(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】光増幅装置および光増幅方法
(51)【国際特許分類】
H01S 3/10 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H01S3/10 D
(21)【出願番号】P 2022519869
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2020018619
(87)【国際公開番号】W WO2021224977
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-10-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、総務省「新たな社会インフラを担う革新的光ネットワーク技術の研究開発に関する研究開発 課題II マルチコア大容量光伝送システム技術」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】竹下 仁士
(72)【発明者】
【氏名】松本 恵一
(72)【発明者】
【氏名】野口 栄実
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-107351(JP,A)
【文献】国際公開第2019/198663(WO,A1)
【文献】特開平05-243656(JP,A)
【文献】特許第6261810(JP,B1)
【文献】米国特許第06333810(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 -3/02
H01S 3/04 -3/0959
H01S 3/10 -3/102
H01S 3/105-3/131
H01S 3/136-3/213
H01S 3/23 -5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号光の波長帯域に利得を有する光増幅媒体を含む複数の光伝送路を備えた光導波手段と、
前記光増幅媒体を励起する励起光を、前記光導波手段の両端部から前記光導波手段に導入する励起光導入手段と、
前記光導波手段の前記両端部から出力される、前記励起光の波長成分を有する残留励起光を、前記光導波手段に導入する残留励起光導入手段、とを
有し、
前記複数の光伝送路において、
前記信号光のうち第1の信号光が、前記光導波手段の第1の端部から第2の端部に向かう第1の方向に伝搬し、
前記信号光のうち第2の信号光が、前記光導波手段の前記第2の端部から前記第1の端部に向かう第2の方向に伝搬し、
前記励起光導入手段は、
前記光増幅媒体を励起する第1の励起光を前記光導波手段の前記第1の端部から前記光導波手段に導入する第1の励起光導入手段と、
前記光増幅媒体を励起する第2の励起光を前記光導波手段の前記第2の端部から前記光導波手段に導入する第2の励起光導入手段、とを備え、
前記残留励起光導入手段は、
前記光導波手段の前記第2の端部から出力される、前記第1の励起光の波長成分を有する第1の残留励起光を、前記第1の端部から前記光導波手段に導入する第1の残留励起光導入手段と、
前記光導波手段の前記第1の端部から出力される、前記第2の励起光の波長成分を有する第2の残留励起光を、前記第2の端部から前記光導波手段に導入する第2の残留励起光導入手段、とを備え、
前記第2の励起光導入手段は、
前記第2の励起光を生成する第2の励起光生成手段と、
前記第2の励起光を前記光導波手段に結合する第2の光結合手段、とを備え、
前記第1の残留励起光導入手段は、
前記第1の残留励起光を前記光導波手段に結合する第1の残留励起光結合手段を前記第1の端部の側に備え、
前記第1の信号光と前記第1の残留励起光を分離する第1の残留励起光分離手段を前記第2の端部の側に備え、
前記第1の励起光導入手段および前記第2の残留励起光導入手段は、第1の光制御手段を備え、
前記第1の光制御手段は、前記第1の励起光を入力する第1の端子と、前記第1の励起光を出力し前記第2の残留励起光を入力する第2の端子と、前記第2の残留励起光を出力する第3の端子を備える
光増幅装置。
【請求項2】
信号光の波長帯域に利得を有する光増幅媒体を含む複数の光伝送路を備えた光導波手段と、
前記光増幅媒体を励起する励起光を、前記光導波手段の両端部から前記光導波手段に導入する励起光導入手段と、
前記光導波手段の前記両端部から出力される、前記励起光の波長成分を有する残留励起光を、前記光導波手段に導入する残留励起光導入手段、とを
有し、
前記複数の光伝送路において、
前記信号光のうち第1の信号光が、前記光導波手段の第1の端部から第2の端部に向かう第1の方向に伝搬し、
前記信号光のうち第2の信号光が、前記光導波手段の前記第2の端部から前記第1の端部に向かう第2の方向に伝搬し、
前記励起光導入手段は、
前記光増幅媒体を励起する第1の励起光を前記光導波手段の前記第1の端部から前記光導波手段に導入する第1の励起光導入手段と、
前記光増幅媒体を励起する第2の励起光を前記光導波手段の前記第2の端部から前記光導波手段に導入する第2の励起光導入手段、とを備え、
前記残留励起光導入手段は、
前記光導波手段の前記第2の端部から出力される、前記第1の励起光の波長成分を有する第1の残留励起光を、前記第1の端部から前記光導波手段に導入する第1の残留励起光導入手段と、
前記光導波手段の前記第1の端部から出力される、前記第2の励起光の波長成分を有する第2の残留励起光を、前記第2の端部から前記光導波手段に導入する第2の残留励起光導入手段、とを備え、
前記第1の励起光導入手段は、
前記第1の励起光を生成する第1の励起光生成手段と、
前記第1の励起光を前記光導波手段に結合する第1の光結合手段、とを備え、
前記第2の残留励起光導入手段は、
前
記第2の残留励起光を前記光導波手段に結合する第2の残留励起光結合手段を前記第2の端部の側に備え、
前記第2の信号光と前記第2の残留励起光を分離する第2の残留励起光分離手段を前記第1の端部の側に備え、
前記第2の励起光導入手段および前記第1の残留励起光導入手段は、第2の光制御手段を備え、
前記第2の光制御手段は、前記第2の励起光を入力する第1の端子と、前記第2の励起光を出力し前記第1の残留励起光を入力する第2の端子と、前記第1の残留励起光を出力する第3の端子を備える
光増幅装置。
【請求項3】
前記第2の光結合手段、および前記第1の残留励起光分離手段はいずれも、空間光学系を備えた空間伝搬型の光結合/分離手段であり、
前記第1の残留励起光結合手段は、光導波路型の残留励起光結合手段である
請求項
1に記載した光増幅装置。
【請求項4】
前記第1の光結合手段、および前記第2の残留励起光分離手段はいずれも、空間光学系を備えた空間伝搬型の光結合/分離手段であり、
前記第2の残留励起光結合手段は、光導波路型の残留励起光結合手段である
請求項
2に記載した光増幅装置。
【請求項5】
前記光結合/分離手段は、ダイクロイックミラーを備え、
前記残留励起光結合手段は、励起光コンバイナを備える
請求項
3又は4に記載した光増幅装置。
【請求項6】
前記光増幅媒体は、希土類イオンが添加された複数のコアからなり、
前記光導波手段は、前記複数のコアとダブルクラッド構造からなる前記複数の光伝送路を備えたマルチコア光ファイバを有し、
前記励起光導入手段は、クラッド励起方式により前記励起光を前記光導波手段に導入する
請求項
1から5のいずれか一項に記載した光増幅装置。
【請求項7】
信号光の波長帯域に利得を有する光増幅媒体を含む複数の光伝送路を備える光導波手段に、前記信号光を導入し、
前記光増幅媒体を励起する励起光を、前記光導波手段の両端部から前記光導波手段に導入し、
前記光導波手段の前記両端部から出力される、前記励起光の波長成分を有する残留励起光を、前記光導波手段に導入する、光増幅方法であって、
前記複数の光伝送路において、
前記信号光のうち第1の信号光は、前記光導波手段の第1の端部から第2の端部に向かう第1の方向に伝搬し、
前記信号光のうち第2の信号光は、前記光導波手段の前記第2の端部から前記第1の端部に向かう第2の方向に伝搬し、
第1の励起光導入手段によって、前記光増幅媒体を励起する第1の励起光を前記光導波手段の前記第1の端部から前記光導波手段に導入し、
第2の励起光導入手段によって、前記光増幅媒体を励起する第2の励起光を前記光導波手段の前記第2の端部から前記光導波手段に導入し、
第1の残留励起光導入手段によって、
前記光導波手段の前記第2の端部から出力される、前記第1の励起光の波長成分を有する第1の残留励起光を、前記第1の端部から前記光導波手段に導入し、
前記第1の信号光と前記第1の残留励起光を前記第2の端部の側において分離し、
第2の残留励起光導入手段によって、
前記光導波手段の前記第1の端部から出力される、前記第2の励起光の波長成分を有する第2の残留励起光を、前記第2の端部から前記光導波手段に導入し、
前記第1の励起光導入手段および前記第2の残留励起光導入手段が備える第1の光制御手段において、
第1の端子に前記第1の励起光を入力し、
第2の端子から前記第1の励起光を出力し、
前記第2の端子に前記第2の残留励起光を入力し、
第3の端子から前記第2の残留励起光を出力する、
光増幅方法。
【請求項8】
信号光の波長帯域に利得を有する光増幅媒体を含む複数の光伝送路を備える光導波手段に前記信号光を導入し、
前記光増幅媒体を励起する励起光を、前記光導波手段の両端部から前記光導波手段に導入し、
前記光導波手段の前記両端部から出力される、前記励起光の波長成分を有する残留励起光を、前記光導波手段に導入する、光増幅方法であって、
前記複数の光伝送路において、
前記信号光のうち第1の信号光は、前記光導波手段の第1の端部から第2の端部に向かう第1の方向に伝搬し、
前記信号光のうち第2の信号光は、前記光導波手段の前記第2の端部から前記第1の端部に向かう第2の方向に伝搬し、
第1の励起光導入手段によって、前記光増幅媒体を励起する第1の励起光を前記光導波手段の前記第1の端部から前記光導波手段に導入し、
第2の励起光導入手段によって、前記光増幅媒体を励起する第2の励起光を前記光導波手段の前記第2の端部から前記光導波手段に導入し、
第1の残留励起光導入手段によって、
前記光導波手段の前記第2の端部から出力される、前記第1の励起光の波長成分を有する第1の残留励起光を、前記第1の端部から前記光導波手段に導入し、
第2の残留励起光導入手段によって、
前記光導波手段の前記第1の端部から出力される、前記第2の励起光の波長成分を有する第2の残留励起光を、前記第2の端部から前記光導波手段に導入し、
前記第2の信号光と前記第2の残留励起光を前記第1の端部の側において分離し、
前記第2の励起光導入手段および前記第1の残留励起光導入手段が備える第2の光制御手段において、
第1の端子に前記第2の励起光を入力し、
第2の端子から前記第2の励起光を出力し、
前記第2の端子に前記第1の残留励起光を入力し、
第3の端子から前記第1の残留励起光を出力する
光増幅方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光増幅装置および光増幅方法に関し、特に、マルチコア光ファイバを用いた光増幅装置および光増幅方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイルトラフィックやビデオサービスの急速な拡大などにより、コアネットワークにおける通信容量の拡大が求められている。この容量拡大の要求は、今後も継続する傾向にある。通信容量の拡大はこれまで、時間多重技術や波長多重技術を用いることによって実現されてきた。この時間多重技術や波長多重技術は、シングルコア光ファイバによる光通信システムに適用されてきた。
【0003】
シングルコア光ファイバを用いる場合、シングルコアすなわち単一の光ファイバコアを伝送することが可能な光信号の多重数には制限があり、近年、その限界に達しつつある。この多重数の限界は、光ファイバ通信において利用可能な波長帯域幅、およびシングルコア光ファイバの入力光強度耐力によって決まる。
【0004】
このような状況において、通信容量をさらに拡大するため、これまでの多重技術とは異なる次元の多重技術である空間多重技術が開発されている。空間多重技術には、光ファイバ1本あたりのコア数を増大させるマルチコア技術と、伝播モード数を増大させるマルチモード技術がある。従来の光ファイバ通信で用いられているコア数およびモード数は、いずれも一個である。そのため、コア数およびモード数を増大させることによって通信容量を飛躍的に拡大することが可能である。
【0005】
しかしながら、光ファイバのコア数やモード数を増大させた場合、現在広く普及している光送受信機や光増幅器をそのまま利用することはできない。現在普及している光送受信機や光増幅器はシングルコアの光ファイバ向けに開発されたものであり、マルチコア光ファイバやマルチモード光ファイバに対して互換性がないからである。そのため、マルチコア光ファイバやマルチモード光ファイバに適した光送受信機および光増幅器を実現する技術が提案されている。
【0006】
マルチコア光ファイバに適した光増幅方式としては、コア励起方式とクラッド励起方式の二方式がある。コア励起方式では、各コアを通して光伝送される光信号の強度をコア毎に個別の励起光源を用いて個別に増幅する。クラッド励起方式では、各コアを通して光伝送される光信号の強度を共通の励起光源を用いて一括して増幅する。
【0007】
マルチコア光ファイバを伝送する光信号の光強度を効率よく増幅するためには、各コアを通して光伝送される光信号の強度を共通の励起光源を用いて一括して増幅するクラッド励起方式が望ましい。また、クラッド励起方式では、従来の単一コア励起方式による光増幅器の構成を原理的にはそのままクラッド励起方式の光増幅器の構成として用いることができる。
【0008】
このようなクラッド励起方式による光増幅器の一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された関連する光増幅器10は、7個の光アイソレータ1、光ファイバファンイン(FAN IN)2、半導体レーザ3、第1光結合器4、マルチコアEDF5、第2光結合器6、ポンプストリッパ7、光ファイバファンアウト(FAN OUT)8、7個の光アイソレータ9と、を備えている。
【0009】
ここで、第1光結合器4は、主光ファイバ4aと、励起光入出力用光ファイバ4bと、励起光供給用光ファイバ4cと、保護部4dとを備えている。また、第2光結合器6は、主光ファイバ6aと、励起光入出力用光ファイバ6bと、保護部6dとを備えている。
【0010】
関連する光増幅器10によれば、半導体レーザ3から出力され、第1光結合器4を介してマルチコアEDF5に供給された励起光のうち、マルチコアEDF5において光励起に寄与しなかった励起光の少なくとも一部は、第2光結合器6によって回収される。回収された励起光は、励起光入出力用光ファイバ6b、励起光入出力用光ファイバ4bを通って第1光結合器4に入力されて励起光として回生され、再びマルチコアEDF5に供給される。これにより、関連する光増幅器10における励起効率を向上することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように関連する光増幅器は、各光アイソレータを通過し、マルチコアファイバの各コア部を単一方向に伝搬する各信号光を、マルチコア光増幅ファイバを前方励起することにより増幅する構成としている。このような前方励起型のマルチコア光ファイバ増幅器を、コア毎に伝送方向が異なる双方向マルチコア光ファイバ伝送システムで用いることとすると、各コアを伝搬する信号光の伝送方向によって信号光の到達可能距離が異なることになる。その理由を以下に説明する。
【0013】
光ファイバ増幅器において、信号光と励起光の伝搬方向が同一方向である前方励起型では、信号光入射端近傍においては反転分布が大きく形成されているため増幅作用も大きく、雑音指数は小さい。それに対して、信号光と励起光の伝搬方向が逆方向となる後方励起型では、信号光入射端近傍においては反転分布が低下するため雑音指数が悪化する。
【0014】
ここで、双方向マルチコア光ファイバ伝送システムに上述したマルチコア光ファイバ増幅器を用いることとすると、励起光の伝搬方向と同一方向に伝搬する順方向伝送信号光に対しては前方励起型となる。一方、励起光の伝搬方向と逆方向に伝搬する逆方向伝送信号光に対しては後方励起型となる。その結果、励起方向により雑音指数が異なることから、逆方向伝送信号光の到達可能距離は、順方向伝送信号光の到達可能距離よりも短くなる。そのため、双方向通信を行うためには、短い方の到達可能距離に合わせて光伝送システムの設計を行う必要があるが、この場合、到達可能距離が長い順方向伝送信号光に対しては過剰性能となる。一方、長い方の到達可能距離に合わせた光伝送システムとするには、伝送方向毎に異なるマルチコア光ファイバ増幅器が必要となり構成が複雑になる。
【0015】
このように、マルチコア光ファイバなどの複数の光伝送路を備えた光増幅装置を双方向通信に用いる場合、伝送方向が異なる信号光のいずれに対しても最適となる光伝送システムを構築するのが困難である、という問題があった。
【0016】
本発明の目的は、上述した課題を解決する光増幅装置および光増幅方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の光増幅装置は、信号光の波長帯域に利得を有する光増幅媒体を含む複数の光伝送路を備えた光導波手段と、光増幅媒体を励起する励起光を、光導波手段の両端部から光導波手段に導入する励起光導入手段と、光導波手段の両端部から出力される、励起光の波長成分を有する残留励起光を、光導波手段に導入する残留励起光導入手段、とを有する。
【0018】
本発明の光増幅方法は、信号光の波長帯域に利得を有する光増幅媒体を含む複数の光伝送路に、信号光を導入し、光増幅媒体を励起する励起光を、複数の光伝送路の両端から複数の光伝送路に導入し、複数の光伝送路の両端から出力される、励起光の波長成分を有する残留励起光を、複数の光伝送路に導入する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光増幅装置および光増幅方法によれば、複数の光伝送路を備えた光増幅装置を双方向通信に用いる場合であっても、伝送方向が異なる信号光のいずれに対しても最適となる光伝送システムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光増幅装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る光増幅装置の別の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る光増幅装置の構成を示すブロック図である。
【
図4A】本発明の第2の実施形態に係る光増幅装置の第1の信号光に対する動作を説明するための図である。
【
図4B】本発明の第2の実施形態に係る光増幅装置の第1の信号光に対する別の動作を説明するための図である。
【
図5A】本発明の第2の実施形態に係る光増幅装置の第2の信号光に対する動作を説明するための図である。
【
図5B】本発明の第2の実施形態に係る光増幅装置の第2の信号光に対する別の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光増幅装置100の構成を示すブロック図である。光増幅装置100は、光導波部(光導波手段)110、励起光導入部(励起光導入手段)120、および残留励起光導入部(残留励起光導入手段)130を有する。
【0023】
光導波部110は、信号光の波長帯域に利得を有する光増幅媒体を含む複数の光伝送路を備える。励起光導入部120は、光増幅媒体を励起する励起光を、光導波部110の両端部から光導波部110に導入する。そして、残留励起光導入部130は、光導波部110の両端部から出力される、励起光の波長成分を有する残留励起光を、光導波部110に導入する。
【0024】
このような構成としたことにより、本実施形態の光増幅装置100においては、光導波部110の複数の光伝送路を伝搬する伝送方向が異なる信号光のいずれに対しても双方向励起型の光増幅となる。その結果、本実施形態の光増幅装置100によれば、複数の光伝送路を備えた光増幅装置を双方向通信に用いる場合であっても、伝送方向が異なる信号光のいずれに対しても最適となる光伝送システムを構築することができる。
【0025】
光導波部110はマルチコア光ファイバを有する構成とすることができる。すなわち、光増幅媒体としての希土類イオンが添加された複数のコアとダブルクラッド構造からなる複数の光伝送路を備えたマルチコア光ファイバを有する構成とすることができる。希土類イオンとして、典型的にはエルビウムイオンを用いることができる。この場合、励起光導入部120は、クラッド励起方式により励起光を光導波部110に導入する構成とすることができる。
【0026】
ここで、マルチコア光ファイバを用いた光増幅器は一般に、クラッド励起方式では光増幅媒体における励起光の吸収効率が低いため、コア励起方式と比較して光強度の増幅効率が低くなる。しかし、本実施形態の光増幅装置100は残留励起光導入部130を備えているので、光増幅媒体において吸収されずに両端部から出力された励起光を、残留励起光として再度、光増幅媒体に導入することが可能である。すなわち、両端部から導入した励起光を再利用することにより、光増幅媒体における励起光の吸収効率を増大させることができる。そのため、光増幅装置100によれば、クラッド励起方式とした場合であっても高い増幅効率が得られる。
【0027】
次に、
図2を用いて本実施形態の光増幅装置100についてさらに詳細に説明する。
【0028】
光導波部110は、第1の光伝送路と第2の光伝送路を含む複数の光伝送路を備えた構成とすることができる。ここで、第1の光伝送路には、信号光のうち第1の信号光が、光導波部110の第1の端部111から第2の端部112に向かう第1の方向に伝搬する。一方、第2の光伝送路には、信号光のうち第2の信号光が、光導波部110の第2の端部112から第1の端部111に向かう第2の方向に伝搬する。
【0029】
また、励起光導入部120は
図2に示すように、第1の励起光導入部(第1の励起光導入手段)121と第2の励起光導入部(第2の励起光導入手段)122を備えた構成とすることができる。ここで、第1の励起光導入部121は、光増幅媒体を励起する第1の励起光を、光導波部110の第1の端部111から光導波部110に導入する。それに対して第2の励起光導入部122は、光増幅媒体を励起する第2の励起光を、光導波部110の第2の端部112から光導波部110に導入する。
【0030】
残留励起光導入部130は
図2に示すように、第1の残留励起光導入部(第1の残留励起光導入手段)131と第2の残留励起光導入部(第2の残留励起光導入手段)132を備えた構成とすることができる。ここで、第1の残留励起光導入部131は、光導波部110の第2の端部112から出力される、第1の励起光の波長成分を有する第1の残留励起光を、第1の端部111から光導波部110に導入する。それに対して第2の残留励起光導入部132は、光導波部110の第1の端部111から出力される、第2の励起光の波長成分を有する第2の残留励起光を、第2の端部112から光導波部110に導入する。
【0031】
このように、本実施形態の光増幅装置100は、各コアにエルビウムイオンを添加したマルチコア光ファイバを双方向からクラッド励起し、その残留励起光を双方向から回生する構成とすることができる。双方向からマルチコア光ファイバを励起する構成としたことにより、マルチコア光ファイバのコア毎に信号光の伝送方向が異なる場合であっても、コア毎の光増幅性能に差異は生じない。また、双方向から残留励起光の回生を行う構成としたことにより、効率よく光増幅を行うことが可能になる。
【0032】
次に、本実施形態による光増幅方法について説明する。
【0033】
本実施形態による光増幅方法においては、まず、信号光の波長帯域に利得を有する光増幅媒体を含む複数の光伝送路に、信号光を導入する。また、光増幅媒体を励起する励起光を、複数の光伝送路の両端から複数の光伝送路に導入する。そして、複数の光伝送路の両端から出力される、励起光の波長成分を有する残留励起光を、複数の光伝送路に導入する。
【0034】
上述の複数の光伝送路に信号光を導入することは、信号光のうち第1の信号光を、複数の光伝送路に含まれる第1の光伝送路に、複数の光伝送路の第1の端部から導入することを含む構成とすることができる。さらに、信号光のうち第2の信号光を、複数の光伝送路に含まれる第2の光伝送路に、複数の光伝送路の第2の端部から導入することを含む構成とすることができる。
【0035】
上述の励起光を複数の光伝送路に導入することは、光増幅媒体を励起する第1の励起光を複数の光伝送路の第1の端部から導入し、光増幅媒体を励起する第2の励起光を複数の光伝送路の第2の端部から導入することを含む構成とすることができる。
【0036】
上述の残留励起光を複数の光伝送路に導入することは、複数の光伝送路の第2の端部から出力される、第1の励起光の波長成分を有する第1の残留励起光を、第1の端部から複数の光伝送路に導入することを含む構成とすることができる。残留励起光を複数の光伝送路に導入することは、さらに、複数の光伝送路の第1の端部から出力される、第2の励起光の波長成分を有する第2の残留励起光を、第2の端部から複数の光伝送路に導入することを含む構成とすることができる。
【0037】
なお、上述の複数の光伝送路に信号光を導入することは、希土類イオンが添加された複数のコアとダブルクラッド構造からなる複数の光伝送路を備えたマルチコア光ファイバに信号光を導入することを含む構成とすることができる。また、励起光を複数の光伝送路に導入することは、クラッド励起方式により励起光を複数の光伝送路に導入することを含む構成とすることができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の光増幅装置100および光増幅方法によれば、複数の光伝送路を備えた光増幅装置を双方向通信に用いる場合であっても、伝送方向が異なる信号光のいずれに対しても最適となる光伝送システムを構築することができる。
【0039】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図3に、本実施形態による光増幅装置1000の構成を示す。
【0040】
光増幅装置1000は、光導波手段としてのマルチコアエルビウム添加ファイバ(Multicore Erbium Doped Fiber:MC-EDF)1100、第1の励起光生成手段としての第1の励起レーザ1210、および第2の励起光生成手段としての第2の励起レーザ1220を有する。ここで、マルチコアエルビウム添加ファイバ(MC-EDF)1100は、希土類イオンであるエルビウムイオンが添加された複数のコアと、ダブルクラッド構造とを有するマルチコア光ファイバである。
【0041】
光増幅装置1000はさらに、マルチコアエルビウム添加ファイバ(MC-EDF)1100の第1の端部に接続されたマルチコア光ファイバ1101の経路中に、第1の光結合/分離部1410と第1の残留励起光結合部(第1の残留励起光結合手段)1310を有する。また、光増幅装置1000は、マルチコアエルビウム添加ファイバ(MC-EDF)1100の第2の端部に接続されたマルチコア光ファイバ1102の経路中に、第2の光結合/分離部1420と第2の残留励起光結合部(第2の残留励起光結合手段)1320を有する。
【0042】
図3では、光増幅装置1000が、第1のファンイン/ファンアウト1610および第2のファンイン/ファンアウト1620を備えた構成を示す。この場合、光増幅装置1000は、第1のファンイン/ファンアウト1610を介して第1の送信機TX1および第2の光受信機RX2に接続され、第2のファンイン/ファンアウト1620を介して第2の送信機TX2および第1の光受信機RX1に接続される。ここで、第1のファンイン/ファンアウト1610は、マルチコア光ファイバ1101の各コアとシングルモードファイバを接続する。また、第2のファンイン/ファンアウト1620は、マルチコア光ファイバ1102の各コアとシングルモードファイバを接続する。このような構成としたことにより光増幅装置1000には、第1の送信機TX1から第1の光受信機RX1に向かう第1の方向に第1の信号光が伝搬し、第2の送信機TX2から第2の光受信機RX2に向かう第2の方向に第2の信号光が伝搬する。これにより、光増幅装置1000を用いた双方向通信が可能になる。
【0043】
第1の励起レーザ(第1の励起光生成手段)1210は第1の励起光を生成する。このとき第1の光結合/分離部1410は、マルチコア光ファイバ1101を介して、第1の励起光をマルチコアエルビウム添加ファイバ(光導波手段)1100に結合する第1の光結合手段として機能する。そして、第1の励起レーザ1210と第1の光結合/分離部1410が第1の励起光導入手段を構成している。
【0044】
第2の励起レーザ(第2の励起光生成手段)1220は第2の励起光を生成する。このとき、第2の光結合/分離部1420は、マルチコア光ファイバ1102を介して、第2の励起光をマルチコアエルビウム添加ファイバ(光導波手段)1100に結合する第2の光結合手段として機能する。そして、第2の励起レーザ1220と第2の光結合/分離部1420が第2の励起光導入手段を構成している。
【0045】
第1の残留励起光結合部1310は第1の端部の側に位置し、第1の残留励起光をマルチコアエルビウム添加ファイバ(光導波手段)1100に結合する。ここで、第1の残留励起光は第1の励起光の波長成分を有し、マルチコアエルビウム添加ファイバ1100の第2の端部からマルチコア光ファイバ1102に出力される。このとき、第2の端部の側に位置する第2の光結合/分離部1420は、第1の信号光と第1の残留励起光を分離する第1の残留励起光分離手段として機能する。そして、第1の残留励起光結合部1310と第2の光結合/分離部1420が第1の残留励起光導入手段を構成している。
【0046】
第2の残留励起光結合部1320は第2の端部の側に位置し、第2の残留励起光をマルチコアエルビウム添加ファイバ(光導波手段)1100に結合する。ここで、第2の残留励起光は第2の励起光の波長成分を有し、マルチコアエルビウム添加ファイバ1100の第1の端部からマルチコア光ファイバ1101に出力される。このとき、第1の端部の側に位置する第1の光結合/分離部1410は、第2の信号光と第2の残留励起光を分離する第2の残留励起光分離手段として機能する。そして、第2の残留励起光結合部1320と第1の光結合/分離部1410が第2の残留励起光導入手段を構成している。
【0047】
光増幅装置1000は、
図3に示すように、第1の光制御部(第1の光制御手段)1510および第2の光制御部(第2の光制御手段)1520を備えた構成とすることができる。
【0048】
第1の光制御部(第1の光制御手段)1510は、第1の励起光を入力する第1の端子1511、第1の励起光を出力し第2の残留励起光を入力する第2の端子1512、および第2の残留励起光を出力する第3の端子1513を備える。ここで、第1の光制御部(第1の光制御手段)1510は、第1の励起光導入手段および第2の残留励起光導入手段の一部を構成している。
【0049】
第2の光制御部(第2の光制御手段)1520は、第2の励起光を入力する第1の端子1521、第2の励起光を出力し第1の残留励起光を入力する第2の端子1522、および第1の残留励起光を出力する第3の端子1523を備える。ここで、第2の光制御部(第2の光制御手段)1520は、第2の励起光導入手段および第1の残留励起光導入手段の一部を構成している。
【0050】
なお、第1の光制御部1510および第2の光制御部1520として、典型的には光サーキュレータを用いることができる。
【0051】
ここで、第1の光結合/分離部1410および第2の光結合/分離部1420はいずれも、空間光学系を備えた空間伝搬型の光結合/分離部(光結合/分離手段)とすることができる。さらに、第1の残留励起光結合部(第1の残留励起光結合手段)1310および第2の残留励起光結合部(第2の残留励起光結合手段)1320はいずれも、光導波路型の残留励起光結合部(残留励起光結合手段)とすることができる。このような構成とすることにより、光増幅効率を最大化することができる。なお、空間伝搬型の光結合/分離部はダイクロイックミラーを備え、光導波路型の残留励起光結合部は励起光コンバイナを備えた構成とすることができる。
【0052】
上述した構成に替えて、第1の残留励起光結合部1310および第2の残留励起光結合部1320を空間伝搬型の残留励起光結合部とすると、空間伝搬型ではダイクロイックミラーが含まれるので、信号光はマルチコアエルビウム添加ファイバ1100を通過することができない。さらに、第1の光結合/分離部1410および第2の光結合/分離部1420を光導波路型とすると、第1の残留励起光は第2の光制御部1520の第2の端子1522だけではなく、第2のファンイン/ファンアウト1620にも出力されることになる。この場合、残留励起光のパワーは、通常、数10ワット(W)程度であるので、後段の第2のファンイン/ファンアウト1620や第1の光受信機RX1にダメージを与えることになる。したがって、このような構成とする場合は、残留励起光の第2の光結合/分離部1420を通過する成分を遮断するデバイスを別途追加する必要がある。
【0053】
一方、第2の光結合/分離部1420がダイクロイックミラーを備えた構成とした場合、第1の残留励起光は、ほとんどすべて第2の光制御部1520の第2の端子1522に出力される。そのため、第2の光結合/分離部1420の後段に位置する第2のファンイン/ファンアウト1620および第1の光受信機RX1に出力される残留励起光のパワーは無視できるレベルとなる。
【0054】
このように、第1の光結合/分離部1410および第2の光結合/分離部1420を、ダイクロイックミラーを内蔵する空間伝搬型とし、かつ、第1の残留励起光結合部1310および第2の残留励起光結合部1320を光導波路型とした構成が好適である。光導波路型とすることにより、第1の残留励起光結合部1310および第2の残留励起光結合部1320は信号光(典型的には波長1.5μm)と励起光(典型的には波長0.98μm)の両方を通過させることができる。
【0055】
上述したように、本実施形態による光増幅装置1000は、第1の励起レーザ1210と第2の励起レーザ1220を備え、それぞれが生成する第1の励起光および第2の励起光によりマルチコアエルビウム添加ファイバ1100を双方向励起する構成としている。そのため、信号光の伝送方向が異なることによる信号光の到達可能距離の差異は生じない。その結果、信号光の伝送方向が異なる場合であっても、単一のマルチコア光ファイバ増幅器を用いた双方向通信が可能になる。さらに、本実施形態の光増幅装置1000によれば、コア毎に信号光の伝送方向が異なるので、コア間のクロストークを抑制することができる。そのため、コア間クロストークに起因する光信号歪みが抑圧されるので、各信号光が全てのコアを同一方向に伝搬する場合と比較して、伝送可能距離を延ばすことができる。
【0056】
次に、本実施形態による光増幅装置1000の動作について、さらに詳細に説明する。
【0057】
まず、
図4A、4Bを用いて、第1の送信機TX1から第1の光受信機RX1に向かう第1の方向に伝搬する第1の信号光S1に対する増幅動作について説明する。
【0058】
図4Aに示すように、第1の励起レーザ1210が生成した第1の励起光P1は、第1の光制御部1510の第1の端子1511に入力される。第1の光制御部1510は、第1の端子1511から入力した第1の励起光P1を、第2の端子1512から第1の光結合/分離部1410に出力する。第1の光結合/分離部1410は、マルチコア光ファイバ1101を介して、第1の励起光P1をマルチコアエルビウム添加ファイバ1100に結合する。マルチコアエルビウム添加ファイバ1100の各コアに添加されたエルビウムイオンは第1の励起光P1によって励起され、これにより第1の信号光S1が増幅される。この場合、第1の信号光S1と第1の励起光P1の伝搬方向はともに第1の方向であり同一方向であるから、光増幅装置1000は前方励起型の光増幅器として動作する。
【0059】
第1の励起光P1のうちマルチコアエルビウム添加ファイバ1100で吸収されなかった第1の残留励起光R1は、増幅された第1の信号光S1とともにマルチコアエルビウム添加ファイバ1100から出力され、第2の光結合/分離部1420に入力される。第2の光結合/分離部1420は第1の信号光と第1の残留励起光R1を分離し、第1の残留励起光R1を第2の光制御部1520の第2の端子1522に出力する。第2の光制御部1520は第2の端子1522から入力された第1の残留励起光R1を、第3の端子1523から第1の残留励起光結合部1310に出力する。第1の残留励起光結合部1310は、第1の残留励起光R1をマルチコアエルビウム添加ファイバ1100に結合する。このように、光増幅装置1000は、第2の光結合/分離部1420から第1の残留励起光結合部1310へと接続される回生経路を備える。この回生経路を備えたことにより、第1の残留励起光R1を回生させ再利用することが可能になる。
【0060】
一方、
図4Bに示すように、第2の励起レーザ1220が生成した第2の励起光P2は、第2の光制御部1520の第1の端子1521に入力される。第2の光制御部1520は、第1の端子1521から入力した第2の励起光P2を、第2の端子1522から第2の光結合/分離部1420に出力する。第2の光結合/分離部1420は、マルチコア光ファイバ1102を介して、第2の励起光P2をマルチコアエルビウム添加ファイバ1100に結合する。マルチコアエルビウム添加ファイバ1100の各コアに添加されたエルビウムイオンは第2の励起光P2によって励起され、これにより第1の信号光S1が増幅される。この場合、第2の励起光P2の伝搬方向は第1の信号光S1の伝搬方向と逆方向であるので、光増幅装置1000は後方励起型の光増幅器として動作する。
【0061】
第2の励起光P2のうちマルチコアエルビウム添加ファイバ1100で吸収されなかった第2の残留励起光R2は、増幅された第2の信号光S2とともにマルチコアエルビウム添加ファイバ1100から出力され、第1の光結合/分離部1410に入力される。第1の光結合/分離部1410は第2の信号光と第2の残留励起光R2を分離し、第2の残留励起光R2を第1の光制御部1510の第2の端子1512に出力する。第1の光制御部1510は第2の端子1512から入力された第2の残留励起光R2を、第3の端子1513から第2の残留励起光結合部1320に出力する。第2の残留励起光結合部1320は、第2の残留励起光R2をマルチコアエルビウム添加ファイバ1100に結合する。このように、光増幅装置1000は、第1の光結合/分離部1410から第2の残留励起光結合部1320へと接続される回生経路を備える。この回生経路を備えたことにより、第2の残留励起光R2を回生させ再利用することが可能になる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態による光増幅装置1000は、第1の信号光S1の伝搬方向と同一方向および逆方向から励起光をマルチコアエルビウム添加ファイバ1100に供給する構成としている。したがって、光増幅装置1000は、第1の方向に伝搬する第1の信号光S1に対して、双方向励起型の光増幅器として動作する。
【0063】
次に、
図5A、5Bを用いて、第2の送信機TX2から第2の光受信機RX2に向かう第2の方向に伝搬する第2の信号光S2に対する増幅動作について説明する。
【0064】
図5Aに示すように、第2の励起レーザ1220が生成した第2の励起光P2は、第2の光制御部1520の第1の端子1521に入力される。第2の光制御部1520は、第1の端子1521から入力した第2の励起光P2を、第2の端子1522から第2の光結合/分離部1420に出力する。第2の光結合/分離部1420は、マルチコア光ファイバ1102を介して、第2の励起光P2をマルチコアエルビウム添加ファイバ1100に結合する。マルチコアエルビウム添加ファイバ1100の各コアに添加されたエルビウムイオンは第2の励起光P2によって励起され、これにより第2の信号光S2が増幅される。この場合、第2の信号光S2と第2の励起光P2の伝搬方向はともに第2の方向であり同一方向であるから、光増幅装置1000は前方励起型の光増幅器として動作する。
【0065】
第2の励起光P2のうちマルチコアエルビウム添加ファイバ1100で吸収されなかった第2の残留励起光R2は、増幅された第2の信号光S2とともにマルチコアエルビウム添加ファイバ1100から出力され、第1の光結合/分離部1410に入力される。第1の光結合/分離部1410は第2の信号光と第2の残留励起光R2を分離し、第2の残留励起光R2を第1の光制御部1510の第2の端子1512に出力する。第1の光制御部1510は第2の端子1512から入力された第2の残留励起光R2を、第3の端子1513から第2の残留励起光結合部1320に出力する。第2の残留励起光結合部1320は、第2の残留励起光R2をマルチコアエルビウム添加ファイバ1100に結合する。このように、光増幅装置1000は、第1の光結合/分離部1410から第2の残留励起光結合部1320へと接続される回生経路を備える。この回生経路を備えたことにより、第2の残留励起光R2を回生させ再利用することが可能になる。
【0066】
一方、
図5Bに示すように、第1の励起レーザ1210が生成した第1の励起光P1は、第1の光制御部1510の第1の端子1511に入力される。第1の光制御部1510は、第1の端子1511から入力した第1の励起光P1を、第2の端子1512から第1の光結合/分離部1410に出力する。第1の光結合/分離部1410は、マルチコア光ファイバ1101を介して、第1の励起光P1をマルチコアエルビウム添加ファイバ1100に結合する。マルチコアエルビウム添加ファイバ1100の各コアに添加されたエルビウムイオンは第1の励起光P1によって励起され、これにより第2の信号光S2が増幅される。この場合、第1の励起光P1の伝搬方向は第2の信号光S2の伝搬方向と逆方向であるので、光増幅装置1000は後方励起型の光増幅器として動作する。
【0067】
第1の励起光P1のうちマルチコアエルビウム添加ファイバ1100で吸収されなかった第1の残留励起光R1は、増幅された第1の信号光S1とともにマルチコアエルビウム添加ファイバ1100から出力され、第2の光結合/分離部1420に入力される。第2の光結合/分離部1420は第1の信号光と第1の残留励起光R1を分離し、第1の残留励起光R1を第2の光制御部1520の第2の端子1522に出力する。第2の光制御部1520は第2の端子1522から入力された第1の残留励起光R1を、第3の端子1523から第1の残留励起光結合部1310に出力する。第1の残留励起光結合部1310は、第1の残留励起光R1をマルチコアエルビウム添加ファイバ1100に結合する。このように、光増幅装置1000は、第2の光結合/分離部1420から第1の残留励起光結合部1310へと接続される回生経路を備える。この回生経路を備えたことにより、第1の残留励起光R1を回生させ再利用することが可能になる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態による光増幅装置1000は、第2の信号光S2の伝搬方向と同一方向および逆方向から励起光をマルチコアエルビウム添加ファイバ1100に供給する構成としている。したがって、光増幅装置1000は、第2の方向に伝搬する第2の信号光S2に対しても、双方向励起型の光増幅器として動作する。
【0069】
このように、本実施形態による光増幅装置1000は、励起光の伝搬方向と同一方向に伝搬する順方向伝送信号光に対しても、励起光の伝搬方向と逆方向に伝搬する逆方向伝送信号光に対しても、双方向励起型の光増幅器として動作する。したがって、本実施形態の光増幅装置1000によれば、伝送方向が異なる信号光のいずれに対しても最適となる光伝送システムを構築することができる。さらに、双方向から残留励起光の回生を行うことにより、効率よく光増幅を行うことが可能になる。
【0070】
次に、本実施形態による光増幅方法について説明する。
【0071】
本実施形態による光増幅方法においては、まず、信号光の波長帯域に利得を有する光増幅媒体を含む複数の光伝送路に、信号光を導入する。また、光増幅媒体を励起する励起光を、複数の光伝送路の両端から複数の光伝送路に導入する。そして、複数の光伝送路の両端から出力される、励起光の波長成分を有する残留励起光を、複数の光伝送路に導入する。
【0072】
上述の複数の光伝送路に信号光を導入することは、信号光のうち第1の信号光を、複数の光伝送路に含まれる第1の光伝送路に、複数の光伝送路の第1の端部から導入することを含む構成とすることができる。さらに、信号光のうち第2の信号光を、複数の光伝送路に含まれる第2の光伝送路に、複数の光伝送路の第2の端部から導入することを含む構成とすることができる。
【0073】
上述の励起光を複数の光伝送路に導入することは、光増幅媒体を励起する第1の励起光を複数の光伝送路の第1の端部から導入し、光増幅媒体を励起する第2の励起光を複数の光伝送路の第2の端部から導入することを含む構成とすることができる。
【0074】
上述の残留励起光を複数の光伝送路に導入することは、複数の光伝送路の第2の端部から出力される、第1の励起光の波長成分を有する第1の残留励起光を、第1の端部から複数の光伝送路に導入することを含む構成とすることができる。残留励起光を複数の光伝送路に導入することは、さらに、複数の光伝送路の第1の端部から出力される、第2の励起光の波長成分を有する第2の残留励起光を、第2の端部から複数の光伝送路に導入することを含む構成とすることができる。
【0075】
なお、上述の複数の光伝送路に信号光を導入することは、希土類イオンが添加された複数のコアとダブルクラッド構造からなる複数の光伝送路を備えたマルチコア光ファイバに信号光を導入することを含む構成とすることができる。また、励起光を複数の光伝送路に導入することは、クラッド励起方式により励起光を複数の光伝送路に導入することを含む構成とすることができる。
【0076】
ここまでの構成は、第1の実施形態による光増幅方法と同様である。本実施形態による光増幅方法においては、第1の励起光を複数の光伝送路に導入することは、第1の励起光を生成し、第1の励起光を複数の光伝送路に結合することを含む構成とした。そして、第2の励起光を複数の光伝送路に導入することは、第2の励起光を生成し、第2の励起光を複数の光伝送路に結合することを含む構成とした。
【0077】
また、第1の残留励起光を複数の光伝送路に導入することは、第1の信号光と第1の残留励起光を分離し、第1の残留励起光を複数の光伝送路に結合することを含む構成とすることができる。そして、第2の残留励起光を複数の光伝送路に導入することは、第2の信号光と第2の残留励起光を分離し、第2の残留励起光を複数の光伝送路に結合することを含む構成とすることができる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態の光増幅装置1000および光増幅方法によれば、複数の光伝送路を備えた光増幅装置を双方向通信に用いる場合であっても、伝送方向が異なる信号光のいずれに対しても最適となる光伝送システムを構築することができる。さらに、双方向から残留励起光の回生を行うことにより、効率よく光増幅を行うことが可能になる。
【0079】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0080】
(付記1)信号光の波長帯域に利得を有する光増幅媒体を含む複数の光伝送路を備えた光導波手段と、前記光増幅媒体を励起する励起光を、前記光導波手段の両端部から前記光導波手段に導入する励起光導入手段と、前記光導波手段の前記両端部から出力される、前記励起光の波長成分を有する残留励起光を、前記光導波手段に導入する残留励起光導入手段、とを有する光増幅装置。
【0081】
(付記2)前記複数の光伝送路は、前記信号光のうち第1の信号光が、前記光導波手段の第1の端部から第2の端部に向かう第1の方向に伝搬する第1の光伝送路と、前記信号光のうち第2の信号光が、前記光導波手段の前記第2の端部から前記第1の端部に向かう第2の方向に伝搬する第2の光伝送路、とを含む付記1に記載した光増幅装置。
【0082】
(付記3)前記励起光導入手段は、前記光増幅媒体を励起する第1の励起光を前記光導波手段の前記第1の端部から前記光導波手段に導入する第1の励起光導入手段と、前記光増幅媒体を励起する第2の励起光を前記光導波手段の前記第2の端部から前記光導波手段に導入する第2の励起光導入手段、とを備え、残留励起光導入手段は、光導波手段の前記第2の端部から出力される、前記第1の励起光の波長成分を有する第1の残留励起光を、前記第1の端部から前記光導波手段に導入する第1の残留励起光導入手段と、前記光導波手段の前記第1の端部から出力される、前記第2の励起光の波長成分を有する第2の残留励起光を、前記第2の端部から前記光導波手段に導入する第2の残留励起光導入手段、とを備える付記2に記載した光増幅装置。
【0083】
(付記4)前記第1の励起光導入手段は、前記第1の励起光を生成する第1の励起光生成手段と、前記第1の励起光を前記光導波手段に結合する第1の光結合手段、とを備え、前記第2の励起光導入手段は、前記第2の励起光を生成する第2の励起光生成手段と、前記第2の励起光を前記光導波手段に結合する第2の光結合手段、とを備え、前記第1の残留励起光導入手段は、前記第1の残留励起光を前記光導波手段に結合する第1の残留励起光結合手段を前記第1の端部の側に備え、前記第1の信号光と前記第1の残留励起光を分離する第1の残留励起光分離手段を前記第2の端部の側に備え、前記第2の残留励起光導入手段は、前記第2の残留励起光を前記光導波手段に結合する第2の残留励起光結合手段を前記第2の端部の側に備え、前記第2の信号光と前記第2の残留励起光を分離する第2の残留励起光分離手段を前記第1の端部の側に備える付記3に記載した光増幅装置。
【0084】
(付記5)前記第1の励起光導入手段および前記第2の残留励起光導入手段は、第1の光制御手段を備え、前記第1の光制御手段は、前記第1の励起光を入力する第1の端子と、前記第1の励起光を出力し前記第2の残留励起光を入力する第2の端子と、前記第2の残留励起光を出力する第3の端子を備える付記4に記載した光増幅装置。
【0085】
(付記6)前記第2の励起光導入手段および前記第1の残留励起光導入手段は、第2の光制御手段を備え、前記第2の光制御手段は、前記第2の励起光を入力する第1の端子と、前記第2の励起光を出力し前記第1の残留励起光を入力する第2の端子と、前記第1の残留励起光を出力する第3の端子を備える付記4に記載した光増幅装置。
【0086】
(付記7)前記第1の光結合手段、前記第2の光結合手段、前記第1の残留励起光分離手段、および前記第2の残留励起光分離手段はいずれも、空間光学系を備えた空間伝搬型の光結合/分離手段であり、前記第1の残留励起光結合手段および前記第2の残留励起光結合手段はいずれも、光導波路型の残留励起光結合手段である付記4から6のいずれか一項に記載した光増幅装置。
【0087】
(付記8)前記光結合/分離手段は、ダイクロイックミラーを備え、前記残留励起光結合手段は、励起光コンバイナを備える付記7に記載した光増幅装置。
【0088】
(付記9)前記光増幅媒体は、希土類イオンが添加された複数のコアからなり、前記光導波手段は、前記複数のコアとダブルクラッド構造からなる前記複数の光伝送路を備えたマルチコア光ファイバを有し、前記励起光導入手段は、クラッド励起方式により前記励起光を前記光導波手段に導入する付記1から8のいずれか一項に記載した光増幅装置。
【0089】
(付記10)信号光の波長帯域に利得を有する光増幅媒体を含む複数の光伝送路に、前記信号光を導入し、前記光増幅媒体を励起する励起光を、前記複数の光伝送路の両端から前記複数の光伝送路に導入し、前記複数の光伝送路の前記両端から出力される、前記励起光の波長成分を有する残留励起光を、前記複数の光伝送路に導入する光増幅方法。
【0090】
(付記11)前記複数の光伝送路に前記信号光を導入することは、前記信号光のうち第1の信号光を、前記複数の光伝送路に含まれる第1の光伝送路に、前記複数の光伝送路の第1の端部から導入し、前記信号光のうち第2の信号光を、前記複数の光伝送路に含まれる第2の光伝送路に、前記複数の光伝送路の第2の端部から導入することを含む付記10に記載した光増幅方法。
【0091】
(付記12)前記励起光を前記複数の光伝送路に導入することは、前記光増幅媒体を励起する第1の励起光を前記複数の光伝送路の前記第1の端部から導入し、前記光増幅媒体を励起する第2の励起光を前記複数の光伝送路の前記第2の端部から導入することを含み、前記残留励起光を前記複数の光伝送路に導入することは、前記複数の光伝送路の前記第2の端部から出力される、前記第1の励起光の波長成分を有する第1の残留励起光を、前記第1の端部から前記複数の光伝送路に導入し、前記複数の光伝送路の前記第1の端部から出力される、前記第2の励起光の波長成分を有する第2の残留励起光を、前記第2の端部から前記複数の光伝送路に導入することを含む付記11に記載した光増幅方法。
【0092】
(付記13)前記第1の励起光を前記複数の光伝送路に導入することは、前記第1の励起光を生成し、前記第1の励起光を前記複数の光伝送路に結合することを含み、前記第2の励起光を前記複数の光伝送路に導入することは、前記第2の励起光を生成し、前記第2の励起光を前記複数の光伝送路に結合することを含む付記12に記載した光増幅方法。
【0093】
(付記14)前記第1の励起光を前記複数の光伝送路に導入することは、前記第1の励起光を前記複数の光伝送路に空間光学系により結合することを含み、前記第2の励起光を前記複数の光伝送路に導入することは、前記第2の励起光を前記複数の光伝送路に空間光学系により結合することを含む付記13に記載した光増幅方法。
【0094】
(付記15)前記第1の残留励起光を前記複数の光伝送路に導入することは、前記第1の信号光と前記第1の残留励起光を分離し、前記第1の残留励起光を前記複数の光伝送路に結合することを含み、前記第2の残留励起光を前記複数の光伝送路に導入することは、前記第2の信号光と前記第2の残留励起光を分離し、前記第2の残留励起光を前記複数の光伝送路に結合することを含む付記12に記載した光増幅方法。
【0095】
(付記16)前記第1の残留励起光を前記複数の光伝送路に導入することは、前記第1の信号光と前記第1の残留励起光を空間光学系により分離し、前記第1の残留励起光を前記複数の光伝送路に光導波路により結合することを含み、前記第2の残留励起光を前記複数の光伝送路に導入することは、前記第2の信号光と前記第2の残留励起光を空間光学系により分離し、前記第2の残留励起光を前記複数の光伝送路に光導波路により結合することを含む付記15に記載した光増幅方法。
【0096】
(付記17) 前記複数の光伝送路に前記信号光を導入することは、希土類イオンが添加された複数のコアとダブルクラッド構造からなる前記複数の光伝送路を備えたマルチコア光ファイバに前記信号光を導入することを含み、前記励起光を前記複数の光伝送路に導入することは、クラッド励起方式により前記励起光を前記複数の光伝送路に導入することを含む付記10から16のいずれか一項に記載した光増幅方法。
【0097】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0098】
100、1000 光増幅装置
110 光導波部
111 第1の端部
112 第2の端部
120 励起光導入部
121 第1の励起光導入部
122 第2の励起光導入部
130 残留励起光導入部
131 第1の残留励起光導入部
132 第2の残留励起光導入部
1100 マルチコアエルビウム添加ファイバ
1101、1102 マルチコア光ファイバ
1210 第1の励起レーザ
1220 第2の励起レーザ
1310 第1の残留励起光結合部
1320 第2の残留励起光結合部
1410 第1の光結合/分離部
1420 第2の光結合/分離部
1510 第1の光制御部
1511、1521 第1の端子
1512、1522 第2の端子
1513、1523 第3の端子
1520 第2の光制御部
1610 第1のファンイン/ファンアウト
1620 第2のファンイン/ファンアウト