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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】車両用ドアおよび音響装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20240110BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20240110BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B60J5/00 501E
B60R11/02 S
H04R1/02 102B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022541044
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2020030198
(87)【国際公開番号】W WO2022029958
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明善
(72)【発明者】
【氏名】舩石 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】田上 文保
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-026054(JP,A)
【文献】特開2008-167137(JP,A)
【文献】特開平08-079866(JP,A)
【文献】特開2002-281581(JP,A)
【文献】特開2003-212054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
B60R 11/02
H04R 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアトリムと、
開口部を有するインナーパネルと、
前記インナーパネルの前記開口部の縁に取り付けられた音響装置と、
前記音響装置と前記ドアトリムとを接続するガスケットと、
を備え、
前記音響装置は、
前記インナーパネルの前記開口部の縁の全周にわたって、当該開口部の縁から中心に向かって張り出した取付部材と、
スピーカーユニットと、
前記取付部材と前記スピーカーユニットとを接続するバネ部材と、
前記取付部材と前記スピーカーユニットとの間の間隙を密封し、弾性を有する密封部材と、
を備え、
前記ガスケットは、前記取付部材と前記ドアトリムとの間の間隙を密封する、
ことを特徴とする車両用ドア。
【請求項2】
ドアトリムと、
開口部を有するインナーパネルと、
前記インナーパネルの前記開口部の縁に取り付けられた音響装置と、
前記音響装置と前記ドアトリムとを接続するガスケットと、
を備え、
前記音響装置は、
前記インナーパネルの前記開口部の縁の全周にわたって、当該開口部の縁から中心に向かって張り出した取付部材と、
スピーカーユニットと、
前記取付部材と前記スピーカーユニットとを接続し、前記取付部材と前記スピーカーユニットとの間の間隙を密封する密封部材と、を備え、
前記密封部材は、弾性体を含み、
前記ガスケットは、前記取付部材と前記ドアトリムとの間の間隙を密封する、
ことを特徴とする車両用ドア。
【請求項3】
前記ガスケットの剛性は、前記密封部材の剛性より大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ドア。
【請求項4】
前記ガスケットは、固定部材を用いて前記取付部材に固定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用ドア。
【請求項5】
前記スピーカーユニットと、前記バネ部材と、前記取付部材とは、前記開口部の中心軸と直交する方向に並ぶことを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア。
【請求項6】
フレームと、前記フレームに囲まれた空間に内部に配置され、放音面を有する振動板と、前記フレームに設けられ、前記振動板を振動させる駆動部と、を含むスピーカーユニットと、
前記スピーカーユニットに対応する開口部を有し、前記スピーカーユニットを車両用ドアのドアトリムに密封して取り付け、かつインナーパネルに取り付けるための構造を有する取付部材と、
前記取付部材と前記スピーカーユニットとを接続するバネ部材と、
前記取付部材と前記スピーカーユニットとの間の間隙を密封し、弾性を有する密封部材と、
を備えることを特徴する音響装置。
【請求項7】
フレームと、前記フレームに囲まれた空間に内部に配置され、放音面を有する振動板と、前記フレームに設けられ、前記振動板を振動させる駆動部と、を含むスピーカーユニットと、
前記スピーカーユニットに対応する開口部を有し、前記スピーカーユニットを車両用ドアのドアトリムに密封して取り付け、かつインナーパネルに取り付けるための構造を有する取付部材と、
前記取付部材と前記スピーカーユニットとの間の間隙を密封する密封部材とを備え、
前記密封部材は弾性体を含む、
ことを特徴とする音響装置。
【請求項8】
前記取付部材は、前記ドアトリムを前記取付部材に取り付けるための第1取付用孔と、前記インナーパネルを前記取付部材に取り付けるための第2取付用孔と、を有することを特徴とする請求項6または7に記載の音響装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアおよび音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカーが取り付けられた車両用ドアが知られている。特許文献1に記載の車両用ドアは、ドアトリムと、インナーパネルと、スピーカーユニットと、環状の遮音部材と、金属製の取付部材と、を有する。スピーカーユニットは、遮音部材によってドアトリムに固定されている。また、スピーカーユニットは、取付部材によってインナーパネルに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2009/144818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、スピーカーユニットが遮音部材によってドアトリムに固定されているので、ドアトリムがスピーカーユニットの振動により振動してしまう。この結果、雑音が発生するという課題がある。また、スピーカーユニットが取付部材によってインナーパネルに固定されているので、インナーパネルがスピーカーユニットの振動により振動してしまう。この結果、雑音が発生してしまうという課題がある。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、雑音を抑制できる車両用ドア、および音響装置を提供することを解決課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わる車両用ドアの一態様は、ドアトリムと、開口部を有するインナーパネルと、前記インナーパネルの前記開口部の縁に取り付けられた音響装置と、前記音響装置と前記ドアトリムとを接続するガスケットと、を備える。前記音響装置は、前記インナーパネルの前記開口部の縁の全周にわたって、当該開口部の縁から中心に向かって張り出した取付部材と、スピーカーユニットと、前記取付部材と前記スピーカーユニットとを接続するバネ部材と、前記取付部材と前記スピーカーユニットとの間の間隙を密封し、弾性を有する密封部材と、を備える。前記ガスケットは、前記取付部材と前記ドアトリムとの間の間隙を密封する。
【0007】
本発明に係わる車両用ドアの一態様は、ドアトリムと、開口部を有するインナーパネルと、前記インナーパネルの前記開口部の縁に取り付けられた音響装置と、前記音響装置と前記ドアトリムとを接続するガスケットと、を備える。前記音響装置は、前記インナーパネルの前記開口部の縁の全周にわたって、当該開口部の縁から中心に向かって張り出した取付部材と、スピーカーユニットと、前記取付部材と前記スピーカーユニットとの間の間隙を密封する密封部材と、を備える。前記密封部材は、弾性体を含む。前記ガスケットは、前記取付部材と前記ドアトリムとの間の間隙を密封する。
【0008】
本発明に係わる音響装置の一態様は、フレームと、前記フレームに囲まれた空間に内部に配置され、放音面を有する振動板と、前記フレームに設けられ、前記振動板を振動させる駆動部と、を含むスピーカーユニットと、前記スピーカーユニットに対応する開口部を有し、前記スピーカーユニットを車両用ドアのドアトリムに密封して取り付け、かつインナーパネルに取り付けるための構造を有する取付部材と、前記取付部材と前記スピーカーユニットとを接続するバネ部材と、前記取付部材と前記スピーカーユニットとの間の間隙を密封し、弾性を有する密封部材と、を備える。
【0009】
本発明に係わる音響装置の一態様は、フレームと、前記フレームに囲まれた空間に内部に配置され、放音面を有する振動板と、前記フレームに設けられ、前記振動板を振動させる駆動部と、を含むスピーカーユニットと、前記スピーカーユニットに対応する開口部を有し、前記スピーカーユニットを車両用ドアのドアトリムに密封して取り付け、かつインナーパネルに取り付けるための構造を有する取付部材と、前記取付部材と前記スピーカーユニットとの間の間隙を密封する密封部材とを備え、前記密封部材は弾性体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の車両用ドアの概略を示す分解斜視図である。
図2図1に示す車両用ドアの概略を示す縦断面図である。
図3図2に示す車両用ドアが有する音響装置を拡大した図である。
図4図3に示す音響装置をZ1方向に見た図である。
図5】第1実施形態の具体的な一態様の音響装置を示す断面図である。
図6】第2実施形態の音響装置の概略を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.第1実施形態
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜異なる部分がある。また、以下に記載する本実施形態は、本発明の好適な具体例である。このため、本実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0012】
1-1.車両用ドア100
図1は、第1実施形態の車両用ドア100の概略を示す分解斜視図である。図2は、図1に示す車両用ドア100の概略を示す縦断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を適宜用いて説明する。また、X軸に沿う一方向をX1方向とし、X1方向とは反対の方向をX2方向とする。同様に、Y軸に沿う一方向をY1方向とし、Y1方向とは反対の方向をY2方向とする。Z軸に沿う一方向をZ1方向とし、Z1方向とは反対の方向をZ2方向とする。
【0013】
図1および図2に示すように、車両用ドア100は、アウターパネル11と、ドアトリム12と、インナーパネル13と、音響装置5と、ガスケット6と、を備える。車両用ドア100は、自動車等の車両に用いられる。
【0014】
アウターパネル11は、車両の外側に位置する外板である。ドアトリム12は、車室側に位置する内装材である。インナーパネル13は、アウターパネル11とドアトリム12との間に配置される。アウターパネル11およびインナーパネル13には、窓ガラス15を上下動可能に収容する枠体16が取り付けられる。また、音響装置5は、インナーパネル13に取り付けられる。ガスケット6は、音響装置5とドアトリム12との間に位置し、音響装置5とドアトリム12とを接続する。
【0015】
アウターパネル11およびインナーパネル13のそれぞれは、鋼板等の金属製の板部材で形成される。なお、アウターパネル11およびインナーパネル13の各材料は、例えばアルミニウム合金、樹脂または炭素材であってもよい。また、ドアトリム12の材料は、例えば樹脂である。
【0016】
アウターパネル11とインナーパネル13とは、例えば溶接により互いに接続される。図2に示すように、アウターパネル11とインナーパネル13との間には、アウターパネル11およびインナーパネル13により空間S1が形成される。図示はしないが、空間S1には、例えば、窓ガラス15を上下方向に昇降させる昇降機構、およびドアロック機構が配置される。また、図2に示すように、空間S1には、音響装置5で発生する音を吸収して定在波を抑制する吸音部材19が配置される。吸音部材19は、アウターパネル11に取り付けられる。吸音部材19は、音響装置5に対応して配置される。具体的には、吸音部材19は、音響装置5のZ軸に沿った中心軸A1上に位置する。
【0017】
図1に示すように、ドアトリム12とインナーパネル13とは、複数の接続部材14により互いに接続される。各接続部材14は、例えば樹脂製のリベットである。各接続部材14の一端は、ドアトリム12に固定され、他端は、インナーパネル13が有する貫通孔13cに挿入される。図2に示すように、ドアトリム12とインナーパネル13との間には、ドアトリム12とインナーパネル13とにより空間が形成される。当該空間は、ガスケット6によって、空間S21と空間S22とに区切られる。また、ドアトリム12とインナーパネル13との間には、パッキン17が配置される。パッキン17は、ドアトリム12の外周に沿って配置される環状のゴム部材である。
【0018】
図1および図2に示すように、ドアトリム12は、複数の貫通孔12aを有する。複数の貫通孔12aのそれぞれは、音響装置5で発生する音を車室内に放音するための孔である。図2中の車両用ドア100のZ2方向が車室内に向かう方向に相当し、図2中の車両用ドア100のZ1方向が車室外に向かう方向に相当する。また、インナーパネル13は、開口部13aおよび複数の貫通孔13bを有する。開口部13aは、音響装置5をインナーパネル13に取り付けるために用いられる。開口部13aは、インナーパネル13を貫通する孔である。また、複数の貫通孔13bは、例えば、前述の昇降機構およびドアロック機構等を空間S1に配置する作業において用いられる。なお、複数の貫通孔13bは、図示しない部品によって塞がれてもよいし、塞がれていなくてもよい。
【0019】
1-2.音響装置5
図3は、図2に示す車両用ドア100が有する音響装置5を拡大した図である。図4は、図3に示す音響装置5をZ1方向に見た図である。図3に示す音響装置5は、開口部13aに対応して配置される。音響装置5は、車室内に向けて音を放出する。
【0020】
図3および図4に示すように、音響装置5は、スピーカーユニット50と、取付部材55と、バネ部材56と、密封部材57と、を有する。なお、図3では、バネ部材56および密封部材57を模式的に示す。
【0021】
スピーカーユニット50は、開口部13a内に位置する。スピーカーユニット50は、ドアトリム12およびインナーパネル13の両方に接触していない。よって、スピーカーユニット50は、ドアトリム12に対して離間しており、かつインナーパネル13に対して離間している。
【0022】
スピーカーユニット50は、振動板51と、フレーム52と、駆動部53と、ブラケット54と、を有する。振動板51は、車室に向けて放音する放音面51aを有する。放音面51aがドアトリム12を向くようにスピーカーユニット50は配置される。放音面51aは、空間S21に露出している。また、振動板51はコーン状のフレーム52に囲まれた空間の内部に配置される。振動板51の外縁は、フレーム52に接続される。このため、フレーム52は、振動板51を振動可能に支持する。フレーム52の材料は、例えば、金属または樹脂である。フレーム52の外縁には、ブラケット54が接続される。ブラケット54の材料は、例えば、金属または樹脂である。
【0023】
フレーム52の放音面51aの反対側(Z1方向)には、駆動部53が設けられる。駆動部53は、例えば、磁石およびヨークを含む磁気回路と、振動板51に接続されるボイスコイルとを含む。駆動部53は、例えば、永久磁石で発生する磁束をヨークによりボイスコイルに導き、ボイスコイルに流れる電流により振動板51を振動させる。駆動部53は、図示しない回路基板から出力された音声信号に応じて振動板51を振動させる。なお、駆動部53の構成は、振動板51を振動させることができれば如何なる構成でもよい。また、スピーカーユニット50は、いわゆるコーン型であるが、その他の方式でもよい。スピーカーユニット50は、例えばドーム型であってもよい。
【0024】
取付部材55は、インナーパネル13の開口部13aを形成する部分に接続される。図示の例では、取付部材55は、インナーパネル13のドアトリム12に対向する面に接触する。取付部材55の材料は、例えば、金属または樹脂である。取付部材55は、環状の部材である。取付部材55は、開口部13aの縁130aの全周にわたって、開口部13aの縁130aから中心に向かって張り出す。別の見方をすると、取付部材55は、スピーカーユニット50に対して離間し、スピーカーユニット50からインナーパネル13に向かって張り出す。取付部材55は、スピーカーユニット50に対応する開口部55aを有している。具体的には、開口部55aからスピーカーユニット50の放音面51aが露出する。Z1方向にみて、開口部13aの内側に開口部55aが位置し、開口部55aの内側にスピーカーユニット50が位置する。開口部55aは、取付部材55を貫通する孔である。取付部材55の開口部55a内に、スピーカーユニット50が配置される。スピーカーユニット50は、取付部材55に接触していない。よって、スピーカーユニット50は、取付部材55に対して離間している。
【0025】
取付部材55は、スピーカーユニット50を、ドアトリム12およびインナーパネル13に取り付けるための構造を有する。具体的には、取付部材55は、複数の第1取付用孔551と、複数の第2取付用孔552とを有する。第1取付用孔551は、音響装置5をガスケット6を介してドアトリム12に取り付けるための構造である。第2取付用孔552は、音響装置5をインナーパネル13に取り付けるための構造である。ここで、ドアトリム12は、2つの物のうちの一方の例示である。インナーパネル13は、2つの物のうちの他方の例示である。
【0026】
取付部材55は、複数の第2固定部材22によりインナーパネル13に接続される。第2固定部材22は、例えばネジである。第2固定部材22は、第2取付用孔552に挿通され、かつ、インナーパネル13が有する孔に挿入される。当該インナーパネル13が有する孔および第2取付用孔552には、例えば雌ネジが形成される。
【0027】
取付部材55は、複数の第1固定部材21によりガスケット6に接続される。第1固定部材21は固定部材の例示である。ガスケット6は、ドアトリム12に接続される。第1固定部材21は、例えば樹脂製のリベットである。リベットは、ファスナーとも呼ばれる。第1固定部材21は、例えば弾性変形した状態で第1取付用孔551に挿入される。
【0028】
取付部材55とスピーカーユニット50との間には、バネ部材56と密封部材57とが配置される。図示の例では、密封部材57は、バネ部材56とドアトリム12との間に位置する。なお、バネ部材56は、密封部材57とドアトリム12との間に位置してもよい。密封部材57とバネ部材56とは、互いに離間している。ただし、密封部材57の一部は、バネ部材56に接触してもよい。
【0029】
バネ部材56は、取付部材55とスピーカーユニット50とを接続する。バネ部材56は、環状の部材である。バネ部材56が有する開口にスピーカーユニット50が配置される。また、バネ部材56は、取付部材55およびスピーカーユニット50のそれぞれに例えばネジにより固定される。バネ部材56は、弾性を有する。バネ部材56は、例えば板バネである。バネ部材56の材料は、例えば、金属または樹脂である。
【0030】
具体的には、図4に示す例では、バネ部材56は、内輪561、外輪562および複数の板バネ部563を有する。内輪561は、スピーカーユニット50に接続される。外輪562は、取付部材55に接続される。複数の板バネ部563は、Z1方向にみて、内輪561と外輪562との間に位置する。複数の板バネ部563は、互いに離間する。各板バネ部563は、弾性を有しており、内輪561と外輪562とを接続する。なお、図4に示す例では、板バネ部563の数は4つであるが、1つ、2つ、3つ、5つ以上でもよい。
【0031】
なお、バネ部材56は、板バネに限定されず、他のバネ材であってもよい。例えば、バネ部材56は、つるまきバネでもよい。また、バネ部材56が板バネの場合、バネ部材56の形状は図4に示す例に限定されず、他の形状でもよい。また、バネ部材56の数は、1個に限定されず複数でもよい。
【0032】
密封部材57は、取付部材55とスピーカーユニット50との間を密封する。密封部材57は、環状の部材である。密封部材57が有する開口にスピーカーユニット50が配置される。また、密封部材57は、取付部材55およびスピーカーユニット50のそれぞれに例えばネジまたは接着剤により固定される。密封部材57は、弾性を有する。密封部材57は、例えばゴム膜である。なお、密封部材57の材料は、ゴムに限定されず、樹脂等であってもよい。また、密封部材57は、膜状に限定されず、例えばブロック状でもよい。
【0033】
1-3.ガスケット6
図3に示すように、ガスケット6は、取付部材55とドアトリム12との間に配置され、取付部材55とドアトリム12とに接続される。前述のように、ガスケット6は、第1固定部材21により取付部材55に接続される。なお、ガスケット6は、ドアトリム12と別々に形成されて接続されてもよいし、一体で形成されてもよい。
【0034】
ガスケット6は、環状のシール部材である。ガスケット6は、剛性を有する。ガスケット6は、取付部材55とドアトリム12との間を密封する。ガスケット6は、Z1方向にみて、スピーカーユニット50と重ならず、スピーカーユニット50を囲む。
【0035】
以上説明した車両用ドア100は、前述のように、ドアトリム12と、開口部13aを有するインナーパネル13と、開口部13aに取り付けられた音響装置5とを備える。音響装置5は、取付部材55と、スピーカーユニット50と、バネ部材56と、密封部材57と、を有する。
【0036】
そして、バネ部材56は、取付部材55とスピーカーユニット50とを接続する。すなわち、スピーカーユニット50は、取付部材55にバネ部材56を介して接続される。このため、スピーカーユニット50は、取付部材55に直接的に取り付けられていない。スピーカーユニット50が取付部材55にバネ部材56を介して接続されるため、スピーカーユニット50が発する振動によって、バネ部材56は弾性変形する。このため、スピーカーユニット50が発する振動は、取付部材55で低減される。よって、スピーカーユニット50の振動によって取付部材55が振動することが低減される。それゆえ、取付部材55に直接的に接続されたインナーパネル13が振動することが低減される。この結果、インナーパネル13の振動により発生する雑音を抑制できる。
【0037】
さらに、ガスケット6は、音響装置5とドアトリム12とを接続する。このため、取付部材55には、ガスケット6が直接的に接続される。そして、ガスケット6にはドアトリム12が直接的に接続される。このため、ドアトリム12とスピーカーユニット50とは、バネ部材56、取付部材55およびガスケット6を介して接続される。ドアトリム12とスピーカーユニット50との接続にバネ部材56が用いられるため、スピーカーユニット50の振動によってドアトリム12が振動することが抑制される。この結果、ドアトリム12の振動により発生する雑音が抑制される。このようなことから、バネ部材56が存在することで、バネ部材56が存在しない場合に比べ、雑音が抑制される。それゆえ、音響装置5から発生する音の音質の向上が図られる。
【0038】
また、密封部材57は、取付部材55とスピーカーユニット50との間を密封する。かかる密封部材57が存在することで、スピーカーユニット50の放音面51aとは反対側から放出される音が取付部材55とスピーカーユニット50との間を通って放出されることを防止できる。すなわち、密封部材57が存在することで、スピーカーユニット50のZ1方向に放出された音がスピーカーユニット50のZ2方向に回り込むことが防止される。
【0039】
また、前述のように、密封部材57は、弾性を有する。このため、スピーカーユニット50が発する振動によって、密封部材57は弾性変形する。よって、スピーカーユニット50が発する振動が、密封部材57を介して取付部材55に伝達することが抑制される。
【0040】
本実施形態では、取付部材55の剛性は、密封部材57の剛性よりも大きい。このため、取付部材55は、スピーカーユニット50が開口部13a内に位置する状態を安定して維持できる。
【0041】
また、前述のように、ガスケット6は、取付部材55とドアトリム12との間を密封する。かかるガスケット6が存在することで、スピーカーユニット50から放出される音が空間S21から空間S22内に放出されることが抑制される。よって、スピーカーユニット50から発せられた音の空間S22内への音漏れが抑制される。この結果、スピーカーユニット50から発せられた音が複数の貫通孔12aを介して車室内へと効率良く放出される。
【0042】
また、ガスケット6の剛性は、密封部材57の剛性より大きい。このため、ガスケット6の剛性が密封部材57の剛性以下である場合に比べ、ガスケット6によってドアトリム12が取付部材55により強固に固定される。このため、ドアトリム12の不要な振動の発生が抑制される。それゆえ、雑音がさらに抑制される。なお、ガスケット6の剛性は、密封部材57の剛性と同等以下でもよい。
【0043】
前述のように、ガスケット6は、第1固定部材21を用いて取付部材55に固定されている。具体的には、第1固定部材21を用いてガスケット6は取付部材55に直接的に接続される。つまり、ガスケット6と取付部材55とは互いに接触している。このため、ガスケット6がスポンジ等の緩衝材を介して取付部材55に接続される場合に比べ、ガスケット6によって取付部材55とドアトリム12との間の気密性を高めることができる。よって、音漏れがより効果的に抑制される。
【0044】
また、スピーカーユニット50と、バネ部材56と、取付部材55とは、開口部13aの中心軸A1と直交する方向であるX軸に沿った方向に並ぶ。このため、スピーカーユニット50と、バネ部材56と、取付部材55とがX軸に沿った方向に並ばない場合に比べ、車両用ドア100の薄型化を図ることができる。なお、スピーカーユニット50と、バネ部材56と、取付部材55とは、Z軸に沿った方向からみて重ならないのであれば、X軸に沿った方向以外の方向に並んでもよい。
【0045】
1-4.具体例
図5は、第1実施形態の具体的な一態様の音響装置5xを示す断面図である。以下、図5を参照しつつ、音響装置5xが有するバネ部材56xおよび密封部材57xの具体的な一態様を示す。図5に示すバネ部材56xは、前述のバネ部材56に対応している。図5に示す密封部材57xは、前述の密封部材57に対応している。また、図5に示す取付部材55xは、前述の取付部材55に対応している。また、図5は、図4のA-A線断面に対応した音響装置5の一態様である。
【0046】
図5に示すように、スピーカーユニット50の外側には、取付部材55xが配置される。なお、スピーカーユニット50が有するブラケット54は、フレーム52にネジ24により固定される。
【0047】
スピーカーユニット50と取付部材55xとの間の領域には、密封部材57xおよびバネ部材56xが配置される。スピーカーユニット50は、密封部材57xを介して取付部材55xに取り付けられる。このため、スピーカーユニット50は、取付部材55xに直接的に取り付けられていない。
【0048】
バネ部材56xは、ネジ23によりスピーカーユニット50に固定される。また、バネ部材56xは、ネジ25により取付部材55xに固定される。よって、スピーカーユニット50xは、バネ部材56xを介して取付部材55xに取り付けられている。このため、スピーカーユニット50は、取付部材55xに直接的に取り付けられていない。
【0049】
また、取付部材55xは、第2固定部材22によってインナーパネル13に接続される。また、取付部材55xは、第1固定部材21によってガスケット6に接続される。よって、取付部材55xは、ガスケット6を介してドアトリム12に取り付けられる。
【0050】
また、図5に示す音響装置5xは、第1緩衝部材501と第2緩衝部材502とを有する。第1緩衝部材501は、取付部材55xおよびブラケット54と、インナーパネル13との間に位置する。第1緩衝部材501は、ブラケット54、取付部材55xおよびインナーパネル13に接触する。第1緩衝部材501が存在することで、第1緩衝部材501が存在しない場合に比べ、インナーパネル13の振動の発生が抑制される。よって、雑音がより抑制される。
【0051】
第2緩衝部材502は、取付部材55xとガスケット6との間に位置し、取付部材55xおよびガスケット6に接触する。このため、第2緩衝部材502が存在することで、第2緩衝部材502が存在しない場合に比べ、ガスケット6を介してドアトリム12が振動することで抑制される。よって、雑音がより抑制される。
【0052】
2.第2実施形態
第2実施形態を説明する。以下の各例示において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0053】
図6は、第2実施形態の音響装置5Aの概略を示す縦断面図である。第1実施形態のバネ部材56および密封部材57の代わりに、音響装置5Aが密封部材59を有すること以外、第2実施形態は第1実施形態と同じである。
【0054】
図6に示すように、本実施形態の音響装置5Aは、取付部材55と、スピーカーユニット50と、密封部材59と、を有する。音響装置5Aが有する密封部材59は、スピーカーユニット50と取付部材55との間に位置し、スピーカーユニット50と取付部材55とを接続する。また、密封部材59は、取付部材55とスピーカーユニット50との間を密封する。密封部材59は、取付部材55およびスピーカーユニット50に例えば接着剤またはネジにより固定される。密封部材59は、弾性を有する。密封部材59の材料は、例えばゴムおよび樹脂である。密封部材59は、環状の部材である。密封部材59が有する開口にスピーカーユニット50の一部が配置される。
【0055】
密封部材59は、第1実施形態のバネ部材56と密封部材57の両方の機能を有する。したがって、密封部材59は、バネ部材56のような弾性体を有する。密封部材59は、スピーカーユニット50が開口部13a内に位置する状態が安定して維持される。
【0056】
本実施形態では、前述のように、スピーカーユニット50と取付部材55とは、密封部材59を介して接続される。このため、スピーカーユニット50が発する振動によって、密封部材59は弾性変形する。したがって、スピーカーユニット50が発する振動は、取付部材55で低減される。よって、スピーカーユニット50の振動によって取付部材55が振動することが低減される。それゆえ、取付部材55に直接的に取り付けられたインナーパネル13が振動することが低減される。この結果、インナーパネル13の振動により発生する雑音を抑制できる。
【0057】
また、ドアトリム12とスピーカーユニット50とは、密封部材59およびガスケット6を介して接続される。ドアトリム12とスピーカーユニット50との接続に密封部材59が用いられるため、スピーカーユニット50の振動によってドアトリム12が振動することが抑制される。この結果、ドアトリム12が振動することによりビビリ音が発生することが抑制される。このようなことから、密封部材59が存在することで、密封部材59が存在しない場合に比べ、雑音が抑制される。
【0058】
また、密封部材59は、取付部材55とスピーカーユニット50との間を密封する。このため、スピーカーユニット50の放音面51aとは反対側から放出される音が取付部材55とスピーカーユニット50との間を通って放出されることを防ぐことができる。すなわち、密封部材59が存在することで、スピーカーユニット50のZ1方向に放出された音がスピーカーユニット50のZ2方向に回り込むことを防ぐことができる。
【0059】
また、ガスケット6の剛性は、密封部材59の剛性より大きい。このため、ガスケット6の剛性が密封部材59の剛性以下である場合に比べ、ガスケット6によってドアトリム12を取付部材55により強固に固定できる。このため、ドアトリム12の不要な振動の発生が抑制される。それゆえ、雑音がさらに抑制される。なお、ガスケット6の剛性は、密封部材59の剛性と同等以下でもよい。
【0060】
以上の第2実施形態によっても、第1実施形態と同様に、雑音を抑制できる。それゆえ、音響装置5Aから発生する音の音質の向上が図られる。
【0061】
2.変形例
以上の実施形態は多様に変形され得る。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0062】
各実施形態では、スピーカーユニット50は、ドアトリム12およびインナーパネル13に取り付けられている。しかし、スピーカーユニット50は、ドアトリム12およびインナーパネル13以外の他の2つの物に取り付けられてもよい。取付部材55が第1取付用孔551と第2取付用孔552とを有するため、スピーカーユニット50をドアトリム12およびインナーパネル13以外の他の2つの物に取り付け可能である。例えば、当該2つの物としては、車両の天井部分を形成する2つの部材が挙げられる。
【0063】
各実施形態では、スピーカーユニット50は、開口部13a内に位置する。しかし、スピーカーユニット50は、開口部13a内に位置していなくてもよい。例えば、スピーカーユニット50は、開口部13aよりもZ1方向に位置してもよい。
【0064】
各実施形態では、図3および図5に示すように、スピーカーユニット50と取付部材55とは、互いに接触していない。しかし、スピーカーユニット50と取付部材55とは、互いに直接的に取り付けられていなければ、互いに接触する部分を有してもよい。ただし、スピーカーユニット50と取付部材55とが互いに接触していないことで、雑音がより抑制される。
【0065】
3.実施形態および各変形例の少なくとも1つから把握される態様
上述した実施形態および各変形例の少なくとも1つから以下の態様が把握される。
車両用ドアの一態様は、ドアトリムと、開口部を有するインナーパネルと、前記インナーパネルの前記開口部の縁に取り付けられた音響装置と、前記音響装置と前記ドアトリムとを接続するガスケットと、を備える。前記音響装置は、前記インナーパネルの前記開口部の縁の全周にわたって、当該開口部の縁から中心に向かって張り出した取付部材と、スピーカーユニットと、前記取付部材と前記スピーカーユニットとを接続するバネ部材と、前記取付部材と前記スピーカーユニットとの間の間隙を密封し、弾性を有する密封部材と、を備える。前記ガスケットは、前記取付部材と前記ドアトリムとの間の間隙を密封する。この態様によれば、スピーカーユニットの振動がドアトリムおよびインナーパネルに伝達されることにより、ドアトリムおよびインナーパネルが振動することが抑制される。よって、雑音が抑制される。この結果、音響装置から発生する音の音質の向上が図られる。
【0066】
車両用ドアの一態様は、ドアトリムと、開口部を有するインナーパネルと、前記インナーパネルの前記開口部の縁に取り付けられた音響装置と、前記音響装置と前記ドアトリムとを接続するガスケットと、を備え、前記音響装置は、前記インナーパネルの前記開口部の縁の全周にわたって、当該開口部の縁から中心に向かって張り出した取付部材と、スピーカーユニットと、前記取付部材と前記スピーカーユニットとを接続し、前記取付部材と前記スピーカーユニットとの間の間隙を密封する密封部材と、を備え、前記密封部材は、弾性体を含み、前記ガスケットは、前記取付部材と前記ドアトリムとの間の間隙を密封する。この態様によれば、スピーカーユニットの振動がドアトリムおよびインナーパネルに伝達されることにより、ドアトリムおよびインナーパネルが振動することが抑制される。よって、雑音が抑制される。この結果、音響装置から発生する音の音質の向上が図られる。
【0067】
上述した車両用ドアの一態様として、前記ガスケットの剛性は、前記密封部材の剛性より大きいことが好ましい。この態様によれば、ガスケットによってドアトリムを取付部材により強固に固定される。よって、ドアトリムの不要な振動の発生が抑制される。それゆえ、雑音がさらに抑制される。
【0068】
上述した車両用ドアの一態様として、前記ガスケットは、固定部材を用いて前記取付部材に固定されていることが好ましい。この態様によれば、固定部材を用いてガスケットを取付部材に直接的に接続できるので、ガスケットと取付部材との間に緩衝材が存在する場合に比べ、音漏れをより効果的に抑制される。
【0069】
上述した車両用ドアの一態様として、前記スピーカーユニットと、前記バネ部材と、前記取付部材とは、前記開口部の中心軸と直交する方向に並ぶことが好ましい。この態様によれば、スピーカーユニットと、バネ部材と、取付部材とが中心軸と直交する方向に並ぶ場合に比べ、車両用ドアの薄型化が図られる。
【0070】
音響装置の一態様は、スピーカーユニットと、前記スピーカーユニットに対応する開口部を有し、前記スピーカーユニットを2つの物に取り付けるための構造を有する取付部材と、前記取付部材と前記スピーカーユニットとを接続するバネ部材と、前記取付部材と前記スピーカーユニットとの間の間隙を密封し、弾性を有する密封部材と、を備える。この態様によれば、スピーカーユニット50の振動が2つの物に伝達されることにより、2つの物が振動することが抑制される。よって、2つの物の振動により発生する雑音が抑制される。この結果、音響装置から発生する音の音質の向上が図られる。
【0071】
音響装置の一態様は、スピーカーユニットと、前記スピーカーユニットに対応する開口部を有し、前記スピーカーユニットを2つの物に取り付けるための構造を有する取付部材と、前記取付部材と前記スピーカーユニットとの間の間隙を密封する密封部材とを備える。前記密封部材は弾性体を含む。この態様によれば、スピーカーユニット50の振動が2つの物に伝達されることにより、2つの物が振動することが抑制される。よって、2つの物の振動により発生する雑音が抑制される。この結果、音響装置から発生する音の音質の向上が図られる。
【0072】
上述した音響装置の一態様として、前記取付部材は、前記2つの物のうちの一方を前記取付部材に取り付けるための第1取付用孔と、前記2つの物のうちの他方を前記取付部材に取り付けるための第2取付用孔と、を有する。この態様によれば、取付部材によって2つの物にスピーカーユニットを取り付け可能である。
【符号の説明】
【0073】
5…音響装置、6…ガスケット、11…アウターパネル、12…ドアトリム、13…インナーパネル、13a…開口部、21…第1固定部材、50…スピーカーユニット、55…取付部材、55a…開口部、56…バネ部材、57…密封部材、59…密封部材、100…車両用ドア、551…第1取付用孔、552…第2取付用孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6