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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】繊維強化ポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/02 20060101AFI20240110BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20240110BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20240110BHJP
   C08K 5/151 20060101ALI20240110BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C08L77/02
C08L1/02
C08K5/17
C08K5/151
C08J3/22 CFG
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019216704
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021084999
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、委託期間:平成25年9月6日から令和2年2月29日まで、開発項目「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発/研究開発項目2 木質系バイオマスから化学品までの一貫製造プロセスの開発/高機能リグノセルロースナノファイバーの一貫製造プロセスと部材化技術開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】514168843
【氏名又は名称】地方独立行政法人京都市産業技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109635
【氏名又は名称】星光PMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】大石 康介
(72)【発明者】
【氏名】荒川 誠一
(72)【発明者】
【氏名】隣 雅也
(72)【発明者】
【氏名】中川 知之
(72)【発明者】
【氏名】矢野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】仙波 健
(72)【発明者】
【氏名】北川 和男
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/163873(WO,A1)
【文献】特開2018-066775(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159778(WO,A1)
【文献】特開2020-111707(JP,A)
【文献】特開2020-029488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
C08J3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド6(A)と、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)であるミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)と、一個又は複数個のアミノ基又は酸無水物基を有する相溶化剤(C)とを含むポリアミド樹脂組成物であって、
前記相溶化剤(C)の融点が40℃~260℃であることを特徴とし、
前記相溶化剤(C)は、酸無水物基を有する化合物及びアミノ基を有する化合物からなる群より選択される1種以上であり、
前記酸無水物基を有する化合物は、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水安息香酸及び4,4’-オキシジフタル酸無水物からなる群より選択される1種以上であり、
前記ポリアミド樹脂組成物は、前記ポリアミド6(A)と、前記アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)と、前記相溶化剤(C)と、下記一般式(1)で示されるアミド化合物(D)とを溶融混練して得られたものである、ポリアミド樹脂組成物。
-CO-N(R )-R (1)
〔式中、
及びR は、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素原子数1~4のアルキル基であるか、又は、
及びR は、一緒になって、炭素原子数3~11のアルキレン基であり、
は、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数2~4のアシル基である〕
【請求項2】
ポリアミド6(A)の含有量が20質量%~95質量%である、請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)の含有量が1質量%~40質量%である、請求項1又は2記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
記(B1)成分のアセチル化度が0.4~2.55である、請求項1~3のいずれか一項記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
(1A)アセチル化セルロース系繊維含有材料又は非修飾セルロース系繊維含有材料であるセルロース系繊維含有材料を解繊して、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)又は非修飾ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B2)であるミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)を得る工程と、
(1B)ポリアミド6(A)と、ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)と、一個又は複数個のアミノ基又は酸無水物基を有する相溶化剤(C)とを溶融混練して、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得る工程と
を含み、前記相溶化剤(C)の融点が40℃~260℃であり、
前記相溶化剤(C)は、酸無水物基を有する化合物及びアミノ基を有する化合物からなる群より選択される1種以上であり、
前記酸無水物基を有する化合物は、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水安息香酸及び4,4’-オキシジフタル酸無水物からなる群より選択される1種以上であり、
前記溶融混練を、下記一般式(1)で示されるアミド化合物(D)の存在下で行う、繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
-CO-N(R )-R (1)
〔式中、
及びR は、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素原子数1~4のアルキル基であるか、又は、
及びR は、一緒になって、炭素原子数3~11のアルキレン基であり、
は、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数2~4のアシル基である〕
【請求項6】
(2A)非修飾セルロース系繊維含有材料をアセチル化して、アセチル化セルロース系繊維含有材料を得る工程と、
(2B)ポリアミド6(A)と、アセチル化セルロース系繊維含有材料と、一個又は複数個のアミノ基又は酸無水物基を有する相溶化剤(C)とを溶融混練して、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得る工程と
を含み、前記相溶化剤(C)の融点が40℃~260℃であり、
前記相溶化剤(C)は、酸無水物基を有する化合物及びアミノ基を有する化合物からなる群より選択される1種以上であり、
前記酸無水物基を有する化合物は、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水安息香酸及び4,4’-オキシジフタル酸無水物からなる群より選択される1種以上であり、
前記溶融混練を、下記一般式(1)で示されるアミド化合物(D)の存在下で行う、繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
-CO-N(R )-R (1)
〔式中、
及びR は、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素原子数1~4のアルキル基であるか、又は、
及びR は、一緒になって、炭素原子数3~11のアルキレン基であり、
は、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数2~4のアシル基である〕
【請求項7】
(3A)ポリアミド6(A)と、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)又は非修飾ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B2)であるミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)とを溶融混練するか、ポリアミド6(A)とアセチル化セルロース系繊維含有材料とを溶融混練して、マスターバッチを得る工程と、
(3B)前記マスターバッチと更なる成分(A)とを溶融混練して繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得る工程と
を含み、工程(3A)及び工程(3B)の少なくとも一方における溶融混錬を、一個又は複数個のアミノ基又は酸無水物基を有する相溶化剤(C)の存在下で行い、前記相溶化剤(C)の融点が40℃~260℃であり、
前記相溶化剤(C)は、酸無水物基を有する化合物及びアミノ基を有する化合物からなる群より選択される1種以上であり、
前記酸無水物基を有する化合物は、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水安息香酸及び4,4’-オキシジフタル酸無水物からなる群より選択される1種以上であり、
工程(3A)における溶融混練を、下記一般式(1)で示されるアミド化合物(D)の存在下で行う、繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
-CO-N(R )-R (1)
〔式中、
及びR は、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素原子数1~4のアルキル基であるか、又は、
及びR は、一緒になって、炭素原子数3~11のアルキレン基であり、
は、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数2~4のアシル基である〕
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化ポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂組成物は、軽量である利点を有することから、金属材料に代えて自動車部品、航空機内部品、家庭用機器、建設材料等の分野で使用されている。また、繊維強化樹脂組成物から形成される構造体の軽量化の観点から、樹脂組成物を強化する繊維として、比重の小さな天然繊維を用いた天然繊維で強化した樹脂組成物が提案されている。
【0003】
特許文献1には、アセチル基で修飾されたミクロフィブリル化セルロース繊維又はミクロフィブリル化リグノセルロース繊維と、熱可塑性樹脂であるポリアミド樹脂とを含有する、繊維強化樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-176052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの知見によれば、特許文献1に開示された繊維強化樹脂組成物は、曲げ強さに優れるものであるが、耐衝撃性の点で、改善の余地があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、曲げ強さを維持したまま、耐衝撃性が優れる、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の融点を有する一個又は複数個のアミノ基又は酸無水物基を有する相溶化剤を用いた繊維強化ポリアミド樹脂組成物が、曲げ強さを維持したまま、耐衝撃性が優れることを見出した。
【0008】
本発明は、以下の[1]~[9]に関する。
[1]ポリアミド6(A)と、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)又は非修飾ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B2)であるミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)と、一個又は複数個のアミノ基又は酸無水物基を有する相溶化剤(C)とを含むポリアミド樹脂組成物であって、前記相溶化剤(C)の融点が40℃~260℃であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
[2]ポリアミド6(A)の含有量が20質量%~95質量%である、[1]の繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
[3]ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)の含有量が1質量%~40質量%である、[1]又は[2]の繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
[4]ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)がアセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)であり、前記(B1)成分のアセチル化度が0.4~2.55である、[1]~[3]のいずれかの繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
[5]ポリアミド6(A)と、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)と、一個又は複数個のアミノ基又は酸無水物基を有する相溶化剤(C)と、下記一般式(1)で示されるアミド化合物(D)とを溶融混練して得られたものである、[1]~[4]のいずれかの繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
-CO-N(R)-R (1)
〔式中、
及びRは、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素原子数1~4のアルキル基であるか、又は、
及びRは、一緒になって、炭素原子数3~11のアルキレン基であり、
は、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数2~4のアシル基である〕
[6](1A)アセチル化セルロース系繊維含有材料又は非修飾セルロース系繊維含有材料であるセルロース系繊維含有材料を解繊して、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)又は非修飾ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B2)であるミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)を得る工程と、
(1B)ポリアミド6(A)と、ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)と、一個又は複数個のアミノ基又は酸無水物基を有する相溶化剤(C)とを溶融混練して、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得る工程と
を含み、前記相溶化剤(C)の融点が40℃~260℃である、繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
[7](2A)非修飾セルロース系繊維含有材料をアセチル化して、アセチル化セルロース系繊維含有材料を得る工程と、
(2B)ポリアミド6(A)と、アセチル化セルロース系繊維含有材料と、一個又は複数個のアミノ基又は酸無水物基を有する相溶化剤(C)とを溶融混練して、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得る工程と
を含み、前記相溶化剤(C)の融点が40℃~260℃である、繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
[8](3A)ポリアミド6(A)と、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)又は非修飾ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B2)であるミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)とを溶融混練するか、ポリアミド6(A)とアセチル化セルロース系繊維含有材料とを溶融混練して、マスターバッチを得る工程と、
(3B)前記マスターバッチと更なる成分(A)とを溶融混練して繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得る工程と
を含み、工程(3A)及び工程(3B)の少なくとも一方における溶融混錬を、一個又は複数個のアミノ基又は酸無水物基を有する相溶化剤(C)の存在下で行い、前記相溶化剤(C)の融点が40℃~260℃である、繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
[9]溶融混練を、下記一般式(1)で示されるアミド化合物(D)の存在下で行う、[6]~[8]のいずれかの繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
-CO-N(R)-R (1)
〔式中、
及びRは、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素原子数1~4のアルキル基であるか、又は、
及びRは、一緒になって、炭素原子数3~11のアルキレン基であり、
は、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数2~4のアシル基である〕。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、曲げ強さを維持したまま、耐衝撃性が優れる、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[用語の定義]
「ポリアミド6(A)」を、「成分(A)」ともいう。「ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)」等についても同様である。
【0011】
[繊維強化ポリアミド樹脂組成物]
繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド6(A)と、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)又は非修飾ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B2)であるミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)と、一個又は複数個のアミノ基又は酸無水物基を有する相溶化剤(C)とを含むポリアミド樹脂組成物であって、前記相溶化剤(C)の融点が40℃~260℃である。
【0012】
(ポリアミド6(A))
ポリアミド6(A)は、1種類のラクタム及び当該ラクタムの加水分解物であるアミノカルボン酸の少なくとも一方からなるものである。即ち、ポリアミド6は、ε-カプロラクタム及びε-カプロラクタムの加水分解物である6-アミノカプロン酸の少なくとも一方からなる。
【0013】
<更なる単位>
ポリアミド6(A)は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、カルボキシ末端基濃度を調整するための成分等に由来する単位を更に含んでいてもよい。このような成分として、ジカルボン酸、ジアミン等が挙げられる。
【0014】
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3-/1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン-4,4’-ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-/1,8-/2,6-/2,7-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0015】
ジアミンとして、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、テトラデカメチレンジアミン、オクタデカメチレンジアミン、ノナデカメチレンジアミン、エイコサメチレンジアミン、2-/3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3-/1,4-シクロヘキサンジメチルアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、5-アミノ-2,2,4-トリメチル-1-シクロペンタンメチルアミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン;m-/p-キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン;が挙げられる。
【0016】
<ポリアミド6(A)の特性>
<<相対粘度>>
ポリアミド6(A)の相対粘度は、曲げ強さ等の物性と成形性を効率よく両立させる観点から、2.0以上であることが好ましく、2.0~2.5であることがより好ましく、2.1~2.4であることが特に好ましい。ポリアミド6(A)の相対粘度は、JIS K-6920に準じて、96重量%の硫酸中、ポリアミド濃度1重量%、温度25℃の条件下にて測定することができる。
【0017】
ポリアミド6(A)が、相対粘度の異なる2種以上のポリアミド6を含む場合、ポリアミド6(A)における相対粘度は、前記方法で測定されてもよく、それぞれのポリアミド6の相対粘度とその混合比が判明している場合、それぞれの相対粘度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、ポリアミド6(A)の相対粘度としてもよい。ポリアミド6(A)の相対粘度は、ポリアミド6(A)の製造において重合条件により調整することができる。
【0018】
<<カルボキシ末端基濃度>>
ポリアミド6(A)のカルボキシ末端基濃度は、曲げ強さなどの物性をより向上させる観点から、5.0×10-5eq/g以上であることが好ましく、5.0×10-5~9.0×10-5eq/gであることがより好ましく、7.0×10-5~8.0×10-5eq/gであることが特に好ましい。ポリアミド6(A)のカルボキシ末端基濃度は、ポリアミド6(A)をベンジルアルコールに溶解し、0.05Nの水酸化ナトリウム溶液で滴定して測定することができる。ポリアミド6(A)のカルボキシ末端基濃度は、ポリアミド6(A)の製造において、ジカルボン酸、ジアミンを加えることにより、調整することができる。
【0019】
ポリアミド6(A)が、カルボキシ末端基濃度の異なる2種以上のポリアミド6を含む場合、ポリアミド6(A)におけるカルボキシ末端基濃度は、前記摘定で測定されてもよく、それぞれのポリアミド6のカルボキシ末端基濃度とその混合比が判明している場合、それぞれのカルボキシ末端基濃度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、ポリアミド6(A)のカルボキシ末端基濃度としてもよい。
【0020】
(ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B))
ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)は、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)又は非修飾ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B2)である。ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)は、ポリアミド樹脂組成物を強化する繊維成分である。
【0021】
<<ミクロフィブリル化>>
「ミクロフィブリル化」とは、繊維がナノサイズレベルまで解きほぐされた(解繊された)状態をいう。好ましくは、繊維が後述する平均繊維径まで解繊された繊維をいう。
【0022】
<<セルロース系繊維>>
「セルロース系繊維」とは、セルロース、ホロセルロース及びリグノセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子(以下、「セルロース系高分子」ともいう。)からなる繊維である。また、「リグノセルロース」は、リグニン含有量の多少にかかわらず植物中に存在するリグニンとセルロースが結合した物質、及び/又は、リグニンとセルロースとの混合物を意味する。
【0023】
<アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)>
繊維強化ポリアミド樹脂組成物が、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)を含むことにより、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)同士が、水素結合によって凝集することをより抑制できる。また、繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造において、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)がポリアミド6(A)中に均一に分散する。これにより、耐衝撃性により優れた繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【0024】
「アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維」とは、後述する非修飾ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B2)を構成するセルロース系高分子中の多糖及びリグニンの少なくとも一部の水酸基がアセチル化された繊維である。
【0025】
<<アセチル化>>
「アセチル化」とは、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)を構成するセルロース系高分子中の多糖及びリグニンの少なくとも一部の水酸基がアセチル基で修飾された(即ち、水酸基の水素原子がアセチル基(CHC(=O)-)により置換されている)ことを意味する。
【0026】
<<アセチル化度(DS(置換度))>>
アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)において、セルロース、ホロセルロース及び/又はリグノセルロースを構成する多糖及びリグニン中の水酸基のアセチル化度(「DS」ともいう)は、特に限定されず、所望の特性に応じて適宜設定することができる。ここで、アセチル化度とは、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)中のセルロース、ホロセルロース及び/又はリグノセルロースを構成する多糖及びリグニン単位(繰り返し単位)に存在する水酸基がアセチル基で修飾された程度である。
【0027】
セルロース系高分子がセルロースである場合は、前記繰り返し単位はグルコピラノース残基であり、この1単位あたりの水酸基数は3である。よって、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)を構成するセルロース系高分子がセルロースのみで構成されている場合は、アセチル化度の上限は3である。
【0028】
また、リグノセルロースは、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンを含む。
セルロース系高分子がヘミセルロースである場合は、前記繰り返し単位はキシランにおけるキシロース残基又はアラビノガラクタンにおけるガラクトース残基であり、これらの1単位あたりの水酸基数は2である。
また、標準的なリグニンにおける、前記繰り返し単位は標準的なリグニン残基であり、この1単位当たりの水酸基数は2である。
よって、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)を構成するセルロース系高分子がリグノセルロースである場合は、アセチル化度の上限は3未満であり、リグノセルロースが含有するヘミセルロース及びリグニンの含有量に依存して、通常2.7~2.8である。
【0029】
また、ホロセルロースは、セルロース及びヘミセルロースを含む。セルロース及びヘミセルロースについて、前記繰り返し単位の1単位当たりの水酸基数は、それぞれ3及び2である。よって、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)を構成するセルロース系高分子がホロセルロースである場合は、アセチル化度の上限は3未満である。
【0030】
アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)において、アセチル化度は、0.4~2.55であることが好ましい。アセチル化度が0.4~2.55である場合、ポリアミド6(A)に対する分散性に優れるアセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)を得ることができる。アセチル化度は0.56~2.52であることがより好ましく、0.60~0.90であることが特に好ましい。
【0031】
アセチル化度(DS)は、元素分析、中和滴定法、FT-IR、二次元NMR(H及び13C-NMR)等の各種分析方法等により分析することができる。アセチル化度は、アセチル化に用いられるアセチル化剤(即ち、酢酸の無水物又は酸塩化物等)の量、反応温度、反応時間等を調節することにより調整することができる。
【0032】
アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0033】
<非修飾ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B2)>
「非修飾ミクロフィブリル化セルロース系繊維」とは、セルロース系繊維を解繊したミクロフィブリル化繊維である。ここで、「セルロース系繊維」及び「ミクロフィブリル化繊維」は、前記したとおりである。
【0034】
非修飾ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B2)は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0035】
<ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)の平均繊維径>
ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)の繊維径の平均値(平均繊維径)は、特に限定されないが、4~200nmであることが好ましく、4~150nmであることがより好ましく、4~100nmであることが特に好ましい。ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)の繊維長の平均値(平均繊維長)は、特に限定されないが、5μm以上であることが好ましい。
【0036】
繊維径及び繊維長は、電子顕微鏡を用いて測定することができる。ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)の平均繊維径及び平均繊維長は、電子顕微鏡の視野内のミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)の50本についての平均値である。
【0037】
なお、本発明の目的を達成する限り、解繊が不十分で、前記した繊維径よりも大きなミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)を含んでいたとしても、そのような繊維強化ポリアミド樹脂組成物は本発明に包含される。
【0038】
<ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)の比表面積>
ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)の比表面積は、特に限定されないが、70~300m/gであることが好ましく、70~250m/gであることがより好ましく、100~200m/gであることが特に好ましい。ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)の比表面積を大きくすることで、ポリアミド6(A)(マトリックス)と組み合わせて組成物とした場合に、接触面積を大きくすることができ、樹脂成形材料の特性をより向上させることができる。また、ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)が樹脂組成物の樹脂中で凝集せず、得られる成形体の強度を向上させることができる。
【0039】
<ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)の製造方法>
アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)は、非修飾セルロース繊維含有材料をアセチル化してアセチル化セルロース繊維含有材料を得、これを解繊することで得ることができる。または、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)は、非修飾ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B2)をアセチル化することによって得ることができる。そして、非修飾ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B2)は、非修飾セルロース繊維含有材料をミクロフィブリル化することによって得ることができる。
【0040】
<<非修飾セルロース繊維含有材料>>
非修飾セルロース繊維含有材料は、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)及び非修飾ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B2)の原料である。非修飾セルロース繊維含有材料は、セルロース系パルプ(非修飾セルロース系繊維集合体)であることが好ましい。
【0041】
セルロース系パルプは、植物性の原料から分離した、セルロース系高分子からなる繊維集合体を意味する。植物として、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、綿、ビート、農産物残廃物等が挙げられる。木材としては、シトカスプルース、マツ(トドマツ、アカマツ等)、スギ、ヒノキ、ユーカリ、アカシア等の針葉樹又は広葉樹由来の木材が挙げられる。
【0042】
セルロース系パルプは、リグニンを含まないパルプ(セルロースからなるパルプ、ホロセルロースからなるパルプ等)及びリグニンを含むパルプ(リグノパルプ)を包含する。ここで、リグノパルプは、リグニンが検出される限り、リグニンの含有量が微量であるパルプを包含する。リグノパルプ中のリグニン量は、クラーソン法で定量することができる。リグノパルプにおけるリグニンの含有量は、特に限定されないが、0.1~40質量%であることが好ましく、0.1~35質量%であることがより好ましく、0.1~30質量%であることが特に好ましい。
【0043】
セルロース系パルプは、木材から得られるパルプ(木材パルプ)であることが好ましい。セルロース系パルプは、リグノパルプであることが好ましい。
【0044】
セルロース系パルプは、前記した植物に由来する原料を、機械パルプ化法、化学パルプ化法、又は機械パルプ化法と化学パルプ化法との組み合わせにより処理して得ることができる。このようにして得られるパルプとしては、クラフトパルプ(KP)、機械パルプ(MP)等が挙げられる。クラフトパルプ(KP)としては、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹酸素漂白クラフトパルプ(NOKP)、及び針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)が挙げられる。機械パルプ(MP)としては、砕木パルプ(GP)、リファイナーGP(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等が挙げられる。
【0045】
非修飾セルロース繊維含有材料は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0046】
セルロース繊維含有材料の平均繊維径は、特に限定されないが、10~500μmであることが好ましい。このような平均繊維径であれば、ミクロフィブリル化を効率的に行うことができる。
【0047】
<<アセチル化セルロース繊維含有材料>>
アセチル化セルロース繊維含有材料は、アセチル化セルロース系パルプ(アセチル化セルロース系繊維集合体)であることが好ましい。ここで、アセチル化セルロース繊維含有材料におけるアセチル化については、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)において前記したとおりである。また、セルロース系パルプについては、非修飾セルロース繊維含有材料において前記したとおりである。
【0048】
<<アセチル化の方法>>
アセチル化は、セルロース系高分子の水酸基をアセチル化するための公知の方法を用いることができる。例えば、セルロース系高分子の水酸基の水素原子をアセチル基とするアセチル化反応としては、非修飾セルロース系繊維含有材料を膨潤させることのできる無水非プロトン性極性溶媒中に、前記非修飾セルロース繊維含有材料を懸濁させる工程と、塩基の存在下で、前記非修飾セルロース繊維含有材料をアセチル化剤と反応させる工程とを含む方法が挙げられる。ここで、アセチル化剤としては、酢酸の無水物又は酸塩化物等が挙げられる。また、非プロトン性極性溶媒としては、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。また、塩基としては、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。アシル化反応は、例えば、室温(例えば、25℃)~100℃で、原料成分を撹拌しながら行うことが好ましい。
【0049】
アセチル化剤の量、反応温度、反応時間等を調節することにより、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)又はアセチル化セルロース繊維含有材料のアセチル化度を調整することができる。
【0050】
<<平均繊維径>>
アセチル化又は非修飾セルロース繊維含有材料の平均繊維径は、特に限定されないが、10~500μmであることが好ましい。このような平均繊維径であれば、ミクロフィブリル化を効率的に行うことができる。
【0051】
<<ミクロフィブリル化(解繊)の方法>>
アセチル化又は非修飾セルロース繊維含有材料の解繊方法としては、パルプを解繊するための公知の解繊方法が挙げられる。前記解繊方法の具体例としては、アセチル化又は非修飾セルロース系パルプの水懸濁液又はスラリーを、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸混練機、多軸混練機(好ましくは二軸混練機)、ビーズミル等による機械的な摩砕又は叩解することによる解繊方法が挙げられる。これらの解繊方法は、組み合わせて用いてもよい。これにより、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)又は非修飾ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B2)の平均繊維径を調整することができる。
【0052】
また、原料としてアセチル化セルロース繊維含有材料が用いられる場合、アセチル化セルロース繊維含有材料(アセチル化パルプ等)及びポリアミド6(A)を一緒に溶融混練することで、溶融混練中にアセチル化セルロース繊維含有材料が解繊されてナノフィブリル化して、ポリアミド6(A)中でアセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)とすることができる。これにより、アセチル化セルロース系繊維のミクロフィブリル化及び繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造を効率的に行うことができる。
【0053】
(一個又は複数個のアミノ基又は酸無水物基を有する相溶化剤(C))
相溶化剤(C)は、一個又は複数個のアミノ基又は酸無水物基を有し、その融点(Tm)が40℃~260℃である。相溶化剤(C)の融点が40℃未満である場合、溶融混練中に反応混合物中から揮発する等にして除かれる等により、耐衝撃性に劣る繊維強化ポリアミド樹脂組成物が得られる。相溶化剤(C)の融点が260℃超である場合、融解しないため繊維に十分に浸透せず、耐衝撃性に劣る繊維強化ポリアミド樹脂組成物が得られる。耐衝撃性がより優れる繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造を効率的に行うことができる観点から、相溶化剤(C)の融点は、40℃~200℃であることが好ましく、40℃~140℃であることが特に好ましい。
【0054】
相溶化剤(C)が有するアミノ基の個数は、一個~五個であることが好ましく、一個~四個であることが特に好ましい。また、相溶化剤(C)が有する酸無水物基の個数は、一個~五個であることが好ましく、一個~二個であることが特に好ましい。
【0055】
相溶化剤(C)としては、無水マレイン酸(Tm:53℃)、無水コハク酸(Tm:120℃)、無水フタル酸(Tm:131℃)、無水安息香酸(Tm:42℃)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA、Tm:230℃)等の酸無水物基を有する化合物;及び、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA、Tm:188℃)、p-フェニレンジアミン(Tm:148~147℃)、o-フェニレンジアミン(Tm:102~104℃)、ベンジジン(Tm:128℃)等のアミノ基を有する化合物が挙げられる。
相溶化剤(C)は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0056】
(その他の成分)
繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含むことができる。このような成分として、相溶化剤、界面活性剤、多糖類(デンプン、アルギン酸等)、天然タンパク質(ゼラチン、ニカワ、カゼイン等)、無機化合物(タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属等)、着色剤、可塑剤、香料、顔料、流動調整剤、レベリング剤、導電剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、紫外線分散剤、消臭剤等が挙げられる。
【0057】
(各成分の含有量)
繊維強化ポリアミド樹脂組成物中の各成分の含有量は、繊維強化ポリアミド樹脂組成物中にミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)が分散している程度の含有量であれば特に制限されないが、以下の含有量が好ましい。
【0058】
繊維強化ポリアミド樹脂組成物中のポリアミド6(A)の含有量は、20質量%~95質量%であることが好ましく、50質量%~95質量%であることがより好ましく、60質量%~90質量%であることが特に好ましい。
【0059】
繊維強化ポリアミド樹脂組成物中のミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)の含有量は、1質量%~40質量%であることが好ましく、1質量%~30質量%であることがより好ましく、5質量%~20質量%であることが特に好ましい。
【0060】
繊維強化ポリアミド樹脂組成物中の相溶化剤(C)の含有量は、0.1質量%~30質量%であることが好ましく、0.5質量%~20質量%であることが特に好ましい。
【0061】
繊維強化ポリアミド樹脂組成物中のその他の成分の含有量は、0.1質量%~30質量%であることが好ましく、1質量%~20質量%であることが特に好ましい。
【0062】
[繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法]
繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、所望の繊維強化ポリアミド樹脂組成物が得られる方法であれば特に限定されない。繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、以下の繊維強化ポリアミド樹脂組成物の第1の製造方法~第3の製造方法が挙げられる。
【0063】
(製造方法1)
繊維強化ポリアミド樹脂組成物の第1の製造方法(製造方法1)は、以下の工程:
(1A)アセチル化セルロース系繊維含有材料又は非修飾セルロース系繊維含有材料であるセルロース系繊維含有材料を解繊して、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)又は非修飾ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B2)であるミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)を得る工程と、
(1B)ポリアミド6(A)と、ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)と、相溶化剤(C)とを溶融混練して、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得る工程と
を含み、前記相溶化剤(C)の融点が40℃~260℃である。
【0064】
工程(1A)における、セルロース系繊維含有材料及びミクロフィブリル化の方法は、前記したとおりである。工程(1A)においては、セルロース系繊維含有材料がアセチル化セルロース系繊維含有材料である場合は、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)が得られ、セルロース系繊維含有材料が非修飾セルロース系繊維含有材料である場合は、非修飾ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B2)が得られる。また、工程(1B)における、溶融混練は、後述するとおりである。
【0065】
(製造方法2)
繊維強化ポリアミド樹脂組成物の第2の製造方法(製造方法2)は、以下の工程:
(2A)非修飾セルロース系繊維含有材料をアセチル化して、アセチル化セルロース系繊維含有材料を得る工程と、
(2B)ポリアミド6(A)と、アセチル化セルロース系繊維含有材料と、一個又は複数個のアミノ基又は酸無水物基を有する相溶化剤(C)とを溶融混練して、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得る工程と
を含み、前記相溶化剤(C)の融点が40℃~260℃である。
【0066】
製造方法2は、アセチル化セルロース系繊維含有材料、ポリアミド6(A)及び相溶化剤(C)を一緒に溶融混練する方法である。製造方法2では、混練中のせん断応力によりアセチル化セルロース系繊維含有材料のミクロフィブリル化が進行する。工程(2A)における、アセチル化の方法は、前記したとおりである。また、工程(2B)における、溶融混練は、後述するとおりである。
【0067】
(製造方法3)
繊維強化ポリアミド樹脂組成物の第3の製造方法(製造方法3)は、以下の工程を含む。
(3A)ポリアミド6(A)と、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)又は非修飾ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B2)であるミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)とを溶融混練するか、ポリアミド6(A)と、アセチル化セルロース系繊維含有材料とを溶融混練して、マスターバッチを得る工程(マスターバッチ混練工程)と、
(3B)前記マスターバッチと更なる成分(A)とを溶融混練して繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得る工程(希釈混練工程)と
を含み、工程(3A)及び工程(3B)の少なくとも一方における溶融混錬を、一個又は複数個のアミノ基又は酸無水物基を有する相溶化剤(C)の存在下で行い、前記相溶化剤(C)の融点が40℃~260℃である。
【0068】
製造方法3は、いわゆるマスターバッチ法である。即ち、製造方法1及び製造方法2において、繊維強化ポリアミド樹脂組成物はマスターバッチとして得られてもよい。このようにして得られたマスターバッチを更なるポリアミド6(A)によって希釈するように溶融混練する工程(希釈混練工程)により、所望の繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得ることができる。また、工程(3A)及び工程(3B)の少なくとも一方における溶融混錬は、相溶化剤(C)の存在下で行われる。即ち、製造方法3において、相溶化剤は、マスターバッチ混練工程時に添加してもよく、希釈混錬工程時に添加してもよく、マスターバッチ混練工程及び希釈混錬工程の両方の時に添加してもよい。
【0069】
工程(3A)は、相溶化剤(C)が任意であることを除いて、工程(1B)及び工程(2B)において、前記したとおりである。
【0070】
(溶融混練)
製造方法1及び製造方法2における溶融混練、並びに製造方法3におけるマスターバッチを得る工程における溶融混練は、下記一般式(1)で示されるアミド化合物(D)の存在下で行うことが好ましく、下記一般式(1)で示されるアミド化合物(D)及び水(E)の存在下で行うことが特に好ましい。下記一般式(1)で示されるアミド化合物(D)が存在することで、アセチル化セルロース系繊維含有材料のミクロフィブリル化がより進行するか、ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)の凝集が抑えられることにより、ポリアミド6(A)中にミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)が良好に分散した、繊維強化ポリアミド樹脂組成物が容易に得られる。
【0071】
溶融混練は、アセチル化セルロース系繊維含有材料又はアセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)が用いられる場合の溶融混練を、アミド化合物(D)の存在下で行うことが特に好ましい。即ち、製造方法1の工程(1A)において、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維含有材料が用いられる場合、あるいは、製造方法3の工程(3A)において、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)又はアセチル化セルロース系繊維含有材料が用いられる場合の溶融混練を、アミド化合物(D)の存在下で行うことが特に好ましい。このような場合、アセチル化セルロース系繊維含有材料のミクロフィブリル化がより進行するか、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)の凝集が抑えられることにより、ポリアミド6(A)中にアセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)が良好に分散した、繊維強化ポリアミド樹脂組成物がより容易に得られる。
【0072】
<一般式(1)で示されるアミド化合物(D)>
一般式(1)で示されるアミド化合物(D)(以下、単に「アミド化合物(D)」ともいう。)は、成分(B)の原料であるセルロース系繊維集合体(セルロース系パルプ)が、同一の構造式を有するミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)にミクロフィブリル化されることを促進する。好ましくは、アミド化合物(D)は、成分(B1)の原料であるアセチル化セルロース系繊維集合体(アセチル化セルロース系パルプ)が、同一の構造式を有するアセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維にミクロフィブリル化されることをより促進する。よって、繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法が、アミド化合物(D)の存在下で行われる場合、成分(B)の原料(好ましくは、成分(B1)の原料)を効率的にミクロフィブリル化繊維に解繊することができる。
【0073】
-CO-N(R)-R (1)
〔式中、
及びRは、同一又は異なって、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基であるか、又は、R及びRは、一緒になって、炭素原子数3~11のアルキレン基であり、
は、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数2~4のアシル基である〕
【0074】
<<R及びR>>
炭素原子数1~4のアルキル基は、直鎖状又は分岐状であり、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。炭素原子数1~4のアルキル基は、メチル基、エチル基及びn-プロピル基であることが好ましい。
【0075】
炭素原子数3~11のアルキレン基は、直鎖状又は分岐状であり、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基等が挙げられる。炭素原子数3~11のアルキレン基は、炭素原子数3~5及び炭素原子数9~11のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数3、5、10又は11のアルキレン基であることが特に好ましい。
【0076】
<<R>>
炭素原子数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。炭素原子数1~3のアルキル基は、メチル基であることが好ましい。
【0077】
炭素原子数2~4のアシル基としては、アセチル基及びプロピオニル基等が挙げられる。炭素原子数2~4のアシル基は、アセチル基であることが好ましい。
【0078】
<<好ましい態様>>
市場から容易に入手できる観点から、R及びRは、一緒になって、炭素原子数3~11のアルキレン基であり、Rは、水素原子である、一般式(1)で示されるアミド化合物(C)が好ましい。
【0079】
アミド化合物の具体例として、ε-カプロラクタム、N-メチル-ε-カプロラクタム、N-アセチル-ε-カプロラクタム、ラウロラクタム、δ-バレロラクタム、N-メチル-δ-バレロラクタム、ウンデカンラクタム、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。アミド化合物は、ε-カプロラクタム、N-メチル-ε-カプロラクタム、N-アセチル-ε-カプロラクタム及びラウロラクタムであることが好ましく、ε-カプロラクタム及びラウロラクタムであることがより好ましく、ε-カプロラクタムであることが特に好ましい。
アミド化合物(D)は、1種又は2種以上の混合物であってもよい。
【0080】
(水(E))
水(E)は、ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)(好ましくは、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1))の分散性をより高める成分である。
【0081】
<溶融混練の温度>
溶融混練の温度は、成分(A)に応じて適宜設定することができるが、225~240℃であることが好ましい。溶融混練時の温度が前記範囲であることにより、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を均一に混合することができる。
【0082】
(希釈混練)
工程(3B)は、希釈混錬工程である。希釈混練における条件は、溶融混練において前記したとおりである。希釈混練は、アミド化合物(D)及び/又は水(E)を用いて行ってもよく、用いないで行ってもよい。
【0083】
<使用量>
溶融混練における成分(A)、成分(B)及び成分(C)の使用量は、繊維強化ポリアミド樹脂組成物における各成分の含有量となるような量が挙げられる。
また、製造方法3において、マスターバッチを得る場合、成分(B)の使用量は、成分(A)と成分(B)と成分(C)との合計100質量部に対して、10~40質量部であることが好ましい。
製造方法3において、マスターバッチを得る場合、成分(C)の使用量は、繊維強化ポリアミド樹脂組成物における成分(C)の含有量となるような量であれば、特に限定されない。
溶融混練における成分(D)の使用量は、成分(B)の原料が解繊されるか、成分(B)のミクロフィブリル化が維持される程度であれば特に限定されないが、成分(A)と成分(B)と成分(C)との合計100質量部に対して、10~40質量部であることが好ましい。
溶融混練における成分(E)の使用量は、特に限定されないが、成分(A)と成分(B)と成分(C)との合計100質量部に対して、10~40質量部であることが好ましい。
【0084】
(製造方法により得られる繊維強化ポリアミド樹脂組成物)
製造方法1~製造方法3により、繊維強化ポリアミド樹脂組成物が得られる。繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド6(A)と、アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B1)と、相溶化剤(C)と、アミド化合物(D)を溶融混練して得られたものであってもよい。
【0085】
なお、アミド化合物(D)及び水(E)は、溶融混練の温度が高いために、溶融混練において、系外に排出される。具体的には、水(E)は、溶融混練時に水蒸気として溶融混練物から除かれる。また、アミド化合物(D)は、溶融混練時にポリアミド樹脂に組み込まれるか、蒸気として溶融混練物から除かれる。したがって、成分(D)と成分(E)との組み合わせ又は成分(D)の存在下で、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を溶融混練して得られる繊維強化ポリアミド樹脂組成物と、成分(D)と成分(E)との組み合わせ又は成分(D)を用いないで、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を溶融混練して得られる繊維強化ポリアミド樹脂組成物との違いに係る構造又は特性を特定することは非実際的である。
【0086】
[用途]
繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、成形体に用いることができる。成形体の形状としては、フィルム状、シート状、板状、ペレット状、棒状、粉末状、中空状等が挙げられる。
【0087】
繊維強化ポリアミド樹脂組成物を用いた成形体(繊維強化ポリアミド樹脂組成物からなる成形体)は、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を金型成形、射出成形、押出成形、中空成形、発泡成形等の各種公知の成形方法で成形することにより製造することができる。
【0088】
繊維強化ポリアミド樹脂組成物を用いた成形体は、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維のみを含有する繊維強化樹脂組成物を用いた成形体と比べて、軽量で、かつ強度特性に優れる。
【0089】
成形体は、自動車、電車、船舶、飛行機等の輸送機の内装材、外装材、構造材等;パソコン、テレビ、電話等の電化製品等の筺体、構造材、内部部品等;建築材;等に使用することができる。
【実施例
【0090】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
<評価>
1)相対粘度:JIS K-6920に準拠し、ポリアミド6(A)1gを96%濃硫酸100mlに溶解させて、25℃にて、相対粘度を測定した。
2)カルボキシ末端基濃度:ポリアミド6(A)をベンジルアルコールに溶解させ、0.05N(規定)の水酸化ナトリウム溶液で滴定して、カルボキシ末端基濃度を測定した。
3)曲げ強さ:ISO178に従い、常温下、厚み4mmの試験片を用いて曲げ速度2m/minで試験を行った。5個の試験片(n=5)についての平均値を求めた。
4)シャルピー衝撃強度(ノッチあり):ISO179に従い、常温下、ノッチが入った厚み4mmの試験片を用いて試験を行った。10個の試験片(n=10)についての平均値を求めた。
5)シャルピー衝撃強度(ノッチなし):ISO179に従い、常温下、ノッチを有さない厚み4mmの試験片を用いて試験を行った。10個の試験片(n=10)についての平均値を求めた。
【0092】
<使用成分>
以下の成分を用いた。
ポリアミド6(A):
PA6(相対粘度2.21、カルボキシ末端濃度7.50×10-5eq/g):ポリアミド6、製品名「P1011F」宇部興産社製
ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B):
平均繊維径35μmのセルロース系繊維を用いて特開2016-176052号公報に記載の方法に準じて製造した。
DS0.5品:アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(アセチル化度0.5)
DS0.9品:アセチル化ミクロフィブリル化セルロース系繊維(アセチル化度0.9)
DS0品:非修飾ミクロフィブリル化セルロース系繊維
相溶化剤(C):
無水マレイン酸(Tm:53℃)
ODA:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(Tm:188℃)
ODPA:4,4’-オキシジフタル酸無水物(Tm:230℃)
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(Tm:299℃)
メタキシリレンジアミン(Tm:14℃)
アミド化合物(D):ε-カプロラクタム
【0093】
<実施例1>
(1)マスターバッチ混練(MB混練)
ポリアミド6(A)65.6質量部と、ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)33.4質量部と、相溶化剤(C)1.0質量部とを90℃でブレンドして、混合物(1)を得た。混合物(1)を、ZSK32Mc二軸混練機で、230℃で溶融混練し、ダイスからストランド上にした後、水冷により冷却固化し、ペレタイザーでカットすることで、繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB1)のペレットを作製した。
(2)希釈混練
次に、得られたMB1のペレット56.7質量部とポリアミド6(A)43.3質量部とをブレンドして混合物(2)を得た。混合物(2)を、ZSK32Mc二軸混練機で、230℃で溶融混練し、ダイスからストランド上にした後、水冷により冷却固化し、ペレタイザーでカットすることで、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得た。
【0094】
<実施例2~実施例6、比較例1~比較例3>
表に示す使用量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得た。
【0095】
<実施例7>
(1)マスターバッチ混練(MB混練)
ポリアミド6(A)39.4質量部と、ミクロフィブリル化セルロース系繊維(B)20.0質量部と、相溶化剤(C)(無水マレイン酸)0.6質量部と、アミド化合物(D)40.0質量部とを90℃でブレンドして、混合物(1)を得た。混合物(1)を、ZSK32Mc二軸混練機で、230℃で溶融混練し、ダイスからストランド上にした後、水冷により冷却固化し、ペレタイザーでカットすることで、繊維強化ポリアミド樹脂組成物用マスターバッチ(MB7)のペレットを作製した。
(2)希釈混練
次に、得られたMB7のペレット55.7質量部と、ポリアミド6(A)43.3質量部と、相溶化剤(C)(ODA)1.0質量部とをブレンドして混合物(2)を得た。混合物(2)を、ZSK32Mc二軸混練機で、230℃で溶融混練し、ダイスからストランド上にした後、水冷により冷却固化し、ペレタイザーでカットすることで、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得た。
【0096】
結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
表1より、実施例1~7のポリアミド樹脂組成物は、曲げ強さを維持したまま、耐衝撃性に優れていた。
実施例1と実施例2との比較によると、相溶化剤の含有量が増加すると、耐衝撃性がより高くなった。
実施例1と実施例3との比較によると、希釈混錬の際に相溶化剤を添加すると、耐衝撃性がより高くなった。
実施例1と実施例4及び5との比較によると、相溶化剤の融点が低くなると、耐衝撃性(特に、ノッチありの衝撃強度)がより高くなったのみならず、曲げ強さがより高くなった。
比較例1は、相溶化剤を含まないため、耐衝撃性が劣っていた。
比較例2及び3は、相溶化剤の融点が40~260℃ではないため、耐衝撃性が劣っていた。