(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】光伝送装置
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20240110BHJP
H04B 10/071 20130101ALI20240110BHJP
【FI】
G01M11/00 R
H04B10/071
(21)【出願番号】P 2023000262
(22)【出願日】2023-01-04
(62)【分割の表示】P 2019023473の分割
【原出願日】2019-02-13
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田 祥一朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 節生
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-064573(JP,A)
【文献】特開2011-064574(JP,A)
【文献】特開2004-108918(JP,A)
【文献】特開2014-041878(JP,A)
【文献】特開2009-047455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00-G01M 11/08
H04B 10/00-H04B 10/90
H04J 14/00-H04J 14/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別可能に異なる信号光を光ファイバに順次出力する光源と、
前記信号光毎に当該信号光に対する前記光ファイバでの散乱光から前記信号光毎の時間対応の偏波状態を取得する取得部と、
前記光ファイバの距離、前記光ファイバの屈折率、前記信号光の前記光ファイバへの出力から前記信号光に対する前記散乱光を受信するまでの受信時間に基づき、取得された前記信号光毎の前記時間対応の偏波状態を、前記光ファイバでの前記散乱光の反射地点が識別可能な距離対応の偏波状態に変換し、変換後の距離対応の偏波状態から偏波状態が変動する地点を偏波変動箇所として推定すると共に、推定された前記偏波変動箇所、前記信号光毎の前記時間対応の偏波状態及び前記距離対応の偏波状態に基づき、前記偏波状態の変動の発生前の時刻の距離対応の偏波状態と、前記偏波状態の変動の発生時の時刻の距離対応の偏波状態との差分を取得し、当該差分に基づき、前記偏波状態が変動する偏波変動速度及び偏波変動角度を推定する推定部と
を有することを特徴とする光伝送装置。
【請求項2】
前記光源は、
単一波長の信号光を生成する単一光源と、
周波数シフト信号に応じて前記単一光源からの信号光を、識別可能に異なる周波数シフト量の信号光に変調する変調部と
を有し、
前記取得部は、
前記周波数シフト量毎に当該信号光の散乱光から前記時間対応の偏波状態を取得する、前記周波数シフト量毎に備えた複数の分析部を有することを特徴とする請求項
1に記載の光伝送装置。
【請求項3】
前記光源は、
単一波長の信号光を生成する単一光源と、
前記単一光源からの信号光を異なる符号の信号光に符号化する、前記符号毎に備えた複数の符号部と、
前記符号化された異なる符号の信号光を前記光ファイバに順次出力する出力部と
を有し、
前記取得部は、
前記異なる符号の信号光を復号化する、前記符号毎に備えた複数の復号部と、
前記復号化された符号毎の信号光の散乱光から前記時間対応の偏波状態を取得する、前記符号毎に備えた複数の分析部と
を有することを特徴とする請求項
1に記載の光伝送装置。
【請求項4】
識別可能に異なる信号光を光ファイバに順次出力する光源と、
前記信号光毎に当該信号光に対する前記光ファイバでの散乱光から前記信号光毎の時間対応の偏波状態を取得する取得部と、
前記光ファイバの距離、前記光ファイバの屈折率、前記信号光の前記光ファイバへの出力から前記信号光に対する前記散乱光を受信するまでの受信時間に基づき、取得された前記信号光毎の前記時間対応の偏波状態を、前記光ファイバでの前記散乱光の反射地点が識別可能な距離対応の偏波状態に変換し、変換後の距離対応の偏波状態から偏波状態が変動する地点を偏波変動箇所として推定する推定部と、を有し、
前記光源は、
単一波長の信号光を生成する単一光源と、
周波数シフト信号に応じて前記単一光源からの信号光を、識別可能に異なる周波数シフト量の信号光に変調する変調部と
を有し、
前記取得部は、
前記周波数シフト量毎に当該信号光の散乱光から前記時間対応の偏波状態を取得する、前記周波数シフト量毎に備えた複数の分析部を有することを特徴とする光伝送装置。
【請求項5】
識別可能に異なる信号光を光ファイバに順次出力する光源と、
前記信号光毎に当該信号光に対する前記光ファイバでの散乱光から前記信号光毎の時間対応の偏波状態を取得する取得部と、
前記光ファイバの距離、前記光ファイバの屈折率、前記信号光の前記光ファイバへの出力から前記信号光に対する前記散乱光を受信するまでの受信時間に基づき、取得された前記信号光毎の前記時間対応の偏波状態を、前記光ファイバでの前記散乱光の反射地点が識別可能な距離対応の偏波状態に変換し、変換後の距離対応の偏波状態から偏波状態が変動する地点を偏波変動箇所として推定する推定部と、を有し、
前記光源は、
単一波長の信号光を生成する単一光源と、
前記単一光源からの信号光を異なる符号の信号光に符号化する、前記符号毎に備えた複数の符号部と、
前記符号化された異なる符号の信号光を前記光ファイバに順次出力する出力部と、を有し、
前記取得部は、
前記異なる符号の信号光を復号化する、前記符号毎に備えた複数の復号部と、
前記復号化された符号毎の信号光の散乱光から前記時間対応の偏波状態を取得する、前記符号毎に備えた複数の分析部と、
を有することを特徴とする光伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、長距離光ファイバの光伝送システムでは、周波数利用効率を改善するため、偏波多重光信号が一般的に用いられる。偏波多重光信号は、デジタルコヒーレント受信器内の偏波多重分離回路によって偏波多重分離されることになるが、その実力値以上の速度の偏波回転が光ファイバの伝送路中で生じるような偏波状態の変動が発生する。偏波状態の変動が発生した場合、偏波多重分離に失敗し、エラーが生じる。
【0003】
そこで、信頼性の高い光伝送システムを運用する上では、システム稼働前や稼働中に偏波状態の変動を測定できることが重要となる。そこで、光伝送システムでは、OTDR(Optical Time Domain Reflectometers)を用いて偏波状態の変動を観測する。その結果、光ファイバの伝送路上の偏波状態の変動の発生箇所を把握することで、偏波状態の変動の原因を特定し、対策を講じることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-212325号公報
【文献】特開2018-48917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の光伝送装置では、偏波状態の変動の発生箇所を把握できるものの、光ファイバの伝送路上の偏波状態の変動の発生箇所を高精度に推定するのは困難である。
【0006】
一つの側面では、光ファイバ上の偏波状態の変動の発生箇所を高精度に推定できる光伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの案の光伝送装置は、光源と、取得部と、推定部とを有する。光源は、識別可能に異なる信号光を光ファイバに順次出力する。取得部は、前記信号光毎に当該信号光に対する前記光ファイバでの散乱光から前記信号光毎の時間対応の偏波状態を取得する。推定部は、取得された前記信号光毎の前記時間対応の偏波状態を、前記光ファイバでの前記散乱光の反射地点が識別可能な距離対応の偏波状態に変換し、変換後の距離対応の偏波状態から偏波状態が変動する地点を偏波変動箇所として推定する。更に、推定部は、推定された前記偏波変動箇所、前記信号光毎の前記時間対応の偏波状態及び前記距離対応の偏波状態に基づき、前記偏波状態の変動の発生前の時刻の距離対応の偏波状態と、前記偏波状態の変動の発生時の時刻の距離対応の偏波状態との差分を取得し、当該差分に基づき、前記偏波状態が変動する偏波変動速度及び偏波変動角度を推定する。
【発明の効果】
【0008】
開示の態様では、光ファイバの伝送路上の偏波状態の変動の発生箇所を高精度に推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例1の光伝送システムの一例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、光伝送装置の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、波長光源の各信号光の出力タイミングの一例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、推定部の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、反射光の信号強度、時間対応の偏波状態及び距離対応の偏波状態の変換推移の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、偏波変動箇所を推定する際の処理の一例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、偏波変動箇所を推定する際の距離対応の偏波状態の一例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、第1の推定処理に関わる光伝送装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施例2の光伝送装置内の偏波変動推定部の一例を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、第1のFFT及び判定部の処理の一例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、区間分割部、第2のFFT及び発生箇所推定部の処理の一例を示す説明図である。
【
図12】
図12は、第2の推定処理に関わる光伝送装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、偏波変動時間幅を推定する際の処理の一例を示す説明図である。
【
図14】
図14は、偏波変動速度及び角度を推定する際の処理の一例を示す説明図である。
【
図15】
図15は、サーキュレータの代替例の一例を示す説明図である。
【
図16】
図16は、波長光源の代替例(波長掃引型光源)の一例を示す説明図である。
【
図17】
図17は、波長掃引型光源の各信号光の出力タイミングの一例を示す説明図である。
【
図18】
図18は、実施例3の光伝送装置の一例を示すブロック図である。
【
図19】
図19は、実施例3の波長光源の各信号光の出力タイミングの一例を示す説明図である。
【
図20】
図20は、実施例3の光伝送装置の代替例の一例を示すブロック図である。
【
図21】
図21は、実施例3の光伝送装置の代替例の一例を示すブロック図である。
【
図22】
図22は、実施例4の光伝送装置の一例を示すブロック図である。
【
図23】
図23は、実施例4の波長光源の各信号光の出力タイミングの一例を示す説明図である。
【
図24】
図24は、実施例4の偏波変動箇所を特定する際の処理の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、本願の開示する光伝送装置の実施例を詳細に説明する。尚、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜組み合わせても良い。
【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1の光伝送システム1の一例を示す説明図である。
図1に示す光伝送システム1は、光伝送装置2(2A)と、光伝送装置2Aと接続し、光伝送装置2Aとの間で信号光を伝送する光ファイバ3とを有する。光伝送装置2Aは、信号光を送受信する送受信器である。光ファイバ3内の伝送路上のある地点では、振動等で光ファイバ3に応力やねじれ等が生じ、光ファイバ3を伝搬する光の偏波状態が変動する。光伝送装置2A内のOTDRでは、光ファイバ3の片端から信号光を光ファイバ3に入射し、信号光に対するレーリー散乱光等の反射光から偏波状態を観測することで、光ファイバ3の伝送路中の偏波状態の変動が生じた偏波変動箇所を推定する。
【0012】
光伝送装置2Aは、波長光源11と、サーキュレータ12と、取得部13と、推定部14とを有する。波長光源11は、識別可能に異なる波長の信号光を生成し、異なる波長の信号光をサーキュレータ12に順次出力する。サーキュレータ12は、波長光源11からの信号光を光ファイバ3に順次出力し、光ファイバ3から信号光に対するレーリー散乱光を含む反射光を取得部13に出力する。
【0013】
取得部13は、サーキュレータ12経由で光ファイバ3から信号光に対するレーリー散乱光を含む反射光を受光する。取得部13は、受光された反射光から信号光毎の時間対応の偏波状態を取得する。尚、時間対応の偏波状態は、時間軸で偏波状態の変動が識別できる。推定部14は、取得部13にて取得された信号光毎の時間対応の偏波状態を、光ファイバ3内の反射地点が識別可能な距離対応の偏波状態に変換する。尚、距離対応の偏波状態とは、光ファイバ3の長手方向の距離、すなわち信号光の伝送方向の距離軸で偏波状態の変動を識別できる。更に、推定部14は、変換後の波長毎の距離対応の偏波状態から偏波変動が生じた偏波変動箇所を推定する。尚、偏波変動箇所とは、光ファイバ3上の振動等で偏波状態の変動が発生した地点である。
【0014】
図2は、光伝送装置2Aの一例を示すブロック図である。
図2に示す波長光源11は、複数の光源21と、複数の変調部22と、生成部23と、光波長合波部24とを有する。各光源21は、他の光源21と異なる波長の信号光を生成する。例えば、波長λ0の光源21は、λ0の信号光を生成し、波長λnの光源21は、λnの信号光を生成する。変調部22は、光源21毎に備え、当該光源21からの信号光を駆動信号に応じてON/OFF等の強度変調し、ON時に信号光を光波長合波部24に出力する。尚、変調部22は、例えば、LN(LiNbO3)変調器、EA(Electro-absorption)変調器やSOA(Semiconductor optical amplifier)等である。生成部23は、各変調部22を駆動制御する駆動信号を生成する。
【0015】
図3は、波長光源11の各信号光の出力タイミングの一例を示す説明図である。生成部23は、複数の光源21の内、1台の光源21からの信号光を光波長合波部24に出力するための駆動信号を生成する。生成部23は、波長λ0→λ1→λ2→…→λn→λ0→λ1→λ2→…の順に各波長の信号光を光波長合波部24に1波長単位で出力すべく、駆動信号を順次生成する。つまり、光波長合波部24は、異なる波長の光パルス(信号光)を時間軸上で隙間なく順次に連続出力する。各変調部22は、駆動信号ONの場合、信号光の光波長合波部24への出力をON、駆動信号OFFの場合、信号光の光波長合波部24への出力をOFFにする。光波長合波部24は、駆動信号ONに応じて変調部22からの信号光を入力し、入力した信号光をサーキュレータ12に出力する。
【0016】
取得部13は、光波長分波部31と、複数の偏波分析部32とを有する。光波長分波部31は、サーキュレータ12から信号光に対する光ファイバ3上の反射光を各偏波分析部32に出力する、例えば、AWG(Array Waveguide Grating)等である。偏波分析部32は、信号光の波長毎に備えた、ポラリメータ(偏光計)である。偏波分析部32は、任意の波長の反射光の信号強度から時間対応の偏波状態を取得する。偏波分析部32は、反射光の偏波状態を取得するため、光ファイバ3の片端のみに機器を配置することで瞬時偏波変動を観測する。その結果、両端に作業者を派遣して測定機器を配置する技術に比べて、低コスト化を実現できる。
【0017】
図4は、推定部14の一例を示すブロック図である。推定部14は、距離変換部41と、偏波変動推定部42とを有する。距離変換部41は、各偏波分析部32からの波長毎の時間対応の偏波状態を距離対応の偏波状態に変換する。距離変換部41は、ファイバ長手方向の距離z[m]、ファイバ屈折率c、受信時刻T[秒]に基づき、cT/2nで距離zを算出する。偏波変動推定部42は、波長毎の距離対応の偏波状態から偏波変動の発生した偏波変動箇所を推定する。
【0018】
図5は、反射光の信号強度、時間対応の偏波状態及び距離対応の偏波状態の変換推移の一例を示す説明図である。尚、説明の便宜上、波長λ0、λ1及びλnの反射光のみを例示する。取得部13は、
図5の(A)に示すように波長毎の反射光を信号強度に変換する。取得部13は、
図5の(B)に示すように各反射光の信号強度を時間対応の偏波状態に変換する。推定部14は、時間対応の偏波状態を、
図5の(C)に示すように距離対応の偏波状態に変換する。
【0019】
図6及び
図7は、偏波変動箇所を推定する際の処理の一例を示す説明図である。偏波変動箇所を推定する方法としては、例えば、時刻t=0に波長λ0の信号光を光ファイバ3に入射、時刻t=t1に波長λ1の信号光を光ファイバ3に入射、以降、時刻t=t2、t3、t4に異なる波長の信号光を光ファイバ3に入射する。更に、各波長の信号光のレーリー散乱光を含む反射光を受信し、偏波変動が地点z2、時刻t3~t5の間に発生したと仮定する。
【0020】
波長λ0の信号光では、地点z2の通過時には偏波変動が発生していなかった。しかし、地点z2から地点z3に至るまでの間で発生した反射光では偏波変動が生じている。次に波長λ1及びλ2の信号光では、信号光の地点z2通過時に偏波変動が発生していた。また、反射光も偏波変動の影響を受けている。波長λ3の信号光では、地点z2通過時には偏波変動が発生していたが、反射光は偏波変動の影響を受けていない。最後に波長λ4の信号光は、まったく偏波変動を検出していない。この結果、
図7に示す距離対応の偏波状態として例示する。推定部14は、
図7に示す波長λ0~λ4の距離対応の偏波状態から地点z2を偏波変動箇所として推定できる。
【0021】
次に実施例1の光伝送システム1の動作について説明する。
図8は、第1の推定処理に関わる光伝送装置2Aの処理動作の一例を示すフローチャートである。
図8において光伝送装置2A内の波長光源11は、複数の波長の信号光を光ファイバ3に1波長づつ順次入力する(ステップS11)。光伝送装置2A内の取得部13は、波長毎の信号光に対する光ファイバ3上の反射光の時間対応の偏波状態を取得する(ステップS12)。取得部13は、波長毎の時間対応の偏波状態を取得する。光伝送装置2A内の推定部14は、波長毎に時間対応の偏波状態から距離対応の偏波状態に変換する(ステップS13)。推定部14は、各波長の距離対応の偏波状態から最も近い距離で検出された地点を偏波変動箇所として推定し(ステップS14)、
図8に示す処理動作を終了する。
【0022】
第1の推定処理を実行する光伝送装置2Aは、複数の波長の信号光を光ファイバ3に連続して順次入力し、信号光に対する反射光(散乱光)を時間対応の偏波状態に変換する。光伝送装置2Aは、各波長の時間対応の偏波状態を距離対応の偏波状態に変換し、変換後の距離対応の偏波状態から偏波状態が変動する地点、すなわち最も近い距離の地点を偏波変動箇所として推定する。その結果、偏波変動箇所を高精度に推定できる。
【0023】
実施例1の光伝送装置2Aでは、各信号光の反射光(散乱光)から距離対応の偏波状態からもっと近い距離で検出された偏波状態が変動する地点を偏波変動箇所と推定する。つまり、単一の信号光ではなく、複数の波長の信号光の距離対応の偏波状態から偏波変動箇所を推定することになるため、偏波変動箇所の推定精度が向上できる。
【0024】
光伝送装置2Aでは、光ファイバ2の伝送路両端に測定機器を配置する必要はなく、光ファイバ3の片端のみに測定機器(取得部13及び推定部14)を配置することで偏波変動を測定できる。その結果、両端に作業者を派遣して測定機器を配置する場合に比較して低コスト化が実現できる。
【0025】
また、光伝送装置2Aでは、例えば、マイクロ(数百ナノ)秒程度の光パルス幅、ミリ秒~秒オーダーのパルス間隔(測定条件に依存)の光パルス列を信号光として用いる場合でも、短時間に発生する偏波変動を高精度に推定できる。
【0026】
尚、実施例1の偏波変動推定部42は、距離変換部41にて変換された各波長の反射光の距離対応の偏波状態から偏波変動箇所を推定する場合を例示したが、これに限定されるものではなく、その実施の形態につき、実施例2として以下に説明する。
【実施例2】
【0027】
図9は、実施例2の光伝送装置2A内の偏波変動推定部42の一例を示す説明図である。尚、実施例1の光伝送システム1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
【0028】
偏波変動推定部42は、第1のFFT(Fast Fourier Transform)51と、判定部52と、区間分割部53と、第2のFFT54と、発生箇所推定部55とを有する。第1のFFT51は、距離対応の偏波状態を周波数シフト分の周波数スペクトル形状に変換する。判定部52は、周波数スペクトル形状内に変化があるか否かを判定する。区間分割部53は、周波数スペクトル形状に変化がある場合、距離対応の偏波状態を複数の区間に分割する。尚、各区間は所定の時間幅である。第2のFFT54は、区間毎の距離対応の偏波状態を周波数スペクトル形状に変換する。発生箇所推定部55は、区間毎の周波数スペクトル形状から偏波変動箇所を推定する。
【0029】
図10は、第1のFFT51及び判定部52の処理動作の一例を示す説明図である。第1のFFT51は、
図10の(A)に示す距離対応の偏波状態を
図10の(B)に示す周波数スペクトル形状に変換する。判定部52は、現在の周波数スペクトル形状(例えば偏波変動あり)と、偏波変動無しの正常時の周波数スペクトル形状とを比較し、現在の周波数スペクトル形状に変化があるか否かを判定する。
【0030】
図11は、区間分割部53、第2のFFT54及び発生箇所推定部55の処理動作の一例を示す説明図である。区間分割部53は、現在の周波数スペクトル形状に変化がある場合、
図11の(A)に示すように距離対応の偏波状態を4個の区間A~Cに分割する。更に、第2のFFT54は、
図11の(A)に示す区間毎の距離対応の偏波状態を
図11の(B)に示す周波数スペクトル形状に変換する。発生箇所推定部55は、区間毎の周波数スペクトル同士を比較し、比較結果に基づき、周波数スペクトルが変化した区間を偏波変動箇所と推定する。
【0031】
図12は、第2の推定処理に関わる光伝送装置2Aの処理動作の一例を示すフローチャートである。
図12において光伝送装置2A内の波長光源11は、複数の異なる波長の信号光を光ファイバ3に順次入力する(ステップS21)。取得部13は、波長毎の信号光に対する光ファイバ3上の反射光の時間対応の偏波状態を取得する(ステップS22)。推定部14は、波長毎に時間対応の偏波状態を距離対応の偏波状態に変換する(ステップS23)。推定部14内の第1のFFT51は、波長毎の距離対応の偏波状態を周波数スペクトル形状にフーリエ変換する(ステップS24)。
【0032】
推定部14内の判定部52は、周波数スペクトル形状に変化があるか否かを判定する(ステップS25)。推定部14内の区間分割部53は、周波数スペクトル形状に変化がある場合(ステップS25肯定)、各波長の距離対応の偏波状態を複数の区間に分割する(ステップS26)。推定部14内の第2のFFT54は、区間毎の距離対応の偏波状態を周波数スペクトル形状にフーリエ変換する(ステップS27)。推定部14内の発生箇所推定部55は、フーリエ変換後の周波数スペクトル形状に偏波変動があるか否かを判定する(ステップS28)。
【0033】
発生箇所推定部55は、フーリエ変換後の周波数スペクトル形状に偏波変動がある場合(ステップS28肯定)、最も近い距離で検出された地点を偏波変動箇所と推定し(ステップS29)、
図12に示す処理動作を終了する。判定部52は、周波数スペクトル形状に変化がない場合(ステップS25否定)、信号光を光ファイバ3に順次入力すべく、ステップS21に移行する。発生箇所推定部55は、周波数スペクトル形状に偏波変動がない場合(ステップS28否定)、ステップS21に移行する。
【0034】
尚、推定部14は、計算リソースに余裕がある場合は、判定部52の判定処理を実行することなく、ステップS26以降の偏波変動箇所を推定する処理を実行しても良く、適宜変更可能である。その結果、雑音量が多く、偏波状態による偏波変動の検出が困難な場合でも、周波数軸上で分析することにより精度よく偏波変動を検出できる。
【0035】
第2の推定処理を実行する光伝送装置2Aは、波長毎の距離対応の偏波状態を周波数スペクトル形状にフーリエ変換し、周波数スペクトル形状に変化があるか否かを判定する。光伝送装置2Aは、周波数スペクトル形状に変化がある場合、各波長の距離対応の偏波状態を複数の区間に分割し、区間毎の距離対応の偏波状態を周波数スペクトル形状にフーリエ変換する。光伝送装置2Aは、フーリエ変換後の周波数スペクトル形状に偏波変動がある場合、最も近い距離で検出された地点を偏波変動箇所と推定する。その結果、偏波変動箇所を高精度に推定できる。更に、雑音量が多く、偏波状態による偏波変動の検出が困難な場合に、周波数軸上で分析することでより精度よく偏波変動を検出できる。
【0036】
尚、実施例1及び2の光伝送装置2A内の推定部14では、距離対応の偏波状態から偏波変動箇所を推定する場合を例示したが、偏波変動箇所に限定されるものではなく、例えば、偏波変動時間幅や偏波変動速度及び角度を推定しても良い。
【0037】
図13は、偏波変動発生時間幅を推定する際の処理の一例を示す説明図である。推定部14は、推定された偏波変動箇所と、波長毎の距離対応の偏波状態と、波長毎の時間対応の偏波状態とで偏波変動時間幅を推定する。
図13の例では、時刻t1に送信した波長λ1の信号光が地点z2に到達した時点から偏波状態の変動が発生し、時刻t3に送信した波長λ3の信号光が往路で地点z2に達するまで偏波状態の変動が発生している。この時、偏波変動時間幅はt3-t2となる。また偏波変動発生時刻は、時刻t1に地点z2までの伝搬時間(=z2/(c/n))を加算した時刻となる。推定部14は、偏波変動箇所だけでなく、偏波変動時間幅を推定し、偏波変動時間幅を利用者に通知する。その結果、偏波変動時間幅を知ることで、偏波変動を発生させている原因の特定と、偏波変動箇所の推定結果の確認(ダブルチェック)ができる。
【0038】
図14は、偏波変動速度及び角度を推定する際の処理の一例を示す説明図である。推定部14は、推定された偏波変動箇所と、波長毎の時間対応及び距離対応の偏波状態とに基づき、
図14の(A)に示す偏波変動の発生前の時刻の距離対応の偏波状態と、
図14の(B)に示す偏波変動の発生時の時刻の距離対応の偏波状態との差分を取得する。推定部14は、当該差分に基づき、偏波状態が変動する偏波変動速度及び偏波変動角度を推定する。推定部14は、偏波変動箇所だけでなく、偏波変動角度及び速度を利用者に通知する。散乱光の偏波状態は、光ファイバ3中の伝搬とともに回転する。偏波変動発生する前と発生時において、その状態が同じであれば、精度よく速度、角度を見積もることができる。一方で、もし状態が変わってしまった場合、精度が劣化するという制約がある。その結果、偏波変動を発生させている原因の特定とその対策を検討する上で有用である。
【0039】
また、実施例1及び2の波長光源11内の変調部22は無くても良く、光源21の出力を直接ON/OFFする構成にしても良い。
【0040】
また、実施例1及び2の光伝送装置2Aは、サーキュレータ12で光ファイバ3からの反射光を推定部14に入射する場合を例示した。しかしながら、サーキュレータ12に限定されるものではなく、
図15に示すようにしても良い。
図15は、サーキュレータ12の代替例の一例を示す説明図である。
【0041】
図15に示すように波長光源11と光ファイバ3との間にアイソレータ61と光分波器62とを配置する。光分波器62は、光ファイバ3からの反射光を取得部13に光分波する。更に、アイソレータ61は、光分波器62からの反射光の波長光源11への入射を防止する。取得部13は、サーキュレータ12を使用しなくても、光分波器62経由で反射光を入射する。
【0042】
また、実施例1及び2の光伝送装置2Aでは、異なる波長の信号光を発光する複数の光源21を備えた波長光源11を例示したが、これに限定されるものではなく、複数の波長の信号光を掃引可能にする波長掃引型光源11Aを使用しても良い。
【0043】
図16は、波長光源11の代替例(波長掃引型光源11A)の一例を示す説明図、
図17は、波長掃引型光源11Aの各信号光の出力タイミングの一例を示す説明図である。波長掃引型光源11Aは、例えば、
図17に示すように所定区間毎に波長掃引を繰り返して信号光を出力する。波長掃引型光源11Aは、所定区間毎に波長λ0からλnを掃引しながら出力し、所定区間に到達すると次の所定区間で波長λ0からλnを掃引しながら繰り返し出力する。
【実施例3】
【0044】
図18は、実施例3の光伝送装置2Bの一例を示すブロック図である。尚、実施例1の光伝送システム1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
【0045】
図18に示す光伝送装置2B(2)は、波長光源11Bと、サーキュレータ12と、デジタル信号処理回路70とを有する。波長光源11Bは、異なる波長の信号光をサーキュレータ12経由で光ファイバ3に出力する。サーキュレータ12は、異なる波長の信号光を光ファイバ3に出力すると共に、光ファイバ3からの信号光に対する反射光をデジタル信号処理回路70に出力する。
【0046】
波長光源11Bは、デジタルコヒーレント送信器と兼用である。波長光源11Bは、光源81と、IQ変調部82と、光周波数シフト信号生成部83と、光周波数シフト発生部84と、DAC(Digital Analog Converter)85とを有する。光源81は、単一波長の信号光を生成する。光周波数シフト信号生成部83は、周波数シフト信号を生成する。光周波数シフト発生部84は、(数式1)に示すように周波数シフト量を発生する。Eoutは、IQ変調部82の出力、Einは、IQ変調部82の入力、e(j2πΔft)は光周波数シフト量、Δfは光周波数シフト量である。
【0047】
【0048】
DAC85は、周波数シフト量をアナログ変換する。IQ変調部82は、光源81からの信号光を周波数シフト量に応じて光変調し、識別可能に異なる周波数シフト量の信号光を生成する。
【0049】
デジタル信号処理回路70は、デジタルコヒーレント受信器と兼用である。デジタル信号処理回路70は、局発光源71と、コヒーレントフロントエンド72と、ADC(アナログデジタル変換部)73と、取得部13Bと、推定部14とを有する。局発光源71は、ローカル光を生成する。コヒーレントフロントエンド72は、ローカル光に応じてサーキュレータ12経由の信号光に対する光ファイバ3上の反射光を受信する。ADC73は、反射光をデジタル変換し、デジタル変換後の反射光を取得部13Bに出力する。
【0050】
取得部13Bは、FFT33と、複数の偏波分析部32Aとを有する。FFT33は、各波長成分(光周波数シフト光)の反射光に分離する。偏波分析部32Aは、各波長成分に分離後のX偏波及びY偏波の電界情報Ex及びEyで表現した場合、偏波状態を数値的に表すためにストークスパラメータを導入すると、(数式2)で偏波状態を取得できる。
【0051】
【0052】
図19は、実施例3の波長光源11Bの各信号光の出力タイミングの一例を示す説明図である。波長光源11B内のIQ変調部82は、光源81からの単一波長の信号光を周波数シフト量に応じて光変調し、光変調後の異なる周波数シフト量の信号光を順次出力する。
【0053】
次に実施例3の光伝送装置2Bの動作について説明する。光伝送装置2B内の波長光源11Bは、IQ変調部82で光変調し、光変調後の複数の異なる周波数シフト量の信号光を光ファイバ3に順次入力する。
【0054】
コヒーレントフロントエンド72は、サーキュレータ12からの受信光(反射光)をX偏波成分及びY偏波成分に分離する。尚、X偏波成分は水平偏波成分、Y偏波成分は垂直偏波成分である。コヒーレントフロントエンド72は、反射光のX偏波成分にローカル光を干渉させてI成分及びQ成分を取得すると共に、反射光のY偏波成分にローカル光を干渉させてI成分及びQ成分を取得する。尚、I成分は同相軸成分、Q成分は直交軸成分である。
【0055】
コヒーレントフロントエンド72は、反射光のX偏波成分のI成分をADC73Aに出力すると共に、反射光のX偏波成分のQ成分をADC73Bに出力する。更に、コヒーレントフロントエンド72は、反射光のY偏波成分のI成分をADC73Cに出力すると共に、反射光のY偏波成分のQ成分をADC73Dに出力する。ADC73Aは、反射光のX偏波成分のI成分をデジタル変換してFFT33に出力する。ADC73Bは、反射光のX偏波成分のQ成分をデジタル変換してFFT33に出力する。更に、ADC73Cは、反射光のY偏波成分のI成分をデジタル変換してFFT33に出力する。ADC73Dは、反射光のY偏波成分のQ成分をデジタル変換してFFT33に出力する。
【0056】
FFT33は、デジタル変換されたX偏波成分内のI成分及びQ成分と、Y偏波成分内のI成分及びQ成分とをフーリエ変換し、X偏波成分及びY偏波成分を反射光の復調信号に復調し、当該反射光に対応する偏波分析部32Aに当該復調信号を出力する。各偏波分析部32Aは、FFT33からの該当波長の反射光の復調信号から時間対応の偏波状態を取得する。推定部14は、波長毎に時間対応の偏波状態から距離対応の偏波状態に変換する。推定部14は、各波長の距離対応の偏波状態から最も近い距離で検出された地点を偏波変動箇所として推定する。
【0057】
実施例3の光伝送装置2Bは、通常の長距離伝送向けのデジタルコヒーレント送受信器を兼用し、異なる波長の信号光に対する反射光を時間対応の偏波状態に取得する。光伝送装置2Bは、各波長の時間対応の偏波状態を距離対応の偏波状態に変換し、変換後の距離対応の偏波状態から偏波状態が変動する地点、すなわち最も近い距離の地点を偏波変動箇所として推定する。その結果、部品コストを低減しながら、偏波変動箇所を高精度に推定できる。
【0058】
尚、実施例3の光伝送装置2B内のデジタル信号処理回路70は、局発光源71からのローカル光をコヒーレントフロントエンド72に入力する場合を例示した。しかしながら、ローカル光に限定されるものではなく、ローカル光の代わりに、光源81からの信号光をローカル光としてコヒーレントフロントエンド72に入力しても良く、適宜変更可能である。
図20は、実施例3の光伝送装置2Bの代替例の一例を示すブロック図である。
【0059】
図20に示すコヒーレントフロントエンド72は、ローカル光の代わりに、光源81からの信号光をローカル光としてコヒーレントフロントエンド72に入力する。その結果、局発光源71が不要になるため、送信信号を生成する光源81と共用できる。
【0060】
また、実施例3の光伝送装置2Bでは、波長光源11Bから信号光をサーキュレータ12に出力する場合を例示したが、これに限定されるものではなく、
図21に示すようにしても良い。
図21は、実施例3の光伝送装置2Bの代替例の一例を示すブロック図である。
図21に示す光伝送装置2Bは、波長光源11Bとサーキュレータ12との間に、例えば、EDFAやSOA等の光増幅器12Aを配置しても良い。光増幅器12Aは、波長光源11Bからの信号光を光増幅し、光増幅後の信号光をサーキュレータ12に出力する。その結果、受信感度が向上する。
【0061】
尚、実施例の光伝送装置2Bは、偏波変動箇所を高精度に推定する場合を例示したが、周波数シフト量毎の時間対応の偏波状態及び距離対応の偏波状態に基づき、
図13及び
図14に示す偏波変動時間幅や偏波変動速度(角度)を推定しても良い。
【0062】
実施例1の光伝送装置2Aでは、異なる波長毎の反射光から距離対応の偏波状態を取得し、距離対応の偏波状態から偏波変動箇所を推定する場合を例示したが、これに限定されるものではなく、その実施の形態につき、実施例4として以下に説明する。
【実施例4】
【0063】
図22は、実施例4の光伝送装置2Cの一例を示すブロック図である。
図22に示す光伝送装置2Cは、光符号多重分割技術を採用した伝送装置である。光伝送装置2C内の波長光源11Cは、複数のパルス光源91と、複数の光符号部92と、光合波部93とを有する。パルス光源91は、単一波長の信号光を生成する。光符号部92は、パルス光源91からの信号光を異なる符号の信号光に符号化する。光合波部93は、符号化された異なる符号の信号光を合波し、合波後の信号光をサーキュレータ12に順次出力する。
【0064】
図23は、実施例4の波長光源11Cの各信号光の出力タイミングの一例を示す説明図である。波長光源11Cは、光符号多重分割技術を採用することにより、使用する波長光源11Cの波長数を削減できる。互いに直交した光符号1~Nを準備しておく。パルス光源91から出力された光パルスをそれぞれの光符号部92に通過させ、異なる時間スロットに配置する。
【0065】
取得部13Cは、光分波部101と、複数の光復号部102と、複数の偏波分析部103とを有する。光分波部101は、サーキュレータ12から信号光に対する光ファイバ3上の反射光を各光復号部102に光分岐する。各光復号部102は、光符号部92の符号毎に備え、光分波部101からの複数の反射光から自分に割り当てられた符号の反射光を復号化する。偏波分析部103は、光符号部92の符号毎に備え、光復号部102からの復号化した反射光を受信し、反射光から時間対応の偏波状態を取得する。光復号部102通過後の受信信号について見ると、光符号(OC)1が配置された時間スロットに信号は自己相関信号が得られて、高い強度の光信号が得られる。一方、他の符号が配置された時間スロットについては、相互相関となり、自己相関信号に対して影響を与えない、強度の低い信号のみ得られる。
【0066】
図24は、実施例4の偏波変動箇所を特定する際の処理の一例を示す説明図である。推定部14は、各符号の時間対応の偏波状態を距離対応の偏波状態に変換し、変換後の距離対応の偏波状態から偏波変動の発生箇所を推定する。
【0067】
次に実施例4の光伝送装置2Cの動作について説明する。光伝送装置2C内の波長光源11Cは、異なる符号の信号光を光ファイバ3に順次出力する。光伝送装置2C内の取得部13C内の光分波部101は、サーキュレータ12からの受信光を各光復号部102に分岐出力する。光復号部102は、自分に割り当てられた符号で受信光を復号し、受信光が復号できた場合、復号した受信光を偏波分析部103に出力する。
【0068】
各偏波分析部103は、復号した受信光(反射光)の時間対応の偏波状態を取得し、符号毎の時間対応の偏波状態を推定部14に出力する。推定部14は、符号毎に時間対応の偏波状態から距離対応の偏波状態に変換する。推定部14は、各符号の距離対応の偏波状態から最も近い距離で検出された地点を偏波変動箇所として推定する。
【0069】
光伝送装置2Cは、異なる複数の符号の信号光を光ファイバ3に連続して入力し、信号光に対する反射光を時間対応の偏波状態に変換する。光伝送装置2Cは、各符号の時間対応の偏波状態を距離対応の偏波状態に変換し、変換後の距離対応の偏波状態から偏波状態が変動する地点、すなわち最も近い距離の地点を偏波変動箇所として推定する。その結果、光符号多重分割技術を採用した場合でも、偏波変動箇所を高精度に推定できる。
【0070】
尚、実施例の光伝送装置2Cは、偏波変動箇所を高精度に推定する場合を例示したが、符号毎の時間対応の偏波状態及び距離対応の偏波状態に基づき、
図13及び
図14に示す偏波変動時間幅や偏波変動速度(角度)を推定しても良く、適宜変更可能である。
【0071】
また、図示した各部の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0072】
更に、各装置で行われる各種処理機能は、CPU(Central Processing Unit)(又はMPU(Micro Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)等のマイクロ・コンピュータ)上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良い。また、各種処理機能は、CPU(又はMPU、MCU等のマイクロ・コンピュータ)で解析実行するプログラム上、又はワイヤードロジックによるハードウェア上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
2(2A,2B,2C)光伝送装置
3 光ファイバ
11(11A,11B,11C)波長光源
13 取得部
14 推定部
32(32A,103) 偏波分析部
41 距離変換部
42 偏波変動推定部
51 第1のFFT
52 判定部
53 区間分割部
54 第2のFFT
55 発生箇所推定部
92 光符号部
102 光復号部