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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20240110BHJP
   B25F 5/02 20060101ALI20240110BHJP
   B25B 23/18 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B25F5/00 A
B25F5/02
B25F5/00 H
B25F5/00 D
B25B23/18
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022533799
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2021022240
(87)【国際公開番号】W WO2022004330
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2020112437
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田村 健悟
(72)【発明者】
【氏名】東海林 潤一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 翔太
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/121463(WO,A1)
【文献】特開2014-240115(JP,A)
【文献】特開2008-062338(JP,A)
【文献】特開2019-000982(JP,A)
【文献】特開2012-139748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F1/00-5/02
B25B23/00-23/18
B25C1/00-13/00
B25D1/00-17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を発生させる駆動部と、前記駆動部にエネルギーを供給するエネルギー供給部と、前記駆動部により駆動される動力伝達部と、前記駆動部、前記エネルギー供給部及び動力伝達部を収容する筐体部と、前記筐体部の外面の少なくとも一部を覆うカバー部と、を有する作業機であって、
記筐体部の外面と前記カバー部の間に空気流通路を有し、前記作業機の動作時の振動によって前記カバー部が前記筐体部に対して移動することで、前記空気流通路内の容積が変動して前記空気流通路内に外部の空気を流入及び流出させるよう構成されたことを特徴とする作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機であって、前記空気流通路は、前記作業機の外部に開口する第1及び第2通気口と、前記筐体部の外面と前記カバー部の内面の間で前記第1及び第2通気口をつなぐ通路部とを有する、ことを特徴とする作業機。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機であって、
前記第1及び第2通気口のうち、少なくとも一方の通気口は、前記筐体部の外面と前記カバー部の間に形成される隙間によって構成される、ことを特徴とする作業機。
【請求項4】
請求項2に記載の作業機であって、
前記第1及び第2通気口のうち、少なくとも一方の通気口は、前記カバー部の内面と外面を貫通する貫通穴によって構成される、ことを特徴とする作業機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の作業機であって、
前記カバー部及び空気流通路は、前記動力伝達部に対応する位置、前記エネルギー供給部に対応する位置、又は、前記駆動部に対応する位置の少なくともいずれかの位置に設けられる、ことを特徴とする作業機。
【請求項6】
駆動力を発生させる駆動部と、前記駆動部にエネルギーを供給するエネルギー供給部と、前記駆動部により駆動される動力伝達部と、前記駆動部、前記エネルギー供給部及び前記動力伝達部を収容する筐体部と、前記筐体部の外面の少なくとも一部を覆うカバー部と、を有する作業機であって、
前記筐体部は、駆動部を収容するハウジングと、前記ハウジングの前方に接続されて前記動力伝達部を収容するケースと、を有し、
前記カバー部は、前記ケースを覆うよう構成され、
前記カバー部及び前記筐体部の間、又は、少なくともどちらか一方には、前記筐体部の外部と連通する第1通気口及び第2通気口が設けられ、
前記筐体部の外面と前記カバー部の内面の間で前記第1通気口及び前記第2通気口をつなぐ通路部を有し、前記作業機の動作時の振動によって前記カバー部が前記筐体部に対して移動することで、前記通路部内の容積が変動し、前記第1通気口から吸入された空気が、前記カバー部と前記筐体部の間に形成された前記通路部を通り、前記第2通気口から排気されるよう構成された、ことを特徴とする作業機。
【請求項7】
請求項6に記載の作業機であって、
前記ハウジングは、前記駆動部により駆動されるファンを収容し、
前記ファンは、前記ハウジングに設けられた第3通気口からファン風を吸入し、
前記ファン風は、前記筐体部に設けられた第4通気口から排気されることを特徴とする作業機。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の作業機であって、
前記カバー部は、少なくとも前記ケースに対して前記駆動部の軸方向に移動可能に支持され、
前記カバー部が前記軸方向に移動することにより、前記第1通気口から空気を吸入することを特徴とする作業機。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の作業機であって、
前記ケースには、LED素子が設けられた基板が少なくとも前記ケースに対して前記駆動部の軸方向に移動可能に支持され、
前記基板が前記軸方向に移動することにより、前記第1通気口から空気を吸入することを特徴とする作業機。
【請求項10】
請求項9に記載の作業機であって、
前記ケースと前記基板との間には、前記基板を前記ケース側に付勢する付勢部材が設けられており、
作業時に発生した振動により前記カバー部が前記付勢部材を圧縮した後に、前記付勢部材の反発力により前記カバー部が前記軸方向に移動することにより前記第1通気口から空気を吸入することを特徴とする作業機。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の作業機であって、
前記駆動部は、電力をエネルギー源とする電動モータで構成され、前記エネルギー供給部は、前記電動モータに電力を供給する電力供給部として構成されることを特徴とする作業機。
【請求項12】
請求項11に記載の作業機であって、
前記電力供給部は、着脱可能な電池パックから電力を供給されることを特徴とする作業機。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか一項に記載の作業機であって、
前記駆動部は、圧縮空気をエネルギー源とし、前記エネルギー供給部は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給部として構成されることを特徴とする作業機。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか一項に記載の作業機であって、
前記駆動部は、燃料をエネルギー源とする内燃機関で構成され、前記エネルギー供給部は、前記内燃機関に燃料を供給する燃料供給部として構成されることを特徴とする作業機。
【請求項15】
請求項1又は6に記載の作業機であって、
前記カバー部と前記筐体部の間に、前記カバー部を前記駆動部の軸方向において前記筐体部から離れるように付勢する付勢部材を有することを特徴とする作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体部の外面の少なくとも一部を覆うカバーを有する作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動力を発生させる駆動部と、電力等のエネルギーを供給するエネルギー供給部と、駆動部により駆動される動力伝達部を有する作業機においては、駆動部、エネルギー供給部及び動力伝達部は筐体によって収容され、筐体の内部を触れることができないように構成される。筐体の材質としては合成樹脂製や金属製とされることが多い。また、筐体の内部の機構が発熱を伴うような場合には、筐体外部を作業者が触れた際に不快感を覚えないように、冷却ファンによる冷却機構を設けたり、筐体の発熱部分外側に保護用のカバーを取り付けたりすることがある。このような公知の技術は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1には、モータ冷却のためにファンによって本体内に吸入した冷却風を、ケースとカバーの間にも流すことで、ケースの冷却を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/121463号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、作業機の駆動部の高出力化に伴い、発熱への対策が重要となっている。例えば、インパクト工具等の作業機では、合成樹脂の主ハウジングと金属製のケースを有するが、モータの高出力化に伴って金属製のケース部分の温度上昇への対策が課題となっている。特に、発熱部位のケースの近傍にLED(発光ダイオード)等の何らかの電子部品を搭載するような場合は、電子部品への熱対策も重要な課題となる。特許文献1では、モータを冷却するための冷却風を使用して金属製のケースやLED近傍を冷却する。即ち、モータによって回転される冷却ファンによって、筐体の後端部から吸い込んだ冷却風によりモータを冷却し、その後の冷却風を使用して金属製のケース部位を冷却する。しかしながら、このような冷却方法は、金属製のケースとファンが離れている場合には、ケース周囲を流れる冷却風の流量が低下するため十分な冷却効果が得られない。
【0005】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、シンプルな構成にて筐体部の過度な温度上昇を抑えることができるようにした作業機を提供することにある。本発明の他の目的は、筐体部のうち金属製とされる部分の外側に冷却機構を設けた作業機を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、筐体部の外側に付加されているカバーを用い、動作時の作業機の振動を利用して筐体部の冷却を行うようにした作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち代表的な特徴を説明すれば次のとおりである。
本発明の一つの特徴によれば、駆動力を発生させる駆動部と、駆動部にエネルギーを供給するエネルギー供給部と、駆動部により駆動される動力伝達部と、駆動部、エネルギー供給部及び動力伝達部を収容する筐体部と、筐体部の外面の少なくとも一部を覆うカバー部と、を有する作業機であって、作業機は、筐体部の外面とカバー部の間に空気流通路を有し、作業機の動作時の振動によってカバー部が筐体部に対して移動することで、空気流通路内の容積が変動して空気流通路内に外部の空気を流入及び流出させるよう構成される。また、空気流通路は、作業機の外部に開口する第1及び第2通気口と、筐体部の外面とカバー部の内面の間で第1及び第2通気口をつなぐ通路部とを有するようにした。第1及び第2通気口のうち、少なくとも一方の通気口は、筐体部の外面とカバー部の間に形成される隙間によって構成されるか、又は、カバー部の内面と外面を貫通する貫通穴によって構成される。尚、カバー部及び空気流通路は、動力伝達部に対応する位置、エネルギー供給部に対応する位置、又は、駆動部に対応する位置の少なくともいずれかの位置に設けられる。
【0007】
本発明の他の特徴によれば、駆動部を収容するハウジングと、ハウジングの前方に接続されて動力伝達部を収容するケースを有する作業機において、カバー部は、ケースを覆うよう構成され、カバー部及び筐体部の間、又は、少なくともどちらか一方には、筐体部の外部と連通する第1通気口及び第2通気口が設けられ、筐体部の外面とカバー部の内面の間で第1通気口及び第2通気口をつなぐ通路部を有し、作業機の動作時の振動によってカバー部が筐体部に対して移動することで、通路部内の容積が変動し、第1通気口から吸入された空気が、カバー部と筐体部の間に形成された通路部を通り、第2通気口から排気されるように構成した。ハウジングは、駆動部により駆動されるファンを収容し、ファンは、ハウジングに設けられた第3通気口からファン風(外気)を吸入し、ファン風は、筐体部に設けられた第4通気口から外部に排気される。カバー部は、少なくともケースに対して駆動部の軸方向に移動可能に支持され、カバー部が軸方向に移動することにより、第1通気口から空気を吸入する。
【0008】
本発明のさらに他の特徴によれば、作業機のケースには、LED素子が設けられた基板が少なくともケースに対して駆動部の軸方向に移動可能に支持され、基板が軸方向に移動することにより、第1通気口から空気を吸入する。ケースと基板との間には、基板をケース側に付勢する付勢部材が設けられており、作業時に発生した振動により付勢部材の移動により第1通気口から空気を吸入する。このような作業機の駆動部は、電力をエネルギー源とする電動モータで構成され、エネルギー供給部は、電動モータに電力を供給する電力供給部として構成され、着脱可能な電池パックから電力を供給される。尚、作業機の駆動部は、圧縮空気をエネルギー源とし、エネルギー供給部は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給部として構成される作業機としても良いし、駆動部は燃料をエネルギー源とする内燃機関で構成され、エネルギー供給部は内燃機関に燃料を供給する燃料供給部として構成される作業機としても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業機の筐体部の外面とカバー部の間に空気流通路を形成して、作業機の動作時の反動や振動によって動くカバー部によって空気流通路の容積を増加させ又は減少させることによって、外部の空気を流入させ又は流出させるように構成したので、筐体部の過度な温度上昇を抑えることができる。また、ケースを冷却するための空気流通路が筐体内と連通しないため、筐体部からのグリス漏れの虞の心配もない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係るインパクト工具1の内部構造を示す縦断面図である。
図2図1のインパクト工具1の筐体(2、5、20)とカバー50との展開斜視図である。
図3図2のハンマケース5単体の斜視図である。
図4図1の打撃機構30付近の部分断面図である。
図5図3のハンマケース5とカバー50付近の排気動作時の部分拡大図である。
図6図3のハンマケース5とカバー50付近の吸気動作時の部分拡大図である。
図7】本実施例の変形例に係る打撃機構30付近の部分断面図である。
図8】本発明の第2の実施例に係る釘打機101の内部構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0012】
図1は本発明の実施例に係るインパクト工具1の内部構造を示す縦断面図である。インパクト工具1は、充電可能なバッテリ90を電源とし、モータ4を駆動源として打撃機構30を駆動し、打撃機構30によって回転部材の回転を回転方向の間欠的な打撃力に変換し、打撃機構30に連結された先端工具保持部70を回転させる。インパクト工具1の筐体(ハウジング)は、合成樹脂製の本体ハウジング2(2a、2b、2c)と、打撃機構30を収容する金属製のハンマケース5と、リヤカバー10によって構成される。
【0013】
本体ハウジング2は3つの部分、即ち筒状に形成される胴体部2aと、作業者が片手で把持する部分となるハンドル部2bと、着脱可能なバッテリ90を取りつけるためのバッテリ取付部2cから構成される。ハンドル部2bは胴体部2aの中心軸線(回転軸線A1)と略直交するように下方に延在し、作業者が把持した際に人差し指が位置する箇所には、モータのオン又はオフを制御するためのトリガスイッチ7の操作レバー(トリガレバー7a)が設けられる。トリガレバー7aの後上方には、モータの回転方向を切り換える正逆切替レバー8が設けられる。トリガスイッチ7は、トリガレバー7aを指で引く操作、即ちトリガレバー7aを後方側に移動させる操作でモータ4の回転をオンにし、トリガレバー7aの引き操作を解除することによってモータ4の回転をオフにする。尚、トリガスイッチ7の形式や構造は任意であって、スライド式のトリガレバー7aを有する作業機だけでなく、例えば揺動軸を中心に揺動させるような揺動式のトリガレバーを有するトリガスイッチや、タッチボタン式によるスイッチ等、任意のスイッチ機構を用いても良い。
【0014】
ハンマケース5は、先細り形状となるカップ状であって、後方側が大きな開口(図4で後述する開口部5f)となり、底部となる前方端側の中央にアンビル40を貫通させる小さな開口(貫通孔5a)が形成される。ハンマケース5は、左右分割式の本体ハウジング2の胴体部2aにて挟持されることにより固定される。筒状の胴体部2aには、モータ4と、遊星歯車を用いた減速機構24と、打撃機構30が、回転軸線A1と同軸上に並べて配置される。減速機構24と打撃機構30が、本実施例の動力伝達部となる。
【0015】
ハンドル部2b内の下部は、バッテリ90を取り付けるためにバッテリ取付部2cが形成される。バッテリ取付部2cはハンドル部2bの長手方向中心軸から径方向(直交方向)に広がるように形成された拡径部分で、バッテリ取付部2cの下側にはバッテリ90が装着される。バッテリ90は電動工具で広く用いられるリチウムイオン電池を用いた二次電池である。つまり、本実施例の作業機(インパクト工具1)は、バッテリ90からの電力をエネルギー源とする。
【0016】
バッテリ90の種類や形状は任意である。バッテリ90は図1の状態からリリースボタン91を押し込みながら本体ハウジング2に対して前方側に相対移動させることによって、本体ハウジング2から取り外しが可能である。尚、本実施例のインパクト工具1の電源は任意であって、バッテリ90を電源にするのではなく、AC電源ケーブルを介して商用電源からの電力をエネルギー源としても良い。
【0017】
本体ハウジング2は、左右に2分割形式で製造される合成樹脂製であって、複数本のネジを用いて固定される。本体ハウジング2の一方側(左側)には、ネジ止めするための複数のネジボス19a~19gが形成され、他方側(右側)にはネジを貫通させるための複数のねじ穴(図示せず)が形成される。
【0018】
本体ハウジング2のバッテリ取付部2cの内部でバッテリ90の上側には、トリガレバー7aの引き動作によってモータ4の速度を制御する回路を搭載する制御回路基板48が収容される。制御回路基板48はハンドル部2bの長手方向中心軸線に対して略垂直方向に配置され、図示しないマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と称する)を搭載する。また、バッテリ取付部2cの上面にはスイッチホルダ49が設けられ、スイッチホルダ49に打撃強度の設定ボタン、バッテリ90の残量チェックボタン等の各種操作ボタンとそれに対応する表示ランプ等が配置される。
【0019】
モータ4にはブラシレスDCモータが用いられ、インバータ回路によって生成される励磁電流によって駆動される。モータ4の回転軸4dは、回転軸線A1が胴体部2aの長手方向に伸びるように配置される。モータ4のステータは、積層鉄心によって形成されて複数の磁極片が形成されたステータコア4bと、ステータコア4bの各ティースに巻かれたコイル4cによって構成される。ロータ4aは、積層鉄心の内部に収容された永久磁石によって磁路を形成する。
【0020】
モータ4の軸方向後方側であって、回転軸4dと同軸に冷却ファン15が設けられる。冷却ファン15はモータ4と同期して回転することにより、本体ハウジング2の胴体部2aの中央付近の空気吸入口17(符号は図2参照)から外気を吸引し、モータ4を冷却した後に、冷却ファン15の外周側に形成された図示しない空気排出口18(符号は図2参照)から排出する。モータ4の回転軸4dは、ステータコア4bよりも前側の軸受21aと、後側の軸受21bによって軸支される。
【0021】
モータ4の軸方向前方であって、ステータコア4bとインナカバー29の間には、駆動回路基板45が配置される。駆動回路基板45はロータに含まれる永久磁石の磁界を検出する3つの磁気検出手段47と、FET(Fieldeffecttransistor)等の6つの半導体スイッチング素子46から構成されるインバータ回路を搭載するものであって、円環状のプリント基板で形成される。磁気検出手段47としては市販のホールICを用いることができ、ロータの永久磁石と対向する位置にホールICが所定間隔で複数(例えば3つ)搭載される。
【0022】
減速機構24はモータ4の出力を所定の減速比で減速してスピンドル31に伝達するものである。減速機構24は、モータ4の回転軸4dの先端に固定されるサンギヤ25と、サンギヤ25の外周側に距離を隔てて取り囲むように設けたリングギヤ28と、サンギヤ25とリングギヤ28の間の空間に配置される複数(例えば3つ)のプラネタリーギヤ26を含んで構成される。サンギヤ25は、減速機構24の入力部となる平歯車である。リングギヤ28は、アウターギヤとも呼ばれるもので、リング状の外筒部の内周面にギヤが形成される。リングギヤ28の外周面はインナカバー29の内側に挿入され、インナカバー29は本体ハウジング2に対して回転不能に保持される。
【0023】
プラネタリーギヤ26は、サンギヤ25の外周側ギヤ面と、リングギヤ28の内周側ギヤ面の間でこれらに噛み合わされるようにして回転する。プラネタリーギヤ26は、スピンドル31の後端の円板状部分に軸支され、プラネタリーギヤ26がスピンドル31に軸支するシャフト27の回りを自転しながらサンギヤ25の回りを公転する。つまり、モータ4の回転軸4dが回転すると、それに同期してサンギヤ25が回転し、サンギヤ25の回転力は、所定の比率で減速されてスピンドル31に伝達される。
【0024】
インナカバー29は合成樹脂の一体成型で製造される部品であって、本体ハウジング2の胴体部2aによって、左右方向から挟持されるようにして保持される。インナカバー29は、2つ設けられる軸受21aと軸受22bを保持すると共に、モータ4の回転軸4dとスピンドル31の回転中心が同軸になるように芯出しする。インナカバー29によって保持される軸受21aはモータ4の回転軸4dを軸支するためであって、例えばボールベアリングが用いられる。インナカバー29によって保持される軸受22bは、スピンドル31の後端を軸支するためであって、例えばボールベアリングが用いられる。
【0025】
ハンマ33はスピンドル31の軸部の外周側に配置され、内周面には図示しないハンマカム溝34が形成される。ハンマ33はスチールボール36を用いたカム機構によって保持され、スピンドル31の外周面とハンマ33の内周面の一部が接する。スピンドル31の後方側円板部分の前方側であって、ハンマ33との間には、ハンマスプリング35が設けられる。また、スピンドル31の外周面には、スピンドルカム溝32が形成される。スピンドル31は強度の関係から金属の一体成形にて製造される。スピンドル31とアンビル40の回転体は、前方側でニードル式の軸受22aによってハンマケース5の内壁により軸支され、後方側でボール式の軸受22bによりハンマケース5に軸支される。
【0026】
先端工具から受ける反力が低い際には、ハンマ33はスピンドル31の回転と連動するように回転するが、先端工具から受ける反力が大きくなると、図示しないカム機構のスチールボール36が移動することによって、ハンマ33とスピンドル31の回転方向の相対位置が僅かに変動して、ハンマ33が後方側に大きく移動する。ハンマ33は、ハンマスプリング35によってスピンドル31に対して常に前方側に付勢されるので、ハンマ33の後方側への移動はハンマスプリング35を圧縮しながらの移動となる。ハンマ33が後退すると、ハンマ33の打撃爪とアンビル40の羽根部(被打撃爪)の前後方向の接触長さが小さくなって、接触長さが0の位置まで来ると、ハンマ33のアンビル40に対する係合が離脱することになる。
【0027】
ハンマ33のアンビル40に対する係合が離脱状態となったら、 ハンマ33はハンマスプリング35の圧縮力で、前方側に押し出されながら回転方向に見てアンビル40の次の被打撃爪と係合(又は衝突)することになる。この際、ハンマ33は、スピンドル31の回転力に加え、ハンマスプリング35に蓄積されていた弾性エネルギーとカム機構の作用によって回転方向及び前方に急速に加速されつつ、ハンマスプリング35の付勢力によって前方へ移動し、ハンマ33の打撃爪がアンビル40の羽根部に再び係合して一体に回転し始める。このとき、強力な回転打撃力がアンビル40に加えられるため、アンビル40の装着穴42に装着される図示しない先端工具を介してネジに回転打撃力が伝達される。以後、同様の動作が繰り返され、締付け対象の締め付けが完了するまで、離脱、係合の動作を繰り返す(打撃動作)。
【0028】
先端工具保持部70は公知の構成を適用でき、アンビル40の前側端部から軸方向後方に延びる断面形状が六角形の装着穴42と、周方向の2箇所に形成されスチールボール74と、外周側に設けられるスリーブ71を含んで構成される。スリーブ71の内側には、スリーブ71を後方側に付勢するコイルバネ72が装着される。コイルバネ72は、Cリングで保持されるワッシャ73により前方側に抜けないように保持される。
【0029】
図2図1のインパクト工具1の筐体とカバー50との展開斜視図である。インパクト工具1の筐体は、合成樹脂製の部分(本体ハウジング2、リヤカバー10)と金属製の部分(ハンマケース5)により構成される。本体ハウジング2は回転軸線A1を含む鉛直面状で左右に2分割可能なように構成される。本体ハウジング2の胴体部2aは、回転軸線A1がその中心軸線となるような略円筒状であり、円筒状部分の前側と後側に開口を有し、前側の開口部3には金属製のハンマケース5が接続される。胴体部2aの後側開口には合成樹脂の一体成形により製造されるリヤカバー10が装着される。リヤカバー10は、左右両側に形成されたネジボス11(図2では右側のネジボス11は見えない)を用いて、回転軸線A1と平行方向に向けて配置される2本の図示しないネジによって胴体部2aに固定される。胴体部2aのリヤカバー10との分割面(回転軸線A1と直角な面)の近傍には、周方向に分散配置される複数の空気吸入口(第3通気口)17が形成される。また、リヤカバー10の筒状部分の左右両側面には、スリット状に形成されたた空気排出口(第4通気口)18が形成される。
【0030】
ハンマケース5は、後方側に開口部5f(符号は後述の図4参照)を有する釣り鐘状であって、後端付近が本体ハウジング2に挟持されるようにして固定される。胴体部2aの前側は開口部3になっているが、開口部3の外縁を結んだ線は回転軸線A1に対して直交する円形の開口面ではない。開口部3の左右両側には、前側に向けて三角形の側壁の縁部によって形成される輪郭である前方延出部3bが形成された形状とされ、デザイン上の特徴を構成する。前方延出部3bがハンマケース5の左右方向に位置するので、ハンマケース5を一層安定的に保持することができる。開口部3の上側部分3aは左右方向に延在し、カバー50の後縁上部54aと当接する当接面が形成される。上側部分3aの当接面は、回転軸線A1に対して径方向外側にいくにつれて後退するような斜面を有することで、後縁上部54aと上側部分3aの隙間は第2通気口の一部(上側部分)を形成する。開口部3の下側部分3cは、本体ハウジング2のトリガレバー7aの保持部分との間にカバー50の後縁下部54cを挿入させるための隙間部分となっている。
【0031】
ハンマケース5の前方側には、貫通孔5aが形成される。貫通孔5aの部分は短い円筒状の形状(円筒部5b)にされ、その外周面には円周方向に連続する周方向溝5cが形成される。周方向溝5cは止め輪56を装着するための溝である。周方向溝5cの後方側にはカバー50の回転軸線A1を軸線とする回転方向の位置決め用の凸部5dが形成される。ハンマケース5の貫通孔5aから前方側にアンビル40が貫通し、アンビル40の先端部分に先端工具保持部が固定される。
【0032】
カバー50は、本体ハウジング2よりも弾力性の高い合成樹脂の成型品であって、本体ハウジング2の前方側に位置するハンマケース5の外側部分を覆うものである。カバー50の左右両側は、後方にV字状に後退するような後縁V字部54bが形成され、本体ハウジング2に形成された前方延出部3bと対向する。このようにカバー50を設けることにより、熱伝導性の高い金属部分(ハンマケース5の外周側露出面)を覆うことができるので、発熱部位の外周側に位置するハンマケース5を作業者が直接触ることができないように構成される。カバー50の形状は、ハンマケース5の外周側露出面に対応する形状とされ、前方側には開口部53が形成される。開口部53はハンマケース5の円筒部5bを貫通させるための穴であり、開口部53の上下2カ所には、回転軸線A1を軸線とする回転方向に回転しないようにするための回り止め凹部53aが形成される。凹部53aはハンマケース5の凸部5dと係合する。カバー50の開口部53の外周側は、平面状に形成された円環部51が形成され、円環部51の周方向には3カ所の貫通穴55a~55cが形成される。貫通穴55a~55cの内周側には円環部51の一部が位置し、その前方側に設けられる止め輪56と当接する。
【0033】
照明装置60は、倒立させた馬蹄状(U字状)の照明基板61と、照明基板61上に半田付けされたLED(発光ダイオード)62a~62cにより構成される。LED62a~62cは表面実装用のチップLED面発光タイプを用いると良い。照明基板61は、プリント基板と呼ばれるもので、絶縁体でできた板の上に、導体の配線が形成されたものである。図2では図示していないが、照明基板61の後ろ側に制御回路基板48から延在する配線63(図1参照)が接続され、配線63を介して制御回路基板48からLED(発光ダイオード)62a~62cへの電力が供給される。照明基板61の上側は開口端61aとなっており、下側には、本体ハウジング2の内壁部分に形成される凹部3eに位置づけるための突出部61bが形成される。
【0034】
基板ホルダ65は透明又は半透明の合成樹脂部材である。基板ホルダ65は円環面66とその外周側に接続される円筒面67をベースに構成される。円環面66が照明基板61のうちのLED62a~62c付近を除く前側面と当接し、円筒面67が基板ホルダ65の外縁部と当接することにより照明基板61をその内側に収容する。基板ホルダ65のLED62a~62cと対向する部分には、前方側に突出するように形成される照射窓68a~68cが形成される。照射窓68a~68cはLED62a~62cと所定の距離を隔てるように位置するとともに、LED62a~62cからの光を所定の方向(ここでは回転軸線A1と略平行方向)にて通過させる。ここでは、照射窓68a~68cを透明の板状の単なる窓として形成しているが、透過光が所定方向に向くか、又は、拡散するようにレンズ状に形成しても良い。
【0035】
図2の展開状態から組み立てを行うには、まず、照明基板61を基板ホルダ65にはめ込んで、それらをカバー50の内側にはめ込んで組み立てる。次に、基板ホルダ65の凸状の照射窓68a~68cが、カバー50の貫通穴55a~55cにはめ込まれるようにして、それらをカバー50の内部に位置づける。このようにしてカバー50、基板ホルダ65、照明基板61の組立体ができたら、それらの後ろに弾性体64を介在させながら、組立体を回転軸線A1に沿って後方側に移動させて、カバー50をハンマケース5に密着させるようにして位置づけ、その状態でC字状の金属製の止め輪56をハンマケース5の周方向溝5cに装着することによりカバー50が回転軸線A1の前方側に抜けないように保持する。この際、弾性体64をわずかに圧縮する状態にさせることによってカバー50に対して前方側にわずかに付勢力が働くようにした。この付勢部材たる弾性体64は、円環状のゴムや発泡部材などを用いると良い。尚、弾性体64の形状は円環状でなくても良く、周方向に段即した形状やC字状等であっても良い。さらには、弾性体64として、公知のバネ手段を用いるようにしても良い。また,弾性体64は複数の部品から構成されていても良い。このようにしてカバー50が駆動部(モータ4)の回転軸線A1方向にわずかに移動可能な状態でハンマケース5に支持される。
【0036】
図3図2のハンマケース5単体の斜視図である。ハンマケース5は、本体ハウジング2の胴体部2aの前側の開口部3に接続されるインパクト工具1の筐体の一部を構成する部材である。インパクト工具1におけるハンマケース5は、減速機構24(図1参照)、打撃機構30(図1参照)を収容し、出力軸たるアンビル40を軸支する軸受22aを保持し、スピンドル31を軸支する軸受22bを収容するためであるので、一体成形にて十分な剛性を持たせて製造される。円筒部5bがカバー50を摺動させるベース部位となり、周方向溝5cと止め輪56がカバー50を固定する固定具となる。減速機構24と打撃機構30の内部空間にはグリスが充填される。本実施例のハンマケース5はアルミ合金による金属製としたが、その他の材質であっても良い。ハンマケース5は釣り鐘状であり、前方側にアンビル40を貫通させる円筒状の貫通孔5aが形成され、後方側が本体ハウジング2の前側開口部3と接続される円形の開口部5fとなる。ハンマケース5の開口部5f付近は、本体ハウジング2によって左右から挟持される。ハンマケース5の挟持を容易にするために、開口部5fの近傍には段差部5eが形成され、さらには、本体ハウジング2との相対移動を防止するための突出部6が形成される。本体ハウジング2の内壁部分には左右方向から伸びるリブが形成されており、突出部6はリブによって左右から抑えられる構成となる。
【0037】
図4図1の打撃機構30付近の部分断面図である。打撃機構30はハンマケース5の内側に収容される。本体ハウジング2は合成樹脂製であるので、金属製のハンマケース5の熱伝導率の方が高く、モータ4の発熱がハンマケース5に伝わりやすい。そのため、作業者がハンマケース5の外表面を直接触れることができないように、合成樹脂のカバー50を取り付ける。作業者がハンマケース5を直接触れないようにするだけならば、ハンマケース5の外側にカバー50を密着させても良い。しかしながら、本実施例ではカバー50とハンマケース5の間にわずかに隙間9が存在するように構成した。この結果、カバー50の前側の貫通穴55a~55c(第1通気口:図では55c、55bが見えるように図示している)と、カバー50の後縁54(54a~54c:図では54bは見えない)との間(第2通気口)に通路部が形成された空気流通路を形成するようにした。図2の展開斜視図で示したように、カバー50は回転軸線A1方向前方側からハンマケース5の外側を覆うように装着して、止め輪56にて固定する。このとき、カバー50の筒状壁52の内側部分をハンマケース5に密着させるのではなく、カバー50の開口部53(例えば凹部53a)とハンマケース5の円筒部5b及び凸部5d(図3参照)にて主に接触させるようにした。つまり、カバー50とハンマケース5に対する相対移動は完全に拘束されていない。この結果、カバー50はインパクト工具1の動作時に前後方向、及び、その他の方向に反動や振動によってわずかに動くことになる。カバー50の材質としてこのような動きを許容する程度の可撓性を持たせるように構成すれば、インパクト工具1の動作時に隙間9の大きさが大きく変動することになる。この結果、隙間9によって形成される空気流通路内の容積が変動するので、空気流通路内の空気が外部から吸入され、又は、排気されるようになる。
【0038】
図5図3のハンマケース5とカバー50付近の排気動作時の部分拡大図である。インパクト工具1の動作時において、カバー50が矢印57aのように後方側に移動した状態である。このカバー50の後退により照明基板61と基板ホルダ65も同様に後退する。照明基板61の後退は、弾性体64を圧縮させながらの移動となる。カバー50が後退すると、円環部51が止め輪56の後面より離れて隙間56aが生じるような状態となり上に、隙間9aが狭まることにより、空気流通路内の容積が減少し、内部に存在していた空気が矢印58a~58cのように外部に排気される。尚、図5の断面図では、矢印58aの箇所の排気状態を代表的に図示しているが、周方向においてハンマケース5の開口部3と、カバー50の後縁54の全体の部分において同様の空気の排出が行われる。
【0039】
矢印58aは、胴体部2aの開口部3の上側部分3aとカバー50の後縁上部54aの隙間部分から外部に排出される空気の流れである。また、矢印58b、58cはカバー50の貫通穴55a~55cと基板ホルダ65との隙間から外部に排出される空気の流れである。本実施例の構成では、カバー50の回転軸線A1方向後方側への移動と共に、照明基板61と基板ホルダ65も移動するので、照明基板61と基板ホルダ65は、空気を排出させる羽根の動きをする。
【0040】
図6図3のハンマケース5とカバー50付近の吸気動作時の部分拡大図である。図5のようにカバー50が後退した後には、弾性体64の復元力によりカバー50が矢印57bで示すように前方側に移動して元の位置(図4に示した位置)に戻る。カバー50の前進により照明基板61と基板ホルダ65も同様に前進する。カバー50の前進位置は、円環部51が止め輪56の後面に接触する位置で制限される。このカバー50の前進により減少した空気流通路内の容積が再び増加するので、外部から空気が矢印59a~59cのように内部に吸引される。即ち、ハンマケース5の開口部3と、カバー50の後縁54の全体の部分において矢印59aと同様の空気の吸引が行われ、矢印59b、59cはカバー50の貫通穴55a~55cと基板ホルダ65との隙間から吸引される空気の流れである。
【0041】
以上のように、インパクト工具1の動作時にハンマケース5に対してカバー50が前後に揺動するので、図5図6の状態が繰り返されることによりハンマケース5とカバー50の隙間9の部分に空気の流れが生じて、ハンマケース5の外面から熱を奪うことができるので、ハンマケース5の冷却効果を高めることができた。
【0042】
図7は本実施例の変形例に係る打撃機構30付近の部分断面図である。図1図6で示した実施例では、カバー50とハンマケース5の間に、照明装置(照明基板61と基板ホルダ65等)が設けられる。しかしながら、照明装置を設けることは本発明の効果を得るのに必須ではない。図7は照明装置が設けられないインパクト工具1Aの打撃機構30付近の部分断面図である。ハンマケース5Aの形状は、周方向溝5Cの回転軸線A1方向の位置が異なること以外は図3で示したハンマケース5と同じである。
【0043】
カバー80の形状は、第1の実施例のカバー50とほぼ同様であるが、内部に照明装置(照明基板61と基板ホルダ65等)を収容するための空間を設ける必要が無いため、前側位置(円環部81の位置)がやや後方に形成される。カバー80の円環部81には、回転軸線A1に貫通する通気孔85a、85bが形成される。つまり、通気孔85a、85bが、筐体部(ハンマケース5)の外面とカバー50との間で、外部の空気を流入及び流出させる、設けられる通気孔85a、85bの数は、周方向に複数設けられるようにして、隙間89による空気流通路への空気の流入及び排出を可能とする。カバー80の円環部81の後側には、弾性体64が介在され、前側には止め輪56によってハンマケース5Aから抜けないように保持される。以上のように、インパクト工具1の動作時にハンマケース5Aに対してカバー80が前後および径方向などに揺動することによって隙間89による空気流通路内の空気の流れが生ずるので、ハンマケース5Aを効果的に冷却することができる。
【実施例2】
【0044】
次に、本発明の第2の実施例について図8を用いて説明する。図8は本発明の第2の実施例に係る釘打機101の内部構造を示す縦断面図である。本発明では、作業機における金属製の筐体部分(シリンダケース102、射出路ケース105)の外側に、わずかに移動可能な可撓性のカバー150を、わずかな隙間を隔てるようにして設け、作業機の動作時に金属製の筐体とカバー150の間に空気の流れを生ずるように構成した。この構成の原理は第1の実施例と同じであり、本発明は第1の実施例で説明したようなインパクト工具1だけでなく、動力源がモータ以外の他の作業機においても同様に適用できる。
【0045】
釘打機101は、本体部分が、筒形状のシリンダケース102と、シリンダケース102の筒状の軸線方向から略直交する方向に突出したハンドル103と、シリンダケース102の上側開口部を閉じるためのヘッドカバー104と、シリンダケース102の下側開口部に固定される射出路ケース105により、その外殻形状が決定される。ハンドル103の付け根付近の下側には止具を射出するためのトリガレバー109が設けられ、ハンドル103の内部には蓄圧室117が形成される。蓄圧室117は、ハンドル103内からシリンダケース102内に亘って設けられるもので、プラグ118に着脱される図示しないエアホースにより供給される圧縮空気を貯める空間である。ハンドル103のシリンダケース102の近傍には、トリガバルブ機構121が設けられる。トリガバルブ機構121は、蓄圧室117からトリガバルブ機構121を通る空気通路の開閉弁を制御するものである。射出路ケース105は、シリンダケース102の下側を閉鎖する閉鎖部105aを形成と共に中央に貫通口を有するノーズ部105bにより構成される。
【0046】
射出路ケース105のノーズ部105bの下側には、射出通路が形成されたプッシュレバー113が設けられる。射出路ケース105の案内通路の後方には、止具の供給手段たるマガジン116が設けられる。マガジン116は、止具としての釘(図示せず)を複数収容するもので、打撃される釘を順次射出路内に給送する。
【0047】
シリンダケース102内及びヘッドカバー104内に亘ってシリンダ125が設けられる。シリンダ125の内部にピストン135が収容され、ピストン135の下側にはドライバブレード136が延びるように接続される。
【0048】
作業者がトリガレバー109を引くと蓄圧室117とピストン135の上側空間が連通されるため、圧縮空気がピストン135の上側空間に流れ込むことによりピストン135が下死点側に向かって一気に移動する。ピストン135が下死点まで移動するとピストンバンパ140に衝突する。ピストンバンパ140は合成ゴム等の弾性体を略円筒状に成形したものであり中心に軸孔を有する。ピストン135はピストン135の下向きの移動を止めるため、釘打機101の連続的な使用により発熱が大きくなる。
【0049】
第2の実施例では金属製の射出路ケース105のうち、シリンダケース102の下側開口部を閉鎖する部分(閉鎖部105a)の外周面を覆うように合成樹脂製のカバー150を設けた。カバー150は弾性体164を介在させて下方向から射出路ケース105の閉鎖部105aを覆うように取り付けられ、止め輪156によって固定される。カバー150は上側端部154が通気口(第2通気口)となり、さらに下側に複数の通気口155(第1通気口)が形成される。
【0050】
第2の実施例では、作業機の駆動部(トリガ操作により開放されるトリガバルブ機構121からピストン135まで)が、圧縮空気をエネルギー源とし、エネルギー供給部(プラグ118と蓄圧室117による流路)は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給部として構成されるが、このような圧縮空気を用いる作業機(釘打機101)であっても、筐体の外部にカバー150を設けることにより、射出路ケース105の閉鎖部105a及びシリンダケース102の下端付近を効果的に冷却することができる。
【0051】
以上、本発明を2つの実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、作業機の駆動源として燃料をエネルギー源とする内燃機関で構成しても良い。その場合は、エネルギー供給部は、内燃機関に燃料を供給する燃料供給部として構成される。例としては、第2の実施例である釘打機101のエネルギー供給源にガス燃料を用いたガス式釘打機などが考えられる。
【符号の説明】
【0052】
1,1A…インパクト工具、2…本体ハウジング、2a…胴体部、2b…ハンドル部、2c…バッテリ取付部、3…開口部、3a(開口部の)上側部分、3b(開口部の)前方延出部、3c(開口部の)下側部分、3e…凹部、3f…開口部、4…モータ、4a…ロータ、4b…ステータコア、4c…コイル、4d…回転軸、5,5A…ハンマケース、5a…貫通孔、5b…円筒部、5c,5C…周方向溝、5d…凸部、5e…段差部、5f…開口部、6…突出部、7…トリガスイッチ、7a…トリガレバー、8…正逆切替レバー、9,9a…隙間、10…リヤカバー、11…ネジボス、15…冷却ファン、17…空気吸入口(第3通気口)、18…空気排出口(第4通気口)、19a~19g…ネジボス、21a,21b…軸受、22a,22b…軸受、24…減速機構、25…サンギヤ、26…プラネタリーギヤ、27…シャフト、28…リングギヤ、29…インナカバー、30…打撃機構、31…スピンドル、32…スピンドルカム溝、33…ハンマ、34…ハンマカム溝、35…ハンマスプリング、36…スチールボール、40…アンビル、42…装着穴、45…駆動回路基板、46…半導体スイッチング素子、47…磁気検出手段、48…制御回路基板、49…スイッチホルダ、50…カバー、51…円環部、52…筒状壁、53…開口部、53a…凹部、54…後縁、54a…後縁上部、54b…後縁V字部、54c…後縁下部、55a~55c…貫通穴、56…止め輪、56a…(止め輪の後面側の)隙間、58a~58c…排気方向、59a~59c…吸気方向、60…照明装置、61…照明基板、61a…開口端、61b…突出部、62a~62c…LED、63…配線、64…弾性体、65…基板ホルダ、66…円環面、67…円筒面、68a~68c…照射窓、70…先端工具保持部、71…スリーブ、72…コイルバネ、73…ワッシャ、74…スチールボール、80…カバー、81…円環部、85a,85b…通気孔、89…隙間、90…バッテリ、91…リリースボタン、101…釘打機、102…シリンダケース、103…ハンドル、104…ヘッドカバー、105…射出路ケース、105a…閉鎖部、105b…ノーズ部、109…トリガレバー、113…プッシュレバー、116…マガジン、117…蓄圧室、118…プラグ、121…トリガバルブ機構、125…シリンダ、135…ピストン、136…ドライバブレード、140…ピストンバンパ、150…カバー、154…上側端部、155…通気口、156…止め輪、164…弾性体、A1…(モータの)回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8