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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】保管棚及び天井搬送車システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20240110BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B65G1/04 551Z
H01L21/68 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022565096
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2021036805
(87)【国際公開番号】W WO2022113529
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2020196124
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】椿 達雄
(72)【発明者】
【氏名】和田 快也
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-120299(JP,A)
【文献】特開2012-56664(JP,A)
【文献】特開2011-29549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道の側方に設置され、前記軌道を走行方向に走行する天井搬送車の横移載機構によって物品が受け渡される保管棚であって、
前記走行方向と直交する横方向に所定量以上移動した前記横移載機構の一部が当接するストッパを備えた、保管棚。
【請求項2】
前記ストッパが、前記横移載機構の一部に対面する側面に取り付けられた弾性部を有する、請求項1に記載の保管棚。
【請求項3】
前記ストッパが弾性体からなる、請求項1に記載の保管棚。
【請求項4】
前記軌道と、
前記軌道に沿って走行する前記天井搬送車と、
請求項1~3のいずれか一項に記載の保管棚と、を備える天井搬送車システム。
【請求項5】
前記軌道に平行な別の軌道を更に備え、
前記保管棚は、前記軌道と前記別の軌道との間に設置されている、請求項4に記載の天井搬送車システム。
【請求項6】
前記天井搬送車の前記横移載機構の一部には、前記ストッパとの接触を検出する接触センサが設けられている、請求項4又は5に記載の天井搬送車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保管棚及び天井搬送車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるように、天井から吊り下げられた平行な一対の走行レールに沿って天井走行車が走行する天井走行車システムにおいて、走行レール間にサイドバッファが設けられた構成が知られている。サイドバッファは、梁に取り付けられた支柱、支柱の下部に固定された桁、及び桁上に取り付けられた台座等を有しており、台座上に、天井走行車から受け渡された物品が載置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-120299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
天井走行車システムでは、サイドバッファ(保管棚)との間で物品を受け渡す際、天井走行車は、回動部、昇降ドライブ及び昇降台を、ラテラルドライブによって横に移動させる。さらに、昇降ドライブにより、物品を把持したチャック(把持部)と共に昇降台を下降させ、物品をサイドバッファに載せる。或いは、天井走行車は、昇降台と共にチャックを下降させ、サイドバッファに載置された物品をチャックで把持し、上昇させる。
【0005】
ところで、ラテラルドライブ(横移載部)によって昇降台等が横方向に移動させられるとき、昇降台等は、通常、所定の位置で停止するように位置決め制御される。しかし、天井走行車に何らかの異常が発生した等の理由により、本来の位置決め制御ができなくなった場合、ラテラルドライブは、昇降台等を機構上の動作限界(ストローク限界)まで横移動させてしまう虞がある。横移載部及び昇降台等を含んだ部分をまとめて横移載機構と呼ぶと、横移載機構は、機構的に動作可能な限界まで移動し得る。横移載機構が限界まで移動した場合、横移載機構は、移載方向における奥側に飛び出すこととなる。例えば、特許文献1に記載されるような一対の走行レール(軌道)が設けられたシステムでは、万が一前述のような場合となっても、横方向に飛び出した横移載機構が反対車線を走行する天井走行車に接触しないよう、十分な軌道間隔が設定されていた。
【0006】
本開示は、天井搬送車の横移載機構が移載方向における奥側に飛び出すのを防止することができる保管棚及び天井搬送車システムを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、軌道の側方に設置され、軌道を走行方向に走行する天井搬送車の横移載機構によって物品が受け渡される保管棚であって、走行方向と直交する横方向に所定量以上移動した横移載機構の一部が当接するストッパを備える。
【0008】
この保管棚によれば、天井搬送車の横移載機構が移載方向に所定量以上移動したとき、ストッパが、横移載機構の一部に当接する。この「所定量」は、例えば、通常の横移載動作において位置決め制御される移載方向の進入量(進出量)よりも僅かに大きく設定される。通常の横移載動作では、横移載機構がストッパに当接することはない。しかし、天井搬送車に何らかの異常が発生した等の理由により横移載機構が移載方向に所定量以上移動した場合でも、ストッパによって、横移載機構が移載方向における奥側に飛び出すのを防止することができる。これにより、軌道の反対側に配置され得る他の機器、装置、又は別の軌道(天井搬送車)等を近づけて配置することができ、レイアウトの自由度を高めることができる。また、保管棚を工場等の壁に近接させて設置することもできる。
【0009】
ストッパが、横移載機構の一部に対面する側面に取り付けられた弾性部を有してもよい。ストッパに横移載機構が当接しても、横移載機構の移動(進入)が即座に停止しない場合(横移載機構が惰走する場合)がある。横移載機構が惰走した場合でも、ストッパの弾性部が変形しながら衝撃を吸収する。これにより、当接時におけるストッパ及び横移載機構の破損を抑制することができる。
【0010】
ストッパが弾性体からなってもよい。ストッパに横移載機構が当接しても、横移載機構の移動(進入)が即座に停止しない場合(横移載機構が惰走する場合)がある。横移載機構が惰走した場合でも、弾性体からなるストッパが変形しながら衝撃を吸収する。これにより、当接時におけるストッパ及び横移載機構の破損を抑制することができる。
【0011】
本開示の別の態様として、軌道と、軌道に沿って走行する天井搬送車と、上記のいずれかの保管棚と、を備える天井搬送車システムが提供されてもよい。この天井搬送車システムによれば、天井搬送車に何らかの異常が発生した等の理由により横移載機構が移載方向に所定量以上移動した場合でも、ストッパによって、横移載機構が移載方向における奥側に飛び出すのを防止することができる。これにより、軌道の反対側に配置され得る他の機器、装置、又は軌道等を近づけて配置することができ、レイアウトの自由度を高めることができる。
【0012】
天井搬送車システムが、軌道に平行な別の軌道を更に備え、保管棚は、軌道と別の軌道との間に設置されていてもよい。この場合、保管棚の両側に、第1の軌道(上記の軌道)と第2の軌道とが敷設される。第1の軌道を走行する天井搬送車の横移載機構が移載方向に所定量以上移動した場合でも、横移載機構の奥側への飛出しが防止される。よって、第2の軌道を走行する天井搬送車に横移載機構が接触することが防止される。ストッパを備えない従来の保管棚では、このような接触を防止するために、十分な軌道間隔を設けておく必要があった。しかしストッパを備えた本開示の保管棚では、第1の軌道と第2の軌道との中心間の間隔を、従来必要であった軌道間隔よりも小さくすることができる。
【0013】
天井搬送車システムにおいて、天井搬送車の横移載機構の一部には、ストッパとの接触を検出する接触センサが設けられていてもよい。この場合、接触センサにより、横移載機構のストッパへの当接を検出することができる。横移載機構を停止させたり、天井搬送車を停止させたり、又は作業者に報知するためのアラームを発生させたりする等の制御が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、天井搬送車の横移載機構が移載方向に所定量以上移動した場合でも、ストッパによって、横移載機構が移載方向における奥側に飛び出すのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る天井搬送車システムにおける保管棚及びその両側の軌道を示す斜視図である。
図2図2は、図1の天井搬送車システムを示す概略側面図である。
図3図3は、図1中の保管棚を示す斜視図である。
図4図4(a)は移載位置に位置決めされた横移載機構を示す平断面図、図4(b)は移載位置を通過してストッパに当接した横移載機構を示す平断面図である。
図5図5(a)は図4(b)に続いてストッパにより停止した横移載機構を示す平断面図、図5(b)はストッパを備えない従来の保管棚において横移載機構がストローク限界まで動作した状態を示す平断面図である。
図6図6は、横移載機構がストッパに当接し始めた状態を示す概略側面図である。
図7図7は、図6の概略平面図である。
図8図8は、ストッパを備えない従来の保管棚が適用された天井搬送車システムを示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1及び図2に示されるように、天井搬送車システム1は、軌道に沿って移動可能な天井搬送車6を用いて、物品10を搬送するためのシステムである。物品10には、例えば、複数の半導体ウェハを格納する容器、ガラス基板を格納する容器、レチクルポッド、一般部品等が含まれる。ここでは、例えば、工場等において、天井搬送車6(以下、単に「搬送車6」と称する。)が、工場の天井等に敷設された軌道4に沿って走行する天井搬送車システム1を例に挙げて説明する。天井搬送車システム1では、互いに平行な一対の軌道4A,4Bが敷設されている。一対の軌道4A,4Bの間には、物品10を保管するための載置部8を有する保管棚40が設置されている。載置部8上に、搬送車6から移載された物品10が載置される。1つの保管棚40が、複数の載置部8を有してもよいし、1つのみの載置部8を有してもよい。保管棚40は、搬送車6から移載された物品10を受け、支持し、保管する。天井搬送車システム1は、軌道4A,4Bと、複数の搬送車6と、複数の保管棚40とを備える。
【0018】
第1の軌道4A及び第2の軌道4Bは、例えば、作業者の頭上スペースである天井付近に敷設されている。第1の軌道4A及び第2の軌道4Bは、例えば、天井から吊り下げられており、略同じ高さに設置されている。なお、各搬送車6から物品10を保管棚40に移載可能である限り、第1の軌道4A及び第2の軌道4Bの高さは異なっていてもよい。第1の軌道4A及び第2の軌道4Bは、搬送車6を走行させるための予め定められた走行路である。第1の軌道4A及び第2の軌道4Bのそれぞれは、例えば、軌道支柱5,5によって吊り下げ支持される。保管棚40は、複数の棚支柱9によって吊り下げ支持される。
【0019】
搬送車6は、天井走行式無人走行車である。搬送車6は、軌道4に沿って走行し、物品10を搬送する。本実施形態の天井搬送車システム1において、第1の軌道4A及び第2の軌道4Bのそれぞれは、一方通行の軌道4である。例えば、第1の軌道4Aを走行する搬送車6は、X方向の一方向(図2の紙面手前から奥に向けて)に走行する。第2の軌道4Bを走行する搬送車6は、X方向の他方向(図2の紙面奥から手前に向けて)に走行する。すなわち、反対車線を走行する搬送車6は、X方向に沿った反対方向に走行する。搬送車6は、物品10を保管棚40の載置部8に移載可能に構成されている。例えば、第1の軌道4Aを走行する搬送車6は、物品10をY方向(水平面内における横方向)に沿って移載する。物品10の移載方向であるY方向は、搬送車6の走行方向であるX方向に例えば水平面内において直交する。天井搬送車システム1が備える搬送車6の台数は、特に限定されず、複数である。
【0020】
図2に示されるように、搬送車6は、搬送車6を軌道4に沿って走行させる走行部18と、例えば、非接触給電で軌道4側から受電する受電通信部20と、を有する。搬送車6は、軌道4の通信線(フィーダー線)等を利用して、図示しないコントローラと通信を行う。なお、搬送車6は、軌道4に沿って設けられた給電線を介してコントローラと通信を行ってもよい。搬送車6は、本体フレーム22と、横移載部24と、θドライブ26と、昇降駆動部28と、昇降台(昇降部)30と、本体カバー33と、を有する。
【0021】
横移載部24は、θドライブ26、昇降駆動部28及び昇降台30を一括してY方向に移動させる。横移載部24は、例えば、本体フレーム22に取り付けられた上部材24aと、上部材24aに沿ってY方向にスライドして進出又は退入することが可能な中部材24bと、中部材24bに沿ってY方向にスライドして進出又は退入することが可能な下部材24cとを含む。下部材24cの下側に、θドライブ26が取り付けられている。横移載部24は、駆動モータ、ベルト、ギア、プーリ等を有しており、θドライブ26、昇降駆動部28及び昇降台30をY方向に移動させる。なお、横移載部24の構成は、上記に限られず、物品10の横移載を可能とする他の公知な構成が採用されてもよい。
【0022】
θドライブ26は、昇降駆動部28及び昇降台30を保持し、昇降駆動部28を水平面内で所定の角度範囲内で回動させる。昇降駆動部28は、昇降台30をワイヤ、ロープ及びベルト等の吊持材の巻取りないし繰出しによって昇降させる。昇降台30には、把持部31(チャックとも呼ばれる)が設けられている。把持部31は、物品10を把持又は解放することが可能である。昇降台30は、物品10を把持して昇降させる。本体カバー33は、例えば搬送車6の走行方向の前後に一対設けられている。本体カバー33は、図示しない爪等を物品10の下方に対して出没させて、搬送中に物品10が落下することを防止する。
【0023】
搬送車6との間で物品10が受け渡しされる載置部8には、物品10が一時的に載置される。載置部8は、例えば、目的とする受渡ポート(図示せず)に他の物品10が載置されている等の理由により、搬送車6が搬送している物品10をその受渡ポートに移載できない場合に、物品10が仮置きされる。受渡ポートは、例えば洗浄装置、成膜装置、リソグラフィ装置、エッチング装置、熱処理装置、平坦化装置をはじめとする半導体の処理装置に対して物品10の受渡しを行うための載置部である。
【0024】
図2に示されるように、保管棚40は、軌道4に沿って配置され、搬送車6との間で物品10を受け渡し可能な位置に設けられている。保管棚40は、第1の軌道4Aの側方に配置されている。保管棚40は、第2の軌道4Bの側方に配置されている。搬送車6は、横移載部24によって昇降駆動部28等を移載し、昇降台30を僅かに昇降させることにより、保管棚40の載置部8との間で物品10を受け渡しする。
【0025】
本実施形態の天井搬送車システム1は、保管棚40内に向けて進出する横移動部11のY方向における過剰な進出を制限する構造を備えている。搬送車6は、上記した横移載部24、θドライブ26、昇降駆動部28、及び、把持部31を含んだ昇降台30を有する横移載機構7を備える。搬送車6は、横移載機構7により、物品10を保管棚40の載置部8との間で移載する。搬送車6は、物品10の移載時にY方向に進出する部分として、横移載部24の下部材24c、θドライブ26、昇降駆動部28、及び昇降台30を含む横移動部11を備える。横移動部11は、概ね矩形状(直方体状)を呈する。横移動部11は横移載機構7の一部分であり、載置部8上における物品10の載置位置P1の真上にまで移動する部分である(図6参照)。なお、図6において、載置位置P1は、載置部8上に載置される物品10のY方向における中心位置として示されている。
【0026】
より詳細には、本実施形態の保管棚40に、横移動部11のY方向における過剰な進入を制限する構造が設けられている。図3に示されるように、保管棚40は、横移載機構7の横移動部11がY方向に所定量以上進入(移動)したときに横移載機構7の一部に当接するように設けられた複数のストッパ50を備える。図3に示される例では、1つの物品10のためのスペースに対して、X方向の両側に2本ずつ(計4本)の棚支柱9が設けられている。以下、物品10を移載しようとする搬送車6(図2に示される第1の軌道4Aを走行する右側の搬送車6)を「第1の搬送車6」という。棚支柱9は、第1の搬送車6に近い方の棚支柱9aと、第1の搬送車6から遠い方の棚支柱9bとからなる。保管棚40では、一対の(2つの)ストッパ50,50が、複数のブラケット59を介して、一対の棚支柱9bに取り付けられている。
【0027】
図2及び図3に示されるように、ストッパ50,50は、例えば、横移動部11の上部における2つのコーナー部11aとほぼ等しい高さに設置されている。横移動部11は、通常の横移載動作においては、Y方向(移載方向)における所定の進出量だけ進出するように位置決め制御されている。ストッパ50の当接面54a(図4(a)参照)は、横移載機構7の横移動部11(図6参照)がY方向に所定量以上進入したときにコーナー部11a(横移載機構7の一部)に当接する位置に配置されている。この「所定量」は、上記した所定の進出量よりも僅かに大きい値に設定されている。したがって、通常の横移載動作では、横移載機構7の横移動部11がストッパ50に当接することはないが、第1の搬送車6に何らかの異常が発生した等の理由により横移動部11が移載方向に所定量以上進入した場合に、コーナー部11aがストッパ50に当接する。
【0028】
図1図3に示されるように、ストッパ50は、Y方向において、物品10が載置される載置部8上の領域よりも、例えば第1の搬送車6とは反対側にはみ出た領域Rに配置されている。ストッパ50は、例えば、Y方向において、棚支柱9bよりも第1の搬送車6とは反対側にはみ出た領域Rに設置されている。保管棚40の大きさによっては、ストッパ50は、Y方向における棚支柱9bと同じ位置、又は、Y方向において棚支柱9bとオーバーラップする領域に設置されてもよい。ストッパ50は、横移動部11が横移動部11の機械的に動作可能な限界(ストローク限界)よりも手前でストッパ50に当接して停止する位置に設置されている。横移動部11がストッパ50に当接する進出量は、横移動部11の正規の進出量を基準として、上記した所定の進出量よりも大きく、横移動部11の動作限界量(ストローク限界)よりも小さく設定されている。
【0029】
図4(a)を参照してストッパ50の構成をより詳細に説明すると、ストッパ50は、ブラケット59に固定されたL字状のベース部51と、ベース部51における横移動部11のコーナー部11aに対面する側面に取り付けられた弾性部52とを有する。弾性部52は、ベース部51に対してY方向に移動自在な三角柱状の当接片54と、当接片54のばね保持凹部54eに保持された例えば圧縮コイルばねであるばね56とを含む。ばね56の基端がベース部51に係合しており、ばね56の先端がばね保持凹部54e内に配置されて当接片54に係合している。当接片54は、ベース部51に対してY方向に離間しており、ベース部51の間の隙間の範囲でY方向に移動自在である。また当接片54は、第1の搬送車6に水平方向に対面しており、第1の搬送車6から進出する横移動部11のコーナー部11aに対し、水平方向に対面する。
【0030】
コーナー部11aは、例えば、X方向及びY方向に対して傾斜する傾斜面をなしているが、当接片54の当接面54aが、コーナー部11aと同様に傾斜している。すなわち、ストッパ50の当接面54aは、横移載機構7の一部(ストッパ50に当接する部分)に沿った形状をなしている。コーナー部11aが丸みのある形状(湾曲形状)をなしている場合に、当接面54aが、その形状に沿った湾曲形状を有してもよい。
【0031】
当接片54及びばね56からなる弾性部52は、横移載機構7の横移動部11が当接した場合に、横移動部11に対して、横移動部11を減速(すなわち停止)させる方向に付勢力を及ぼす。
【0032】
コーナー部11aは、例えば、横移載部24の下部材24cの先端部に設けられてもよい。コーナー部11aは、横移載部24ではなく、θドライブ26又は昇降駆動部28の先端部に設けられてもよい。コーナー部11aは、横移動部11のいずれかの端部に設けられている。
【0033】
コーナー部11aには、例えば、ストッパ50との接触を検出する接触センサ58が設けられている。接触センサ58は、例えば、ストッパ50との接触を検出したときに信号を出力する。接触センサ58としては、例えばテープスイッチ等が挙げられる。接触センサ58からの信号は、図示しないコントローラへと送信される。接触センサ58によりストッパ50との接触が検出されると、コントローラによって、横移載機構7を停止させたり、搬送車6の走行を停止させたり、又は作業者に報知するためのアラームを発生させたりする等の制御が行われる。なお、図4(a)以外の図において、接触センサ58の図示は省略されている。
【0034】
本実施形態の保管棚40及び天井搬送車システム1によれば、搬送車6の横移載機構7が移載方向に所定量以上進入したとき、ストッパ50が、横移載機構7のコーナー部11aに当接する。この「所定量」は、通常の横移載動作において位置決め制御されるY方向の進入量(進出量)よりも大きく設定される。通常の横移載動作では、横移載機構7がストッパ50に当接することはない(図4(a)参照)。すなわち、通常の横移載動作では、横移載機構7の横移動部11における移載位置P2は、Y方向において載置位置P1に一致する。ここで、移載位置P2は、昇降台30の把持部31によって把持された物品10のY方向における中心位置として示されている。この状態で、コーナー部11aの先端とストッパ50の当接面54aとの間には隙間がある。しかし、搬送車6に何らかの異常が発生した等の理由により横移載機構7がY方向に所定量以上進入した場合でも、ストッパ50によって、横移載機構7がY方向(移載方向)における奥側に飛び出すのを防止することができる。これにより、第1の軌道4Aの反対側に配置され得る第2の軌道4B(別の軌道)及び搬送車6等を近づけて配置することができ、レイアウトの自由度を高めることができる。天井搬送車システム1においては、第1の軌道4Aの反対側に配置され得る第2の軌道4B及び搬送車6等のレイアウトの自由度が高められている。
【0035】
保管棚40の両側に、第1の軌道4Aと第2の軌道4Bとが敷設されている。第1の軌道4Aを走行する搬送車6の横移載機構7が移載方向に所定量以上進入した場合でも、横移載機構7の奥側への飛出しが防止される。よって、第2の軌道4Bを走行する搬送車6に横移載機構7が接触することが防止される。
【0036】
図8に示されるように、ストッパ50を備えない従来の保管棚400では、このような接触を防止するために、十分な軌道間隔を設けておく必要があった。例えば、図8中において、Aは第1の軌道4Aの中心を基準とした横移載機構7の動作可能な最大の移載位置P2までの距離(ストローク限界)を示す。Bは横移載機構7による移載位置P2から対向車線を走行する(反対側の)搬送車6の外形までの寸法を示す。Cは第2の軌道4Bの中心から対向車線を走行する搬送車6の外形までの寸法を示す。Dは横移動部11の外形(先端11b)と対向車線を走行する搬送車6の外形との間隔を示す。Eは軌道間距離を示す。Fは第1の軌道4Aの中心から載置位置P1までの距離を示す。従来は、EすなわちA,B、C及びDの合計が、Fよりも大きくなるように、十分な軌道間隔が設けられていた。よって、ある程度の設置面積が必要となり、自由なレイアウトを制限する要因となっていた。
【0037】
しかし、ストッパ50を備えた本開示の保管棚40では、第1の軌道4Aと第2の軌道4Bとの中心間の間隔Esを、従来必要であった軌道間隔Eよりも小さくすることができる。図6及び図7に示されるように、Asは、ストッパ50によって横移動部11が停止させられた状態での、第1の軌道4Aの中心を基準とした横移載機構7の移載位置P2までの距離である。Esは、ストッパ50を設置したときの軌道間距離である。本開示の保管棚40では、図5(a)に示されるように、搬送車6に何らかの異常が発生して制御不能になった場合でも、横移動部11はストッパ50に当接して停止するので、軌道間距離Esは、EすなわちAs,B,C及びDの合計に設定できる。このストッパ50による停止位置は、横移動部11の進出量を基準として、横移動部11の動作可能な限界(ストローク限界)よりも手前である。ベース部51(ストッパ50)は、例えば、ストッパ50によって停止させられた横移動部11の先端11bよりも引っ込んでいる(搬送車6側に位置する)。距離Asは、ストッパ50が設置されない場合における(飛び出し過ぎた)横移動部110における移載位置P2を基準とする距離A(図5(b)参照)よりも差分Gだけ短いので、その分、軌道間距離Esを小さくできる。近年、物品10を保管するために多くの保管棚40(バッファ)が設置される傾向にある。保管棚40の設置場所として、軌道4,4間が活用される。軌道4,4間が小さいと、工場全体の小面積化(フットプリントの低減)が可能となる。
【0038】
ストッパ50が、横移載機構7の一部に対面する側面に取り付けられた弾性部52を有する。ストッパ50に横移載機構7が当接しても、横移載機構7の移動(進入)が即座に停止しない場合、すなわち横移載機構7が惰走する(惰性で移動する)場合がある。横移載機構7が惰走した場合でも、ストッパ50の弾性部52が変形しながら衝撃を吸収する(図4(b)及び図5(a)参照)。これにより、当接時におけるストッパ50及び横移載機構7(具体的にはコーナー部11a)の破損を抑制することができる。
【0039】
天井搬送車システム1において、搬送車6の横移載機構7のコーナー部11aには、ストッパ50との接触を検出する接触センサ58が設けられている。接触センサ58により、横移載機構7のストッパ50への当接を検出することができる。横移載機構7を停止させたり、搬送車6を停止させたり、又は作業者に報知するためのアラームを発生させたりする等の制御が可能となる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、ストッパ50が、それぞれ別体の部材であるベース部51、当接片54及びばね56(弾性部52)からなる場合について説明したが、これらが一体に形成されていてもよい。また、上記実施形態のようにストッパ50の一部に弾性部52が設けられる場合に限られず、弾性体からなるストッパが、保管棚に設けられてもよい。その場合でも、横移載機構7の当接時におけるストッパ及び横移載機構7の破損を抑制することができる。
【0041】
弾性体による弾性変形ではなく、ストッパに塑性変形可能な部材を設ける、又はストッパを塑性変形可能な部材で構成する等の構成を採用してもよい。ストッパに横移載機構7が当接することは稀であると考えられる。塑性変形を利用して横移動部11の衝撃を吸収し、当接するたびにストッパを(又は塑性変形可能な部材のみを)交換してもよい。
【0042】
反対車線を走行する搬送車6が、X方向に沿う反対方向に走行する場合に限られず、搬送車6がX方向に沿う同方向に走行する天井搬送車システムが提供されてもよい。また、互いに平行な一対の軌道4A,4Bが敷設される場合に限られない。例えば、1つの軌道4(図2に示される第1の軌道4A)と、軌道4の側方に設置された1つ又は複数の保管棚40とを備えた天井搬送車システム1が提供されてもよい。すなわち、第2の軌道4Bが省略されてもよい。その場合でも、第1の軌道4Aの反対側に配置され得る他の機器、又は装置等を近づけて配置することができ、レイアウトの自由度を高めることができる。また、保管棚40を工場等の壁に近接させて設置することもできる。
【0043】
一対のストッパ50が設置される場合に限られず、いずれか1個のストッパ50のみが、1台の搬送車6(1つの載置部8)に対して設けられてもよい。上記実施形態では横移動部11の2つのコーナー部11aに対応する位置にストッパ50が設けられたが、ストッパ50は、横移動部11のコーナー部11a以外のいずれか一箇所又は三箇所以上に対応する位置に設けられ、横移載機構7が移載方向に所定量以上進入したときに当該一箇所又は三箇所以上に当接するようにしてもよい。
【0044】
コーナー部11aは、横移動部11のいずれかの先端部に設けられる場合に限られず、横移動部11のY方向における途中部分において、例えばX方向に突出するように設けられてもよい。その場合、ストッパは、物品10が載置される載置部8上の領域付近に設置されてもよい。ストッパは、Y方向における棚支柱9a,9b(図2図3参照)の間の領域に設置されてもよい。ストッパは、第1の搬送車6に対応して、Y方向における棚支柱9aと同じ位置、又は、Y方向において棚支柱9aとオーバーラップする領域に設置されてもよい。横移動部11とは異なる横移載機構7の他の1つ又は複数の部分がストッパに当接してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…天井搬送車システム、4…軌道、4A…第1の軌道、4B…第2の軌道、6…天井搬送車、7…横移載機構、8…載置部、9…棚支柱、10…物品、11…横移動部、11a…コーナー部、30…昇降台(昇降部)、31…把持部、40…保管棚、50…ストッパ、51…ベース部、52…弾性部、54…当接片、56…ばね、58…接触センサ、P1…載置位置、P2…移載位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8