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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】多層フィルムおよび包装フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240110BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240110BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240110BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B32B27/00 C
B32B9/00 A
B32B27/40
B65D65/40 A
B65D65/40 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023554075
(86)(22)【出願日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 JP2023021950
【審査請求日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2022096288
(32)【優先日】2022-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022110371
(32)【優先日】2022-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 裕
(72)【発明者】
【氏名】山川 秀之
(72)【発明者】
【氏名】田中 歩実
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-149707(JP,A)
【文献】特開2021-133606(JP,A)
【文献】特開2020-49810(JP,A)
【文献】特開2020-189481(JP,A)
【文献】特開2008-265854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムとしての第1フィルムと、
前記第1フィルムの一方の面に設けられ、アルコキシシランの加水分解物および脱水縮合反応生成物を含んだコーティング層と
を備え、前記コーティング層の表面は、飛行時間型二次イオン質量分析法によって得られる、全陽イオン量で規格化したSiOHの量が0.02乃至0.07の範囲内にある多層フィルム。
【請求項2】
前記コーティング層は水溶性高分子を更に含んだ請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記アルコキシシランは、テトラアルコキシシランとシランカップリング剤との混合物である請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記コーティング層は、前記アルコキシシランと前記水溶性高分子との合計量100質量部に対する前記アルコキシシランの含有量が20乃至90質量部の範囲内にあるコーティング液の硬化物である請求項2に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記第1フィルムと前記コーティング層との間に介在したガスバリア層を更に備えた請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記第1フィルムと前記ガスバリア層との間に介在したアンカー層を更に備えた請求項5に記載の多層フィルム。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の多層フィルムと、
ウレタン系材料を含み、前記コーティング層と接するように設けられた接着剤層と、
前記接着剤層を間に挟んで前記コーティング層と向き合うように前記多層フィルムにラミネートされた第2フィルムと
を備えた包装フィルム。
【請求項8】
前記第2フィルムはシーラントフィルムである請求項7に記載の包装フィルム。
【請求項9】
前記基材フィルムの他方の面に設けられたシーラントフィルムを更に備えた請求項7に記載の包装フィルム。
【請求項10】
請求項7に記載の包装フィルムを備えた包装体。
【請求項11】
請求項10に記載の包装体と、前記包装体内に充填された内容物とを備えた包装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルムおよび包装フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品等の包装に用いられる包装フィルムは、内容物の変質を防ぐためにガスバリア性が求められる。包装フィルムとして、基材層と、アンカーコート層と、蒸着層と、ガスバリア性被覆層とをこの順に備えたガスバリアフィルムに、接着剤層を介してシーラントフィルムを積層したものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2018-1631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の包装フィルムは、ガスバリアフィルムとシーラントフィルムとの接着強度が低いと、ユーザが包装フィルムを手で切断した際にシーラントフィルムの伸びが確認されたり、熱処理後にガスバリアフィルムとシーラントフィルムとの間で剥離が生じたりする。そこで、本発明は、アルコキシシランまたはその加水分解物を含んだコーティング液を或るフィルム上へ塗工することによって得られるガスバリア性被覆層(以下、コーティング層ともいう)と、コーティング層に接着された他のフィルムとの接着強度が低いことに起因した不具合を生じ難くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面によると、基材フィルムとしての第1フィルムと、前記第1フィルムの一方の面に設けられ、アルコキシシランの加水分解物および脱水縮合反応生成物を含んだコーティング層とを備え、前記コーティング層の表面は、飛行時間型二次イオン質量分析法によって得られる、全陽イオン量で規格化したSiOHの量が0.02乃至0.07の範囲内にある多層フィルムが提供される。
【0006】
本発明の他の側面によると、前記コーティング層は水溶性高分子を更に含んだ上記側面に係る多層フィルムが提供される。
本発明の更に他の側面によると、前記アルコキシシランは、テトラアルコキシシランとシランカップリング剤との混合物である上記側面の何れかに係る多層フィルムが提供される。
本発明の更に他の側面によると、前記コーティング層は、前記アルコキシシランと前記水溶性高分子との合計量100質量部に対する前記アルコキシシランの含有量が20乃至90質量部の範囲内にあるコーティング液の硬化物である上記側面の何れかに係る多層フィルムが提供される。
【0007】
本発明の更に他の側面によると、前記第1フィルムと前記コーティング層との間に介在したガスバリア層を更に備えた上記側面の何れかに係る多層フィルムが提供される。
本発明の更に他の側面によると、前記第1フィルムと前記ガスバリア層との間に介在したアンカー層を更に備えた上記側面に係る多層フィルムが提供される。
【0008】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る多層フィルムと、ウレタン系材料を含み、前記コーティング層と接するように設けられた接着剤層と、前記接着剤層を間に挟んで前記コーティング層と向き合うように前記多層フィルムにラミネートされた第2フィルムとを備えた包装フィルムが提供される。
【0009】
本発明の更に他の側面によると、前記第2フィルムはシーラントフィルムである上記側面に係る包装フィルムが提供される。
本発明の更に他の側面によると、前記基材フィルムの他方の面に設けられたシーラントフィルムを更に備えた上記側面の何れかに係る包装フィルムが提供される。
【0010】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る包装フィルムを備えた包装体が提供される。
本発明の更に他の側面によると、上記側面に係る包装体と、前記包装体内に充填された内容物とを備えた包装物品が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アルコキシシランまたはその加水分解物を含んだコーティング液を或るフィルム上へ塗工することによって得られるコーティング層と、コーティング層に接着された他のフィルムとの接着強度が低いことに起因した不具合を生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る包装フィルムの一部を概略的に示す断面図である。
図2図2は、包装フィルムの中間製品である多層フィルムの一部を概略的に示す断面図である。
図3図3は、本発明の第2実施形態に係る包装フィルムの一部を概略的に示す断面図である。
図4図4は、本発明の第3実施形態に係る包装フィルムの一部を概略的に示す断面図である。
図5図5は、包装体の一例を概略的に示す斜視図である。
図6図6は、例4のガスバリアフィルムをToF-SIMSにより測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。以下に記載する事項は、単独でまたは複数を組み合わせて、上記側面の各々に組み入れることができる。
【0014】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の構成部材の材質、形状、および構造等によって限定されるものではない。本発明の技術的思想には、請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
なお、同様または類似した機能を有する要素については、以下で参照する図面において同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は模式的なものであり、或る方向の寸法と別の方向の寸法との関係、および、或る部材の寸法と他の部材の寸法との関係等は、現実のものとは異なり得る。
【0016】
<1>第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る包装フィルムの一部を概略的に示す断面図である。図2は、包装フィルムの中間製品である多層フィルムの一部を概略的に示す断面図である。
【0017】
図1に示す包装フィルム10Aは、多層フィルム1とシーラント層2とを含んでいる。包装フィルム10Aは、多層フィルム1とシーラント層2とを互いに対して接着している第1接着剤層3を更に含んでいる。
【0018】
包装フィルム10Aは、例えば、ロール・トゥー・ロール方式で製造する。なお、包装フィルムの構成要素について使用する用語「フィルム」は、製造の段階から単独で取り扱うことが可能であり且つ可撓性を有している薄層、または、包装フィルム10Aの構成要素の上にエクストルージョンラミネートによって設けた薄層を含意し、包装フィルム10Aの構成要素の上にコーティングや気相堆積などによって形成した薄層は含意しない。
【0019】
包装フィルム10Aは、まず、多層フィルム1を作製し、その後、多層フィルム1とシーラント層2とを第1接着剤層3を介して貼り合わせることにより製造する。
【0020】
以下、まず、多層フィルム1が含んでいる層について説明し、その後、包装フィルム10Aが含んでいる層について説明する。
【0021】
<1.1>多層フィルム
図2に示すとおり、多層フィルム1は、第1基材層11と、アンカー層12と、ガスバリア層13と、コーティング層14とをこの順に含んでいる。多層フィルム1は、ガスバリアフィルムとも呼ばれる。多層フィルム1の厚さは、特に限定されない。
【0022】
<1.1.1>第1基材層
第1基材層11は、ガスバリア層13およびコーティング層14等を支持する基材フィルムである。第1基材層11としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムおよびポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルムおよびポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、66-ナイロンフィルム等のポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等のエンジニアリングプラスチックフィルムが挙げられる。これらの中でも、第1基材層11は、環境面を考慮するとポリオレフィンフィルムであることが好ましい。ポリオレフィンフィルムは、延伸フィルムであっても、無延伸フィルムであってもよい。第1基材層11は、好ましくは、延伸ポリオレフィンフィルム、例えば、二軸延伸ポリオレフィンフィルムである。延伸ポリオレフィンフィルムは、耐衝撃性、耐熱性、耐水性、および寸法安定性等の観点で好ましい。また、第1基材層11として、産業廃棄物からリサイクルされた、ポリプロピレン等の樹脂由来のフィルムを用いてもよい。
【0023】
第1基材層11の厚さは、特に限定されない。この厚さは、用途に応じて、例えば6乃至200μmの範囲内とすることができ、優れた耐衝撃性と優れたガスバリア性とを得る観点では、9乃至50μmの範囲内とすることが好ましく、12乃至38μmの範囲内とすることがより好ましい。
【0024】
<1.1.2>アンカー層
アンカー層12は省略することができるが、これを第1基材層11上に設けると、第1基材層11とガスバリア層13との密着性能向上と、第1基材層11の表面の平滑性向上との2つの効果を得ることができる。第1基材層11の表面の平滑性が向上すると、ガスバリア層13を欠陥なく均一に成膜し易くなり、高いバリア性を発現させ易い。アンカー層22は、アンカーコート剤を用いて形成することができる。
【0025】
アンカーコート剤としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系プライマー剤、ウレタン系プライマー剤、またはアクリルウレタン系プライマー剤を使用することができる。これらのプライマー剤はアクリル材料、ウレタン材料、またはアクリルウレタン材料の他に、溶媒、シランカップリング剤等を含むことができる。
【0026】
アンカー層12の厚さは、特に限定されないが、0.01乃至5μmの範囲内にあることが好ましく、0.03乃至3μmの範囲内にあることがより好ましく、0.05乃至2μmの範囲内にあることが特に好ましい。アンカー層12を厚くすると、より高い層間接着強度が得られる傾向にある。但し、アンカー層12を厚くすると、ガスバリア性が低下する傾向にある。
【0027】
アンカーコート剤を第1基材層11上に塗工する方法としては、公知の塗工方法を特に制限なく使用可能であり、浸漬法(ディッピング法)、および、スプレー、コータ、印刷機、または刷毛等を用いる方法が挙げられる。また、これらの方法に用いられるコータおおよび印刷機の種類並びにそれらの塗工方式としては、ダイレクトグラビア方式、リバースグラビア方式、キスリバースグラビア方式、およびオフセットグラビア方式等のグラビアコータ、リバースロールコータ、マイクログラビアコータ、チャンバードクター併用コータ、エアナイフコータ、ディップコータ、バーコータ、コンマコータ、並びにダイコータ等を挙げることができる。
【0028】
アンカーコート剤は、乾燥後の塗膜の1m当たりの質量が0.01乃至5g/mの範囲内となるように塗工することが好ましく、0.03乃至3g/mとなるように塗工することがより好ましい。アンカーコート剤の塗工量を少なくすると、アンカー層12に不連続部を生じ易くなる。他方、アンカーコート剤の塗工量を多くすると、塗膜が完全に乾燥せずに、溶剤が残留し易くなる。
【0029】
塗膜を乾燥させる方法としては、特に限定されないが、自然乾燥による方法、所定の温度に設定したオーブン中で乾燥させる方法、および、上記コータに付属の乾燥機、例えばアーチドライヤ、フローティングドライヤ、ドラムドライヤ、または赤外線ドライヤを用いる方法を挙げることができる。塗膜の乾燥条件は、乾燥させる方法により適宜選択することができる。例えば、オーブン中で塗膜を乾燥させる方法では、温度を60乃至100℃の範囲内として、1秒間乃至2分間程度の時間に亘って塗膜を乾燥させることが好ましい。
【0030】
<1.1.3>ガスバリア層
ガスバリア層13は省略することができるが、この層を設けると、コーティング層14とともに、多層フィルム1にガスバリア性を付与することができる。ガスバリア層13は、後述するように、真空成膜で形成した層である。
【0031】
ガスバリア層13は、例えば、無機酸化物からなる。無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、および酸化錫が挙げられる。透明性およびバリア性の観点から、無機酸化物は、酸化アルミニウム、酸化珪素、および酸化マグネシウムからなる群より選択されるものであることが好ましい。また、加工時に引っ張り延伸性に優れる観点から、ガスバリア層13は、酸化珪素からなる層であることが好ましい。ガスバリア層13は、多層フィルム1のリサイクル性に影響を与えない範囲内の厚さでありながらも、高いバリア性を得ることを可能とする。
【0032】
ガスバリア層13が酸化珪素からなる場合、ガスバリア層13における酸素原子と珪素原子との原子比O/Siは、1.7以上であることが好ましく、1.75以上であることがより好ましく、1.8以上であることが更に好ましい。原子比O/Siを小さくすると、Si原子の含有割合が高まり、透明性が低下する。原子比O/Siは、2.0以下であることが好ましく、1.9以下であることが好ましく、1.85以下であることが更に好ましい。
【0033】
原子比O/Siを過剰に大きくすると、酸化珪素の結晶性が高まり、ガスバリア層13が硬くなり過ぎ、引張り耐性が低下する。ガスバリア層13が高い引張り耐性を有している場合、コーティング層14を積層する際に、ガスバリア層13にクラックを生じ難い。また、ガスバリア層13が高い引張り耐性を有している場合、レトルト処理やボイル処理の際に加えられる熱によって第1基材層11が収縮したとしても、ガスバリア層13は上記収縮へ十分に追従し、バリア性の低下を生じ難い。
【0034】
原子比O/Siは、X線光電子分光法(XPS)により求めることができる。例えば、X線光電子分光分析装置として、日本電子株式会社製JPS-90MXV)を使用し、X線源としては非単色化MgKα(1253.6eV)を使用し、100W(10kV-10mA)のX線出力で測定する。原子比O/Siを求めるための定量分析には、O1s及びSi2pでそれぞれ2.28および0.9の相対感度因子を用いることができる。
【0035】
ガスバリア層13の厚さは、10乃至50nmの範囲内にあることが好ましく、20乃至40nmの範囲内にあることがより好ましい。ガスバリア層13の厚さを小さくすると、水蒸気バリア性が低下する。ガスバリア層13の厚さを大きくすると、内部応力に起因した変形によるクラックが発生し易く、これに起因した水蒸気バリア性の低下を生じ易い。また、ガスバリア層13の厚さを大きくした場合、材料使用量の増加および膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し易いため、経済的観点からも好ましくない。
【0036】
ガスバリア層13は、真空成膜で形成することができる。真空成膜は、物理気相堆積法または化学気相堆積法によって行う。物理気相堆積法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレーティング法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。化学気相堆積法としては、熱化学気相堆積(CVD)法、プラズマCVD法、および光CVD法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
上記真空成膜では、抵抗加熱式真空蒸着法、電子ビーム(EB)加熱式真空蒸着法、誘導加熱式真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、デュアルマグネトロンスパッタリング法、およびプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)等が特に好ましく用いられる。生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては、電子線加熱方式、抵抗加熱方式、および誘導加熱方式の何れかの方式を用いることが好ましい。
【0038】
<1.1.4>コーティング層
コーティング層14は、ガスバリア層13とともに、多層フィルム1にガスバリア性を付与する層である。コーティング層14は、アルコキシシランの加水分解物および脱水縮合反応生成物を含んでいる。
【0039】
コーティング層14は、コーティング液を塗工することにより形成した層である。コーティング液は、アルコキシシランおよびその加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいる。
【0040】
アルコキシシランは、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、モノアルコキシシラン、または、それらの2以上の混合物であることが好ましい。アルコキシシランは、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、または、それらの混合物であることが好ましい。トリアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、およびモノアルコキシシランは、シランカップリング剤であってもよい。アルコキシシランは、テトラアルコキシシランと、シランカップリング剤、特にはトリアルコキシシランとを含んでいることが好ましい。
【0041】
一つの態様において、コーティング層14は、下記一般式(I)で表されるアルコキシシランおよびその加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種を含んだコーティング液の硬化物である。
【0042】
Si(OR1)(R2)4-m …(I)
上記一般式(I)において、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数が1乃至8の1価の有機基であり、メチル基およびエチル基等のアルキル基であることが好ましい。mは、1乃至4の整数である。なお、R1またはR2が複数存在する場合、R1同士またはR2同士は、同一であってもよく、異なっていてもよい。一般式(I)で表されるアルコキシシランは、シランカップリング剤を含んでいてもよい。
【0043】
好ましい態様において、コーティング層14は、下記一般式(II)で表されるアルコキシシランおよびその加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種を含んだコーティング液の硬化物である。
【0044】
Si(OR1) …(II)
上記一般式(II)において、R1は、それぞれ独立に、炭素数が1乃至8の1価の有機基であり、メチル基およびエチル基等のアルキル基であることが好ましい。R1は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0045】
上記一般式(II)で表されるアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン[Si(OCH]、テトラエトキシシラン[Si(OC]等が挙げられる。テトラエトキシシランは、その加水分解物が水系の溶媒中において比較的安定であるため好ましい。
【0046】
上記の通り、コーティング液は、シランカップリング剤を含んでいてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を持つシランカップリング剤;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン等のエポキシ基を持つシランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプト基を持つシランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を持つシランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアネート基を持つシランカップリング剤が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
コーティング液は、水溶性高分子を更に含んでいてもよい。水溶性高分子としては、ポリビニルアルコールまたはその変性体、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等を挙げることができる。これらの中でもポリビニルアルコール(以下、PVAと略すこともある)またはその変性体が、コーティング層14のガスバリア性を優れたものとすることができるので好ましい。ここで、PVAは、一般的には、ポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものであり、例えば、酢酸基が数十%残存しているもの、いわゆる部分けん化PVA、酢酸基が数%しか残存していないもの、いわゆる完全PVA等を用いることができる。また、PVAの変性体として、PVAに水溶性を保つ程度のエチレン基を導入したものを用いてもよい。
【0048】
コーティング液の固形分におけるアルコキシシランと水溶性高分子の合計量100質量部に対するアルコキシシランの含有量は、20質量部以上90質量部以下であることが好ましい。アルコキシシランの含有量が20質量部に満たない場合、コーティング層14の表面にシラノール基が高密度に存在し難しくなる傾向がある。アルコキシシランの含有量が90質量部を超える場合、コーティング層14のガスバリア性が低下する傾向がある。
【0049】
コーティング液には、ガスバリア性を損なわない範囲内で、イソシアネート化合物、または、分散剤、安定剤、粘度調整剤、および着色剤などの公知の添加剤を加えることも可能である。
【0050】
コーティング層14の厚さは、特に限定されないが、50乃至1000nmの範囲内にあることが好ましく、100乃至500nmの範囲内にあることがより好ましい。コーティング層14を厚くすると、より高いガスバリア性が得られる傾向にある。但し、コーティング層14を厚くすると、多層フィルム1の柔軟性が低下する傾向にある。
【0051】
コーティング層14は、コーティング液をガスバリア層13上に塗工し、得られた塗膜を乾燥させることにより形成することができる。コーティング液は、例えば、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、またはグラビアオフセット法により塗工することができる。コーティング液を塗工してなる塗膜は、例えば、熱風乾燥法、熱ロール乾燥法、高周波照射法、赤外線照射法、紫外線(UV)照射法、またはそれらの組み合わせにより乾燥させることができる。
【0052】
コーティング層14の表面には、シラノール基が高密度に存在する。具体的には、コーティング層14の表面は、飛行時間型二次イオン質量分析法によって得られる、全陽イオン量で規格化したSiOHの量が0.02乃至0.07の範囲内にある。「ToF-SIMSによって得られる、全陽イオン量で規格化したSiOHの量」を、以下、単に「コーティング層表面のSiOHの量」ともいう。コーティング層表面のSiOHの量は、好ましくは0.03乃至0.07の範囲内にあり、より好ましくは0.03乃至0.05の範囲内にある。
【0053】
このようなコーティング層14の表面にウレタン系接着剤層を介して他のフィルムをラミネートした場合、コーティング層14の表面に存在するシラノール基は、ウレタン系接着剤層が含んでいるイソシアネート基(-N=C=O)とのウレタン結合を高密度に生じることができる。これにより、コーティング層14と他のフィルムとの間で高い接着強度を達成することができる。
【0054】
「飛行時間型二次イオン質量分析法によって得られる、全陽イオン量で規格化したSiOHの量」は、コーティング層表面のSiOHのイオン数(すなわち、質量電荷比m/z=45のピークイオン数)を飛行時間型二次イオン質量分析法(Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry:ToF-SIMS)によって測定し、得られたSiOHのイオン数を、全陽イオンのイオン数(すなわち、Total Ion Counts(TIC))で割ることにより得られる値を指す。
【0055】
ToF-SIMSによる測定は、アルバック・ファイ株式会社製のTRIFTVnanoTOFを用いて行う。具体的には、ToF-SIMSによる測定は、コーティング層14の表面を下記条件でエッチングし、イオンビーム(1次イオン)の照射により放出されるイオン(2次イオン)を下記条件で測定することにより行う。
(1)エッチング条件
エッチングイオン:GCIB(ガスクラスターイオンビーム)Ar2500
エッチングイオン加速電圧:5kV(電流Max)
エッチング面積:500μm角
エッチング時間:5秒(累積時間)
(2)測定条件
1次イオン種:Bi ++
電流:0.5μA
測定面積:100μm
質量範囲:1.5-5000u
加速電圧:30kV
アパ-チャ:200μmφ
測定時間:2分
帯電中和:あり。
【0056】
コーティング層表面のSiOHの量が0.02に満たない場合、コーティング層14とウレタン材料を含む接着剤層との接着性を強固とすることができず、レトルト処理後の手切れ性やガスバリア性を十分とすることができない。また、コーティング層表面のSiOHの量が0.02に満たない場合、ゲル化が過度に進んでいることから、コーティング層14の乾燥時の収縮によりコーティング層14とガスバリア層13との界面の密着強度が低下し、十分なガスバリア性能が得られない場合がある。コーティング層表面のSiOHの量が0.07を超える場合、コーティング層14のシリカマトリックスの形成が不十分であり、ガスバリア性が低下する。
【0057】
表面にシラノール基が高密度に存在したコーティング層14は、コーティング液からなる塗膜の乾燥条件を調整することにより作製することができる。乾燥時に、コーティング液中のアルコキシシランまたはその加水分解物は、脱水縮合を生じる。このため、コーティング液中のアルコキシシランまたはその加水分解物が過度な脱水縮合を生じないように、穏やかな条件で乾燥を行うと、コーティング層の表面にシラノール基を高密度に存在させることができる。乾燥条件としては、乾燥温度、乾燥時間、および風速や送風方向などの送風条件を調整することができる。
【0058】
オーブンで乾燥を行う場合、乾燥温度は、40乃至180℃の範囲内とすることが好ましく、45乃至150℃の範囲内とすることがより好ましい。乾燥時間は、40乃至250秒の範囲内とすることが好ましく、40乃至150秒の範囲内とすることがより好ましい。また、乾燥期間中に、自然対流方式での乾燥を含んでいることが好ましい。言い換えると、乾燥期間全体にわたって、熱風を強制的に循環させるタイプの乾燥、すなわち強制対流方式での乾燥は行わないことが好ましい。
【0059】
コーティング液からなる塗膜の乾燥は、オーブンで乾燥をおこなう場合、強制対流方式での低温乾燥と、その後の自然対流方式での高温乾燥とからなる2段階の乾燥により行うことが好ましい。ここで、低温乾燥は、高温乾燥のときの温度よりも低い温度での乾燥をいう。このような2段階の乾燥を行った場合、最初の低温乾燥は、アルコキシシランの加水分解を促進することができ、その後の高温乾燥は、脱水縮合を過度に進行させることなく溶媒を除去することができる。それ故、表面にシラノール基が高密度に存在したコーティング層を得ることができる。
【0060】
オーブンで2段階の乾燥を行う場合、低温乾燥は、40乃至69℃の範囲内の温度で、30乃至150秒の範囲内の時間で行い、かつ、高温乾燥は、70乃至180℃の範囲内の温度で、3乃至100秒の範囲内の時間で行うことが好ましい。低温乾燥は、45乃至69℃の範囲内の温度で、30乃至100秒の範囲内の時間で行い、かつ、高温乾燥は、70乃至140℃の範囲内の温度で、3乃至60秒の範囲内の時間で行うことがより好ましい。低温乾燥の温度と高温乾燥の温度との差は、好ましくは10乃至140℃、より好ましくは10乃至80℃である。
【0061】
<1.2>包装フィルム
図1に示すとおり、包装フィルム10Aは、上述の多層フィルム1と、ウレタン系材料を含み、コーティング層14と接するように設けられた第1接着剤層3と、第1接着剤層3を間に挟んでコーティング層14と向き合うように多層フィルム1にラミネートされたシーラント層2とを備えている。
【0062】
包装フィルム10Aは、シーラント層2を構成するシーラントフィルムを、多層フィルム1のコーティング層14側の面に、ウレタン系接着剤を用いてラミネートすることにより作製することができる。例えば、包装フィルム10Aは、シーラント層2を構成するシーラントフィルムと多層フィルム1とを、一液硬化型または二液硬化型のウレタン系接着剤を用いてドライラミネート法により、互いに接着することにより作製することができる。
【0063】
<1.2.1>シーラント層
シーラント層2は、包装フィルム10Aに、ヒートシールによる封止性を付与する層であり、シーラントフィルムからなる。シーラント層2は、好ましくは無延伸フィルムである。
【0064】
シーラント層の材質としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられるが、ポリオレフィン樹脂が一般的に使用される。具体的に、ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体などのエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、またはこれらの混合物等を使用することができる。シーラント層の材質は、上述した熱可塑性樹脂の中から、使用用途やボイル処理、レトルト処理などの温度条件によって適宜選択できる。
【0065】
シーラント層2には、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、および粘着付与剤等の各種添加材が含まれていてもよい。
【0066】
シーラント層2の厚さは、包装フィルム10Aから得られる包装体に収容する内容物の質量や、包装体の形状などに応じて適宜定められるが、概ね30乃至150μmの範囲内にあることが好ましい。
【0067】
<1.2.2>第1接着剤層
第1接着剤層3は、多層フィルム1のコーティング層14とシーラント層2とを接着する層である。
【0068】
第1接着剤層3は、ウレタン系材料を含む接着剤(すなわち、ウレタン系接着剤)から構成される。第1接着剤層3は、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、二官能以上のイソシアネート化合物を作用させることにより得られたポリウレタン樹脂から構成されていてもよい。主剤としてのポリオールとして、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。接着促進を目的として、上述のポリウレタン樹脂に、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、リン化合物、シランカップリング剤などが配合されてもよい。第1接着剤層3には、環境配慮の観点から、高分子成分としてバイオマス由来であるものや生分解性を持つものを使用してもよい。
【0069】
第1接着剤層3の塗布量は、所望の接着強度、追随性、および加工性等を得る観点から、例えば、1乃至10g/mの範囲内とする。
【0070】
第1実施形態に係る包装フィルムは、上述のとおり、コーティング層14とシーラント層2との間で高い接着強度を達成することができる。このため、コーティング層14とシーラント層との接着強度が低いことに起因した不具合、例えば、レトルト処理後の手切れ性の低下を生じ難くすることができる。
【0071】
<2>第2実施形態
図3は、本発明の第2実施形態に係る包装フィルムの一部を概略的に示す断面図である。
【0072】
第2実施形態に係る包装フィルム10Bは、多層フィルム1の第1基材層11側の面に、第2接着剤層5を介して設けられた第2基材層4を更に備えていること以外は、第1実施形態に係る包装フィルム10Aと同様である。
【0073】
第2実施形態に係る包装フィルム10Bは、例えば、第1実施形態に係る包装フィルム10Aの第1基材層11側の面に、第2基材層4を構成する基材フィルムを、ウレタン系接着剤を用いてラミネートすることにより作製することができる。例えば、第2実施形態に係る包装フィルム10Bは、第2基材層4を構成する基材フィルムと第1実施形態に係る包装フィルム10Aとを、一液硬化型または二液硬化型のウレタン系接着剤を用いてドライラミネート法により、互いに接着することにより作製することができる。
【0074】
<2.1>第2基材層
第2基材層4は、基材フィルムからなる。第2基材層4を構成する基材フィルムとしては、例えば、多層フィルム1の第1基材層11を構成する基材フィルムについて例示したフィルムを用いることができる。第1基材層11に好適なフィルムは、第2基材層4においても好適に使用することができる。
【0075】
第2基材層4の厚さは、特に限定されない。この厚さは、例えば、第1基材層11について上述した範囲内とすることができる。
【0076】
<2.2>第2接着剤層
第2接着剤層5は、多層フィルム1の第1基材層11と第2基材層4とを接着する層である。
【0077】
第2接着剤層5は、第1接着剤層3について上述したのと同様の接着剤で構成することができる。第2接着剤層5の塗布量は、例えば、第1接着剤層3について上述した範囲内とする。
【0078】
第2実施形態に係る包装フィルムも、第1実施形態に係る包装フィルムと同様、コーティング層14とシーラント層2との間で高い接着強度を達成することができる。このため、コーティング層14とシーラント層との接着強度が低いことに起因した不具合、例えば、レトルト処理後の手切れ性の低下を生じ難くすることができる。
【0079】
<3>第3実施形態
図4は、本発明の第3実施形態に係る包装フィルムの一部を概略的に示す断面図である。
【0080】
第3実施形態に係る包装フィルム10Cは、多層フィルム1の第1基材層11側の面に、第1接着剤層3を介してシーラント層2を備え、多層フィルム1のコーティング層14側の面に、第2接着剤層5を介して第2基材層4を備えていること以外は、第2実施形態に係る包装フィルム10Bと同様である。すなわち、第3実施形態に係る包装フィルム10Cは、第2実施形態に係る包装フィルム10Bと比較すると、シーラント層2および第2基材層4の配置が逆である。
【0081】
第3実施形態に係る包装フィルムは、コーティング層14と第2基材層4との間で高い接着強度を達成することができる。このため、コーティング層14と第2基材層4との接着強度が低いことに起因した不具合、例えば、レトルト処理後の層間剥離に基づく外観不良を生じ難くすることができる。
【0082】
<4>変形例
上記で説明した包装フィルムには、様々な変形が可能である。例えば、包装フィルムは、印刷層などの追加の層を更に備えていてもよい。例えば、第2実施形態に係る包装フィルムの場合、第2基材層4は、多層フィルム1と向き合った面に印刷層を更に備えていてもよい。
【0083】
<5>包装体
図5は、包装体の一例を概略的に示す斜視図である。図5に示す包装体100は、袋であり、包装材料10からなる。包装材料10は、上述した包装フィルム10A、10Bおよび10Cの何れかである。包装体100は、シーラント層2が袋の内側を向くように製袋されている。包装体100では、その端部でシーラント層2同士がヒートシールされている。包装体100は、サイドシール袋、三方シール袋、およびスタンド袋等の様々な構造を有し得る。
【0084】
この包装体100を含んだ包装物品は、包装体100に内容物を入れ、包装体100の開口を塞いだものである。内容物は、例えば、食品または医薬品である。内容物として食品を含んだ包装物品は、例えば、レトルト食品である。内容物として医薬品を含んだ包装物品は、例えば、輸液バッグである。包装体100の開口は、開口部でシーラント層2同士をヒートシールすることにより塞ぐことができる。この包装物品は、好ましくは、レトルト処理およびボイル処理などの加熱殺菌処理に供する。
【0085】
レトルト処理は、一般に、食品および医薬品等の長期保存を可能とするために、カビ、酵母、および細菌などの微生物を加熱殺菌する方法である。レトルト処理では、通常、食品等を包装体に収容してなる包装物品を、0.15乃至0.30MPaの加圧条件下、105乃至140℃の温度で10乃至120分間に亘って熱処理する。レトルト装置は、加熱蒸気を利用する蒸気式と加圧加熱水を利用する熱水式とがあり、内容物である食品等の殺菌条件に応じて適宜使い分ける。
【0086】
ボイル処理は、食品および医薬品等の長期保存を可能とするための湿熱殺菌法である。ボイル処理では、通常、内容物にもよるが、食品等を包装体に収容してなる包装物品を、大気圧下、60乃至100℃の温度で10乃至120分間に亘って熱処理する。ボイル処理は、通常、熱水槽を用いて100℃以下の温度で行う。ボイル処理装置には、一定温度の熱水槽の中に包装物品を浸漬させ、一定時間処理した後に取り出すバッチ式と、包装物品を熱水槽の中にトンネル式に通して処理する連続式とがある。
【0087】
上記の包装体100は、特には、120℃以上の温度でレトルト処理を施す用途に好適に用いることができる。包装体100は、レトルト処理を施した場合であっても、コーティング層14と、接着剤層を間に挟んでコーティング層14にラミネートされた層との間で高い接着強度を達成することができる。このため、コーティング層14と、接着剤層を間に挟んでコーティング層14にラミネートされた層との接着強度が低いことに起因した不具合、例えば、レトルト処理後の手切れ性の低下やレトルト処理後の層間剥離に基づく外観不良を生じ難くすることができる。
【0088】
なお、ここでは、袋状の包装体100を例示したが、包装フィルム10A、10Bおよび10Cを用いて得られる包装体は袋状に限られない。例えば、包装フィルム10A、10Bおよび10Cは、有底筒状の容器本体と、その開口を塞いだ蓋体とを含んだ包装体において、蓋材として使用することができる。
【実施例
【0089】
<例1>
例1では、第2実施形態に係る包装フィルム(図3参照)に相当する包装フィルムを作製した。
【0090】
(ガスバリアフィルムの作製工程)
第1基材フィルムとして、膜厚20μm延伸ポリプロピレンフィルムを用意した。
続いて、第1基材フィルム上に、アクリル系プライマー溶液をグラビアコートにより塗布し、乾燥させて、厚さ0.1μmのアンカーコート層を形成した。
【0091】
次に、アンカーコート層上に、減圧下の酸素雰囲気中で高周波励起イオンプレーティングによる反応性蒸着により、厚さ30nmの酸化ケイ素の薄膜を蒸着した。これにより、無機酸化物からなるガスバリア層を形成した。
【0092】
次に、テトラエトキシシラン(以下「TEOS」という)とメタノールと0.1N塩酸水溶液とを、質量比が17:10:73となるように混合して、TEOS加水分解溶液を準備した。また、ポリビニルアルコール(以下「PVA」という)の5質量%水溶液を準備した。また、1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを、水とIPA(イソプロピルアルコール)とを1:1の質量比で含有した溶液で希釈して、固形分濃度(R2Si(OH)換算)が5質量%の溶液を準備した。準備された3つの溶液、すなわち、TEOS加水分解溶液とPVA溶液とイソシアヌレートシラン溶液とを混合してコーティング液を調製した。コーティング液は、TEOSのSiO固形分(換算値)とイソシアヌレートシランのR2Si(OH)固形分(換算値)とPVA固形分との質量比率が50:10:40になるように調製した。このコーティング液を、ガスバリア層上にグラビアコート法により塗布した。その後、コーティング液を、強制対流方式のオーブンを使用して60℃の温度で50秒間にわたって乾燥させ、次に、自然対流方式のオーブンを使用して80℃の温度で40秒間にわたって乾燥させて、厚さ0.3μmのコーティング層を形成した。
【0093】
以上の手順により、ガスバリアフィルムを作製した。例1のガスバリアフィルムの「コーティング層表面のSiOHの量」は、0.04であった。
【0094】
(ラミネート工程)
シーラントフィルムとして、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを用意し、第2基材フィルムとして、厚さ20μmの延伸ポリプロピレンフィルムを用意した。
【0095】
厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムと、ガスバリアフィルムのコーティング層側の面とを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。さらに、ガスバリアフィルムのコーティング層形成面とは反対側の面に、厚さ20μmの延伸ポリプロピレンフィルムを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。
【0096】
以上の手順により、包装フィルムを作製した。
【0097】
<例2>
例2では、第2実施形態に係る包装フィルム(図3参照)に相当する包装フィルムを作製した。
具体的には、コーティング液を、強制対流方式のオーブンを使用して60℃の温度で30秒間にわたって乾燥させ、次に、自然対流方式のオーブンを使用して120℃の温度で30秒間にわたって乾燥させたこと以外は、例1と同様の手順に従って、ガスバリアフィルムを作製した。例2のガスバリアフィルムの「コーティング層表面のSiOHの量」は、0.03であった。その後、例1と同様の手順に従って、包装フィルムを作製した。
【0098】
<例3>
例3では、第2実施形態に係る包装フィルム(図3参照)に相当する包装フィルムを作製した。
具体的には、第1基材フィルム上に、アクリル系プライマー溶液の代わりにウレタン系プライマー溶液をグラビアコートにより塗布し、乾燥させて、厚さ1.0μmのアンカーコート層を形成したこと以外は、例2と同様の手順に従って、ガスバリアフィルムを作製した。例3のガスバリアフィルムの「コーティング層表面のSiOHの量」は、0.03であった。その後、例2と同様の手順に従って、包装フィルムを作製した。
【0099】
<例4>
例4では、第2実施形態に係る包装フィルム(図3参照)に相当する包装フィルムを作製した。
具体的には、コーティング液を、TEOSのSiO固形分(換算値)とイソシアヌレートシランのR2Si(OH)固形分(換算値)とPVA固形分との質量比率が40:10:50になるように調製したこと以外は、例1と同様の手順に従って、ガスバリアフィルムを作製した。例4のガスバリアフィルムの「コーティング層表面のSiOHの量」は、0.04であった。その後、例1と同様の手順に従って、包装フィルムを作製した。
【0100】
例5では、第2実施形態に係る包装フィルム(図3参照)に相当する包装フィルムを作製した。
具体的には、コーティング液を、強制対流方式のオーブンを使用して60℃の温度で30秒間にわたって乾燥させ、次に、自然対流方式のオーブンを使用して120℃の温度で30秒間にわたって乾燥させたこと以外は、例4と同様の手順に従って、ガスバリアフィルムを作製した。例5のガスバリアフィルムの「コーティング層表面のSiOHの量」は、0.03であった。その後、例4と同様の手順に従って、包装フィルムを作製した。
【0101】
<比較例1>
比較例1では、コーティング液を、強制対流方式のオーブンを使用して130℃の温度で60秒間にわたって乾燥させたこと以外は、例4と同様の手順に従って、ガスバリアフィルムを作製した。比較例1のガスバリアフィルムの「コーティング層表面のSiOHの量」は、0.01であった。その後、例4と同様の手順に従って、包装フィルムを作製した。
【0102】
<例6>
例6では、第2実施形態に係る包装フィルム(図3参照)に相当する包装フィルムを作製した。
【0103】
(ガスバリアフィルム作製工程)
第1基材フィルムとして、膜厚12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。
続いて、第1基材フィルム上に、アクリル系プライマー溶液をグラビアコートにより塗布し、乾燥させて、厚さ0.1μmのアンカーコート層を形成した。
【0104】
次に、アンカーコート層上に、減圧下の酸素雰囲気中で電子線加熱方式による加熱蒸着により、膜厚15nmの酸化アルミニウムを蒸着した。これにより、無機酸化物からなるガスバリア層を形成した。
【0105】
次に、テトラエトキシシラン(以下「TEOS」という)とメタノールと0.1N塩酸水溶液とを、質量比が17:10:73となるように混合して、TEOS加水分解溶液を準備した。また、ポリビニルアルコール(以下「PVA」という)の5質量%水溶液を準備した。また、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランを、水とIPA(イソプロピルアルコール)とを1:1の質量比で含有した溶液で希釈して、固形分濃度(R2Si(OH)換算)が5質量%の溶液を準備した。準備された3つの溶液、すなわち、TEOS加水分解溶液とPVA溶液とトリメトキシシラン溶液とを混合してコーティング液を調製した。コーティング液は、TEOSのSiO固形分(換算値)とトリメトキシシランのR2Si(OH)固形分(換算値)とPVA固形分との質量比率が70:10:20になるように調製した。このコーティング液を、ガスバリア層上にグラビアコート法により塗布した。その後、コーティング液を、強制対流方式のオーブンを使用して60℃の温度で30秒間にわたって乾燥させ、次に、自然対流方式のオーブンを使用して120℃の温度で30秒間にわたって乾燥させて、厚さ0.3μmのコーティング層を形成した。
【0106】
以上の手順により、ガスバリアフィルムを作製した。例6のガスバリアフィルムの「コーティング層表面のSiOHの量」は、0.05であった。
【0107】
(ラミネート工程)
シーラントフィルムとして、厚さ60μmの無延伸ポリエチレンフィルムを用意し、第2基材フィルムとして、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。
【0108】
厚さ60μmの無延伸ポリエチレンフィルムと、ガスバリアフィルムのコーティング層側の面とを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。さらに、バリアフィルムのコーティング層形成面とは反対側の面に、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。
【0109】
以上の手順により、包装フィルムを作製した。
【0110】
<例7>
例7では、第3実施形態に係る包装フィルム(図4参照)に相当する包装フィルムを作製した。
【0111】
(ガスバリアフィルム作製工程)
例1と同様の手順に従って、ガスバリアフィルムを作製した。例7のガスバリアフィルムの「コーティング層表面のSiOHの量」は、0.04であった。
【0112】
(ラミネート工程)
第2基材フィルムとして、厚さ20μmの延伸ポリプロピレンフィルムを用意し、シーラントフィルムとして、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを用意した。
【0113】
厚さ20μmの延伸ポリプロピレンフィルムと、ガスバリアフィルムのコーティング層側の面とを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。さらに、バリアフィルムのコーティング層形成面とは反対側の面に、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。
【0114】
以上の手順により、包装フィルムを作製した。
【0115】
<例8>
例8では、第3実施形態に係る包装フィルム(図4参照)に相当する包装フィルムを作製した。
【0116】
(ガスバリアフィルム作製工程)
例2と同様の手順に従って、ガスバリアフィルムを作製した。例8のガスバリアフィルムの「コーティング層表面のSiOHの量」は、0.03であった。
【0117】
(ラミネート工程)
第2基材フィルムとして、厚さ20μmの延伸ポリプロピレンフィルムを用意し、シーラントフィルムとして、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを用意した。
【0118】
厚さ20μmの延伸ポリプロピレンフィルムと、ガスバリアフィルムのコーティング層側の面とを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。さらに、バリアフィルムのコーティング層形成面とは反対側の面に、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。
【0119】
以上の手順により、包装フィルムを作製した。
【0120】
<比較例2>
(ガスバリアフィルム作製工程)
比較例2では、コーティング液を、TEOSのSiO固形分(換算値)とイソシアヌレートシランのR2Si(OH)固形分(換算値)とPVA固形分との質量比率が50:10:40になるように調製したこと以外は、比較例1と同様の手順に従って、ガスバリアフィルムを作製した。比較例2のガスバリアフィルムの「コーティング層表面のSiOHの量」は、0.01であった。
【0121】
(ラミネート工程)
第2基材フィルムとして、厚さ20μmの延伸ポリプロピレンフィルムを用意し、シーラントフィルムとして、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを用意した。
【0122】
厚さ20μmの延伸ポリプロピレンフィルムと、ガスバリアフィルムのコーティング層側の面とを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。さらに、バリアフィルムのコーティング層形成面とは反対側の面に、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。
【0123】
以上の手順により、包装フィルムを作製した。
【0124】
<例9>
例9では、第3実施形態に係る包装フィルム(図4参照)に相当する包装フィルムを作製した。
【0125】
(ガスバリアフィルム作製工程)
例6と同様の手順に従って、ガスバリアフィルムを作製した。例9のガスバリアフィルムの「コーティング層表面のSiOHの量」は、0.05であった。
【0126】
(ラミネート工程)
第2基材フィルムとして、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、シーラントフィルムとして、厚さ60μmの無延伸ポリエチレンフィルムを用意した。
【0127】
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、ガスバリアフィルムのコーティング層側の面とを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。さらに、バリアフィルムのコーティング層形成面とは反対側の面に、厚さ60μmの無延伸ポリエチレンフィルムを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。
【0128】
以上の手順により、包装フィルムを作製した。
【0129】
<例10>
例10では、第1実施形態に係る包装フィルム(図1参照)に相当する包装フィルムを作製した。
【0130】
(ガスバリアフィルム作製工程)
例1と同様の手順に従って、ガスバリアフィルムを作製した。例10のガスバリアフィルムの「コーティング層表面のSiOHの量」は、0.04であった。
【0131】
(ラミネート工程)
シーラントフィルムとして、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを用意した。厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムと、ガスバリアフィルムのコーティング層側の面とを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。これにより、包装フィルムを作製した。
【0132】
<コーティング層表面のSiOHの量の評価>
「コーティング層表面のSiOHの量」は、上述した方法により得た。なお、質量電荷比m/z=45のピークとしては、SiOHのピークとCのピークとの両方が検出されたが、それらピークを分離してカウントした。
【0133】
<酸素バリア性の評価>
(レトルト処理)
例1乃至10で作製した包装フィルムおよび比較例1および2で作製した包装フィルムを用いて、4辺をシール部とする包装袋を作製し、内容物として水を充填した。その後、130℃、30分のレトルト殺菌処理を行った。
【0134】
(酸素透過度の測定)
レトルト処理後の包装袋に対し、酸素透過度の測定を行った。測定は、酸素透過度測定装置(Modern Control社製、OXTRAN 2/20)を用いて、温度30℃、相対湿度70%の条件で行った。測定方法は、JIS K-7126、B法(等圧法)、およびASTM D3985-81に準拠し、測定値は単位[cm(STP)/m・day・atm]で表記した。
【0135】
<手切れ性の評価>
10回の試験を行うために、それぞれの例について包装袋は10個作製した。レトルト処理後の包装袋に対し、手切れ性の評価をおこなった。シール部に対してハサミにて切れ込みを入れ、当該切れ込みをきっかけに包装袋を手で開封する作業を10回行った。下記評価基準にて手切れ性の評価を行った。
【0136】
A評価:10回の試験のうち全ての試験において、手切れ箇所に異常は確認されなかった。すなわち、手切れ箇所に、剥離やシーラントフィルムの伸びは確認されなかった。
B評価:10回の試験のうち少なくとも1回の試験において、コーティング層と接着剤層との間で接着強度が低いことに起因した剥離と、この剥離に伴うシーラントフィルムの伸びとが確認された。
【0137】
<外観評価>
10回の試験を行うために、それぞれの例について包装袋は10個作製した。レトルト処理後の包装袋に対し、外側からペンライトで照明し、ペンライトと包装袋とが成す角度を変えながら目視で外観不良の有無を確認した。
【0138】
A評価:10回の試験のうち全ての試験において、目視で外観不良は確認されなかった。すなわち、コーティング層と接着剤層との間で剥離または浮きは確認されなかった。
B評価:10回の試験のうち少なくとも1回の試験において、コーティング層と接着剤層との間で接着強度が低いことに起因した剥離または浮きを生じ、この剥離または浮きの少なくとも一部が目視で確認された。
【0139】
<結果>
例4のガスバリアフィルムをToF-SIMSにより測定した結果を図6に示す。図6は、横軸に質量電荷比m/z、縦軸にイオン強度をプロットした正イオンマススペクトルである。また、例1乃至10の包装袋および比較例1および2の包装袋について、酸素バリア性、手切れ性、および外観の評価を行った結果を以下の表に示す。
【0140】
【表1】
【0141】
例1乃至10の包装袋および比較例1および2の包装袋の全てにおいて、優れたガスバリア性が示された。また、例1乃至10では、コーティング層表面のSiOHの量が比較例1および2と比較して多かった。このため、コーティング層と、ウレタン系接着剤からなる接着剤層との間で接着強度が高まり、手切れ性および外観について優れた結果が得られた。一方、比較例1および2では、コーティング層表面のSiOHの量が少なかった。このため、コーティング層と、ウレタン系接着剤とからなる接着剤層との間で接着強度が低く、手切れ性および外観について優れた結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0142】
1…多層フィルム、2…シーラント層、3…第1接着剤層、4…第2基材層、5…第2接着剤層、10…包装材料、10A…包装フィルム、10B…包装フィルム、10C…包装フィルム、11…第1基材層、12…アンカー層、13…ガスバリア層、14…コーティング層、100…包装体。
【要約】
多層フィルム(1)は、基材フィルムとしての第1フィルム(11)と、前記第1フィルム(11)の一方の面に設けられ、アルコキシシランの加水分解物および脱水縮合反応生成物を含んだコーティング層(14)とを備え、前記コーティング層(14)の表面は、飛行時間型二次イオン質量分析法によって得られる、全陽イオン量で規格化したSiOHの量が0.02乃至0.07の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6