(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】切削インサート、ボディ及び切削工具
(51)【国際特許分類】
B23C 5/20 20060101AFI20240110BHJP
B23C 5/10 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B23C5/20
B23C5/10 D
(21)【出願番号】P 2023049329
(22)【出願日】2023-03-27
【審査請求日】2023-03-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 篤
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-039328(JP,A)
【文献】特表2007-521979(JP,A)
【文献】中国実用新案第212121828(CN,U)
【文献】特開2021-030401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/10、20
B23B 27/14、16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディのインサート取付座を構成する複数の取付面のうち前記ボディの外周面と交差し且つ前記ボディの回転中心軸に対して前記ボディの先端側から後端側へ向かって次第に径方向外方へ傾斜する第1取付面に当接して前記インサート取付座に装着される切削インサートであって、
互いに対向する平行四辺形の一対の端面と、
前記端面を区画する辺に沿って形成された切れ刃と、
前記端面同士の間に設けられた4つの側面と、
互いに対向する前記側面で開口された貫通孔と、
を有し、
前記貫通孔の開口部は、互いに隣接する前記側面同士の間の稜線部分にかかることなく前記側面で開口し、
前記側面は、前記ボディを回転中心軸が鉛直方向と平行となるような向きにした状態で前記インサート取付座に前記切削インサートを装着する際に、前記第1取付面に設けられた凸部または凹部と係合することにより前記切削インサートが前記第1取付面に沿って脱落することを抑制する凹部または凸部を有する、
切削インサート。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記開口部が形成された前記側面に対して垂直に形成されている、
請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
切削インサートが装着されるインサート取付座を有するボディであって、
前記インサート取付座は、
前記切削インサートの外面が当接される複数の取付面を有し、
前記複数の取付面には、前記切削インサートをネジ止めするためのネジ穴が形成され、
前記複数の取付面のうちの1つは前記ボディの外周面と交差し且つ前記ボディの回転中心軸に対して前記ボディの先端側から後端側へ向かって次第に径方向外方へ傾斜する第1取付面とされ、
ている、
前記第
1取付面には、前記切削インサートの外面に設けられた凹部または凸部と係合する凸部または凹部を有する、
ボディ。
【請求項4】
切削インサートと、前記切削インサートが装着されるインサート取付座を有するボディと、を備える切削工具であって、
前記切削インサートは、
互いに対向する平行四辺形の一対の端面と、
前記端面を区画する辺に沿って形成された切れ刃と、
前記端面同士の間に設けられた4つの側面と、
互いに対向する前記側面で開口された貫通孔と、
前記側面に設けられた凹部または凸部と、
を有し、
前記ボディの前記インサート取付座は、
前記切削インサートの前記側面が当接される少なくとも2つの取付面に、前記貫通孔に通されたネジが螺合可能なネジ穴を有し、
前記少なくとも2つの取付面のうち前記ボディの外周面と交差する第1取付面は、前記ボディの回転中心軸に対して前記ボディの先端側から後端側へ向かって次第に径方向外方へ傾斜し且つ前記切削インサートの前記凹部または前記凸部と係合する凸部または凹部を有する、
切削工具。
【請求項5】
前記切削インサートの前記貫通孔の開口部は、互いに隣接する前記側面同士の間の稜線部分にかかることなく前記側面で開口している、
請求項4に記載の切削工具。
【請求項6】
前記切削インサートの前記貫通孔は、前記貫通孔の開口部が形成された前記側面に対して垂直に形成されている、
請求項4または5に記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削インサート、ボディ及び切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばパイプ等の内面を切削するための切削工具として、回転するボディの外周側に、周方向に並ぶよう複数の切削インサートを備えた構成のものが知られている。それぞれの切削インサートは、ボディから取り外して交換することができる。例えば下記特許文献1、2に記載されているように、1つの切削インサートにおいて複数の切れ刃を設けておき、ボディに対する当該切削インサートの取り付け状態を変更することで、加工に用いられる切れ刃を切り換えることができるようなものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5779830号公報
【文献】特開2012-139814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の切削工具においては、例えばボディの回転中心軸に対し垂直な軸の周りに、切削インサートを180度回転させることにより、加工に用いられる切れ刃を変更し得る構成においては、対角の位置にある2つの切れ刃を切り換えて使用することができる。更に、切削インサートを裏返して取り付けることも可能な構成とすれば、計4つの切れ刃を切り換えて使用することも可能となる。
しかしながら、そのような構成においては、切削インサートが厚くなり過ぎて、小径の加工を行うことが難しくなってしまう可能性がある。
【0005】
特許文献2の切削工具においては、切削インサートをボディに固定するための螺子が挿通される貫通孔が、菱形形状をなす切削インサートの対角線に沿って形成されている。この切削インサートは、一対の菱形のすくい面と、それらすくい面と交差する4つの逃げ面とを備え、隣り合う第1逃げ面と第2逃げ面との第1交差稜線の多くの部分と、隣り合う第3逃げ面と第4逃げ面との第2交差稜線の多くの部分を切り欠くように貫通孔が開口しているため、残存している第1交差稜線および第2交差稜線の全長が短くなってしまい、切削インサートのコーナ部の肉厚低下、ひいては工具寿命の低下を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、計4つの切れ刃を切り換えて使用可能としながらも、厚さを抑制し、容易に着脱でき、十分な強度が確保された切削インサート、当該切削インサートが取り付けられるボディ、及び切削工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の切削インサートは、
ボディのインサート取付座に装着される切削インサートであって、
互いに対向する平行四辺形の一対の端面と、
前記端面を区画する辺に沿って形成された切れ刃と、
前記端面同士の間に設けられた4つの側面と、
互いに対向する前記側面で開口された貫通孔と、
を有し、
前記貫通孔の開口部は、互いに隣接する前記側面同士の間の稜線部分にかかることなく前記側面で開口している。
【0008】
この構成の切削インサートによれば、貫通孔に螺子を挿し込んでボディのネジ穴にねじ込むことにより、ボディのインサート取付座へ容易に装着させることができる。また、向きを変えてボディのインサート取付座へ装着させることにより、複数の切れ刃のいずれかを選択して用いることができる。
しかも、ボディへの固定用の螺子を挿し込むための貫通孔の開口部が、互いに隣接する側面の稜線部分にかかることなく側面で開口しているので、開口部を有することによる切れ刃の強度低下を抑えることができる。これにより、十分な強度の切れ刃によって良好な切削が可能である。
【0009】
また、本発明の切削インサートは、
前記貫通孔は、前記開口部が形成された前記側面に対して垂直に形成されている。
【0010】
この構成の切削インサートによれば、開口部が形成された側面に対して貫通孔が垂直に形成されているので、螺子による締結力をバランスよく付与することができ、ボディに対して強固に固定できる。
【0011】
また、本発明の切削インサートは、
前記側面または前記端面は、前記ボディに設けられた凸部または凹部と係合する凹部または凸部を有する。
【0012】
この構成の切削インサートによれば、凹部または凸部がボディの凸部または凹部に係合するので、ボディに取り付ける際の脱落を抑制できる。これにより、ボディへの固定作業性を向上できる。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明のボディは、
切削インサートが装着されるインサート取付座を有するボディであって、
前記インサート取付座は、
前記切削インサートの外面が当接される複数の取付面を有し、
前記複数の取付面には、前記切削インサートをネジ止めするためのネジ穴が形成されている。
【0014】
この構成のボディによれば、インサート取付座を構成する複数の取付面にネジ穴が形成されているので、これらの取付面のネジ穴のいずれかを選択して切削インサートを固定するための螺子をねじ込んで固定できる。これにより、例えば、切削インサートを、その向きを変えてボディに固定できる。
【0015】
また、本発明のボディは、
前記複数の取付面の少なくとも1つには、前記切削インサートに設けられた凹部または凸部と係合する凸部または凹部を有する。
【0016】
この構成のボディによれば、切削インサートの凹部または凸部をボディの凸部または凹部に係合させることにより、ボディに切削インサートを取り付ける際の切削インサートの脱落を抑制できる。これにより、切削インサートのボディへの固定作業性を向上できる。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の切削工具は、
切削インサートと、前記切削インサートが装着されるインサート取付座を有するボディと、を備える切削工具であって、
前記切削インサートは、
互いに対向する平行四辺形の一対の端面と、
前記端面を区画する辺に沿って形成された切れ刃と、
前記端面同士の間に設けられた4つの側面と、
互いに対向する前記側面で開口された貫通孔と、
を有し、
前記ボディの前記インサート取付座は、
前記切削インサートの前記側面が当接されるそれぞれの取付面に、前記貫通孔に通されたネジが螺合可能なネジ穴を有する。
【0018】
この構成の切削工具によれば、切削インサートの貫通孔に螺子を挿し込んでボディのネジ穴にねじ込むことにより、ボディのインサート取付座へ切削インサートを容易に装着させることができる。また、切削インサートの向きを変えてボディのインサート取付座へ装着させることにより、複数の切れ刃のうちのいずれかを選択して用いることができる。
しかも、ボディのインサート取付座を構成する複数の取付面にネジ穴が形成されているので、これらの取付面のネジ穴のいずれかを選択して切削インサートを固定するための螺子をねじ込んで固定できる。これにより、例えば、切削インサートを、その向きを変えてボディに固定できる。
【0019】
また、本発明の切削工具は、
前記切削インサートの前記貫通孔の開口部は、互いに隣接する前記側面同士の間の稜線部分にかかることなく前記側面で開口している。
【0020】
この構成の切削工具によれば、切削インサートのボディへの固定用の螺子を挿し込むための貫通孔の開口部が、切削インサートにおける互いに隣接する側面同士の間の稜線部分にかかることなく側面で開口しているので、開口部を有することによる切れ刃の強度低下を抑えることができる。これにより、十分な強度の切れ刃によって良好な切削が可能である。
【0021】
また、本発明の切削工具は、
前記切削インサートの前記貫通孔は、前記開口部が形成された前記側面に対して垂直に形成されている。
【0022】
この構成の切削工具によれば、切削インサートの貫通孔が、開口部が形成された側面に対して垂直に形成されているので、螺子による締結力をバランスよく付与することができ、ボディに対して切削インサートを強固に固定できる。
【0023】
また、本発明の切削工具は、
前記切削インサートの前記側面または前記端面は、凹部または凸部を有し、
前記ボディの前記複数の取付面の少なくとも1つには、前記切削インサートの前記凹部または前記凸部と係合する凸部または凹部を有する。
【0024】
この構成の切削工具によれば、切削インサートの凹部または凸部をボディの凸部または凹部に係合させることにより、ボディに切削インサートを取り付ける際の切削インサートの脱落を抑制できる。これにより、切削インサートのボディへの固定作業性を向上できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、計4つの切れ刃を切り換えて使用可能としながらも、厚さを抑制し、容易に着脱でき、十分な強度が確保された切削インサート、当該インサートが取り付けられるボディ、及び切削工具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る切削インサートを備えた切削工具の斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る切削インサートを備えた切削工具の正面図である。
【
図3A】
図3Aは、本実施形態に係る切削インサートの構成を示す図であり、
図4における第1端面に垂直な方向から見た図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る切削インサートの構成を示す図であり、切削インサートの第1側面側から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る切削インサートの構成を示す図であり、
図4における第1側面に垂直な方向から見た図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る切削インサートの構成を示す図であり、切削インサートの第2側面側から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る切削インサートの構成を示す図であり、
図6における第2側面に垂直な方向から見た図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る切削インサートが装着されるボディのインサート取付座部分の斜視図である。
【
図9】
図9は、ボディのインサート取付座への切削インサートの装着の仕方を説明するボディのインサート取付座部分の斜視図である。
【
図10】
図10は、切削インサートが嵌め込まれたボディのインサート取付座部分における回転中心軸に沿う断面図である。
【
図11】
図11は、ボディのインサート取付座への切削インサートの装着の仕方を説明するボディのインサート取付座部分の斜視図である。
【
図12】
図12は、切削インサートが嵌め込まれたボディのインサート取付座部分における回転中心軸に沿う断面図である。
【
図13】
図13は、ボディに切削インサートが装着された切削工具の斜視図である。
【
図14】
図14は、ボディに切削インサートが装着された切削工具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0028】
本実施形態について説明する。本実施形態に係る切削工具10は、回転しながらパイプ等の内面を切削するための転削工具であって、「プルカウンターボーリング工具」とも称されるものである。尚、以下に説明する切削工具10の構成は、他の転削工具に対しても適用可能である。
【0029】
図1は、切削工具10の外観を示す斜視図である。
図2は、
図1の切削工具10を、回転中心軸AX1に沿って先端側から見て描いた正面図である。
図1及び
図2に示されるように、切削工具10は複数の切削インサート30を備えており、これらがボディ20に取り付けられた構成を有している。
【0030】
ボディ20は、切削工具10の本体部分であって、例えばアーバ等の保持具に装着された状態で、当該保持具ごと、不図示の工作機械によって把持される。ボディ20は略円筒形状を有しており、その中心軸は回転中心軸AX1と一致している。加工中においては、工作機械の駆動力により、ボディ20が回転中心軸AX1の周りにおいて回転する。
図1及び
図2においては、その回転方向が矢印により示されている。
【0031】
切削インサート30は、被削材を切削するための第1切れ刃311等が形成された部材である。切削インサート30は上記のように複数設けられており、ボディ20の外周側において、周方向に等間隔で並ぶように配置されている。それぞれの切削インサート30の形状は互いに同一である。切削インサート30は、螺子50によってボディ20に取り付けられている。
【0032】
図3~
図7を参照しながら、切削インサート30の構成について説明する。切削インサート30は、第1端面110と、第2端面120と、を有している。第1端面110は
図3Aにおける紙面手前側の面であり、第2端面120は
図3Aにおける紙面奥側(
図3Bにおける紙面手前側)の面である。つまり、第1端面110及び第2端面120は、互いに対向した平行な面である。第1端面110及び第2端面120は、加工時において一部が「すくい面」として機能する面である。
【0033】
後に説明するように、ボディ20に対する切削インサート30の取り付け状態は、
図1に示されるようなものに限られない。例えば、第1端面110ではなく第2端面120の方を回転方向の前方へ向けた状態で、切削インサート30をボディ20に取り付けることもできる。
【0034】
第1端面110は概ね平行四辺形の面であり、4つの辺111、112、113、114によって区画されている。これらのうち、辺111及び辺113が互いに平行な一対の辺であり、辺112及び辺114も互いに平行な一対の辺である。
【0035】
第1端面110と同様に、第2端面120も概ね平行四辺形の面であり、4つの辺121、122、123、124によって区画されている。これらのうち、辺121及び辺123が互いに平行な一対の辺であり、辺122及び辺124も互いに平行な一対の辺である。
【0036】
切削インサート30には、計4つの切れ刃(2つの第1切れ刃311、312と、2つの第2切れ刃321、322)が形成されている。
【0037】
切削インサート30に形成された計4つの切れ刃のうち、2つの第1切れ刃311、312は、いずれも第1端面110を区画する辺に沿って設けられている。具体的には、第1切れ刃311は辺111に沿って、辺111と同じ位置に設けられており、第1切れ刃312は辺113に沿って、辺113と同じ位置に設けられている。第1切れ刃311、312は互いに平行である。
【0038】
同様に、切削インサート30に形成された計4つの切れ刃のうち、2つの第2切れ刃321、322は、いずれも第2端面120を区画する辺に沿って設けられている。具体的には、第2切れ刃321は辺121に沿って、辺121と同じ位置に設けられており、第2切れ刃322は辺123に沿って、辺123と同じ位置に設けられている。第2切れ刃321、322は互いに平行である。
【0039】
尚、切削インサート30が有する複数の切れ刃のうち、加工中において実際に「切れ刃」として機能するのは1つだけである。第1切れ刃311、312、第2切れ刃321、322のうち、どれが「切れ刃」として機能するのかは、ボディ20に対する切削インサート30の取り付け状態によって変化する。例えば
図1の取り付け状態においては、最も先端側にある第1切れ刃311のみが実際に「切れ刃」として機能する。
【0040】
切削インサート30には、計4つのマージン(2つの第1マージン411、412、2つの第2マージン421、422)が設けられている。「マージン」とは、切削工具10の直進性の確保や、穴の真円度の向上等を目的として設けられるものであり、本実施形態では、隣接する面に対して傾斜した平坦面として設けられている。
【0041】
4つのマージンのうち2つの第1マージン411、412は、いずれも第1端面110を区画する辺に沿って設けられている。具体的には、第1マージン411は辺112に沿って設けられており、第1マージン412は辺114に沿って設けられている。第1マージン411、412は互いに平行である。4つのマージンのうち2つの第2マージン421、422は、いずれも第2端面120を区画する辺に沿って設けられている。具体的には、第2マージン421は辺122に沿って設けられており、第2マージン422は辺124に沿って設けられている。第2マージン421、422は互いに平行である。
【0042】
切削インサート30が有する複数のマージンのうち、加工中において実際に「マージン」として機能するのは1つだけである。第1マージン411、412、第2マージン421、422のうち、どれが「マージン」として機能するのかは、ボディ20に対する切削インサート30の取り付け状態によって変化する。例えば
図1の取り付け状態においては、最も外周側にある第1マージン411のみが実際に「マージン」として機能する。
【0043】
以上のように、切削インサート30では、互いに平行な一対の第1切れ刃311、312と、互いに平行な一対の第1マージン411、412とが、いずれも第1端面110の外周側に設けられており、その結果として、第1端面110の形状が概ね平行四辺形となっている。同様に、切削インサート30では、互いに平行な一対の第2切れ刃321、322と、互いに平行な一対の第2マージン421、422とが、いずれも第2端面120の外周側に設けられており、その結果として、第2端面120の形状が概ね平行四辺形となっている。
【0044】
切削インサート30には、第1端面110と第2端面120との間に4つの側面(一対の第1側面211、212と、一対の第2側面221、222)が設けられている。第1側面211、212及び第2側面221、222は、加工時において一部が「逃げ面」として機能する面である。
【0045】
第1側面211は、第1切れ刃311から、
図3Aの奥側にある第2端面120に向かって伸びている。第1側面211と第2端面120との間には、先に述べた第2マージン421が介在している。つまり、第1側面211は、第1切れ刃311から第2マージン421に向かって伸びており、第2マージン421を介して第2端面120に繋がっている。
【0046】
第1側面212は、第1切れ刃312から、
図3Aの奥側にある第2端面120に向かって伸びている。第1側面212と第2端面120との間には、先に述べた第2マージン422が介在している。つまり、第1側面212は、第1切れ刃312から第2マージン422に向かって伸びており、第2マージン422を介して第2端面120に繋がっている。
【0047】
第2側面221は、第2切れ刃321から、
図3Bの奥側にある第1端面110に向かって伸びている。第2側面221と第1端面110との間には、先に述べた第1マージン411が介在している。つまり、第2側面221は、第2切れ刃321から第1マージン411に向かって伸びており、第1マージン411を介して第1端面110に繋がっている。
【0048】
第2側面222は、第2切れ刃322から、
図3Bの奥側にある第1端面110に向かって伸びている。第2側面222と第1端面110との間には、先に述べた第1マージン412が介在している。つまり、第2側面222は、第2切れ刃322から第1マージン412に向かって伸びており、第1マージン412を介して第1端面110に繋がっている。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る切削インサート30は、第1切れ刃311、312から第2マージン421、422に向かって伸びる一対の第1側面211、212と、第2切れ刃321、322から第1マージン411、412に向かって伸びる一対の第2側面221、222と、を備えている。
【0050】
切削インサート30が有する複数の側面(第1側面211等)のうち、加工中において実際に一部が「逃げ面」として機能するのは1つだけである。第1側面211、212、第2側面221、222のうち、どれが「逃げ面」として機能するのかは、ボディ20に対する切削インサート30の取り付け状態によって変化する。例えば
図1の取り付け状態においては、第1切れ刃311と隣り合う第1側面211のみが実際に「逃げ面」として機能する。
【0051】
同様に、切削インサート30が有する2つの端面(第1端面110、第2端面120)のうち、加工中において実際に一部が「すくい面」として機能するのは1つだけである。第1端面110及び第2端面120のうち、どちらが「すくい面」として機能するのかは、ボディ20に対する切削インサート30の取り付け状態によって変化する。例えば
図1の取り付け状態においては、第1切れ刃311と隣り合う第1端面110の方が実際に「すくい面」として機能する。
【0052】
本実施形態では、それぞれの第1切れ刃311、312の長さは互いに同じであり、それぞれの第2切れ刃321、322の長さも互いに同じである。更に、第1切れ刃311、312の長さと第2切れ刃321、322の長さについても互いに同じである。つまり、切削インサート30に形成された計4つの切れ刃の長さは、全て同じ長さとなっている。その結果、
図3A、
図3Bのように見た場合における切削インサート30の外形は、概ね菱形形状となっている。
【0053】
図3A、
図3Bに示される軸AX2は、第1端面110に対し垂直な軸である。
図3A、
図3Bのように、第1端面110に対し垂直な方向から切削インサート30を見た場合には、軸AX2は、切削インサート30の全体の外形の幾何中心を通っている。
【0054】
切削インサート30を軸AX2の周りに180度回転させると、回転後における切削インサート30の形状の全体が、回転前における切削インサート30の形状に重なる。切削インサート30の形状が、これまでに説明したような対称性を有していることにより、このような軸AX2が存在している。軸AX2は、本実施形態における「第1対称軸」に該当する。例えば、
図1の状態から、切削インサート30を軸AX2の周りに180度回転させた状態でボディ20に取り付けた場合には、第1切れ刃312が実際の「切れ刃」として機能することとなる。
【0055】
図3A、
図3Bに示される軸AX3は、第1端面110に対し平行な軸であって、第1端面110及び第2端面120の中間位置を通る軸である。切削インサート30を軸AX3の周りに180度回転させると、回転後における切削インサート30の外形が、回転前における切削インサート30の外形に重なる。なお、貫通孔500は、回転前と回転後とでは重ならず、向きが変わる。切削インサート30の形状が、これまでに説明したような対称性を有していることにより、このような軸AX3も存在している。軸AX3は、本実施形態における「第2対称軸」に該当する。例えば、
図1の状態から、切削インサート30を軸AX3の周りに180度回転させた状態でボディ20に取り付けた場合には、
図13に示すように、第2切れ刃321が実際の「切れ刃」として機能することとなる。このとき、螺子50は第2ネジ穴612にねじ込まれており、螺子50が第1ネジ穴611にねじ込まれている
図1の状態のときとは螺子50の向きが異なっている。
【0056】
図3A、
図3Bに示される軸AX4は、第1端面110に対し平行な軸であって、第1端面110及び第2端面120の中間位置を通る軸である。軸AX4は、軸AX3と同様の軸ではあるが、軸AX3とは異なる方向を向いた軸である。具体的には、軸AX4は軸AX3に対して垂直な軸である。切削インサート30を軸AX4の周りに180度回転させると、回転後における切削インサート30の外形が、回転前における切削インサート30の外形に重なる。なお、貫通孔500は、回転前と回転後とでは重ならず、向きが変わる。切削インサート30の形状が、これまでに説明したような対称性を有していることにより、このような軸AX4も存在している。軸AX4は、本実施形態における「第3対称軸」に該当する。例えば、
図1の状態から、切削インサート30を軸AX4の周りに180度回転させた状態でボディ20に取り付けた場合には、第2切れ刃322が実際の「切れ刃」として機能することとなる。このときも、螺子50は第2ネジ穴612にねじ込まれており、螺子50が第1ネジ穴611にねじ込まれている
図1の状態のときとは螺子50の向きが異なっている。
【0057】
本実施形態では、後に説明するボディ20のインサート取付座600を構成している面のうち第1取付面601、第2取付面602という互いに異なる面にそれぞれ方向の異なる2方向の第1ネジ穴611、第2ネジ穴612が形成されているので、切削インサート30は、軸AX2、AX3、AX4のそれぞれの周りに回転させながら、様々な向きでボディ20に取り付けることが可能になっており、これにより、第1切れ刃311、312、第2切れ刃321、322の中から、切削に供される「切れ刃」を選択し切り換えることが可能となっている。このような切れ刃の切り換えは、逆勝手のボディ20を別途用意することなく、2方向に形成された第1ネジ穴611、第2ネジ穴612が形成された単一のボディ20に対して行うことができるので、切削加工に要するコストを低減することができる。
【0058】
切削インサート30は、貫通孔500を有している。この貫通孔500は、第1側面211から第1側面212にわたって形成されている。そして、貫通孔500の開口部501、502は、第1側面211、212で開口している。また、第1側面211で開口した一方の開口部501は、第1側面211と第2側面221、222との間の稜線部分Rにかかることなく開口し、第1側面212で開口した他方の開口部502は、第1側面212と第2側面221、222との間の稜線部分Rにかかることなく開口している。この貫通孔500は、開口部501、502が形成された第1側面211、212に対して垂直に形成されている。また、貫通孔500は、開口部501、502側に、中間部へ向かって次第に縮径する縮径部501a、502aを有している。
切削インサート30の使用コーナ数を増やすには、例えば特許文献2のように左右対称に穴を貫通させる構成の方が簡便であるところ、本発明者は、そのような構成の使用済み切削インサートの損傷状態から切削インサートのコーナ部からの欠損が多いという知見を得ており、かかる知見に基づき、切削インサート30ではそのコーナ部に対応する稜線部分Rに貫通孔500を貫通させない構成を採用している。このように、本実施形態では、切削インサート30のコーナ部の肉厚を増すことで欠損を防ぎ、工具寿命を大幅に向上することが可能になっている。
【0059】
この貫通孔500は、切削インサート30をボディ20に固定する際に螺子50が挿通される孔であり、開口部501,502のいずれか一方から螺子50が挿し込まれる。貫通孔500に挿通される螺子50は、その頭部50aが、縮径部501a、502aのいずれかに係合する。つまり、開口部501から螺子50を挿し込んだ場合は、螺子50の頭部50aが、開口部501側の縮径部501aに係合し、開口部502から螺子50を挿し込んだ場合は、螺子50の頭部50aが、開口部502側の縮径部502aに係合する。
【0060】
また、切削インサート30は、後に説明するボディ20への固定時における重力による脱落を防止して固定作業性を高めるために、第1取付面601の凸部621に係合可能な凹部511、512、521,522を有している。具体的には、まず、第1側面211、212に、凹部511、512を有している。第1側面211の凹部511は、第1ネジ穴611よりもインサート固定時におけるインサート脱落方向下方(
図8における第1取付面601の右下がりの傾斜方向下方)に位置する第2側面222寄りに形成され、第1側面212の凹部512は、第1ネジ穴611よりもインサート取付時における脱落方向下方に位置する第2側面221寄りに形成されている。同様に、切削インサート30は、第2側面221、222に、凹部521、522を有している。第2側面221の凹部521は、第1ネジ穴611よりもインサート取付時における脱落方向下方に位置する第1側面212寄りに形成され、第2側面222の凹部522は、第1ネジ穴611よりもインサート取付時における脱落方向下方に位置する第1側面211寄りに形成されている。
【0061】
ボディ20は、その先端における外周側に、複数のインサート取付座600を有している。これらのインサート取付座600は、周方向に等間隔で並ぶように形成されている。切削インサート30は、ボディ20の各インサート取付座600に装着される(
図1参照)。
【0062】
図8は、本実施形態に係る切削インサート30が装着されるボディ20のインサート取付座600の斜視図である。
図8に示すように、ボディ20のインサート取付座600は、第1取付面601、第2取付面602及び第3取付面603を有している。第1取付面601は、ボディ20の回転中心軸AX1に対してボディ20の後端へ向かって次第に径方向外方へ傾斜する平面である。第2取付面602は、ボディ20の回転中心軸AX1に沿う平面である。第3取付面603は、ボディ20の回転中心軸AX1に対して径方向へ直交する平面である。
【0063】
第1取付面601には、第1ネジ穴611が形成されている。この第1ネジ穴611は、第1取付面601に対して垂直に形成されている。この第1ネジ穴611には、切削インサート30の貫通孔500に挿通された螺子50がねじ込まれる。第2取付面602には、第2ネジ穴612が形成されている。この第2ネジ穴612は、第2取付面602に対して垂直に形成されている。この第2ネジ穴612には、切削インサート30の貫通孔500に挿通された螺子50がねじ込まれる。
【0064】
切削インサート30は、ボディ20を回転中心軸AX1が鉛直方向と平行となるような向きにした状態でインサート取付座600に装着される。ボディ20がこのような向きになっていると、
図8に示すように第1取付面601が右下方に傾斜することになり、切削インサート30を第1取付面601に置くと、重力によって切削インサート30が第1取付面601に沿って滑り脱落してしまう。そこで、第1取付面601には、第1ネジ穴611よりもボディ20の径方向外方側に、凸部621が設けられている。この凸部621は、第1取付面601に固定されたピン622の端部からなるもので、このピン622は、第1取付面601に形成されたネジ穴623にねじ込まれて固定されている。この凸部621は、上述した切削インサート30の第1側面211、212の第2側面222、221寄りに形成された凹部511、512または第2側面221、222の第1側面212、211寄りに形成された凹部521、522に係合可能とされている。この凸部621は、インサート取付座600へ切削インサート30を装着させる際に、第1側面211、212の凹部511、512または第2側面221、222の凹部521、522に係合する。したがって、インサート取付座600へ切削インサート30を装着させる際の切削インサート30の脱落を抑え、インサート取付座600への円滑な装着が可能とされている。
【0065】
次に、ボディ20に対する切削インサート30の取り付けについて説明する。
図9は、ボディ20のインサート取付座600への切削インサート30の装着の仕方を説明するボディ20のインサート取付座600の斜視図である。
図10は、切削インサート30が嵌め込まれたボディ20のインサート取付座600における回転中心軸AX1に沿う断面図である。
図11は、ボディ20のインサート取付座600への切削インサート30の装着の仕方を説明するボディ20のインサート取付座600の斜視図である。
図12は、切削インサート30が嵌め込まれたボディ20のインサート取付座600における回転中心軸AX1に沿う断面図である。
図13は、ボディ20に切削インサート30が装着された切削工具10の斜視図である。
図14は、ボディ20に切削インサート30が装着された切削工具20の正面図である。
【0066】
(第1切れ刃311を使用する場合)
切削インサート30の第1切れ刃311を切れ刃として用いる場合、
図9及び
図10に示すように、インサート取付座600に対して、第1側面212を第1取付面601に対向させ、第2側面222を第2取付面602に対向させ、第2端面120を第3取付面603に対向させる。この状態で、切削インサート30をインサート取付座600に嵌め込む。これにより、切削インサート30は、第1側面212が第1取付面601に当接され、第2側面222が第2取付面602に当接され、第2端面120が第3取付面603に当接される。
【0067】
このように、切削インサート30をインサート取付座600に嵌め込むと、第1側面212の凹部512に第1取付面601の凸部621が係合する。これにより、切削インサート30がインサート取付座600に保持され、切削インサート30の脱落が抑えられる。また、この状態で、切削インサート30の貫通孔500がインサート取付座600の第1取付面601に形成された第1ネジ穴611と連通する。
【0068】
この状態において、切削インサート30の貫通孔500に対して、その開口部501へ螺子50を挿し込み、インサート取付座600の第1取付面601の第1ネジ穴611にねじ込む。これにより、第1切れ刃311が切れ刃として用いられる状態で切削インサート30がボディ20のインサート取付座600に装着される(
図1及び
図2参照)。
【0069】
(第1切れ刃312を使用する場合)
切削インサート30の第1切れ刃312を切れ刃として用いる場合、インサート取付座600に対して、第1側面211を第1取付面601に対向させ、第2側面221を第2取付面602に対向させ、第2端面120を第3取付面603に対向させる。この状態で、切削インサート30をインサート取付座600に嵌め込む。これにより、切削インサート30は、第1側面211が第1取付面601に当接され、第2側面221が第2取付面602に当接され、第2端面120が第3取付面603に当接される。
【0070】
このように、切削インサート30をインサート取付座600に嵌め込むと、第1側面211の凹部511に第1取付面601の凸部621が係合する。これにより、切削インサート30がインサート取付座600に保持され、切削インサート30の脱落が抑えられる。また、この状態で、切削インサート30の貫通孔500がインサート取付座600の第1取付面601に形成された第1ネジ穴611と連通する。
【0071】
この状態において、切削インサート30の貫通孔500に対して、その開口部502へ螺子50を挿し込み、インサート取付座600の第1取付面601の第1ネジ穴611にねじ込む。これにより、第1切れ刃312が切れ刃として用いられる状態で切削インサート30がボディ20のインサート取付座600に装着される。
【0072】
(第2切れ刃321を使用する場合)
切削インサート30の第2切れ刃321を切れ刃として用いる場合、
図11及び
図12に示すように、インサート取付座600に対して、第2側面222を第1取付面601に対向させ、第1側面212を第2取付面602に対向させ、第1端面110を第3取付面603に対向させる。この状態で、切削インサート30をインサート取付座600に嵌め込む。これにより、切削インサート30は、第2側面222が第1取付面601に当接され、第1側面212が第2取付面602に当接され、第1端面110が第3取付面603に当接される。
【0073】
このように、切削インサート30をインサート取付座600に嵌め込むと、第2側面222の凹部522に第1取付面601の凸部621が係合する。これにより、切削インサート30がインサート取付座600に保持され、切削インサート30の脱落が抑えられる。また、この状態で、切削インサート30の貫通孔500がインサート取付座600の第2取付面602に形成された第2ネジ穴612と連通する。
【0074】
この状態において、切削インサート30の貫通孔500に対して、その開口部501へ螺子50を挿し込み、インサート取付座600の第2取付面602の第2ネジ穴612にねじ込む。これにより、
図14に示すように、第2切れ刃321が切れ刃として用いられる状態で切削インサート30がボディ20のインサート取付座600に装着される。
【0075】
(第2切れ刃322を使用する場合)
切削インサート30の第2切れ刃322を切れ刃として用いる場合、インサート取付座600に対して、第2側面221を第1取付面601に対向させ、第1側面211を第2取付面602に対向させ、第1端面110を第3取付面603に対向させる。この状態で、切削インサート30をインサート取付座600に嵌め込む。これにより、切削インサート30は、第2側面221が第1取付面601に当接され、第1側面211が第2取付面602に当接され、第1端面110が第3取付面603に当接される。
【0076】
このように、切削インサート30をインサート取付座600に嵌め込むと、第2側面221の凹部521に第1取付面601の凸部621が係合する。これにより、切削インサート30がインサート取付座600に保持され、切削インサート30の脱落が抑えられる。また、この状態で、切削インサート30の貫通孔500がインサート取付座600の第2取付面602に形成された第2ネジ穴612と連通する。
【0077】
この状態において、切削インサート30の貫通孔500に対して、その開口部502へ螺子50を挿し込み、インサート取付座600の第2取付面602の第2ネジ穴612にねじ込む。これにより、第2切れ刃322が切れ刃として用いられる状態で切削インサート30がボディ20のインサート取付座600に装着される。
【0078】
以上、説明したように、本実施形態によれば、切削インサート30の貫通孔500に螺子50を挿し込んでボディ20の第1ネジ穴611または第2ネジ穴612にねじ込むことにより、ボディ20のインサート取付座600へ切削インサート30を容易に装着させることができる。また、切削インサート30の向きを変えてボディ20のインサート取付座600へ装着させることにより、複数の切れ刃のうちのいずれかを選択して用いることができる。
【0079】
しかも、ボディ20のインサート取付座600を構成する第1取付面601及び第2取付面602に第1ネジ穴611及び第2ネジ穴612が形成されているので、これらの第1取付面601及び第2取付面602の第1ネジ穴611及び第2ネジ穴612のいずれかを選択して切削インサート30を固定するための螺子50をねじ込んで固定できる。これにより、例えば、切削インサート30を、その向きを変えてボディ20に固定できる。
【0080】
また、切削インサート30のボディ20への固定用の螺子50を挿し込むための貫通孔500の開口部501、502が、切削インサート30における第1側面211、212に隣接する第2側面221、222との稜線部分Rにかかることなく第1側面211、212に開口しているので、開口部501、502を有することによる切削インサート30のコーナ部の肉厚低下による切れ刃の強度低下を抑えることができる。これにより、十分な強度の切れ刃によって良好な切削が可能である。
【0081】
また、切削インサート30の貫通孔500が、開口部501、502が形成された第1側面211、212に対して垂直に形成されているので、螺子50による締結力をバランスよく付与することができ、ボディ20に対して切削インサート30を強固に固定できる。
【0082】
さらに、切削インサート30が、第1側面211、212及び第2側面221、222に凹部511、512、521、522を有し、これらの凹部511、512、521、522のいずれかにボディ20のインサート取付座600の第1取付面601に設けられた凸部621が係合する。したがって、ボディ20に切削インサート30を取り付ける際の切削インサート30のボディ20からの重力による脱落を抑制できる。これにより、切削インサート30のボディ20への固定作業性を向上できる。
【0083】
なお、切削インサート30の凹部511、512、521、522に係合する凸部は、ホルダ20の第2取付面602に設けてもよい。また、切削インサート30の第1端面110及び第2端面120に凹部を設け、第3取付面603に凸部を設けて係合させてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、ホルダ20の凸部621が係合する凹部511、512、521、522を切削インサート30に設けたが、切削インサート30に凸部を設け、この凸部が係合する凹部をホルダ20に設けてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 切削工具
20 ボディ
30 切削インサート
50 螺子
110 第1端面(端面)
111,112,113,114 辺
120 第2端面(端面)
121,122,123,124 辺
211,212 第1側面(側面)
221,222 第2側面(側面)
311,312 第1切れ刃(切れ刃)
321,322 第2切れ刃(切れ刃)
500 貫通孔
501,502 開口部
511,512,521,522 凹部
600 インサート取付座
601 第1取付面(取付面)
602 第2取付面(取付面)
603 第3取付面(取付面)
611 第1ネジ穴(ネジ穴)
612 第2ネジ穴(ネジ穴)
621 凸部
R 稜線部分
【要約】
【課題】計4つの切れ刃を切り換えて使用可能としながらも、厚さを抑制し、容易に着脱でき、十分な強度が確保された切削インサート、ボディ及び切削工具を提供する。
【解決手段】ボディ20のインサート取付座600に装着される切削インサート30であって、互いに対向する平行四辺形の一対の第1端面110及び第2端面120と、第1端面110及び第2端面120を区画する辺に沿って形成された切れ刃311、312、321、322と、第1端面110と第2端面120との間に設けられた4つの第1側面211、212及び第2側面221、222と、互いに対向する第1側面211、212で開口された貫通孔500と、を有し、貫通孔500の開口部501、502は、互いに隣接する第1側面211、212と第2側面221、222との間の稜線部分Rにかかることなく第1側面211、212で開口している。
【選択図】
図3A