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特許7416313蓄電デバイス包装材用接着剤、蓄電デバイス包装材、蓄電デバイス用容器及び蓄電デバイス
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  • 特許-蓄電デバイス包装材用接着剤、蓄電デバイス包装材、蓄電デバイス用容器及び蓄電デバイス 図1
  • 特許-蓄電デバイス包装材用接着剤、蓄電デバイス包装材、蓄電デバイス用容器及び蓄電デバイス 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】蓄電デバイス包装材用接着剤、蓄電デバイス包装材、蓄電デバイス用容器及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/105 20210101AFI20240110BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20240110BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20240110BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20240110BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20240110BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20240110BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M50/121
H01M50/129
H01G11/80
C09J175/06
C09J175/08
C09J163/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023087150
(22)【出願日】2023-05-26
【審査請求日】2023-10-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】秋山 崇文
(72)【発明者】
【氏名】廣嶋 努
(72)【発明者】
【氏名】花木 寛
(72)【発明者】
【氏名】木村 幸雄
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-187385(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021132(WO,A1)
【文献】特開2005-63685(JP,A)
【文献】特開2002-187233(JP,A)
【文献】特開2019-188658(JP,A)
【文献】特開平6-199987(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0331451(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10
H01G 11/80
C09J 175/06
C09J 175/08
C09J 163/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)とを含有する蓄電デバイス包装材用接着剤であって、
前記ポリオール(B)が、ポリエステルポリオール(b1)を含み、
前記ポリオール(B)を、ポリイソシアネート(A)の質量を基準として20~60質量%含み、
下記一般式(1)で示される部分構造を、接着剤の固形分質量を基準として0.5~12.0質量%含む蓄電デバイス包装材用接着剤。
一般式(1)
【化1】
[一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、nは2~20の整数を表す。]
【請求項2】
前記ポリイソシアネート(A)が、ポリイソシアネートと、ポリエステルポリオール(a2)を含むポリオールと、の反応生成物を含む、請求項1に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート(A)が、芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(a1)を含むポリイソシアネートと、ポリエステルポリオール(a2)を含むポリオールと、の反応生成物を含む、請求項1に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項4】
前記ポリエステルポリオール(a2)の構成成分である多価アルコールが、多価アルコール100モル%中、一般式(1)で示される部分構造を有する多価アルコールを5~30モル%含む、請求項2又は3に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項5】
前記ポリオール(B)が、さらに水酸基含有エポキシ樹脂(b2)を、前記ポリオール(B)の質量を基準として5~50質量%の範囲で含む、請求項1~3いずれか1項に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項6】
前記水酸基含有エポキシ樹脂(b2)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である、請求項5に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項7】
少なくとも、外層側樹脂フィルム層、外層側接着剤層、金属箔層、内層側接着剤層及びヒートシール層が順次積層されている構成を備えた蓄電デバイス包装材であって、
前記外層側接着剤層が、請求項1~3いずれか1項に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤の硬化物である、蓄電デバイス包装材。
【請求項8】
請求項7に記載の蓄電デバイス包装材から形成されてなる蓄電デバイス用容器であって、外層側樹脂フィルム層が凸面を構成し、ヒートシール層が凹面を構成している、蓄電デバイス用容器。
【請求項9】
請求項8に記載の蓄電デバイス用容器を備えてなる蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池等の蓄電デバイス用容器を形成するための蓄電デバイス用包装材用の接着剤に関し、外観が良好であり、且つ優れた接着強度と成型性とを有する蓄電デバイス包装材用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、携帯型パソコン等の電子機器の急速な成長により、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等の二次電池や電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタ等の蓄電デバイスの需要が増大してきた。これらの中でも、エネルギー密度の高さや軽量さから、小型のリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池の外装体としては、従来、金属製缶が用いられてきたが、軽量化や生産性の観点よりプラスチックフィルムや金属箔などを積層した包装材が主流となりつつある。
【0003】
このような蓄電デバイス用包装材の分野において、例えば特許文献1には、分子構造内に3官能以上のイソシアネート基を持つ芳香族イソシアネートとポリエステルポリオールとの化合物であるポリオール変性ポリイソシアネートと、ポリエステルポリオールとを含む電池包材用ラミネート接着剤組成物が、接着性、耐熱性に優れ、かつ養生期間を短縮できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-110086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車載や家庭蓄電など用途が拡大すると共に、二次電池の大容量化が求められており、成型性の良さが蓄電デバイス用包装材には求められるようになっている。その一方で、車載用途では更なる軽量化が求められており、接着剤の塗布量を減らしても、包装材の各プラスチックフィルムや金属箔等の層間の接着強度が成型加工、長期耐久試験後においても維持され、外観に異常が無い包装材が求められている。また、接着剤塗布量の減少に伴い、養生期間をさらに短縮し、生産性を向上させることも望まれている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された接着剤は一般式(1)で示される部分構造を含んでいないため、速やかなウレタン化反応が進行しない。そのため、接着剤の塗布量を減らし、さらに養生期間を短縮するといった、近年要求されている厳しい使用環境においては、接着性の発現までに時間を要し、成型加工後の接着強度、及び、長期耐久試験後の接着強度が低下するという課題がある。
【0007】
したがって本発明の目的は、接着剤の塗布量が少なく、さらに養生時間を短縮した場合であっても、高い接着性と柔軟性とを発現し、優れた成型性と高温高湿の長期耐久性とを両立できる蓄電デバイス包装材用接着剤、並びに、該接着剤を使用した、成型性及び長期耐久性に優れる蓄電デバイス包装材、蓄電デバイス用容器、蓄電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す実施形態により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
<1>すなわち本発明は、ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)とを含有する蓄電デバイス包装材用接着剤であって、前記ポリオール(B)が、ポリエステルポリオール(b1)を含み、前記ポリオール(B)を、ポリイソシアネート(A)の質量を基準として20~60質量%含み、下記一般式(1)で示される部分構造を、接着剤の固形分質量を基準として0.5~12.0質量%含む蓄電デバイス包装材用接着剤に関する。
一般式(1)
【化1】
[一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、nは2~20の整数を表す。]
【0010】
<2>本発明は、前記ポリイソシアネート(A)が、ポリイソシアネートと、ポリエステルポリオール(a2)を含むポリオールと、の反応生成物を含む、<1>に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤に関する。
【0011】
<3>本発明は、前記ポリイソシアネート(A)が、芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(a1)を含むポリイソシアネートと、ポリエステルポリオール(a2)を含むポリオールと、の反応生成物を含む、<1>又は<2>に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤に関する。
【0012】
<4>本発明は、前記ポリエステルポリオール(a2)の構成成分である多価アルコールが、多価アルコール100モル%中、一般式(1)で示される部分構造を有する多価アルコールを5~30モル%含む、<2>又は<3>に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤に関する。
【0013】
<5>本発明は、前記ポリオール(B)が、さらに水酸基含有エポキシ樹脂(b2)を、前記ポリオール(B)の質量を基準として5~50質量%の範囲で含む、<1>~<3>いずれか1項に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤に関する。
【0014】
<6>本発明は、前記水酸基含有エポキシ樹脂(b2)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である、<5>に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤に関する。
【0015】
<7>本発明は、少なくとも、外層側樹脂フィルム層、外層側接着剤層、金属箔層、内層側接着剤層及びヒートシール層が順次積層されている構成を備えた蓄電デバイス包装材であって、前記外層側接着剤層が、<1>~<6>いずれか1項に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤の硬化物である、蓄電デバイス包装材に関する。
【0016】
<8>本発明は、<7>に記載の蓄電デバイス包装材から形成されてなる蓄電デバイス用容器であって、外層側樹脂フィルム層が凸面を構成し、ヒートシール層が凹面を構成している、蓄電デバイス用容器に関する。
【0017】
<9>本発明は、<8>に記載の蓄電デバイス用容器を備えてなる蓄電デバイスに関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、接着剤の塗布量が少なく、さらに養生時間を短縮した場合であっても、高い接着性と柔軟性とを発現し、優れた成型性と高温高湿の長期耐久性とを両立できる蓄電デバイス包装材用接着剤、並びに、該接着剤を使用した、成型性及び長期耐久性に優れる蓄電デバイス包装材、蓄電デバイス用容器、蓄電デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の蓄電デバイス用包装材の模式的断面図である。
図2】本発明の蓄電デバイス用容器の一態様(トレイ状)の模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<蓄電デバイス包装材用接着剤>
本発明の蓄電デバイス包装材用接着剤(以下、接着剤ともいう)は、ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)とを含有する接着剤であって、ポリオール(B)が、ポリエステルポリオール(b1)を含み、ポリオール(B)を、ポリイソシアネート(A)の質量を基準として20~60質量%含み、上記一般式(1)で示される部分構造を、接着剤の固形分質量を基準として0.5~12.0質量%含むことを特徴としている。
【0021】
まず、上記一般式(1)で示す親水性の高い部分構造を0.5~12.0質量%含むことで、水との親和性が高くなり、ポリイソシアネート(A)と水との反応が促進される。この反応により、凝集力の高いウレア結合が形成され、養生中に自己架橋反応が進行し凝集力が向上することから、少ない塗布量、短い養生時間でも高い接着性を発現することができる。さらに、上記部分構造は柔軟な骨格であるため、このような柔軟な部分構造を所定量有することで、優れた成型性を発現することができる。部分構造の含有量は、好ましくは、5.0~10.0質量%である。5.0質量%以上であると、短い養生時間でも硬化が進行やすく、10質量%以下であると耐湿熱性に優れる。
一般式(1)の部分構造は、ポリイソシアネート(A)及びポリオール(B)の少なくとも一方に含まれていればよく、双方に含まれていてもよい。ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)との相溶性が向上し、さらに外観に優れるという観点から、ポリイソシアネート(A)及びポリオール(B)の双方に一般式(1)の部分構造を含むことが好ましい。
一般式(1)中のRは、好ましくは水素原子である。Rが水素原子であると、水との親和性がより高まり、養生期間の短縮化の観点で好ましいだけでなく、接着剤層の凝集力が高まり、接着性及び成型性が向上する。
【0022】
また本発明の接着剤は、ポリエステルポリオール(b1)を含むポリオール(B)を、ポリイソシアネート(A)の質量を基準として20~60質量%含むことが重要であり、より好ましくは、25~45質量%の範囲である。20質量%未満であると硬化膜が過多に剛直となり、基材に対する密着性と追随性が不足し、接着強度と成型性とを両立できない。60質量%を超えると、接着剤の凝集力が低下し、さらに接着剤中の水酸基量が増加しイソシアネート基が減少するため、基材との親和性が低下し、接着強度及び耐湿熱性が不足する。また、ポリオール(B)がポリエステルポリオール(b1)を含むことで、基材との密着性が向上し、塗布量が少なく、養生期間が短い場合であっても、高い接着性と成型性とを発揮することができる
【0023】
すなわち、本発明の蓄電デバイス包装材用接着剤は、ポリエステルポリオールを含むポリオールの量が、ポリイソシアネートに対して20~60質量%である点、及び、一般式(1)で示される部分構造を0.5~12.0質量%含む点、に基づく効果が相乗的にはたらき、塗布量が少なく、さらに養生期間が短い場合であっても、高い凝集力、基材追従性、柔軟性を発現し、優れた接着強度、成型性、耐湿熱性を達成することができる。
【0024】
<ポリイソシアネート(A)>
ポリイソシアネート(A)は、ポリオール(B)中の水酸基と架橋反応し、接着剤層の分子量を高め、エネルギー弾性を発現する内部凝集力を向上させる役割を担う。また、ポリイソシアネート(A)中のイソシアネート基は、水と反応し凝集力の高いウレア結合を形成可能であることから、養生中に自己架橋反応させることで接着剤層の凝集力を高めることができる。このように、ポリイソシアネート(A)を用いることにより、強固な接着剤層を形成することが可能となり、接着力を向上することが可能となる。
【0025】
ポリイソシアネート(A)としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、前記ポリイソシアネートから誘導される各種誘導体が挙げられる。
【0026】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-プチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートが挙げられる。
【0027】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0028】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4”-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、4,4’-ジフェニルジメチルメタン-2,2’-5,5’-テトライソシアネ-トが挙げられる。
【0029】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω、ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物が挙げられる。
【0030】
前記ポリイソシアネートから誘導される誘導体としては、例えば、前記ポリイソシアネートと、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロ-ル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の分子量200未満の低分子ポリオール若しくはひまし油等との付加体(アダクト体);前記ジイソシアネートの三量体(トリマー、ヌレート体ともいう);ビウレット体;アロファネート体;炭酸ガスと前記ジイソシアネートとから得られる2,4,6-オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート;ポリイソシアネートとポリオールとを、イソシアネート基が過剰である条件で反応させてなるポリウレタンポリイソシアネート;が挙げられる。
【0031】
上記ポリイソシアネートと反応させるポリオールとしては、従来公知のポリオールを用いることができる。このようなポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオールを用いることができる。
【0032】
(ポリエステルウレタンポリイソシアネート)
ポリイソシアネート(A)は、優れた高温耐久性、及び高い凝集力と加工性を両立できる観点から、好ましくは、ポリイソシアネートと、ポリエステルポリオール(a2)を含むポリオールと、の反応生成物であるポリエステルウレタンポリイソシアネートを含むものである。また、該ポリエステルウレタンポリイソシアネートを形成するためのポリイソシアネートとしては、芳香族系のポリイソシアネートが好適に用いられ、中でも、トリレンジイソシアネート、MDIのような芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(a1)を含むものが、特に好適に用いられる。
【0033】
(芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(a1))
芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(a1)としては、芳香族ジイソシアネートモノマーを多価アルコールに付加したアダクト体が挙げられる。
上記ジイソシアネートモノマーとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートが挙げられ、上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロ-ル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の分子量200未満の低分子ポリオール、ひまし油が挙げられる。
このような芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(a1)としては、例えば、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパン及びジエチレングリコールとのアダクト体、4,4’-ジフェニルジイソシアネートとトリメチロールプロパン及びジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコールのアダクト体のような化合物が好適に用いられる。
すなわち、上記ポリエステルウレタンポリイソシアネートとして好ましくは、芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(a1)を含むポリイソシアネートと、ポリエステルポリオール(a2)を含むポリオールとを反応させてなるポリイソシアネートである。このようなポリエステルポリオールに由来するエステル構造と、ウレタン構造とを備えることで、柔軟性と凝集力を兼ね備えることができ、優れた接着性能を発揮することができる。
【0034】
上記ポリエステルウレタンポリイソシアネートを形成するためのポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(a1)以外のその他ポリイソシアネートを含有してもよく、このようなその他ポリイソシアネートとしては、上述する<ポリイソシアネート(A)>の項に記載した、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、前記ポリイソシアネートから誘導される各種誘導体等が挙げられる。
【0035】
(ポリエステルポリオール(a2))
本発明において、ポリエステルポリオール(a2)は、以下に限定されるものではないが、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを反応させて得られるポリエステルポリオール;或いは、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;が挙げられる。
【0036】
上記多塩基酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸等の芳香環を有する二塩基酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の脂肪族の二塩基酸;若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物が挙げられる。
【0037】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール等のジオール類;若しくはそれらの混合物が挙げられる。
上記多塩基酸及び多価アルコールは、それぞれ1種を単独で使用してもよいが、2種以上を併用することが好ましい。
【0038】
上記ポリエステルポリオール(a2)の構成成分である多価アルコールは、多価アルコール100モル%中、下記一般式(1)で示される部分構造を有する多価アルコールを5~30モル%含むことが好ましい。5モル%以上であると、水との親和性が高まり、養生時間の短縮効果が発現しやすい。30モル%以下であると、ポリイソシアネート(A)が柔軟になり過ぎず、高温での接着性に優れる。
【0039】
一般式(1)
【化2】
[一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、nは2~20の整数を表す。]
【0040】
上記部分構造を有する多価アルコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールが挙げられる。また、上記部分構造を有する多価アルコールは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリオキシアルキレングリコールであってもよい。反応性や適度な親水性の観点から、オキシエチレン構造を有するものが好ましい。また、多価アルコールと他原料との相溶性の観点から、ジエチレングリコールが好ましい。
【0041】
ポリエステルポリオール(a2)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000~30,000である。重量平均分子量が5,000以上であると、基材との接着性がより向上し加工性に優れる。重量平均分子量が30,000以下であると、ポリエステルポリオール(a2)末端の水酸基濃度が過度に低くなることを容易に防ぐことができ、3官能以上の芳香族ポリイソシアネート(a1)と反応させてポリイソシアネート(A)を得る際に、反応の時間の長期化を容易に防ぐことができる。
【0042】
ポリエステルポリオール(a2)の水酸基価(OHV)は、好ましくは2~35mgKOH/g、より好ましくは10~20mgKOH/gである。水酸基は3官能以上の芳香族ポリイソシアネート(a1)との反応に用いられ、反応が進行することで、接着剤が高分子量化し、包装材としての耐熱性を高めることができる。上記水酸基価は、JIS K 1557-1に準拠した方法で求めることができる。
【0043】
ポリエステルポリオール(a2)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-20~5℃、より好ましくは-10~0℃の範囲である。上記範囲内とすることで、接着剤の凝集力を制御することが容易になり、被接着基材及び要求性能等に応じた適正な凝集力とすることができる。
【0044】
3官能以上の芳香族ポリイソシアネート(a1)と、ポリエステルポリオール(a2)とをウレタン化する反応温度は、好ましくは、50~180℃、好ましくは、60~100℃である。50~180℃であると、ウレタン化反応が効率的に進行するため好ましい。
【0045】
ポリイソシアネート(A)中に含まれるNCO%は、固形分換算で1.0~8.0質量%が好ましく、より好ましくは4.0~6.0質量%である。1.0質量%以上であると、硬化後のウレタン結合量が十分となり凝集力が高まり、接着強度が向上する。8.0質量%以下であると、養生に要する時間を短縮でき、発泡等による外観不良を抑制できる。
【0046】
<ポリオール(B)>
本発明に用いるポリオール(B)は、ポリエステルポリオール(b1)を含むことを特徴とする。ポリエステルポリオール(b1)を含むことで、基材との密着性が向上し、優れた接着強度と成型性を発揮することができる。また、一般式(1)の部分構造を導入しやすいという観点からも、ポリエステルポリオール(b1)が好適である。
【0047】
(ポリエステルポリオール(b1))
ポリエステルポリオール(b1)としては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを反応させて得られるポリエステルポリオール;或いは、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;が挙げられる。このようなポリエステルポリオール(b1)としては、上述する<ポリイソシアネート(A)>の(ポリエステルポリオール(a2))の項に記載のものを援用できる。
また、ポリエステルポリオール(b1)の構成成分である多価アルコールは、ポリエステルポリオール(a2)と同様に、構成成分である多価アルコール中に、一般式(1)で示される部分構造を有する多価アルコールを含有してもよい。部分構造を有する多価アルコールの含有量は、好ましくは、多価アルコール100モル%中、5~30モル%である。
【0048】
ポリエステルポリオール(b1)の重量平均分子量は、好ましくは5,000~60,000である。重量平均分子量が5,000以上であると、基材との接着性がより向上し加工性に優れる。重量平均分子量が60,000以下であると、ポリイソシアート(A)と混合した際の相溶性に優れ、外観が良好になる。
【0049】
また、ポリエステルポリオール(b1)の水酸基価は、好ましくは5~20mgKOH/gであり、ポリエステルポリオール(b1)のガラス転移温度は、好ましくは-20~50℃、より好ましくは-5~35℃の範囲である。
【0050】
(水酸基含有エポキシ樹脂(b2))
ポリオール(B)は、接着強度及び耐湿熱性の観点において、さらに水酸基含有エポキシ樹脂(b2)を含有することが好ましい。水酸基含有エポキシ樹脂(b2)を併用することで、金属箔等の金属系素材に対する高温接着強度、成型物の耐熱性及び耐熱耐久性が向上する。水酸基含有エポキシ樹脂(b2)の含有量は、ポリオール(B)の質量を基準として、好ましくは5~50質量%である。5質量%以上であると、接着強度及び耐湿熱性に優れる。50質量%以下であると、成型性に優れる。接着強度、成型性及び耐湿熱性のバランスの観点から、より好ましくは10~30質量%である。
【0051】
水酸基含有エポキシ樹脂(b2)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグルシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルが挙げられる。接着性や成型物の耐久性の観点から、好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂である。これら水酸基含有エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0052】
(その他のポリオール)
ポリオール(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、(b1)及び(b2)以外の、公知のポリオールをさらに含有してもよい。このようなポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールが挙げられ、さらにポリイソシアネートと反応させてウレタン結合を導入したものであってもよい。
【0053】
<溶剤>
本発明の接着剤は、接着剤を基材に塗工する際、塗液を適度な粘度に調整するために、乾燥工程において基材への影響がない範囲内で溶剤を含有してもよい。溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル等のエステル系化合物;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系化合物;トルエン、キシレン等の芳香族化合物;ペンタン、ヘキサン等の脂肪族化合物;塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物等が挙げられる。
【0054】
<蓄電デバイス包装材用接着剤の製造>
本発明の接着剤は、少なくとも上記ポリイソシアネート(A)と上記ポリエステルポリオール(b1)を含むポリオール(B)とを含むものであって、ポリオール(B)の含有量がポリイソシアネート(A)の質量を基準として20~60質量%であり、且つ、上記一般式(1)で示される部分構造の含有量が、接着剤の固形分質量を基準として0.5~12.0質量%であればよい。
【0055】
本発明の接着剤において、ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)とを配合する際の、ポリイソシアネート(A)のイソシアネート基数とポリオール(B)の水酸基数との比(NCOモル数/OHモル数)は、好ましくは5~20であり、より好ましくは8~12である。5以上であると、硬化後のウレタン結合量が十分となり凝集力が高まり、成型物の耐熱性及び耐熱耐久性が向上する。20以下であると、養生に要する時間を短縮でき、発泡等による外観不良を抑制できる。
【0056】
本発明の接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他の成分を含有してもよい。このような任意成分は、ポリイソシアネート(A)又はポリオール(B)の一方又は両方に配合してもよく、ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)とを配合する際に添加してもよく、各々、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0057】
(酸化防止剤)
本発明の接着剤は、熱酸化劣化を抑制する為に、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、及びステアリン-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤;2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、及び3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のビスフェノール系酸化防止剤;1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、及び1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H、3H、5H)トリオン、トリフェノール等の高分子型フェノール系酸化防止剤が挙げられる。中でも、テトラフェノール系やトリフェノール系の高分子量型ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく用いられる。
【0058】
(反応促進剤)
本発明の接着剤は、ウレタン化反応を促進するため、さらに反応促進剤を含有することができる。反応促進剤としては、例えば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等の金属系触媒;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の3級アミン;トリエタノールアミンのような反応性3級アミン;が挙げられる。
【0059】
(シランカップリング剤)
本発明の接着剤は、金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させるため、さらにシランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン;が挙げられる。
シランカップリング剤の含有量は、蓄電デバイス包装材用接着剤の固形分100質量部に対し、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.5~3質量部である。上記範囲のシランカップリング剤を添加することによって金属箔に対する接着強度を一層向上できる。
【0060】
(リンの酸素酸又はその誘導体)
本発明の接着剤は、金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させるため、リンの酸素酸又はその誘導体を含有することができる。リンの酸素酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類;メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類;が挙げられる。また、リンの酸素酸の誘導体としては、例えば、上記リンの酸素酸において、遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化されたものが挙げられる。上記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール;フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノール等の芳香族アルコール;が挙げられる。
リンの酸素酸又はその誘導体の含有量は、蓄電デバイス包装材用接着剤の固形分100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.05~5質量部、さらに好ましくは0.05~1質量部である。
【0061】
(レベリング剤又は消泡剤)
本発明の接着剤は、包装材のラミネート外観を向上させるため、さらにレベリング剤又は消泡剤を含有することができる。レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチンが挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物が挙げられる。
【0062】
(添加剤)
本発明の接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等の無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等)、防錆剤、増粘剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤、硬化反応を調整するための触媒が挙げられる。
【0063】
<蓄電デバイス用包装材>
本発明の接着剤は、蓄電デバイス用包装材の接着剤層を形成する接着剤として用いることができる。
中でも、蓄電デバイス用包装材の外層側接着剤層を形成する外層側接着剤として好適に用いることができる。本発明の蓄電デバイス包装材は、少なくとも、外層側樹脂フィルム層、外層側接着剤層、金属箔層、及びヒートシール層が、この順に外側から積層されている構成を備えるものであり、外層側接着剤層が上述する蓄電デバイス包装材用接着剤の硬化物であることを特徴とする。
蓄電デバイス用包装材の製造方法は特に制限されず、公知の方法により製造することができる。
例えば、外層側樹脂フィルム層と金属箔層とを、上述の外層側接着剤層を形成する蓄電デバイス包装材用接着剤を用いて積層して、外層側樹脂フィルム層/外層側接着剤層/金属箔層の構成を備える中間積層体を得た後、内層側接着剤を用いて中間積層体の金属箔層面にヒートシール層を積層して製造することができる(以下、製造方法1)。
あるいは、内層側接着剤を用いて金属箔層とヒートシール層とを積層して、金属箔層/内層側接着剤層/ヒートシール層の構成を備える中間積層体を得た後、蓄電デバイス包装材用接着剤を用いて、中間積層体の金属箔層と外層側樹脂フィルム層とを積層して製造することができる(以下、製造方法2)。
【0064】
製造方法1の場合、蓄電デバイス包装材用接着剤を、外層側樹脂フィルム層又は金属箔層のいずれか一方の基材の片面に塗布し、溶剤を揮散させた後、未硬化の外層側接着剤層に他方の基材を加熱加圧下に重ね合わせ、次いで常温~100℃未満でエージングし、外層側接着剤層を硬化するのが好ましい。エージング温度が100℃未満であると、外層側樹脂フィルム層の熱収縮が起こらないため、成型に影響を及ぼす破断伸度や破断応力の低下や、フィルムカールによる成型生産性の低下が起こらない。
外層側接着剤の乾燥後塗布量は1~15g/m程度であることが好ましい。
製造方法2の場合も同様に、蓄電デバイス包装材用接着剤は、外層側樹脂フィルム層若しくは中間積層体の金属箔層面のいずれかに塗布すればよい。
【0065】
外層側接着剤層の形成方法としては、例えば、コンマコーター、ドライラミネーター、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーターを用いる方法が挙げられる。
【0066】
[外層側樹脂フィルム層]
外層側樹脂フィルム層は特に制限されないが、ポリアミド、ポリエステル及びポリイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の延伸フィルムを用いるのが好ましく、成型時の延伸性及び耐熱性の観点から、より好ましくはポリエステルフィルムである。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートが挙げられる。
外層側樹脂フィルム層は、カーボンブラックや酸化チタン等の顔料により着色されていてもよい。また、外層側樹脂フィルム層の非ラミネート面は、傷つき防止や耐電解液性を目的としてコート剤や、成型時の滑り性付与を目的としたスリップ剤がコーティングされていてもよく、意匠性を目的として印刷インキがコーティングされていてもよい。また、外層側樹脂フィルム層は、2層以上のフィルムがあらかじめ積層された積層フィルムであってもよい。外層側樹脂フィルム層の厚みは特に制限されないが、好ましくは12~100μmである。
【0067】
[金属箔層]
金属箔層は特に制限されないが、ステンレス箔層又はアルミニウム箔層である。金属箔層の厚みは特に制限されないが、好ましくは20~80μmである。また、金属箔層の表面は、リン酸クロメート処理、クロム酸クロメート処理、3価クロム処理、リン酸亜鉛処理、リン酸ジルコニウム処理、酸価ジルコニウム処理、リン酸チタン処理、フッ酸処理、セリウム処理、ハイドロタルサイト処理のような公知の防腐処理が施されていることが好ましい。防腐処理されていることによって、電池の電解液よる金属箔表面の腐食劣化を抑制することができる。更に、防腐処理表面上に、フェノール樹脂、アミド樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、カップリング剤等の公知の有機成分を、防腐処理表面に塗布、又は防腐処理成分と前記有機成分の混合物を塗布して、200℃ほどの高温で金属箔層に焼付処理していることが好ましい。このような有機プライマー処理を施すことによって、金属箔と接着剤をより強固に接着させ、金属箔と接着剤間の浮きを更に抑制することができる。
【0068】
[ヒートシール層]
ヒートシール層は特に制限されず、好ましくは、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変成物及びアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種類の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムである。ヒートシール層の厚みは特に制限されないが、好ましくは20~150μmである。
【0069】
[内層側接着剤層]
内層側接着剤層を形成する接着剤は特に制限されないが、蓄電デバイスの電解液によって金属箔層とヒートシール層との接着強度が低下しないものが好ましく、本発明の蓄電デバイス包装材用接着剤のほか、公知の接着剤を使用することができる。
内層側接着剤層は、例えば、ポリオレフィン樹脂とポリイソシアネートとを組み合わせた接着剤や、ポリオールとポリイソシアネートとを組み合わせた接着剤を、グラビアコーター等を用いて金属箔層に塗布して溶剤を乾燥させ、接着剤層にヒートシール層を加熱加圧下に重ね合わせ、次いで常温若しくは加温下でエージングすることで、形成することができる。
あるいは、酸変性ポリプロピレン等の接着剤をTダイ押出し機で金属箔層上に溶融押出しして接着剤層を形成し、前記接着剤層上にヒートシール層を重ね、金属箔層とヒートシール層とを貼り合せることで内層側接着剤層を形成することができる。
外層側接着剤層及び内層側接着剤層の両方がエージングを必要とする場合には、外層側樹脂フィルム層、未硬化の外層側接着剤層、金属箔層、未硬化の内層側接着剤層及びヒートシール層が、この順に外側から積層されている構成を備えた積層体を得た後に、まとめてエージングを行ってもよい。
【0070】
<蓄電デバイス用容器>
本発明の蓄電デバイス用容器は、本発明の蓄電デバイス用包装材を用い、外層側樹脂フィルム層が凸面を構成し、ヒートシール層が凹面を構成するように成型して得ることができる。なお、本発明でいう「凹面」とは、平たい状態の蓄電デバイス用包装材を成型加工して図2に示すようなトレイ状とした場合に、電解液を内部に収容し得る窪みを有する面という意であり、本発明でいう「凸面」とは、前記窪みを有する面の自背面の意である。
【0071】
<蓄電デバイス>
本発明の蓄電デバイスは、前記蓄電デバイス用容器を使用してなるものであり、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが挙げられる。一般的な蓄電デバイスは、電極を含む電池要素と該電極から延在するリードと収容する容器とを備え、本発明の蓄電デバイスでは、前記蓄電デバイス用容器が前記収納する容器に用いられる。前記収納する容器は、蓄電デバイス用包装材から、ヒートシール層が内側となるように形成され、2つの包装材のヒートシール層同士を対向させて重ね合わせ、重ねられた包装材の周縁部を熱融着して得られてもよいし、1つの包装材を折り返して重ね合わせ、同様に包装材の周縁部を熱融着してもよい。
【実施例
【0072】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断りの無い限り「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0073】
<酸価(AV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(ポリエステルポリオール溶液)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、次式により酸価(mgKOH/g)を求めた。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0074】
<水酸基価(OHV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(ポリエステルポリオールや水酸基含有ウレタン樹脂等)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、次式により水酸基価(mgKOH/g)を求めた。
水酸基価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.05}/S]+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0075】
<NCO含有率(質量%)の測定方法>
200mLの三角フラスコに試料約1gを量り採り、これに0.5Nジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液10mL、及びトルエン10mLを加えて溶解した。次に、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した後、溶液が淡紅色を呈するまで0.25N塩酸溶液で滴定した。NCO含有率(質量%)は以下の(式3)により求めた。
(式3):NCO(質量%)={(b-a)×4.202×F×0.25}/S
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
F:0.25N塩酸溶液の力価
【0076】
<重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)の測定>
重量平均分子量及び数平均分子量は、ショウデックス(登録商標)(昭和電工(株)製)、カラム:KF-805L、KF-803L、及びKF-802(いずれも商品名、昭和電工(株)製)を用いて、カラムの温度を40℃、溶離液としてTHF、流速を0.2ml/min、検出をRI、試料濃度を0.02質量%として測定した標準ポリスチレン換算の値を用いた。得られた値から分子量分布を算出した。
【0077】
<ガラス転移温度(Tg)>
ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量計)により測定した。具体的には、測定対象化合物を約2mg、アルミニウムパン上で秤量し、該アルミニウムパンをDSC測定ホルダーにセットし、5℃/分の昇温条件にて得られるチャートの吸熱ピークを読み取り、この時のピーク温度をガラス転移温度とした。
【0078】
<<ポリイソシアネート(A)の製造>>
<芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(a1)の合成>
(芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(a1-1))
トリレンジイソシアネート239部を仕込み、室温で撹拌しながら、溶融したトリメチロールプロパン61部を滴下したのちに、60℃で2時間反応を行った。次いで、酢酸エチルにて希釈し、不揮発分を50%に調整し、取り出した。得られた芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(a1-1)の固形換算のNCO%は19.0%、一般式(1)の部分構造の量は0%であった。
【0079】
(芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(a1-2))
トリレンジイソシアネート238部を仕込み、室温で撹拌しながら、溶融したトリメチロールプロパン46部及びジエチレングリコール15部の混合液を滴下したのちに、60℃で2時間反応を行った。次いで、酢酸エチルにて希釈し、不揮発分を50%に調整し、取り出した。得られた芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(a1-2)の固形換算のNCO%は19.4%、一般式(1)の部分構造の量は4.4%であった。
【0080】
(芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(a1-3))
4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート244部を仕込み、40℃で撹拌しながら、溶融したトリメチロールプロパン32部及びジプロピレングリコール15部の混合液を滴下したのちに、60℃で2時間反応を行った。次いで、酢酸エチルにて希釈し、不揮発分を50%に調整し、取り出した。得られた芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(a1-3)の固形換算のNCO%は14.0%、一般式(1)の部分構造の量は5.9%であった。
【0081】
<ポリエステルポリオール(a2)の合成>
(ポリエステルポリオール(a2-1))
イソフタル酸166部、テレフタル酸166部、アジピン酸293部、エチレングリコール87部、ネオペンチルグリコール146部、1,6-ヘキサンジオール142部を仕込み、170~230℃で8時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.13部を添加し徐々に減圧し、1.3~2.6hPa、230~250℃で3時間エステル交換反応を行い、数平均分子量9,620、重量平均分子量190,700、分子量分布2.05、水酸基価10.1mgKOH/g、ガラス転移温度-1.2℃のポリエステルポリオール(a2-1)を得た。
多塩基酸と多価アルコールとの合計を200モル%とすると、得られたポリエステルポリオール(a2-1)の組成は、表1-2に示すように、イソフタル酸:テレフタル酸:アジピン酸:エチレングリコール:ネオペンチルグリコール:1,6-ヘキサンジオール=30:30:40:35:35:30(mol%)となる。
【0082】
(ポリエステルポリオール(a2-2)~(a2-14))
多塩基酸と多価アルコールとの合計を200モル%とした場合の各成分のモル%が表1-2に示す組成になるように、配合量を変更した以外は、ポリエステルポリオール(a2-1)と同様にして、多塩基酸と多価アルコールとを反応させ、ポリエステルポリオール(a2-2)~(a2-14)を得た。
【0083】
得られたポリエステルポリオール(a2)について、組成比(質量%)及び組成比(モル%)を表1-1及び表1-2(以下、表1と略記する)に示す。
【0084】
【表1-1】
【0085】
【表1-2】
【0086】
表1及び後述する表3中の略号は以下の通りである。
PA:無水フタル酸
IPA:イソフタル酸
TPA:テレフタル酸
AdA:アジピン酸
SeA:セバシン酸
AzA:アゼライン酸
EG:エチレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
1,6-HD:1,6-ヘキサンジオール
MPO:2-メチル-1,3-プロパンジオール
DEG:ジエチレングリコール
TEG:トリエチレングリコール
PEG:ポリエチレングリコール(水酸基価281mgKOH/g、分子量400)
PPG:ポリプロピレングリコール(水酸基価280mgKOH/g、分子量400)
【0087】
<ポリイソシアネート(A)の合成>
(ポリイソシアネート(A-1))
ポリエステルポリオール(a2-1)100部、1,4-ブタンジオール2.5部、酢酸エチル102.5部を4口フラスコに仕込み、100℃に昇温し、溶液が均一になるまで撹拌した。これに、芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(a1-1)を固形換算で65部添加し、80℃で4時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチルで不揮発分を50%に調整し取り出した。得られたポリイソシアネート(A-1)は、固形換算のNCO%が5.6%、一般式(1)で示される部分構造の含有率が0.0質量%であった。
【0088】
(ポリイソシアネート(A-2)~(A-22))
表2に示す配合量に変更した以外は、ポリイソシアネート(A-1)と同様にして、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させ、酢酸エチルで不揮発分50%に調整したポリイソシアネート(A-2)~(A-22)を得た。
【0089】
【表2】
【0090】
表2中の略号は以下の通りである。
1、4-BD:1,4-ブタンジオール
NPG:ネオペンチルグリコール
【0091】
<<ポリオール(B)の製造>>
<ポリエステルポリオール(b1)の合成>
(ポリエステルポリオール(b1-1)~(b1-8))
多塩基酸と多価アルコールとの合計を200モル%とした場合の各成分のモル%が表2-2に示す組成になるように、配合量を変更した以外は、ポリエステルポリオール(a2-1)と同様にして、多塩基酸と多価アルコールとを反応させ、ポリエステルポリオール(b1-1)~(b1-8)を得た。
【0092】
得られたポリエステルポリオール(b1)について、組成比(質量%)及び組成比(モル%)を表3-1及び表3-2に示す。
【0093】
【表3-1】
【0094】
【表3-2】
【0095】
<ポリオール(B)の調整>
(ポリオール(B-1)~(B-16))
表4に示す配合量で、ポリエステルポリオール(b1)、水酸基含有エポキシ樹脂(b2)、及び溶剤として酢酸エチルを混合溶解し、不揮発分50%となるよう調整し、ポリオール(B-1)~(B-16)を得た。
【0096】
【表4】
【0097】
表4中の略号は以下の通りである。
NPEL-134:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(NAN YA PLASTICS社製、エポキシ当量230~270)
jER152:フェノールノボラック型多官能エポキシ樹脂(三菱化学社製、エポキシ当量178)
【0098】
<蓄電デバイス包装材用接着剤の製造>
[実施例1]
ポリイソシアネート(A-1)の不揮発分50%溶液を100部、ポリオール(B-3)の不揮発分50%溶液を36部、添加剤としてグリシドプロピルトリメトキシシラン(Siカップリング剤)を1.0部、触媒としてジブチルチンジラウレート(DBTDL)を0.010部、及び酢酸エチルを固形分濃度30%になるように調整し、10分間撹拌して接着剤を得た。
【0099】
[実施例2~38、比較例1~7]
ポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、Siカップリング、触媒の種類及び配合量を、表5、6に示す内容に変更した以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度30%の接着剤を得た。
【0100】
<蓄電デバイス包装材用接着剤の評価>
得られた接着剤を用いて包装材を製造し、以下の評価を実施した。結果を表5、6に示す。
【0101】
[包装材の製造]
ドライラミネーターを用いて、厚み40μmのアルミニウム箔の一方の面に、外層側接着剤層用として上記得られた接着剤を塗布した。溶剤を揮散させた後、厚み30μmの延伸ポリアミドフィルムを積層し中間積層体を得た。接着剤の乾燥後塗布量は3g/mとした。次いで、ドライラミネーターを用いて、得られた中間積層体のアルミニウム箔の他方の面に、後述の内層側接着剤層用接着剤を塗布した。溶剤を揮散させた後、厚み30μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層し積層体を得た。接着剤の乾燥後塗布量は4g/mとした。
次いで、40℃60%RH(相対湿度)の条件で2日間及び4日間のエージングを行い、外層側及び内層側の接着剤層を硬化させて、外層側樹脂フィルム層/外層側接着剤層/金属箔層/内層側接着剤層/ヒートシール層の構成を備える包装材を得た。
【0102】
《内層側接着剤層用接着剤》
主剤としてAD-502(商品名、東洋モートン(株)製、ポリエステルポリオール)、硬化剤としてCAT-10L(商品名、東洋モートン(株)製、イソシアネート系硬化剤)を用いて、主剤/硬化剤=100/10(質量比)となるように配合し酢酸エチルで固形分濃度30%に調整したものを、内層側接着剤層用接着剤として用いた。
【0103】
[ラミネート強度]
40℃60%RHで2日間エージングした包装材を、各々200mm×15mmの大きさに切断し、引張り試験機を用いてT型剥離試験を行い、延伸ポリアミドフィルムとアルミニウム箔との間の剥離強度(N/15mm巾)を測定した。測定は、20℃65%RHの環境下にて、荷重速度300mm/分で行い、5個の試験片の平均値により、以下の基準で評価した。
S:剥離強度の平均値が7N以上(非常に良好)
A:剥離強度の平均値が4N以上、7N未満(良好)
B:剥離強度の平均値が2N以上、4N未満(使用可能)
C:剥離強度の平均値が2N未満(使用不可)
【0104】
[成型性]
40℃60%RHで2日間エージングした包装材、及び、同環境下で4日間エージングした包装材を、各々80×80mmの大きさに切断し、延伸ポリアミドフィルムが外側になるようにして、成型高さフリーのストレート金型にて張り出し1段成型を行った。アルミニウム箔の破断や各層間の浮きが発生しない、最大の成型高さを求め、以下の基準で成型性を評価した。
使用した金型のポンチ形状は、一辺30mmの正方形、コーナーRが2mm、ポンチ肩Rが1mmであり、使用した金型のダイス孔形状は、一片34mmの正方形、ダイス孔コーナーRが2mm、ダイス孔肩Rが1mmであり、ポンチとダイス孔とのクリアランスは片側2mmであり、前記クリアランスにより成型高さに応じた傾斜が発生する。
S:最大の成型高さが6mm以上である(非常に良好)
A:最大の成型高さが4mm以上、6mm未満である(良好)
B:最大の成型高さが2mm以上、4mm未満である(使用可能)
C:最大の成型高さが2mm未満である(使用不可)
【0105】
[耐湿熱性]
40℃60%RHで2日間エージングした包装材を、各々80×80mmの大きさに切断し、延伸ポリアミドフィルムが外側になるようにして、成型高さフリーのストレート金型にて成型高さ3mmにて張り出し1段成型を行い、成型物を得た。
次いで、成型物を85℃85%RH雰囲気下の恒温恒湿槽に入れ168時間静置した後、恒温恒湿槽から取り出し、浮きが発生していないかを目視で確認し、以下の基準で評価した。
使用した金型のポンチ形状は、一辺30mmの正方形、コーナーRが2mm、ポンチ肩Rが1mmであり、使用した金型のダイス孔形状は、一片34mmの正方形、ダイス孔コーナーRが2mm、ダイス孔肩Rが1mmである。
S:浮きの発生なし(非常に良好)
A:4辺のうち1辺で浮きが発生(良好)
B:4辺のうち2辺で浮きが発生(使用可能)
C:4辺のうち3辺以上で浮きが発生(使用不可)
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
【0108】
表5、6によれば、ポリオール(B)が、ポリエステルポリオール(b1)を含み、且つ、ポリイソシアネート(A)に対して20~60質量%であり、さらに、一般式(1)で示される部分構造を0.5~12.0質量%含む本発明の接着剤は、接着剤の塗布量が3g/mと少なく、さらに養生時間を2日間に短縮した場合であっても、高い接着性と柔軟性とを発現し、優れた成型性と高温高湿の長期耐久性とを両立することができた。
特に、水酸基含有エポキシ樹脂(b2)を、ポリオール(B)に対して5~50質量%の範囲で含むものは、ラミネート強度と耐湿熱性に優れていた。
また、水酸基含有エポキシ樹脂(b2)として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いたものは、ラミネート強度と成型性に優れていた。
【0109】
一方、比較例1は、一般式(1)で示される部分構造を有しないため、硬化反応の進行が不十分となり、接着剤の塗布量を減らし、さらに養生期間を2日間に短縮した場合に、ラミネート強度と成型性を満足することができない。
比較例5、6は、特開2018-110086号公報の実施例に相当し、比較例1と同様に一般式(1)で示される部分構造を有しないものである。そのため、接着剤の塗布量を減らし、さらに養生期間を2日間に短縮した場合に、硬化反応の進行が不十分となり、満足な接着性能を発現することができない。
一般式(1)で示される部分構造量が12.0質量%を超える比較例2は、水との親和性が高すぎるため、空気中の水分を巻き込みやすくなり、満足な耐湿熱性を得ることができない。
また、ポリオール(B)量が20%未満である比較例3は、接着剤層が剛直になりすぎるため、接着強度と成型性とを両立できない。ポリオール(B)量が60%を超える比較例4は、接着剤層中のウレタン濃度が低下し、接着剤の凝集力が低下する。また基材との親和性も低下するため、接着強度及び耐湿熱性を満足することができない。
比較例7は、水酸基含有エポキシ樹脂(b2)を含むが、ポリエステルポリオール(b1)を含まないため、接着剤層の柔軟性が低下する、そのため、接着剤の塗布量を減らし、さらに養生期間を2日間に短縮した場合に、成型性と成型物の耐湿熱性とを両立することができない。
【符号の説明】
【0110】
(1):外層側樹脂フィルム層
(2):外層側接着剤層
(3):金属箔層
(4):内層側接着剤層
(5):ヒートシール層
【要約】      (修正有)
【課題】接着剤の塗布量が少なく、さらに養生時間を短縮した場合であっても、高い接着性と柔軟性とを発現し、優れた成型性と高温高湿の長期耐久性とを両立できる蓄電デバイス包装材用接着剤、並びに、該接着剤を使用した、成型性及び長期耐久性に優れる蓄電デバイス包装材、蓄電デバイス用容器、蓄電デバイスの提供。
【解決手段】ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)とを含有し、ポリオール(B)が、ポリエステルポリオール(b1)を含み、ポリオール(B)を、ポリイソシアネート(A)の質量を基準として20~60質量%含み、下記一般式(1)で示される部分構造を、接着剤の固形分質量を基準として0.5~12.0質量%含む蓄電デバイス包装材用接着剤によって解決される。
(-C-CR-O-)(1)
[式中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、nは2~20の整数を表す。]
【選択図】図1
図1
図2