熱交換を行なうためのフィラメントが配置された空間である測定セルが内部に設けられ、前記測定セルにガスを流入させるためのセル入口、及び、前記測定セルからガスを流出させるためのセル出口を備えているセルブロックと、前記セルブロックの前記セル出口に通じる出口流路と、内部に緩衝空間を有するとともに、ガスを前記緩衝空間へ流入させるための流入口及び前記緩衝空間からガスを排出するための排出口を有し、前記流入口が前記出口流路と流体接続されている緩衝ブロックと、前記排出口の流体抵抗を大きくするための流体抵抗部を保持し、前記排出口から排出されるガスに前記流体抵抗部を通過させるように前記緩衝ブロックに取り付けられ、前記流体抵抗部とともに前記緩衝ブロックから取り外すことができるように設けられている排出部材と、を備えている。
【0025】
本発明に係る熱伝導度検出器の実施形態の第1態様では、前記流体抵抗部が抵抗管である。
【0026】
上記第1態様において、前記抵抗管の外径は1mm以下である。外径が1mm以下である微細な抵抗管を緩衝ブロックにネジ止め等によって着脱可能に取り付けることは困難であるが、本発明の実施形態では、排出部材の着脱に伴って抵抗管を緩衝ブロックに対して着脱可能であるため、微細な抵抗管であっても交換が容易である。
【0027】
また、上記第1態様において、前記排出部材は、前記抵抗管の外周面を保持する保持部材、及び、前記保持部材を保持した状態で前記緩衝ブロックに着脱可能に固定される固定部材を備えることができる。
【0028】
上記の場合、前記保持部材は弾力性を有する樹脂材料により構成することができる。このような態様により、微細な抵抗管が折れ曲がることを防止できる。
【0029】
本発明に係る熱伝導度検出器の実施形態の第2態様では、前記流体抵抗部はフィルタである。
【0030】
本発明に係る熱伝導度検出器の実施形態の第3態様では、前記排出部材の温度低下を防止する保温部をさらに備えている。このような態様により、流体抵抗部においてサンプルの詰まりを抑制することができる。
【0031】
上記第3態様において、前記保温部は、前記排出部材に接する熱伝導性ブロック及び前記熱伝導性ブロックを加熱するためのヒータを備えることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 熱伝導度検出器
2 セルブロック
4 出口配管
6 緩衝ブロック
8 排出部材
10 測定セル
11 セル入口
12 フィラメント
13 セル出口
14 緩衝空間
15 流入口
16 排出口
18 突起
20 抵抗管(流体抵抗部)
22 保持部材
24 固定部材
26 シールリング
30 断熱部材
32 熱伝導性ブロック
図1
図2
図3
図4