(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ヘッドユニット及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B41J2/01 307
(21)【出願番号】P 2023500789
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2022005275
(87)【国際公開番号】W WO2022176759
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2021026659
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陶 智博
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-121515(JP,A)
【文献】特開2015-142980(JP,A)
【文献】特開2017-105129(JP,A)
【文献】特開2008-296518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上にインクを吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録媒体の搬送方向と直交する幅方向に延びて前記記録ヘッドに隣接する側壁部を有し、前記記録ヘッドの前記幅方向の一端部に配置されたヘッド回転軸を中心として前記記録ヘッドが回転可能に接続されるフレームと、
前記記録ヘッドの前記幅方向の前記ヘッド回転軸とは反対側の他端部側に配置され、前記ヘッド回転軸を中心として前記記録ヘッドを回転させる角度調整部と、
を備え、
前記角度調整部は、
前記側壁部の前記記録ヘッドとの対向面に設けられ、前記記録ヘッドに対して接離方向に往復移動可能なフレーム調整ねじと、
前記記録ヘッドの前記側壁部との対向面に設けられ、前記側壁部に対して接離方向に往復移動可能なヘッド調整ねじと、
を備え、
前記フレーム調整ねじと、前記ヘッド調整ねじとは、互いに対向する方向の先端部同士が接触することを特徴とするヘッドユニット。
【請求項2】
前記記録媒体の前記幅方向に並置された複数の前記記録ヘッドを備えることを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項3】
前記複数の記録ヘッドは、前記側壁部に対して前記記録媒体の前記搬送方向の上流側及び下流側それぞれに配置されることを特徴とする請求項2に記載のヘッドユニット。
【請求項4】
請求項1に記載のヘッドユニットを備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドユニット及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置に搭載されるヘッドユニットは、用紙等の記録媒体上にインクを吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドを備え、記録媒体に画像の記録を行う。このようなヘッドユニットの一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1で開示された従来のインクジェット記録装置のヘッドアッセンブリ(ヘッドユニット)は、3つの記録ヘッドを備える。記録ヘッドは、連結部材を用いて、ヘッドアッセンブリのベース部材に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、ユーザーがインクジェット記録装置を使用しているときに不具合等が生じ、記録ヘッドの交換が必要となった場合に、記録ヘッドのみを交換することが困難であり、ヘッドアッセンブリ全体を交換しなければならないことに課題があった。これにより、交換する必要が無い部材も交換しなければならず、高コスト化が懸念された。また、仮に、記録ヘッドのみの交換を可能とした場合でも、ユーザーのもとでは、既存のベース部材に対する新たな記録ヘッドのアライメント調整が実施できなかった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、容易に記録ヘッドを交換することが可能であり、低コスト化が図られたヘッドユニット及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のヘッドユニットは、記録ヘッドと、フレームと、角度調整部と、を備える。前記記録ヘッドは、記録媒体上にインクを吐出する複数のノズルを有する。前記フレームは、前記記録媒体の搬送方向と直交する幅方向に延びて前記記録ヘッドに隣接する側壁部を有し、前記記録ヘッドの前記幅方向の一端部に配置されたヘッド回転軸を中心として前記記録ヘッドが回転可能に接続される。前記角度調整部は、前記記録ヘッドの前記幅方向の前記ヘッド回転軸とは反対側の他端部側に配置され、前記ヘッド回転軸を中心として前記記録ヘッドを回転させる。前記角度調整部は、フレーム調整ねじと、ヘッド調整ねじと、を備える。前記フレーム調整ねじは、前記側壁部の前記記録ヘッドとの対向面に設けられ、前記記録ヘッドに対して接離方向に往復移動可能である。前記ヘッド調整ねじは、前記記録ヘッドの前記側壁部との対向面に設けられ、前記側壁部に対して接離方向に往復移動可能である。前記フレーム調整ねじと、前記ヘッド調整ねじとは、互いに対向する方向の先端部同士が接触する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成によれば、ヘッドユニットの組み立て時に、記録ヘッドにおいてヘッド調整ねじが調整された後、記録ヘッドがフレームに装着され、フレームにおいてフレーム調整ねじが調整される。これにより、容易に記録ヘッドのみを交換できる。そして、交換する必要が無い部材の交換も不要であり、低コスト化を実現することが可能である。さらに、記録ヘッドを交換する場合、フレーム調整ねじが調整済のフレームに対して新たな記録ヘッドを装着するので、ユーザーのもとでも容易にアライメント調整を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態のインクジェット記録装置の概略断面正面図である。
【
図2】
図1のインクジェット記録装置の記録部の平面図である。
【
図3】
図2の記録部のヘッドユニットの水平断面図である。
【
図4】
図3のヘッドユニットの角度調整部周辺の部分水平断面図である。
【
図5】
図3のヘッドユニットの側壁部の斜視図である。
【
図6】
図3のヘッドユニットの記録ヘッドの斜視図である。
【
図7】
図6の記録ヘッドの角度調整部周辺の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。なお、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
【0011】
図1は、実施形態のインクジェット記録装置1の概略断面図である。
図2は、
図1のインクジェット記録装置1の記録部5の平面図である。インクジェット記録装置1は、例えばインクジェット記録式のプリンターである。インクジェット記録装置1は、
図1及び
図2に示すように、装置本体2と、用紙供給部3と、用紙搬送部4と、記録部5と、乾燥部6と、制御部7と、を備える。
【0012】
用紙供給部3は、複数枚の用紙(記録媒体)Sを収容し、記録時に用紙Sを1枚ずつ分離して送り出す。用紙搬送部4は、用紙供給部3から送り出された用紙Sを記録部5及び乾燥部6へと搬送し、さらに記録、乾燥後の用紙Sを用紙排出部21に排出する。両面記録が行われる場合、用紙搬送部4は、第1面の記録、乾燥後の用紙Sを分岐部43によって反転搬送部44に振り分け、さらに搬送方向を切り替えて表裏を反転させた用紙Sを再度、記録部5及び乾燥部6へと搬送する。
【0013】
用紙搬送部4は、第1ベルト搬送部41及び第2ベルト搬送部42を含む。第1ベルト搬送部41は、無端状に形成された第1搬送ベルト411を有する。第2ベルト搬送部42は、無端状に形成された第2搬送ベルト421を有する。第1ベルト搬送部41及び第2ベルト搬送部42は、第1搬送ベルト411及び第2搬送ベルト421それぞれの上側の外面(上面)に用紙Sを吸着保持して搬送する。第1ベルト搬送部41は、記録部5の下方に配置されて用紙Sを搬送する。第2ベルト搬送部42は、第1ベルト搬送部41に対して用紙搬送方向の下流側に位置し、乾燥部6に配置されて用紙Sを搬送する。
【0014】
記録部5は、第1搬送ベルト411の上面に吸着保持されて搬送される用紙Sに対向し、所定の間隔を設けて第1搬送ベルト411の上方に配置される。記録部5は、
図2に示すように、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色それぞれに対応したヘッドユニット51B、51C、51M、51Yを保持する。ヘッドユニット51B、51C、51M、51Yは、長手方向が用紙搬送方向Dcと直交する用紙幅方向Dwと平行になるように用紙搬送方向Dcに沿って並置される。なお、4つのヘッドユニット51B、51C、51M、51Yは基本的な構成が同じであるので、以下の説明では、特に限定する必要がある場合を除き、各色を表す「B」、「C」、「M」、「Y」の識別記号は省略することがある。
【0015】
各色のヘッドユニット51それぞれは、ライン型インクジェット方式の記録ヘッド52を有する。記録ヘッド52は、各色のヘッドユニット51それぞれにおいて、用紙幅方向Dwに沿って複数(例えば3つ(52a、52b、52c))が千鳥状に配列される。
【0016】
記録ヘッド52は、その底部に複数のインク吐出ノズル521を有する。複数のインク吐出ノズル521は、用紙幅方向Dwに沿って並べて配置され、用紙S上の記録領域の全域にわたってインクを吐出することができる。すなわち、記録ヘッド52は、用紙S上にインクを吐出する複数のインク吐出ノズル521を有する。記録部5は、第1搬送ベルト411によって搬送される用紙Sに向かって4色のヘッドユニット51B、51C、51M、51Yそれぞれの記録ヘッド52から順次インクを吐出し、フルカラー画像またはモノクロ画像を用紙Sに記録する。
【0017】
乾燥部6は、記録部5に対して用紙搬送方向の下流側に配置され、第2ベルト搬送部42が設けられる。記録部5でインク画像が記録された用紙Sは、乾燥部6において第2搬送ベルト421に吸着保持されて搬送される間に、インクが乾燥される。
【0018】
制御部7は、CPU、記憶部、その他の電子回路及び電子部品を含む(いずれも不図示)。CPUは、記憶部に記憶された制御用のプログラムやデータに基づき、インクジェット記録装置1に設けられた各構成要素の動作を制御してインクジェット記録装置1の機能に係る処理を行う。用紙供給部3、用紙搬送部4、記録部5及び乾燥部6それぞれは、制御部7から個別に指令を受け、連動して用紙Sへの記録を行う。記憶部は、例えば不図示のプログラムROM(Read Only Memory)、データROMなどといった不揮発性の記憶装置と、RAM(Random Access Memory)のような揮発性の記憶装置との組み合わせで構成される。
【0019】
続いて、インクジェット記録装置1のヘッドユニット51の構成について、
図2に加えて
図3を用いてさらに説明する。
図3は、
図2の記録部5のヘッドユニット51の水平断面図である。
【0020】
ヘッドユニット51は、記録ヘッド52に加えて、フレーム53と、ヘッド回転軸54と、角度調整部8と、を備える。
【0021】
フレーム53は、3つの記録ヘッド52a、52b、52cを保持する。3つの記録ヘッド52a、52b、52cは、用紙幅方向Dwに沿って千鳥状に配列される。フレーム53は、側壁部531を有する。側壁部531は、上下方向及び用紙幅方向Dwに延びて記録ヘッド52a、52b、52cに隣接する。側壁部531は、用紙搬送方向Dcにおいて2つの記録ヘッド52a、52cと、1つの記録ヘッド52bに挟まれている。側壁部531は、各記録ヘッド52の用紙搬送方向Dcの下流側の側面若しくは上流側の側面と対向する。
【0022】
ヘッド回転軸54は、各記録ヘッド52の長手方向(用紙幅方向Dw)の一端部52rであって、例えば記録部5の背面側の、記録ヘッド52の端部に配置される。ヘッド回転軸54の回転軸線は、第1搬送ベルト411の上面の法線方向であって、上下方向に延びる。
【0023】
3つの記録ヘッド52それぞれは、ヘッド回転軸54を中心として回転可能にフレーム53に接続される。記録ヘッド52は、長手方向(用紙幅方向Dw)の他端部52f側が、ヘッド回転軸54を中心として用紙搬送方向Dcの上流側に移動する回転方向Ra、または下流側に移動する回転方向Rbに回転可能である。
【0024】
角度調整部8は、記録ヘッド52のヘッド回転軸54とは反対側の他端部52f側であって、例えば記録部5の正面側の、記録ヘッド52の端部に配置される。角度調整部8は、ヘッド回転軸54を中心として記録ヘッド52を回転方向Raまたは回転方向Rbに回転させる。これにより、角度調整部8は、ヘッドユニット51のフレーム53に対して記録ヘッド52の角度調整を行うことができ、ヘッドユニット51に対する記録ヘッド52の位置決めを適正に行うことが可能である。
【0025】
続いて、角度調整部8の構成について、
図3に加えて
図4から
図7を用いて説明する。
図4は、
図3のヘッドユニット51の角度調整部8周辺の部分水平断面図である。
図5は、
図3のヘッドユニット51の側壁部531の斜視図である。
図6は、
図3のヘッドユニット51の記録ヘッド52の斜視図である。
図7は、
図6の記録ヘッド52の角度調整部8周辺の部分斜視図である。
【0026】
角度調整部8は、フレーム調整ねじ81と、ヘッド調整ねじ82と、を備える。
【0027】
フレーム調整ねじ81は、側壁部531の、記録ヘッド52との対向面に設けられる。フレーム調整ねじ81は、側壁部531に対して垂直となるように取り付けられて側壁部531を貫通し、ヘッド回転軸54の軸線と交差する方向(用紙搬送方向Dc)に延びる。フレーム調整ねじ81は、例えば端部に六角穴や、すり割りが設けられた止めねじで構成される。フレーム調整ねじ81は、記録ヘッド52に対して接離方向に往復移動可能である。
【0028】
ヘッド調整ねじ82は、記録ヘッド52の、側壁部531との対向面に設けられる。ヘッド調整ねじ82は、記録ヘッド52の側板522に対して垂直となるように取り付けられて側板522を貫通し、ヘッド回転軸54の軸線と交差する方向(用紙搬送方向Dc)に延びる。ヘッド調整ねじ82は、例えば端部に六角穴や、すり割りが設けられた止めねじで構成される。ヘッド調整ねじ82は、側壁部531に対して接離方向に往復移動可能である。
【0029】
フレーム調整ねじ81と、ヘッド調整ねじ82とは、ヘッド回転軸54の軸線と交差する方向(用紙搬送方向Dc)において互いに対向する位置に配置される。すなわち、フレーム調整ねじ81と、ヘッド調整ねじ82とは、ヘッドユニット51の長手方向(用紙幅方向Dw)及び上下方向において互いに対向する位置に配置され、互いの延伸方向(移動方向)が同じである。そして、フレーム調整ねじ81と、ヘッド調整ねじ82とは、互いに対向する方向の先端部同士が接触する。
【0030】
上記の構成によれば、ヘッドユニット51の組み立て時に、記録ヘッド52においてヘッド調整ねじ82が調整された後、記録ヘッド52がフレーム53に装着され、フレーム53においてフレーム調整ねじ81が調整される。これにより、容易に記録ヘッド52のみを交換できる。そして、交換する必要が無い部材の交換も不要であり、低コスト化を実現することが可能である。さらに、記録ヘッド52を交換する場合、フレーム調整ねじ81が調整済のフレーム53に対して新たな記録ヘッド52を装着するので、ユーザーのもとでも容易にアライメント調整を実施できる。
【0031】
また、ヘッドユニット51は、用紙幅方向Dwに並置された複数(本実施形態では3つ)の記録ヘッド52を備える。この構成によれば、例えば1つの記録ヘッド52を交換する必要が生じた場合に、他の2つの記録ヘッド52は交換することなく、そのまま使用し続けることができる。したがって、ヘッドユニット51の低コスト化を実現することが可能である。
【0032】
また、3つの記録ヘッド52a、52b、52cは、前述のように、用紙幅方向Dwに沿って千鳥状に配列される(
図3参照)。2つの記録ヘッド52a、52cは側壁部531に対して用紙搬送方向Dcの上流側に配置され、1つの記録ヘッド52bは側壁部531に対して用紙搬送方向Dcの下流側に配置される。すなわち、複数の記録ヘッド52は、側壁部531に対して用紙搬送方向Dcの上流側及び下流側それぞれに配置される。
【0033】
上記の構成によれば、例えば用紙幅方向Dwに沿って千鳥状に配列した3つの記録ヘッド52a、52b、52cそれぞれに対し、フレーム調整ねじ81及びヘッド調整ねじ82を用いた角度調整部8を設けることができる。すなわち、記録ヘッド52が用紙搬送方向Dcに並置される場合でも、容易に記録ヘッド52のみを交換することが可能である。
【0034】
また、インクジェット記録装置1は、用紙Sに画像の記録を行う上記構成のヘッドユニット51を備える。この構成によれば、インクジェット記録装置1は、低コスト化が図られた構成を有し、容易に記録ヘッド52を交換することが可能である。
【0035】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、ヘッドユニット及びインクジェット記録装置において利用可能である。